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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1376471 |
審判番号 | 不服2020-7041 |
総通号数 | 261 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-09-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-05-22 |
確定日 | 2021-08-18 |
事件の表示 | 特願2019-534913「送信装置、送信方法、及び送信プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 3月19日国際公開、WO2020/053971、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2018年(平成30年)9月11日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。 令和元年 6月25日 :手続補正書の提出 令和元年10月 9日付け:拒絶理由通知 令和元年12月13日 :意見書、手続補正書の提出 令和2年 3月 6日付け:拒絶査定(原査定) 令和2年 5月22日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和3年 4月27日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知 令和3年 6月22日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願請求項1ないし7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は、令和3年6月22日に提出された手続補正書に係る手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される発明であり、このうち本願発明1は以下のとおりの発明である。なお、下線は、補正された箇所を示す。 「 メッセージを受信した場合に最新の前記メッセージの少なくとも末尾が表示領域内に位置するように自動的にスクロールを実行する受信装置へメッセージを送信する送信装置において、 前記受信装置へ送信されるメッセージを、それぞれ前記表示領域に表示可能なメッセージの長さの上限以下の長さの複数の部分メッセージに分割する分割手段と、 前記複数の部分メッセージをキューに入れるエンキュー手段と、 前記複数の部分メッセージのうち、一の部分メッセージを前記キューから取り出して前記受信装置へ送信する第1送信手段と、 前記送信された部分メッセージが前記表示領域に表示されたときに自動的に送信される通知情報であって、前記送信された部分メッセージが前記表示領域に表示されたことを示す通知情報を受信する受信手段と、 前記通知情報が受信されてから所定時間後に、前記複数の部分メッセージのうち、次の部分メッセージを前記キューから取り出して前記受信装置へ送信する第2送信手段と、 を備えることを特徴とする送信装置。」 なお、本願発明2ないし5は、本願発明1を減縮した発明である。また、本願発明6は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明7は、本願発明1に対応するプログラムの発明であり、本願発明6及び7は、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。 また、本願発明1、2、3、4、5、6及び7のそれぞれは、原査定時の請求項1、3、4、5、6、7及び8のそれぞれに対応したものである。 第3 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 本願請求項1ないし8に係る発明は、以下の引用文献1ないし4に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 [引用文献等一覧] 1 特開2002-247102号公報 2 特開2015-210646号公報 3 特開2004-140730号公報(周知技術を示す文献) 4 特開2014-102808号公報 第4 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 [理由1]サポート要件違反 請求項1、2及び4ないし7に係る発明は、以下の点で発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 請求項1、6及び7に記載の「所定長以下の長さの複数の部分メッセージに分割する」における「所定長」及び請求項4に記載の「第2所定長」は、具体的な長さを特定していないため、「部分メッセージ」の長さが、「受信装置」の表示領域のサイズに表示可能な長さよりも大きい場合を含むものとなっており、請求項1、2及び4ないし7に係る発明は、発明の課題を解決するための手段が反映されていないから、発明の詳細な説明に記載したものではない。 [理由2]明確性要件違反 請求項3ないし5に係る発明は、以下の点で明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 請求項3に記載の「長さの上限」と請求項1に記載の「所定長」との関係が明確ではなく、また、請求項4に記載の「第2所定長」と、請求項1に記載の「所定長」及び請求項3に記載の「長さの上限」との関係が明確ではない。 第5 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について (1)引用文献1記載事項 原査定の引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は、強調のため、当審が付与した。(以下の文献の摘記についても同様。) また、システム上、丸囲み文字を入力することができないため、例えば、”1”の丸囲み文字は、「○1」と表記することとする。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、受信文字数に制限のある携帯電話等のメール受信端末に対してメールを送信するとき、受信可能文字数に応じてメール文章を分割して送信するメール送信方法及びメールサーバに関するものである。」 「【0002】 【従来の技術】携帯端末のメール送受信機能には受信文字数に制限のあることが多い。携帯端末が受信文字の制限文字数を越えている文章を受信した場合、制限文字数を越えた部分は自動的に削除される。例えば、図12に示すように、制限文字数が250文字の携帯端末に300文字のメール文章を送信した場合、251文字目から300文字目は削除される。このように、最後までメール文章の確認ができないため、必要な情報を逃がしてしまうことがあり、さらに、メール文章の文字数が不明なため、削除された文がどれほどの量なのかわからない。また、送信者が長文メールを複数のメールに分割して送信した場合、それらを受信するため複数回受信しなければならず、それらのメールが不必要なものであったしても通信料金を支払わなければならない。一方、送信者があらかじめ受信端末の制限文字数にあわせてメール文章を作成しても、制限文字数は機種やメーカーによってまちまちであるため、あらかじめ調べるのは煩雑である。また、PC等受信文字数に制限のない端末に送ったつもりでも、受信者側で携帯電話等に転送する設定をしていることもある。」 「【0007】次に、図1における他の動作例について説明する。受信者はあらかじめ端末102を用いて、メール加工サーバ15にアクセスし、受信可能文字数、受信条件等を登録している。その一例を以下に示す。 全文送信:しない 残文字数通知:する 受信可能文字数:100文字 残文字受信:する 上記登録情報はメール送信情報15bに記録される。次に、上記登録条件における動作の一例を図4、図6を参照して説明する。初めに、送信者は端末101を用いて、Subjectが”会議案内について”である300文字のメール文章を、携帯メールアドレス”yama@kmail.ne.jp”に送信する。その際、送信メールアドレス”tani@mail.ne.jp”という情報が自動的に追加される(図4、6における○1)。送信されたメールはメールサーバ10を介してメール加工サーバ15が受信する。メール加工サーバ15は、まず、メール文章の文字数をカウントし、300文字であることを算出する。次に、メール送信情報15bを参照し、携帯メールアドレス”yama@kmail.ne.jp”である端末102は、受信可能文字数が100文字であり、全文を一度に送信しないが必要に応じて残文字受信の可能な設定していることを確認する。次に、メール加工サーバ15は、メール文章の文字数(300文字)と受信可能文字数(100文字)とを比較し、メール文章を受信可能文字数である100文字づつ3つに分割し、一度、蓄積手段15cに記録する。この際、101文字目から200文字目を”abc001@mail.com”、201文字目から300文字目までを”abc002@mail.com”として記録する(図4、6における○2)。次に、分割したメールのうち1文字目から100文字のメール文章と残文字数200文字という情報を、Subject”会議案内について”として端末102に送信する(図4、6における○3)。 