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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01N
管理番号 1376419
審判番号 不服2020-8570  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-19 
確定日 2021-07-28 
事件の表示 特願2018-526094「強化された安定性フィルタの完全性試験」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月26日国際公開、WO2017/087057、平成31年 1月17日国内公表、特表2019-501375〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)9月12日(パリ条約による優先権主張 2015年11月20日 米国)を国際出願日とする出願であって、令和元年5月30日付けで拒絶理由が通知され、同年9月4日付けで意見書及び手続補正書が提出され、令和2年2月18日付けで拒絶査定されたところ、同年6月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後当審において同年9月30日付けで拒絶理由が通知され、令和3年1月6日付けで手続補正(以下「本件補正」という。)がなされるとともに、意見書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?6に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
フィルタに用いられる複数の多孔質材料の完全性試験方法であって、
試験される複数の多孔質材料を準備し、前記多孔質材料のそれぞれは、第1表面と第2表面とを有し、
前記多孔質材料のそれぞれを湿潤用液体で湿潤させ、
前記湿潤用液体により前記湿潤用液体の飽和蒸気圧未満に加湿された少なくとも第1ガス及び第2ガスを含むガス流を準備し、ここで、前記加湿されたガス流は50?99%の湿度を有し、
前記ガス流を前記多孔質材料のそれぞれの前記第1表面のそれぞれに導入し、
前記第1ガス及び前記第2ガスを前記多孔質材料のそれぞれに通し、
前記多孔質材料のそれぞれの前記透過流における前記第1ガス及び前記第2ガスの少なくとも一方の濃度を連続的に測定し、
前記測定された濃度のそれぞれを所定の濃度と比較すること
を含み、
前記測定された濃度のそれぞれと前記所定の濃度との差異は、前記多孔質材料のそれぞれが不完全であることを示す方法。」

第3 拒絶の理由
令和2年9月30日に当審が通知した拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。

(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2?3に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特表2014-504732号公報(査定時の引用文献1)
引用文献2:特開2007-108178号公報(査定時の引用文献2)
引用文献3:特開2008-209397号公報(新たな引用文献)

第4 引用文献及びその記載事項
1 引用文献1には、次の事項が記載されている。
なお、以下の摘記において、イの引用発明の認定に関連する箇所に下線を付与した。

ア 引用文献1について
(1-ア)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質材料装置に装填された多孔質材料の完全性を評価する方法であって、
a)湿らせた多孔質材料を受け入れるハウジングを有する装置に湿らせた多孔質材料を装填し、その結果湿らせた多孔質材料が供給側および透過側を有するようにすること、
b)二種類以上のガス成分の圧縮ガス混合物を湿らせた多孔質材料の供給側に供給することであって、ここで、前記ガスのうちの一つが用いられた他のガスまたは複数のガスよりも速く湿った多孔質材料の液体を透過するように、多孔性材料を湿らせるのに用いた液体に対する供給ガスの透過性が異なること、
c)多孔質材料体積の透過側を、完全な膜から生成される透過ガスの期待される組成と同様の組成を有するガス混合物で充填すること、
d)過剰の透過ガスをベントし、供給側ガススイープ流れを維持すること、
e)透過側のガス混合物の濃度を評価すること、ならびに
f)透過ガスの評価された濃度を完全な装置に期待される値と比較することであって、ここで、期待される濃度からの所定量を超える偏差が不完全な多孔質材料または多孔質材料装置のシグナルであることを含む、方法。」

(1-イ)
「【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、多孔質材料の妥当性確認試験の分野に関する。ある種の実施形態において、本発明は、加速混合ガス完全性試験方法、装置およびシステムを用いた多孔質材料の妥当性確認試験に関する。
・・・
【0016】
望ましくは、このような完全性試験は、現在の完全性試験方法を使用するよりも迅速な多孔質材料層(複数可)の完全性の判定を提供することにより、試験コストを抑え、生産性を高めるものである。望ましくは、このような完全性試験は、試験されている多孔質材料の空気拡散流量の同時測定を可能にするものである。また、このような多孔質のフィルター材料層(複数可)、膜(複数可)またはエレメント(複数可)の完全性試験方法を実施可能な装置、または装置およびシステムに対する必要性も存在する。」

(1-ウ)
【課題を解決するための手段】
【0020】
ある種の実施形態において、本発明は、完全性の試験をされる湿らせた単層および多層の多孔質材料サンプル(例えば、多孔質膜、層、シート、フィルターエレメントなど)を受け入れるためのハウジングを有する加速混合ガス完全性試験装置を提供する。装置ハウジング内に配置されると、湿らせた多孔質サンプルは、供給側および透過側を有する。湿らせた多孔質サンプルの透過側では、ハウジングは、i)プロセス凝縮器、ii)遊離水のO2分析器への侵入を防ぐ、任意の疎水性膜、iii)水蒸気のO2分析器への侵入を防ぐ、任意の乾燥剤、iv)絶対圧力伝送器、v)熱電対プローブ、vi)ガス再循環部品、vii)一定な透過側ガス圧力を維持するためのガス圧力逃がし部品、viii)ガス組成分析器、およびix)5ポート切替弁と流体的に連絡している。」と記載されている。

