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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1375897
異議申立番号 異議2021-700159  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-08-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-02-12 
確定日 2021-07-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第6762730号発明「たこ焼粉、及びたこ焼の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6762730号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6762730号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成28年2月23日に出願され、令和2年9月11日にその特許権の設定登録がされ、令和2年9月30日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和3年2月12日に特許異議申立人 松田晴行(以下、「異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。

2 本件特許発明
特許第6762730号の請求項1?4に係る特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
小麦粉及び大麦粉(レーザー回折型粒度分布測定による平均粒子径が20μm以下であり、正規分布又は正規分布に近い粒度分布を示すものを除く)を含有する原料粉を含むたこ焼粉であって、
前記大麦粉の含有率が、前記原料粉の総質量に基づいて15?70質量%であることを特徴とするたこ焼粉。
【請求項2】
小麦粉及び大麦粉(レーザー回折型粒度分布測定による平均粒子径が20μm以下であり、正規分布又は正規分布に近い粒度分布を示すものを除く)を含有する原料粉であり、前記大麦粉の含有率が、前記原料粉の総質量に基づいて15?70質量%である原料粉、並びに水を含む生地材料を混合してたこ焼用生地を調製する工程、及び
前記たこ焼用生地を、必要に応じて具材と共に焼成する工程を含むたこ焼の製造方法。
【請求項3】
前記たこ焼用生地を、請求項1に記載のたこ焼粉、及び水を含む生地材料を混合して調製する請求項2に記載のたこ焼の製造方法。
【請求項4】
前記水の量が、前記原料粉100質量部に対して400?600質量部である請求項2又は3に記載のたこ焼の製造方法。」
(以下、請求項順に、「本件特許発明1」、……、「本件特許発明4」という。)

3 申立理由の概要
異議申立人は、証拠として以下の甲第1号証?甲第3号証を提出し、請求項1?4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1?4に係る特許は取り消されるべきものである旨を主張する。
甲第1号証:特開2008-118943号公報(以下、「甲1」という。)
甲第2号証:特開平9-299069号公報(以下、「甲2」という。)
甲第3号証:特開2003-265148号公報(以下、「甲3」という。)

4 文献の記載
(1)甲1の記載
甲1には、以下の事項が記載されている。
記載(1-1)
「【請求項1】
麦に由来する顆粒において、麦を粉砕することにより得た粉砕物を分級することにより得られる、粒サイズが40μ以上600μ以下の範囲であることを特徴とする顆粒。
【請求項2】
前記麦の粉砕の前処理として、麦に加熱蒸気処理をして、麦厚が1.5mm以下に圧扁した後に、乾燥処理をする請求項1に記載の顆粒。
【請求項3】
前記麦が、外皮を含む外周部が、麦の重量に対し15?50重量%研削された麦である請求項1または請求項2に記載の顆粒。
【請求項4】
前記麦が、大麦、及び/又はオーツ麦である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の顆粒。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れかに記載の顆粒を使用した食品。」

記載(1-2)
「【0013】
本発明に用いられる麦は、いずれの種類の麦をも用いることができるが、目的とするβグルカンを多く含むものが望ましい。具体的には、大麦が好ましく、中でも、2条6条等の皮付麦、及び裸麦がより好ましく、でん粉がもち性の性質を持ったもち性大麦、あるいはもち性裸大麦等が特に好ましい。又オーツ麦も大麦と同様に好ましく用いることができる。
【0014】
前記麦を、イクシードミル等の粉砕機により粉砕する。該粉砕は、目開き600μmのシフターをスルーするように、より好ましくは500μmのシフターをスルーするように粉砕する。又該粉砕は、粉砕機の粉砕回転数が大きい方が、より細かい粉砕品を調整でき、でん粉質等の食物繊維以外の成分と食物繊維を分離し、食物繊維をより高濃度で得ることができることから好ましい。前記粉砕は、イクシードミルの使用においては粉砕回転数が11800rpm以上、より好ましくは15800rpm以上、さらに好ましくは19800rpm以上で粉砕することが好ましい。
【0015】
本発明は、前記粉砕をすることにより、麦に含有されるデンプンが微小な粉末となる一方で、βグルカンを含む繊維質が比較的大きな顆粒となることから、粉砕物を分級することにより、麦中のβグルカンを高濃度に含有する顆粒を得ることができるものである。
【0016】
前記粉砕物について、シフター等の分級器を用いて篩い、40?600μm以上の顆粒、より好ましくは60?400μmの顆粒を得る。前記40?600μm以上の顆粒には、麦の平均βグルカン含量である4?5重量%に対し、4?6倍の20?25重量%のβグルカンが含まれ、高濃度のβグルカンを得ることができる。
【0017】
又、前記40?600μmの範囲の顆粒には、麦の平均不溶性食物繊維含量である2?4重量%に対し、3?5倍の高濃度の不溶性食物繊維が含有され、総食物繊維としては、麦の平均総食物繊維の3?5倍の高濃度の総食物繊維が含有される。」