【0008】受信者が内容を確かめながら100文字づつ受信する場合と、残り受信メールを一度に受信する場合とで説明する。図4において、受信者がさらに100文字の送信を要求する場合、端末3の画面に表示されているメールアドレス”abc001@mail.com”をクリックすると、図5に一例を示す残文字要求メールがメール加工サーバ15に送信される(図4における○4)。メール加工サーバ15は残文字要求メールを受信すると、受信したメールアドレス”abc001@mail.com”から、蓄積手段15cに記録した”abc001@mail.com”、”abc002@mail.com”という2つのメールのうち101文字目から200文字目までのメール文章を選択する。次に選択したメール文章を、Subjectの最後に”001”を自動付与し、Subject”会議案内について001”として残文字数100文字という情報と共に端末102へ送信する(図4における○5)。受信者は、101文字目から200文字目のメール文章と、残文字数100文字という情報を見ることができる。受信者が残り100文字の送信を要求する場合、端末102の画面に表示されているメールアドレス”abc002@mail.com”をクリックすると、残文字要求メールがメール加工サーバ15に送信される(図4における○6)。メール加工サーバ15は、受信したメールアドレス”abc002@mail.com”から、蓄積手段15cに記録した2つの分割メールのうち201文字目から300文字目までを選択し、Subjectの最後に”002”を自動付与し、Subject”会議案内について002”として端末102へ送信する(図4における○7)。」 ([当審注]【0007】及び【0008】の「文字づつ」は、「文字ずつ」の誤記と認められる。) 「【0019】 【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば、あらかじめ契約している通信端末の受信文字数を記憶する記憶部を有するメールサーバを用いたメール送信方法において、通信ネットワークを介して受信した前記通信端末へのメールを、前記記憶部内の前記受信文字数に基づいて分割する第1の過程と、分割した前記メールを前記通信端末へ送信する第2の過程とを備えるので、受信者は制限文字数を越えたメールでも全文を読むことができ、送信者は受信端末の制限文字数を気にすることなくメールを送信することができる。また、分割した前記メールを前記通信端末に送信し、前記通信端末から未送信部分の送信要求を受信した場合に、該未送信部分を前記通信端末に送信することができるので、受信者はメール文章全体を受信する前に、メール文章の一部分のみを読み、そのメールが必要か不必要か判断できるので、不要な通信料金を支払う必要がない。さらに、分割した前記メールに未送信部分の文字数を表示するための文字データを付加する過程を有するので、受信者は残文字数を知ることができ、未送信部分が必要か部分か不必要な部分か判断する助けになる。…(以下省略)」 「【図1】 」 「【図4】 」 (2)引用発明 前記(1)より、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「 受信文字数に制限のある携帯電話等のメール受信端末に対してメールを送信するとき、受信可能文字数に応じてメール文章を分割して送信するメールサーバであって、 受信者はあらかじめ端末102を用いて、メール加工サーバ15にアクセスし、受信可能文字数、受信条件等を登録し、登録情報はメール送信情報15bに記録され、 送信者は端末101を用いて、300文字のメール文章を、携帯メールアドレス”yama@kmail.ne.jp”に送信し、その際、送信メールアドレス”tani@mail.ne.jp”という情報が自動的に追加され、 送信されたメールはメールサーバ10を介してメール加工サーバ15が受信し、メール加工サーバ15は、まず、メール文章の文字数をカウントし、300文字であることを算出し、メール送信情報15bを参照し、携帯メールアドレス”yama@kmail.ne.jp”である端末102は、受信可能文字数が100文字であり、全文を一度に送信しないが必要に応じて残文字受信の可能な設定していることを確認し、 メール加工サーバ15は、メール文章の文字数(300文字)と受信可能文字数(100文字)とを比較し、メール文章を受信可能文字数である100文字ずつ3つに分割し、一度、蓄積手段15cに記録し、この際、101文字目から200文字目を”abc001@mail.com”、201文字目から300文字目までを”abc002@mail.com”として記録し、 分割したメールのうち1文字目から100文字のメール文章と残文字数200文字という情報を、端末102に送信し、 