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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B
管理番号 1375498
審判番号 不服2020-9611  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-08 
確定日 2021-06-24 
事件の表示 特願2016- 42374「反射スクリーン、映像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月 7日出願公開、特開2017-156696〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年3月4日にされた特許出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
令和元年10月 8日付け:拒絶理由通知書
令和元年11月28日 :意見書、手続補正書の提出
令和2年 4月15日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和2年 4月21日 :原査定の謄本の送達
令和2年 7月 8日 :審判請求書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1から13に係る発明は、令和元年11月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1から13に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1の記載は、次のとおりである(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。

「【請求項1】
映像源から投射された映像光を反射して映像を表示する半透過型の反射スクリーンであって、
入射した光の一部を反射し、その他を透過する半透過型の反射層と、
前記反射層の映像源側に少なくとも1層設けられた光透過性を有する映像源側層と、
前記反射層の背面側に少なくとも1層設けられた光透過性を有する背面側層と、
を備え、
該反射スクリーンのスクリーン面に映像源側から入射角0°で入射した光について、その総量Spを100%としたとき、
背面側へ透過した透過率Tp(%)と、前記反射層で反射して映像源側へ出射した反射率Rp(%)との和は、90%以下であり、
該反射スクリーン内での光の吸収率Ap(%)は、10%以上であり、
該反射スクリーンの厚み方向において、映像源側表面から前記反射層の背面側の面までを映像源側領域とし、前記反射層の映像源側の面から背面側表面までを背面側領域とするとき、該反射スクリーンのスクリーン面に背面側から入射角0°で入射した光に対する前記背面側領域の光の吸収率は、該反射スクリーンのスクリーン面に映像源側から入射角0°で入射した光に対する前記映像源側領域の光の吸収率よりも大きく、
前記映像源側層は、光透過性を有し、背面側の面に単位光学形状が複数配列された光学形状層を有し、
前記単位光学形状は、映像光が入射する第1の面と、これに対向する第2の面とを有し、
前記反射層は、前記単位光学形状の少なくとも第1の面の一部に形成されており、
前記反射層は、その表面に微細かつ不規則な凹凸形状が形成されていること、
を特徴とする反射スクリーン。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の一つは、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2から3に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。



引用文献1:国際公開第2015/199026号
引用文献2:特開2012-252132号公報
引用文献3:特開2009-169006号公報

第4 引用文献に記載された発明等
1 引用文献1
(1)引用文献1には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。

「[0015] 以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「第1の面」とは、映像表示透明部材の最表面であって、投影機から映像光が投射される側の表面を意味する。
「第2の面」とは、映像表示透明部材の最表面であって、第1の面とは反対側の表面を意味する。
「第1の面側(第2の面側)の光景」とは、映像表示透明部材の第2の面側(第1の面側)にいる観察者から見て、映像表示透明部材の向こう側に見える像(主要対象物(商品、美術品、人物等)およびその背景、ならびに風景等)を意味する。光景には、投影機から投射された映像光が映像表示透明部材において結像して表示される映像は含まれない。
「前方ヘーズ」とは、第1の面側から第2の面側に透過する透過光、または第2の面側から第1の面側に透過する透過光のうち、前方散乱によって、入射光から0.044rad(2.5°)以上それた透過光の百分率を意味する。すなわち、JIS K 7136:2000(ISO 14782:1999)に記載された方法によって測定される、通常のヘーズである。
「後方ヘーズ」とは、第1の面において反射する反射光のうち、散乱によって、正反射光から0.044rad(2.5°)以上それた反射光の百分率を意味する。
「凹凸構造」とは、複数の凸部、複数の凹部、または複数の凸部および凹部からなる凹凸形状を意味する。
「不規則な凹凸構造」とは、凸部または凹部が周期的に出現せず、かつ凸部または凹部の大きさが不揃いである凹凸構造を意味する。
算術平均粗さ(Ra)は、JIS B 0601:2013(ISO 4287:1997,Amd.1:2009)に基づき測定される算術平均粗さである。粗さ曲線用の基準長さlr(カットオフ値λc)は0.8mmとした。
透過率は、入射した光に対し、前方方向へ透過、散乱される光の合計の光量の比を百分率とした値である。
反射率は、入射した光に対し、後方方向へ反射、散乱される光の合計の光量の比を百分率とした値である。
透過率、反射率および屈折率は、ナトリウムランプのd線(波長589nm)を用いて室温で測定したときの値である。」

