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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1376145
審判番号 不服2020-10956  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-06 
確定日 2021-08-10 
事件の表示 特願2018- 8341「端末装置、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月 7日出願公開、特開2018- 88268、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年6月30日に出願された特願2016-130785号の一部を、平成29年10月6日に新たな出願とした特願2017-195897号の一部を、平成30年1月22日に新たな出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 1月31日 :手続補正書の提出
令和 2年 1月30日付け:拒絶理由通知
令和 2年 4月 1日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 4月27日付け:拒絶査定(原査定)
令和 2年 8月 6日 :審判請求書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和2年4月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1ないし4に係る発明は、以下の引用文献1ないし5に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[引用文献等一覧]
1 特許第5876607号公報
2 特開2014-142882号公報(周知技術を示す文献)
3 特開2015-049721号公報(周知技術を示す文献)
4 国際公開第2009/093435号(周知技術を示す文献)
5 特開2015-151059号公報(周知技術を示す文献)

[当審注]
上記引用文献5は、原査定においては引用文献6として提示されている。

第3 本願発明
本願請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、令和2年4月1日に提出された手続補正書に係る手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される発明であり、このうち本願発明1は以下のとおりの発明である。

「 両眼視差を利用した立体視画像として、仮想空間内の仮想視点からの視界を表す視界画像を表示可能なヘッドマウントディスプレイシステムの少なくとも一部として利用可能な端末装置であって、
前記端末装置の方向に関する情報を検出する検出部と、
ユーザからの選択の有無を判定する判定領域を有する選択オブジェクトを、前記仮想空間内に配置するオブジェクト配置部と、
前記検出部の検出結果に応じて前記仮想空間内の前記仮想視点からの視界方向に配置されている前記選択オブジェクトを表示部に表示させる表示制御部と、
を備え、
前記選択オブジェクトの選択の有無を決定するための閾値としての判定時間が予め設定されており、
前記オブジェクト配置部は、
前記仮想視点からの視線方向に対応する視線位置と前記選択オブジェクトの判定領域とが前記視線方向において重ならない位置関係から重なる位置関係になったときの前記視線位置の移動速度が所定値以上の場合には、当該位置関係になってから前記判定時間未満の所定の時間経過した後に前記選択オブジェクトの判定領域を変更し、前記視線位置の移動速度が前記所定値未満の場合には、当該位置関係になってから前記所定の時間が経過しなくとも前記選択オブジェクトの判定領域を変更する、
端末装置。」

なお、本願発明2及び3は本願発明1を減縮した発明であり、本願発明4は、本願発明1ないし3に対応する「プログラム」の発明であり、本願発明1ないし3とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0033】
以下、図2?9を用いて、ウィジェット201の仮想空間上での動きを説明する。この説明は、注視点は、視野の中央に固定され、カーソル202も画面の中央に固定されつつ表示されていることを前提としてなされているが、注視点が視野の中央からは偏移した位置に置かれている場合、視野を固定しつつ注視点を移動させることができる場合、カーソル202の表示が省略されたりウィジェット202と近接した場合のみに表示されたりする場合にも適用することができる。したがって、カーソル202が表示されない場合には、カーソル202の代わりに注視点と解釈すればよい。」

「【0078】
図13は、ウィジェット201を表示するためのシステム1300の概要を示す図である。
図13に示すように、システム1300は、ヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)1310、制御回路部1320、ポジション・トラッキング・カメラ(位置センサ)1330、並びに外部コントローラ1340を備える。
【0079】
ヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)1310は、ディスプレイ1312およびセンサ1314を具備する。ディスプレイ1312は、ユーザの視野を完全に覆うよう構成された非透過型の表示装置であり、ユーザはディスプレイ1312に表示される画面のみを観察することができる。そして、非透過型のヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)1310を装着したユーザは、外界の視野を全て失うため、制御回路部1320において実行されるアプリケーションにより表示される仮想空間に完全に没入する表示態様となる。
【0080】
ヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)1310が具備するセンサ1314は、ディスプレイ1312近辺に固定される。センサ1314は、地磁気センサ、加速度センサ、および/または傾き(角速度、ジャイロ)センサを含み、これらの1つ以上を通じて、ユーザの頭部に装着されたヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)1310(ディスプレイ1312)の各種動きを検知することができる。特に角速度センサの場合には、図14のように、ヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)1310の動きに応じて、ヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)1310の3軸回りの角速度を経時的に検知し、各軸回りの角度(傾き)の時間変化を決定することができる。」

「【0083】
代替として、制御回路部1320は、オブジェクト操作装置として、ヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)1310内部に搭載されてもよい。ここでは、制御回路部1320は、オブジェクト操作装置の全部または一部の機能のみを実装することができる。一部のみを実装した場合には、残りの機能をヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)1310側、またはネットワークを通じたサーバ・コンピュータ(図示せず)側に実装してもよい。」

