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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
管理番号 1376667
異議申立番号 異議2020-700593  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-08-12 
確定日 2021-05-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6645491号発明「画像表示装置、画像表示装置の製造方法及び画像表示装置の視認性改善方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6645491号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕、〔10〕、〔11〕について訂正することを認める。 特許第6645491号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続等の経緯
特許第6645491号(以下「本件特許」という。)の請求項1?11に係る特許についての出願(特願2017-251479号)は、平成25年9月30日を出願日とする特願2013-205733号の一部を平成29年12月27日に新たな特許出願としたものであって、令和2年1月14日にその特許権の設定の登録がされた。
本件特許について、令和2年2月14日に特許掲載公報が発行されたところ、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和2年8月12日に特許異議申立人 笠原佳代子(以下、「特許異議申立人」という。)から全請求項に対して特許異議の申立てがされた。その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和2年10月30日付け:取消理由通知書
令和3年 1月 4日付け:意見書(特許権者)
令和3年 1月 4日付け:訂正請求書(この訂正請求書による訂正の請求を、以下、「本件訂正請求」という。)
令和3年 3月 8日付け:意見書(特許異議申立人)

第2 本件訂正請求について
1 訂正の趣旨及び訂正の内容
(1)訂正の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、特許第6645491号の特許請求の範囲及び明細書を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項1?11について訂正することを求める、というものである。

(2)訂正の内容
本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は当合議体が付したものであり、訂正箇所を示す。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記光透過性基材(1)は、」と記載されているのを「前記光透過性基材(1)は、ポリエチレンナフタレート基材であり、」に訂正し、「リタデーションが3000nm以上」と記載されているのを「リタデーションが7000?2万nm」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項4?9も同様に訂正する。)。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記光透過性基材(1)は、」と記載されているのを「前記光透過性基材(1)は、ポリエチレンナフタレート基材であり、」に訂正し、「リタデーションが3000nm以上」と記載されているのを「リタデーションが7000?2万nm」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項5?9も同様に訂正する。)。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記光透過性基材(1)は、」と記載されているのを「前記光透過性基材(1)は、ポリエチレンナフタレート基材であり、」に訂正し、「リタデーションが3000nm以上」と記載されているのを「リタデーションが7000?2万nm」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項5?9も同様に訂正する。)。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項10に「前記光透過性基材(1)は、」と記載されているのを「前記光透過性基材(1)は、ポリエチレンナフタレート基材であり、」に訂正し、「リタデーションが3000nm以上」と記載されているのを「リタデーションが7000?2万nm」に訂正する。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項11に「前記光透過性基材(1)は、」と記載されているのを「前記光透過注基材(1)は、ポリエチレンナフタレート基材であり、」に訂正し、「リタデーションが3000nm以上」と記載されているのを「リタデーションが7000?2万nm」に訂正する。

カ 訂正事項6
明細書の【0117】、【0118】、【0119】、【0120】、【0121】、【0122】、【0123】、【0124】、【0125】、【0126】、【0127】、【0128】、【0129】、【0130】、【0131】、【0179】に「実施例1」と記載されているのを「参考例1」に訂正し、明細書の【0118】に「実施例2」と記載されているのを「参考例2」に訂正し、明細書の【0119】、【0128】に「実施例3」と記載されているのを「参考例3」に訂正し、明細書の【0120】、【0130】に「実施例4」と記載されているのを「参考例4」に訂正し、明細書の【0121】、【0130】、【0172】に「実施例5」と記載されているのを「参考例5」に訂正し、明細書の【0122】に「実施例6」と記載されているのを「参考例6」に訂正し、明細書の【0123】、【0127】に「実施例7」と記載されているのを「参考例7」に訂正し、明細書の【0124】、【0127】に「実施例8」と記載されているのを「参考例8」に訂正し、明細書の【0125】、【0127】、【0173】に「実施例9」と記載されているのを「参考例9」に訂正し、明細書の【0126】に「実施例10」と記載されているのを「参考例10」に訂正し、明細書の【0129】に「参考例1」と記載されているのを「参考例11」に訂正し、明細書の【0130】に「参考例2」と記載されているのを「参考例12」に訂正し、明細書の【0131】、【0175】に「参考例3」と記載されているのを「参考例13」に訂正し、明細書の【0168】、【0176】、【0177】、【0178】に「参考例4」と記載されているのを「参考例14」に訂正し、明細書の【0169】、【0177】、【0178】に「参考例5」と記載されているのを「参考例15」に訂正し、明細書の【0170】、【0177】、【0178】に「参考例6」と記載されているのを「参考例16」に訂正し、明細書の【0171】、【0177】、【0178】に「参考例7」と記載されているのを「参考例17」に訂正し、明細書の【0172】、【0177】、【0178】に「参考例8」と記載されているのを「参考例18」に訂正し、明細書の【0173】、【0177】に「参考例9」と記載されているのを「参考例19」に訂正し、明細書の【0174】、【0177】に「参考例10」と記載されているのを「参考例20」に訂正し、明細書の【0175】、【0177】、【0178】に「参考例11」と記載されているのを「参考例21」に訂正する。

2 一群の請求項について
本件訂正請求は、一群の請求項〔1?9〕、〔10〕、〔11〕に対して請求されたものである。

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 一群の請求項1?9について
ア 訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、a:請求項1に記載された「光透過性基材(1)」を、「ポリエチレンナフタレート基材であ」るものに限定し、b:請求項1に記載された「光透過性基材(1)」の「リタデーション」が、「3000nm以上」であるものから、「7000?2万nm」であるものに限定する訂正である。
そうしてみると、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
また、上記aの訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の【0023】、【0024】の記載に基づくものであり、上記bの訂正は【0021】の記載に基づくものである。
したがって、訂正事項1による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
さらに、訂正事項1による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。
請求項4?9についての訂正も同様である。

イ 訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、a:請求項2に記載された「光透過性基材(1)」を、「ポリエチレンナフタレート基材であ」るものに限定し、b:請求項2に記載された「光透過性基材(1)」の「リタデーション」について、「3000nm以上」であるものから、「7000?2万nm」であるものに限定する訂正である。
そうしてみると、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
また、上記aの訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の【0023】、【0024】の記載に基づくものであり、上記bの訂正は【0021】の記載に基づくものである。
したがって、訂正事項2による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
さらに、訂正事項2による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。
請求項5?9についての訂正も同様である。

ウ 訂正事項3について
訂正事項3による訂正は、a:請求項3に記載された「光透過性基材(1)」を、「ポリエチレンナフタレート基材であ」るものに限定し、b:請求項3に記載された「光透過性基材(1)」の「リタデーション」について、「3000nm以上」であるものから、「7000?2万nm」であるものに限定する訂正である。
そうしてみると、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
また、上記aの訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の【0023】、【0024】の記載に基づくものであり、上記bの訂正は【0021】の記載に基づくものである。
したがって、訂正事項3による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、訂正事項3による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
さらに、訂正事項3による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項3による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。
請求項5?9についての訂正も同様である。

エ 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正のうち、訂正事項1?3による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(2)一群の請求項10について
ア 訂正事項4による訂正は、a:請求項10に記載された「光透過性基材(1)」を、「ポリエチレンナフタレート基材であ」るものに限定し、b:請求項10に記載された「光透過性基材(1)」の「リタデーション」について、「3000nm以上」であるものから、「7000?2万nm」であるものに限定する訂正である。
そうしてみると、訂正事項4による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
また、上記aの訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の【0023】、【0024】の記載に基づくものであり、上記bの訂正は【0021】の記載に基づくものである。
したがって、訂正事項4による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、訂正事項4による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
さらに、訂正事項4による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項4による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。

イ 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正のうち、訂正事項4による訂正も、特許法第120条の5第2項ただし書、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3) 一群の請求項11について
ア 訂正事項5による訂正は、a:請求項11に記載された「光透過性基材(1)」を、「ポリエチレンナフタレート基材であ」るものに限定し、b:請求項11に記載された「光透過性基材(1)」の「リタデーション」について、「3000nm以上」であるものから、「7000?2万nm」であるものに限定する訂正である。
そうしてみると、訂正事項5による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
また、上記aの訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の【0023】、【0024】の記載に基づくものであり、上記bの訂正は【0021】の記載に基づくものである。
したがって、訂正事項5による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、訂正事項5による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
さらに、訂正事項5による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項5による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。

