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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1375734
審判番号 不服2021-992  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-25 
確定日 2021-07-27 
事件の表示 特願2016-110152「固体撮像素子」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月 7日出願公開、特開2017-216396、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年6月1日の出願であって、令和2年3月23日付けで拒絶理由通知がされ、同年5月18日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出され、同年10月22日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和3年1月25日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年10月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1 本願請求項1?6に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び以下の引用文献2?4に記載された周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2014-203961号公報
2.特開2011-119484号公報(周知技術を示す文献)
3.特開平9-252103号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2011-151420号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願請求項1-3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明3」という。)は、令和3年1月25日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
支持基板と、
前記支持基板上に形成された、二次元状に配列された複数の光電変換素子を有する半導体層と、
前記支持基板と前記半導体層との間に設けられた光反射構造と、
を備え、
前記光反射構造は、前記半導体層側に平面を有する複数の半球を有する光透過層、前記光透過層の複数の前記半球の表面を一体に覆う反射金属及び前記反射金属とは異なる材料で形成された平坦化層を有し、
かつ前記光反射構造は、前記光電変換素子の下部に位置し、前記半球のそれぞれが複数の前記光電変換素子に対応して複数配列されている固体撮像素子。
【請求項2】
前記光透過層は、非ドープ型窒化シリコン又は非ドープ型酸化シリコンを含む
請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記支持基板は、石英又はシリコンを含む
請求項1又は2に記載の固体撮像素子。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。以下同じ。)。

「【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換部を有する第1部材と、
凹面部を有する反射板を含む第2部材と
を備え、
前記第2部材は、前記第1部材の光入射面と反対側に、前記反射板の前記凹面部を前記光電変換部に向けて貼り合わせられた
固体撮像装置。
【請求項2】
前記反射板は、上面に前記凹面部を有し、下面に平坦部を有する
請求項1記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記凹面部は、絶縁膜の溝部に埋め込んだ金属材料膜を化学的機械的研磨法によりディッシングさせることにより形成された
請求項1記載の固体撮像装置。」

「【技術分野】
【0001】
本開示は、光電変換部の光入射面と反対側に反射板を有する固体撮像装置およびその製造方法、ならびにこの固体撮像装置を備えた電子機器に関する。」