記載(1-3)
「【0022】
前記により得られた、40?600μmの範囲の顆粒、より好ましくは60?400μmの顆粒は、麦由来のβ(1,3、1,4)グルカン及び食物繊維を高濃度に含有するために、血中コレステロール低下、血糖値上昇抑制、抗アレルギー作用、整腸作用、免疫増強作用、皮膚の保湿作用等の様々な生体調節機能を有する食品素材として用いられることができる。又本発明の顆粒は、βグルカンを高濃度に含有するために、食品に由来する食品増粘剤としても用いることができる。
【0023】
前記顆粒を用いた生体調節機能を有する食品素材として具体的には、食パン、菓子パン、惣菜パン、フランスパン、クロワッサン、パイ、カステラ、スポンジケーキ、バターケーキ、シュー、ワッフル、蒸しパン、ピザ等のベーカリー製品、ドーナツ、ビスケット、クラッカー、饅頭、和菓子、ようかん、最中、ういろう、団子、大福もち、キャンデー、ガム、チョコレート、飴、アイスクリーム、ソフトクリーム、シャーベット、アイスキャンデー、ラクトアイス、氷菓、ゼリー、プリン等の製菓類、
【0024】
うどん、パスタ、ほうとう、中華そば、焼きそば、ちゃんぽん、そば、ひやむぎ、そうめん等のめん類、味噌、ジャム、たれ、ソース、ウスターソース、トマトソース、トマトケチャップ、トマトペースト、トマトピューレ、チリソース、ドレッシング、マヨネーズ、タルタルソース等の調味料類、シチュー、ポタージュスープ、コンソメスープ、味噌汁、雑煮、カレー等のスープ類、清涼飲料水、炭酸飲料水、ジュース、果汁、野菜ジュース、トマトジュース、シェーク、コーヒー、カフェオレ、スポーツドリンク等の飲料、牛乳、加工乳、ヨーグルト、乳清飲料、乳酸菌飲料等の乳製品、
【0025】
ホットケーキミックス、ケーキミックス、スナックロールミックス、ドーナツミックス、イーストドーナツミックス、菓子パンミックス、蒸しパンミックス、ピザミックス、お好み焼きミックス、たこ焼きミックス、餃子ミックス、バッターミックス、フリッターミックス、天ぷら粉、唐揚げ粉、ブレッダーミックス等のプレミックス、米飯類、おにぎり、にぎり寿司、まき寿司、ちらし寿司、餅、炒飯、ピラフ、お茶漬け、ドリア、ビーフン、あられ、せんべい等の米加工品、
【0026】
シリアル、ピロシキ、コーンフレーク、コーンスナック、ポップコーン、ポテトスナック、ポテトチップ、スイートポテト、ポテトフライ等の穀物加工品、豆腐、豆乳、豆乳飲料、湯葉、油揚げ、厚揚げ、がんもどき、あん等の大豆加工品、ハンバーグ、ソーセージ、ハム、ミートボール、肉団子、肉まん、シュウマイ等の畜肉加工品、かまぼこ、さつま揚げ、つみれ、練り製品等の水産加工品、サプリメント、錠剤、ドリンク剤等の健康食品、アレルギー患者用食品、乳児用食品、老人用食品、美容食品、レトルト食品、低カロリー食品、冷凍食品、インスタント食品等を挙げることができる。
【0027】
又本発明の顆粒は、βグルカンを高濃度に含有するために、食品に由来する食品増粘剤としても用いることができる。前記顆粒を増粘剤として用いることができる食品として具体的には、食パン、菓子パン、惣菜パン、フランスパン、クロワッサン、パイ、カステラ、スポンジケーキ、バターケーキ、シュー、ワッフル、蒸しパン、ピザ等のベーカリー製品、ドーナツ、ビスケット、クラッカー、饅頭、和菓子、ようかん、最中、ういろう、団子、大福もち、キャンデー、ガム、チョコレート、飴、アイスクリーム、ソフトクリーム、シャーベット、アイスキャンデー、ラクトアイス、氷菓、ゼリー、プリン等の製菓類、
【0028】
うどん、パスタ、ほうとう、中華そば、焼きそば、ちゃんぽん、そば、ひやむぎ、そうめん等のめん類、味噌、ジャム、たれ、ソース、ウスターソース、トマトソース、トマトケチャップ、トマトペースト、トマトピューレ、チリソース、ドレッシング、マヨネーズ、タルタルソース等の調味料類、シチュー、ポタージュスープ、コンソメスープ、味噌汁、雑煮、カレー等のスープ類、清涼飲料水、炭酸飲料水、ジュース、果汁、野菜ジュース、トマトジュース、シェーク、コーヒー、カフェオレ、スポーツドリンク等の飲料、牛乳、加工乳、ヨーグルト、乳清飲料、乳酸菌飲料等の乳製品、
【0029】
ホットケーキミックス、ケーキミックス、スナックロールミックス、ドーナツミックス、イーストドーナツミックス、菓子パンミックス、蒸しパンミックス、ピザミックス、お好み焼きミックス、たこ焼きミックス、餃子ミックス、バッターミックス、フリッターミックス、天ぷら粉、唐揚げ粉、ブレッダーミックス等のプレミックス、ハンバーグ、ソーセージ、ハム、ミートボール、肉団子、肉まん、シュウマイ等の畜肉加工品、かまぼこ、さつま揚げ、つみれ、練り製品等の水産加工品、及びレトルト食品、低カロリー食品、冷凍食品、インスタント食品等を挙げることができる。」