イ 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正のうち、訂正事項5による訂正も、特許法第120条の5第2項ただし書、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(4) 訂正事項6について
ア 訂正事項6による訂正は、訂正事項1?5による訂正に伴って、訂正後の請求項1?11に記載された範囲を外れることとなった、「実施例1」?「実施例10」を、それぞれ「参考例1」?「参考例10」に書き改めるとともに、番号を整理するために、「参考例1」?「参考例11」を、それぞれ「参考例11」?「参考例21」に書き改める訂正である。
したがって、訂正事項6による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項6による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは,明らかである。

イ 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正のうち、訂正事項6による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(5) 明細書の訂正と一群の請求項との関係について
前記(4)のとおり、訂正事項6による明細書の訂正は、一群の請求項である〔1?9〕、〔10〕及び〔11〕の全てについて行うものである。

4 まとめ
本件訂正請求(訂正事項1?6よる訂正)は、特許法第120条の5第2項ただし書、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、本件特許の特許請求の範囲及び明細書を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1?9〕、〔10〕、〔11〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
前記「第2」のとおり、本件訂正請求による訂正は認められた。
したがって、本件特許の請求項1?11に係る発明(以下、請求項に付す番号を使って、それぞれ、「本件特許発明1」などという。)は、本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、
バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、前記画像表示装置の前記バックライト光源側に配置して用いられる偏光板とを有する偏光板複合体を備えた画像表示装置であって、
前記光透過性基材(1)は、ポリエチレンナフタレート基材であり、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、厚みが5μm?500μmであり(ただし、65μm未満である場合を除く)、リタデーションが7000?2万nmであり、
前記光透過性甚材(2)は、ポリエステル基材であり、
前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸が、前記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置され、
前記光透過性基材(2)に、偏光された光が入射されるものであり、
前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とは、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層されており、
前記画像表示装置は、前記表示画面に入射する割合の多い左右方向に振動するS偏光に対し、前記光透過性基材(1)の屈折率が小さい方向である進相軸の方向が平行となるように室内に設置されるものである
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、
バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、前記画像表示装置の前記バックライト光源側に配置して用いられる偏光板とを有する偏光板複合体を備えた画像表示装置であって、
前記光透過性基材(1)は、ポリエチレンナフタレート基材であり、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、厚みが5μm?500μmであり(ただし、65μm未満である場合を除く)、リタデーションが7000?2万nmであり、
前記光透過性基材(2)は、ポリエステル基材であり、
前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である達相軸が、前記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置され、
前記光透過性基材(2)に、偏光された光が入射されるものであり、
前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とは、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層されており、
前記画像表示装置は、前記表示画面に入射する割合の多い左右方向に振動するS偏光に対し、前記光透過性基材(1)の屈折率が小さい方向である進相軸の方向が平行となるように室内に設置されるものであり、
前記光透過性基材(1)と前記光学機能層との間にプライマー層を有し、
前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材(1)の遅相軸方向の屈折率(nx)及び前記光学機能層の屈折率(nf)よりも大きい場合(np>nx,nf)、又は、
前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材(1)の進相軸方向の屈折率(ny)及び前記光学機能層の屈折率(nf)よりも小さい場合(np<ny,nf)、前記プライマー層の厚みが3?30nmである
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、
バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、前記画像表示装置の前記バックライト光源側に配置して用いられる偏光板とを有する偏光板複合体を備えた画像表示装置であって、
前記光透過性基材(1)は、ポリエチレンナフタレート基材であり、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方廊と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、厚みが5μm?500μmであり(ただし、65μm未満である場合を除く)、リタデーションが7000?2万nmであり、
前記光透過性基材(2)は、ポリエステル基材であり、
前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸が、前記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置され、
前記光透過性基材(2)に、偏光された光が入射されるものであり、
前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とは、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2) の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層されており、
前記画像表示装置は、前記表示画面に入射する割合の多い左右方向に振凱するS偏光に対し、前記光透過性基材(1)の屈折率が小さい方向である進相軸の方向が平行となるように室内に設置されるものであり、
前記光透過性基材(1)と前記光学機能層との間にプライマー層を有し、
前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材(1)の遅相軸方向の屈折率(nx)よりも大きく、前記光学機能層の屈折率(nf)よりも小さい場合(nx<np<nf)、又は、
前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材(1)の進相軸方向の屈折率(ny)よりも小さく、前記光学機能層の屈折率(nf)よりも大きい場合(nf<np<ny)、
前記プライマー層の厚みが65?125nmである
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
光透過性基材(1)と光学機能層との間にプライマー層を有し、
前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材(1)の進相軸方向の屈折率(ny)と前記光透過性基材(1)の達相軸方向の屈折率(nx)との間に存在する(ny<np<nx)請求項1記載の画像表示装置。
【請求項5】
光透過性基材(2)と偏光子(2)とは、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±15°又は90°±15°となるように積層されている請求項1、2、3又は4記載の画像表示装置。
【請求項6】
光透過性基材(2)は、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方面と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.01以上である請求項1、2、3、4又は5記載の画像表示装置。
【諸求項7】
光透過性基材(2)の屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)と、前記光透過性基材(2)の平均屈折率(N)とが、下記式の関係を有し、かつ、
前記進相軸と偏光子(2)の透過軸とのなす角度が0°±2°である
請求項1、2、3又は4記載の画像表示装置。
nx>N>ny
【請求項8】
バックライト光源として白色発光ダイオードを備えたVAモード又はIPSモードの液晶表示装置である請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の画像表示装置。
【請求項9】
バックライト光源と面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)との間に、偏光分離フィルムを有する請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の画像表示装置。
【請求項10】
面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、
少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、画像表示装置のバックライト光源側に配置して用いられる偏光板とを有する偏光板複合体を備えた画像表示装置の製造方法であって、
前記光透過性基材(1)は、ポリエチレンナフタレート基材であり、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、厚みが5μm?500μmであり(ただし、65μm未満である場合を除く)、リタデーションが7000?2万nmであるものを用い、
前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記画像表示装置の表示画面の上下方向とが平行となるように、前記光学積層体を配置する工程と、
前記光透過性基材(2)は、ポリエステル基材であるものを用い、
前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とを、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層する工程を有し、
前記画像表示装置は、前記表示画面に入射する割合の多い左右方向に振動するS偏光に対し、前記光透過性基材(1)の屈折率が小さい方向である進相軸の方向が平行となるように室内に設置されるものである
ことを特徴とする画像表示装置の製造方法。
【請求項11】
面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、
少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、画像表示装置のバックライト光源側に配置して用いられる偏光板とを有する偏光板複合体を備えた画像表示装置の視認性改善方法であって、
前記光透過性基材(1)は、ポリエチレンナフタレート基材であり、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、厚みが5μm?500μmであり(ただし、65μm未満である場合を除く)、リタデーションが7000?2万nmであるものを用い、
前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記画像表示装置の表示画面の上下方向とが平行となるように、前記光学積層体を配置するとともに、
前記光透過性基材(2)は、ポリエステル基材であるものを用い、
前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とを、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層し、
前記画像表示装置は、前記表示画面に入射する割合の多い左右方向に振動するS偏光に対し、前記光透過性基材(1)の屈折率が小さい方向である淮相軸の方掏が平行となるように室内に設置されるものである
ことを特徴とする画像表示装置の視認性改善方法。」

第4 取消しの理由の概要
令和2年10月30日付け取消理由通知により特許権者に通知した取消しの理由は、概略、以下のとおりである。
「理由1(進歩性)本件特許の請求項1?11に係る発明(本件訂正請求による訂正前のもの)は、本件特許の出願前日本国内又は外国において、頒布された刊行物である下記の引用例に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?11に係る特許は、いずれも、特許法29条の規定に違反してされたものである。
引用例1:特開2011-59488号公報(甲第1号証)
引用例2:国際公開第2011/162198号(甲第6号証)
引用例3:梅本清司、「大型液晶ディスプレイ用光学補償フィルム」、月刊ディスプレイ、2007年10月号別冊、2007年10月17日、株式会社テクノタイムズ社発行、45?53頁(甲第3号証)
引用例4:特開2013-174852号公報(甲第4号証)
引用例5:特開2010-107542号公報(甲第5号証)」