「[0017] 図1は、本発明の反射型の映像表示透明部材の一例を示す層構成図である。
映像表示透明部材1は、第1の透明基材10と、第2の透明基材20との間に、映像表示部30が配置され、第2の透明基材20に光減衰成分が配合されて着色され、映像表示透明部材1を透過する光の一部を減衰させる光減衰層となっているものである。
第1の透明基材10と映像表示部30とは、接着層12によって接着され、第2の透明基材20と映像表示部30とは、接着層22によって接着されている。
[0018] (第1の透明基材)
第1の透明基材10の材料としては、ガラス、透明樹脂等が挙げられる。
透明基材を構成するガラスとしては、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス等が挙げられる。ガラスからなる第1の透明基材10には、耐久性を向上させるために、化学強化、物理強化、ハードコーティング等を施してもよい。
[0019] 第1の透明基材10を構成する透明樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、トリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマー、ポリメチルメタクリレート等が挙げられ、耐候性および透明性の観点から、ポリカーボネート、ポリエステル、シクロオレフィンポリマーが好ましい。
[0020] 第1の透明基材10としては、複屈折がないものが好ましい。
第1の透明基材10の厚さは、基材としての耐久性が保たれる厚さであればよい。透明基材の厚さは、たとえば、0.01mm以上であってよく、0.05mm以上であってよく、0.1mm以上であってよい。また、透明基材の厚さは、たとえば、10mm以下であってよく、5mm以下であってよく、0.5mm以下であってよく、0.3mm以下であってよく、0.15mm以下であってよい。
[0021] (第2の透明基材(光減衰層))
第2の透明基材20は、光減衰成分が配合されて着色されており、映像表示透明部材1を透過する光の一部を減衰させる光減衰層にもなっている。
映像表示透明部材1では、第2の透明基材20が光減衰層になっていることで、観察者Yが映像表示透明部材1の向こう側の光景を見る際に、その光景の視認性が優れたものとなる。
[0022] 第2の透明基材20の材料としては、第1の透明基材10の材料として挙げたガラス、透明樹脂等に光減衰成分が配合されたものが挙げられる。
ガラスに含まれる光減衰成分としては、たとえば、Fe_(2)O_(3)、CoO、Ti_(2)O、V_(2)O_(5)、CuO、Cr_(2)O_(3)、NiO、Er_(2)O_(3)、Nd_(2)O_(3)、CeO_(2)、MnO_(2)、SeO_(x)等の金属酸化物が挙げられ、赤外線のカット等の機能付与の点から、Fe、Cuが含まれていることが好ましい。
透明樹脂に含まれる光減衰成分としては、たとえば、カーボンブラック、チタンブラック等の顔料やアジン系化合物等の染料が挙げられ、耐候性の点から、顔料が好ましい。
[0023] また、第2の透明基材20は偏光依存性を備えていてもよい。たとえば、投影機からの映像光Lに含まれる光量のうち、多くの光が持つ偏光方向と第2の透明基材20がより多く減衰させる側の偏光方向を揃える。これにより、高い透過率を備えながらも効率よく映像光Lを吸収し、観察者Yの光景の視認性を向上させることができる。
偏光依存性を備える光減衰成分としては、二色性色素、金属のナノロッド等が挙げられる。また、偏光依存性を備える第2の透明基材は、ヨウ素や染料、銀等を含んだ透明樹脂を延伸することでも作成できる。また、第2の透明基材20の表面に、ワイヤーグリッド構造を形成して偏光依存性を付与したものを用いてもよい。偏光依存性としては、透過率の比が2以上であれば、偏光依存性の無い光減衰材料との差が光景の明るさとして感じられるようになることから好ましく、5以上であるとさらに好ましく、10以上であると特に好ましい。
[0024] 光減衰層の第2の透明基材20の透過率は、観察者Yから見て映像表示透明部材1の向こう側の光景の視認性がよい点から、3%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましい。
光減衰層の第2の透明基材20の透過率は、観察者Yから見て映像表示透明部材1の向こう側の光景のコントラストが高くなる点から、70%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましく、10%以下が特に好ましい。
光減衰層の第2の透明基材20のヘーズは、光減衰層で結像しにくくする点から、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。
[0025] 光減衰層の第2の透明基材20の色は、均一に光を減光するグレーを用いると光景や投影像のコントラスト向上を図ることができ好ましい。好ましい範囲としては、xyY表色系において、0.25?x?0.4、0.25?y?0.4であるとよく、0.27?x?0.38、0.27?y?0.38であると好ましい。
[0026] 光減衰層の第2の透明基材20の色は、青味を帯びていると、光景の視認性が向上するため、好ましい。好ましい範囲としては、xyY表色系において、x?0.33、y?0.5であると好ましい。
[0027] 光減衰層の第2の透明基材20の色は、緑味を帯びていると、透過光量を小さくするようなプライバシーガラスとした際にも、視感度の高い領域の透過率を確保できる。そのため、効率よく可視光、赤外光、紫外光をカットすることによる効能と視界の確保の両立を得ることができる。好ましい範囲としては、xyY表色系において、y>x、0.33?yであると好ましい。
[0028] 本発明では、図1のように光減衰層である第2の透明基材20の面積が映像表示部30の面積と同じか、または光減衰層である第2の透明基材20の面積が映像表示部30の面積よりも大きいことが好ましい。これにより、観察者Y側から入射する光(太陽光等)が後述の反射膜で散乱した反射散乱光の一部が安定して光減衰層に吸収される。そのため、観察者Yから見て映像表示透明部材の向こう側の光景のコントラストの低下が安定して抑制され、映像表示透明部材1の向こう側の光景の優れた視認性が安定して実現されやすくなる。
[0029] 第2の透明基材20としては、複屈折がないものが好ましい。
第2の透明基材20の厚さは、基材としての耐久性が保たれる厚さであればよい。透明基材の厚さは、たとえば、0.01mm以上であってよく、0.05mm以上であってよく、0.1mm以上であってよい。また、透明基材の厚さは、たとえば、10mm以下であってよく、5mm以下であってよく、0.5mm以下であってよく、0.3mm以下であってよく、0.15mm以下であってよい。
[0030] (接着層)
接着層12および接着層22(以下、まとめて接着層とも記す。)の材料としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、粘着剤(アクリル系粘着剤等)、光硬化性樹脂組成物、熱可塑性樹脂組成物等が挙げられる。各接着層の材料は、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
[0031] 熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂としては、たとえば、可塑化ポリビニルアセタール、可塑化ポリ塩化ビニル、飽和ポリエステル、可塑化飽和ポリエステル、ポリウレタン、可塑化ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体等が挙げられる。
[0032] 接着層の厚さは、接着層としての機能が保たれる厚さであればよく、たとえば、0.01?1.5mmが好ましく、0.05?1mmがより好ましい。
[0033] (映像表示部)
映像表示部30は、第1の透明フィルム31と;第1の透明フィルム31の表面に設けられた、表面に不規則な凹凸構造を有する第1の透明層32と;第1の透明層32の凹凸構造側の面に沿うように形成された、入射した光の一部を透過する反射膜33と;反射膜33の表面を覆うように設けられた第2の透明層34と;第2の透明層34の表面に設けられた第2の透明フィルム35とを有する光散乱シートからなる。
[0034] (透明フィルム)
第1の透明フィルム31および第2の透明フィルム35(以下、まとめて透明フィルムとも記す。)は、透明樹脂フィルムであってもよく、薄いガラスフィルムであってもよい。各透明フィルムの材料は、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
[0035] 透明樹脂フィルムを構成する透明樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、トリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマー、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
[0036] 透明フィルムの厚さは、ロールツーロールプロセスを適用できる厚さが好ましく、たとえば、0.01?0.5mmが好ましく、0.05?0.3mmがより好ましく、0.2mm以下がさらに好ましい。
[0037] (透明層)
第1の透明層32および第2の透明層34(以下、まとめて透明層とも記す。)は、透明樹脂層であることが好ましい。各透明層の材料は、同じものであってもよく、異なるものであってもよく、同じものが好ましい。
[0038] 透明樹脂層を構成する透明樹脂としては、光硬化性樹脂(アクリル樹脂、エポキシ樹脂等)の硬化物、熱硬化性樹脂の硬化物、熱可塑性樹脂が好ましい。透明樹脂層を構成する透明樹脂のイエローインデックスは、映像表示透明部材における窓としての機能が損なわれないように透明感を維持する点から、10以下が好ましく、5以下がより好ましい。
[0039] 透明層の厚さ(凹凸構造が形成された部分を除く)は、ロールツーロールプロセスにて形成しやすい厚さであればよく、たとえば、0.5?50μmが好ましい。
透明層の透過率は、50?100%が好ましく、75?100%がより好ましく、90?100%がさらに好ましい。
[0040] 第1の透明層32の表面に形成された不規則な凹凸構造の算術平均粗さRaは、0.01?20μmが好ましく、0.05?10μmがより好ましい。算術平均粗さRaが該範囲内であれば、投射された映像の視野角が広く、正反射光を直接見ずに視認でき、凹凸構造による粒状感が抑えられる。算術平均粗さRaが10μm以下であれば、映像表示透明部材1の向こう側の光景を見るときに凹凸構造が邪魔にならず、より好ましい。
[0041] (反射膜)
反射膜33は、反射膜33に入射した光の一部を透過し、他の一部を反射するものであればよい。反射膜33としては、金属膜、半導体膜、誘電体単層膜、誘電体多層膜、これらの組み合わせ等が挙げられる。
[0042] 金属膜、半導体膜を構成する金属としては、Al、Ag、Ni、Cr、W、Si等が考えられ、特にAlやAg、または、それらが主成分である合金が好ましい。
誘電体膜を構成する誘電体としては、金属酸化物、金属窒化物等が挙げられる。
反射膜33としては、金属薄膜、または、酸化物膜、金属薄膜、酸化物膜の順に積層された膜構成のものが好ましい。
[0043] 反射膜33の厚さは、第1の透明層32の表面に形成された不規則な凹凸構造の算術平均粗さRaによる機能を妨げずに活かすことができる点から、1?100nmが好ましく、4?25nmがより好ましい。
反射膜33の不規則な凹凸構造の算術平均粗さRaは第1の透明層32と同じ理由で0.01?20μmが好ましく、0.05?10μmがより好ましい。
反射膜33の反射率は、充分なスクリーンのゲインが得られる範囲としては、5%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましい。」

