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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1376183
審判番号 不服2020-9701  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-10 
確定日 2021-08-04 
事件の表示 特願2017-557963「フォース検出機能を備える一体型表示装置及び検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月17日国際公開、WO2016/182702、平成30年 8月 2日国内公表、特表2018-521383、請求項の数(16)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)4月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年5月12日 米国、2015年9月30日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 元年 7月 8日付け:拒絶理由通知書
令和 元年10月17日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 3月19日付け:拒絶査定
令和 2年 7月10日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提

令和 2年 9月 2日付け:前置報告書

第2 原査定の概要
原査定(令和2年3月19日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1?19に係る発明は、以下の引用文献1?4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.国際公開第2014/092758号
2.特開2009-244958号公報
3.特開2014-186535号公報
4.特開2014-56566号公報

第3 本願発明
本願請求項1?16に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明16」という。)は、令和2年7月10日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1,7,12は、それぞれ以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
入力面を有する一体型表示装置及びキャパシタンス検出装置であって、
複数のセンサ電極と、
前記複数のセンサ電極が設けられている層と異なる層に設けられている複数のレシーバ電極と、
前記複数のセンサ電極の下に配置された柔軟な薄膜トランジスタ(TFT)基板と、
前記TFT基板の下に配置された少なくとも1つの導電性電極と、
前記複数のセンサ電極に結合される処理システムと、を備え、
前記複数のセンサ電極のそれぞれは、表示更新及びキャパシタンス検出用に構成される少なくとも1つのコモン電極を備え、
前記複数のセンサ電極及び前記TFT基板は、前記入力面と前記少なくとも1つの導電性電極の間に配置され、
前記入力面に力が加えられたとき、前記TFT基板が湾曲して前記複数のセンサ電極が前記導電性電極の方に撓み、
前記処理システムは、
前記複数のセンサ電極の少なくとも一部分の絶対キャパシタンスの変化を検出し、
前記絶対キャパシタンスの変化に基づいて入力オブジェクトのフォース情報を決定し、
前記複数のレシーバ電極から派生信号を受信している間、前記複数のセンサ電極をトランスミッタ信号で駆動し、
前記派生信号に基づいて前記入力面近くの入力オブジェクトの位置情報を決定するように構成される、一体型表示装置及びキャパシタンス検出装置。」
「【請求項7】
入力面と、複数のセンサ電極と、前記複数のセンサ電極が設けられている層と異なる層に設けられている複数のレシーバ電極と、前記複数のセンサ電極の下に配置された柔軟なTFT基板と、前記TFT基板の下に配置された少なくとも1つの導電性電極とを有する一体型表示装置及びキャパシタンス検出装置のための処理システムであって、
前記複数のセンサ電極を作動させるように構成され、前記複数のレシーバ電極に結合され、前記複数のレシーバ電極から派生信号を受信する間、前記複数のセンサ電極をトランスミッタ信号で駆動するように構成されたセンサ回路を含むセンサモジュールと、
前記センサ回路に結合される処理回路と、を備え、
前記複数のセンサ電極のそれぞれは、表示更新及びキャパシタンス検出用に構成される少なくとも1つのコモン電極を備え、
前記処理回路は、
前記複数のセンサ電極の少なくとも一部分の絶対キャパシタンスの変化を検出し、
前記絶対キャパシタンスの変化に基づいて入力オブジェクトのフォース情報を決定するように構成され、
前記派生信号に基づいて前記入力オブジェクトの位置情報を決定するように構成され、
前記複数のセンサ電極と前記TFT基板とは、前記入力面と少なくとも1つの導電性電極との間に配置され、
前記入力面に力が加えられたとき、前記TFT基板が湾曲して前記複数のセンサ電極が前記導電性電極の方に撓む、処理システム。」
「【請求項12】
入力面と、キャパシタンス検出のための複数のセンサ電極と、前記複数のセンサ電極が設けられている層と異なる層に設けられている複数のレシーバ電極と、前記複数のセンサ電極の下に配置された柔軟なTFT基板と、前記TFT基板の下に配置された少なくとも1つの導電性電極とを有する一体型表示装置及びキャパシタンス検出装置を作動させる方法であって、
前記複数のセンサ電極を作動させ、
前記複数のセンサ電極の少なくとも一部分の絶対キャパシタンスの変化を検出し、
前記絶対キャパシタンスの変化に基づいて入力オブジェクトのフォース情報を決定し、
前記複数のレシーバ電極から派生信号を受信している間、前記複数のセンサ電極をトランスミッタ信号で駆動し、
前記派生信号に基づいて前記入力面近くの入力オブジェクトの位置情報を決定し、
前記複数のセンサ電極のそれぞれは、表示更新及び前記キャパシタンス検出用に構成される少なくとも1つのコモン電極を備え、
前記複数のセンサ電極と前記TFT基板とは、前記入力面と少なくとも1つの導電性電極の間に配置され、
前記入力面に力が加えられたとき、前記TFT基板が湾曲して前記複数のセンサ電極が前記導電性電極の方に撓む、方法。」

