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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A24F |
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管理番号 | 1376497 |
審判番号 | 不服2021-1130 |
総通号数 | 261 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-09-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-01-27 |
確定日 | 2021-07-26 |
事件の表示 | 特願2019-237784「エアロゾル生成装置並びにエアロゾル生成装置の制御方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月 9日出願公開、特開2020- 54383〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2017年4月24日を国際出願日とする特願2019-514885号の一部を、令和元年12月27日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 令和2年 3月26日 :手続補正書、上申書の提出 同年 6月 3日付け:拒絶理由通知書 同年 8月 4日 :意見書の提出 同年10月26日付け:拒絶査定 令和3年 1月27日 :審判請求書の提出 同年 3月 5日付け:当審による拒絶理由通知書 同年 5月 7日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1ないし9に係る発明は、令和3年 5月 7日提出の手続補正書に記載された請求項1ないし9により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「【請求項1】 エアロゾル源の霧化及び香味源の加熱の一方又は双方を行うために給電する電源と、 前記給電を制御するための測定値を出力する流量センサと、 前記測定値に基づき、前記電源の給電を制御する制御部と を含み、前記制御部は、 前記測定値が第1閾値以上という第1条件を満たす場合に、単位時間当たりの給電量(以下、「単位給電量」という。)を増加させ、 前記測定値が前記第1閾値より大きい第2閾値未満という第2条件及び前記測定値の時間微分が0以下又は0より小さい第3閾値以下であるという第3条件を満たす場合に、前記単位給電量を減少させる ように制御する、エアロゾル生成装置。」 第3 拒絶の理由 令和3年 3月 5日付けで当審が通知した拒絶理由のうち、特許法第29条第2項(進歩性)に係る拒絶理由の概要は次のとおりである。 この出願の請求項1?13(補正前)に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特表2013-545474号公報 2.特表2014-534814号公報 第4 引用文献の記載事項及び引用発明 1 引用文献1 (1)引用文献1の記載事項 令和3年 3月 5日付けで当審より通知した拒絶理由において引用した引用文献1には、以下の事項が記載されている(なお、下線は参考のために当審が付与したものである。他の文献でも同様である。)。 「【0039】 エアロゾル発生基材が液体基材の場合、液体は、例えば、エアロゾル発生システムでの使用に適した沸点といった物理特性を有し、沸点が高すぎると少なくとも1つの電気加熱素子は毛細管ウィックで液体を蒸発させることができず、逆に沸点が低すぎると、液体は少なくとも1つの電気加熱素子が作動しなくても蒸発する場合がある。少なくとも1つの電気加熱素子の制御は、液体基材の物理特性に依存する場合がある。好ましくは、液体は、加熱時に液体から放出される、揮発性たばこ風味化合物を有するたばこ含有材料を含む。別の方法として又は追加的に、液体は、非たばこ材料を含有することができる。液体は、水、溶剤、エタノール、植物エキス、及び天然又は人工香味料を含有することができる。好ましくは、液体は、エアロゾルフォーマを更に含むことができる。適切なエアロゾルフォーマの例としては、グリセリン又はポリピレングリコールを挙げることができる。」 「【0051】 図1は電気加熱式エアロゾル発生システムの1つの実施例を示す。図1において、システムは、液体貯蔵部を有する喫煙システムである。図1の喫煙システム100は、マウスピース端部103である第1の端部及び本体端部105である第2の端部を有するハウジング101を備える。