「[0055] (反射型の映像表示透明部材を備えた映像表示システム)
本発明の映像表示システムの第1の態様は、本発明の反射型の映像表示透明部材と、映像表示透明部材の第1の面側に設置された投影機とを備えた映像表示システムである。
[0056] 図1は、本発明の映像表示システムの一例を示す概略構成図である。
映像表示システムは、反射型の映像表示透明部材1と、映像表示透明部材1の第1の面A側に設置された投影機200とを備える。
[0057] 投影機200は、映像表示透明部材1に映像光Lを投射できるものであればよい。投影機200としては、公知のプロジェクタ等が挙げられる。
[0058] (反射型の映像表示透明部材を用いた映像表示方法)
本発明の映像表示方法の第1の態様は、本発明の反射型の映像表示透明部材に、映像表示透明部材の第1の面側に設置された投影機から映像光を投射し、映像を表示させる映像表示方法である。
[0059] 図1に示すように、投影機200から投射され、映像表示透明部材1の第1の透明基材10側の表面(第1の面A)から入射した映像光Lが、反射膜33において散乱することによって結像し、投影機200と同じ側にいる観察者Xに映像として視認可能に表示できる。
また、映像表示透明部材1における反射膜33が入射した光の一部を透過するため、第1の面A側の光景を第2の面B側の観察者Yに視認可能に透過でき、かつ第2の面B側の光景を第1の面A側の観察者Xに視認可能に透過できる。
[0060] (作用機序)
以上説明した反射型の映像表示透明部材1、ならびにこれを用いた映像表示システムおよび映像表示方法にあっては、たとえば映像表示透明部材1を第2の面Bが室外となるように窓として用いる場合、第2の面B側から映像表示透明部材1に入射した太陽光L1が反射膜33で散乱し、その反射散乱光の一部が、光減衰層である第2の透明基材20で吸収されて減少する。その結果、観察者Yが映像表示透明部材1の向こう側の光景を見る際、映像表示透明部材1の向こう側から透過してくる光のコントラストが向上する。そのため、観察者Yから見て映像表示透明部材1の向こう側の光景のコントラストが向上し、日中における該光景の視認性に優れる。
また、光減衰層である第2の透明基材20による前記反射散乱光の吸収によって、第2の面B側から見たときに映像表示透明部材1が白くぼやけて見えることが抑制されるため、意匠性に優れる。そのため、映像表示透明部材1は第2の面Bを室外側とする窓等の用途に有用である。
[0061] また、この例の反射型の映像表示透明部材1では、映像表示透明部材1の第2の面B側から入射する光の一部が光減衰層である第2の透明基材20で吸収されるため、観察者Xから見て投影機200から投射された映像光による映像のコントラストが向上し、その視認性に優れる。」

「[0122] 以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
例2、4は実施例であり、例1、3は比較例である。
[0123] (例1)
透明なポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す。)フィルム(東洋紡社製、コスモシャイン(登録商標)A4300、厚さ:0.1mm)の表面に、紫外線硬化性樹脂(大阪ガスケミカル社製、オグソール(登録商標)EA-F5003)100質量部に対し、光開始剤(BASF社製、イルガキュア(登録商標)907)を3質量部混合した溶液をダイコート法によって10μmの厚みに塗布した。
不規則な凹凸構造が表面に形成された白色PETフィルム(東レ社製E20、算術平均粗さRa:0.23μm)を、凹凸構造が紫外線硬化性樹脂に接するように、紫外線硬化性樹脂の上に重ねた。
[0124] 透明PETフィルムの側から1000mJの紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を硬化させて、白色PETフィルムの不規則な凹凸構造が表面に転写された第1の透明層を形成した後、白色PETフィルムを剥離した。
第1の透明層の表面に、アルミニウムを真空蒸着法によって物理蒸着し、アルミニウム薄膜(厚さ:8nm)からなる反射膜を形成した。
[0125] 反射膜の表面に、紫外線硬化性樹脂(大阪ガスケミカル社製、オグソール(登録商標)EA-F5003)100質量部に対し、光開始剤(BASF社製、イルガキュア(登録商標)907)を3質量部混合した溶液をダイコート法によって10μmの厚みに塗布し、紫外線硬化性樹脂の上に透明PETフィルム(厚さ:0.1mm)を重ねた。
1000mJの紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を硬化させて、第2の透明層を形成することによって、光散乱シートからなる例1の映像表示部を得た。
[0126] ソーダライムガラス板(松浪硝子社製、厚さ:3mm)、ポリビニルブチラール(以下、PVBと記す。)フィルム(Solutia社製 Saflex RK11l、厚さ:375μm)、例1の映像表示部、PVBフィルム(厚さ:375μm)、ソーダライムガラス板(厚さ:3mm)の順に積層し、真空加熱圧着を行い、例1の反射型の映像表示透明部材を得た。例1の映像表示透明部材の評価結果を表1に示す。
[0127] (例2)
例1の映像表示透明部材において、第2の透明基材として色つきガラス(旭硝子社製、<商品名>マイベール、厚さ:3mm、xyY表色系において、x=0.3069、y=0.3126、Y=28.54)を用いて、例2の反射型の映像表示透明部材を得た。例2の映像表示透明部材の評価結果を表1に示す。」

「[0134][表1]



「[図1]