受信者がさらに100文字の送信を要求する場合、端末3の画面に表示されているメールアドレス”abc001@mail.com”をクリックすると、残文字要求メールがメール加工サーバ15に送信され、 メール加工サーバ15は残文字要求メールを受信すると、受信したメールアドレス”abc001@mail.com”から、蓄積手段15cに記録した”abc001@mail.com”、”abc002@mail.com”という2つのメールのうち101文字目から200文字目までのメール文章を選択し、選択したメール文章を、端末102へ送信し、 受信者が残り100文字の送信を要求する場合、端末102の画面に表示されているメールアドレス”abc002@mail.com”をクリックすると、残文字要求メールがメール加工サーバ15に送信され、 メール加工サーバ15は、受信したメールアドレス”abc002@mail.com”から、蓄積手段15cに記録した2つの分割メールのうち201文字目から300文字目までを選択し、端末102へ送信する、 メールサーバ。」 2 引用文献2について 原査定の引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は、画像表示装置に表示させる画像を選択する画像選択装置等に関する。」 「【0022】 画像配信システムGは、画像配信サーバ1と携帯端末2を含んで構成されている。なお、図1の例では、説明の便宜上、一つの携帯端末2を示しているが、実際には多数の携帯端末2が画像配信サーバ1と通信可能となっている。」 「【0024】 画像配信サーバ1は、携帯端末2で画像を表示させるために、所定ページ数(本実施形態では2ページ)分のページデータを作成し、携帯端末2に送信する。このとき、画像配信サーバ1は、所定ページ数分の画像及びレイアウトを選択し、レイアウトに従って画像を配置することによりページデータを作成する。一方、携帯端末2は、画像配信サーバ1からページデータを受信すると、ページデータを表示部に表示させて自動スクロールする。自動スクロール表示とすることにより、携帯端末2のユーザ(「閲覧者」の一例)はスクロール操作をすることなく画像を閲覧することができる。また、ユーザはじっくり閲覧したい画像がある場合には、自動スクロールを停止させるための所定の停止操作を行うことができる。」 「【0062】 まず、携帯端末2の制御部21は、ページ要求コマンドの送信タイミングであるか否かを判定する(ステップS1A)。ページ要求コマンドの送信タイミングとは、セッションが確立した直後の、最初のページデータを受信するタイミングと、画像配信サーバ1から受信したページデータにおける所定位置(受信済ページデータの最下部又は最下部より所定画素だけ上の部分)まで自動スクロールが行われたタイミングである。このとき、制御部21は、ページ要求コマンドの送信タイミングではないと判定した場合には(ステップS1A:NO)、ステップS4Aに移行する。一方、制御部21は、ページ要求コマンドの送信タイミングであると判定した場合には(ステップS1A:YES)、画像配信サーバ1に対してページ要求コマンドを送信する(ステップS2A)。 【0063】 これに対して、画像配信サーバ1の制御部11は、携帯端末2からページ要求コマンドを受信すると(ステップS1B:YES)、図8-図10を用いて後述するページデータ作成処理を実行し(ステップS2B)、ステップS2Bの処理で作成したページデータを携帯端末2に送信する(ステップS3B)。」 したがって、上記引用文献2には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。 「 画像表示装置に表示させる画像を選択する画像選択装置において、 画像配信システムGは、画像配信サーバ1と携帯端末2を含んで構成され、多数の携帯端末2が画像配信サーバ1と通信可能となっており、 画像配信サーバ1は、携帯端末2で画像を表示させるために、所定ページ数(本実施形態では2ページ)分のページデータを作成し、携帯端末2に送信し、このとき、画像配信サーバ1は、所定ページ数分の画像及びレイアウトを選択し、レイアウトに従って画像を配置することによりページデータを作成し、 携帯端末2は、画像配信サーバ1からページデータを受信すると、ページデータを表示部に表示させて自動スクロールし、 携帯端末2の制御部21は、ページ要求コマンドの送信タイミングであるか否かを判定し、ページ要求コマンドの送信タイミングとは、セッションが確立した直後の、最初のページデータを受信するタイミングと、画像配信サーバ1から受信したページデータにおける所定位置(受信済ページデータの最下部又は最下部より所定画素だけ上の部分)まで自動スクロールが行われたタイミングであり、制御部21は、ページ要求コマンドの送信タイミングであると判定した場合には、画像配信サーバ1に対してページ要求コマンドを送信し、 画像配信サーバ1の制御部11は、携帯端末2からページ要求コマンドを受信するとページデータ作成処理を実行し、作成したページデータを携帯端末2に送信すること。」 