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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1376631
審判番号 不服2020-5960  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-01 
確定日 2021-08-05 
事件の表示 特願2019-23144号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和1年5月16日出願公開、特開2019-72567号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年12月9日に出願した特願2015-239975号の一部を平成31年2月13日に新たな特許出願(特願2019-23144号)としたものであって、令和1年11月11日付けで拒絶の理由が通知され、令和2年1月10日に意見書及び手続補正書が提出され、同年2月3日付け(送達日:同年2月12日)に拒絶査定がなされ、それに対して、同年5月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、令和3年1月26日付けで拒絶の理由が通知され、同年3月26日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
この出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和3年3月26日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(A?Iについては、発明特定事項を分説するため当審で付した。)。

「A 基板と、当該基板に接続される複数のケーブルと、を備えた遊技機において、
B 左右方向の一方を回動軸とし他方を開放側として支持部に開閉可能に支持される前面開閉部を備え、
C 前記複数のケーブルには、
前記基板に接続する第1ケーブル側コネクタと当該第1ケーブル側コネクタの向きを特定する判別情報が付されたコードを含む複数本のコードで構成された第1ケーブルと、
前記基板に接続する第2ケーブル側コネクタと当該第2ケーブル側コネクタの向きを特定する判別情報が付されたコードを含む複数本のコードで構成された第2ケーブルと、があり、
D 前記第1ケーブル側コネクタと前記第2ケーブル側コネクタとはピン数が異なるとともに、前記第1ケーブルと前記第2ケーブルとはコード数が異なり、かつ、前記第1ケーブルと前記第2ケーブルとは前記判別情報が同じであり、
E 前記基板には、前記第1ケーブル側コネクタに接続される第1基板側コネクタと、前記第2ケーブル側コネクタに接続される第2基板側コネクタと、が配置され、
F 前記第1基板側コネクタは接点となるピンが一列で並ぶコネクタであるとともに、前記第2基板側コネクタは接点となるピンが複数列で並ぶコネクタであって、
G 前記第1ケーブルは、前記第1ケーブル側コネクタを前記第1基板側コネクタに接続したときに前記判別情報が付されたコードが当該第1基板側コネクタの前記開放側の端部に位置するように、当該判別情報が付されたコードを当該第1ケーブル側コネクタに接続し、
H 前記第2ケーブルは、前記第2ケーブル側コネクタを前記第2基板側コネクタに接続したときに前記判別情報が付されたコードが当該第2基板側コネクタの前記回動軸側の端部に位置するように、当該判別情報が付されたコードを当該第2ケーブル側コネクタに接続した
I ことを特徴とする遊技機。」

第3 拒絶の理由
令和3年1月26日付けで当審が通知した拒絶理由は、概略、次のとおりのものである。

本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献:特開2001-178940号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
引用文献には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)。

1 「【0016】図1及び図2において、弾球遊技機1は、縦長な方形状に枠組み形成される外枠2と、該外枠2の一側に開閉自在に軸支され且つ弾球遊技機1の主要構成部のほぼすべてが集約して設けられる前面枠3と、該前面枠3の前面上部に開閉自在に設けられるガラス板保持枠4とから構成されている。また、前面枠3に設けられる主要構成部としては、上記したガラス板保持枠4、遊技盤40、上皿19、灰皿29を含む下皿27、操作ハンドル30、機構板150
、打球発射装置124がある。また、図示の実施形態では、弾球遊技機1の側方に遊技者に遊技玉を貸し出すためのカードユニット装置31が付設されている。 」

2 「【0103】上記したボックス状主体310に止着される電飾制御基板87は、その上部に多数のコネクタ87a?87dが実装され、その下部がMPUやROM等のICチップが実装される領域となっている。また、電飾制御基板87の上側二隅には、取付穴301が形成され、該取付穴301に前記取付ボス311が対応されて導電ネジ303で止着される。この導電ネジ303は、取付ボス311の裏側に露出して取付台に装着されたときに該取付台に形成された弾
性当接片に当接してアース機能を発揮するものである。したがって、導電ネジ303の先端も平らな先端当接面となっている。一方、効果音制御基板95も、電飾制御基板87と同様に、その上部に多数のコネクタ95a?95cが実装され、その下部がMPUやROM等のICチップが実装される領域となっている。また、効果音制御基板95の上側二隅には、導電ネジ303を介して効果音制御基板95を取付ボス311に止着するための取付穴302が形成されている。」