「【0087】
図16のブロック図は、本発明の実施の形態による、3次元仮想空間内のオブジェクト操作を実装するために、制御回路部1320を中心にコンポーネントの主要機能の構成を示したものである。制御回路部1320では、主に、センサ1314/ポジション・トラッキング・カメラ(位置センサ)1330および外部コントローラ1340からの入力を受け、該入力を処理してディスプレイ1312への出力を行う。制御回路部1320は、主に、動き検知部1610、注視点移動部1621および視野画像生成部1630、並びにウィジェット制御部1640を含み、各種情報を処理する。
【0088】
動き検知部1610では、センサ1314/ポジション・トラッキング・カメラ(位置センサ)1330からの動き情報の入力に基づいて、ユーザの頭部に装着されたヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)1310の動きデータを測定する。本発明では、特に、傾きセンサ1314により経時的に検知される角度情報、およびポジション・トラッキング・カメラ(位置センサ)1330により経時的に検知される位置情報を決定する。
【0089】
視野移動部1620は、空間情報格納部1650に格納された3次元仮想空間情報、並びに傾きセンサ1314に検知される角度情報、および位置センサ130に検知される位置情報に基づく仮想カメラの視野方向の検知情報に基づいて視野情報を求める。視野移動部1620に含まれる注視点移動部1621は、その視野情報に基づいて、3次元仮想空間における注視点情報を決定する。なお、眼球の移動を検知したり、なんらかの補助的な入力を用いたりすることによって、視野の移動とは独立して注視点を移動させることができる場合には、この注視点移動部1621は、それも併せて処理することとなる。
【0090】
また、視野移動部1620において、ヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)が、センサ1314/ポジション・トラッキング・カメラ(位置センサ)1330によって計測した操作者の頭部の動きを用い、仮想空間中の視野が移動するように制御するように構成することが望ましい。
【0091】
視野画像生成部1630は、その視野情報と、ウィジェット制御部1640から送られてくるウィジェット201の位置に基づいて視野画像を生成する。
ウィジェット制御部1640は、図11,12で示した制御の大半をつかさどる部分である。具体的には、ウィジェット制御部1640は、ウィジェット選択部1641、入力部1642、ウィジェット移動部1643、ウィジェット移動速度再初期化部1644、ウィジェット視野外判定部1645、ウィジェット速度設定部1646を有している。ウィジェット選択部1641はウィジェット201とカーソル202が重なっているかを判断し、ウィジェット201とカーソル202が重なっていると判断されたときは、ウィジェット201を選択状態の表示に変化させる処理を行い、入力部1642はウィジェット201が一定時間以上選択状態となっているかを判断し、一定時間以上選択状態となっている場合には、選択されているウィジェット201に対応した操作を実行する。…(以下省略)」

「【図13】



(2)引用発明
前記(1)で摘記した引用文献1の【0083】より、上記引用文献1には、
「オブジェクト操作装置」としての「制御回路部1320」を内部に搭載した「ヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)1310」が記載されているといえる。
よって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 オブジェクト操作装置としての制御回路部1320を内部に搭載したヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)1310であって、
注視点は、視野の中央に固定され、カーソル202も画面の中央に固定されつつ表示されていることを前提とし、
システム1300は、ヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)1310、制御回路部1320、ポジション・トラッキング・カメラ(位置センサ)1330、並びに外部コントローラ1340を備え、
ヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)1310は、ディスプレイ1312およびセンサ1314を具備し、ディスプレイ1312は、ユーザの視野を完全に覆うよう構成された非透過型の表示装置であり、非透過型のヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)1310を装着したユーザは、外界の視野を全て失うため、制御回路部1320において実行されるアプリケーションにより表示される仮想空間に完全に没入する表示態様となり、
ヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)1310が具備するセンサ1314は、ディスプレイ1312近辺に固定され、センサ1314は、地磁気センサ、加速度センサ、および/または傾き(角速度、ジャイロ)センサを含み、これらの1つ以上を通じて、ユーザの頭部に装着されたヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)1310(ディスプレイ1312)の各種動きを検知することができ、
制御回路部1320は、主に、動き検知部1610、注視点移動部1621および視野画像生成部1630、並びにウィジェット制御部1640を含み、各種情報を処理し、
動き検知部1610では、センサ1314/ポジション・トラッキング・カメラ(位置センサ)1330からの動き情報の入力に基づいて、ユーザの頭部に装着されたヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)1310の動きデータを測定し、
視野移動部1620は、空間情報格納部1650に格納された3次元仮想空間情報、並びに傾きセンサ1314に検知される角度情報、および位置センサ130に検知される位置情報に基づく仮想カメラの視野方向の検知情報に基づいて視野情報を求め、
また、視野移動部1620において、ヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)が、センサ1314/ポジション・トラッキング・カメラ(位置センサ)1330によって計測した操作者の頭部の動きを用い、仮想空間中の視野が移動するように制御するように構成することが望ましく、
視野画像生成部1630は、その視野情報と、ウィジェット制御部1640から送られてくるウィジェット201の位置に基づいて視野画像を生成し、
ウィジェット制御部1640は、ウィジェット選択部1641、入力部1642、ウィジェット移動部1643、ウィジェット移動速度再初期化部1644、ウィジェット視野外判定部1645、ウィジェット速度設定部1646を有し、
ウィジェット選択部1641はウィジェット201とカーソル202が重なっているかを判断し、ウィジェット201とカーソル202が重なっていると判断されたときは、ウィジェット201を選択状態の表示に変化させる処理を行い、
入力部1642はウィジェット201が一定時間以上選択状態となっているかを判断し、一定時間以上選択状態となっている場合には、選択されているウィジェット201に対応した操作を実行する、
制御回路部1320。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、視線の位置を検出して文字などの情報を入力する視線入力装置に関する。」

