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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1375549
審判番号 不服2020-15399  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-06 
確定日 2021-07-13 
事件の表示 特願2019- 29671「プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月31日出願公開、特開2020-135541、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成31年2月21日の特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 2年 2月28日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 4月30日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 9月15日付け:拒絶査定
令和 2年11月 6日 :審判請求書の提出


第2 原査定の拒絶理由の概要
原査定(令和2年9月15日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1、2に係る発明は、以下の引用例1、4?6に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.「ebook・電子ブック・電子書籍作成ソフトならActiBook」,インターネット(Internet Archive),スターティアラボ株式会社,2015年4月20日,[取得日2020年2月27日],URL,
,
,
,
,

4.特開2017-211781号公報
5.特開2010-250795号公報
6.特開2017-168144号公報


第3 本願発明
本願の請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明3」という。)は、令和2年4月30日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される発明であって、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
プロセッサによって実行されるプログラムであって、
前記プロセッサに、
外部装置から紙媒体のコンテンツを掲載するウェブサイトのログデータを取得させ、
前記ログデータに基づいて、前記ウェブサイトのアクセスに関するレポートを生成させ、
前記レポートに基づく情報を外部装置に出力させ、
前記レポートは、前記ウェブサイトが前記紙媒体での体裁と同様の体裁で前記コンテンツを提供することに関連する項目を備え、前記レポートは、前記コンテンツの読了率を含む、
プログラム」

なお、本願発明2及び3は、本願発明1を減縮した発明である。


第4 引用例、引用発明等
1 引用例1
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1(「ebook・電子ブック・電子書籍作成ソフトならActiBook」,インターネット(Internet Archive),スターティアラボ株式会社,2015年4月20日)には、次の事項が記載されている。(下線は、当審が付与した。以下同じ。)
なお、以下では、
を「A」、
を「B」、
を「C」、
を「D」、および、
を「E」を表記する。

(1)「ebook・電子ブック制作ソフト「ActiBook(アクティブック)」は、PC/HTML5/iPhone/iPad/Android/Windowsアプリ搭載のスマートフォンやタブレット端末に対応した電子ブックデータが、冊子印刷物の体裁のまま一度の操作で制作できるワンオーサリング/マルチデバイスが特徴です。
約2100社の導入実績を誇る実績を持つActiBookシリーズが2013年、またパワーアップしました。
新しくリリースされた「ActiBook」には、新たにオーサリングソフトと連携して電子ブックの配信や管理ができるクラウド型「ActiBookManager2」とマルチデバイスでヒートマップ式ログ解析ができる「ActiBookAnalytics」がパッケージ化されました。」(Aの1/4頁)

(2)「ActiBookでCLMを実現。
CLMとはクローズドループマーケティングの略で様々な顧客接点のログを収集分析し、ソリューションやサービスの改善につなげるというマーケティング概念です。
アメリカを発端として今後様々な分野に広がっていくことが見込まれており、当社がこれを独自に研究し、電子ブックに特化して発展させてきました。
Webサイトやタブレット端末で閲覧・利用されたログ情報を解析し、顧客動向を掴んでより良いコンテンツ作りに活かし、問い合わせや閲覧率を向上することが可能になります。
情報を利益に変えるソリューション、それがActiBookなのです。」(Aの2/4頁)

(3)「

」(Aの2/4頁)

(4)「ActiBookはebook・電子ブック作成ソフトです。
ebookは電子ブックやデジタルカタログ、デジタルブックなど様々な名称で呼ばれています。
ですが、すべてに共通するのは「今まで見慣れている本の見え方をWebの世界でも実現する」というコンセプトにより生まれてきたWeb上の表現手法の一つだということです。
パソコンや携帯電話から、実際の本と同様のイメージで閲覧することが可能です。
現在では、コミックや雑誌、カタログ、パンフレットをWeb上で閲覧できるようにし、サイトへの集客をうながす目的などに多く利用されています。
また紙媒体の電子化によるコスト削減や新しいマーケティングツールとして使用されたり、社内文書管理用や、営業のデモンストレーション用、マニュアルの電子化、紙のデータを2次利用することで郵送費やWeb作成の手間・コストを削減できるといったように、様々な形で利用され始めてきています。」(Bの1/3頁)