「【0013】
(第1の実施の形態)
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る固体撮像装置の断面構成を表したものである。この固体撮像装置1は、カメラ等の電子機器に用いられるものであり、第1部材10と第2部材20とを接合面30で貼り合わせた構成を有している。第1部材10は、光電変換部11を有するイメージセンサ基板である。第2部材20は、凹面部21Aを有する反射板21を含む反射板形成基板である。第2部材20は、第1部材10の光入射面10Aと反対側に、反射板21の凹面部21Aを光電変換部11に向けて貼り合わせられている。これにより、この固体撮像装置1では、簡素な工程で作製可能な、形状均一性の高い凹形状の反射板21を備えることが可能となっている。
【0014】
第1部材10は、例えば、光電変換部11の下方に、絶縁膜12A,12Bと、ゲート電極13と、第1金属配線層41と、第2金属配線層42とを、光電変換部11に近い方からこの順に有している。光電変換部11の上方には、層間絶縁膜14を間にして、マイクロレンズ15が配設されている。
【0015】
第2部材20は、例えば、半導体基板、例えばシリコン(Si)基板23上に、絶縁膜22Aと、反射板21と、絶縁膜22Bとをこの順に有している。
【0016】
光電変換部11は、例えば、pn接合を有するフォトダイオード(Photo Diode)からなる無機光電変換部である。光電変換部11は、半導体基板、例えばシリコン基板16(図1には図示せず、図8参照。)上に成長した半導体層17の内部に設けられている。なお、図1では光電変換部11を抽象化して表しており、光電変換部11の構成は特に限定されるものではない。
【0017】
絶縁膜12A,12Bは、光電変換部11の下方に設けられ、例えばシリコン酸化膜(SiO_(2))により構成されている。
【0018】
ゲート電極13は、光電変換部11からの信号電荷を転送するものであり、図示しないソースおよびドレインと共に転送トランジスタを構成している。
【0019】
第1金属配線層41および第2金属配線層42は、光電変換部11の駆動、信号伝達、各部への電圧印加などを行うものであり、絶縁膜12B中に設けられている。なお、図1では金属配線層として第1金属配線層41および第2金属配線層42の二層が設けられている場合を表しているが、金属配線層の積層数や構成は特に限定されない。
【0020】
層間絶縁膜14は、例えばシリコン酸化膜(SiO_(2))により構成されている。マイクロレンズ15は、その上方から入射した光を、光電変換部11の受光面へ集光させるものである。
【0021】
反射板21は、第1部材10を透過してきた光L1を反射させて、光電変換部11に向けて戻すことにより感度を向上させるものである。反射板21は、上面(光電変換部11側)に凹面部21Aを有し、下面に平坦部21Bを有していることが好ましい。このような凹面部21Aは、後述するように、絶縁膜22Aの溝部24Aに埋め込んだ金属材料膜を化学的機械的研磨法によりディッシングさせることにより形成されたものである。反射板21は、例えば、銅、アルミニウム、銅を含む合金およびアルミニウムを含む合金からなる群のうちの少なくとも1種により構成されていることが好ましい。
【0022】
絶縁膜22A,22Bは、例えば、シリコン酸化膜(SiO_(2))により構成されている。
【0023】
この固体撮像装置1は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0024】
図2ないし図11は、この固体撮像装置1の製造方法を工程順に表したものである。まず、第2半導体基板、例えばシリコン基板23に、凹面部21Aを有する反射板21を形成し、第2部材20を形成する。
【0025】
すなわち、まず、図2に示したように、シリコン基板23に、上述した材料よりなる絶縁膜22Aを形成する。
【0026】
次いで、図3に示したように、例えばフォトリソグラフィおよびエッチングにより、絶縁膜22Aに、反射板21を形成するための溝部24Aを設ける。溝部24Aは、平坦な底面を有している。
【0027】
続いて、図4に示したように、絶縁膜22Aの上面および溝部24A内に、金属材料膜25Aを形成する。金属材料膜25Aとしては、例えば、銅をめっき法により被着することが可能である。また、めっき法により銅を被着する前に、絶縁膜22Aの上面および溝部24A内に、バリアメタルとなるタンタル膜や、めっき時のシード膜となる銅をスパッタ形成してもよい(図示せず)。
【0028】
そののち、金属材料膜25Aを化学的機械的研磨法(CMP;Chemical Mechanical Polishing)により研磨し、溝部24A内以外の金属材料膜25Aを除去する。これにより、図5に示したように、反射板21が形成される。このとき、反射板21は、上面が断面円弧状に窪み、凹面部21Aとなる。反射板21の下面は、溝部24Aの平坦な底面がそのまま保持され、平坦部21Bとなる。
【0029】
すなわち、溝部24A内以外の金属材料膜25Aが除去された状態からオーバー研磨を行うことで、反射板21の上面はディッシングと称される現象により窪んでいく。オーバー研磨量を適切に設定することで、所望の形状の凹面部21Aを有する反射板21を形成することが可能である。
【0030】
反射板21を形成したのち、図6に示したように、絶縁膜22Aおよび反射板21の上に、上述した材料よりなる絶縁膜22Bを形成する。このとき、反射板21上には、反射板21に用いた材料が絶縁膜22Bへと拡散するのを抑制するための拡散防止膜となるシリコン窒化膜、あるいは、シリコンカーバイド膜、シリコン窒化カーバイド膜などを形成する場合もあるが、図中では省略する。