イ 引用発明について
(ア)記載事項の整理
上記摘記(1-ウ)には、「多孔質材料サンプル(例えば、多孔質膜、層、シート、フィルターエレメントなど)」と記載されていることから、摘記(1-ア)の多孔質材料は、フィルターに用いられるものである。

(イ) 上記(1-ア)?(1-ウ)の記載及び(ア)の整理を踏まえれば、上記引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「フィルターに用いられる多孔質材料装置に装填された多孔質材料の完全性を評価する方法であって、
a)湿らせた多孔質材料を受け入れるハウジングを有する装置に湿らせた多孔質材料を装填し、その結果湿らせた多孔質材料が供給側および透過側を有するようにすること、
b)二種類以上のガス成分の圧縮ガス混合物を湿らせた多孔質材料の供給側に供給すること、
c)多孔質材料体積の透過側では、ガス組成分析器と流体的に連絡すること、
e)透過側のガス混合物の濃度を評価すること、ならびに
f)透過ガスの評価された濃度を完全な装置に期待される値と比較することであって、ここで、期待される濃度からの所定量を超える偏差が不完全な多孔質材料または多孔質材料装置のシグナルであることを含む、方法。」

2 引用文献2には、次の事項が記載されている。
(2-ア)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性材料の保全性を評価するための方法であって:
a)多孔性材料を液体で浸すこと;
b)多孔性材料の第1面を2つまたはそれ以上のガスを含む混合物であって、前記ガスの少なくとも1つが前記液体に対して前記混合物の他のガスとは異なる浸透性を有する前記混合物と接触させること;
c)多孔性材料の第1面に圧力を適用すること;及び、
d)多孔性材料の第2面の付近の領域で前記ガスの少なくとも1つの濃度を評価することを含む方法。」

(2-イ)
「【0002】
本発明は概略的に妥当性確認試験に関する。特定の実施例において、本発明は多孔性材料の保全性試験に関する。
【背景技術】
【0003】
多孔性材料は製造された製品または原料の濾過、包装、収容、移送等の処理を含む、多様な範囲の産業上の用途で重要な役割を果たしている。それらが使用される産業は、一例を挙げると、薬学及び生物工学産業、オイル及びガス産業、及び食品処理及び包装産業を含む。」

(2-ウ)
「【0060】
装置及びシステム
本発明の方法での使用に適した装置の例は図3に示されている。装置はガス源1及び供給ガス圧力調節器2を備えてもよい。細孔充填溶液の揮発性にも依るが、薄膜サンプル4からの溶液の時期尚早な蒸発を防止するためにガス-液体容器3で供給ガスが選択的に飽和させられてもよい。供給圧力測定装置5及び浸透圧力測定装置6が選択的に備えられ、浸透圧力が大気圧でない場合に浸透圧力測定装置6が使用されてもよい。」と記載されている。

第5 対比
1 本願発明1と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「フィルターに用いられる多孔質材料装置に装填された多孔質材料の完全性を評価する方法」は、本願発明1の「フィルタに用いられる」「多孔質材料の完全性試験方法」に相当する。

(2)引用発明の「評価」される「a)湿らせた多孔質材料を受け入れるハウジングを有する装置に湿らせた多孔質材料を装填」することは、本願発明1の「試験される」「多孔質材料を準備」することであって、「前記多孔質材料」「を湿潤用液体で湿潤させ」ることに相当し、引用発明の「その結果湿らせた多孔質材料が供給側および透過側を有するようにすること」は、供給側の表面と透過側の表面を区別することといえるので、本願発明1の「前記多孔質材料」「は、第1表面と第2表面とを有」することに相当する。

そうすると、引用発明の「評価」される「a)湿らせた多孔質材料を受け入れるハウジングを有する装置に湿らせた多孔質材料を装填し、その結果湿らせた多孔質材料が供給側および透過側を有するようにすること」は、本願発明1の「試験される」「多孔質材料を準備し、前記多孔質材料」「は、第1表面と第2表面とを有し、前記多孔質材料」「を湿潤用液体で湿潤させ」ることに相当する。

(3)引用発明の「b)二種類以上のガス成分の圧縮ガス混合物を湿らせた多孔質材料の供給側に供給すること」は、「二種類以上のガス成分の圧縮ガス混合物」のガス流を準備し、「多孔質材料」の供給側の表面に導入し、「多孔質材料」を通すことといえる。