(2)引用文献1の前記(1)の記載をまとめると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明>
「投影機200から投射され、第1の面Aから入射した映像光Lを散乱することによって結像し、前記投影機200と同じ側にいる観察者Xに映像として視認可能に表示でき、かつ、第1の面A側の光景を第2の面B側の観察者Yに視認可能に透過でき、かつ第2の面B側の光景を第1の面A側の観察者Xに視認可能に透過できる反射型の映像表示透明部材1であって([0058]、[0059]、図1)、
前記第1の面Aとは、前記映像表示透明部材の最表面であって、投影機200から映像光Lが投射される側の表面を意味し([0015])、
前記第2の面Bとは、前記映像表示透明部材の最表面であって、前記第1の面Aとは反対側の表面を意味し([0015])、
前記映像表示透明部材1は、第1の透明基材10と、第2の透明基材20との間に、映像表示部30が配置され、前記第2の透明基材20に光減衰成分が配合されて着色され、前記映像表示透明部材1を透過する光の一部を減衰させる光減衰層となっているものであり、前記第1の透明基材10と前記映像表示部30とは、接着層12によって接着され、前記第2の透明基材20と前記映像表示部30とは、接着層22によって接着されており([0017]、図1)、
前記映像表示部30は、第1の透明フィルム31と、前記第1の透明フィルム31の表面に設けられた、表面に不規則な凹凸構造を有する第1の透明層32と、前記第1の透明層32の凹凸構造側の面に沿うように形成され、入射した光の一部を透過する反射膜33と、前記反射膜33の表面を覆うように設けられた第2の透明層34と、前記第2の透明層34の表面に設けられた第2の透明フィルム35とを有する光散乱シートからなり([0033]、図1)、
積層順序は、第1の面Aから第2の面Bに向かって、第1の透明基材10、接着層12、第1の透明フィルム31、第1の透明層32、反射膜33、第2の透明層34、第2の透明フィルム35、接着層22、第2の透明基材20の順であり(図1)、
前記映像表示透明部材1の実施例である例2において([0122])、
前記第1の透明基材10は厚さ3mmのソーダライムガラス板であり([0126])、
前記第2の透明基材20は厚さ3mmの色つきガラスであり([0127])、
前記接着層12及び前記接着層22は、ともに厚さ375μmのポリビニルブチラールフィルムであり([0126])、
前記第1の透明フィルム31及び前記第2の透明フィルム35は、ともに厚さ0.1mmの透明なポリエチレンテレフタレートフィルムであり([0123]、[0125])、
前記第1の透明層32及び前記第2の透明層34は、ともに紫外線硬化性樹脂100質量部に対し、光開始剤を3質量部混合した溶液をダイコート法によって10μmの厚みに塗布して硬化させたものであり([0123]、[0125])、
前記反射膜33は、不規則な凹凸構造(算術平均粗さRa:0.23μm)が表面に転写された第1の透明層の表面に真空蒸着法によって物理蒸着された厚さ8nmのアルミニウム薄膜であり([0123]、[0124])、
透過率は5%であり、第1の面全反射率は19%であって([0134])、
透過率は、入射した光に対し、前方方向へ透過、散乱される光の合計の光量の比を百分率とした値であり([0015])、
反射率は、入射した光に対し、後方方向へ反射、散乱される光の合計の光量の比を百分率とした値である([0015])、
反射型の映像表示透明部材1。」

2 周知技術
(1)引用文献2
引用文献2には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。

「【0019】
〔A.投射システムの構造〕
図1に示すように、本実施形態の投射システム100は、スクリーン10と、プロジェクター50とを備える。
【0020】
プロジェクター50は、室内の床面側に固定された状態でスクリーン10に近接して設置されている。つまり、プロジェクター50による投射は、下側からの近接投射すなわち+Y方向に偏った-Z方向への極端な斜め投射となっている。
【0021】
スクリーン10は、図2に示すように、図中水平方向すなわちX方向を長手方向とし、垂直方向すなわちY方向を短手方向とする横長の長方形状を有する。スクリーン10は、その正面側すなわち略+Z側に設置されたプロジェクター50からの入射光PLを、折り返すことによって正面側すなわち略+Z側に反射光として射出させる反射型スクリーンである。より具体的に説明すると、図1に示すように、まず、スクリーン10の本体部分1は、表側すなわち+Z側の面として、表側面1aを有する。また、本体部分1は、裏側すなわち-Z側に、スクリーン10の裏側の外形形状を形成する凹凸形状部1bを有する。入射光PLは、スクリーン10ののうち本体部分1の表側面1aに向けて投射され、凹凸形状部1b上に設けた微細構造によって反射されることで、略+Z側にいる観察者EYに投影画像が提供される。つまり、表側面1aは、XY面に平行な主面であり、プロジェクター50から斜め上方に射出される入射光PLを画像投影するにあたっての基準面となっている。また、凹凸形状部1bは、本体部分1の裏側すなわち-Z側の面である凹凸形状面1bbを有し、凹凸形状面1bb上に入射光PLを反射させるための構造を有している。なお、表側面1aや凹凸形状部1bの形状等については、図3を用いて後述する。」

「【0023】
〔B.スクリーンの構造〕
以下、図2及び図3を参照して、スクリーン10の構造の詳細について説明する。まず、図2等に示すように、スクリーン10において、基板としての本体部分1は、横長の長方形状の外観を構成するシート状のフィルム部材である。また、既述のように、本体部分1は、表側にXY面に平行な表側面1aを有し、裏側に断面鋸歯状の凹凸形状部1bを有している。さらに、図3に示すように、本体部分1は、表側面1a上にこれを覆うように保護層20を付随させた状態で有している。
【0024】
また、スクリーン10は、本体部分1のほかに、光反射部PXと、光吸収膜BRとを備えている。光反射部PXは、本体部分1の裏面側すなわち凹凸形状部1b上に形成される微細構造であり、複数の光反射膜PPで構成されている。光吸収膜BRは、裏面の露出する凹凸形状部1b及び複数の光反射膜PPを裏側すなわち-Z側から覆っている。」

「【0026】
また、本体部分1の裏側すなわち-Z側の面である凹凸形状部1bにおいて、凹凸形状面1bbは、基準面である表側面1aの向きよりも下方すなわち-Y方向にそれぞれ傾いている傾斜面を含む複数の第1面である複数の第1傾斜面S1と、表側面1aよりも上方すなわち+Y方向にそれぞれ傾いている面を含む複数の第2面である複数の第2傾斜面S2とで構成されている。より具体的には、各傾斜面S1,S2が交互に連ねて配列された状態となっている。このように1つの傾斜面S1と1つの傾斜面S2とによる繰り返しの単位が並ぶことにより、各傾斜面S1,S2の配列された方向すなわちスクリーン10の中心軸LXに沿った方向の断面について上端から下端までの全体において断面鋸歯状の面を凹凸形状面1bbとして有する凹凸形状部1bが形成されている。第1傾斜面S1の表側面1aに対する傾斜角度αは、光反射膜PPの傾きすなわち複数の光反射面PSの傾きを決定する。傾斜角度αは、入射光PLの入射角βに応じて適宜調整されている。これにより、スクリーン10に入射する入射光PLは、略+Z側の方向に折り返されるものとなっている。
【0027】
光反射部PXを構成する複数の光反射膜PPは、両傾斜面S1,S2のうち第1傾斜面S1の各面上にアルミ蒸着等が施されることによって形成されている。複数の光反射膜PPの+Z側の面は、光を反射する複数の光反射面PSを構成している。つまり、各光反射膜PPと、対応する各第1傾斜面S1とが協働して、入射光PLを折り返すための複数の光反射面PSの各面が形成されている。さらに、傾斜面S2及び光反射膜PPは、黒色塗料等である光吸収膜BRによって裏側即ち-Z側から覆われている。つまり、光吸収膜BRは、傾斜面S2及び光反射膜PP上すなわち-Z側の面全体に形成され、スクリーン10の裏面側全体を光吸収材で覆われた状態にするものである。これにより、複数の光反射面PS間の露出部分である各傾斜面S2上において、光吸収膜BRは、入射した光を吸収する光吸収部ASとして機能する。」