3 「【0107】次に、上記した各基板間を接続する配線について図12及び図13を参照して説明する。先ず、配線の基本構造は、図12に示すように、配線束201の両端にコネクタ202を備えたハーネス200として構成されている。配線束201は、同一色の複数の配線201aと、該配線201aと色が異なる1本の配線201b、からなる。1本の配線201bは、配線束201の一側端に配置されており、これによってコネクタ202の左右が一目で判別できるようになっている。また、配線束201の両端を除いた部分は、透明合成樹脂(軟質塩化ビニル等)からなる円筒形状の保護管203によって結束されており、これによって配線201a,201bが配線束201としてまとめられると共に、外部から保護されるようになっている。なお、本実施形態では、保護管203を透明なものとすることで、配線束201の結束部分が外部から視認可能となっており、配線201a,201bへの不正が防止できるようになっているが、必ずしも保護管203を透明なものにする必要はない。一方、コネクタ202には、配線201a,201bの接続用のコネクタピン204と、コネクタ202の嵌合相手先のコネクタに穿設される溝(図示しない)に嵌合する左右一対の位置決め突起205a,205bと、が設けられている。そして、この位置決め突起205a,205bは、片面にのみ設けられ、接続先であるコネクタ(受け側)の位置決め部に対応するように形成されることで、コネクタ202の左右入れ違いを防止するようになっている。なお、上記した配線束201の一側端に配置される配線201bとは、コネクタ202に複数並設されるコネクタピン204のうち端部に配置されるコネクタピン204が接続される配線のことであり、例えば、コネクタピン204が1番から16番まで計16個設けられる場合、配線201bは、1番のコネクタピン204に接続されるものであってもいいし、あるいは16番(最終番)のコネクタピン204に接続されるものであってもいい 。」

4 「【0108】ところで、上記した配線201a,201bは、それぞれ接続する基板に応じて設定色が異なっている。具体的には、図13の一覧表図(A-B間配線色1)に示す通りである。電飾制御基板87において、電飾中継基板221、中継基板73b、電源ユニット基板(図13中には、電源生成基板と記載)160、及び主基板120が接続される配線201a(配線201b)は、それぞれ赤色(1本のみ白色)に設定されている。効果音制御基板95において、効果音中継基板222、電源ユニット基板160、及び主基板120が接続される配線201a(配線201b)は、それぞれ黄色(1本のみ白色)に設定されている。・・・
【0109】また、上記した接続先となる制御基板に応じた配線色の設定において、ハーネス200を構成するコネクタ202の色、及びそのコネクタ202の接続相手となる制御基板側のコネクタの色も配線201aと同一の色に設定されている。・・・」

5 「【図11】



6 【0103】には、「電飾制御基板87は、その上部に多数のコネクタ87a?87dが実装され」と記載されている。
また、図11から、上下に並んで示されているコネクタ87bとコネクタ87dは横幅が異なることが看取できる。
以上のことから、引用文献1には、「電飾制御基板87は、その上部に多数のコネクタ87a?87dが実装され、コネクタ87bとコネクタ87dは横幅が異なる」こと(認定事項6)が示されていると認められる。