記載(1-4)
「【実施例】
【0030】
以下に本発明の更に具体的内容を実施例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
本実施例に使用した大麦は、新潟県産ファイバースノーを用いた。該大麦をドッケージにて異物、夾雑物を除去して精選し、外周部から37%(搗精歩留まり63%)まで研削式搗精機((株)佐竹製作所社製、商品名:小型研削精米機RME25A)を用いて精白した後、水分値が15±1%になるように加水し、75℃以上に加熱されるよう蒸し器を用いて加熱蒸気処理した後、麦厚が0.9mm以下になるようドラムドライヤー(ジョンソンボイラ(株)社製、商品名:ドラムドライヤーJM-T)を用い圧扁して、圧扁大麦を得た。該圧扁大麦を放冷して冷却し、水分値が14.5%以下になるように加熱乾燥機(ヤマト科学(株)社製、商品名:ヤマト精密恒温器Fine Oven DF62)で乾燥した後、イクシードミル(槇野産業社製、商品名:イクシードミルEM-1A)を用いて、粉砕回転数19800rpmで粉砕して、大麦粒粉砕物を得た。該大麦粒粉砕物の目開き600μmのシフタースルー品を、本実施例1の大麦粒粉砕品の供用物とした。
【0031】
前記大麦粒粉砕物を、空気分級機(ALPINE社製)を用い、シフター(IIDA MANUFACTURING社製、商品名THE IIDA TESTING SIEVE)の目開き150μで空気分級し、オーバー品を分級1の粉砕品(以下単に分級品1ということがある。又以下の他のサイズの分級も同等である。)とした。目開き150μのシフタースルー品を目開き106μのシフターで空気分級し、オーバー品を分級品2とした。目開き106μのシフタースルー品を目開き75μのシフターで空気分級し、オーバー品を分級品3とした。目開き75μのシフタースルー品を目開き53μのシフターで空気分級し、オーバー品を分級品4とした。目開き53μのシフタースルー品を分級品5とした。各分級品の構成割合を表1に示す。なお比較例として、前記実施例1の大麦粒粉砕品の供用物について空気分級を行わなかった粉砕品を用いた。」

記載(1-5)
「【0037】
又前記各分級品について、不溶性食物繊維の含量を、酵素重量法により測定した。総食物繊維の含量は、水溶性食物繊維(βグルカン)含量と不溶性食物繊維含量をトータルして求めた。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
前記表1より、大麦粒粉砕物の各分級品におけるβグルカン含有量は、分級品1は12.24、分級品2は16.89、分級品3は23.40、分級品4は20.33、分級品5は0.74となり、53μを境にしてβグルカンがきれいに分離されていることがわかった。また、106?75μの分級品3においてβグルカン含量が最も多く含まれた。また不溶性食物繊維の含量は、分級品1は4.27、分級品2は13.48、分級品3は13.98、分級品4は8.68、分級品5は0.25となり、53μを境にして不溶性食物繊維がきれいに分離されていることがわかった。また、106?75μの分級品3において、不溶性食物繊維含量が最も多く含まれた。」

記載(1-6)
「【0049】
<実施例4>
本発明の大麦粉砕品について、増粘剤としての効果を検討した。実施例1で得られた分級品1、分級品2、分級品3と分級品4の混合(分級品3と分級品4は収量が少なかったため混合した)、及び分級品5のそれぞれを、熊本製粉社製の小麦粉(商品名:赤銀杏)に20重量%添加し、ビニール袋内で均一になるよう1分間混合し、ミックスを調整した。又比較対照として、既存の増粘剤(グアーガム)(太陽化学社製、商品名:ネオソフトG)を1%添加したミックスを比較例とした。
【0050】
前記により調整した各ミックスの増粘効果を調べるために、粘度を経時的に測定した。粘度はブルックフィールド社製のB型粘度計を使用した。まず、ボールに冷水(15℃)を250g入れて、ミックス100gを加え、40秒間で120回攪拌し、バッター液を作成した。5分間室温で放置し、その後B型粘度計にて3号ローター、12rpmで測定し、30秒後の数値を、0hの粘度値とした。0h測定後、バッター液を室温で保存し、30分経過毎に粘度を測定し、2時間経過後まで測定した。結果を表4に示す。
【0051】
【表4】

【0052】
表4の結果、分級品3、4の混合品が最も増粘効果が高いことが分かった。各分級品を添加したものは、測定開始後から粘度が上昇し、30分程で粘度値のピークを迎え、その後の経時変化では粘度値が下がりにくく、粘度安定効果を持つことがわかった。分級品5には増粘効果は見られなかった。グアーガムについては、測定開始後から粘度が下降し、その後の経時変化でも粘度安定性は見られなかった。」

記載(1-7)
「【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の顆粒は、麦のβグルカン、及び食物繊維を多量に含有する一方で、麦のデンプン等の含量が少ない顆粒であり、食品に添加することにより、βグルカンが有する血中コレステロール低下、血糖値上昇抑制、抗アレルギー作用、整腸作用、免疫増強作用、皮膚の保湿作用などの機能を有する食品、及び食物繊維を高濃度に含有する食品を提供することができる。又本発明の顆粒は、βグルカンを高濃度に含有するために、食品に由来する食品増粘剤としても用いることができる。一方で本発明の顆粒は、麦のデンプン等の含量が少ない顆粒であることから、本発明の顆粒を添加しても、食品の食感を損ね、製パン性等の加工適性を損ねることが少ない食品を得ることができる。」