本体端部において、バッテリ107の形態の電源、ハードウェア109の形態の電気回路、及びパフ検知システム111が設けられている。マウスピース端部において、液体115を収容するカートリッジ113の形態の液体貯蔵部、毛細管ウィック117、及び少なくとも1つの加熱素子を含むヒーター119が設けられている。図1においてヒーターは概略的に示されていることに留意されたい。毛細管ウィック117の一端はカートリッジ113の中に延び、毛細管ウィック117の他端はヒーター119で取り囲まれている。ヒーターは、接続部121を介して電気回路に接続されている。また、ハウジング101は、マウスピース端部の空気入口123及び空気出口125、並びにエアロゾル発生チャンバ127を含む。 【0052】 使用時、以下のように作動する。液体115は、カートリッジ内に延びるウィック117の一端からヒーター119で取り囲まれるウィック117の他端へ、毛細管作用によってカートリッジ113から移動又は運ばれる。ユーザが空気出口125においてデバイスを吸い込む際に、外気は空気入口123を通って吸い込まれる。図1に示す構成において、パフ検知システム111は、パフを検出してヒーター119を作動させる。バッテリ107は、ヒーター119にエネルギを供給してヒーターで取り囲まれたウィック117の端部を加熱する。このウィック117の端部の液体はヒーター119によって蒸発して過飽和蒸気が発生する。同時に、蒸発した液体は、毛細管作用によってウィック117に沿って移動する別の液体に置き換わる(これは「ポンプ作用」と呼ばれる場合もある)。発生した過飽和蒸気は、空気入口123からの空気流に混合されて運ばれる。エアロゾル発生チャンバ127において、蒸気は凝縮して吸入可能エアロゾルを生成するようになっており、このエアロゾルは出口125に運ばれてユーザの口腔に達する。」 「【0060】 図3は、本発明による電気加熱式エアロゾル発生システムの加熱素子への加熱電力を制御する方法の第2の実施形態を示す。図3の構成は、ある状况下では、図2に示す構成を超える改善をもたらすことができる。 【0061】 図3は、縦軸に空気流量301及び加熱電力303、横軸に時間305を示す図である。空気流量301は実線で示され、加熱電力303は点線で示されている。同様に、空気流量は、単位時間あたりの容積で測定され、典型的には立方センチメートル/秒である。空気流量は、図1のパフ検知システム111等のパフ検知システムで検出される。ワットで計測される加熱電力は、図1のハードウェア109等の電気回路の制御下で電源から加熱素子に供給される電力である。図3は、図1に示すような電気加熱式エアロゾル発生システムでユーザが摂取する単一のパフを示す。 【0062】 図2と同様に、パフに関する空気流量は、ガウス分布の形を取るものとして示されているが、このことは必須ではない。実際には、多くの場合、空気流量カーブは厳密なガウス分布を形成しない場合もある。空気流量はゼロから始まり、最大値301maxまで徐々に増加した後にゼロまで減少する。空気流量カーブの下の領域は、パフに関する総空気体積である。 【0063】 空気流量301が閾値301aまで増加したことをパフ検知システムが検出すると、時間305aにおいて、電気回路は電力を制御して、加熱素子をスイッチオンして加熱電力303を直接ゼロから電力303aまで増加させるようになっている。空気流量301が閾値301bまで減少したことをパフ検知システムが検出すると、時間305bにおいて、電気回路は電力を制御して、加熱素子をスイッチオフして加熱電力303を直接電力303aからゼロまで減少させるようになっている。時間305aと時間305bとの間で加熱素子への加熱電力は電力303aに維持される。従って、加熱期間は時間305b-305aである。 【0064】 図3の実施形態において、加熱素子をスイッチオフする空気流量の閾値301bは、加熱素子をスイッチオンする空気流量の閾値301aよりも大きい。このことは、加熱素子が図2の構成よりもパフの早期にスイッチオフされることを意味する。これによりパフ終了近くでの過熱の防止が可能になる。図3の円で囲んだ領域307は図2の円で囲んだ領域207よりも縮小されていることに留意されたい。パフの早期において加熱素子をスイッチオフすることは、加熱素子が冷却される際に大きな空気流が存在することを意味する。これによりハウジングの内面に大量の凝縮物が形成されるのを防止できる。このことは結果的に、液体漏洩の可能性を低減する。」 