(5)「ActiBookは、オーサリングソフトと連携して電子ブックの配信や管理ができるクラウド型「ActiBookManager2」とマルチデバイスでヒートマップ式ログ解析ができる「ActiBookAnalytics」が新たにパッケージ化されました。
これにより、電子ブックの公開と効果測定、そして電子ブックの改善が容易になります。」(Bの1/3頁)

(6)「ActiBookでCLMを実現
CLMとはクローズドループマーケティングの略で様々な顧客接点のログを収集分析し、ソリューションやサービスの改善につなげるというマーケティング概念です。
アメリカを発端として今後様々な分野に広がっていくことが見込まれており、当社がこれを独自に研究し、電子ブックに特化して発展させてきました。
Webサイトやタブレット端末で閲覧・利用されたログ情報を解析し、顧客動向を掴んでより良いコンテンツ作りに活かし、問い合わせや閲覧率を向上することが可能になります。
例えば印刷会社においては顧客に対して出版物やカタログのアクセス解析結果を元にしたデザイン、レイアウトの改善提案を行うなどや、店舗や拠点が多い企業においてはマニュアルやパンフレットが各スタッフにどの程度、どの部分が読まれているかを確認し、内容の見直しを逐次行うことなど、多様な業種へ様々な切り口の提案が行える様になります。
情報を利益に変えるソリューション、それがActiBookなのです。」(Bの2/3頁)

(7)「ヒートマップログ解析
ヒートマップ式ログ解析ツール「ActiBook Analytics」
ActiBook Custom、Cloud Suite、SaaSにて作成した電子ブックデータに対して、直感的にアクセスログ解析することが出来るソフトウェアです。
(上記契約者はサポートサイトから無償でダウンロード/インストールすることが可能です)
直感的な解析を実現するため「ヒートマップ※」で解析結果が表現されることに大きな特徴があります。
他にも『電子ブック上ではどんなキーワードが検索されているのか?』
『どのデバイス(PC/iPhone/iPad/Android)で良く閲覧されているのか?』
『どの様なブックが一番滞在時間が長い(じっくり読まれている)のか?』
という様な分析も一覧で分かりやすく表示され、レポート出力を行うことも可能です。
さらに、ActiBook Manager2と連携させることで「誰が、いつ、どのブックを、どのように見たか?」まで詳細な個別分析も実現可能です。」(Cの1/1頁)

(8)「ヒートマップログ解析
管理画面
ヒートマップ式ログ解析ツール「ActiBook Analytics(アクティブックアナリティクス)」とは、Google Analyticsに蓄積された、ActiBookの閲覧ログを取得・解析する事ができるアプリケーションです。
ページ毎の閲覧数、拡大数、検索を行った回数、リンクが押下された回数などの情報を視覚的に把握することができます。
ActiBook Analyticsの大きな特徴として、「ヒートマップ」型の解析結果表示を行う機能があります。
紙面の拡大数が多い部分(よく見られている部分)が赤色に、拡大回数が少ない部分が青色から無色に表現され、カタログやパンフレット等にある、どの商品に関心が高いかを視覚的に捉えることができます。
ここでは、「ActiBook Analytics」の機能一覧をご紹介いたします。」(Dの1/2頁)

(9)「

」(Dの1/2頁)