(2)甲2の記載
甲2には、以下の事項が記載されている。
記載(2-1)
「【請求項1】 (a)小麦粉から主としてなる穀粉類;(b)アセチル化ワキシー澱粉、架橋処理ワキシー澱粉、アセチル化し且つ架橋処理したワキシー澱粉、アセチル化タピオカ澱粉、架橋処理タピオカ澱粉およびアセチル化し且つ架橋処理したタピオカ澱粉から選ばれる1種または2種以上の澱粉;並びに(c)キサンタンガムを含有することを特徴とするお好み焼類用またはタコ焼類用の組成物。」

記載(2-2)
「【請求項4】 (a)小麦粉から主としてなる穀粉類;(b)アセチル化ワキシー澱粉、架橋処理ワキシー澱粉、アセチル化し且つ架橋処理したワキシー澱粉、アセチル化タピオカ澱粉、架橋処理タピオカ澱粉およびアセチル化し且つ架橋処理したタピオカ澱粉から選ばれる1種または2種以上の澱粉;並びに(c)キサンタンガムを少なくとも用いて流動性の生地を調製し、必要に応じて前記の流動性の生地の調製時または調製後に具材を混合し、焼成することを特徴とするお好み焼類またはタコ焼類の製造方法。」

記載(2-3)
「【0022】そして、上記したお好み焼類用またはタコ焼類用の組成物に、適量の水、だし汁、醤油、ソース、ミリン、酒、卵液などの液体を加えて流動性の生地を調製し、その流動性の生地の調製時にまたは調製後に、生地中に好みに応じて、キャベツやその他の野菜類;肉類やその加工品;桜エビ、鰹節、タコ、その他の魚介類やその加工品;揚げ玉;チーズ、バター、その他の乳製品などの具材を加えて、熱板上に流して焼成したり、型に注入して焼成することによって、工場、食堂、商店、家庭などにおいて、良好な保形性で、ふっくらとしていて口当たりが良く、ジューシー感に優れる高品質のお好み焼類またはタコ焼類を短時間で極めて簡単につくることができる。」

記載(2-4)
「【0024】お好み焼類用またはタコ焼類用の組成物(ミックス粉)を使用する上記した方法、または該組成物(ミックス粉)を使用せずに各材料を製造時にそのまま混合する上記した方法でお好み焼類またはタコ焼類を製造するいずれの場合にも、水やその他の液体を加えて調製する流動性の生地の粘度を500?20000cps(25℃)にするのが好ましく、1500?10000cps(25℃)にするのがより好ましい。生地の粘度が500cps未満であると、熱板に流したり型内に注入する際の作業性が悪くなり易くなり、しかも焼成して得られるお好み焼類またはタコ焼類の食感が重く固いものになり易い。一方、生地の粘度が20000cpsを超えると流動性が高くなり過ぎて成形性が不良になり易く、しかも焼成して得られるお好み焼類またはタコ焼類は柔らか過ぎてべたついた食感になり易い。」

記載(2-5)
「【0037】《実施例 8》[タコ焼の製造]
(1) 薄力小麦粉750g、アセチル化し且つ架橋処理したワキシー澱粉(ナショナルスターチケミカル社製「コロフロ67」)100g、キサンタンガム3g、砂糖85gおよび食塩50gおよび調味料(株式会社シマヤ社製「だしの素」)12gを混合してタコ焼用組成物(タコ焼用ミックス粉)を調製した。
(2) 上記(1)で調製したタコ焼用組成物270gに全卵液30gおよび水700gを加えて均一に混合して粘度2000cps(25℃)の流動性の生地を調製した。
(3) 150?160℃に加熱タコ焼用の型内に油を塗り、1個の型窩当たり上記(2)で調製した流動性の生地約8gを注入した後、1個の型窩当たりタコ片4g、揚げ玉1g、紅ショウガ1gおよびキャベツ4gの割合で投入し、その上に更に1個の型窩当たり上記(2)で調製した流動性の生地約9gを注入して、型を閉鎖して常法にしたがって6分間加熱焼成したタコ焼を製造した。
(4) 上記(3)で製造したタコ焼を放冷後、-20℃に急速冷凍して、冷凍タコ焼を製造した。
(5) 上記(4)で製造した冷凍タコ焼を-20℃で10日間保存後に冷凍庫より取り出して、電子レンジ(出力1500W)で25秒/個の条件下に加熱解凍して、その保形性および食感を上記の表1に示した評価基準にしたがって10名のパネラーに評価してもらいその平均値を採ったところ、下記の表4に示すとおりであった。」

(3)甲3の記載
甲3には、以下の事項が記載されている。
記載(3-1)
「【0011】
【実施例】実施例125kgの薄力粉(平均粒子径50.7μm)をジェットミル粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製)を用いノズル半径5mm、ノズル元圧5.5kg/cm^(2)G、セパレータ回転数3000rpmの条件で粉砕を行い、平均粒子径4.45μmの粉砕薄力粉24.9kgを得た。次に小麦粉及び澱粉144gに対し、上記で得られた本発明品6g、砂糖6g、食塩3g、粉末だし3g、うまみ調味料1.5g、醤油7.5g、液全卵45g、水450gを均一になるまで良く混合し、たこ焼き用生地を得た。次いで熱したたこ焼きプレートに生地を注入し、青ネギ、桜えび、天かす、ゆでだこを加え、生地を返しながら8分間焼成し、本発明品のたこ焼きを得た。」