第5 当合議体の判断(理由1(進歩性)について)
1 引用例の記載及び引用発明
(1) 引用例1の記載
取消しの理由で引用された引用例1(特開2011-59488号公報(甲第1号証))には、次の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付した。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムと、
前記偏光フィルムの片面に、第一の接着剤層を介して積層された延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、を備え、
前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、面内の遅相軸方向の屈折率をn_(x)、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をn_(y)、厚み方向の屈折率をn_(z)としたときに、(n_(x)-n_(z))/(n_(x)-n_(y))で表されるNz係数が2.0未満であることを特徴とする偏光板。
【請求項2】
前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、面内の位相差値が200?1200nmもしくは2000?7000nmの値である請求項1に記載の偏光板。
・・・略・・・
【請求項8】
前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける前記偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に積層された、防眩層、ハードコート層、反射防止層、および帯電防止層から選ばれる少なくとも1層を備える請求項1?7のいずれかに記載の偏光板。
【請求項9】
請求項7または8に記載の偏光板が、その粘着剤層を介して液晶セルに貼合された液晶パネルを備える液晶表示装置。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板およびそれを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費電力が低く、低電圧で動作し、軽量でかつ薄型の液晶表示装置が、携帯電話、携帯情報端末、コンピュータ用のモニター、およびテレビ等の情報用表示デバイスとして急速に普及している。さらに、液晶技術の発展に伴い、様々なモードの液晶表示装置が提案され、従来、応答速度、コントラスト、および視野角等の液晶表示装置の問題とされていた点が解消されつつある。
【0003】
一方で、液晶表示装置のさらなる薄型軽量化を望む強い市場要求を受けて、液晶表示装置を構成する液晶パネル、拡散板、バックライトユニット、および駆動IC等の薄型化や小型化が進められている。このような状況下、液晶パネルを構成する部材である偏光板も10μmの単位で薄型化することが求められている。
【0004】
同時に、液晶表示装置の普及に伴って、市場からのコストダウン要求も日増しに強くなっており、偏光板においてもさらなるコストダウンや生産性の向上が必須となっている。
【0005】
これらの要求を満足すべく、これまでに様々な提案がなされてきた。たとえば、偏光板は通常、偏光フィルムの片面または両面に透明保護フィルムが設けられた構成を有し、その透明保護フィルムとしてトリアセチルセルロースが一般的に使用されているが、・・・略・・・のように、その保護フィルムに位相差を持たせて光学補償機能を付与することにより、構成部材の削減と生産工程の簡便化を図る試みが広くなされている。このような構成とすることで、偏光板と位相差板との積層物である複合偏光板を薄型軽量化することができ、さらに液晶表示装置の構成部材点数が削減されることで、生産工程を簡素化し、歩留まりを向上させてコストダウンに繋げることが可能となる。
【0006】
さらには、保護フィルムをトリアセチルセルロース以外の他の樹脂で置き換える試みも積極的に進められている。たとえば、・・・略・・・には、トリアセチルセルロースに代えて、環状オレフィン系樹脂を使用する手段が開示されている。しかしながら、環状オレフィン系樹脂は一般的に高価であるため、現状は、より付加価値の高い位相差フィルムに用いられており、単なる保護フィルムとして使用するには、コスト削減の点から釣り合いがとれないという問題を有している。
【0007】
上記要求を満足できる技術として、ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする手法が提案されている。ポリエチレンテレフタレートは機械的強度に優れることから、薄膜化に適しており、偏光板の薄型化を実現できる。さらに、トリアセチルセルロースや環状オレフィン系樹脂と比較して、一般的にコストの面からも優位性を有する。加えて、トリアセチルセルロースと比較して、低透湿性で低吸水性といった特徴を有することから、耐湿熱性や耐冷熱衝撃性にも優れ、環境変化に対して高い耐久性を持つことも期待できる。
【0008】
しかしながら、一方で、ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとした偏光板を液晶表示装置に搭載した場合、トリアセチルセルロースフィルムを保護フィルムとする一般的な偏光板に比べて、その高いレタデーション値に由来する斜め方向からの色ムラ(干渉ムラ、虹ムラとも言う)が目立ち、視認性に劣るという問題を有している。この問題について、・・・略・・・ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとした偏光板と、ヘイズ値を制御した防眩層を付与した偏光板とを組み合わせて液晶表示装置を構成することで、色ムラを低減する手法が開示されている。しかしながら、この手法を用いても色ムラの低減は不十分であり、より効果的な手法の確立が望まれていた。
・・・略・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的は、ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする偏光板であって、液晶表示装置に搭載した際の色ムラが少なく視認性に優れ、かつ薄型化を実現し、コストパフォーマンスや生産性にも優れる偏光板を提供することにある。また、本発明のもう一つの目的は、前記の偏光板を用いた視認性に優れる液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記色ムラ問題を解決するべく、鋭意研究を行なってきた。その結果、ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする偏光板において、面内の遅相軸方向の屈折率をn_(x)、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をn_(y)、厚み方向の屈折率をn_(z)としたときに、(n_(x)-n_(z))/(n_(x)-n_(y))で表されるNz係数が2.0未満の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとして用いることで、液晶表示装置の色ムラを効果的に低減でき、高い視認性と薄型化、低コスト化との両立が実現できることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明によれば、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムと、該偏光フィルムの片面に、第一の接着剤層を介して積層された延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、を備え、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、面内の遅相軸方向の屈折率をn_(x)、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をn_(y)、厚み方向の屈折率をn_(z)としたときに、(n_(x)-n_(z))/(n_(x)-n_(y))で表されるNz係数が2.0未満であることを特徴とする偏光板が提供される。
【0013】
本発明の偏光板において、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、面内の位相差値が200?1200nmもしくは2000?7000nmの値であることが好ましい。
・・・略・・・
【0019】
本発明の偏光板は、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に積層された、防眩層、ハードコート層、反射防止層、および帯電防止層から選ばれる少なくとも1層を備えることが好ましい。
【0020】
また、本発明によれば、上記粘着剤層が設けられた偏光板が、その粘着剤層を介して液晶セルに貼合された液晶パネルを備える液晶表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、Nz係数が2.0未満の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとして用いることで、液晶表示装置の表示時における色ムラが少なく優れた視認性を示し、かつ薄型化を実現し、コストパフォーマンスや生産性にも優れる偏光板を提供することができる。また、本発明によれば、前記の偏光板を用いた視認性に優れる液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<偏光板>
本発明の偏光板は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムと、該偏光フィルムの片面に、第一の接着剤層を介して積層された延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、を備えるものである。また、本発明の偏光板は、偏光フィルムにおける延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層されている面とは反対側の面に、第二の接着剤層を介して積層された保護フィルムまたは光学補償フィルムを備えていてもよい。以下、本発明の偏光板について具体的に説明する。
【0023】
(偏光フィルム)
本発明に用いる偏光フィルムは、通常、公知の方法によってポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、およびホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造されるものである。
・・・略・・・
【0037】
こうして得られる偏光フィルムの厚みは、通常、5?40μm程度とすることができる。
【0038】
(延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)
本発明に用いる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとは、一種以上のポリエチレンテレフタレート系樹脂を溶融押出によって製膜し、横延伸してなる一層以上の一軸延伸フィルム、または、製膜後引き続いて縦延伸し、次いで横延伸してなる一層以上の二軸延伸フィルムである。ポリエチレンテレフタレートは、延伸により屈折率の異方性および、それらで規定される位相差値、Nz値、光軸を任意に制御することができ、本発明においては、必要な光学性能を効率よく付与できることから一軸延伸品が好ましく用いられる。
・・・略・・・
【0057】
一軸延伸フィルムを得る場合、上記未延伸フィルムは、通常、ガラス転移温度以上の温度において、テンターによってフィルムの巾方向(長尺方向に対して垂直方向)への横延伸が行なわれる。この延伸温度は、通常、70?150℃であり、80?130℃が好ましく、90?120℃がより好ましい。また、延伸倍率は、通常、2.5?6倍であり、3?5.5倍であることが好ましい。横延伸における延伸倍率が2.5倍未満であると、フィルムの透明性が不良となる場合があり好ましくない。また、6倍を超える延伸倍率は、製造技術上現実的ではない。
・・・略・・・
【0060】
一方、二軸延伸フィルムを得る場合、上記未延伸フィルムは、ガラス転移温度以上の温度において、通常、まず押出方向へ縦延伸される。延伸温度は、通常、70?150℃であり、80?130℃が好ましく、90?120℃がより好ましい。また、延伸倍率は、通常、1.1?6倍であり、2?5.5倍が好ましい。この延伸倍率が1.1倍未満であると、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの機械的強度が不足する傾向にあるためである。また、6倍を超えると、横方向の強度が実用に不足する場合がある。この延伸は一回で終えることも、必要に応じて複数回に分けて行なうこともできる。通常、複数回の延伸を行なう場合でも、合計の延伸倍率は前記の範囲であることが好ましい。
・・・略・・・
【0063】
二軸延伸フィルムを得る場合、通常、縦延伸処理の後に、もしくは必要に応じて熱処理または弛緩処理を経た後に、テンターによって横延伸が行なわれる。この延伸温度は、通常、70?150℃であり、80?130℃が好ましく、90?120℃がより好ましい。また、延伸倍率は、通常、1.1?6倍であり、2?5.5倍であることが好ましい。横延伸における延伸倍率が1.1倍未満であると、配向によるフィルム強度向上が不足する場合がある。また、6倍を超える延伸倍率は、製造技術上現実的ではない。
・・・略・・・
【0066】
一軸延伸および二軸延伸処理においては、ともに、その延伸処理温度が250℃を超えると、樹脂に熱劣化が生じたり、結晶化が進みすぎたりするために光学性能が低下する場合がある。また、延伸処理温度が70℃未満になると、延伸に過大なストレスがかかったり、フィルムが固化し延伸自体が不可能になったりする場合がある。
・・・略・・・
【0068】
なお、ここで延伸方向とは、縦延伸または横延伸における延伸倍率の大きい方向をいう。ポリエチレンテレフタレートフィルムの二軸延伸では、通常、横延伸倍率の方が縦延伸倍率より若干大きくなされるので、この場合、延伸方向とは、前記フィルムの長尺方向に対して垂直方向をいう。また、一軸延伸では、通常、前記のように横方向へ延伸されるので、この場合、延伸方向とは、同じく長尺方向に対して垂直方向をいう。
【0069】
また、ここで配向主軸とは、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上の任意の点における分子配向方向をいい、ここでは遅相軸のことを指す。配向主軸(遅相軸)の延伸方向に対する歪みとは、遅相軸と延伸方向との角度差をいう。
【0070】
前記遅相軸は、たとえば、位相差フィルム・光学材料検査装置RETS(大塚電子株式会社製)または分子配向計MOA(王子計測機器株式会社製)などを用いて測定できる。
【0071】
延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおいて、上記縦延伸または横延伸における延伸倍率は、フィルム面内の遅相軸方向の屈折率であるn_(x)、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率であるn_(y)、厚み方向の屈折率であるn_(z)を制御する上で最も重要な因子であり、一般的に延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの作製において、一軸延伸は、(n_(x)-n_(z))/(n_(x)-n_(y))で表されるNz係数が比較的小さい、二軸延伸は比較的大きいフィルムを作製することに適している。
【0072】