「【0030】
以上のような構造を有することにより、スクリーン10は、下方すなわち-Y側から投射される入射光PLを反射して観察者EY側に向けて適宜拡散された状態の画像光として折り返すことができるものとなっている。また、スクリーン10は、天井側からの外光OL1や外部から室内に入り込む外光OL2の成分を観察者EY側に向かわせないようにこれらの成分の処理を可能にしている。」

「【0037】
〔その他〕
以上各実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0038】
まず、上記実施形態では、光反射膜PPがアルミ蒸着等により光を反射する鏡面である光反射面PSが形成されているものとしているが、光反射膜PPの表面が光を拡散させるための凹凸構造を有するものであってもよい。」

「【図1】



「【図3】



(2)引用文献3
引用文献3には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。

「【0015】
図1は本発明にかかる反射型スクリーン1(以下、スクリーン1と称する。)の使用形態の一例を示す模式図である。
投射光源(図示省略)を有する前面投射型表示装置(フロントプロジェクタ)2は、例えば、図1に示すように、スクリーン1の下端からさらに下方に設置されている。
即ち、前面投射型表示装置2の映像光(投射光)L0を出射する投射レンズ(図示省略)の投射系光軸K1が、スクリーン1の下方となっている。そして、前面投射型表示装置2から投射される映像光L0は、前面投射型表示装置2の投射系光軸K1を中心として放射線状に拡がってスクリーン1に到達するようになっている。言い換えれば、スクリーン1は前面投射型表示装置2の投射系光軸K1よりも上位に位置し、そのため、スクリーン1には映像光L0が下方から入射する。
【0016】
反射型スクリーン1のスクリーン面11は、断面が鋸刃状であるサーキュラーフレネルレンズ部12を備えている。
図2は、反射型スクリーン1の斜視図にサーキュラーフレネルレンズ部12の同心円Cを表す補助線を示したものである。
図3は、図2中のIII-III線における反射型スクリーン1の断面図である。
サーキュラーフレネルレンズ部12は、図2に示すようにその同心円中心Cがスクリーン1の外側に位置する。
そして、サーキュラフレネルのピッチは0.3mm以下とすることが好ましく、これにより、投射される映像の画素ピッチと干渉して発生するモアレを防ぐことができる。
【0017】
図4は、サーキュラーフレネルレンズ部12の断面を一部抜き出して拡大した模式図である。
サーキュラーフレネルレンズ部12は、図4に示されるように、その斜面に光反射面(121)と非反射面(122)とを有する。サーキュラーフレネルレンズ部12は、単位プリズム120の集合体であり、各単位プリズム120において同心円中心Cの側の斜面である第1斜面(フレネル面)121を光反射面とする。言い換えると、サーキュラーフレネルレンズ部12の鋸歯状単位プリズム120の観察面側斜面が第1斜面121として光反射面となっている。また、サーキュラーフレネルレンズ部12の各単位プリズム120において同心円中心Cと反対側の斜面である第2斜面(ライズ面)122は非反射面となっている。
【0018】
ここで、第1斜面(光反射面)121は略鏡面の反射層であっても良いし、微細な凹凸が形成された拡散反射層であっても良い。第1斜面(光反射面)121は凹曲面形状、凸曲面形状となるように形成することもできる。また、スパッタ、スピンコート、フォトレジストを利用したリフトオフなどによって第2斜面(非反射面)122に光吸収層を形成してもよい。
【0019】
図5は、照明9からの外光L_(1)と前面投射型表示装置(フロントプロジェクタ)2からの映像光L_(0)とについてその経路を示す図である。
図5に示されるように、前面投射型表示装置(フロントプロジェクタ)2からの映像光L_(0)は第1斜面121により観察者Mに向けて反射される一方、外光L_(1)は直接または第1斜面121を経由して第2斜面122に至る。すると、観察者Mには前面投射型表示装置2からの映像光L_(0)は入射し、外光L_(1)は入射しない。その結果、観察者Mにはコントラストの高い映像が観察される。」

「【0041】
前面投射型表示装置2とスクリーン1の配置および観視位置の汎用性を考慮すると、反射面である第1斜面121を微細な凹凸が形成された拡散反射層としたり、透明保護層内に光拡散材を混入するなどの視野角拡大処理をしてもよい。」

「【図1】



「【図4】



「【図5】



(3)周知技術の認定
ア 引用文献2の記載から、引用文献2には次の技術事項が開示されているといえる。
「反射型スクリーン10において、本体部分1は裏側に断面鋸歯状の凹凸形状部1bを有し(【0021】、【0023】)、
前記凹凸形状部1bにおける凹凸形状面1bbは、複数の第1傾斜面S1と複数の第2傾斜面S2とで構成され(【0026】)、
前記複数の第1傾斜面S1に複数の光反射膜PPが形成され、各光反射膜PPと対応する各第1傾斜面S1とが協働して入射光PLを折り返す構造により(【0027】)、
入射光PLは観察者EY側に向けて適宜拡散された状態の画像光として折り返し、天井側からの外光OL1や外部から室内に入り込む外光OL2の成分を観察者EY側に向かわせないようにすることであって(【0030】)、
前記光反射膜PPは鏡面であってもよく、前記光反射膜PPの表面が光を拡散させるための凹凸構造を有するものであってもよいこと(【0038】)。」

イ 引用文献3の記載から、引用文献3には次の技術事項が開示されているといえる。
「反射型スクリーン1のスクリーン面11は、断面が鋸刃状であるサーキュラーフレネルレンズ部12を備えており(【0016】)、
前記サーキュラーフレネルレンズ部12の鋸歯状単位プリズム120の観察面側斜面が第1斜面121として光反射面となっており、反対側の斜面である第2斜面122は非反射面となっていることで(【0017】)、
映像光L_(0)は第1斜面121により観察者Mに向けて反射される一方、外光L_(1)は観察者Mに入射しないようにすることであって(【0019】)、
前記第1斜面121は略鏡面の反射層であっても良いし、微細な凹凸が形成された拡散反射層であっても良いこと(【0018】、【0041】)。」

ウ 上記ア及びイの各技術事項を踏まえると、次の技術事項は周知技術であると認められる。

<周知技術>
「反射型スクリーンにおいて、スクリーン本体は断面鋸歯状の凹凸形状を有し、前記凹凸形状の単位形状は第1の面と第2の面からなり、前記第1の面は映像光を反射する反射層を有するように構成することで、映像光は観察者に向けて反射し、外光は観察者に向けて反射しないようにすることであって、前記反射層の表面は鏡面であってもよく、光を拡散する微細な凹凸構造であってもよいこと。」