「【0008】
以下、本発明の実施の形態による視線入力装置の構成について、図面を参照しながら説明する。
図1を参照すると、視線入力装置100は、ディスプレイ1と、ディスプレイ1が取り付けられた筐体2とを有し、ディスプレイ1は、一覧表示部10と入力情報表示部20とを有する。一覧表示部10は、入力候補としての複数の単位情報、例えば平仮名を50音順に一覧表示する画面である。平仮名の一文字が単位情報に相当する。入力情報表示部20は、入力候補としての複数の単位情報の中から選択され、入力決定された単位情報を表示する画面である。
【0009】
筐体2には、ディスプレイ1の他に、視線検出用のカメラ30及び操作部材40が取り付けられている。
視線検出用カメラ30は、筐体2の上側に配設されており、一覧表示部10を見つめて入力動作を行う操作者の眼を撮影する。なお、視線検出用カメラ30の配設位置は、筐体2の上側に限らず、筐体2の右側、左側又は下側でもよいし、視線検出用カメラ30の台数は複数でもよい。」

「【0011】
図2のブロック図を参照しながら、各ブロックの機能を説明する。視線入力装置100は、前述した一覧表示部10、入力情報表示部20、視線検出用カメラ30及び操作部材40に加えて、記録部50及び制御部60を備える。一覧表示部10、入力情報表示部20、視線検出用カメラ30、操作部材40及び記録部50はそれぞれ、制御部60と電気的に接続されている。
【0012】
記録部50は、不図示のRAMに一時的に記憶された各種の情報を、例えばメモリカードに記憶させる。
制御部60は、表示制御部61、視線検出部62、選択決定部63、及び情報入力部64を有し、一覧表示部10、入力情報表示部20、視線検出用カメラ30、操作部材40、記録部50の各ブロックとの間で電気信号或いはデータの授受を行うことにより、各種の演算や、不図示のROMに記憶されているプログラムを実行する。」

「【0020】
<入力動作>
図3を参照して、視線入力動作に伴う一覧表示部10の画面表示の変化を説明する。視線入力装置100が起動されると、表示制御部61が図3(a)に示されるように、50音の平仮名を一覧表示部10に表示する。この初期の一覧表示状態では、表示枠Rに取り囲まれた平仮名文字が、縦及び横方向に互いに間隔を隔てて、所定のピッチで配列される。操作者が入力したい文字、例えば文字「つ」を連続して第1の所定時間、注視すると、視線検出用カメラ30と視線検出部62が操作者の視線の位置を検出し、一覧表示部10上の視線の位置に対応する文字「つ」に関する文字情報を検出信号として出力する。選択決定部63は、文字「つ」に関する検出信号が第1の所定時間、連続して継続すると、操作者の入力したい入力対象候補として文字「つ」を決定し、その決定情報を表示制御部61へ出力する。
【0021】
表示制御部61は、図3(b)の「第1の拡大表示段階」に示されるように、文字「つ」と、その周囲に上下左右斜めに隣接する8文字「し」、「ち」、「に」、「す」、「ぬ」、「せ」、「て」、「ね」とを、それぞれ第1の倍率、即ち第1の大きさに拡大表示させると同時に、中央の拡大文字「つ」をその周囲の拡大文字よりも目立たせるように、周囲の文字よりも鮮やかに、又は濃い色や周囲の文字とは異なった色や太い線を用いて、いわゆるハイライト表示する。これによって、操作者は、視線入力装置100が操作者の意図する入力対象文字を「つ」と認識したことを知ることができる。
【0022】
…(中略)…
【0023】
図3(b)において、操作者が第1の大きさに拡大された文字「つ」を第2の所定時間、連続して注視すると、視線検出部62は、視線検出用カメラ30によって撮影された眼の画像を解析して操作者の視線位置が拡大文字「つ」の表示枠R内にあることを検出し、文字「つ」に関する検出信号を出力する。選択決定部63は、この検出信号に基づき、文字「つ」を選択決定し、その決定情報を表示制御部61へ出力する。
【0024】
表示制御部61は、選択決定部63の決定情報に基づき、図3(c)の「第2の拡大表示段階」に示されるように、文字「つ」のみを第2の倍率に、即ち、第1の大きさよりも大きい第2の大きさに、更に拡大表示させる。この時に、文字「つ」をその周囲の文字よりも目立たせるように、ハイライト表示する。制御部60は、「つ」の文字が第2の大きさに拡大表示されるのに対応して、文字「つ」の表示枠Rも更に拡大させる。
【0025】
…(中略)…
【0026】
図3(c)において、操作者が、「第2の拡大表示段階」の第2の大きさの文字「つ」を第3の所定時間、連続して注視すると、視線検出部62は、視線検出用カメラ30によって撮影された眼の画像を解析して操作者の視線位置が第2の大きさの拡大文字「つ」の表示枠R内にあることを検出し、文字「つ」に関する検出信号を出力する。選択決定部63は、この検出信号に基づき、文字「つ」を選択決定し、その決定情報を表示制御部61と情報入力部64とへ出力する。…(以下省略)」