本発明の偏光板においては、かかる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとして、Nz係数が2.0未満であるものを用いる。このため、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、一軸延伸にて作製することが好ましい。このような光学性能の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを採用することで、かかる偏光板を搭載した液晶表示装置における色ムラを効果的に低減することが可能となる。Nz係数は、2.0未満であれば小さいほど色ムラ低減の効果を発揮し、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下である。Nz係数が2.0以上の場合は、かかる偏光板を搭載した液晶表示装置において強い色ムラが発生し、視認性に劣るものとなる。Nz係数が2.0以上4未満である場合、色ムラ低減効果を得ることができない。なお、Nz係数が4以上である場合であっても色ムラ低減効果を得ることができ、この場合、Nz係数の値が高いほど、色ムラ低減に有利である。
【0073】
また、本発明の偏光板における延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、膜厚をdとしたときに、(n_(x)-n_(y))×dで定義される面内位相差値R_(0)が200?1200nmもしくは2000?7000nmのものが好適に採用できる。R_(0)がかかる範囲外、すなわちR_(0)が1200を超え、2000nm未満の範囲にある場合は、比較的目立つ色ムラが発生する傾向にある。したがって、より効果的に色ムラを低減する観点から、面内位相差値R_(0)は、1200nm以下もしくは2000nm以上であることが好ましい。また、R_(0)が200nm未満と小さい場合は、安定的にNz係数を2.0未満に制御することが困難であり、生産性やコストの面に問題を有する。一方で、R_(0)が7000nmを超える場合は、Nz係数は低減させやすいものの、機械的強度に劣るフィルムとなる傾向にある。
【0074】
本発明の偏光板においては、偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸の軸ズレ角度は目的や生産上の制約等に応じて任意に選択することができる。たとえば、本発明の偏光板を、偏光性の強いバックライト光源を備える液晶表示装置のバックライト光源側(入射側)偏光板として適用する場合、延伸ポリエチレンテレフタレートの面内位相差に由来する正面方向からの干渉色の発現を防ぐため、偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの軸ズレ角度は小さい方が好ましい。好ましくは、偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度は、0度以上15度以下の範囲とすることが好ましい。かかる場合においても、Nz係数を2.0未満とすることが、色ムラの低減に効果的である。
【0075】
偏光性の強いバックライト光源として、たとえば、バックライトユニット内に反射型偏光分離フィルムを備えるもの等が挙げられる。反射型偏光分離フィルムとは、バックライトの光を選択的に反射させ、再利用することで可視範囲の輝度を向上させる機能を有するフィルムである。反射型偏光分離フィルムに相当する市販品としては、米国の3M Company〔日本では住友スリーエム(株)〕から販売されている「DBEF」(商品名)などがある。
【0076】
一方で、上記以外の場合には、偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度が大きいものも好ましく用いることができる。中でも、20度以上50度以下のズレ角度であるものがより好ましい。偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの軸ズレ角度を上記の範囲とすることで、より効果的に液晶表示装置の色ムラを低減することができる。
【0077】
本発明における延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおいて、Nz係数、面内位相差値R_(0)および遅相軸を特定範囲に制御するためには、公知のあらゆる技術が制限なく採用できる。具体的には、上記の延伸処理時における延伸温度、延伸倍率、弛緩処理、ラインスピード等の延伸条件を調整することで制御できる。また、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム原反にはしばしば巾方向(長尺方向に対して垂直方向)において、ボーイングに代表されるような遅相軸の歪みや、Nz係数、R_(0)のバラツキがある場合が見られる。このような延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムについては、必要に応じて、目的の光学性能を有する巾範囲のみを選択的に使用することもできる。
【0078】
また、本発明の偏光板における偏光フィルムの透過軸と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸の軸ズレ角度を制御する方法としては、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム原反自体において延伸方向と遅相軸とが目的の角度範囲内に調整されたものを用いる方法や、上記のように必要に応じて、目的の光学性能を有する巾範囲のみを選択的に使用する方法などを挙げることができる。後者の方法を採用した場合、偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとをロール・ツー・ロールで貼合することができるため、生産性およびコスト面で優れる。また、偏光フィルムに延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを積層する際に、偏光フィルムの透過軸方向と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸方向とのズレ角度が目的の範囲内となるように調整して貼り合わせてもよい。
【0079】
本発明の偏光板に用いられる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みは、15?75μmの範囲内であることが好ましく、20?60μmの範囲内であることがより好ましい。延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みが15μm未満である場合には、ハンドリングしにくい(取り扱い性に劣る)傾向にあり、また厚みが75μmを超える場合には、厚膜となるためコスト高となり、さらには、薄肉化のメリットが薄れる傾向にある。
・・・略・・・
【0081】
(機能層)
本発明に用いられる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムには、そのフィルムが偏光板の視認側に用いられる場合、偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に、防眩層、ハードコート層、反射防止層、および帯電防止層から選ばれる少なくとも1つの機能層を設けることが好ましい。
【0082】
防眩層は、外光の映り込みやギラツキを防ぐために設けられる。ハードコート層は、表面の耐擦傷性などを改善するために設けられる。反射防止層は、外光の反射を防ぐために設けられる。
・・・略・・・
【0083】
防眩層は、たとえば、フィラーが添加された紫外線硬化型樹脂を塗工し、そこに紫外線を照射して硬化させ、フィラーに基づく凹凸を現出させる方式、紫外線硬化型樹脂にエンボス型を接触させた状態で紫外線を照射し、硬化させて凹凸を現出させる方式などにより設けることができる。ハードコート層は、紫外線硬化型のハードコート樹脂を塗工し、そこに紫外線を照射して硬化させる方式などにより設けることができる。反射防止層は、金属酸化物などを一層または複数層蒸着する方式などにより設けることができる。
・・・略・・・
【0087】
(第一の接着剤層)
本発明の偏光板において、偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとは、通常、透明で光学的に等方性の接着剤を介して貼着される。
・・・略・・・
【0147】
(保護フィルム、光学補償フィルム)
本発明の偏光板は、偏光フィルムの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層されている面と反対側の面に、第二の接着剤層を介して積層された保護フィルムまたは光学補償フィルムを備えていてもよい。
【0148】
保護フィルムまたは光学補償フィルムは、光学フィルムとしての光学特性を有するものを目的に合わせて適宜使用することができ、特に限定されるものではないが、保護フィルムとしては、たとえば、トリアセチルセルロース(TAC)等からなるセルロース系樹脂フィルム、オレフィン系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、およびポリエステル系樹脂フィルム等の透明樹脂フィルムから構成されるものを用いることができる。
・・・略・・・
【0187】
(第二の接着剤層)
本発明の偏光板において、偏光フィルムと上記した保護フィルムまたは光学補償フィルムは、通常、透明で光学的に等方性の第二の接着剤を介して貼着される。
・・・略・・・
【0204】
(粘着剤層)
本発明の偏光板は、保護フィルムまたは光学補償フィルムの外側(保護フィルムまたは光学補償フィルムにおける偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面)に粘着剤層を有することができる。このような粘着剤層は、液晶セルとの貼合に用いることができる。
・・・略・・・
【0217】
<液晶表示装置>
以上のようにしてなる偏光板、すなわち、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/第一の接着剤層/偏光フィルム/第二の接着剤層/[保護フィルムまたは光学補償フィルム]/粘着剤層/剥離フィルムとの層構造を有する偏光板は、粘着剤層から剥離フィルムを剥離して、液晶セルの片面または両面に貼合し、液晶パネルとすることができる。この液晶パネルは、液晶表示装置に適用することができる。
【0218】
本発明の偏光板は、たとえば、液晶表示装置において、光出射側(視認側)に配置される偏光板として用いることができる。光出射側とは、液晶セルを基準に、液晶表示装置のバックライト側とは反対側を指す。光出射側の偏光板として本発明の偏光板が採用される場合、当該偏光板は、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に、防眩層、ハードコート層、反射防止層、および帯電防止層から選ばれる少なくとも1つの機能層を備えることが好ましい。また、液晶表示装置の光入射側(バックライト側)に配置される偏光板は、本発明の偏光板であってもよいし、従来公知の偏光板であってもよい。
・・・
【0220】
液晶表示装置を構成する液晶セルは、透過光量をスイッチングするために、液晶が2枚の透明基板の間に封入され、電圧印加により液晶の配向状態を変化させる機能を有する部材であって、その中に封入された液晶層の配向状態と、電極間に電圧を印加したときの液晶層の配向状態によって、たとえば、ツイステッドネマティック(TN)モードや垂直配向(VA)モードなど、各種方式のものがある。本発明の偏光板は、一般的な液晶表示装置に広く使用されている各種モードの液晶セルに対して、有効に適用することができる。
【0221】
偏光フィルムに積層されている保護フィルムまたは光学補償フィルムの性能は、上記液晶セルの動作モードや特性に応じて適宜選択することができる。
【0222】
液晶表示装置を構成するバックライトも、一般の液晶表示装置に広く使用されているものでよい。たとえば、拡散板とその背後に配置された光源で構成され、光源からの光を拡散板で均一に拡散させたうえで前面側に出射するように構成されている直下型のバックライトや、導光板とその側方に配置された光源で構成され、光源からの光を一旦導光板の中に取り込んだうえで、その光を前面側に均一に出射するように構成されているサイドライト型のバックライトなどを挙げることができる。バックライトにおける光源としては、蛍光管を使って白色光を発光する冷陰極蛍光ランプや、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)などを採用することができる。
【実施例】
【0223】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0224】
以下の例において、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みは、メーカー呼称値で示した。面内位相差値R_(0)およびNz係数は、位相差フィルム・光学材料検査装置RETS(大塚電子株式会社製)にて測定した。また、環状オレフィン系樹脂からなる光学補償フィルムの厚み、面内位相差値R_(0)および厚み方向位相差値R_(th)はメーカー呼称値で示した。環状オレフィン系樹脂からなる光学補償フィルムのR_(0)およびR_(th)は位相差フィルム・光学材料検査装置RETS(大塚電子株式会社製)を用いて実測もしているが、ほぼ同様の値が得られている。
【0225】
<実施例1>
(a)偏光フィルムの作製
平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上で厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に56.5℃で浸漬した。引き続き8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを得た。延伸は、主に、ヨウ素染色およびホウ酸処理の工程で行ない、トータル延伸倍率は5.3倍であった。
【0226】
(b)粘着剤付き偏光板の作製
厚み38μmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(Nz係数:1.0、R_(0):2160nm)の貼合面に、コロナ処理を施した後、脂環式エポキシ化合物を含有する無溶剤の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を、チャンバードクターを備える塗工装置によって厚さ2μmで塗工した。また、厚み73μmの環状オレフィン系樹脂からなる光学補償フィルム(面内位相差値R_(0):63nm、厚み方向位相差値R_(th):225nm)の貼合面に、コロナ処理を施した後、上記と同じ接着剤組成物を同様の装置にて厚さ2μmで塗工した。
【0227】
次いで、直ちに上記(a)にて得られた偏光フィルムの片面に上記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、もう一方の面に上記光学補償フィルムを、各々接着剤組成物の塗工面を介して貼合ロールによって貼合した。この際、偏光フィルムの透過軸と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレは0度とした。その後、この積層物の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム側から、メタルハライドランプを320?400nmの波長における積算光量が600mJ/cm^(2)となるように照射し、両面の接着剤を硬化させた。さらに、得られた偏光板の光学補償フィルムの外面に、厚み25μmのアクリル系粘着剤の層(セパレートフィルム付き)を設けた。
【0228】
(c)液晶表示装置の作製
ソニー(株)製の垂直配向モードの液晶表示装置“BRAVIA”(対角寸法40インチ=約102cm)の液晶パネルから光出射側偏光板を剥がし、その代わりに、市販の偏光板(スミカランSRW842E-GL5、住友化学(株)製)を、オリジナルの偏光板と同じ軸方向で、その粘着剤層側にて貼り付けた。また、光入射側偏光板も剥がし、その代わりに、上記(b)で作製した粘着剤層付き偏光板からセパレートフィルムを剥がしたものを、オリジナルの偏光板と同じ軸方向で、その粘着剤層を用いて貼り付けた。得られた液晶表示装置について、目視にて観察したところ、斜め方向の色ムラ(干渉ムラ)は小さく、視認性は良好であった。
・・・略・・・
【0234】
各例につき、偏光板における延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの光学特性と試験結果を表1にまとめた。
【0235】
【表1】