「 」(図1) 「 」(図3) (2)引用文献1から理解できる事項 上記(1)の各記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されていると認められる。 ア 電気加熱式エアロゾル発生システムは、液体115を収容するカートリッジ113を備える(段落【0051】、図1参照)。 イ 電気加熱式エアロゾル発生システムは、カートリッジ113内に一端が延びるウィック117を備える(段落【0051】、図1参照)。 ウ 電気加熱式エアロゾル発生システムは、ウィック117の他端を取り囲むヒーター119を備える(段落【0051】、図1参照)。 エ 電気加熱式エアロゾル発生システムは、ヒーター119に電力を供給してヒーター119で取り囲まれたウィック117の端部を加熱するバッテリ107を備える(段落【0052】、【0061】、図1参照)。 オ 電気加熱式エアロゾル発生システムは、単位時間あたりの容積として測定される空気流量を検出するパフ検知システム111を備える(段落【0051】、【0061】、図1参照)。 カ 電気加熱式エアロゾル発生システムは、接続部121を介してヒーター119と接続される電気回路を備える(段落【0051】、図1参照)。 キ 液体115は、加熱時に液体115から放出される、揮発性たばこ風味化合物を有するたばこ含有材料を含む(段落【0039】、【0051】参照)。 ク ウィック117の端部の液体はヒーター119によって蒸発して過飽和蒸気が発生し、発生した過飽和蒸気は、凝縮して吸入可能エアロゾルを生成するようになっている(段落【0052】参照)。 ケ 電気回路は、空気流量301が閾値301aまで増加したことをパフ検知システム111が検出すると、時間305aにおいて、ヒーター119をスイッチオンして加熱電力303をゼロから電力303aまで増加させるよう制御する(段落【0052】、【0061】、【0063】、図3参照)。 コ 電気回路は、空気流量301が閾値301bまで減少したことをパフ検知システム111が検出すると、時間305bにおいて、ヒーター119をスイッチオフして加熱電力303を電力303aからゼロまで減少させるよう制御する(段落【0052】、【0061】、【0063】、図3参照)。 サ ヒーター119をスイッチオフする空気流量の閾値301bは、ヒーター119をスイッチオンする空気流量の閾値301aよりも大きい(段落【0064】、図3参照)。 シ 上記段落【0061】、【0063】、【0064】の記載事項及び図3の記載内容から、ヒーター119をスイッチオフして加熱電力303を電力303aからゼロまで減少させる時間305bは、空気流量が最大値301maxを超えた後であることが看取できる。 (3)引用発明 上記(1)、(2)から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「液体115を収容するカートリッジ113と、 カートリッジ113内に一端が延びるウィック117と、 ウィック117の他端を取り囲むヒーター119と、 ヒーター119に電力を供給してヒーター119で取り囲まれたウィック117の端部を加熱するバッテリ107と、 単位時間あたりの容積として測定される空気流量を検出するパフ検知システム111と、 接続部121を介してヒーター119と接続される電気回路とを備え、 液体115は、加熱時に液体115から放出される、揮発性たばこ風味化合物を有するたばこ含有材料を含み、 ウィック117の端部の液体はヒーター119によって蒸発して過飽和蒸気が発生し、発生した過飽和蒸気は、凝縮して吸入可能エアロゾルを生成するようになっており、 電気回路は、 空気流量301が閾値301aまで増加したことをパフ検知システム111が検出すると、時間305aにおいて、ヒーター119をスイッチオンして加熱電力303をゼロから電力303aまで増加させるよう制御し、 空気流量301が閾値301bまで減少したことをパフ検知システム111が検出すると、時間305bにおいて、ヒーター119をスイッチオフして加熱電力303を電力303aからゼロまで減少させるよう制御しており、 ヒーター119をスイッチオフする空気流量の閾値301bは、ヒーター119をスイッチオンする空気流量の閾値301aよりも大きく、 ヒーター119をスイッチオフして加熱電力303を電力303aからゼロまで減少させる時間305bは、空気流量が最大値301maxを超えた後である、 電気加熱式エアロゾル発生システム。」 2 引用文献2 (1)引用文献2の記載事項 令和3年 3月 5日付けで当審より通知した拒絶理由において引用した引用文献2には、以下の事項が記載されている。 「【0058】 図1は、電気加熱式エアロゾル発生装置の1つの実施例を示す。