「【図3】



したがって、上記引用文献2には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。

「 視線の位置を検出して文字などの情報を入力する視線入力装置であって、
視線入力装置100は、ディスプレイ1と、ディスプレイ1が取り付けられた筐体2とを有し、
筐体2には、ディスプレイ1の他に、視線検出用のカメラ30及び操作部材40が取り付けられ、
視線入力装置100は、一覧表示部10、入力情報表示部20、視線検出用カメラ30及び操作部材40に加えて、記録部50及び制御部60を備え、
制御部60は、表示制御部61、視線検出部62、選択決定部63、及び情報入力部64を有し、
視線入力装置100が起動されると、表示制御部61が、50音の平仮名を一覧表示部10に表示し、
操作者が入力したい文字、例えば文字「つ」を連続して第1の所定時間、注視すると、視線検出用カメラ30と視線検出部62が操作者の視線の位置を検出し、一覧表示部10上の視線の位置に対応する文字「つ」に関する文字情報を検出信号として出力し、
選択決定部63は、文字「つ」に関する検出信号が第1の所定時間、連続して継続すると、操作者の入力したい入力対象候補として文字「つ」を決定し、その決定情報を表示制御部61へ出力し、
表示制御部61は、文字「つ」と、その周囲に上下左右斜めに隣接する8文字「し」、「ち」、「に」、「す」、「ぬ」、「せ」、「て」、「ね」とを、それぞれ第1の倍率、即ち第1の大きさに拡大表示させると同時に、中央の拡大文字「つ」をいわゆるハイライト表示し、
操作者が第1の大きさに拡大された文字「つ」を第2の所定時間、連続して注視すると、視線検出部62は、視線検出用カメラ30によって撮影された眼の画像を解析して操作者の視線位置が拡大文字「つ」の表示枠R内にあることを検出し、文字「つ」に関する検出信号を出力し、
選択決定部63は、この検出信号に基づき、文字「つ」を選択決定し、その決定情報を表示制御部61へ出力し、
表示制御部61は、選択決定部63の決定情報に基づき、文字「つ」のみを第2の倍率に、即ち、第1の大きさよりも大きい第2の大きさに、更に拡大表示させ、
操作者が第2の大きさの文字「つ」を第3の所定時間、連続して注視すると、視線検出部62は、視線検出用カメラ30によって撮影された眼の画像を解析して操作者の視線位置が第2の大きさの拡大文字「つ」の表示枠R内にあることを検出し、文字「つ」に関する検出信号を出力し、
選択決定部63は、この検出信号に基づき、文字「つ」を選択決定し、その決定情報を表示制御部61と情報入力部64とへ出力する、こと。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0006】
本開示によれば、表示画面におけるユーザの視線の位置に関する情報を含むユーザの目に関する情報に基づいて、オブジェクトの選択に関する所定の条件を満たすかを判定する判定部と、上記選択に関する所定の条件を満たすと判定された場合に、上記表示画面において上記ユーザの目に関する情報が示す視線の位置に表示されているオブジェクトを、選択された状態とする表示制御部と、を備える、情報処理装置が提供される。」

「【0052】
例えば、本実施形態に係る情報処理装置は、ユーザの目に関する情報が示す視線の位置の変化に基づくユーザの目の動きの大きさに基づいて第1設定時間を動的に設定し、動的に設定された第1設定時間に基づいて、選択に関する所定の条件を満たすかを判定することも可能である。」