【0031】
続いて、図7に示したように、例えばCMP法により、絶縁膜22Bの上面を平坦化する。以上により、第2部材20が形成される。
【0032】
一方、図8に示したように、第1半導体基板、例えばシリコン(Si)基板16に光電変換部11を形成し、第1部材10を形成する。
【0033】
すなわち、シリコン基板16上に半導体層17を成長させ、この半導体層17内に光電変換部11を形成する。次いで、半導体層17の上に、絶縁膜12Aを形成する。続いて、絶縁膜12Aの上に、ゲート電極13,絶縁膜12B,第1金属配線層41および第2金属配線層42を形成する。これにより、第1部材10が形成される。
【0034】
そののち、同じく図8に示したように、第2部材20を、第1部材10の光入射面10Aと反対側に、反射板21の凹面部21Aを光電変換部11に向けて貼り合わせる。貼り合わせ方法としては、例えばプラズマ照射による表面活性化接合法を用いることが可能である。
【0035】
続いて、図9に示したように、例えば研削加工法により、第1部材10のシリコン基板16を除去する。
【0036】
そののち、図10に示したように、光電変換部11上に層間絶縁膜14を形成する。続いて図11に示したように、層間絶縁膜14上にマイクロレンズ15を配設する。以上により、図1に示した固体撮像装置1が完成する。
【0037】
図12および図13は、凹面部21Aの窪み量の制御方法を説明するためのものであり、溝部24および隣接する絶縁膜22Aの寸法と凹面部21Aの窪み量との関係を表している。図12に示したように、絶縁膜22Aの幅W1の溝部24Aの幅W2に対する比率が大きい場合には、凹面部21Aの窪み量Dは小さくなる。一方、図13に示したように、絶縁膜22Aの幅W1が狭くなるに従い、凹面部21Aの窪み量Dは大きくなる。単一画素の大きさや反射板21と光電変換部11との距離に応じて、溝部24Aと絶縁膜22Aとの寸法比率W2:W1を最適にすることにより、所望の曲率を有する反射板21を形成することが可能となる。また、窪み量Dの制御性を高め、感度のばらつきが小さい固体撮像装置1を得ることが可能となる。
【0038】
ここで、絶縁膜22Aの寸法W1は、溝部24Aの寸法W2の1/3(3分の1)以下にすることが好ましい。溝部24Aと絶縁膜22Aとの寸法比率W2:W1を3:1よりも大きくすることにより、溝部24Aの寸法比が高くなりディッシングが大きく進むからである。
【0039】
この固体撮像装置1では、光電変換部11に、マイクロレンズ15を介して光L1が入射すると、光L1は、光電変換部11を通過し、その通過過程において光電変換される。ここでは、第1部材10の光入射面10Aと反対側に、凹面部21Aを有する反射板21を含む第2部材20が貼り合わせられているので、光電変換部11を透過してきた光L1は、反射板21の凹面部21Aによって反射され、その反射光L2が再び光電変換部11へと入射し、隣接画素へのクロストークが抑制される。
・・・
【0041】
また、図15に示したように、第1部材10と第2部材20との貼り合わせ工程を行わずに断面円弧状の反射板21を形成するには、例えば、次のような方法が考えられる。すなわち、シリコン基板16に光電変換部11を形成し、絶縁膜12Aで被覆する。続いて、絶縁膜12Aの上に下地層12Cを形成し、この下地層12Cをエッチングによりドーム状に成形し、その上に反射板21となる金属材料層を成膜する。しかし、この方法では、下地層12Cをドーム状に成形するためのエッチング制御が困難であり、チップ内またはウェハ内の反射板21の形状に不均一が生じ、感度むらの原因となっていた。
【0042】
これに対して本実施の形態では、光電変換部11を有する第1部材10と、凹面部21Aを有する反射板21を含む第2部材20とを接合面30で貼り合わせるようにしている。よって、困難なエッチング制御を用いることなく、CMPのオーバー研磨によるディッシングという簡素な工程で、凹面部21Aを有する反射板21を含む第2部材20を形成することが可能となり、反射板21の形状均一性を高めることが可能となる。
【0043】
このように本実施の形態では、光電変換部11を有する第1部材10と、凹面部21Aを有する反射板21を含む第2部材20とを接合面30で貼り合わせるようにしている。よって、困難なエッチング制御を用いることなく、CMPのオーバー研磨によるディッシングという簡素な工程で、凹面部21Aを有する反射板21を含む第2部材20を形成することが可能となる。よって、感度特性が高く、クロストークを抑制した固体撮像装置1を得ることが可能となる。また、反射板21の形状均一性を高め、感度むらを抑えることが可能となる。
【0044】
また、反射板21の凹面部21Aは、金属材料膜25Aの化学的機械的研磨によるディッシング現象を利用して形成されているので、溝部24Aの幅W2を適切に設定することにより、窪み量Dの制御性を高め、感度のばらつきが小さい固体撮像装置1を得ることが可能となる。
【0045】
(変形例1?4)
図16ないし図19は、反射板21の平面構成の変形例1?4を表したものである。図16ないし図18は、単位画素領域PXLが正方形の場合を表し、図19は単位画素領域PXLが長方形の場合を表している。
【0046】
(変形例1)
反射板21は、例えば図16に示したように、矩形状の平面形状を有している。反射板21と絶縁膜22Aとの寸法比率W2:W1は、上述したように適切に設定することにより、凹面部21Aの窪み量Dを制御することが可能となる。」