(10)「ブック一覧 分析対象ブック登録(CSVインポート/エクスポート可)
ブック一覧 分析対象削除(一括設定可)
ブック一覧 分析対象期間設定
ブック一覧 分析対象ブックタイトル検索
ブック一覧 対象期間内アクセス合計回数表示
ブック一覧 最終閲覧日時表示
ブック一覧 ログデータの更新日時表示
ブック一覧 対象期間内平均滞在時間表示
ブック分析 分析対象期間設定
ブック分析 対象期間内ページビュー合計回数表示
ブック分析 閲覧デバイス別分析(ALL/PC/iPhone/iPad/Android)
ブック分析 ヒートマップ表示(該当ページ上の閲覧傾向に応じて色が変化)
ブック分析 ページ別閲覧傾向グラフ表示(ページビュー数/拡大回数)
ブック分析 対象期間中閲覧傾向推移グラフ表示(ページビュー数、拡大回数、検索回数、リンククリック回数)
ブック分析 対象期間中ランキング表示(ページビュー数、拡大回数、検索回数、リンククリック回数)
ブック分析 レポート出力(ヒートマップ情報も含めたPDF形式/CSV形式)
グループ分析 分析対象期間設定
グループ分析 グループ合計アクセス回数表示
グループ分析 グループ合計閲覧ブック数表示
グループ分析 グループ合計滞在時間表示
グループ分析 グループ平均滞在時間表示
グループ分析 グループ内所属ユーザ数表示
グループ分析 グループ内所属ユーザ閲覧状況表示
グループ分析 グループ内ブック閲覧ランキング表示
グループ分析 指定ブックの閲覧者ランキング表示
グループ分析 グループ別ブック分析
ユーザー分析 分析対象期間設定
ユーザー分析 ユーザー別合計アクセス回数表示
ユーザー分析 ユーザー別閲覧ブック数表示
ユーザー分析 ユーザー別最終閲覧日時表示
ユーザー分析 ユーザー別合計滞在時間表示
ユーザー分析 ユーザー別平均滞在時間表示
ユーザー分析 ユーザー別ブックの閲覧履歴表示
ユーザー分析 ユーザー別ブック分析
環境設定 同期するActiBook Manager2の設定
環境設定 最新のログ情報の取得」(Dの1/2頁?2/2頁)

(11)「ビューアソフト
HTML5ビューア
Flashがインストールできないスマートフォンやタブレット端末でアプリをダウンロードせずにスピーディにブラウザのみで電子ブックを閲覧できるHTML5ビューアにも対応しています。但し機能制限がありますので状況に応じたアプリとの併用が効果を発揮します。
例えば、ポータルサイトでの利用や、海外の取引先に紙の情報をリアルタイムで送りたいときにHTML5が良く利用されます。」(Eの1/1頁)

(12)「

」(Eの1/1頁)

以上の記載によれば、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「冊子印刷物の体裁のまま一度の操作で電子ブックデータを制作でき((1)、(4))、
ページ別閲覧傾向グラフ表示(ページビュー数/拡大回数)、対象期間中閲覧傾向推移グラフ表示(ページビュー数、拡大回数、検索回数、リンククリック回数)、対象期間中ランキング表示(ページビュー数、拡大回数、検索回数、リンククリック回数)、レポート出力(ヒートマップ情報も含めたPDF形式/CSV形式)を行うブック分析の機能を有し((10))、
Webサイトやタブレット端末で閲覧・利用されたログ情報である、Google Analyticsに蓄積された、ActiBookの閲覧ログを取得・解析し、ページ毎の閲覧数、拡大数、検索を行った回数、リンクが押下された回数などの情報を視覚的に把握し、例えば印刷会社においては顧客に対して出版物やカタログのアクセス解析結果を元にしたデザイン、レイアウトの改善提案を行うことができる((2)、(6)、(8))
ebook・電子ブック作成ソフトActiBook((1)、(4))」

2 引用例4
原査定の拒絶の理由で引用された引用例4(特開2017-211781号公報)には、次の事項が記載されている。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、Webページを解析して評価を行う評価装置、評価方法および評価プログラムと、当該評価に基づいてレコメンドを行うレコメンド装置、レコメンド方法およびレコメンドプログラムに関する。」

(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的なアクセス解析は、自社のWebサイトの最適化のために利用されている。一方、クライアントのWebサイトに記事を販売・提供するビジネスモデルの場合、複数のWebサイトに掲載されているコンテンツに対してアクセス解析を行い、当該アクセス解析の結果を利用したい要望がある。
【0006】
本発明では、複数のWebサイトに掲載されているコンテンツに対するアクセス解析の結果を利用して、ライターの評価分析を行うことができる評価装置、評価方法および評価プログラムと、当該評価分析に基づいてライターのレコメンドを行うことができるレコメンド装置、レコメンド方法およびレコメンドプログラムを提供することを目的とする。」