5 当審の判断
(1)甲1に記載された発明
記載(1-4)には、圧扁大麦をイクシードミルを用いて粉砕回転数19800rpmで粉砕して得た大麦粒粉砕物を空気分級することにより、目開き150μより大きく600μ以下のサイズを有する分級品1、目開き106μより大きく150μ以下のサイズを有する分級品2、目開き75μより大きく106μ以下のサイズを有する分級品3、目開き53μより大きく75μ以下のサイズを有する分級品4、及び、目開き53μ以下のサイズを有する分級品5を得たことが記載され、記載(1-6)には、小麦粉に分級品1を20重量%添加し均一に混合して得られたミックス、小麦粉に分級品2を20重量%添加し均一に混合して得られたミックス、小麦粉に分級品3及び分級品4を混合した上で添加し均一に混合して得られたミックス、及び、小麦粉に分級品5を添加し均一に混合して得られたミックスが記載されている。
また、この「ミックス」とは食品の製造方法において用いられることを前提にしたものと認められる。
したがって、甲1には、
「圧扁大麦をイクシードミルを用いて粉砕回転数19800rpmで粉砕して得た大麦粒粉砕物を空気分級することにより得られた、目開き150μより大きく600μ以下のサイズを有する分級品、目開き106μより大きく150μ以下のサイズを有する分級品、目開き53μより大きく106μ以下のサイズを有する分級品、または目開き53μ以下のサイズを有する分級品のいずれかを、小麦粉に20重量%添加し均一に混合して得られたミックス」の発明(以下、「甲1発明」という。)、及び、
「圧扁大麦をイクシードミルを用いて粉砕回転数19800rpmで粉砕して得た大麦粒粉砕物を空気分級することにより得られた、目開き150μより大きく600μ以下のサイズを有する分級品、目開き106μより大きく150μ以下のサイズを有する分級品、目開き53μより大きく106μ以下のサイズを有する分級品、または目開き53μ以下のサイズを有する分級品のいずれかを、小麦粉に20重量%添加し均一に混合して得られたミックスを用いた食品の製造方法」の発明(以下、「甲1製法発明」という。)が記載されていると認める。

(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
本件特許発明1における大麦粉は、技術常識に照らして、大麦を粉砕したものと認められる。
また、甲1発明においては、分級品を小麦粉に20重量%添加していることから、小麦粉と分級品の総重量に基づく分級品の含有率は、20/120=16.7質量%であると認められる。
すると、両者は、小麦粉及び大麦を粉砕したものから得られるものを含有する原料粉を含むものであって、大麦を粉砕したものから得られるものの含有率が、前記原料粉の総重量に基づいて15?70質量%の範囲にある点で一致し、
大麦を粉砕したものから得られるものが、本件特許発明1では「大麦粉(レーザー回折型粒度分布測定による平均粒子径が20μm以下であり、正規分布又は正規分布に近い粒度分布を示すものを除く)」であるのに対し、甲1発明では「圧扁大麦をイクシードミルを用いて粉砕回転数19800rpmで粉砕して得た大麦粒粉砕物を空気分級することにより得られた、目開き150μより大きく600μ以下のサイズを有する分級品、目開き106μより大きく150μ以下のサイズを有する分級品、目開き53μより大きく106μ以下のサイズを有する分級品、または目開き53μ以下のサイズを有する分級品のいずれか」である点(以下、「相違点(1-1)」という。)、及び、
原料粉を含むものが、本件特許発明1では「たこ焼粉」であるのに対し、甲1発明では「ミックス」である点(以下、「相違点(1-2)」という。)
で相違する。