【0236】
表1に示されるように、偏光板における延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのNz係数が2.0未満である実施例1?5については、偏光板を搭載した液晶表示装置における色ムラが少なく、視認性に優れる効果が認められた。一方で、Nz係数が2.0以上である比較例1については、色ムラが強く、視認性に劣るものであった。」

(2) 引用発明
ア 引用例1の【発明を実施するための形態】の【0022】、【0038】、【0071】?【0073】及び【0079】の記載から、引用例1でいう「本発明」の「偏光板」(【0022】)における「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」として、「一軸延伸フィルム、または」「二軸延伸フィルムであ」り(【0038】)、「フィルム面内の遅相軸方向の屈折率」を「n_(x)」、「面内で遅相軸と直交する方向の屈折率」を「n_(y)」、「厚み方向の屈折率」を「n_(z)」とした時、「(n_(x)-n_(z))/(n_(x)-n_(y))で表されるNz係数」「は2.0未満であ」(【0071】、【0072】)り、「膜厚をdとしたときに、(n_(x)-n_(y))×dで定義される面内位相差値R_(0)が200?1200nmもしくは2000?7000nm」(【0073】)であり、「厚み」が「15?75μmの範囲内である」(【0079】)ものを理解することができる。
また、【発明を実施するための形態】の【0074】には、引用例1でいう「本発明の偏光板」について、「偏光性の強いバックライト光源を備える液晶表示装置のバックライト光源側(入射側)」の「偏光板として適用する」場合、「偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度は、0度以上15度以下の範囲とする」ことが記載されている。
さらに、【発明を実施するための形態】の【0217】より、引用例1でいう「本発明」の「液晶表示装置」として、「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/第一の接着剤層/偏光フィルム/第二の接着剤層/[保護フィルムまたは光学補償フィルム]/粘着剤層/剥離フィルムとの層構造を有する偏光板」の「粘着剤層から剥離フィルムを剥離して、液晶セルの」「両面に貼合し」た「液晶パネル」が「適用」されたものを理解することができる。
また、【0220】より、引用例1でいう「本発明」の「液晶表示装置」として、「液晶パネル」が「垂直配向(VA)モード」のものである「液晶表示装置」を理解することができる(当合議体注:本件特許の出願前の当業者ならば、引用例1の【0220】に記載された液晶セル(パネル)のうち、「垂直配向(VA)モード」のものが液晶TVの主力であることを心得ている(引用例3の47頁右欄5?6行の記載からも確認できる。)。
さらに、【0218】より、「光出射側(視認側)」「の偏光板」として、「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に、防眩層、ハードコート層、反射防止層、および帯電防止層から選ばれる少なくとも1つの機能層を備え」たものを理解することができる。