(3)「【0030】
評価装置1は、図1に示すように、収集部10と、第1解析部11と、パフォーマンスデータ生成部12と、第2解析部13と、記事特性特定部14と、関連付け部15と、評価部16と、記事DB17と、ライターDB18とを備える。また、レコメンド装置1は、図1に示すように、評価装置1の各構成要素を含み、サイト特性特定部21と、推薦部22とを備える。
【0031】
収集部10は、クローラー機能により、各メディアにアクセスし、第1情報が埋め込まれている記事を収集し、収集した記事を記事DB17に保存する。
【0032】
ライターDB18には、ライターの情報(以下、ライター情報という)が保存されている。ライター情報には、ライターの氏名や経歴、および、過去に執筆した記事に関する情報により構成されている。
【0033】
第1解析部11は、メディアにおいて第1情報が埋め込まれている記事を記事DB17から読み出し、読み出した記事のアクセス状況を解析する。
【0034】
第1情報とは、Webページに組み込むことにより、パフォーマンスデータ、ユーザの行動履歴データ、および、第三者が提供するソーシャルブックマーキングでのSNSのシェア数またはフォロー数を取得するための情報(HTMLタグ)である。また、第1情報は、作成したライターや日付等の書誌的事項を関連付けるための役割も果たす。
【0035】
パフォーマンスデータ生成部12は、第1解析部11の解析結果に基づいて、記事のパフォーマンスデータを生成する。第1解析部11の解析結果とは、第1情報が埋め込まれている記事に対するアクセスログのデータのことである。アクセスログには、例えば、誰がいつどの記事にアクセスしたかを示す情報、リンク元のページを示すリファラ情報、アクセス時に利用したデバイスの情報などが含まれている。
【0036】
パフォーマンスデータは、少なくとも、ライターにより執筆された記事の製作本数の情報、記事の読了率の情報、記事の閲覧時間の情報、記事の閲覧回数の情報、SNSのシェア数の情報、SNSのフォロー数の情報のうち、一または複数の情報により構成されている。なお、パフォーマンスデータは、上述に限られず、第1解析部11の解析結果に基づいて得られる他の情報も含まれる。また、パフォーマンスデータは、上述以外に、ユーザの興味嗜好情報(インタレスト)や、記事データを変換したオーディエンスデータなどの情報が含まれている。」

(4)「【0040】
評価部16は、パフォーマンスデータに基づいて、ライターの評価を行う。例えば、評価部16は、パフォーマンスデータに基づいてライターのランキングを記事の特性ごとに行う。なお、評価部16は、パフォーマンスデータの情報ごとにライターのランキングを行ってもよい。また、評価部16により評価された結果は、評価部16または関連付け部15によって、パフォーマンスデータと記事の特性が関連付けられているライター情報に関連付けられる。
【0041】
評価装置1は、例えば、図2に示すように、記事の特性を示す情報(図2中の「記事の特性」)、記事の訪問者の総数を示す情報(図2中の「訪問者数」)、記事の平均的な滞在時間を示す情報(図2中の「平均滞在時間」)、記事の平均的な読了率を示す情報(図2中の「平均読了率」)、SNSのシェア数を示す情報(図2中の「シェア回数」)、SNSのフォロー数を示す情報(図2中の「フォロー回数」)などの評価分析をライターごとに作成する。なお、図2に示す例では、ライターAがスポーツ系の記事とトラベル系の記事などを執筆していることを示している。このようにして、評価装置1は、複数のメディアに掲載されている記事に対するアクセス解析の結果を利用して、ライターの評価分析を行うことができる。」

以上の記載によれば、引用例4には、次の技術事項が記載されている。

「Webページを解析して評価を行う評価プログラムにおいて(【0001】)、
複数のWebサイトに掲載されているコンテンツに対するアクセス解析の結果を利用して、ライターの評価分析を行うことができる評価プログラムを提供することを目的として(【0006】)、
第1解析部において、パフォーマンスデータ、ユーザの行動履歴データ、および、第三者が提供するソーシャルブックマーキングでのSNSのシェア数またはフォロー数を取得するための情報(HTMLタグ)である第1情報が埋め込まれている記事を記事DBから読み出し、読み出した記事のアクセス状況を解析し(【0033】、【0034】)、
第1情報が埋め込まれている記事に対するアクセスログのデータである、第1解析部の解析結果に基づいて、記事のパフォーマンスデータを生成し(【0035】)、
パフォーマンスデータに基づいて、記事の特性を示す情報、記事の訪問者の総数を示す情報、記事の平均的な滞在時間を示す情報、記事の平均的な読了率を示す情報、SNSのシェア数を示す情報、SNSのフォロー数を示す情報などの評価分析をライターごとに作成すること(【0040】、【0041】)。」