3 引用文献3について 原査定の引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の利用分野】 この発明は、電子メールサーバに関し、電子メールサーバが受信した電子メールをインターネトファクシミリ装置等の端末装置に送信する際に、該端末装置の処理能力に応じた送信を行うための処理に関する。」 「【0011】 【発明の作用と効果】 この発明では、電子メールサーバからインターネットファクシミリ装置等の端末装置へSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)等で電子メールを送信する際において、電子メールの送信を連続して行うのではなく、受信側の端末装置の処理能力に応じたデータ量を送信する。この結果、端末装置で処理が可能なサイズのデータを送信した後、処理が終了すれば次のデータを送信することになる。すなわち、同一の宛先の電子メールを一度に送信するのではなく、所定の間隔の時間毎に複数回に分けて電子メールを送信することができる。ただし、複数の電子メールであっても、データ量が小さければ、所定の件数の範囲で連続して送信してもよい。請求項1の発明では、複数の電子メールを所定間隔の時間をおいて送信するので、電子メールを次々と送信することにより、端末装置の処理が追いつかずに電子メールの受信自体ができなくなることを防止する(請求項1)」 「【0022】 図4は、図3に示す実施例の変形例である。変形例では、同一宛先の複数の電子メールを送信する際、及び1通の電子メールを複数に分割して送信する際の送信のタイミングをインターネットファクシミリ装置2からの通知による。電子メールサーバ4が電子メールの送信後、インターネットファクシミリ装置2で処理が終了し、次の電子メールを受信できる旨の通知を受信すれば、この通知に従い、次の電子メールや分割した次の部分を送信する。図において、送信メールが発生すれば(ステップ10)、インターネットファクシミリ装置2からの処理完了通知を受信しているかをチェックし(ステップ11)、受信していれば次の電子メールを送信する(ステップ12)。」 したがって、上記引用文献3には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。 「 電子メールサーバに関し、電子メールサーバが受信した電子メールをインターネトファクシミリ装置等の端末装置に送信する際に、該端末装置の処理能力に応じた送信を行うための処理に関し、 電子メールサーバからインターネットファクシミリ装置等の端末装置へ電子メールを送信する際において、電子メールの送信を連続して行うのではなく、受信側の端末装置の処理能力に応じたデータ量を送信し、この結果、端末装置で処理が可能なサイズのデータを送信した後、処理が終了すれば次のデータを送信することになり、すなわち、同一の宛先の電子メールを一度に送信するのではなく、所定の間隔の時間毎に複数回に分けて電子メールを送信することができ、 変形例では、同一宛先の複数の電子メールを送信する際、及び1通の電子メールを複数に分割して送信する際の送信のタイミングをインターネットファクシミリ装置2からの通知により、電子メールサーバ4が電子メールの送信後、インターネットファクシミリ装置2で処理が終了し、次の電子メールを受信できる旨の通知を受信すれば、この通知に従い、次の電子メールや分割した次の部分を送信すること。」 4 引用文献4について 原査定の引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0098】 図25は、本発明の一実施形態に係るウェブページ提供システムの内部構成の他の例を説明するためのブロック図であり、図26は、本発明の一実施形態に係るウェブページ提供方法の第4例を示すフローチャートである。本実施形態に係るウェブページ提供システム2500は、画面の大きさに関する情報をクライアントから受信してウェブページを複数のページに分割して、前記分割された複数のページをクライアントに提供するサーバに対応してもよい。…(以下省略)」 第6 原査定についての判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「メール文章」は、「メール」の「送信者」から「受信者」に対して伝達される言葉を含むから、「メッセージ」といい得るものである。 また、引用発明の「メール受信端末」及び「受信者」が用いる「端末102」、「メール文章」を「端末102」に送信する「メール加工サーバ15」はそれぞれ、本願発明1の「受信装置」及び「送信装置」に相当する。 