また、本願発明2?6は本願発明1を、本願発明8?11は本願発明7を、本願発明13?16は本願発明12を、それぞれ減縮した発明である。

第4 引用文献の記載、引用発明
1 引用文献1、引用発明1
(1)原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献1(国際公開第2014/092758号)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。

「[0067] With reference to FIG. 3A, in one embodiment, a user contacts a device, such as when a user's finger 105, or other object, applies force (shown with reference to an arrow in FIG. 1 ), to a cover glass element 110, the input surface 12, or other element of the device. For example, as described herein, the user's finger 105 can apply force to the cover glass element 110 at one or more locations in which the cover glass element 1 10 also has a touch sensor (not shown), or can apply force to the cover glass element 110 at one or more locations in which the cover glass element 1 10 does not have a touch sensor.」
(当審訳: [0067] 図3Aを参照すると、一実施形態では、ユーザの指105、又は他の物体が、装置のカバーガラス要素110、入力面12又は他の要素に力を印加する(図1の矢印を参照して示される。)ように、ユーザが装置に接触する。例えば、ここで記述されているとおり、ユーザの指105が、1つ若しくは複数の位置でカバーガラス要素110に力を加えることができ、ここで、カバーガラス要素110はタッチセンサ(図示せず)をも有している、又は、1つ若しくは複数の位置でカバーガラス要素110に力を加えることができ、ここで、カバーガラス要素110はタッチセンサを有していない。)

「[0070] In one embodiment, the display circuits 120 provide a display to the user, such as a GUI or an application program display, although it should be appreciated that some portion of the display circuits 120 are dedicated to integrated circuitry that is typically not visible to a user and does not provide any output visible by a user. Such an area may be, for example, to the left of the edge of the adhesive layer 115 (with respect to the orientation of FIG. 3A). In one embodiment, the display circuits 120 are positioned above a back light unit (BLU) 125.」
(当審訳: [0070] 一実施形態において、GUI又はアプリケーションプログラムのディスプレイ等、表示回路120がユーザに表示を提供するが、表示回路120のある部分は、典型的にはユーザから見えず、かつユーザーに見える何らの出力も提供せず、集積回路に特化されていることが理解されるべきである。そのような領域は、例えば、接着剤層115の端部の(図3Aの方向に対して)左であり得る。一実施形態において、表示回路120は、バックライトユニット(BLU)125の上方に配置される。)

「[0072] In one embodiment, the device can include a compressible gap 135 or spacing layer that is part of a larger sensing gap 137 defining a distance between the two capacitive sensing elements 140a, 140b. For example, the compressible gap 135 can include an air gap, a gap at least partly filled with a compressible substance (such as a substance having a Poisson's ratio of less than about 0.48), or a gap at least partly filled with a compressible structure.
[0073] As shown in FIG. 3A, an applied force (shown with respect to the arrow) can cause the cover glass element 110 or other device element to exhibit surface flex. This can have the effect that one or more elements in the device are brought closer together in response to the applied force. As described herein, a force sensor detecting or measuring one or more capacitive changes can determine an amount and location of that applied force based on those capacitive changes.
[0074] In short, a force sensor may include one or more sensing elements, such as a capacitive sensor.
[0075] In one embodiment and returning to FIG. 3A, the compressible gap 135 or sensing gap can be positioned in one or more of several positions in the device. For some examples: (A) The compressible gap 135 can be positioned above the display circuits 120, such as below the cover glass element 1 10, below the adhesive layer 1 15, and above the display circuits 120; (B) the compressible gap 135 can be positioned below at least a portion of the display circuits 120, such as below a polarizer element, as described herein. In such cases, the polarizer can be a part of the display circuits; and (C) the compressible gap 135 can be positioned below the back light unit 125 and above the midplate 130. It should be appreciated that a compressible gap may be located elsewhere in the device, and so the foregoing are merely examples of locations.
[0076] In one embodiment, the force sensor can include one or more capacitance sensing elements 140a and 140b, disposed to determine an amount of capacitance change in response to surface flex. The capacitance sensing element 140a and 140b can include either mutual capacitance or self-capacitance features, as described herein. In cases in which the capacitance sensing element 140a and 140b includes mutual capacitance features, the capacitance sensing element 140a and 140b can be disposed in drive/sense rows/columns, as described herein. Thus, capacitance sensing elements may be arranged in a variety of configurations, including linearly, in an array, or at irregular intervals.」
(当審訳: [0072] 一実施形態では、装置は、2つの静電容量検出素子140a、140bの間の距離を規定する、より大きな検出ギャップ137の一部である、圧縮可能なギャップ135又はスペーシング層を含み得る。例えば、圧縮可能なギャップ135は、空気ギャップ、圧縮可能な物質(例えばポアソン比が約0.48未満の物質)で少なくとも部分的に充填されたギャップ、又は、圧縮可能な構造体で少なくとも部分的に充填されたギャップを含み得る。
[0073] 図3Aに示すように、加えられた力(矢印で示す)は、カバーガラス要素110又は他の装置要素に、表面屈曲を呈することをもたらし得る。これは、加えられた力に応答して、装置内の1つ又は複数の要素が互いに接近するという効果を有し得る。ここで記述されているとおり、1つ又は複数の静電容量の変化を検知又は測定する力センサが、静電容量の変化に基づいて、加えられた力の量及び位置を決定することができる。
[0074] 要約すれば、力センサは、静電容量センサなどの、1つ又は複数の検出素子含み得る。
[0075] 一実施形態では、図3Aに戻ると、圧縮可能なギャップ135又は検出ギャップは、装置における幾つかの位置のうちの1つ又は複数に配置され得る。ある例では:(A)圧縮可能なギャップ135は、カバーガラス要素110の下方、接着剤層115の下方、及び表示回路120の上方など、表示回路120の上方に配置され得る;(B)圧縮可能なギャップ135は、ここで記述されているとおり、偏光素子の下のような、表示回路120の少なくとも一部の下に配置され得る。そのような場合、偏光素子は、表示回路の一部であり得る;また、(C)圧縮可能なギャップ135は、バックライトユニット125の下方であって、中間プレート130の上方に配置され得る。圧縮可能なギャップは、装置における他の場所に配置されてもよいことが理解されるべきであり、それ故、上記は位置の例にすぎない。
[0076] 一実施形態では、力センサは、表面屈曲に応答して静電容量の変化量を決定するために配置された1つ又は複数の静電容量検出素子140a、140bを含み得る。静電容量検出素子140a、140bは、ここで記述されているとおり、相互静電容量または自己静電容量の特徴のいずれかを含み得る。静電容量検出素子140a、140bが相互静電容量の特徴を含む場合には、静電容量検出素子140a、140bは、ここで記述されているとおり、駆動/検出の行/列に配置することができる。このように、静電容量検出素子は、アレイ状、直線状、又は不規則な間隔を含む、種々の形態で配列されてもよい。本記述において、「静電容量検出素子」への言及は、適切な構成の複数の静電容量検出素子も包含することを一般的に意味するものとされている。)