第5 対比、一致点及び相違点の認定
1 対比
本願発明と引用発明を対比する。

(1)引用発明の「投影機200」、「映像光L」及び「反射型の映像表示透明部材1」は、それぞれ、本願発明の「映像源」、「映像光」及び「反射スクリーン」に相当する。そして、引用発明の「反射型の映像表示透明部材1」は、「第1の面A側の光景を第2の面B側の観察者Yに視認可能に透過でき、かつ第2の面B側の光景を第1の面A側の観察者Xに視認可能に透過できる」ものであるから、「半透過型」であるといえる。
よって、本願発明と引用発明は、「映像源から投射された映像光を反射して映像を表示する半透過型の反射スクリーン」である点で一致する。

(2)引用発明の「入射した光の一部を透過する反射膜33」は、本願発明の「入射した光の一部を反射し、その他を透過する半透過型の反射層」に相当する。

(3)引用発明の「積層順序は、第1の面Aから第2の面Bに向かって、第1の透明基材10、接着層12、第1の透明フィルム31、第1の透明層32、反射膜33、第2の透明層34、第2の透明フィルム35、接着層22、第2の透明基材20の順」であるところ、このうち、「第1の透明基材10」、「接着層12」、「第1の透明フィルム31」及び「第1の透明層32」は、いずれも「反射膜33」より「投影機200」側に設けられたものであるから、本願発明の「前記反射層の映像源側に」「設けられた」「映像源側層」に相当する。
そして、引用発明の「反射型の映像表示透明部材1」が全体として透明である以上、これらの層はいずれも光透過性を有するものである。
よって、引用発明の「第1の透明基材10」、「接着層12」、「第1の透明フィルム31」及び「第1の透明層32」からなる層は、本願発明の「前記反射層の映像源側に少なくとも1層設けられた光透過性を有する映像源側層」に相当する。

(4)引用発明の「第2の透明基材20」、「接着層22」、「第2の透明フィルム35」及び「第2の透明層34」は、いずれも「反射膜33」より「投影機200」とは反対側に設けられたものであるから、本願発明の「前記反射層の背面側に」「設けられた」「背面側層」に相当する。
そして、引用発明の「反射型の映像表示透明部材1」が全体として透明である以上、これらの層はいずれも光透過性を有するものである。
よって、引用発明の「第2の透明基材20」、「接着層22」、「第2の透明フィルム35」及び「第2の透明層34」からなる層は、本願発明の「前記反射層の背面側に少なくとも1層設けられた光透過性を有する背面側層」に相当する。

(5)引用発明において、「透過率は、入射した光に対し、前方方向へ透過、散乱される光の合計の光量の比を百分率とした値であり」、「反射率は、入射した光に対し、後方方向へ反射、散乱される光の合計の光量の比を百分率とした値である」ところ、散乱される光を含めた透過率及び反射率は、それぞれ、全光線透過率及び全光線反射率と呼ばれるものであり、全光線透過率と全光線反射率と吸収率の和は常に100%である。

(6)引用発明の「反射型の映像表示透明部材1」は、「透過率は5%であり、第1の面全反射率は19%である」ところ、その和は24%である。
そして、前記(5)の検討内容を踏まえると、「反射型の映像表示透明部材1」の光の吸収率は76%と算出される。

(7)引用文献1の表1に示された例1?4のうち、例2及び4は、第1の面A側の第1の透明基材と第2の面B側の第2の透明基材の材質が異なるため、第1の面Aに光が入射したときの反射率と第2の面Bに光が入射したときの反射率が同一ではなく、両者に区別が必要である。
この点を考慮すると、引用発明の「第1の面全反射率」という用語における「第1の面」との記載は、第2の面Bではなく第1の面Aに光が入射したときの反射率であることを明示するものであると認められる。

(8)引用発明において、「透過率」及び「第1の面全反射率」を測定する際の光の入射角について、引用文献1の[0015]には、それが0°であるとも斜めであるとも記載されていない。
しかしながら、ある部材の全光線透過率や全光線反射率を測定する場合、その表面にほぼ垂直に光を入射するのが通常であり、斜めに入射して測定するのであればその角度が明記されるのが普通である。また、入射角0°付近では、入射角の変化に応じて全光線透過率や全光線反射率が大きく変化することはなく、ほぼ一定であると認められる。
そうすると、引用発明において、「透過率」及び「第1の面全反射率」を測定する際の光の入射角は0°であるとして差し支えないことは自明である。

(9)前記(7)及び(8)の検討内容を踏まえると、引用発明において「透過率」及び「第1の面全反射率」は、「反射スクリーンのスクリーン面に映像源側から入射角0°で入射した光について」測定したものであると認められる。
そうすると、前記(6)の検討内容から、本願発明と引用発明は、「該反射スクリーンのスクリーン面に映像源側から入射角0°で入射した光について、その総量Spを100%としたとき、背面側へ透過した透過率Tp(%)と、前記反射層で反射して映像源側へ出射した反射率Rp(%)との和は、90%以下であり、該反射スクリーン内での光の吸収率Ap(%)は、10%以上」である点で一致するといえる。

(10)引用発明の「反射膜33」の「第2の面B」側の表面は、本願発明の「反射層の背面側の面」に相当し、引用発明の「反射膜33」の「第1の面A」側の表面は、本願発明の「反射層の映像源側の面」に相当する。
そうすると、引用発明において、「第1の透明基材10、接着層12、第1の透明フィルム31、第1の透明層32、反射膜33」で構成される領域は、「映像表示透明部材1」の厚み方向において、「第1の面A」から「反射膜33」の「第2の面B」側の表面までの領域を指すから、本願発明の「映像源側領域」に相当し、引用発明において、「反射膜33、第2の透明層34、第2の透明フィルム35、接着層22、第2の透明基材20」で構成される領域は、「映像表示透明部材1」の厚み方向において、「反射膜33」の「第1の面A」側の表面から「第2の面B」までの領域を指すから、本願発明の「背面側領域」に相当する。

(11)引用発明では、「接着層12」と「接着層22」、「第1の透明フィルム31」と「第2の透明フィルム35」、「第1の透明層32」と「第2の透明層34」が、それぞれ同じ材料及び厚さで形成されているから、スクリーン面に入射角0°で入射した光に対するそれぞれの光の吸収率に差はない。
そうすると、引用発明において、「第1の透明基材10、接着層12、第1の透明フィルム31、第1の透明層32、反射膜33」で構成される領域の光の吸収率と、「反射膜33、第2の透明層34、第2の透明フィルム35、接着層22、第2の透明基材20」で構成される領域の光の吸収率の大小関係は、「第1の透明基材10」と「第2の透明基材20」の光の吸収率の大小関係のみよって決まるものであるところ、「第1の透明基材10」は「厚さ3mmのソーダライムガラス板」であり、「第2の透明基材20」は「厚さ3mmの色つきガラス」であり「光減衰層」となっているから、「第1の透明基材10」の光の吸収率より「第2の透明基材20」の光の吸収率のほうが大きいことは自明である。