イ 相違点についての判断
まず、相違点(1-1)について検討する。
記載(1-2)には、大麦などの麦を、イクシードミル等の粉砕機を使用して粉砕回転数が11800rpm以上、さらに好ましくは19800rpm以上で粉砕することにより、麦に含有されるデンプンが微小な粉末となる一方で、βグルカンを含む繊維質が比較的大きな顆粒となり、当該粉砕物を分級することにより、βグルカンを高濃度に含有する顆粒を得ることができること、及び、40?600μmの範囲の顆粒には、βグルカン及び不溶性食物繊維が高濃度で含有されることが示されている。
また、記載(1-4)及び記載(1-5)には、圧扁大麦をイクシードミルを用いて粉砕回転数19800rpmで粉砕して得た大麦粒粉砕物の目開き600μmのシフタースルー品であって空気分級を行わなかった粉砕品(比較例)に比して、圧扁大麦をイクシードミルを用いて粉砕回転数19800rpmで粉砕して得た大麦粒粉砕物を空気分級することにより得られた分級品のうち、目開き150μより大きく600μ以下のサイズを有する分級品1、目開き106μより大きく150μ以下のサイズを有する分級品2、目開き75μより大きく106μ以下のサイズを有する分級品3、及び、目開き53μより大きく75μ以下のサイズを有する分級品4に含まれるβグルカン及び不溶性食物繊維は極めて高濃度であり、目開き53μ以下のサイズを有する分級品5に含まれるβグルカン及び不溶性食物繊維は極めて低濃度であることが示されている。
これらの記載より、甲1発明における「圧扁大麦をイクシードミルを用いて粉砕回転数19800rpmで粉砕して得た大麦粒粉砕物を空気分級することにより得られた、目開き150μより大きく600μ以下のサイズを有する分級品、目開き106μより大きく150μ以下のサイズを有する分級品、目開き53μより大きく106μ以下のサイズを有する分級品、または目開き53μ以下のサイズを有する分級品のいずれか」のうち、「目開き150μより大きく600μ以下のサイズを有する分級品」、「目開き106μより大きく150μ以下のサイズを有する分級品」及び「目開き53μより大きく106μ以下のサイズを有する分級品」は、特定条件での粉砕後に特定のサイズ範囲となるように分級して得られたβグルカン及び不溶性食物繊維を極めて高濃度で含む顆粒であり、「目開き53μ以下のサイズを有する分級品」は、それらの分級品を除いたβグルカン及び不溶性食物繊維を極めて低濃度で含む残余物である一方、本件特許発明1における「大麦粉(レーザー回折型粒度分布測定による平均粒子径が20μm以下であり、正規分布又は正規分布に近い粒度分布を示すものを除く)」は、本件特許明細書の発明の詳細な説明(特に、段落0013)の記載及び技術常識から、「大麦を適当な製粉方法により粉状に調製したもの」のうち「レーザー回折型粒度分布測定による平均粒子径が20μm以下であり、正規分布又は正規分布に近い粒度分布を示すものを除く」ものと解されるから、両者は、当業者に異なる物として理解されるものといえる。
甲1には、大麦粒粉砕物を空気分級することにより得られた分級品ではない大麦粉そのものを小麦粉に添加して「ミックス」とすることについての記載はなく、記載(1-1)?記載(1-6)を含む甲1の記載、記載(2-1)?記載(2-5)を含む甲2の記載、及び記載(3-1)を含む甲3の記載を参酌しても、甲1発明における「圧扁大麦をイクシードミルを用いて粉砕回転数19800rpmで粉砕して得た大麦粒粉砕物を空気分級することにより得られた、目開き150μより大きく600μ以下のサイズを有する分級品、目開き106μより大きく150μ以下のサイズを有する分級品、目開き53μより大きく106μ以下のサイズを有する分級品、または目開き53μ以下のサイズを有する分級品のいずれか」を「大麦粉(レーザー回折型粒度分布測定による平均粒子径が20μm以下であり、正規分布又は正規分布に近い粒度分布を示すものを除く)」に変更する動機づけを見出すことはできない。
したがって、甲1?甲3の記載を参酌しても、甲1発明に対して、その「圧扁大麦をイクシードミルを用いて粉砕回転数19800rpmで粉砕して得た大麦粒粉砕物を空気分級することにより得られた、目開き150μより大きく600μ以下のサイズを有する分級品、目開き106μより大きく150μ以下のサイズを有する分級品、目開き53μより大きく106μ以下のサイズを有する分級品、または目開き53μ以下のサイズを有する分級品のいずれか」を「大麦粉(レーザー回折型粒度分布測定による平均粒子径が20μm以下であり、正規分布又は正規分布に近い粒度分布を示すものを除く)」に変更することを、当業者が容易に想到し得たとすることはできず、相違点(1-2)について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明及び甲1?甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。

ウ 効果についての判断
本件特許発明1は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、「具材の種類や量、調理者の技量に係わらず、表面がカリッと香ばしく、内部はとろみがあり、滑らかで口溶けが良い食感で、焼成時の成形性、及び焼成後の保形性に優れるたこ焼を、一定の品質で効率良く製造することができる。」(本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0011)という効果を奏するものと認められる。
記載(1-7)には「……本発明の顆粒は、麦のデンプン等の含量が少ない顆粒であることから、本発明の顆粒を添加しても、食品の食感を損ね、製パン性等の加工適性を損ねることが少ない食品を得ることができる。」と記載されているものの、本件特許発明1における「大麦粉(レーザー回折型粒度分布測定による平均粒子径が20μm以下であり、正規分布又は正規分布に近い粒度分布を示すものを除く)」は、上述のとおり、麦のデンプン等の含量が少ない顆粒とは異なる物として、当業者に理解されるものであるから、この記載は、本件特許発明1のたこ焼粉が「具材の種類や量、調理者の技量に係わらず、表面がカリッと香ばしく、内部はとろみがあり、滑らかで口溶けが良い食感で、焼成時の成形性、及び焼成後の保形性に優れるたこ焼を、一定の品質で効率良く製造することができる。」という効果を奏することを、当業者が予想できることを示すものではない。
また、甲1?甲3には、「具材の種類や量、調理者の技量に係わらず、表面がカリッと香ばしく、内部はとろみがあり、滑らかで口溶けが良い食感で、焼成時の成形性、及び焼成後の保形性に優れるたこ焼を、一定の品質で効率良く製造することができる。」という本件特許発明1の効果に関する記載はなく、甲1?甲3の記載を検討しても、本件特許発明1による効果を当業者の予想し得たものとする根拠を見出すことはできない。
したがって、本件特許発明1の効果は、当業者の予想できない顕著な効果であると認められる。

エ 異議申立人の主張について
異議申立人は、甲1の実施例4で用いられる顆粒が「大麦粉」であることを前提にして、本件特許発明1は甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである旨を主張する。
しかし、上述のとおり、甲1の実施例4で用いられる顆粒は、「圧扁大麦をイクシードミルを用いて粉砕回転数19800rpmで粉砕して得た大麦粒粉砕物を空気分級することにより得られた、目開き150μより大きく600μ以下のサイズを有する分級品、目開き106μより大きく150μ以下のサイズを有する分級品、目開き53μより大きく106μ以下のサイズを有する分級品、または目開き53μ以下のサイズを有する分級品のいずれか」であって、そのサイズ並びにβグルカン及び不溶性食物繊維の含有割合からみても、本件特許発明1における「大麦粉(レーザー回折型粒度分布測定による平均粒子径が20μm以下であり、正規分布又は正規分布に近い粒度分布を示すものを除く)」とは異なる物として、当業者に理解されるものといえるから、甲1の実施例4で用いられる顆粒が「大麦粉」であることを前提にした異議申立人の上記主張は受け入れられない。