7 上記1ないし6から引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「 電飾制御基板87と、電飾制御基板87に接続される配線と、を備えた弾球遊技機1において(【0016】、【0107】、【0108】)、
外枠2と、該外枠2の一側に開閉自在に軸支される前面枠3を備え(【0016】)、
基板間を接続する配線は、配線束201の両端にコネクタ202を備え、配線束201は、同一色の複数の配線201aと、該配線201aと色が異なる1本の配線201b、からなり、1本の配線201bは、配線束201の一側端に配置されており、これによってコネクタ202の左右が一目で判別できるようになっているものであり(【0107】)、
コネクタ202には、配線201a,201bの接続用のコネクタピン204が設けられ、配線201a,201bは、それぞれ接続する基板に応じて設定色が異なっており、電飾制御基板87において、電飾中継基板221、中継基板73b、電源ユニット基板160、及び主基板120が接続される配線201a(配線201b)は、それぞれ赤色(1本のみ白色)に設定されており(【0107】、【0108】)、
電飾制御基板87は、その上部に多数のコネクタ87a?87dが実装され、コネクタ87bとコネクタ87dは横幅が異なり(認定事項6)、
配線のコネクタ202は、制御基板側のコネクタに接続される(【0107、】【0109】)
弾球遊技機1(【0016】)。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。なお、以下の見出し(a)ないし(i)は、本願発明の構成AないしIに対応させている。

(a)引用発明の「電飾制御基板87」、「配線」及び「弾球遊技機1」は、それぞれ、本願発明の「基板」、「ケーブル」及び「遊技機」に相当する。
そして、引用発明の「電飾制御基板87」には、「電飾中継基板221」、「中継基板73b」、「電源ユニット基板160」及び「主基板120」が「接続される」のであるから、引用発明において「電飾制御基板87に」複数の「配線」が「接続される」ことは明らかである。
そうすると、引用発明の「弾球遊技機1」は、「電飾制御基板87と、電飾制御基板87に接続される」複数の「配線と、を備え」ているといえるから、引用発明は、本願発明の構成Aを備えている。

(b)引用発明の「外枠2の一側」は、「前面枠3」を「開閉自在に軸支」するから、本願発明の「支持部」に相当する。
そうすると、引用発明の「前面枠3」は、「左右方向の一方を回動軸として他方を開放側として」「外枠2の一側に開閉自在に軸支され」ているといえるから、本願発明の「前面開閉部」に相当する。
よって、引用発明は、本願発明の構成Bを備えている。

(c、e)引用発明の「コネクタ202」は、「配線」に備えられ、「制御基板側のコネクタに接続される」から、本願発明の「前記基板に接続する」「ケーブル側コネクタ」に相当する。
そして、引用発明の「配線201b」は、「同一色の複数の配線201a」「と色が異なる1本の配線」であり、「1本の配線201bは、配線束201の一側端に配置されており、これによってコネクタ202の左右が一目で判別できるようになっているもので」あるから、本願発明の「ケーブル側コネクタの向きを特定する判別情報が付されたコード」に相当し、引用発明の「同一色の複数の配線201aと、該配線201aと色が異なる1本の配線201b、からな」る「配線束201」は、本願発明の「複数本のコード」に相当する。
ここで、引用発明の「電飾制御基板87」に「実装され」る「コネクタ87d」及び「コネクタ87b」は、本願発明の「基板側コネクタ」に相当するから、引用発明の「コネクタ87d」、「コネクタ87b」は、それぞれ、本願発明の「第1基板側コネクタ」、「第2基板側コネクタ」に相当するといえる。
そうすると、引用発明の「コネクタ87d」に接続される「コネクタ202」及び「配線」、「コネクタ87b」に接続される「コネクタ202」及び「配線」は、本願発明の「第1ケーブル側コネクタ」及び「第1ケーブル」、「第2ケーブル側コネクタ」及び「第2ケーブル」に相当するといえ、引用発明の「コネクタ87d」に接続される「配線」及び「コネクタ87b」に接続される「配線」は、本願発明の「複数のケーブルには」、「第1ケーブルと、」「第2ケーブルと、があ」ることに相当する。
そして、引用発明の「電飾制御基板87」に「実装され」、「配線のコネクタ202」に「接続される」、「コネクタ87d」及び「コネクタ87b」は、それぞれ、本願発明の「基板に」「配置され」、「第1ケーブル側コネクタに接続される第1基板側コネクタ」及び「第2ケーブル側コネクタに接続される第2基板側コネクタ」に相当する。
よって、引用発明は、本願発明の構成C、Eを備えている。