3 引用例5
原査定の拒絶の理由で引用された引用例5(特開2010-250795号公報)には、次の事項が記載されている。

(1)「【請求項9】
請求項7又は8に記載の精読率計測装置において、
前記ウェブページの末部を示す前記範囲に対応する前記閲覧数である読了数、及び前記ウェブページの冒頭部における前記閲覧数に対する前記読了数の比率である読了率の少なくとも一方を計測する読了情報計測部を備える精読率計測装置。」

(2)「【請求項12】
請求項10又は11記載の精読率計測装置において、
前記ウェブページの末部を示す前記範囲に対応する前記ユニークユーザ数である読了数、及び前記ウェブページの冒頭部の前記ユニークユーザ数に対する前記読了数の比率である読了率の少なくとも一方を計測する読了情報計測部を備える精読率計測装置。」

(3)「【背景技術】
【0002】
近年、インターネット上のウェブページを介して情報を発信することが増えている。例えば特許文献1には、ウェブページを介して商品の販売を行う、いわゆるインターネットショッピングのためのシステムが開示されている。
特開2008-112381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一つのウェブページが長い場合、クライアント端末で一つのウェブページを一回で表示しきれない。このような場合、クライアント端末のユーザは、ウェブページの全体を見るためには画面をスクロールする必要がある。しかしユーザによっては、ウェブページの全体を見ないで、途中でウェブページを閉じることがある。このため、ウェブページのうちどの部分でユーザが見るのを止めたか、すなわちクライアント端末においてウェブページがどの範囲まで表示されたかを把握できるようにするのが好ましい。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、クライアント端末においてウェブページが全範囲のうちどの範囲まで表示されたかを示す精読率を計測することができる精読率計測装置、クライアント端末、精読率計測システム、精読率計測方法、及びプログラムを提供することにある。」

(4)「【0039】
読了情報計測部560は、ウェブページが最後まで閲覧された回数を計測する。また読了情報計測部560は、ウェブページの冒頭部に対応する閲覧数(すなわち閲覧数の初期値であり、ウェブページの冒頭が表示された回数)に対する、ウェブページが最後まで閲覧された回数の比率を示す読了率を計測する。具体的には、読了情報計測部560は、100%の精読率に対応する閲覧数である読了数を、ウェブページが最後まで閲覧された回数とする。」

(5)「【0045】
また読了情報計測部560は、ウェブページを最後まで閲覧した人の数(すなわちクライアント端末300の数)を計測する。具体的には、読了情報計測部560は、100%の精読率に対応するユニークユーザ数を、ウェブページが最後まで閲覧した人の数(読了数)とする。また読了情報計測部560は、ウェブページの冒頭部に対応するユニークユーザ数(すなわちユニークユーザ数の初期値であり、ウェブページの冒頭を閲覧した人の数)に対する、100%の精読率に対応するユニークユーザ数の比率(すなわち上記した継続閲覧率)を読了率として算出する。」

(6)「【0054】
そして、精読率が100%に対応する閲覧数及びユニークユーザ数が読了数に対応しており、精読率が100%に対応する閲覧数に基づく継続閲覧率及びユニークユーザ数に基づく継続閲覧率が読了率に対応している。読了情報計測部560は、例えば精読率が100%に対応して記憶している情報を閲覧数記憶部530から読み出すことにより、読了数及び読了率を計測する。」

以上の記載によれば、引用例5には、次の技術事項が記載されている。

「クライアント端末においてウェブページが全範囲のうちどの範囲まで表示されたかを示す精読率を計測することができるプログラムにおいて(【0004】)、
ウェブページの冒頭部に対応する閲覧数に対する、ウェブページが最後まで閲覧された回数の比率を示す読了率を計測(【請求項9】、【0039】)、又は、ウェブページの冒頭部に対応するユニークユーザ数に対する、100%の精読率に対応するユニークユーザ数の比率を読了率として算出(【請求項12】、【0045】)すること。」

4 引用例6
原査定の拒絶の理由で引用された引用例6(特開2017-168144号公報)には、次の事項が記載されている。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムに関する。」