よって、引用発明の「メール加工サーバ15」(メールサーバ)と、本願発明1の「メッセージを受信した場合に最新の前記メッセージの少なくとも末尾が表示領域内に位置するように自動的にスクロールを実行する受信装置へメッセージを送信する送信装置」とは、「受信装置へメッセージを送信する送信装置」である点において共通する。 イ 引用発明において、「メール加工サーバ15」は、「携帯メールアドレス”yama@kmail.ne.jp”」である「端末102」に送信される「メール文章」の文字数が300文字であり、「携帯メールアドレスyama@kmail.ne.jp」である「端末102」の「受信可能文字数」が「100文字」である場合に、「メール文章」を、「受信可能文字数」である「100文字」ずつ3つに「分割」するための機能手段を備えるものといえる。 ここで、引用発明の「受信可能文字数」は、「端末102」が受信可能な文字数の上限を意味するから、本願発明1の「表示可能なメッセージの長さの上限」とは、「メッセージの長さの上限」である点において共通し、また、前記「100文字」は「メッセージの長さの上限」以下の長さに含まれる。 また、引用発明において、3つに「分割」された「メール文章」の各々は、本願発明1の「部分メッセージ」に相当し、「分割」された3つの「メール文章」は、本願発明1の「複数の部分メッセージ」に含まれる。 よって、引用発明において、「メール加工サーバ15」が備える、300文字の「メール文章」を「受信可能文字数」である「100文字」以下の範囲である「100文字」ずつ3つに「分割」するための機能手段と、本願発明1の「前記受信装置へ送信されるメッセージを、それぞれ前記表示領域に表示可能なメッセージの長さの上限以下の長さの複数の部分メッセージに分割する分割手段」とは、「前記受信装置へ送信されるメッセージを、それぞれメッセージの長さの上限以下の長さの複数の部分メッセージに分割する分割手段」である点において共通する。 ウ 引用発明において、「メール加工サーバ15」は、3つに「分割」した「メール文章」を一度「蓄積手段15c」に「記録」するための機能手段を備えるものといえる。 ここで、引用発明の「蓄積手段15c」に「記録」することと、本願発明1の「キュー」に「入れる」こととは、「記憶手段」に「記憶する」ことである点において共通する。 そうすると、引用発明において、「メール加工サーバ15」が備える、「分割」した「メール文章」を一度「蓄積手段15c」に「記録」する機能手段と、本願発明1の「前記複数の部分メッセージをキューに入れるエンキュー手段」とは、「前記複数の部分メッセージを記憶手段に記憶する手段」である点において共通する。 エ 引用発明において、「メール加工サーバ15」は、「分割したメールのうち1文字目から100文字のメール文章」を「端末102」に「送信」する機能手段を備えるものといえる。ここで、「分割したメールのうち1文字目から100文字のメール文章」は、本願発明1の「一の部分メッセージ」に相当する。 なお、前記ウを参酌すると、当該「送信」の際には、「分割したメールのうち1文字目から100文字のメール文章」を「蓄積手段15c」(記憶手段)から取り出すことは自明である。 よって、引用発明において、「メール加工サーバ15」が備える、「分割したメールのうち1文字目から100文字のメール文章」を「端末102」に「送信」する機能手段と、本願発明1の「前記複数の部分メッセージのうち、一の部分メッセージを前記キューから取り出して前記受信装置へ送信する第1送信手段」とは、「前記複数の部分メッセージのうち、一の部分メッセージを前記記憶手段から取り出して前記受信装置へ送信する第1送信手段」である点において共通する。 オ 引用発明において、「メール加工サーバ15」は、「端末102」から送信される「残文字要求メール」を受信する機能手段を備えるものといえる。 ここで、「残文字要求メール」は、受信者が「残文字」を「要求」していることを通知するものであるから、「通知情報」といい得るものである。 よって、引用発明において、「メール加工サーバ15」が備える、「端末102」から送信される「残文字要求メール」を受信する機能手段と、本願発明1の「前記送信された部分メッセージが前記表示領域に表示されたときに自動的に送信される通知情報であって、前記送信された部分メッセージが前記表示領域に表示されたことを示す通知情報を受信する受信手段」とは、「送信される通知情報であって、通知情報を受信する受信手段」である点において共通する。 カ 引用発明において、「メール加工サーバ15」は、「残文字要求メール」が受信された後に、「蓄積手段15c」に記録した2つのメールから「101文字目から200文字目までのメール文章」を選択して(取り出して)、「端末102」へ送信する機能手段を備えるものといえる。 