図1?13、16は、以下のとおりのものである。
図1から、反射板21は、それぞれは光電変換部11の下部に位置していることが見てとれる。
図16から、二次元状に配列された複数の単位画素領域PXLが見てとれる。



(2)ア 上記(1)で摘記した、引用文献1の段落【0013】の「第2部材20は、第1部材10の光入射面10Aと反対側に、反射板21の凹面部21Aを光電変換部11に向けて貼り合わせられている。」との記載、段落【0021】の「反射板21は、第1部材10を透過してきた光L1を反射させて、光電変換部11に向けて戻すことにより感度を向上させるものである。」との記載、及び段落【0039】の「光電変換部11を透過してきた光L1は、反射板21の凹面部21Aによって反射され、その反射光L2が再び光電変換部11へと入射し」との記載、並びに図1から、引用文献1には、「反射板21は、光電変換部11の下部に位置し、反射板21のそれぞれが複数の光電変換部11に対応して設けられている。」との技術的事項が記載されているものと認められる。

イ 固体撮像装置において、各単位画素領域が、それぞれ光電変換部を有することは技術常識であるから、上記(1)で摘記した、引用文献1の段落【0045】?【0046】の記載及び図16から、引用文献1には、固体撮像装置1が有する光電変換部11は、「二次元状に配列された複数の光電変換部11」であるとの技術的事項が記載されているものと認められる。

(3)上記(1)、(2)から、上記引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「二次元状に配列された複数の光電変換部11を有する第1部材10と、凹面部21Aを有する反射板21を含む第2部材20とを備え、
前記第2部材20は、前記第1部材10の光入射面10Aと反対側に、前記反射板21の前記凹面部21Aを前記光電変換部11に向けて貼り合わせられており、
前記反射板21は、上面に前記凹面部21Aを有し、下面に平坦部21Bを有し、
前記凹面部21Aは、絶縁膜22Aの溝部24Aに埋め込んだ金属材料膜25Aを化学的機械的研磨法によりディッシングさせることにより形成された固体撮像装置1であって、
第2部材20は、半導体基板23上に、絶縁膜22Aと、反射板21と、絶縁膜22Bとをこの順に有しており、絶縁膜22Bの上面は平坦化されており、
光電変換部11は、半導体基板16上に成長した半導体層17の内部に設けられており、
反射板21は、光電変換部11の下部に位置し、反射板21のそれぞれが複数の光電変換部11に対応して設けられており、
入射光L1は、光電変換部11を通過し、光電変換部11を透過してきた光L1は、反射板21の凹面部21Aによって反射され、その反射光L2が再び光電変換部11へと入射する固体撮像装置1。」