図1において、装置は、液体貯蔵部を有する喫煙装置である。図1の喫煙装置100は、マウスピース端部103及び本体端部105を有するハウジング101を備える。本体端部には、バッテリ107の形態の電力供給源と、ハードウェア109の形態の電気回路と、吸煙検出装置111とが設けられる。マウスピース端部には、液体115を収容するカートリッジ113の形態の液体貯蔵部、毛細管芯117、及び少なくとも1つの加熱要素を含み加熱器119が設けられる。加熱器は図1においては概略的にのみ示されている点に留意されたい。毛細管芯117の一方端は、カートリッジ113内に延び、毛細管芯117の他方端は、加熱器119により囲まれる。加熱器は、接続部121を介して電気回路に接続される。また、ハウジング101は、空気入口123と、マウスピース端部の空気出口125と、エアロゾル形成チャンバ127と、を含む。 【0059】 使用時には、以下のように作動する。液体115は、液体貯蔵部内に延びた毛細管芯117の端部から、加熱器119により囲まれる毛細管芯の他方の端部まで毛細管作用により液体貯蔵部114から移送又は運ばれる。ユーザが空気出口125にて装置を吸い込むと、周囲空気が空気入口123を通って吸い込まれる。図1に示す構成において、吸煙検出装置111が吸煙を検知し、加熱器119を作動させる。バッテリ107は、エネルギを加熱器119に供給し、加熱器により囲まれる毛細管芯117の端部を加熱する。加熱器119により毛細管芯117の当該端部において液体が気化し、過飽和蒸気を生成する。これと同時に、気化した液体に代わって、毛細管作用により毛細管芯117に沿って移動する別の液体が置き換わる(これは「ポンプ作動」と呼ばれることがある)。生成された過飽和蒸気は、空気入口123からの空気流と混合されて該空気流内に運ばれる。エアロゾル形成チャンバ127において、蒸気が凝縮して吸入可能エアロゾルを形成し、出口125に向けて、更にユーザの口腔内に運ばれる。」 「【0062】 図1は、本発明と共に使用できる電気加熱式エアロゾル発生装置の1つの実施例を示す。しかしながら、他の多数の実施例が本発明で使用可能である。電気加熱式エアロゾル発生装置では、単に、電気回路の制御下で少なくとも1つの電気加熱要素によって加熱され且つ電源によって給電することができるエアロゾル形成基材を含むか、又は受けることだけが必要となる。例えば、装置は喫煙装置でなくともよい。例えば、エアロゾル形成基材は、液体基材ではなく、固体基材であってもよい。代替として、エアロゾル形成基材は、ガス状基材のような別の形態の基材であってもよい。加熱要素は、あらゆる適切な形態をとることができる。ハウジングの全体の形状及びサイズは変更可能であり、ハウジングは、別個のシェル及びマウスピースを備えることができる。もちろん、他の変形も実施可能である。 【0063】 上述のように、ハードウェア109及び吸煙検出装置111を備える電気回路は、加熱要素への電力の供給を制御するためにプログラム可能であるのが好ましい。その結果、これは、温度プロファイルに影響を及ぼし、生成されるエアロゾルの密度に影響を及ぼすことになる。用語「温度プロファイル」は、喫煙に要する時間にわたる加熱要素の温度(又は、例えば加熱要素によって発生した熱などの別の同様の指標)のグラフ表現を意味する。代替として、ハードウェア109及び吸煙検出装置111は、加熱要素への電力の供給を制御するために配線接続することができる。この場合も同様に、これは温度プロファイルに影響を及ぼし、生成されるエアロゾルの密度に影響を及ぼすことになる。」 「【0065】 図2は、本発明の第1の実施形態による、図1の加熱器への電力を制御する方法を示している。曲線200は、ユーザの吸入期間又は吸煙の間に装置を通る検出された空気流である。曲線210は、同じ期間中の加熱器の温度である。電力は、装置を通る空気流が最初に検出されたときに加熱器に加えられ、オフにされるまで同じレベルで連続的に加えられる。従って、加熱器の温度は、最初に、ぼほ安定レベルに達するまで上昇し、この安定レベルにおいて、空気流の冷却が、電源によって提供される加熱と平衡する。ユーザの吸煙の終了に向けて空気流が減少し続け、加熱器の温度は、再度より急激に上昇する。これは、空気流の冷却効果が低減していることに起因する。従って、加熱器温度は、吸煙中の空気流の変化の影響を受け易い。 【0066】 曲線220は、加熱器の温度を空気流で除算した値のプロットである。この曲線は、加熱器への電力をオフにする正規化閾値を提供するのに使用され、吸煙終了変数とみなされる。曲線220は以下の式を用いて算出される。 又は、 式中、 EPは吸煙終了変数、Tは加熱要素の温度、Qは空気流量、Aは補正係数である。 