したがって、上記引用文献3には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。

「 表示画面におけるユーザの視線の位置に関する情報を含むユーザの目に関する情報に基づいて、オブジェクトの選択に関する所定の条件を満たすかを判定する判定部と、上記選択に関する所定の条件を満たすと判定された場合に、上記表示画面において上記ユーザの目に関する情報が示す視線の位置に表示されているオブジェクトを、選択された状態とする表示制御部と、を備える、情報処理装置において、
ユーザの目に関する情報が示す視線の位置の変化に基づくユーザの目の動きの大きさに基づいて第1設定時間を動的に設定し、動的に設定された第1設定時間に基づいて、選択に関する所定の条件を満たすかを判定すること。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

「[0001] 本発明は、脳波を利用して機器を操作することが可能なインタフェース(脳波インタフェース)システムに関する。より具体的には、本発明は、多数の選択肢の中からユーザが所望する選択肢を効率良く選択するための機能を備えた脳波インタフェースシステムに関する。」

「[0016] 本発明による脳波インタフェースシステムは、ユーザの脳波信号を利用して機器の動作を制御するために用いられるものであって、前記脳波インタフェースシステムは、前記ユーザの脳波信号を計測する脳波計測部と、前記ユーザの眼球運動を計測する眼球運動計測部と、機器の動作に関連する選択肢を画面上に提示する出力部と、前記眼球運動の回転角速度が予め保持した閾値以下の状態になった時点を起点として所定の時間が経過したか否かを判定し、所定の時間が経過したときには、前記ユーザが注視している前記画面中の領域を前記眼球運動に基づいて特定し、ハイライトさせる選択肢を決定するハイライト判定部と、前記ハイライト判定部によって決定された前記選択肢をハイライトさせ、前記選択肢がハイライトされたタイミングを起点として前記脳波信号に含まれる事象関連電位の成分を識別し、識別した前記成分に基づいて前記機器の動作を決定するインタフェース部と、前記画面を表示するための処理が開始されてから前記画面が表示されるまでの間の前記眼球運動に基づいて、ハイライトの開始タイミングを調整するタイミング調整部とを備えている。」

したがって、上記引用文献4には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。

「 脳波を利用して機器を操作することが可能なインタフェース(脳波インタフェース)システムにおいて、
前記画面を表示するための処理が開始されてから前記画面が表示されるまでの間の前記眼球運動に基づいて、ハイライトの開始タイミングを調整するタイミング調整部を備えること。」

5 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、操作者の視線を用いて複数の車載機器を選択する車載機器操作装置に関する。」

「【0014】
前記視線の移動速度である視線速度が所定の速度閾値以下であると共に、前記視線上に前記車載機器のいずれかが存在する場合、前記制御手段は、前記視線上に存在する前記車載機器を前記操作対象機器として選択し、前記視線速度が前記速度閾値を上回る場合、前記制御手段は、前記視線上に存在する前記車載機器を前記操作対象機器として選択しなくてもよい。」

したがって、上記引用文献5には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。

「 操作者の視線を用いて複数の車載機器を選択する車載機器操作装置において、
視線の移動速度である視線速度が所定の速度閾値以下であると共に、前記視線上に前記車載機器のいずれかが存在する場合、制御手段は、前記視線上に存在する前記車載機器を前記操作対象機器として選択し、前記視線速度が前記速度閾値を上回る場合、前記制御手段は、前記視線上に存在する前記車載機器を前記操作対象機器として選択しなくてもよいこと。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「システム1300」は「ヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)1310」を備えるものであるから、「ヘッドマウントディスプレイシステム」といい得るものである。
そうすると、「オブジェクト操作装置としての制御回路部1320を内部に搭載したヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)1310」は、「ヘッドマウントディスプレイシステム」の少なくとも一部として利用可能なものといえる。
さらに、引用発明の「ヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)1310」は、「オブジェクト操作装置」としての「制御回路部1320」を内部に搭載していることから、「端末装置」といい得るものである。
また、引用発明の「ヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)1310」は、「ディスプレイ1312」に「制御回路部1320において実行されるアプリケーションにより表示される仮想空間」を表示するものであり、具体的には、「制御回路部1320」が備える「視野移動部1620」が、「空間情報格納部1650に格納された3次元仮想空間情報」と、「傾きセンサ1314に検知される角度情報、および位置センサ130に検知される位置情報に基づく仮想カメラの視野方向の検知情報」とに基づいて、「視野情報」を求め、そのことにより「頭部の動き」を用いて「仮想空間中の視野」が移動するように制御し、「制御回路部1320」が備える「視野画像生成部1630」が、「視野情報」と「ウィジェット201の位置」に基づいて「視野画像」を生成するものである。ここで、「視野」とは、「仮想カメラ」から見た場合の「視界」であり、「仮想カメラ」は、「仮想空間」内にある「仮想視点」といい得るものである。
また、引用発明は、「注視点は、視野の中央に固定され、カーソル202も画面の中央に固定されつつ表示されている」ことを前提とするものであるから、「頭部の動き」と仮想空間内の「仮想カメラ」(仮想視点)とは同一視でき、かつ、「頭部の動き」に応じて移動する「仮想空間内の仮想視点」からの「視野」を表す「視野画像」を「ディスプレイ1312」に表示するものといえる。
そうすると、引用発明の「ヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)1310」と本願発明1の「両眼視差を利用した立体視画像として、仮想空間内の仮想視点からの視界を表す視界画像を表示可能なヘッドマウントディスプレイシステムの少なくとも一部として利用可能な端末装置」とは、「仮想空間内の仮想視点からの視界を表す視界画像を表示可能なヘッドマウントディスプレイシステムの少なくとも一部として利用可能な端末装置」である点において共通する。