「[0079] Generally, in one embodiment approximately 100 grams of force applied to the front of the cover glass may cause the sensing gap 137 between elements 140a and 140b to reduce in dimension by approximately 1.6 micrometers. Likewise, an upward or outward force applied to the cover glass may cause the sensing gap 137 to increase in dimension. It should be appreciated that the exact ratio of force to change in sensing gap 137 may vary between embodiments, and the numbers provided herein are meant purely as one example. It should also be appreciated that the sensing gap 137 may include intermediate elements between the sensing elements 140a and 140b; that is, the entire gap may not be solely air.」
(当審訳: [0079] 一般的に、一実施形態では、カバーガラスの前面に加えられる約100グラムの力は、素子140aと140bとの間の検出ギャップ137に、約1.6マイクロメートルの寸法の減少をもたらし得る。同様に、カバーガラスに加えられた上向き又は外向きの力は、検出ギャップ137に寸法の増加をもたらし得る。力と検出ギャップ137の変化との正確な比は、実施形態によって変わり得るものであり、本記述で提供される数値は、純粋に一例として意図されていることが理解されるべきである。また、検出ギャップ137は、検出素子140aと140bとの間に中間部材を含んでもよい;すなわち、ギャップ全体は、空気だけでなくてもよいことが理解されるべきである。)

「[0084] SELF-CAPACITANCE. It should be appreciated that either of the capacitive sensing elements 140a, 140b may be replaced with a ground or shield layer. By replacing either of the capacitive sensing elements with a shield layer, the device may employ a self-capacitive force sensor. Fig. 3B illustrates such an embodiment. As shown, capacitive sensing elements 140 may be positioned at or adjacent a midplate 130 or other support structure that is relatively immobile with respect to a frame or enclosure of the electronic device. For example, the element may be placed on a graphite layer or other substrate 133 and/or a within flexible circuit 131 , affixed to the midplate. It should be appreciated that the capacitive sensing elements need not be placed within a flexible substrate 131 , although this is shown in Fig. 3B and discussed in more detail below with respect to Fig. 3D. The capacitive sensing element 140 may measure its capacitance with respect to the ground layer 155.」
[0084]自己静電容量。静電容量検出素子140a、140bのいずれかは、接地又はシールド層で置換されてもよいことが理解されるべきである。静電容量検出素子のいずれかをシールド層で置換することにより、装置は、自己静電容量性の力センサを利用し得る。図3Bは、このような実施形態を示している。図示のように、静電容量検出素子140は、電子装置の枠又は筐体に対して相対的に移動可能でない中間プレート130又は他の支持構造体に又は隣接して配置され得る。例えば、素子は、グラファイト層若しくは他の基材133の上、及び/又は、中間プレートに固定された可撓性の回路131の内部に載置されてもよい。静電容量検出素子は、この点が図3Bに示され、図3Dに関連して以下でより詳細に説明するが、可撓性基板131の内部に配置される必要がないことが理解されるべきである。静電容量検出素140は、その容量を接地層155に関して測定し得る。