そうすると、引用発明の「b)二種類以上のガス成分の圧縮ガス混合物を湿らせた多孔質材料の供給側に供給すること」は、本願発明1の「少なくとも第1ガス及び第2ガスを含むガス流を準備し」、「前記ガス流を前記多孔質材料」「の前記第1表面」「に導入し、前記第1ガス及び前記第2ガスを前記多孔質材料」「に通」すことに相当する。

(4)引用発明の「c)多孔質材料体積の透過側では、ガス組成分析器と流体的に連絡すること、e)透過側のガス混合物の濃度を評価すること」は、組成を分析したうえで濃度を評価していることから「多孔質材料」を「透過」したガス混合物の何れかの「ガス」の濃度を連続的に測定することといえるので、上記(3)を踏まえれば、本願発明1の「前記多孔質材料の」「前記透過流における前記第1ガス及び前記第2ガスの少なくとも一方の濃度を連続的に測定」することに相当する。

(5)引用発明の「f)透過ガスの評価された濃度を完全な装置に期待される値と比較することであって、ここで、期待される濃度からの所定量を超える偏差が不完全な多孔質材料のシグナルであること」は、「期待される濃度」との差異に基づいて不完全な多孔質材料と判断することであるから、本願発明1の「前記測定された濃度」「を所定の濃度と比較することを含み、前記測定された濃度」「と前記所定の濃度との差異は、前記多孔質材料のそれぞれが不完全であることを示す」ことに相当する。

2 よって、本願発明1と引用発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。

(一致点)
「フィルタに用いられる多孔質材料の完全性試験方法であって、
試験される多孔質材料を準備し、前記多孔質材料は、第1表面と第2表面とを有し、
前記多孔質材料を湿潤用液体で湿潤させ、
少なくとも第1ガス及び第2ガスを含むガス流を準備し、
前記ガス流を前記多孔質材料の前記第1表面に導入し、
前記第1ガス及び前記第2ガスを前記多孔質材料に通し、
前記多孔質材料の前記透過流における前記第1ガス及び前記第2ガスの少なくとも一方の濃度を連続的に測定し、
前記測定された濃度を所定の濃度と比較すること
を含み、
前記測定された濃度と前記所定の濃度との差異は、前記多孔質材料が不完全であることを示す方法。」の発明で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
試験される多孔質材料が、本願発明1では、「複数」であり、そして、その「複数」の多孔質材料の各々について「それぞれ」と特定されているのに対して、引用発明の多孔質材料が「複数」かどうか不明である点。

(相違点2)
第1ガス及び第2ガスを含むガス流について、本願発明1では、「湿潤用液体により前記湿潤用液体の飽和蒸気圧未満に加湿された」もので、「前記加湿されたガス流は50?99%の湿度を有」するのに対して、引用発明では、そのような特定がなされていない点。

第6 判断
1 相違点1について
上記摘記(1-イ)【0016】の「エレメント(複数可)の完全性試験方法を実施可能」との記載は、上記摘記(1-ウ)【0020】の「フィルターエレメント」との記載を踏まえれば、複数のフィルターエレメント、すなわち、複数のフィルターを構成する複数の多孔質材料について完全性試験をすることが可能であると解するのが相当であることから、引用発明の試験される多孔質材料を「複数」とすることは、当業者が容易になし得たことといえ、そして、引用発明において多孔質材料が「複数」となると、上記引用発明のa)?f)の工程を「それぞれ」の多孔質材料に対して行うことになる。

2 相違点2について
引用文献2は、多孔性材料の保全性試験に関するもので、上記摘記(2-ウ)に「【0060】・・・細孔充填溶液の揮発性にも依るが、薄膜サンプル4からの溶液の時期尚早な蒸発を防止するためにガス-液体容器3で供給ガスが選択的に飽和させられてもよい。」(なお、原文では、「Depending on the volatility of the pore-filling solution, it may be desirable to optionally saturate the feed gas in a gas-liquid contactor (3) to prevent premature evaporation of the solution from the membrane sample (4).」)と記載されており、ここで「飽和」とは、選択されたガスについて飽和蒸気圧まで湿潤させることを意味しているといえるが、飽和蒸気圧まで湿潤させることは、細孔充填溶液の揮発性に依る選択事項であると記載されていることから、溶液の時期尚早な蒸発を防止する手段として飽和蒸気圧付近で湿潤させることを排除するものではない。
また、引用文献2の上記技術事項は、「薄膜サンプル4からの溶液の時期尚早な蒸発を防止するためにガス-液体容器3で供給ガスが選択的に飽和させられてもよい。」と記載されているとおり、「薄膜サンプル4からの溶液の時期尚早な蒸発を防止するため」の技術であることから、供給ガスが飽和すなわち100%の湿度である必要はなく、飽和蒸気圧未満である99%以下の湿度においても、その目的が達成されるものでもあるといえる。
してみれば、引用文献2の「供給ガスが選択的に飽和させられてもよい。」という記載には、供給ガスを飽和蒸気圧未満である99%以下の湿度に加湿することも含まれていると解するのが相当である。