イ 前記アより、引用発明において、「制御回路部1320」が備える「視野移動部1620」は、「仮想カメラの視野方向の検知情報」を検出するものであって、「仮想カメラの視野方向の検知情報」は、「ヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)1310」の方向に関する情報といい得るものである。
よって、前記アを参酌すると、引用発明の「視野移動部1620」は、本願発明1の「前記端末装置の方向に関する情報を検出する検出部」に相当する。

ウ 引用発明は、「ウィジェット選択部1641はウィジェット201とカーソル202が重なっているかを判断し、ウィジェット201とカーソル202が重なっていると判断されたときは、ウィジェット201を選択状態の表示に変化させる処理を行い、
入力部1642はウィジェット201が一定時間以上選択状態となっているかを判断し、一定時間以上選択状態となっている場合には、選択されているウィジェット201に対応した操作を実行する」との構成を備えることから、「ウィジェット201」が表示される領域は、「カーソル202」が当該領域に一定時間重なるか否かに基づいてユーザからの選択の有無を判定する判定領域といい得るものである。
そうすると、引用発明の「ウィジェット201」は、本願発明1の「ユーザからの選択の有無を判定する判定領域を有する選択オブジェクト」に相当する。
また、引用発明は、「視野画像生成部1630は、その視野情報と、ウィジェット制御部1640から送られてくるウィジェット201の位置に基づいて視野画像を生成し」との構成を備え、前記アを参酌すれば、「仮想空間」内に「ウィジェット201」が所定の位置に配置されていることを前提としていることから、「仮想空間」内に「ウィジェット201」を所定の位置に配置する機能手段を備えているといえる。
よって、引用発明は、本願発明1の「ユーザからの選択の有無を判定する判定領域を有する選択オブジェクトを、前記仮想空間内に配置するオブジェクト配置部」に相当する機能手段を備えている。

エ 引用発明の「ディスプレイ1312」は、本願発明1の「表示部」に相当する。
また、前記イ及びウを参酌すれば、「視野画像生成部1630」は、「視野移動部1620」の結果(前記検出部の検出結果)に応じた処理を行うものといえる。
さらに、引用発明は、「視野画像生成部1630は、その視野情報と、ウィジェット制御部1640から送られてくるウィジェット201の位置に基づいて視野画像を生成し」との構成を備えるから、前記ア及びイを参酌すれば、引用発明の「制御回路部1320」が備える「視野画像生成部1630」は、「視野情報」と「仮想空間」における「ウィジェット201」の位置に基づいて、「視野」(視界方向)に配置されている「ウィジェット201」を「視野画像」に配置することにより「ディスプレイ1312」に表示させる制御を行うものといえる。
よって、引用発明の「視野画像生成部1630」は、本願発明1の「前記検出部の検出結果に応じて前記仮想空間内の前記仮想視点からの視界方向に配置されている前記選択オブジェクトを表示部に表示させる表示制御部」に相当する。