(2)「【0017】
〔2.情報処理の一例〕
図2は、実施形態に係る情報処理の一例を示す図(1)である。図2では、ユーザ端末10が、コンテンツ配信サーバ30から配信された記事C11を含むウェブページW10を出力部13(例えば、液晶ディスプレイ等)に表示している状態を示している。例えば、ユーザ端末10は、ブラウザソフトウェアを利用して、ウェブページW10を出力部13に表示する。図2に示すように、記事C11は、画像P11や、テキストT11等を組み合わせて構成されるコンテンツである。図1に示すように、記事C11は、ウェブページW10の一部分のカラムに表示され、ウェブページW10を構成する。
【0018】
なお、図2に示すように、ウェブページW10は、出力部13より大きな領域を有するため、出力部13の一画面では表示できないものとする。このため、ユーザは、図2では表示されていないウェブページW10の下部分を出力部13に表示させる場合には、スクロールバー40を用いて、出力部13に表示させる部分を調整する。
【0019】
情報処理装置100は、図2に示すような、ユーザ端末10に記事C11が表示されている表示状況を取得する。例えば、情報処理装置100は、ウェブページW10に埋め込まれる所定のスクリプト等を利用して、ユーザ端末10の表示状況を情報処理装置100に送信させる。このようなスクリプトは、例えば、JAVAscript(登録商標)等を用いて作成される。
【0020】
具体的には、情報処理装置100は、表示状況として、ユーザ端末10に記事C11が表示されている表示時間を取得する。例えば、情報処理装置100は、ユーザ端末10の可視領域内(すなわち、出力部13)に記事C11が表示されてから、記事C11の表示が終了されるまでの経過時間を取得する。なお、記事C11の表示が終了するとは、出力部13内に記事C11が表示されなくなることをいう。記事C11の表示が終了する例としては、ユーザの操作によりブラウザソフトウェアが終了した場合や、記事C11が表示されていた画面から別の記事が表示される画面に遷移した場合や、タグブラウザにおいて別のタグに切り替えられた場合などがある。」

(3)「【0028】
図2乃至図4で示した態様で記事C11が表示される間、情報処理装置100は、ユーザ端末10における記事C11の表示状況を取得し続ける。なお、情報処理装置100は、常時リアルタイムで表示状況を取得し続けてもよいし、一定間隔ごとに表示状況を取得するようにしてもよい。そして、情報処理装置100は、記事C11全体に含まれる文字数に基づいて計算される所定時間が経過したか否かを判定する。例えば、情報処理装置100は、文字数に所定の単位時間を乗じた時間を所定時間として算出し、その所定時間を経過したか否かを判定する。
【0029】
そして、情報処理装置100は、所定時間が経過したと判定した結果に基づいて、記事C11に対する所定の評価値を算定する。具体的には、情報処理装置100は、所定時間が経過したと判定した場合、記事C11が完読されたことを示す「完読数」の値を加算する。
【0030】
さらに、情報処理装置100は、評価値である完読数を情報利用者に提示するサービスを提供する。例えば、情報処理装置100は、情報利用者端末20から、記事C11がどのくらいユーザから閲覧されているか、その閲覧のうち、どのくらいのユーザが記事C11を完読しているか、といった情報の提示の要求を受け付ける。情報処理装置100は、受け付けた要求に従い、記事C11に関する評価値を情報利用者に提示する。例えば、情報処理装置100は、情報利用者端末20に対して、所定のプラットフォーム画面を提供し、かかる画面上に記事C11の評価値を表示させることで、情報利用者に評価値を提示する。
【0031】
上述してきたように、実施形態に係る情報処理装置100は、ユーザ端末10における記事C11の表示状況を取得する。そして、情報処理装置100は、取得された表示状況を用いて、記事C11が表示されてから、表示が終了する迄に、記事C11全体に含まれる文字数に基づいて計算される所定時間が経過したか否かを判定する。さらに、情報処理装置100は、判定結果に基づいて、記事C11に対する所定の評価値を算定し、算定した評価値を提示するサービスを提供する。
【0032】
このように、情報処理装置100は、記事C11などのコンテンツが表示された場合に、コンテンツ全体の文字数から計算される所定時間が表示されたか否かを判定する。すなわち、情報処理装置100は、記事C11の部分ごとの表示時間を計測するのではなく、記事C11の一部分だけが表示されている場合でも、コンテンツ全体の表示時間として計測する。ユーザは、記事C11を閲覧する場合に、全ての内容を可視領域に表示させ、全ての内容を同じ時間だけ閲覧するとは限らない。例えば、ユーザは、記事C11全体をとりあえず流し読みしてみて、自分の興味があった内容が含まれている場合に、その箇所を集中的に読むといった態様で閲覧を行う場合もありうる。そこで、情報処理装置100は、上述した情報処理により、実際に記事C11がユーザから閲覧される態様に則したコンテンツの効果測定を行う。具体的には、情報処理装置100は、ユーザが、コンテンツ全体の文字数から計算される時間だけ、コンテンツのいずれかの箇所を可視領域に留めている場合に、コンテンツの評価値である完読数を加算する。これにより、情報処理装置100は、より現実のユーザの視聴態様に則した評価値である完読率を算定する。結果として、情報処理装置100は、コンテンツが有する効果を正確に測定することができる。
【0033】
〔3.情報処理装置の構成〕
次に、図5を用いて、実施形態に係る情報処理装置100の構成について説明する。図5は、実施形態に係る情報処理装置100の構成例を示す図である。図5に示すように、情報処理装置100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130とを有する。なお、情報処理装置100は、情報処理装置100を利用する管理者等から各種操作を受け付ける入力部(例えば、キーボードやマウス等)や、各種情報を表示するための表示部(例えば、液晶ディスプレイ等)を有してもよい。
【0034】
(通信部110について)
通信部110は、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。かかる通信部110は、ネットワークNと有線又は無線で接続され、ネットワークNを介して、ユーザ端末10や、情報利用者端末20や、コンテンツ配信サーバ30との間で情報の送受信を行う。
【0035】
(記憶部120について)
記憶部120は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。記憶部120は、表示状況記憶部121と、評価情報記憶部125とを有する。)