(d)引用発明の「コネクタ87d(第1基板側コネクタ)」及び「コネクタ87b(第2基板側コネクタ)」が接続用のピンを備えることは、明らかであり、「コネクタ87bとコネクタ87dは横幅が異なる」ことから、「コネクタ87bとコネクタ87d」が備えるピンの数が異なること、さらに、それぞれに接続される「コネクタ202(第1ケーブル側コネクタ、第2ケーブル側コネクタ)」の「接続用のコネクタピン204」の数や「配線(第1ケーブル、第2ケーブル)」の「配線束201」が備える「配線201a」の本数が異なることも明らかであるから、引用発明は、本願発明の「前記第1ケーブル側コネクタと前記第2ケーブル側コネクタとはピン数が異なるとともに、前記第1ケーブルと前記第2ケーブルとはコード数が異な」る構成を備えている。
また、引用発明の、「電飾制御基板87」の「コネクタ87d(第1基板側コネクタ)」に接続される「配線(第1ケーブル)」の「配線201b」及び「コネクタ87b(第2基板側コネクタ)」に接続される「配線(第2ケーブル)」の「配線201b」は、「1本のみ白色」「に設定され」ることから、引用発明は、本願発明の「前記第1ケーブルと前記第2ケーブルとは前記判別情報が同じであ」る構成を備えるものである。
よって、引用発明は、本願発明の構成Dを備えている。

(i)引用発明の「弾球遊技機1」は、本願発明の「遊技機」に相当する。
よって、引用発明は、本願発明の構成Iを備えている。

以上のことから、本願発明と引用発明は、

「A 基板と、当該基板に接続される複数のケーブルと、を備えた遊技機において、
B 左右方向の一方を回動軸とし他方を開放側として支持部に開閉可能に支持される前面開閉部を備え、
C 前記複数のケーブルには、
前記基板に接続する第1ケーブル側コネクタと当該第1ケーブル側コネクタの向きを特定する判別情報が付されたコードを含む複数本のコードで構成された第1ケーブルと、
前記基板に接続する第2ケーブル側コネクタと当該第2ケーブル側コネクタの向きを特定する判別情報が付されたコードを含む複数本のコードで構成された第2ケーブルと、があり、
D 前記第1ケーブル側コネクタと前記第2ケーブル側コネクタとはピン数が異なるとともに、前記第1ケーブルと前記第2ケーブルとはコード数が異なり、かつ、前記第1ケーブルと前記第2ケーブルとは前記判別情報が同じであり、
E 前記基板には、前記第1ケーブル側コネクタに接続される第1基板側コネクタと、前記第2ケーブル側コネクタに接続される第2基板側コネクタと、が配置される
I 遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1](構成F)
本願発明は、「前記第1基板側コネクタは接点となるピンが一列で並ぶコネクタであるとともに、前記第2基板側コネクタは接点となるピンが複数列で並ぶコネクタであ」るのに対し、
引用発明の「コネクタ87d」及び「コネクタ87b」において、ピンが一列に並ぶのか複数列に並ぶのか明らかではない点。

[相違点2](構成G、H)
本願発明は、「前記第1ケーブルは、前記第1ケーブル側コネクタを前記第1基板側コネクタに接続したときに前記判別情報が付されたコードが当該第1基板側コネクタの前記開放側の端部に位置するように、当該判別情報が付されたコードを当該第1ケーブル側コネクタに接続し、
前記第2ケーブルは、前記第2ケーブル側コネクタを前記第2基板側コネクタに接続したときに前記判別情報が付されたコードが当該第2基板側コネクタの前記回動軸側の端部に位置するように、当該判別情報が付されたコードを当該第2ケーブル側コネクタに接続した」のに対し、
引用発明の「配線」は、「コネクタ202」を「コネクタ87d」または「コネクタ87b」に接続したときに、「配線201b」が「コネクタ87d」または「コネクタ87b」のどちらの一側端に配置されているのか特定されていない点。