オ 本願発明1の「前記選択オブジェクトの選択の有無を決定するための閾値としての判定時間」について、本願明細書には、次の記載がある。
「【0036】
また、視線位置P1が判定領域に重なっている選択オブジェクト(ここでは、選択肢C)の近傍に、視線位置P1が判定領域に重なってからの経過時間を視認可能とするためのオブジェクトである経過時間ゲージT1が配置されて表示される。例えば、経過時間ゲージT1は、円形状のゲージであり、視線位置P1が判定領域に重なってから時間の経過と共に円状にバーが増加していき、所定時間以上経過するとこの円状に増加するバーが一周分に伸びる。ここで、上記の所定時間とは、選択オブジェクトの選択の有無を決定するための閾値として予め設定された判定時間であり、視線位置P1が判定領域に重なってからの経過時間が所定時間以上となった場合に、その判定領域の選択オブジェクトが選択されたとして決定される。一方、視線位置P1が判定領域に重なってからの経過時間が所定時間未満の場合には、その判定領域の選択オブジェクトはまだ選択されていないと判定される。例えば、この円状に増加するバーが一周分になる前に、視線位置P1が判定領域から外れた場合、その判定領域の選択オブジェクトは選択されていないものと判定され、計測時間(経過時間)がリセットされる。
【0037】
一方、経過時間ゲージT1の円状に増加するバーが一周分になると、視線位置P1が判定領域に重なっている選択オブジェクト(ここでは、選択肢C)の選択が確定する。
図8は、選択オブジェクトの選択が確定したときの選択メニュー画面の一例を示す図である。図示する選択メニュー画面G13において、経過時間ゲージT1の円状に増加するバーが一周分に伸び、視線位置P1が判定領域に重なっている選択オブジェクト(ここでは、選択肢C)が選択されたことが確定される。このとき、仮想空間内に配置されている他の選択オブジェクトは、消去されたり、透過率を上げて目立たないように表示されたりする。これにより、選択された選択オブジェクトが相対的に強調された表示となる。」

上記の記載からすると、本願発明1の「判定時間」は、「選択オブジェクト」の「選択」が「確定」する時間であって、そうすると、「選択オブジェクトの選択の有無を決定する」は、「選択オブジェクト」の「選択」が「確定」したか否かを決定することを含む。
一方、引用発明は、「ウィジェット選択部1641はウィジェット201とカーソル202が重なっているかを判断し、ウィジェット201とカーソル202が重なっていると判断されたときは、ウィジェット201を選択状態の表示に変化させる処理を行い、
入力部1642はウィジェット201が一定時間以上選択状態となっているかを判断し、一定時間以上選択状態となっている場合には、選択されているウィジェット201に対応した操作を実行する」との構成を備えることから、「ウィジェット201」と「カーソル202」が重なると「選択状態」となり、それから「一定時間」経過すると「選択されているウィジェット201に対応した操作を実行する」のであるから、「一定時間」経過した後の状態は、「選択状態」が確定した状態といえる。また、「一定時間」が予め設定されたものであることは自明である。
よって、引用発明において、「一定時間」が予め設定されていることは、本願発明1の「前記選択オブジェクトの選択の有無を決定するための閾値としての判定時間が予め設定されており」との構成に相当する。

カ 引用発明は、「注視点は、視野の中央に固定され、カーソル202も画面の中央に固定されつつ表示されていること」を前提とするものであるから、「カーソル202」は「注視点」と同一視できるものである。また、「注視点」は、ユーザが見ている点(位置)であるから、本願発明1の「視線方向に対応する視線位置」に相当し、また、前記の前提からすれば、引用発明の「カーソル202」も、本願発明1の「視線方向に対応する視線位置」に相当する。
また、引用発明の「ウィジェット選択部1641」が実行する「ウィジェット201とカーソル202が重なっているかを判断し、ウィジェット201とカーソル202が重なっていると判断されたときは、ウィジェット201を選択状態の表示に変化させる処理」において、引用発明の「ウィジェット201とカーソル202が重なっていると判断されたとき」は、本願発明1の「前記仮想視点からの視線方向に対応する視線位置と前記選択オブジェクトの判定領域とが前記視線方向において重ならない位置関係から重なる位置関係になったとき」に相当し、「ウィジェット201を選択状態の表示に変化させる」ことは、本願発明1の「前記選択オブジェクトの判定領域を変更」することに相当する。
以上より、引用発明において、「ウィジェット選択部1641」が、「ウィジェット201とカーソル202が重なっているかを判断し、ウィジェット201とカーソル202が重なっていると判断されたときは、ウィジェット201を選択状態の表示に変化させる処理」を実行することと、本願発明1の「前記オブジェクト配置部」が、「前記仮想視点からの視線方向に対応する視線位置と前記選択オブジェクトの判定領域とが前記視線方向において重ならない位置関係から重なる位置関係になったときの前記視線位置の移動速度が所定値以上の場合には、当該位置関係になってから前記判定時間未満の所定の時間経過した後に前記選択オブジェクトの判定領域を変更し、前記視線位置の移動速度が前記所定値未満の場合には、当該位置関係になってから前記所定の時間が経過しなくとも前記選択オブジェクトの判定領域を変更する」することとは、「前記仮想視点からの視線方向に対応する視線位置と前記選択オブジェクトの判定領域とが前記視線方向において重ならない位置関係から重なる位置関係になったときに前記選択オブジェクトの判定領域を変更」する点において共通する。