(4)「【0046】
(評価情報記憶部125について)
評価情報記憶部125は、コンテンツの評価に関する情報を記憶する。ここで、図8に、実施形態に係る評価情報記憶部125の一例を示す。図8は、実施形態に係る評価情報記憶部125の一例を示す図である。図8に示した例では、評価情報記憶部125は、「コンテンツID」、「PV」、「完読数」、「完読率」、「平均閲覧時間」、「「続きを読む」PV」といった項目を有する。
【0047】
「コンテンツID」は、図7に示した同様の項目に対応する。「PV」は、コンテンツのPV(Page View)数を示す。「完読数」は、コンテンツの完読数を示す。「完読率」は、PVに対する完読数の割合を示す。
【0048】
「平均閲覧時間」は、コンテンツが閲覧されている平均時間を示す。コンテンツの閲覧時間は、例えば、コンテンツがユーザ端末10の画面上に表示されている時間を測定すること等によって集計される。「「続きを読む」PV」は、例えば、2分割されているコンテンツや、関連するコンテンツ同士について、コンテンツを閲覧したユーザから、さらに続きの内容を閲覧するためのリンクが選択され、リンク先のコンテンツが閲覧された回数を示す。
【0049】
すなわち、図8では、コンテンツID「C11」によって識別されるコンテンツ(記事C11)は、PVが「54203」であり、そのうち完読数が「25489」であり、完読率は「47.0」%であることを示している。また、記事C11は、平均閲覧時間が「1分25秒」であり、「続きを読む」のリンク先のコンテンツのPVは「18200」であることを示している。
【0050】
なお、図8では図示を省略したが、評価情報記憶部125には、PVの他に、UU(Unique User)や、UB(Unique Browser)などの数値が記憶されてもよい。」

以上の記載によれば、引用例6には、次の技術事項が記載されている。

「情報処理プログラムにおいて(【0001】)、
ユーザが、コンテンツ全体の文字数から計算される時間だけ、コンテンツのいずれかの箇所を可視領域に留めている場合に、コンテンツの評価値である完読数を加算することより、より現実のユーザの視聴態様に則した評価値である完読率を算定し、コンテンツが有する効果を正確に測定すること(【0032】)。」


第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明は「ActiBook」との名称の「ebook・電子ブック作成ソフト」であるところ、該ソフトが「プロセッサによって実行されるプログラム」であることは明らかであるから、本願発明1と引用発明とは、「プロセッサによって実行されるプログラム」である点で一致する。