オ 小括
以上のとおり、本件特許発明1は、甲1発明及び甲1?甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件特許発明2について
ア 対比
本件特許発明2と甲1製法発明を対比する。
本件特許発明2における大麦粉は、技術常識に照らして、大麦を粉砕したものと認められる。
また、甲1製法発明においては、分級品を小麦粉に20重量%添加して「ミックス」としていることから、甲1製法発明における「ミックス」は、本件特許発明2における「原料粉」とは、小麦粉及び大麦を粉砕したものから得られるものを含有する混合物である点で共通し、その小麦粉と分級品の総重量に基づく分級品の含有率は、20/120=16.7質量%であると認められる。
すると、両者は、小麦粉及び大麦を粉砕したものから得られるものを含有する混合物であって、大麦を粉砕したものから得られるものの含有率が、前記原料粉の総重量に基づいて15?70質量%の範囲にある混合物を用いる方法である点で一致し、
大麦を粉砕したものから得られるものが、本件特許発明2では「大麦粉(レーザー回折型粒度分布測定による平均粒子径が20μm以下であり、正規分布又は正規分布に近い粒度分布を示すものを除く)」であるのに対し、甲1製法発明では「圧扁大麦をイクシードミルを用いて粉砕回転数19800rpmで粉砕して得た大麦粒粉砕物を空気分級することにより得られた、目開き150μより大きく600μ以下のサイズを有する分級品、目開き106μより大きく150μ以下のサイズを有する分級品、目開き53μより大きく106μ以下のサイズを有する分級品、または目開き53μ以下のサイズを有する分級品のいずれか」である点(以下、「相違点(2-1)」という。)、
本件特許発明2では「原料粉並びに水を含む生地材料を混合してたこ焼用生地を調製する工程、及び前記たこ焼用生地を、必要に応じて具材と共に焼成する工程」を含むのに対し、甲1製法発明では、工程について特定されていない点(以下、「相違点(2-2)」という。)、及び
製造されるものが、本件特許発明2では「たこ焼」であるのに対し、甲1製法発明では「食品」である点(以下、「相違点(2-3)」という。)
で相違する。

イ 相違点についての判断
まず、相違点(2-1)について検討する。
記載(1-2)には、大麦などの麦を、イクシードミル等の粉砕機を使用して粉砕回転数が11800rpm以上、さらに好ましくは19800rpm以上で粉砕することにより、麦に含有されるデンプンが微小な粉末となる一方で、βグルカンを含む繊維質が比較的大きな顆粒となり、当該粉砕物を分級することにより、βグルカンを高濃度に含有する顆粒を得ることができること、及び、40?600μmの範囲の顆粒には、βグルカン及び不溶性食物繊維が高濃度で含有されることが示されている。
また、記載(1-4)及び記載(1-5)には、圧扁大麦をイクシードミルを用いて粉砕回転数19800rpmで粉砕して得た大麦粒粉砕物の目開き600μmのシフタースルー品であって空気分級を行わなかった粉砕品(比較例)に比して、圧扁大麦をイクシードミルを用いて粉砕回転数19800rpmで粉砕して得た大麦粒粉砕物を空気分級することにより得られた分級品のうち、目開き150μより大きく600μ以下のサイズを有する分級品1、目開き106μより大きく150μ以下のサイズを有する分級品2、目開き75μより大きく106μ以下のサイズを有する分級品3、及び、目開き53μより大きく75μ以下のサイズを有する分級品4に含まれるβグルカン及び不溶性食物繊維は極めて高濃度であり、目開き53μ以下のサイズを有する分級品5に含まれるβグルカン及び不溶性食物繊維は極めて低濃度であることが示されている。
これらの記載より、甲1製法発明における「圧扁大麦をイクシードミルを用いて粉砕回転数19800rpmで粉砕して得た大麦粒粉砕物を空気分級することにより得られた、目開き150μより大きく600μ以下のサイズを有する分級品、目開き106μより大きく150μ以下のサイズを有する分級品、目開き53μより大きく106μ以下のサイズを有する分級品、または目開き53μ以下のサイズを有する分級品のいずれか」のうち、「目開き150μより大きく600μ以下のサイズを有する分級品」、「目開き106μより大きく150μ以下のサイズを有する分級品」及び「目開き53μより大きく106μ以下のサイズを有する分級品」は、特定条件での粉砕後に特定のサイズ範囲となるように分級して得られたβグルカン及び不溶性食物繊維を極めて高濃度で含む顆粒であり、「目開き53μ以下のサイズを有する分級品」は、それらの分級品を除いたβグルカン及び不溶性食物繊維を極めて低濃度で含む残余物である一方、本件特許発明2における「大麦粉(レーザー回折型粒度分布測定による平均粒子径が20μm以下であり、正規分布又は正規分布に近い粒度分布を示すものを除く)」は、本件特許明細書の発明の詳細な説明(特に、段落0013)の記載及び技術常識から、「大麦を適当な製粉方法により粉状に調製したもの」のうち「レーザー回折型粒度分布測定による平均粒子径が20μm以下であり、正規分布又は正規分布に近い粒度分布を示すものを除く」ものと解されるから、両者は、当業者に異なる物として理解されるものといえる。
甲1には、大麦粒粉砕物を空気分級することにより得られた分級品ではない大麦粉そのものを小麦粉に添加して「ミックス」とすることについての記載はなく、記載(1-1)?記載(1-6)を含む甲1の記載、記載(2-1)?記載(2-5)を含む甲2の記載、及び記載(3-1)を含む甲3の記載を参酌しても、甲1製法発明における「圧扁大麦をイクシードミルを用いて粉砕回転数19800rpmで粉砕して得た大麦粒粉砕物を空気分級することにより得られた、目開き150μより大きく600μ以下のサイズを有する分級品、目開き106μより大きく150μ以下のサイズを有する分級品、目開き53μより大きく106μ以下のサイズを有する分級品、または目開き53μ以下のサイズを有する分級品のいずれか」を「大麦粉(レーザー回折型粒度分布測定による平均粒子径が20μm以下であり、正規分布又は正規分布に近い粒度分布を示すものを除く)」に変更する動機づけを見出すことはできない。
したがって、甲1?甲3の記載を参酌しても、甲1製法発明に対して、その「圧扁大麦をイクシードミルを用いて粉砕回転数19800rpmで粉砕して得た大麦粒粉砕物を空気分級することにより得られた、目開き150μより大きく600μ以下のサイズを有する分級品、目開き106μより大きく150μ以下のサイズを有する分級品、目開き53μより大きく106μ以下のサイズを有する分級品、または目開き53μ以下のサイズを有する分級品のいずれか」を「大麦粉(レーザー回折型粒度分布測定による平均粒子径が20μm以下であり、正規分布又は正規分布に近い粒度分布を示すものを除く)」に変更することを、当業者が容易に想到し得たとすることはできず、相違点(2-2)及び相違点(2-3)について検討するまでもなく、本件特許発明2は甲1製法発明及び甲1?甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。