ウ 以上、勘案すると、引用例1には、次の「液晶表示装置」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「 延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/第一の接着剤層/偏光フィルム/第二の接着剤層/[保護フィルムまたは光学補償フィルム]/粘着剤層/剥離フィルムとの層構造を有する偏光板の粘着剤層から剥離フィルムを剥離して、液晶セルの両面に貼合した液晶パネルが適用され、偏光性の強いバックライト光源を備え、液晶パネルが垂直配向(VAモード)のものである、液晶表示装置であって、
前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、一軸延伸フィルム、または二軸延伸フィルムであり、フィルム面内の遅相軸方向の屈折率をn_(x)、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をn_(y)、厚み方向の屈折率をn_(z)としたとき、(n_(x)-n_(z))/(n_(x)-n_(y))で表されるNz係数は2.0未満であり、膜厚をdとした時、(n_(x)-n_(y))×dで定義される面内位相差値R_(0)が200?1200nmもしくは2000?7000nmであり、膜厚が15?75μmの範囲内であり、
光出射側(視認側)の偏光板は、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に、防眩層、ハードコート層、反射防止層、及び帯電防止層から選ばれる少なくとも1つの機能層を備え、
バックライト光源側(入射側)の偏光板は、偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度は、0度以上15度以下の範囲である、
液晶表示装置。」

エ また、上記アより、引用例1には、「引用発明1の液晶表示装置の製造方法」の発明(以下、「引用製造方法発明1」という。)が記載されていると認められる。

オ 引用例1でいう「発明の効果」は、「本発明によれば、Nz係数が2.0未満の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとして用いることで、液晶表示装置の表示時における色ムラが少なく優れた視認性を示し、かつ薄型化を実現し、コストパフォーマンスや生産性にも優れる偏光板を提供することができる。また、本発明によれば、前記の偏光板を用いた視認性に優れる液晶表示装置を提供することができる。」(【0021】)ことである。
そうすると、引用例1には、「引用発明1の液晶表示装置の表示時における色ムラが少なく優れた視認性を示すものとする方法」(以下、「引用表示方法発明1」という。)が記載されているものと認められる。

2 本件特許発明1について
(1) 対比
本件特許発明1と引用発明1とを対比する。
ア 光学機能層、光透過性基材(1)、光学積層体
引用発明の「光出射側(視認側)の偏光板」は、「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/第一の接着剤層/偏光フィルム/第二の接着剤層/[保護フィルムまたは光学補償フィルム]/粘着剤層/剥離フィルムとの層構造を有する偏光板の粘着剤層から剥離フィルムを剥離し」たものであり、「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に、防眩層、ハードコート層、反射防止層、及び帯電防止層から選ばれる少なくとも1つの機能層を備え」る。また、引用発明の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、「フィルム面内の遅相軸方向の屈折率をn_(x)、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をn_(y)、厚み方向の屈折率をn_(z)とし」「膜厚をdとしたとき、(n_(x)-n_(y))×dで定義される面内位相差値R_(0)が200?1200nmもしくは2000?7000nmであ」る。
上記の構成からみて、引用発明1の「光出射側(視認側)の偏光板」の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、本件特許発明1の、「面内に複屈折を有する」とされる、「光透過性基材(1)」に相当する。また、引用発明1の「防眩層、ハードコート層、反射防止層、および帯電防止層から選ばれる少なくとも1つの機能層」は、本件特許発明1の「光学機能層」に相当する。さらに、引用発明1の「光出射側(視認側)積層体」は、本件特許発明1の「光学積層体」に相当する。加えて、引用発明1の「光出射側(視認側)積層体」は、本件特許発明1の「光学積層体」の、「面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し」との要件を満足する。

イ 光透過性基材(2)、偏光子(2)、偏光板、バックライト光源
引用発明1の「バックライト光源側(入射側)の偏光板」及び「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、前記アで述べた構成を具備する。また、引用発明1の「液晶表示装置」は、「偏光性の強いバックライト光源を備え」、「バックライト光源側(入射側)の偏光板は、偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度は、0度以上15度以下の範囲」としたものである。
上記の構成からみて、引用発明1の「バックライト光源側(入射側)の偏光板」の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、本件特許発明1の、「面内に複屈折率を有する」及び「ポリエステル基材であり」とされる、「光透過性基材(2)」に相当する。また、引用発明1の「バックライト光源側(入射側)の偏光板」の「偏光フィルム」は、本件特許発明1の「偏光子(2)」に相当する。さらに、引用発明1の「バックライト光源」は、文字どおり、本件特許発明1の「バックライト光源」に相当し、引用発明1の「バックライト光源側(入射側)の偏光板」は、本件特許発明1の「偏光板」に相当する。
加えて、引用発明1の「バックライト光源側(入射側)の偏光板」と、本件特許発明1の「偏光板」は、「バックライト光源側から、少なくとも」、「光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され」、「バックライト光源側に配置して用いられる」点において共通する。さらに加えて、引用発明1の「液晶表示装置」は、本件特許発明1の「画像表示装置」における、「前記光透過性基材(2)に、偏光された光が入射されるものであり」及び「前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とは、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層されており」との要件を具備する。

ウ 偏光板複合体、画像表示装置
前記ア及びイで述べた事項を考慮すると、引用発明1の「液晶表示装置」は、本件特許発明1の「画像表示装置」に相当する。また、引用発明1の「光出射側(視認側)積層体」は、本件特許発明1の「光学積層体」の、「画像表示装置の表面に配置して用いられる」との要件を満足する。さらに、引用発明1の「バックライト光源側(入射側)の偏光板」と、本件特許発明1の「偏光板」は、「バックライト光源側から、少なくとも」、「光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、前記画像表示装置の前記バックライト光源側に配置して用いられる」との要件を満足する。加えて、引用発明1の「光出射側(視認側)積層体」及び「バックライト光源側(入射側)の偏光板」は、本件特許発明1の「光学積層体と」、「偏光板とを有する」とされる、「偏光板複合体」に相当する。そして、引用発明1の「液晶表示装置」と、本件特許発明1の「画像表示装置」は、「偏光板複合体を備えた」点で共通する。

(2)一致点及び相違点
ア 一致点
本件特許発明1と、引用発明1は、次の点で一致する。
「面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、
バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、前記画像表示装置の前記バックライト光源側に配置して用いられる偏光板とを有する偏光板複合体を備えた画像表示装置であって、
前記光透過性甚材(2)は、ポリエステル基材であり、
前記光透過性基材(2)に、偏光された光が入射されるものであり、
前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とは、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層されている、
画像表示装置。」

イ 相違点
本件特許発明1と、引用発明1は、次の点で相違する。
(相違点1-1-1)
「光透過性基材(1)」が、本件特許発明1は、「ポリエチレンナフタレート基材であり、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、厚みが5μm?500μmであり(ただし、65μm未満である場合を除く)、リタデーションが7000?2万nmであ」るのに対して、引用発明1は、「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」であって、「フィルム面内の遅相軸方向の屈折率をn_(x)、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をn_(y)」、「膜厚をdとした時、(n_(x)-n_(y))×dで定義される面内位相差値R_(0)が200?1200nmもしくは2000?7000nmであり、膜厚が15?75μmの範囲内であ」る点。