(図3A)




(2)図3Aから、表示回路120は板状であり、静電容量検出素子140aの上に配置されていることが見て取れる。ここで、通常、タッチパネル等に組み込まれる表示装置は基板を含んで構成されるから、表示回路120は基板を含むことが明らかである。
また、同図から、静電容量検出素子140aが、カバーガラス要素110と静電容量検出素子140bとの間に配置されていることが見て取れる。

(3)上記(1)、(2)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「ユーザの指105又は他の物体が装置の入力面12に力を印加するように、ユーザが接触する装置であって、
ユーザに表示を提供する表示回路120の基板が静電容量検出素子140aの上に配置され、
1つ又は複数の静電容量の変化を検知又は測定する力センサが、静電容量の変化に基づいて、加えられた力の量及び位置を決定することができ、
力センサは、表面屈曲に応答して静電容量の変化量を決定するために配置された1つ又は複数の静電容量検出素子140a、140bを含み、静電容量検出素子140a、140bは、相互静電容量または自己静電容量の特徴のいずれかを含み得るものであり、静電容量検出素子は、アレイ状に配列されてもよく、
静電容量検出素子140aがカバーガラス要素110と静電容量検出素子140bとの間に配置され、カバーガラスの前面に加えられる力は、素子140aと140bとの間の検出ギャップ137に寸法の減少をもたらし、
静電容量検出素子140a、140bのいずれかは、接地又はシールド層で置換されてもよく、静電容量検出素子のいずれかをシールド層で置換することにより、自己静電容量性の力センサを利用し得、静電容量検出素は、その容量を接地層に関して測定し得る、
装置。」

2 前置報告書で引用された文献、引用発明A
(1)前置報告書では、特開2015-41287号公報(以下、「前置引用文献」という。)が新たに引用された。当該公報には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0009】
<第1実施形態>
本発明の静電容量式3次元センサ(以下、「3次元センサ」と略す。)の第1実施形態について説明する。
図1に、本実施形態の3次元センサを示す。本実施形態の3次元センサ1は、支持板10と、Z方向位置検出用電極体20と、スペーサ30と、XY方向位置検出用電極体40と、保護層70とを備える。
【0010】
本実施形態の3次元センサ1では、指又はスタイラスペンを接触させる入力領域が矩形状にされている。本明細書では、入力領域の長手方向をX方向、入力領域の短手方向をY方向、X方向及びY方向に対して垂直な方向をZ方向とする。
また、本発明の3次元センサ1においては、保護層70に指又はスタイラスペンが接触し、保護層70側を「表側」又は「前面側」という。また、支持板10側を「裏側」又は「裏面側」という。」

「【0012】
(Z方向位置検出用電極体)
Z方向位置検出用電極体20は、Z方向の位置を検出する際に使用される電極体であって、支持板10の表側の面10aに設けられている。
本実施形態におけるZ方向位置検出用電極体20は、基材シート21と、基材シート21の表側の面21a(第1面21a)に形成されたパターン状の導電膜22と、導電膜22を被覆する絶縁膜23とを有する電極シートである。
本発明において、「導電」とは、電気抵抗値が1MΩ未満であることを意味し、「絶縁」とは、電気抵抗値が1MΩ以上、好ましくは10MΩ以上のことである。」

「【0019】
(スペーサ)
スペーサ30は、Z方向位置検出用電極体20とXY方向位置検出用電極体40との間に配置され、弾性変形可能なものである。
本実施形態におけるスペーサ30は、Z方向位置検出用電極体20の表側の面20aに両面粘着テープ80aによって貼合されている。スペーサ30の表側にはXY方向位置検出用電極体40が配置されている。
スペーサ30を配置することによって、保護層70を押圧していないときには、Z方向位置検出用電極体20とXY方向位置検出用電極体40とを容易に一定間隔にでき、保護層70を押圧したときには、Z方向位置検出用電極体20とXY方向位置検出用電極体40との距離を容易に縮めることができる。」

「【0021】
(XY方向位置検出用電極体)
XY方向位置検出用電極体40は、X方向及びY方向の位置を検出する際に使用される電極体であって、スペーサ30の表側に設けられている。本実施形態で使用されるXY方向位置検出用電極体40は、一対の電極シート50,60が積層された積層シートである。
電極シート50は、基材シート51と、基材シート51の表側の面51a(第1面51a)に形成されたパターン状の導電膜52と、導電膜52を被覆する絶縁膜53とを有する。
基材シート51としては、基材シート21と同様のものを使用することができる。ただし、基材シート21と同一のものとする必要はない。 絶縁膜53としては、絶縁膜23と同様のものを使用することができる。ただし、絶縁膜23と同一のものとする必要はない。」