【0067】 加熱器への電力は、曲線220が閾値に達したとき(但し、最大流量を超えた後だけ)停止する。この実施形態において、閾値は、製造時に電気回路内に予め設定されて記憶される。しかしながら、特定のユーザの行動に対して最適となるように経時的に変化する閾値を有することも可能である。電力停止は、線230で示され、吸煙が始まってから1.6秒過ぎたところである。電力が停止した後、加熱器の温度は低下する(破線215)。低下している温度についての対応する吸煙終了変数の曲線が得られ、破線225で示される。閾値は、加熱器の温度が低下し、エアロゾルの発生を吸煙の終わりまで有意に低減させるが、装置のユーザが不満を覚えるほど早期ではないように選択される。」 「 」(図1) 「 」(図2) (2)引用文献2に記載された技術的事項 上記(1)の記載から、引用文献2には以下の技術的事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「液体115を収容するカートリッジ113と(段落【0058】、図1参照)、 カートリッジ113内に一端が延びる毛細管芯117と(段落【0058】、図1参照)、 毛細管芯117の他端を取り囲む加熱器119と(段落【0058】、図1参照)、 加熱器119にエネルギを供給し、加熱器119により囲まれる毛細管芯117の端部を加熱するバッテリ107と(段落【0059】、図1参照)、 接続部121を介して加熱器119と接続され、加熱器119への電力の供給を制御するための電気回路とを備える電気加熱式エアロゾル発生装置において(段落【0058】、【0062】、【0063】、図1参照)、 電力は、装置を通る空気流が最初に検出されたときに加熱器119に加えられ(段落【0065】、図2参照)、 加熱器119への電力は、加熱器119の温度を空気流で除算した値が閾値に達したとき(但し、最大流量を超えた後だけ)停止する(段落【0066】、【0067】、図2参照)点。」 第5 対比・判断 1 対比 本願発明と引用発明とを、その機能、構造または技術的意義を考慮して対比する。 引用発明の「バッテリ107」は、本願発明の「電源」に、 引用発明の「パフ検知システム111」は、空気流量を検出するものであるから、本願発明の「流量センサ」に、 引用発明の「単位時間あたりの容積として測定され」た「空気流量」は、本願発明の「測定値」に、 引用発明の「電気回路」は、空気流量に基づき、バッテリ107からヒーター119に供給される電力を増加させたり、減少させたり制御するものであるから、本願発明の「前記測定値に基づき、前記電源の給電を制御する制御部」に、 引用発明の「閾値301a」は、本願発明の「第1閾値」に、 引用発明の「閾値301b」は、閾値301aよりも大きいものであるから、本願発明の「前記第1閾値より大きい第2閾値」に、それぞれ相当する。 また、引用発明の「ウィック117の端部の液体はヒーター119によって蒸発して過飽和蒸気が発生し、発生した過飽和蒸気は、凝縮して吸入可能エアロゾルを生成する」ことは、本願発明の「エアロゾル源の霧化」に相当する。 また、引用発明の「バッテリ107」が「ヒーター119に電力を供給してヒーター119で取り囲まれたウィック117の端部を加熱する」ことは、「ウィック117の端部の液体はヒーター119によって蒸発して過飽和蒸気が発生し、発生した過飽和蒸気は、凝縮して吸入可能エアロゾルを生成する」ことを踏まえると、本願発明の「電源」が「エアロゾル源の霧化及び香味源の加熱の一方又は双方を行うために給電する」ことに相当する。 また、引用発明の「パフ検知システム111」が「空気流量を検出」して、電気回路で空気流量に基づき、ヒーター119に供給される電力が増加されたり、減少されたり制御されていることを踏まえると、引用発明の「パフ検知システム111」が、本願発明の「流量センサ」が「給電を制御するための測定値を出力する」態様を備えることは明らかである。 また、引用発明の「電気回路」が「空気流量301が閾値301aまで増加したことをパフ検知システム111が検出すると、時間305aにおいて、ヒーター119をスイッチオンして加熱電力303をゼロから電力303aまで増加させ」ることは、本願発明の「制御部」が「前記測定値が第1閾値以上という第1条件を満たす場合に、単位時間当たりの給電量(以下、「単位給電量」という。)を増加させ」ることに相当する。 