2 その他の引用文献について
(1)引用文献2について
また、原査定で周知技術を示す文献として引用された上記引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0045】
図1において、本実施形態1の固体撮像素子20は、シリコン基板である半導体基板1の表面側に複数の受光部2(フォトダイオード)が平面視で縦方向および横方向に等間隔の2次元状でマトリクス状に配置されている。隣接する列方向の複数の受光部2間にはそれぞれ垂直転送部3が配設され、一方列の複数の受光部2から読み出された各信号電荷が各垂直転送部3により垂直方向に電荷転送される。なお、ここでは図示していないが、その後、複数列の垂直転送部3により垂直方向に電荷転送された各信号電荷は、今度は、一列に並べられて不図示の水平転送部により水平方向に電荷転送されて電圧検出部で電圧変換され、不図示の増幅部により増幅された後に撮像信号として順次外部に出力される。
・・・
【0049】
一方、半導体基板1の裏面側には、各受光部2にそれぞれ対応するように、反射材11を凹面鏡形状にするための表面が凸レンズ状光透過材である透明材12がそれぞれ形成されている。つまり、半導体基板1の裏面には、各受光部2にそれぞれ対応する位置に凸状表面を持つ透明材12と、透明材12上に形成された反射材11とにより、各受光部2側からの光を反射材11の内面で反射させて各受光部2側にそれぞれ集光して戻すための凹面鏡手段13が構成されている。
【0050】
このように、透明材12上に反射材11が形成され、反射材11の内面(凹面鏡)で光を各受光部2側にそれぞれ集光させて反射させる。反射材11の凹面鏡の焦点は、マイクロレンズ10により入射光が各受光部2にそれぞれ集光する入射光焦点位置Fに合わせて集光するように構成している。要するに、各受光部2の裏面側に、内面が凹面鏡をした反射材11を、各受光部2などを透過した入射光が反射材11の凹面鏡で反射し、反射材11の凹面鏡からの反射光がマイクロレンズ10からの各受光部2の入射光焦点位置Fで焦点を結ぶように、凹面鏡形状の曲率を設定している。
【0051】
凹面鏡手段13の凹面形状による反射光焦点位置Fと、マイクロレンズ10による入射光焦点位置Fとは互いに一致して共に受光部2の所定位置に設定されている。より詳しくは、凹面鏡手段13およびマイクロレンズ10の各入射光焦点位置Fが共にN型半導体領域2aとその表面のP型半導体領域2bとのPN接合位置に設定されている。
【0052】
透明材12の材質は、酸化シリコン膜または窒化シリコン膜などの透明シリコン系膜であり、反射材11の材質はアルミニュウムなどの金属膜である。また、凹面鏡手段13の平面視外形は、受光部2の平面視形状(正方形または矩形など4角形状)を内包する平面視矩形であって、透明材12と半導体基板1との接着面の後述の直径δとする円を内包する平面視矩形である。」

図1は、以下のとおりのものである。


上記記載からみて、当該引用文献2には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「半導体基板1の表面側に複数の2次元状でマトリクス状に配置されている受光部2を有する固体撮像素子20において、
各受光部2にそれぞれ対応する位置に凸状表面を持つ透明材12と、透明材12上に形成された反射材11とにより、各受光部2側からの光を反射材11の内面で反射させて各受光部2側にそれぞれ集光して戻すための凹面鏡手段13が構成されていること。」

(2)引用文献3について
また、原査定で周知技術を示す文献として引用された上記引用文献3には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0012】図1は、図4と対比により示す光電変換部の断面を示す断面図である。本発明の実施の形態に係るCCD固体撮像素子は、この光電変換部20をマトリックス状に配置して形成される。なお図1において、図4について上述した従来のCCD固体撮像素子と同一の構成は対応する符号を付して示し、重複した説明は省略する。
【0013】ここでこの光電変換部20は、オーバーフローバリアー11の下側、光電変換領域の下層に、アルミニュームの薄膜により反射膜21が形成される。ここでこの反射膜21は、光電変換領域の下側において、断面が円弧形状になるように凹状に形成され、これにより光電変換領域を透過してこの反射膜21にまで到達した入射光を光電変換領域に向けて反射するようになされている。
【0014】これにより図2に示すように、光電変換領域を透過してポテンシャルバリアーを飛び越えるような長波長の入射光については、再び光電変換領域に戻して光電変換に利用することができる。従ってこの光電変換部20は、従来に比して入射光量に対する蓄積電荷生成量を増大することができ、その分感度を向上することができる。
【0015】具体的に、この反射膜21は、N形半導体基板23にエッチングにより断面円弧形状の凹部を形成した後、アルミニューム膜を蒸着して形成され、シリコン基板8は、その後エピタキシャル成長により反射膜21上にP型の領域を堆積して形成されるようになされている。」

図1は、以下のとおりのものである。


上記記載からみて、当該引用文献3には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「マトリックス状に配置して形成された光電変換部20を有するCCD固体撮像素子において、
光電変換部20は、光電変換領域12、13の下層に反射膜21が形成され、反射膜21は、断面が円弧形状になるように凹状に形成され、これにより光電変換領域を透過してこの反射膜21にまで到達した入射光を光電変換領域に向けて反射するようになされていること。」