「【0025】
本実施形態における電極シート60は、電極シート50の表側の面50aに、両面粘着テープ80bによって貼合されている。また、本実施形態における電極シート60は、基材シート61と、基材シート61の表側の面61a(第1面61a)に形成されたパターン状の導電膜62と、導電膜62を被覆する絶縁膜63とを有する。
基材シート61としては、基材シート21と同様のものを使用することができる。ただし、基材シート21と同一のものとする必要はない。
絶縁膜63としては、絶縁膜23と同様のものを使用することができる。ただし、絶縁膜23と同一のものとする必要はない。」

「【0030】
(使用方法)
3次元センサ1を、ノート型パーソナルコンピュータの静電容量式タッチパッドとして用いた使用例について説明する。
パーソナルコンピュータの使用者は、モニタに表示されたポインタのX方向の位置及びY方向の位置を移動させるために、保護層70の表面に沿って指を動かす。その際、3次元センサ1では、XY方向位置検出用電極体40を利用し、入力領域における指のX方向の位置及びY方向の位置を検出する。具体的には、導電膜52,62を利用し、X方向における静電容量の変化、Y方向における静電容量の変化を検出することによって、X方向及びY方向の指の位置を求める。
また、使用者は、ポインタのX方向の位置及びY方向の位置を、目的の処理を実行するための選択領域に移動させた後、指で3次元センサ1の入力領域内を押圧して決定する。このとき、XY方向位置検出用電極体40及び保護層70は撓み、その撓みによってスペーサ30が変形し、Z方向位置検出用電極体20とXY方向位置検出用電極体40の電極シート60との距離が短くなる。その際の、導電膜22と導電膜62との間の静電容量の変化、すなわちZ方向の静電容量の変化を検出し、その静電容量の変化から押圧量を求める。その押圧量が、あらかじめ決められた値を超えたときに、使用者が3次元センサ1を押したものと判定し、所定の処理を実行する。」

「【図1】



(2)上記(1)から、前置引用文献には次の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。
「Z方向位置検出用電極体20と、スペーサ30と、XY方向位置検出用電極体40と、保護層70とを備える3次元センサ1であって、
Z方向位置検出用電極体20は、導電膜22を有し、
スペーサ30は、Z方向位置検出用電極体20とXY方向位置検出用電極体40との間に配置され、弾性変形可能なものであり、スペーサ30を配置することによって、保護層70を押圧していないときには、Z方向位置検出用電極体20とXY方向位置検出用電極体40とを容易に一定間隔にでき、保護層70を押圧したときには、Z方向位置検出用電極体20とXY方向位置検出用電極体40との距離を容易に縮めることができ、
XY方向位置検出用電極体40は、一対の電極シート50,60が積層された積層シートであり、
電極シート50は、導電膜52を有し、
電極シート60は、導電膜62を有する、
3次元センサ1を、静電容量式タッチパッドとして用いたノート型パーソナルコンピュータであって、
パーソナルコンピュータの使用者は、モニタに表示されたポインタのX方向の位置及びY方向の位置を移動させるために、保護層70の表面に沿って指を動かし、その際、導電膜52,62を利用し、X方向における静電容量の変化、Y方向における静電容量の変化を検出することによって、X方向及びY方向の指の位置を求め、
また、使用者は、指で3次元センサ1の入力領域内を押圧して決定し、このとき、XY方向位置検出用電極体40及び保護層70は撓み、その撓みによってスペーサ30が変形し、Z方向位置検出用電極体20とXY方向位置検出用電極体40の電極シート60との距離が短くなり、その際の、導電膜22と導電膜62との間の静電容量の変化、すなわちZ方向の静電容量の変化を検出し、その静電容量の変化から押圧量を求める、
ノート型パーソナルコンピュータ。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1の「装置」は、「ユーザの指105又は他の物体」が「入力面12に力を印加する」ものであり、「表示回路120」及び「静電容量の変化を検知又は測定する力センサ」を備えるから、「表示装置及びキャパシタンス検出装置」が「一体型」に構成されたものであるといえ、本願発明1の「入力面を有する一体型表示装置及びキャパシタンス検出装置」に相当する。