ここで、引用発明の「101文字目から200文字目までのメール文章」は、本願発明1の「前記複数の部分メッセージのうち、次の部分メッセージ」に相当する。 よって、引用発明において、「メール加工サーバ15」が備える、「残文字要求メール」が受信された後に、「蓄積手段15c」に記録した2つのメールから「101文字目から200文字目までのメール文章」を選択して(取り出して)、「端末102」へ送信する機能手段と、本願発明1の「前記通知情報が受信されてから所定時間後に、前記複数の部分メッセージのうち、次の部分メッセージを前記キューから取り出して前記受信装置へ送信する第2送信手段」とは、「前記通知情報が受信された後に、前記複数の部分メッセージのうち、次の部分メッセージを前記記憶手段から取り出して前記受信装置へ送信する第2送信手段」である点において共通する。 (2)一致点、相違点 前記(1)より、本願発明1と引用発明は、次の点において一致ないし相違する。 [一致点] 「受信装置へメッセージを送信する送信装置において、 前記受信装置へ送信されるメッセージを、それぞれメッセージの長さの上限以下の長さの複数の部分メッセージに分割する分割手段と、 前記複数の部分メッセージを記憶手段に記憶する手段と、 前記複数の部分メッセージのうち、一の部分メッセージを前記記憶手段から取り出して前記受信装置へ送信する第1送信手段と、 送信される通知情報であって、通知情報を受信する受信手段と、 前記通知情報が受信された後に、前記複数の部分メッセージのうち、次の部分メッセージを前記記憶手段から取り出して前記受信装置へ送信する第2送信手段と、 を備えることを特徴とする送信装置。」 [相違点] <相違点1> 「受信装置」が、本願発明1においては、「メッセージを受信した場合に最新の前記メッセージの少なくとも末尾が表示領域内に位置するように自動的にスクロールを実行する」機能を備えるのに対し、引用発明は、当該構成について具体的に特定していない点。 <相違点2> 「メッセージの長さの上限」が、本願発明1は「前記表示領域に表示可能なメッセージの長さの上限」であるのに対し、引用発明は、「端末102」(受信装置)が「受信可能」な文字数の上限である点。 <相違点3> 「記憶手段」が、本願発明1は、「キュー」であるのに対し、引用発明の「蓄積手段15c」が「キュー」で構成されることを具体的に特定していない点。この点に伴って、「記憶する手段」が、本願発明1は、「エンキュー手段」であるのに対し、引用発明はこれに対応する構成を具体的に特定していない点。 <相違点4> 「通知情報」が、本願発明1においては、「前記送信された部分メッセージが前記表示領域に表示されたときに自動的に送信される」ものであるとともに、「前記送信された部分メッセージが前記表示領域に表示されたことを示す」ものであるのに対し、引用発明の「残文字要求メール」は、受信者が、表示されている「メールアドレス”abc001@mail.com”」を「クリック」することにより送信されるものであるため、「前記送信された部分メッセージが前記表示領域に表示されたときに自動的に送信される」ものでも「前記送信された部分メッセージが前記表示領域に表示された」ことを示すものでもない点。 <相違点5> 「次の部分メッセージ」を送信するタイミングが、本願発明1は、「前記通知情報が受信されてから所定時間後」であるのに対し、引用発明は、「残文字要求メール」を受信してから「101文字目から200文字目までのメール文章」を送信するまでの時間について具体的に特定するものではない点。 (3)相違点についての判断 上記相違点4に係る本願発明1の構成は、「前記表示領域」を含むことから、「表示領域」に係る構成を特定している、上記相違点1に係る本願発明1の構成と連関しているため、上記相違点1及び4についてまとめて検討する。 引用文献1ないし4には、上記相違点1及び4に係る本願発明1の構成である、「受信装置」が、「メッセージを受信した場合に最新の前記メッセージの少なくとも末尾が表示領域内に位置するように自動的にスクロールを実行する」機能を備えることを前提に、「前記送信された部分メッセージが前記表示領域に表示されたことを示す通知情報」が、「前記送信された部分メッセージが前記表示領域に表示されたときに自動的に送信される」ことは、記載も示唆もない。 なお、引用文献2記載事項は、「携帯端末」が「受信済ページデータの最下部」まで「自動スクロール」したタイミングで「携帯端末」から送信される「ページ要求コマンド」を受信すると、「画像配信サーバ」が、「2ページ」分の「ページデータ」を「生成」して送信する技術に関するものであるから、「メール文章」を「分割」して送信する引用発明とは、技術分野が異なるため、引用発明に組み合わせる動機付けが存在しない。 