また、引用発明の「電気回路」が「空気流量301が閾値301bまで減少したことをパフ検知システム111が検出すると、時間305bにおいて、ヒーター119をスイッチオフして加熱電力303を電力303aからゼロまで減少させる」ことは、本願発明の「制御部」が「前記測定値が前記第1閾値より大きい第2閾値未満という第2条件及び前記測定値の時間微分が0以下又は0より小さい第3閾値以下であるという第3条件を満たす場合に、前記単位給電量を減少させる」ことと、制御部は、測定値が所定の条件を満たす場合に単位給電量を減少させるという限りにおいて一致している。 そして、引用発明の「電気加熱式エアロゾル発生システム」は、「エアロゾル生成装置」であるといえる。 したがって、両者は以下の点で一致する一方、以下の各点で相違する。 <一致点> 「エアロゾル源の霧化及び香味源の加熱の一方又は双方を行うために給電する電源と、 前記給電を制御するための測定値を出力する流量センサと、 前記測定値に基づき、前記電源の給電を制御する制御部と を含み、前記制御部は、 前記測定値が第1閾値以上という第1条件を満たす場合に、単位時間当たりの給電量(以下、「単位給電量」という。)を増加させ、 前記測定値が所定の条件を満たす場合に、前記単位給電量を減少させる ように制御する、エアロゾル生成装置。」 <相違点> 測定値が所定の条件を満たす場合に、単位給電量を減少させる際の、所定の条件に関して、本願発明では、「前記測定値が前記第1閾値より大きい第2閾値未満という第2条件及び前記測定値の時間微分が0以下又は0より小さい第3閾値以下であるという第3条件を満たす場合」としているのに対して、引用発明では、ヒーター119をスイッチオフして加熱電力303を電力303aからゼロまで減少させる時間305bは空気流量が最大値301maxを超えた後ではあるものの、ヒーター119をスイッチオフする条件としては「空気流量301が閾値301bまで減少したこと」としており、その他の条件を課しているか否か不明である点。 2 判断 上記相違点について検討する。 (1)本願発明の「第2条件」に関して 引用発明の「空気流量301が閾値301bまで減少したこと」とは、空気流量301が閾値301b以下となることを意味しているものと解され、空気流量301が閾値301b未満となることの他に空気流量301が閾値301bと同じ値になることも含まれていると認められる。 しかしながら、空気流量301が閾値301b以下となることと空気流量301が閾値301b未満となることのいずれを条件とするかは当業者が適宜選択し得ることであって、引用発明において、単位給電量を減少させるための条件として、空気流量301が閾値301b以下となることに代えて空気流量301が閾値301b未満となることを採用し、本願発明の「第2条件」の如く構成することは、格別困難なものではない。 (2)本願発明の「第3条件」に関して 上記認定のとおり、引用文献2記載事項では、加熱器119への電力供給を停止する条件として、「加熱器の温度を空気流で除算した値が閾値に達した」という条件の他に「最大流量を超え」るという条件を採用している。 引用発明と引用文献2記載事項は、電気加熱式エアロゾル発生装置である点で技術分野が共通している。 また、引用発明では、ヒーター119をスイッチオフする空気流量の閾値301bは、ヒーター119をスイッチオンする空気流量の閾値301aよりも大きいものであって、ヒーター119をスイッチオフして加熱電力303を電力303aからゼロまで減少させる時間305bが、空気流量が最大値301maxを超えた後となっており、このような制御を確実に実現するために引用文献2記載事項を適用する動機付けが存在する。 そうすると、引用発明に引用文献2記載事項を適用して、引用発明において、ヒーター119への加熱電力303の供給を停止する条件の一つとして、空気流量301が最大値301maxを超えることを採用して、空気流量301が最大値301maxを超えるという条件が満たされた状態で、空気流量301が閾値301bまで減少したことをパフ検知システム111が検出すると、時間305bにおいて、ヒーター119をスイッチオフして加熱電力303を電力303aからゼロまで減少させるように構成することは、当業者であれば容易に想到し得る。 そして、最大値の前後でその微分値が正から負に変化することは技術常識であり、当該技術常識の下、引用発明に引用文献2記載事項を適用するにあたって、空気流量301が最大値301maxを超えたか否かの判定のため、空気流量301の微分値が0以下となることを条件とすることは、空気流量301が最大値301maxを超えたということを単に数学的表現に置き換えたに過ぎず、当業者にとって格別困難なものではない。 3 本願発明の効果 本願発明の効果である「適切なタイミングでエアロゾル生成を停止できるエアロゾル生成装置を提供することができる。」(段落【0079】)、「単位給電量が増加した直後に減少するといった事態を回避できる。」