(3)引用文献4について
また、原査定で周知技術を示す文献として引用された上記引用文献4には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0018】
本発明の固体撮像素子に係る実施の形態の一例(第1例)を、図1の概略構成断面図によって説明する。
【0019】
図1に示すように、本発明の固体撮像素子1は、半導体層で構成される素子層110に光電変換素子(例えばフォトダイオード)111が形成され、この光電変換素子111で光電変換された信号電荷を電気信号に変換して出力する能動素子(図示せず)を含む複数の単位画素が配列されたものであり、上記光電変換素子111が形成される素子層110に対してその一方の面側に、上記能動素子に対して配線をなす配線層130を備えている。上記光電変換素子111は、例えば5μm?15μmの厚さのシリコン層で形成されている。また、入射光Lを素子層110の他方の面側にはカラーフィルター150が形成されている。また、上記素子層110の配線層130側には、上記能動素子のうちの光電変換された信号電荷を読み出す読み出しトランジスタを構成する読み出しゲート電極121が絶縁膜122を介して形成されている。この読み出しゲート電極121は、例えば多結晶シリコンで形成されている。このため、読み出しゲート電極121は光透過性を有する。
【0020】
上記読み出しゲート電極121を含む画素全面を、絶縁膜141を介して被覆するように反射膜140が形成されている。
【0021】
上記反射膜140は、例えば、アルミニウム、酸化アルミニウム等で形成される。特に、アルミニウム膜は、可視光線に対しておよそ90%以上の表面反射率を得ることができる。したがって、上記反射膜140にアルミニウム膜を採用することが好ましい。また、後に説明するが、反射させる光の波長が緑色光、赤色光であることを考慮すると、緑色光、赤色光の反射率が高真空蒸着法により形成された膜では95%以上を有する銀を用いることも可能である。」

上記記載からみて、当該引用文献4には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「光電変換素子111が形成された複数の単位画素が配列された固体撮像素子1において、
画素全面を、絶縁膜141を介して被覆するように反射膜140が形成されている固体撮像素子1。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
(ア)引用発明における「固体撮像装置1」は、本願発明1における「固体撮像素子」に相当する。

(イ)引用発明は、「二次元状に配列された複数の光電変換部11を有する第1部材10と、凹面部21Aを有する反射板21を含む第2部材20とを備え」、「前記第2部材20は、前記第1部材10の光入射面10Aと反対側に、前記反射板21の前記凹面部21Aを前記光電変換部11に向けて貼り合わせられており」、「第2部材20は、半導体基板23上に、絶縁膜22Aと、反射板21と、絶縁膜22Bとをこの順に有しており」、「光電変換部11は、半導体基板16上に成長した半導体層17の内部に設けられて」いるものであるところ、「絶縁膜22Aと、反射板21と、絶縁膜22Bとをこの順に有する構造」は「光反射構造」であるといえるから、引用発明は、「半導体基板23と、半導体基板23上に形成された、二次元状に配列された複数の光電変換部11を有する半導体層17と、半導体基板23と半導体層17との間に設けられた光反射構造と、を備える」ものであるといえる。
また、引用発明の「光電変換部11」、「半導体基板23」、「半導体層17」、及び上記「絶縁膜22Aと、反射板21と、絶縁膜22Bとをこの順に有する構造」(光反射構造)は、それぞれ本願発明1の「光電変換素子」、「支持基板」、「半導体層」、及び「光反射構造」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「支持基板と、前記支持基板上に形成された、二次元状に配列された複数の光電変換素子を有する半導体層と、前記支持基板と前記半導体層との間に設けられた光反射構造と、を備え」る点で一致する。