(相違点1-1-2)
本件特許発明1は、「前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸が、前記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置され」ているのに対して、引用発明1は、そのようなものであるかどうか不明である点。

(相違点1-1-3)
本件特許発明1は、「前記画像表示装置は、前記表示画面に入射する割合の多い左右方向に振動するS偏光に対し、前記光透過性基材(1)の屈折率が小さい方向である進相軸の方向が平行となるように室内に設置されるものである」のに対して、引用発明1は、そのようなものであるかどうか不明である点。

(3) 判断
相違点1-1-1について検討する。
ア 引用例1でいう「本発明」が「解決しようとする課題」は、「ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする偏光板であって、液晶表示装置に搭載した際の色ムラが少なく視認性に優れ、かつ薄型化を実現し、コストパフォーマンスや生産性にも優れる偏光板を提供すること」、「前記の偏光板を用いた視認性に優れる液晶表示装置を提供すること」(【0010】)である。
イ また、引用例1には、「背景技術」として、以下のとおり記載されている。
(ア) 「液晶表示装置のさらなる薄型軽量化を望む強い市場要求を受けて、液晶表示装置を構成する液晶パネル、拡散板、バックライトユニット、および駆動IC等の薄型化や小型化が進められている。このような状況下、液晶パネルを構成する部材である偏光板も10μmの単位で薄型化することが求められている。」(【0003】)
(イ) 「同時に、液晶表示装置の普及に伴って、市場からのコストダウン要求も日増しに強くなっており、偏光板においてもさらなるコストダウンや生産性の向上が必須となっている。」(【0004】)
(ウ) 「その保護フィルムに位相差を持たせて光学補償機能を付与することにより、構成部材の削減と生産工程の簡便化を図る試みが広くなされている。このような構成とすることで、偏光板と位相差板との積層物である複合偏光板を薄型軽量化することができ、さらに液晶表示装置の構成部材点数が削減されることで、生産工程を簡素化し、歩留まりを向上させてコストダウンに繋げることが可能となる。」(【0005】)
(エ) 「保護フィルムをトリアセチルセルロース以外の他の樹脂で置き換える試みも積極的に進められている。・・・略・・・環状オレフィン系樹脂は一般的に高価であるため、現状は、より付加価値の高い位相差フィルムに用いられており、単なる保護フィルムとして使用するには、コスト削減の点から釣り合いがとれないという問題を有している。」(【0006】)
(オ) 「上記要求を満足できる技術として、ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする手法が提案されている。ポリエチレンテレフタレートは機械的強度に優れることから、薄膜化に適しており、偏光板の薄型化を実現できる。さらに、トリアセチルセルロースや環状オレフィン系樹脂と比較して、一般的にコストの面からも優位性を有する。加えて、トリアセチルセルロースと比較して、低透湿性で低吸水性といった特徴を有することから、耐湿熱性や耐冷熱衝撃性にも優れ、環境変化に対して高い耐久性を持つことも期待できる。」(【0007】)
(カ) 「しかしながら、一方で、ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとした偏光板を液晶表示装置に搭載した場合、トリアセチルセルロースフィルムを保護フィルムとする一般的な偏光板に比べて、その高いレタデーション値に由来する斜め方向からの色ムラ(干渉ムラ、虹ムラとも言う)が目立ち、視認性に劣るという問題を有している。」(【0008】)

ウ さらに、引用例1には、「課題を解決するための手段」について、以下のとおり記載されている。
(ア) 「ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする偏光板において、面内の遅相軸方向の屈折率をn_(x)、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をn_(y)、厚み方向の屈折率をn_(z)としたときに、(n_(x)-n_(z))/(n_(x)-n_(y))で表されるNz係数が2.0未満の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとして用いることで、液晶表示装置の色ムラを効果的に低減でき、高い視認性と薄型化、低コスト化との両立が実現できることを見出した。」(【0011】)
(イ) 「すなわち、本発明によれば、・・・略・・・該偏光フィルムの片面に、第一の接着剤層を介して積層された延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、を備え、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、面内の遅相軸方向の屈折率をn_(x)、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をn_(y)、厚み方向の屈折率をn_(z)としたときに、(n_(x)-n_(z))/(n_(x)-n_(y))で表されるNz係数が2.0未満であることを特徴とする偏光板が提供される。」(【0012】)

エ 加えて、引用例1には、「発明の効果」として、「Nz係数が2.0未満の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとして用いることで、液晶表示装置の表示時における色ムラが少なく優れた視認性を示し、かつ薄型化を実現し、コストパフォーマンスや生産性にも優れる偏光板を提供することができる。また、本発明によれば、前記の偏光板を用いた視認性に優れる液晶表示装置を提供することができる。」(【0021】)と記載されている。

オ 以上ア?エを勘案すると、引用発明1において、[A]「光出射側(視認側)の偏光板」の「光出射側(視認側)」の保護フィルム及び「バックライト光源側(入射側)の偏光板」の「バックライト光源側(入射側)」の保護フィルムとして、[B-1]機械的強度に優れ、[B-2]偏光板の薄型化を実現でき、[B-3]トリアセチルセルロースや環状オレフィン系樹脂と比較して、コストの面からも優位性を有し、[B-4]トリアセチルセルロースと比較し、低透湿性で低吸水性を有することから、耐湿熱性や耐冷熱衝撃性にも優れ、環境変化に対して高い耐久性を持つ、[C]「Nz係数が2.0未満」の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」を用いることは、[D]「液晶表示装置に搭載した際の色ムラが少なく視認性に優れ、かつ薄型化を実現し、コストパフォーマンスや生産性にも優れる偏光板を提供」し、「前記の偏光板を用いた視認性に優れる液晶表示装置を提供する」との課題を解決するために、必須の事項であることが理解できる(当合議体注:引用例1の請求項1、2の記載からも理解されることである。)。

カ したがって、引用発明1において、「光出射側(視認側)の偏光板」の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」に替えて、ポリエチレンナフタレートフィルム(基材)を採用することには、特段の動機付けが必要と言える。
しかしながら、特許異議申立人が提出した特開2009-169389号(甲第2号証)、引用例3(甲第3号証)、引用例4(甲第4号証)、引用例5(甲第5号証)には、ポリエチレンテレフタレートに替えて、ポリエチレンナフタレートフィルムを採用するについて記載も示唆もされていない。
一方、本件特許の出願日前の当業者であれば、ポリエステルフィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの他、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを心得ている(例えば、引用例2(甲第6号証)の[0027]には、「本発明に用いられるポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレナフタレートを用いることができる」と記載されている。)。
しかしながら、PETフィルムの方がPENフィルムよりも安価であることは、技術常識である。例えば、PETフィルム及びPENフィルムの価格については、特許権者による令和3年1月4日付け意見書(以下、「特許権者意見書」という。)に添付された乙第1号証(東京マーケティング本部 ケミカル&マテリアルグループ 調査・編集,2011 フィルム用高機能材料の市場展望とフィルムメーカー戦略,株式会社 富士経済,2011年6月15日)の第55頁「8.価格動向」のPETフィルムのグレード別の価格・動向の表には、「光学用」の価格が「600?2,000」「円/kg」であること、「光学用」は低価格化の動向であることが記載されている。また、同第60頁「8.価格動向」のPENフィルムのグレード別の価格・動向の表には、「標準品」の価格が「3,800?5,000」「円/kg」であること、「白色PENフィルム」の価格が「4,000?5,200」「円/kg」であること、「超高透明品」の価格が「10,000?」「円/kg」であること、いずれのグレードの価格も横ばいの動向であることが、それぞれ示されている。
そうすると、乙第1号証からは、PETフィルムとPENフィルムとには、価格にして、1.9倍(=3,800/2,000)?16倍以上(10,000/600)の価格差があること、価格差の動向は広がる動向であることが理解できる。さらに、同60頁の上記表のPENの「標準品」、「白色PENフィルム」、「超高透明品」とのグレード分け及びその価格から、(同55頁の上記表に示される)PETに比較して、PENは透明性に劣る材料であること、透明性に優れるPENはより高価であることも理解できる(当合議体注:透明性については、特許権者意見書に添付された乙第2号証(研究開発本部 第二部門 調査・編集,2019年版 機能性高分子フィルムの現状と将来展望(上巻),株式会社 富士キメラ総研,2019年1月28日,第33頁,第238頁)の第33頁の「3)ベースフィルム競合・代替動向」の表に、「品目名」「偏光子保護フィルム」において、「代替ベースフィルム」として、「PET」、「アクリル系」及び「COP」フィルムが、「低吸湿性、光学特性」との「代替フィルムの採用ポイント」から、「トレンド」が「拡大」であること、第238頁の「E4 カバーレイフィルム」の「2)ベースフィルム」の表には、「PENフィルム」及び「PETフィルム」について、「PENはPETよりも透明性が劣ることから、ほとんど採用は見られない。」ことが示されていることからも理解できる。)。
加えて、強直なPEN樹脂よりもPET樹脂の方が延伸加工性、生産性に優れることも、技術常識である。
そうすると、コストパフォーマンスや生産性に優れる偏光板の提供を課題とする引用発明1において、「光出射側(視認側)の偏光板」の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」に替えて、ポリエチレンナフタレートフィルム(基材)を採用する強い動機付けがあるとはいえない。
そうしてみると、引用発明1において、「光出射側(視認側)の偏光板」の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」に替えて、ポリエチレンナフタレートフィルム(基材)を採用することが、当業者が容易になし得たことということはできない。