したがって、引用文献2の上記「選択的に飽和させられてもよい」「供給ガス」と、
本願発明1の「湿潤用液体により前記湿潤用液体の飽和蒸気圧未満に加湿されたもので、加湿されたガス流は50?99%の湿度を有」する「ガス」とは、
「湿潤用液体により前記湿潤用液体の飽和蒸気圧未満に加湿されたもので、加湿されたガス流は」「?99%の湿度を有」する「ガス」で共通している。
一方、引用発明は「b)二種類以上のガス成分の圧縮ガス混合物を湿らせた多孔質材料の供給側に供給すること」によって、「e)透過側のガス混合物の濃度を評価すること、ならびにf)透過ガスの評価された濃度を完全な装置に期待される値と比較することであって、ここで、期待される濃度からの所定量を超える偏差が不完全な多孔質材料のシグナルであることを含む、方法」であり、多孔質材料は試験終了までは湿らせておく、すなわち乾燥を防ぐ必要があることから、引用発明の「ガス混合物」に対して、上記引用文献2記載の技術事項を採用し、「湿潤用液体により前記湿潤用液体の飽和蒸気圧未満に加湿されたもので、加湿されたガス流は」「?99%の湿度を有」するガス混合物とすることは、当業者が容易になし得たことといえる。

3 作用効果について
本願発明1の作用効果は、引用発明及び引用文献2記載の技術事項から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものともいえない。

4 請求人の主張について
(1)請求人は、令和3年1月6日付け意見書で、
「引用文献2には、段落0060において、「薄膜サンプル4からの溶液の時期尚早な蒸発を防止するためにガス-液体容器3で供給ガスが選択的に飽和させられてもよい」ことが記載されています。ここで、先の拒絶理由通知書においても指摘されているように、「飽和」とは、選択されたガスについて「飽和蒸気圧まで」湿潤させることを意味するものと解されます。
これに対し、本願発明では、「少なくとも第1ガス及び第2ガスを含むガス流」を「飽和蒸気圧未満」に加湿するものです。具体的には、加湿されたガス流は「50?99%の湿度」を有します。すなわち、本願発明のガス流は、引用文献2でいう「飽和」には該当しないと考えられます。
したがって、選択されたガスについて「飽和蒸気圧まで」湿潤させることを教示する引用文献2に記載の発明と引用文献1に記載の発明とを結びつけたとしても、「少なくとも第1ガス及び第2ガスを含むガス流」を「飽和蒸気圧未満」に加湿し、加湿されたガス流が「50?99%の湿度」を有する点を特徴とする本願発明とはなりません。
ここで、「少なくとも第1ガス及び第2ガスを含むガス流」を「飽和蒸気圧未満」に加湿し、加湿されたガス流の湿度を50?99%とする理由は、100%湿度には結露の危険性があるためです(本願明細書段落0029)。そして、加湿されたガス流の湿度を50?99%とすることによって、多孔質材料における掃引流への水分蒸発用推進力が本質的に排除されます。図4に示すように、加湿された入口空気は、実用上不確定の安定性の高い完全性試験信号を可能にします。これにより、完全装置と不完全装置との信頼の非常に高い差別化が可能になるという効果を奏します(同段落0029)。」と主張している、

(2)しかし、引用文献2の「細孔充填溶液の揮発性にも依るが、薄膜サンプル4からの溶液の時期尚早な蒸発を防止するためにガス-液体容器3で供給ガスが選択的に飽和させられてもよい。」との記載は、「飽和蒸気圧まで」湿潤させることに限定的に解釈されないことは、上記2で述べたとおりである。
また、効果の主張についても、100%の湿度ではないことにより結露の危険性を防げることは当業者において自明のことであり、引用発明の多孔性材料装置においても、多孔性材料以外の装置部分において結露が好ましくないものといえる。さらに、多孔性材料における掃引流への水分蒸発用推進力が排除されることについては、本願明細書に、「例えば100%付近の湿度レベルにまで多孔質材料に入る入口ガスを加湿することにより、多孔質材料における掃引流への水分蒸発用推進力が本質的に排除される。」と記載されており、上記引用文献2の技術事項を採用することにより達成されるものである。
よって、請求人の意見書の主張によって、上記2及び3の判断が変わることはない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2021-02-17 
結審通知日 2021-02-24 
審決日 2021-03-10 
出願番号 特願2018-526094(P2018-526094)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野田 華代  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 森 竜介
信田 昌男
発明の名称 強化された安定性フィルタの完全性試験  
代理人 アクシス国際特許業務法人  

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