(12)前記(10)及び(11)の検討内容から、本願発明と引用発明は、「該反射スクリーンの厚み方向において、映像源側表面から前記反射層の背面側の面までを映像源側領域とし、前記反射層の映像源側の面から背面側表面までを背面側領域とするとき、該反射スクリーンのスクリーン面に背面側から入射角0°で入射した光に対する前記背面側領域の光の吸収率は、該反射スクリーンのスクリーン面に映像源側から入射角0°で入射した光に対する前記映像源側領域の光の吸収率よりも大きく」なっている点で一致するといえる。

(13)引用発明の「反射膜33」は、「不規則な凹凸構造(算術平均粗さRa:0.23μm)が表面に転写された第1の透明層の表面に真空蒸着法によって物理蒸着された」ものであるから、その表面にも不規則な凹凸構造が形成されていると認められる。そして、算術平均粗さRaが0.23μmである表面は、微細な凹凸構造であるといえる。
そうすると、本願発明と引用発明は、「前記反射層は、その表面に微細かつ不規則な凹凸形状が形成されている」点で共通する。

2 一致点及び相違点
前記1の対比の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(1)一致点
「 映像源から投射された映像光を反射して映像を表示する半透過型の反射スクリーンであって、
入射した光の一部を反射し、その他を透過する半透過型の反射層と、
前記反射層の映像源側に少なくとも1層設けられた光透過性を有する映像源側層と、
前記反射層の背面側に少なくとも1層設けられた光透過性を有する背面側層と、
を備え、
該反射スクリーンのスクリーン面に映像源側から入射角0°で入射した光について、その総量Spを100%としたとき、
背面側へ透過した透過率Tp(%)と、前記反射層で反射して映像源側へ出射した反射率Rp(%)との和は、90%以下であり、
該反射スクリーン内での光の吸収率Ap(%)は、10%以上であり、
該反射スクリーンの厚み方向において、映像源側表面から前記反射層の背面側の面までを映像源側領域とし、前記反射層の映像源側の面から背面側表面までを背面側領域とするとき、該反射スクリーンのスクリーン面に背面側から入射角0°で入射した光に対する前記背面側領域の光の吸収率は、該反射スクリーンのスクリーン面に映像源側から入射角0°で入射した光に対する前記映像源側領域の光の吸収率よりも大きく、
前記反射層は、その表面に微細かつ不規則な凹凸形状が形成されている、
反射スクリーン。」

(2)相違点
本願発明は、「前記映像源側層は、光透過性を有し、背面側の面に単位光学形状が複数配列された光学形状層を有し、前記単位光学形状は、映像光が入射する第1の面と、これに対向する第2の面とを有し、前記反射層は、前記単位光学形状の少なくとも第1の面の一部に形成されて」いるのに対して、引用発明は、そのような構成を有しない点。

第6 判断
1 相違点について
「反射型スクリーンにおいて、スクリーン本体は断面鋸歯状の凹凸形状を有し、前記凹凸形状の単位形状は第1の面と第2の面からなり、前記第1の面は映像光を反射する反射層を有するように構成することで、映像光は観察者に向けて反射し、外光は観察者に向けて反射しないようにすることであって、前記反射層の表面は鏡面であってもよく、光を拡散する微細な凹凸構造であってもよいこと」は、周知技術である(前記第4の2(3))。
引用発明は、投影機200から投射された映像光Lを反射膜33の表面で拡散反射して投影機200と同じ側にいる観察者Xに映像として視認可能に表示できるようにするものであるところ、映像光Lのみが観察者Xに向かって反射するように構成することを目的として、反射型スクリーンにおける前記周知技術を適用する動機を当業者は有していたというべきである。
そして、引用発明に前記周知技術を適用する場合、第1の透明層32に断面鋸歯状の凹凸形状を形成して、その表面に反射膜33を蒸着して形成するのが最も自然な態様である。また、引用発明は、反射膜33の表面に微細かつ不規則な凹凸構造を設け、拡散反射が生じるようにしたものであるから、前記周知技術を適用する際に、反射膜33の表面をわざわざ鏡面とすることはあり得ず、微細かつ不規則な凹凸構造は設けたままとするのが通常である。
したがって、引用発明に対して周知技術を適用し、引用発明が相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

2 作用効果について
本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術から予測されるものを超える格別顕著なものであるとは認めることができない。

3 請求人の主張について
(1)請求人は審判請求書において、次のとおり主張している。

(審判請求書9ページ3?14行)
「しかし、本願請求項1の発明は、上記発明特定事項1、2の双方を併せ持つ構成となっております。この構成によって、引用文献1に開示されている凹凸構造によって得られる効果と、引用文献2-3の構成によって得られる効果とを合わせて発揮される効果以上の、極めて優れた効果を発揮することができます。
すなわち、「本実施形態のスクリーン10では、反射層13の表面が微細かつ不規則な凹凸形状を有する粗面になっている以外は、拡散作用を有しないので、映像光は反射時のみ拡散される。また、本実施形態のスクリーン10では、反射層13で反射する光のみが拡散され、透過光は拡散されない。したがって、本実施形態のスクリーン10は、良好な視野角及び解像度を有する映像を表示でき、かつ、スクリーン10の向こう側の景色が白くにじんだり、ぼけたりすることがなく観察者O1に良好に視認され、高い透明性を実現できる。」(本願明細書の段落番号[0051])という極めて優れた効果を発揮することができます。」

しかしながら、請求人が本願明細書の【0051】から摘記して主張する本願発明の効果は、反射層の表面が微細かつ不規則な凹凸形状を有する粗面であり、ほかの層に拡散粒子を含まないという構成によって得られるものであって、発明特定事項1、2の双方を併せ持つ構成によって得られる相乗効果というべきものではない。また、そもそも、ほかの層に拡散粒子を含まないという構成は、本願発明において特定されていない。
よって、請求人の主張は採用することができない。

(2)請求人は審判請求書において、次のとおり主張している。

(審判請求書10ページ5行?11ページ1行)
「しかし、引用文献1の構成では、映像光が凹凸構造を有する反射膜33において不規則に拡散反射するだけであって、映像光を適切な観察位置へ向かって集める作用は有りません。本願請求項1の発明は、「前記映像源側層は、光透過性を有し、背面側の面に単位光学形状が複数配列された光学形状層を有し、前記単位光学形状は、映像光が入射する第1の面と、これに対向する第2の面とを有し、前記反射層は、前記単位光学形状の少なくとも第1の面の一部に形成されており」という構成をさらに備えております。この構成によって、本願請求項1の発明は、映像光を効率よく観察位置へ向けて集める方向に向けて反射しつつ、「前記反射層は、その表面に微細かつ不規則な凹凸形状が形成されていること」によって適度な拡散反射とすることにより、映像光の視認を可能としております。そのうえで、この凹凸形状は、背景を拡散させる作用がありません。
また、引用文献1の構成では、映像光がスクリーン面の表面で鏡面反射した光(映像としては視認できない表面反射光)が最も明るく観察される観察される位置と、映像光が最も明るく観察可能である位置とが、同じ位置となります。よって、映像光が明るく見える位置では、表面反射光によって映像のコントラストが低下します。そのため、引用文献1の構成は、映像光を効率よく利用しながらコントラストの高い映像を得ることが困難な構成であります。
これに対して本願の構成では、図6及び段落番号[0046]から[0049]に記載されていますように、第1の面(第1斜面)を設けることによって、外光が観察者へ向かうことを抑制し、コントラストの低下を抑制しております。例えば、図6中で上方から入射する外光G1は、第1の面で反射しても外光G3又はG8のように進むことから、観察者には到達せず、外光によるコントラストの低下を抑制しております。」