(イ)引用発明1の、
「力センサは、表面屈曲に応答して静電容量の変化量を決定するために配置された1つ又は複数の静電容量検出素子140a、140bを含み、静電容量検出素子140a、140bは、相互静電容量または自己静電容量の特徴のいずれかを含み得るものであり、静電容量検出素子は、アレイ状に配列されてもよく、」
との構成及び
「静電容量検出素子140a、140bのいずれかは、接地又はシールド層で置換されてもよく、静電容量検出素子のいずれかをシールド層で置換することにより、自己静電容量性の力センサを利用し得、静電容量検出素は、その容量を接地層に関して測定し得る、」
との構成に関し、「静電容量検出素子140a、140bのいずれか」のうちの「静電容量検出素子140b」を「接地又はシールド層」で「置換」した場合、「アレイ状に配列され」、「自己静電容量の特徴」を含む「静電容量検出素子140a」において、「その容量を接地層に関して測定」するものとなる。
そして、「アレイ状に配列され」た「静電容量検出素子140a」は、本願発明1の「複数のセンサ電極」に相当し、「その容量を接地層に関して測定」することは、本願発明1の「前記複数のセンサ電極の少なくとも一部分の絶対キャパシタンスの変化を検出」することに相当する。

(ウ)引用発明1の
「ユーザに表示を提供する表示回路120の基板が静電容量検出素子140aの上に配置され、」
との構成及び
「力センサは、表面屈曲に応答して静電容量の変化量を決定するために配置された1つ又は複数の静電容量検出素子140a、140bを含み、静電容量検出素子140a、140bは、相互静電容量または自己静電容量の特徴のいずれかを含み得るものであり、静電容量検出素子は、アレイ状に配列されてもよく、
静電容量検出素子140aがカバーガラス要素110と静電容量検出素子140bとの間に配置され、カバーガラスの前面に加えられる力は、素子140aと140bとの間の検出ギャップ137に寸法の減少をもたらし、」
との構成から、「表示回路120の基板」が「柔軟」であることが明らかである。具体的には、「表示回路120の基板」が「柔軟」であるが故に、当該「基板」の下の、「カバーガラス要素110と静電容量検出素子140bとの間に配置され」た「静電容量検出素子140a」が、「カバーガラスの前面に加えられる力」により「表面屈曲に応答」することが可能であり、「表示回路120の基板」が「湾曲」して「静電容量検出素子140a」が「静電容量検出素子140b」の「方に撓」むことで、「素子140aと140bとの間の検出ギャップ137に寸法の減少をもたら」すことが可能であるといえる。
したがって、引用発明1の「表示回路120の基板」と本願発明1の「前記複数のセンサ電極の下に配置された柔軟な薄膜トランジスタ(TFT)基板」とは、「柔軟な基板」という点で共通している。

(エ)上記(ウ)で述べた引用発明1の構成から、「静電容量検出素子140b」は「表示回路120の基板」の「下に配置された」ものであるといえる。また、上記(イ)の「接地又はシールド層」で「置換」した「静電容量検出素子140b」は、本願発明1の「少なくとも1つの導電性電極」に相当する。
したがって、本願発明1の「前記TFT基板の下に配置された少なくとも1つの導電性電極」に関して、引用発明1と本願発明1とは、「前記基板の下に配置された少なくとも1つの導電性電極」という点で共通している。

(オ)上記(イ)で述べた、「自己静電容量の特徴」を含む「静電容量検出素子140a」において、「その容量を接地層に関して測定」することに関し、「測定」のために「静電容量検出素子140a」が「処理システム」に「結合され」ていることが明らかである。
したがって、引用発明1は、本願発明1の「前記複数のセンサ電極に結合される処理システム」に相当する構成を備えている。

(カ)引用発明1において、「入力面12に力を印加する」ことと、「力」が「カバーガラスの前面に加えられる」こととは、同じ事項を指していることが明らかであり、上記(ウ)で検討した引用発明1の構成についてこの点を勘案すると、「静電容量検出素子140a」及び「表示回路120の基板」は、「入力面12」と「静電容量検出素子140b」との「間に配置され」ているといえる。
この点について上記(イ)、(エ)も踏まえると、本願発明1の
「前記複数のセンサ電極及び前記TFT基板は、前記入力面と前記少なくとも1つの導電性電極の間に配置され、」
との構成に関して、引用発明1と本願発明1とは、
「前記複数のセンサ電極及び前記基板は、前記入力面と前記少なくとも1つの導電性電極の間に配置され、」
という点で共通している。

(キ)上記(ウ)のとおり、引用発明1は、「静電容量検出素子140a」が、「カバーガラスの前面に加えられる力」により「表面屈曲に応答」することが可能であり、「表示回路120の基板」が「湾曲」して「静電容量検出素子140a」が「静電容量検出素子140b」の「方に撓」むものであるといえる。
この点について上記(イ)?(エ)、(カ)も踏まえると、本願発明1の
「前記入力面に力が加えられたとき、前記TFT基板が湾曲して前記複数のセンサ電極が前記導電性電極の方に撓み、」
との構成に関して、引用発明1と本願発明1とは、
「前記入力面に力が加えられたとき、前記基板が湾曲して前記複数のセンサ電極が前記導電性電極の方に撓み、」
という点で共通している。