ウ 効果についての判断
本件特許発明2は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、「たこ焼の内部にとろみを付与するため、生地に含まれる水の量を多くしても、良好な食感を有するたこ焼を一定の品質で得られる上、短時間での焼成が可能なので、時間、及びエネルギーコスト的にも有利である。」(本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0011)という効果を奏するものと認められる。
記載(1-7)には「……本発明の顆粒は、麦のデンプン等の含量が少ない顆粒であることから、本発明の顆粒を添加しても、食品の食感を損ね、製パン性等の加工適性を損ねることが少ない食品を得ることができる。」と記載されているものの、本件特許発明2における「大麦粉(レーザー回折型粒度分布測定による平均粒子径が20μm以下であり、正規分布又は正規分布に近い粒度分布を示すものを除く)」は、上述のとおり、麦のデンプン等の含量が少ない顆粒とは異なる物として、当業者に理解されるものであるから、この記載は、本件特許発明2の製造方法が「たこ焼の内部にとろみを付与するため、生地に含まれる水の量を多くしても、良好な食感を有するたこ焼を一定の品質で得られる上、短時間での焼成が可能なので、時間、及びエネルギーコスト的にも有利である。」という効果を奏することを、当業者が予想できることを示すものではない。
また、甲1?甲3には、「たこ焼の内部にとろみを付与するため、生地に含まれる水の量を多くしても、良好な食感を有するたこ焼を一定の品質で得られる上、短時間での焼成が可能なので、時間、及びエネルギーコスト的にも有利である。」(本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0011)という本件特許発明2の効果に関する記載はなく、甲1?甲3の記載を検討しても、本件特許発明2による効果を当業者の予想し得たものとする根拠を見出すことはできない。
したがって、本件特許発明2の効果は、当業者の予想できない顕著な効果であると認められる。

エ 異議申立人の主張について
異議申立人は、本件特許発明2における工程は甲2の記載及び甲3の記載によるまでもなく、本件特許の出願前に周知慣用の方法であり、本件特許発明2で使用する原料粉は、本件特許発明1について述べたとおり、当業者が容易に発明できたものである以上、本件特許発明2は甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである旨を主張する。
しかし、上述のとおり、本件特許発明2で使用する原料粉を、当業者が容易に発明することができたものとすることはできないから、本件特許発明2で使用する原料粉が、当業者が容易に発明をすることができたものであることを前提にした異議申立人の上記主張は受け入れられない。

オ 小括
以上のとおり、本件特許発明2は、甲1製法発明及び甲1?甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件特許発明3及び本件特許発明4について
本件特許発明3及び本件特許発明4は、いずれも、本件特許発明2の発明特定事項をすべて、その発明特定事項としているから、上記(3)に示したとおり、本件特許発明2が、甲1製法発明及び甲1?甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件特許発明3及び本件特許発明4もまた、甲1製法発明及び甲1?甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?4に係る特許を取消すことはできない。
また、他に請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-06-29 
出願番号 特願2016-31961(P2016-31961)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 戸来 幸男  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 村上 騎見高
関 美祝
登録日 2020-09-11 
登録番号 特許第6762730号(P6762730)
権利者 昭和産業株式会社
発明の名称 たこ焼粉、及びたこ焼の製造方法  
代理人 野村 悟郎  

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