(ウ)a 引用発明は、「第2部材20は、半導体基板23上に、絶縁膜22Aと、反射板21と、絶縁膜22Bとをこの順に有しており、絶縁膜22Bの上面は平坦化されており」、「入射光L1は、光電変換部11を通過し、光電変換部11を透過してきた光L1は、反射板21の凹面部21Aによって反射され、その反射光L2が再び光電変換部11へと入射する」ものであるところ、「絶縁膜22B」は「半導体層17側に平面を有する」ものであり、「反射板21」は「絶縁膜22B」を「覆う」ものであるといえるとともに、当該「絶縁膜22B」が光を透過する層であることは明らかである。
したがって、引用発明の「絶縁膜22B」は、本願発明1の「前記半導体層側に平面を有する光透過層」に相当する。
b 引用発明において、「反射板21」が上面に有する「凹面部21A」は、「絶縁膜22Aの溝部24Aに埋め込んだ金属材料膜25Aを化学的機械的研磨法によりディッシングさせることにより形成された」ものであるから、本願発明1の「反射金属」に対応し、「前記光透過層を覆う反射金属」に相当する。
また、引用発明の「絶縁膜22A」は、本願発明1の「前記反射金属とは異なる材料で形成された平坦化層」に対応し、当該平坦化層とは、「前記反射金属とは異なる材料で形成された層」である点で共通する。
c したがって、本願発明1と引用発明とは、「前記光反射構造は、前記半導体層側に平面を有する光透過層、前記光透過層の表面を覆う反射金属及び前記反射金属とは異なる材料で形成された層を有」する点で共通する。

(エ)引用発明は、「反射板21と、絶縁膜22Bとをこの順に有しており」、「反射板21は、光電変換部11の下部に位置し、反射板21のそれぞれが複数の光電変換部11に対応して設けられて」いるものであるから、「絶縁膜22Bの反射板21に覆われた部分のそれぞれが複数の光電変換部11に対応して設けられている」といえる。
更に、上記(イ)から、引用発明の「反射板21」は「光反射構造」が有する部材であるといえるから、本願発明1と引用発明とは、「前記光反射構造は、前記光電変換素子の下部に位置し、光透過層の反射金属に覆われた部分のそれぞれが複数の前記光電変換素子に対応して複数配列されている」点で共通する。

イ したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「支持基板と、
前記支持基板上に形成された、二次元状に配列された複数の光電変換素子を有する半導体層と、
前記支持基板と前記半導体層との間に設けられた光反射構造と、
を備え、
前記光反射構造は、前記半導体層側に平面を有する光透過層、前記光透過層の表面を覆う反射金属及び前記反射金属とは異なる材料で形成された層を有し、
かつ前記光反射構造は、前記光電変換素子の下部に位置し、光透過層の反射金属に覆われた部分のそれぞれが複数の前記光電変換素子に対応して複数配列されている固体撮像素子。」

<相違点>
<相違点1>
光反射構造が有する光透過層と反射金属について、本願発明1は、「複数の半球を有する光透過層」、「前記光透過層の複数の前記半球の表面を一体に覆う反射金属」という構成、及び「前記半球のそれぞれが複数の前記光電変換素子に対応して複数配列されている」という構成を備えるのに対し、引用発明は、「前記反射板21は、上面に前記凹面部21Aを有し」、「反射板21と、絶縁膜22Bとをこの順に有して」いるものの、引用発明の「絶縁膜22B」は「複数の半球を有する」ものではなく(以下、「相違点1A」という。)」、引用発明は、「反射板21」は、絶縁膜22Bの「複数の前記半球の表面を一体に覆う」という構成を備えるものでもなく(以下、「相違点1B」という。)、また、「前記半球のそれぞれが複数の前記光電変換素子に対応して複数配列されている」という構成も備えるものでもない点(以下、「相違点1C」という。)。

<相違点2>
光反射構造について、本願発明1は、「前記反射金属とは異なる材料で形成された平坦化層」を有するという構成を備えるのに対し、引用発明の「絶縁膜22A」は「平坦化層」ではない点。

(2)相違点についての判断
ア 相違点1について
まず、上記相違点1Bに係る「前記光透過層の複数の前記半球の表面を一体に覆う反射金属」との構成について、検討する。

引用発明において、反射板21が有する「前記凹面部21A」は、「絶縁膜22Aの溝部24Aに埋め込んだ金属材料膜25Aを化学的機械的研磨法によりディッシングさせることにより形成された」ものである。