(ク)上記(イ)で述べた、「自己静電容量の特徴」を含む「静電容量検出素子140a」において、「その容量を接地層に関して測定」することにより得られる「容量」の「測定」結果は、引用発明1の
「1つ又は複数の静電容量の変化を検知又は測定する力センサが、静電容量の変化に基づいて、加えられた力の量及び位置を決定することができ、」
との構成において用いられる「静電容量」であることが明らかである。
また、「加えられた力の量」が「ユーザの指105又は他の物体が装置の入力面12に力を印加する」際のものであることも明らかである。
したがって、引用発明1は、「自己静電容量の特徴」を含む「静電容量検出素子140a」により「測定」された「静電容量の変化に基づいて」、「ユーザの指105又は他の物体」の「加えられた力の量」を「決定」するといえる。
そして、「静電容量」の「測定」に加えて、上記「決定」が、上記(オ)で述べた「処理システム」により行われることも明らかである。
ここで、「自己静電容量の特徴」を含む「静電容量検出素子140a」により「測定」された「静電容量」、「ユーザの指105又は他の物体」、「加えられた力の量」は、それぞれ、本願発明1の「絶対キャパシタンス」、「入力オブジェクト」、「フォース情報」に相当する。
以上の点について上記(イ)も踏まえると、引用発明1は、本願発明1の
「前記処理システムは、
前記複数のセンサ電極の少なくとも一部分の絶対キャパシタンスの変化を検出し、
前記絶対キャパシタンスの変化に基づいて入力オブジェクトのフォース情報を決定し、」
との構成に相当する構成を備えている。

(ケ)引用発明1は、
「1つ又は複数の静電容量の変化を検知又は測定する力センサが、静電容量の変化に基づいて、加えられた力の量及び位置を決定することができ、」
との構成を備えているから、引用発明1の「装置」は、「加えられた力」の「位置」を「決定するように構成され」たものであるといえる。
また、上記(ク)を踏まえると、「加えられた力」の「位置」は、「入力面12」の「近く」の「ユーザの指105又は他の物体」の「位置」であるといえ、本願発明1の「前記入力面近くの入力オブジェクトの位置情報」に相当する。
したがって、本願発明1の
「前記派生信号に基づいて前記入力面近くの入力オブジェクトの位置情報を決定するように構成される、」
との構成に関して、引用発明1と本願発明1とは、
「前記入力面近くの入力オブジェクトの位置情報を決定するように構成される、」
という点で共通している。

イ 上記アから、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「入力面を有する一体型表示装置及びキャパシタンス検出装置であって、
複数のセンサ電極と、
柔軟な基板と、
前記基板の下に配置された少なくとも1つの導電性電極と、
前記複数のセンサ電極に結合される処理システムと、を備え、
前記複数のセンサ電極及び前記基板は、前記入力面と前記少なくとも1つの導電性電極の間に配置され、
前記入力面に力が加えられたとき、前記基板が湾曲して前記複数のセンサ電極が前記導電性電極の方に撓み、
前記処理システムは、
前記複数のセンサ電極の少なくとも一部分の絶対キャパシタンスの変化を検出し、
前記絶対キャパシタンスの変化に基づいて入力オブジェクトのフォース情報を決定し、
前記入力面近くの入力オブジェクトの位置情報を決定するように構成される、一体型表示装置及びキャパシタンス検出装置。」

(相違点1)
本願発明1は、「前記複数のセンサ電極が設けられている層と異なる層に設けられている複数のレシーバ電極」を備えるとともに、
「前記複数のレシーバ電極から派生信号を受信している間、前記複数のセンサ電極をトランスミッタ信号で駆動し、
前記派生信号に基づいて前記入力面近くの入力オブジェクトの位置情報を決定するように構成される」
ものであるのに対し、引用発明1は、「レシーバ電極」を備えるものではなく、また、「加えられた力」の「位置」を「決定する」ために、「静電容量検出素子140a」を信号で駆動するものでもない点。

(相違点2)
本願発明1では、「柔軟な基板」が「前記複数のセンサ電極の下に配置された」ものであって、かつ「薄膜トランジスタ(TFT)基板」であるのに対し、引用発明1では、「表示回路120の基板」は、「静電容量検出素子140aの上に配置され」たものであり、その種類が「薄膜トランジスタ(TFT)基板」であると特定されるものではない点。

(相違点3)
本願発明1では、「前記複数のセンサ電極のそれぞれは、表示更新及びキャパシタンス検出用に構成される少なくとも1つのコモン電極を備え」るのに対し、引用発明1では、「静電容量検出素子140a」について「コモン電極を備え」ると特定されるものではない点。