(2)一致点、相違点
前記(1)より、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「 仮想空間内の仮想視点からの視界を表す視界画像を表示可能なヘッドマウントディスプレイシステムの少なくとも一部として利用可能な端末装置であって、
前記端末装置の方向に関する情報を検出する検出部と、
ユーザからの選択の有無を判定する判定領域を有する選択オブジェクトを、前記仮想空間内に配置するオブジェクト配置部と、
前記検出部の検出結果に応じて前記仮想空間内の前記仮想視点からの視界方向に配置されている前記選択オブジェクトを表示部に表示させる表示制御部と、
を備え、
前記選択オブジェクトの選択の有無を決定するための閾値としての判定時間が予め設定されており、
前記仮想視点からの視線方向に対応する視線位置と前記選択オブジェクトの判定領域とが前記視線方向において重ならない位置関係から重なる位置関係になったときに前記選択オブジェクトの判定領域を変更する、
端末装置。」

[相違点]
<相違点1>
表示される「視界画像」が、本願発明1は、「両眼視差を利用した立体視画像」として表示されるものであるのに対し、引用発明の「視野画像」は「両眼視差を利用した立体視画像」として表示されることを具体的に特定していない点。

<相違点2>
本願発明1は、「前記仮想視点からの視線方向に対応する視線位置と前記選択オブジェクトの判定領域とが前記視線方向において重ならない位置関係から重なる位置関係になったときの前記視線位置の移動速度が所定値以上の場合には、当該位置関係になってから前記判定時間未満の所定の時間経過した後に前記選択オブジェクトの判定領域を変更し、前記視線位置の移動速度が前記所定値未満の場合には、当該位置関係になってから前記所定の時間が経過しなくとも前記選択オブジェクトの判定領域を変更する」との構成を備えるのに対し、引用発明は、「ウィジェット201」と「カーソル202」とが重なるときの「カーソル202」の移動速度に基づいて「ウィジェット201を選択状態の表示に変化させる」までの時間を制御するものではない点。

<相違点3>
選択オブジェクトの判定領域を変更する手段が、本願発明1は、「前記オブジェクト配置部」であるのに対し、引用発明は、「ウィジェット選択部1641」である点。

(3)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。
上記引用文献2記載事項ないし引用文献5記載事項からして、引用文献2ないし5は、上記相違点2に係る本願発明1の構成、すなわち、「前記仮想視点からの視線方向に対応する視線位置と前記選択オブジェクトの判定領域とが前記視線方向において重ならない位置関係から重なる位置関係になったときの前記視線位置の移動速度が所定値以上の場合には、当該位置関係になってから前記判定時間未満の所定の時間経過した後に前記選択オブジェクトの判定領域を変更し、前記視線位置の移動速度が前記所定値未満の場合には、当該位置関係になってから前記所定の時間が経過しなくとも前記選択オブジェクトの判定領域を変更する」という構成に対応する技術的事項を開示するものではない。
なお、引用文献2記載事項より、引用文献2には、上記構成のうち、「前記仮想視点からの視線方向に対応する視線位置と前記選択オブジェクトの判定領域とが前記視線方向において重ならない位置関係から重なる位置関係」になってから「前記判定時間未満の所定の時間経過した後」に「選択オブジェクトの判定領域を変更する」ことに対応する技術的事項が記載されているといえるが、「前記視線方向において重ならない位置関係から重なる位置関係になったときの前記視線位置の移動速度」に基づいて、「所定の時間」の要否を制御することまでは記載されていない。
また、引用文献3記載事項は、「視線の位置の変化に基づくユーザの目の動きの大きさ」に基づいて「オブジェクト」を「選択された状態」とするまでの時間である「第1設定時間」を動的に設定することを開示するものであって、上記相違点2に係る本願発明2の構成を開示するものではない。
また、引用文献4記載事項は、「前記画面を表示するための処理が開始されてから前記画面が表示されるまでの間の前記眼球運動に基づいて、ハイライトの開始タイミングを調整する」ものであり、「ハイライト」の対象であるオブジェクトが表示される「画面」が表示される前の眼球運動に基づいてなされる処理を特定するものであるから、上記相違点2に係る本願発明2の構成の「前記視線方向において重ならない位置関係から重なる位置関係になったときの前記視線位置の移動速度」を用いるものではない。
また、引用文献5記載事項は、「視線速度」に基づいて「前記視線上に存在する前記車載機器を前記操作対象機器として選択」する技術に関するものであって、表示されるオブジェクトの判定領域の変更に関するものではない。
したがって、上記相違点1及び3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2及び3について
本願発明2及び3も、上記相違点2に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本願発明4について
本願発明4は、本願発明1ないし3に対応するプログラムの発明であり、上記相違点2に係る本願発明1の構成に対応する技術的事項を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし4は、当業者が引用発明及び引用文献2ないし5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
 
審決日 2021-07-20 
出願番号 特願2018-8341(P2018-8341)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼瀬 健太郎  
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 小田 浩
林 毅
発明の名称 端末装置、及びプログラム  
代理人 西澤 和純  
代理人 小林 淳一  

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