(段落【0145】)、「吸い込みの強さが増え続けている間は、単位給電量が減少することがなくなる。」(段落【0146】)は、引用発明、引用文献2記載事項及び技術常識から予測できる範囲内のものであって、格別顕著なものとはいえない。 4 請求人の主張 請求人は、令和3年 5月 7日提出の意見書において、 「本願発明1の課題は、理由2に関連して本拒絶理由通知書において審判官殿も認定しているように、『パフ終期を判定する閾値を、パフ始期を判定する閾値より大きくした場合、信号と閾値との大小比較のみを用いた判定では、パフ開始の条件を充足したタイミングと略同時に又は直後に、パフ終了の条件を充足してしまうという問題』(段落[0005])を解決することであり、『前記測定値の時間微分が0以下又は0より小さい第3閾値以下であるという第3条件』は、特にこれに寄与するものである。 一方、引用文献1の段落[0063]によれば、引用発明1は、空気流量301が閾値301bまで減少したことをパフ検知システムが検出すると、加熱電力303を減少させるものであるが、引用文献1には、本願発明1の上記課題及び当該課題を解決するための構成は開示も示唆もされていない。 また、引用文献2の段落[0066]及び[0067]には、引用発明2は、加熱器の温度を空気流で除算した値のプロットである曲線220(空気流そのものを表していない)が閾値に達したとき且つ最大流量を超えた後に、加熱器への電力を停止することが記載されているが、引用文献2には、本願発明1の上記課題及び当該課題を解決するための構成は開示も示唆もされていない。 従って、引用文献1及び2に接した当業者が、本願発明1と引用発明1との上記相違点を埋めて本願発明1を導くことはできない。」(「5-1-4 本願発明1と引用発明1との上記相違点についての検討」参照。) と主張している。 引用発明において、ヒーター119をスイッチオフする条件として「空気流量301が閾値301bまで減少したこと」以外の条件を課しているか否かは不明であるものの、上述したとおり、引用発明では、ヒーター119をスイッチオフする空気流量の閾値301bは、ヒーター119をスイッチオンする空気流量の閾値301aよりも大きく、ヒーター119をスイッチオフして加熱電力303を電力303aからゼロまで減少させる時間305bが、空気流量が最大値301maxを超えた後となっており、引用発明は、パフ終期を判定する閾値をパフ始期を判定する閾値より大きくしているにもかかわらず、「パフ開始の条件を充足したタイミングと略同時に又は直後に、パフ終了の条件を充足してしまうという問題」が生じないものであるといえる。 そして、引用発明のこのような制御を確実に実現するために引用文献2記載事項の「最大流量を超え」るという条件を適用する動機付けが存在する。 そのため、引用発明において、ヒーター119への加熱電力303の供給を停止する条件の一つとして、空気流量301が最大値301maxを超えることを採用して、空気流量301が最大値301maxを超えるという条件が満たされた状態で、空気流量301が閾値301bまで減少したことをパフ検知システム111が検出すると、ヒーター119をスイッチオフして加熱電力303を電力303aからゼロまで減少させるように構成することは、当業者であれば容易に想到し得る。 また、上記技術常識の下、引用発明に引用文献2記載事項を適用するにあたって、空気流量301が最大値301maxを超えたか否かの判定のため、空気流量301の微分値が0以下となることを条件とすることも、空気流量301が最大値301maxを超えたということを単に数学的表現に置き換えたものであって当業者にとって格別困難なものではない。 よって、請求人の主張は採用できない。 5 まとめ したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-05-28 |
結審通知日 | 2021-05-31 |
審決日 | 2021-06-11 |
出願番号 | 特願2019-237784(P2019-237784) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A24F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 沼田 規好 |
特許庁審判長 |
松下 聡 |
特許庁審判官 |
後藤 健志 山崎 勝司 |
発明の名称 | エアロゾル生成装置並びにエアロゾル生成装置の制御方法及びプログラム |
代理人 | 上田 忠 |
代理人 | 宮前 徹 |
代理人 | 松尾 淳一 |
代理人 | 山本 修 |