第6 判断
1 上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
部品同士を電気的に接続するコネクタにおいて、ピンの並びが一列のコネクタも複数列のコネクタも広く知られているものであり、コネクタのピンの並びを一列とするか複数列とするかは、コネクタに設けられるピンの数や、許容されるコネクタの大きさ、コネクタを設置する場所の状況等に応じて、当業者が適宜決定し得る設計的事項にすぎない。
遊技機の技術分野においても、一の基板において、ピンが一列で並ぶコネクタと、複数列で並ぶコネクタを同時に用いる設計例は、特開2001-185823号公報(【0018】、図2等。)、特開2007-7278号公報(【0132】、図21等。)、特開2013-373号公報(【0061】、図7等。)等に見られるように周知である。
よって、引用発明において、コネクタ87dのピンの並びを一列とし、コネクタ87bのピンの並びを複数列として、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(2)相違点2について
引用発明の「同一色の複数の配線201a」「と色が異なる1本の配線201b」「は、配線束201の一側端に配置されており」、この構成を備えることにより、「コネクタ202の左右が一目で判別できるようになっているものであ」る(構成c)。
そして、引用発明のコネクタ202を、コネクタ87d及びコネクタ87bに接続する際に、コネクタ87dに接続するコネクタ202の配線201bと、コネクタ87bに接続するコネクタ202の配線201bは、同じ側に位置させるか、異なる側に位置させるかのいずれかしかないのであるから、同じ側に位置させるか、異なる側に位置させるかは、当業者が適宜決定し得ることである。
そうすると、引用発明のコネクタ202を、コネクタ87d及びコネクタ87bに接続する際に、コネクタ87dに接続するコネクタ202においては配線201bを前面枠3の開放側の端部に位置させ、コネクタ87bに接続するコネクタにおいては配線201bを前面枠3が軸支される側の端部に位置させて、色が異なる1本の配線201bが位置する方向を異ならせることは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。
よって、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の構成のようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

以上のことから、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明し得たものである。

2 請求人の主張について
請求人は、令和3年3月26日提出の意見書において、
「しかしながら、一列のコネクタにおける判別情報が付されたコードが位置する方向と、複数列のコネクタにおける判別情報が付されたコードが位置する方向と、を同じ方向とするよりも異なる方向とした方が、作業者や確認者は明らかに相違を認識できるので、一列のコネクタと複数列のコネクタとの見分けが容易になります。」、
「判別情報が付されたコードさえ備えていれば、それで万全ということはありません。・・・そのため、ケーブルの接続作業や確認作業では、1列の基板側コネクタに2列のゲーブル側コネクタを接続したり、その逆に2列の基板側コネクタに1列のゲーブル側コネクタを接続したり、同じ色同士のコネクタを接続すべきところに異なる色のコネクタを接続したり、異なるピン数のコネクタを接続したり、形状の異なるコネクタを強引に接続したりしてしまう不都合が生じ得ます。これらの不都合を回避するために、目安や目印を多数用意することは無駄でなく、有効な効果を奏します。」と述べている。
しかしながら、基板側コネクタが一列であるか複数列であるか、また、接続作業前の、まだ基板側コネクタに接続されていないケーブル側コネクタが一列であるか複数列であるかは、基板側コネクタに接続された状態における判別情報が付されたコードが位置する方向が同じ方向であっても、異なる方向であってもコネクタを見れば容易に見分けられることは明らかである。
さらに、まだ基板側コネクタに接続されていないケーブル側コネクタにおける判別情報が付されたコードが位置する方向は、例えば手元のケーブル側コネクタを回転させることで変化するものであるから、ケーブル側コネクタを見れば容易に見分けられる一列のケーブル側コネクタと複数列のケーブル側コネクタとで、基板側コネクタに接続された状態における判別情報が付されたコードが位置する方向を異なる方向とすることに効果は認められず、また、一列のケーブル側コネクタと複数列のケーブル側コネクタとで、基板側コネクタに接続された状態における判別情報が付されたコードが位置する方向を異なる方向とすることが接続作業の不都合を回避するための目安や目印になるとも認められない。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-05-25 
結審通知日 2021-06-01 
審決日 2021-06-15 
出願番号 特願2019-23144(P2019-23144)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柴田 和雄  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 北川 創
蔵野 いづみ
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人光陽国際特許事務所  
代理人 荒船 良男  

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