イ 引用発明において制作された電子ブックデータは冊子印刷物の体裁のままのものであって、ログ情報はWebサイトやタブレット端末で閲覧・利用されたログ情報であり、Google Analyticsに蓄積されたActiBookの閲覧ログを取得したものであるから、該ログ情報は紙媒体のコンテンツを掲載するウェブサイトのログデータであるといえるとともに、該ログ情報はGoogle Analyticsなる外部装置から取得されたものであるといえる。
このため、引用発明と本願発明1とは、「プロセッサに」「外部装置から紙媒体のコンテンツを掲載するウェブサイトのログデータを取得させ」ている点で一致する。

ウ 引用発明は「ActiBookの閲覧ログを取得・解析し、ページ毎の閲覧数、拡大数、検索を行った回数、リンクが押下された回数などの情報を視覚的に把握し」ているから、引用発明と本願発明1とは、「プロセッサに」「前記ログデータに基づいて、前記ウェブサイトのアクセスに関するレポートを生成させ」ている点で一致する。

エ 引用発明は「例えば印刷会社においては顧客に対して出版物やカタログのアクセス解析結果を元にしたデザイン、レイアウトの改善提案を行」っているから、引用発明と本願発明1とは、「プロセッサに」「前記レポートに基づく情報を外部装置に出力させ」ている点で一致する。

オ 引用発明で制作された電子ブックデータは冊子印刷物の体裁のままであり、ActiBookの閲覧ログを取得・解析し、ページ毎の閲覧数を把握していることから、生成されたレポートはウェブサイトが紙媒体での体裁と同様の体裁でコンテンツを提供することに関連する項目を備えているといえる。
このため、本願発明1と引用発明とは、「前記レポートは、前記ウェブサイトが前記紙媒体での体裁と同様の体裁で前記コンテンツを提供することに関連する項目を備え」ている点で一致する。

したがって、本願発明1と引用発明とは、次の点で一致及び相違する。

<一致点>
「プロセッサによって実行されるプログラムであって、
前記プロセッサに、
外部装置から紙媒体のコンテンツを掲載するウェブサイトのログデータを取得させ、
前記ログデータに基づいて、前記ウェブサイトのアクセスに関するレポートを生成させ、
前記レポートに基づく情報を外部装置に出力させ、
前記レポートは、前記ウェブサイトが前記紙媒体での体裁と同様の体裁で前記コンテンツを提供することに関連する項目を備える、
プログラム」

<相違点>
本願発明1の「レポート」は、「前記コンテンツの読了率を含む」のに対して、引用発明では、レポートがコンテンツの読了率を含んでいない点。

(2)相違点の判断
引用例4?6には、上記第4の2乃至4のとおりの技術事項が記載されており、該記載に鑑みると、本願の出願当時には、ウェブページあるいはコンテンツの読了率又は完読率を求めることは公知な技術事項であったと認められる。
しかしながら、引用発明には、紙媒体によって提供されるコンテンツの閲覧状況を効果的に分析するプログラムを提供するという課題を有しておらず、さらに、引用例1には、レポートが備える「前記ウェブサイトが前記紙媒体での体裁と同様の体裁で前記コンテンツを提供することに関連する項目」として、「コンテンツの読了率」を含めることの示唆や動機付けとなる事項も記載されていない。
さらに、引用発明において取得する閲覧ログに、コンテンツの読了率を求めるために必要となる情報が含まれていることは記載されていない。
このため、引用発明において、レポートがコンテンツの読了率を含むようにすることは、引用例4?6に記載された技術事項を参酌しても、当業者が容易に想到し得るとは認められない。
そして、当該事項を記載する他の引用文献も発見されない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用例4?6の記載に基づいて容易に発明できたものではない。

2 本願発明2、3について
本願発明2、3は、少なくとも、上記1で検討した相違点に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様な理由により、当業者であっても、引用発明及び引用例4?6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものではない。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明1?3は、当業者が引用発明及び引用例4?6の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-06-23 
出願番号 特願2019-29671(P2019-29671)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮久保 博幸  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 佐藤 聡史
松田 直也
発明の名称 プログラム  
代理人 野河 信久  
代理人 金子 早苗  
代理人 井上 正  
代理人 飯野 茂  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 河野 直樹  

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