しかしながら、前記第6の1で説示したとおり、引用発明に対して周知技術を適用し、「前記映像源側層は、光透過性を有し、背面側の面に単位光学形状が複数配列された光学形状層を有し、前記単位光学形状は、映像光が入射する第1の面と、これに対向する第2の面とを有し、前記反射層は、前記単位光学形状の少なくとも第1の面の一部に形成されており」という構成を備えるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、「映像光を効率よく利用しながらコントラストの高い映像を得る」という効果や、「外光が観察者へ向かうことを抑制し、コントラストの低下を抑制」するという効果は、引用文献2の【0030】及び引用文献3の【0019】に記載されたものであるから、引用発明に対して周知技術を適用することで、このような効果が得られることは、当業者にとって予測可能である。
よって、請求人の主張は採用することができない。

(3)請求人は審判請求書において、次のとおり主張している。

(審判請求書11ページ2?11行)
「審査官殿は、このような多様な機能を実現する本願構成が、引用文献を組み合わせることにより容易にできるかのようにご指摘されております。しかし、引用文献1の構成は、単なる拡散反射のみの構成であります。そして、引用文献1において光減衰層を設ける目的は、背景をよく見えるようにすることであります。これに対して、本願請求項1の「スクリーン面に背面側から入射角0°で入射した光に対する前記背面側領域の光の吸収率は、該反射スクリーンのスクリーン面に映像源側から入射角0°で入射した光に対する前記映像源側領域の光の吸収率よりも大きく、」する構成は、投影された映像そのもののコントラストを向上する目的で設けられております。すなわち、引用文献1の本願請求項1とでは、光を吸収する構成の目的が全く異なっております。」

しかしながら、本願発明において、背面側領域の光の吸収率を映像源側領域の光の吸収率よりも大きくする目的は、本願明細書の【0052】によると「コントラストの高い映像を表示」することであり、引用発明において、第2の透明基材20を光減衰層とする目的は、引用文献1の[0061]によると「映像のコントラストが向上し、その視認性に優れる」ようにすることであるから、本願発明と引用発明の間で、光を吸収する構成の目的は異ならない。
よって、請求人の主張は採用することができない。

(4)請求人は審判請求書において、次のとおり主張している。

(審判請求書11ページ12?20行)
「また、引用文献2の構成は、光反射膜が光透過性を備えておらず、背景が見える形態のものではありません。その上、引用文献2の構成は、本体部分1が拡散特性を内在しておりますから、仮にこの構成を本願のような半透過の反射スクリーンに適用する場合には、背景がぼやけて見えてしまうことは明らかであります。このような基本的に適用不可能な構成の引用文献2の構成を引用文献1と組み合わせてみても、通常の組み合わせ方であれば、本願の第1光学形状層12が拡散特性を内在する形態となります。審査官殿が引用文献を組み合わせれば容易に本願の構成に到達するとお考えになるのは、本願の構成を知得した後に引用文献を参照したからであって、事後分析的かつ非論理的思考であると考えます。」

しかしながら、前記第4の2(3)で説示したとおり、引用文献2及び3に記載の技術事項から認定した周知技術は、反射型スクリーンにおける反射層の構造に関するものであって、反射層以外の層における拡散特性の有無は、前記周知技術と無関係である。
よって、請求人の主張は採用することができない。

(5)請求人は審判請求書において、次のとおり主張している。

(審判請求書11ページ21行?12ページ19行)
「さらに、本願請求項1の発明の構成では、「第1の面」で映像光を効率よく所定の向きに反射することができる反面、本来の映像光の反射には不要な「第2の面」を構成せざるを得ません。そしてこの「第2の面」は、背面側から入射する不要な外光を拡散反射させてしまう作用(デメリットとしての作用)を持っております。
例えば、参考図に示した背面側からの外光G100は、反射層13を第1の面で一度通過(第1の面の裏面でも拡散反射しますが、これについては図示を省略)した後に、第2の面において再度反射層13に到達します。この第2の面において反射する光は、拡散反射してしまいます。この拡散反射光は、観察者O1側から見て、その付近で白っぽくぼけたように観察され、映像光の観察を阻害してしまいます。なお、このような不利な点は、引用文献1の構成にはありません。
本願請求項1の発明は、「該反射スクリーンのスクリーン面に背面側から入射角0°で入射した光に対する前記背面側領域の光の吸収率は、該反射スクリーンのスクリーン面に映像源側から入射角0°で入射した光に対する前記映像源側領域の光の吸収率よりも大きく、」なっております。これにより、上述した背面側からの外光G100のような光を、効果的に吸収することができます。参考図で説明しますと、保護層15の光吸収性によって、背面側からの外光を効果的に吸収しますので、外光によって映像光の観察が阻害されてしまうことを抑制できます。
このような本願特有の優れた効果が得られることについて、引用文献には、何ら記載されておらず、その示唆もなく、本願請求項1の構成は、当業者といえども、容易になしうるものではありません。
しかも、本願発明は、上述した極めて優れた効果を発揮することができます。本願発明のこの効果は、前記構成を採用することによる格別のものであって、引用文献に記載された発明から予測されるものではなく、進歩性があります。」

(参考図)




しかしながら、引用文献1の[0061]には、「また、この例の反射型の映像表示透明部材1では、映像表示透明部材1の第2の面B側から入射する光の一部が光減衰層である第2の透明基材20で吸収されるため、観察者Xから見て投影機200から投射された映像光による映像のコントラストが向上し、その視認性に優れる。」と記載されているから、「背面側からの外光G100のような光を、効果的に吸収する」という請求人が主張する効果は、引用発明から予測可能である。
よって、請求人の主張は採用することができない。

4 判断のまとめ
前記1?3で示したとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。


 
審理終結日 2021-04-19 
結審通知日 2021-04-20 
審決日 2021-05-06 
出願番号 特願2016-42374(P2016-42374)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石本 努  
特許庁審判長 居島 一仁
特許庁審判官 岸 智史
濱野 隆
発明の名称 反射スクリーン、映像表示装置  
代理人 芝 哲央  
代理人 正林 真之  
代理人 林 一好  

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