また、引用文献3記載事項は、次の電子メールを受信できる旨の通知を受信したタイミングで分割した次の部分を送信するものであるが、「表示」との関係を具体的に特定するものではないから、次の電子メールを受信できる旨の通知が、上記相違点4に係る本願発明1の「前記送信された部分メッセージが前記表示領域に表示されたことを示す通知情報」ものに対応したものであるとはいえない。 引用文献4も同様に上記相違点1及び4に係る本願発明1の構成を備えるものではない。 加えて、引用文献1の【0002】には、従来技術における課題の一つとして、「また、送信者が長文メールを複数のメールに分割して送信した場合、それらを受信するため複数回受信しなければならず、それらのメールが不必要なものであったしても通信料金を支払わなければならない。」と記載され、また同【0018】には、発明の効果として「受信者はメール文章全体を受信する前に、メール文章の一部分のみを読み、そのメールが必要か不必要か判断できるので、不要な通信料金を支払う必要がない。」と記載されていることから、引用発明は、不必要なメールの受信を抑制することを課題の一つとしており、当該課題を解決するための手段として、受信者が、「クリック」の動作により「残文字要求メール」を送信するように構成されていると理解することができる。したがって、引用発明において、「残文字要求メール」を「自動的」に送信するように構成を変更することには技術的な阻害要因がある。 以上のとおりであるから、上記相違点1及び4に係る本願発明1の構成は、当業者が、引用発明及び引用文献2ないし4に記載された技術的事項から容易に想到し得たものとはいえない。 したがって、上記相違点2、3及び5について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし4に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 本願発明2ないし5について 本願発明2ないし5は、上記相違点1及び4に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし4に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 本願発明6及び7について 本願発明6は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明7は、本願発明1に対応するプログラムの発明であり、いずれも、上記相違点1及び4に係る本願発明1の構成に対応する技術的事項を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし4に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 4 まとめ 以上のとおり、本願発明1ないし7は、当業者が、上記引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし4に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。 第7 当審拒絶理由についての判断 1 理由1(サポート要件違反)について 本件補正前の請求項1、6及び7に記載されていた「所定長以下の長さの複数の部分メッセージに分割する」の「所定長」は、本件補正により、「前記表示領域に表示可能なメッセージの長さの上限」と補正され、また、本件補正前の請求項4に記載されていた「第2の所定長」は、本件補正により「前記上限」と補正され、発明の詳細な説明に記載したものとなった。 2 理由2(明確性要件違反)について 本件補正前の請求項3に記載されていた「長さ」及び請求項4に記載されていた「所定長」は、いずれも、本件補正により「上記上限」と補正され、本件補正後の請求項1に記載の「前記表示領域に表示可能なメッセージの長さの上限」であることが明確となった。 よって、当審拒絶理由は、いずれも解消した。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明1ないし7は、当業者が引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし4に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-07-28 |
出願番号 | 特願2019-534913(P2019-534913) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 北川 純次 |
特許庁審判長 |
角田 慎治 |
特許庁審判官 |
林 毅 小田 浩 |
発明の名称 | 送信装置、送信方法、及び送信プログラム |
代理人 | 特許業務法人 インテクト国際特許事務所 |
代理人 | 奥 和幸 |