(2)判断
そこで、まず相違点1について検討する。
引用発明Aは、「XY方向位置検出用電極体40」が「電極シート50」及び「導電膜52」を有する「3次元センサ1」を「静電容量式タッチパッドとして用いたノート型パーソナルコンピュータ」の「使用者」が、「モニタに表示されたポインタのX方向の位置及びY方向の位置を移動させるために、保護層70の表面に沿って指を動かし、その際、導電膜52,62を利用し、X方向における静電容量の変化、Y方向における静電容量の変化を検出することによって、X方向及びY方向の指の位置を求め」るとの構成を備えるものである。
ここで、「保護層70の表面」は、本願発明1の「入力面」に相当し、「指の位置」は、本願発明1の「前記入力面近くの入力オブジェクトの位置情報」に相当する。また、「電極シート50」及び「導電膜52」のいずれか一方と本願発明1の「センサ電極」とは、「第1の電極」という点で共通しており、「電極シート50」及び「導電膜52」のいずれか他方と本願発明1の「レシーバ電極」とは、「第2の電極」という点で共通している。
しかしながら、「静電容量検出素子140a、140b」を備える引用発明1に、引用発明Aの「導電膜52,62を利用し、X方向における静電容量の変化、Y方向における静電容量の変化を検出することによって、X方向及びY方向の指の位置を求め」る構成を適用し、「静電容量検出素子140a、140b」に加えて「レシーバ電極」を備えるものとすることについて、動機付けが存在するということはできない。引用発明1は、「静電容量検出素子140a、140b」を備えることで、「静電容量の変化に基づいて」、「加えられた力の量」と「位置」の両方を「決定する」ことが可能なものであり、「位置」の「決定」のために、電極の個数を増加させる引用発明Aを適用する必然性は見出せない。
また、引用発明Aは、本願発明1の「前記複数のレシーバ電極から派生信号を受信している間、前記複数のセンサ電極をトランスミッタ信号で駆動」することに相当する構成を備えていないから、仮に引用発明1に引用発明Aを適用しても、相違点1に係る構成には至らない。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1?4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2?16について
本願発明7,12は、本願発明1に対応する、本願発明1とカテゴリ表現が異なる発明であり、相違点1に対応する発明特定事項を含む。
また、本願発明2?6は本願発明1を、本願発明8?11は本願発明7を、本願発明13?16は本願発明12を、それぞれ減縮した発明である。
そうすると、本願発明2?16も本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用文献1?4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 引用発明Aを主たる発明とした場合について
原査定とは別に、引用発明Aを主たる発明とした場合に、本願発明1が、引用発明Aに基づいて(引用発明Aにその他の発明や周知技術を適用することで)当業者が容易に発明をすることができたものであるか、という点についても検討しておく。
本願発明1は、「前記複数のセンサ電極の下に配置された柔軟な薄膜トランジスタ(TFT)基板」を備えるのに対し、引用文献2はそのような構成を備えるものとは特定されず、本願発明1と引用発明Aとを対比した場合、少なくともこの点で両者は相違する。
しかしながら、仮に、「センサ電極の下」に「薄膜トランジスタ(TFT)基板」を備えた構成が周知技術であるとしても、これを引用発明Aに適用することには阻害要因があると認められる。具体的には以下のとおりである。
引用発明Aは、上記1(2)で言及した構成に加えて、
「使用者は、指で3次元センサ1の入力領域内を押圧して決定し、このとき、XY方向位置検出用電極体40及び保護層70は撓み、その撓みによってスペーサ30が変形し、Z方向位置検出用電極体20とXY方向位置検出用電極体40の電極シート60との距離が短くなり、その際の、導電膜22と導電膜62との間の静電容量の変化、すなわちZ方向の静電容量の変化を検出し、その静電容量の変化から押圧量を求める」
との構成を備えるものであり、ここで、「導電膜62」は、「導電膜52,62を利用し、X方向における静電容量の変化、Y方向における静電容量の変化を検出する」こと、及び「導電膜22と導電膜62との間の静電容量の変化」を「検出」することに兼用されるといえる。
一方、本願発明1において、「センサ電極」は、「フォース情報を決定」すること及び「位置情報を決定する」ことに兼用されるといえ、このことから、引用発明Aの「導電膜62」は、本願発明1にの「センサ電極」に相当する。
しかしながら、「導電膜62」の「下」に「薄膜トランジスタ(TFT)基板」を配置した場合、「薄膜トランジスタ(TFT)基板」が少なくとも「導電膜22」と「導電膜62」との間に位置することとなり、「導電膜22と導電膜62との間の静電容量の変化」の「検出」に影響することが明らかである。また、特に、「薄膜トランジスタ(TFT)基板」を「導電膜52」と「導電膜62」との間に配置した場合は、「導電膜22と導電膜62との間の静電容量の変化」の「検出」に加えて、「導電膜52,62を利用し、X方向における静電容量の変化」の「検出」にも影響する。
したがって、引用発明Aに「センサ電極の下」に「薄膜トランジスタ(TFT)基板」を備えた構成を適用することには阻害要因があると認められるから、本願発明1は、引用発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1?16は、当業者が引用文献1?4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-07-13 
出願番号 特願2017-557963(P2017-557963)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩橋 龍太郎  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 小田 浩
富澤 哲生
発明の名称 フォース検出機能を備える一体型表示装置及び検出装置  
代理人 狩野 芳正  

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