一方、凹面部21Aを金属膜25Aのディッシングさせることにより形成することについて、上記第4の1(1)に摘記のとおり、引用文献1の段落【0026】?【0029】には、「図3に示したように、絶縁膜22Aに、反射板21を形成するための溝部24Aを設ける」旨、「絶縁膜22Aの上面および溝部24A内に、金属材料膜25Aを形成する。」、「金属材料膜25Aを化学的機械的研磨法(CMP;Chemical Mechanical Polishing)により研磨し、溝部24A内以外の金属材料膜25Aを除去する。これにより、図5に示したように、反射板21が形成される。このとき、反射板21は、上面が断面円弧状に窪み、凹面部21Aとなる。」、「すなわち、溝部24A内以外の金属材料膜25Aが除去された状態からオーバー研磨を行うことで、反射板21の上面はディッシングと称される現象により窪んでいく。」と記載されている。
引用文献1の段落【0037】には、「図12および図13は、凹面部21Aの窪み量の制御方法を説明するためのものであり、溝部24および隣接する絶縁膜22Aの寸法と凹面部21Aの窪み量との関係を表している。図12に示したように、絶縁膜22Aの幅W1の溝部24Aの幅W2に対する比率が大きい場合には、凹面部21Aの窪み量Dは小さくなる。一方、図13に示したように、絶縁膜22Aの幅W1が狭くなるに従い、凹面部21Aの窪み量Dは大きくなる。・・・溝部24Aと絶縁膜22Aとの寸法比率W2:W1を最適にすることにより、所望の曲率を有する反射板21を形成することが可能となる。」と記載されている。
引用文献1の段落【0041】?【0043】には、「下地層12Cをドーム状に成形するためのエッチング制御が困難」である旨、及び、「困難なエッチング制御を用いることなく、CMPのオーバー研磨によるディッシングという簡素な工程で、凹面部21Aを有する反射板21を含む第2部材20を形成することが可能となる」旨が記載されている。

これらの記載に照らすと、引用文献1において、「ディッシングさせること」により形成された反射板21の凹面部21Aについて、具体的には、絶縁膜22Aに溝部24Aを設け、絶縁膜22Aの上面および溝部24A内に、金属材料膜を形成し、CMPにより溝部24A内外の金属材料膜を除去することにより、上面が凹面部21Aとなる反射板21が形成されたものである旨が記載されており、また、凹面部21Aの窪み量Dは、絶縁膜22Aの幅W1と溝部24Aの幅W2の寸法比率を最適にすることにより、制御することができ、そして、エッチング制御を用いずに、ディッシングという簡素な工程で、凹面部21を形成できる旨が開示されている。他方、引用文献1には、凹部21Aを、ディッシング工程を利用せずに形成することや、溝部24Aを設けず、絶縁膜22Aの幅W1をゼロとして形成することや形成できることは、記載も示唆もされていないから、引用文献1の記載に基づき、絶縁膜22Bの「複数の前記半球状の表面を一体に覆う」という構成を導くことはできない。
したがって、引用発明において、当業者であっても、相違点1Bに係る本願発明1の「前記光透過層の複数の前記半球の表面を一体に覆う反射金属」という構成とすることは容易になし得たこととは認められない。

また、上記第5の2のとおり、引用文献2?4に記載された技術的事項は、相違点1Bに係る本願発明1の「前記光透過層の複数の前記半球の表面を一体に覆う反射金属」という構成とは異なり、本願発明1の当該構成は、引用文献2?4に記載されたものではないから、引用発明において、引用文献2?4を参照した当業者であっても、相違点1Bに係る本願発明1の構成を容易に想到することはできない。

したがって、上記相違点1A、1Cについて判断するまでもなく、引用発明において、引用文献2?4の記載に基づき、相違点1に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。

イ したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2?4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2、3について
本願発明2、3も、本願発明1の「前記光透過層の複数の前記半球の表面を一体に覆う反射金属」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用された引用文献2?4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
1 理由1(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1?3は「前記光透過層の複数の前記半球の表面を一体に覆う反射金属」という構成を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1?4に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-07-07 
出願番号 特願2016-110152(P2016-110152)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柴山 将隆  
特許庁審判長 河本 充雄
特許庁審判官 小田 浩
恩田 春香
発明の名称 固体撮像素子  

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