キ 特許異議申立人が令和3年3月8日に提出した意見書(以下、「異議申立人意見書」という。)の主張について
(ア) 特許異議申立人は、「引用例2にも、『近年、LCDの薄型化に伴い、偏光板の薄層化が求められるようになっている。しかし、このために保護フィルムとして用いられているTACフィルムの厚みを薄くすると、充分な機械強度を得ることが出来ず、また透湿性が悪化するという問題が発生する。また、TACフィルムは非常に高価であり、安価な代替素材が強く求められている。』と記載され(段落【0002】)、このような課題を前提として、偏光子保護フィルムの少なくとも一つとして『3000?30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルム』が採用されると共に(請求項1)、『本発明に用いられるポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを用いることができる』と記載されている(段落【0027】)。」、「従って、引用例1発明において、コストダウンの必要性に応じて延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが採用されているとしても、同様の課題が引用例2発明にも記載されているため、その解決手段として記載されたポリエチレンナフタレートフィルムを、引用例1発明に適用することについて、何ら困難性を生じさせない。」と主張する。
また、特許異議申立人は、「PETフィルムよりもPENフィルムの方が複屈折率(△n)を大きく発現させ易いことは当業者に周知であり(例えば特開平11-1826号公報の段落0018、国際公開WO2008/078618号公報の段落0072、特開2008-129556号公報の段落0020など)、このため同じ位相差を得る上で、PENフィルムの方が厚みを低減(原料コスト低減にもつながる)できるという長所がある。」、「例えば、甲第9号証として提出する特開平11-1826号公報の段落0018には、『結晶の固有複屈折率として、ポリエチレンテレフタレードでは0.22、ポリエチレンナフタレートでは0.487・・・略・・・などの高い値を有する。』との記載があり、PETに比して、PENの固有複囲折は2倍以上となる。」、「一方、特許権者は、PENの価格は、PETの価格の1.9?16倍であると主張するが、仮に、価格が2倍の場合、PENフィルムは、PETフィルムと同じリタデーション、同じ価格でありながら、フィルム厚みを半分にして薄型化できるため、PETからPENに変更する動機付けは十分あるといえる。」、「更に、PENフィルムはPETフィルムよりも、耐薬品性、耐熱性、強度などで優れていることが当業者に周知であり、コストの差を考慮しても、PENフィルムを選択することには、十分な動機付けがある。」と主張する。

(イ) しかしながら、実際に、Nz係数が2.0未満であり、高リタデーションの、透明性に優れるPENフィルムを安価に製造できるか分からない。乙第1号証によれば、「超高透明品」が「10,000?」「円/kg」であり、「白色PENフィルム」でも「4,000?5,200」「円/kg」であり、実際には、透明性に優れるPENフィルムは、PETに比較してかなり高価と考えられる。加えて、強直なPEN樹脂は、PET樹脂よりも延伸加工性、生産性に劣るものであることは既に述べたとおりである。
そうしてみると、「PETフィルムよりもPENフィルムの方が複屈折率(△n)を大きく発現させ易」く、PENフィルムはより薄型化できるとしても、コストパフォーマンスや生産性に優れる偏光板の提供を課題とする、引用発明1において、PETフィルムに替えて、PENフィルムを選択することに十分な動機付けがあるとまではいえない。

ク 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、引用例1(甲第1号証)、特開2009-169389号公報(甲第2号証)、引用例3?5(甲第3号証?甲第5号証)に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本件特許発明2について
本件特許発明2と、引用発明1は、少なくとも、上記2(2)イで述べた相違点1-1-1で相違する。
そして、相違点1-1-1についての判断は、前記2(3)において既に述べたとおりである。
したがって、本件特許発明1と同様の理由により、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は、当業者といえども、引用例1(甲第1号証)、特開2009-169389号公報(甲第2号証)、引用例3?5(甲第3号証?甲第5号証)に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

4 本件特許発明3について
本件特許発明3と、引用発明1は、少なくとも、上記2(2)イで述べた相違点1-1-1で相違する。
そして、相違点1-1-1についての判断は、前記2(3)において既に述べたとおりである。
したがって、本件特許発明1と同様の理由により、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明3は、引用例1(甲第1号証)、特開2009-169389号公報(甲第2号証)、引用例3?5(甲第3号証?甲第5号証)に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

5 本件特許発明4?9について
本件特許発明4?9は、いずれも相違点1-1-1に係る、本件特許発明1、本件特許発明2あるいは本件特許発明3の構成を具備する発明である。
したがって、本件特許発明1と同様の理由により、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明4?9は、引用例1(甲第1号証)、特開2009-169389号公報(甲第2号証)、引用例3?5(甲第3号証?甲第5号証)の記載された発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

6 本件特許発明10について
本件特許発明10と引用製造方法発明1とを対比すると、両者は、少なくとも次の点で相違する。
(相違点1-10-1)
「光学積層体を配置する工程」において、本件特許発明10は、「光透過性基材(1)」は、「ポリエチレンナフタレート基材であり、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、厚みが5μm?500μmであり(ただし、65μm未満である場合を除く)、リタデーションが7000?2万nmであるものを用い」ているのに対して、引用製造方法発明1は、「前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」であって、「フィルム面内の遅相軸方向の屈折率をn_(x)、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をn_(y)」、「膜厚をdとした時、(n_(x)-n_(y))×dで定義される面内位相差値R_(0)が200?1200nmもしくは2000?7000nmであり、膜厚が15?75μmの範囲内であ」る点。
そして、相違点1-10-1についての判断は、前記2(3)において既に検討した相違点1-1-1と同様なものである。
したがって、本件特許発明1と同様の理由により、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明10は、引用例1(甲第1号証)、特開2009-169389号公報(甲第2号証)、引用例3?5(甲第3号証?甲第5号証)に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

7 本件特許発明11について
本件特許発明11と、引用表示方法発明1とを対比すると、両者は、少なくとも次の点で相違する。
(相違点1-11-1)
「光透過性基材(1)」は、本件特許発明11は、「ポリエチレンナフタレート基材であり、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、厚みが5μm?500μmであり(ただし、65μm未満である場合を除く)、リタデーションが7000?2万nmであるものを用い」ているのに対して、引用表示方法発明1は、「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」であって、「フィルム面内の遅相軸方向の屈折率をn_(x)、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をn_(y)」、「膜厚をdとした時、(n_(x)-n_(y))×dで定義される面内位相差値R_(0)が200?1200nmもしくは2000?7000nmであり、膜厚が15?75μmの範囲内であ」る点。
そして、相違点1-11-1についての判断は、前記2(3)において既に検討した相違点1-1-1と同様なものである。
したがって、本件特許発明1と同様の理由により、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明11は、引用例1(甲第1号証)、特開2009-169389号公報(甲第2号証)、引用例3?5(甲第3号証?甲第5号証)に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立の理由の概要
特許異議申立人は、特許異議申立理由の「理由B」として、本件特許発明1、10及び11は、甲第6号証(引用例2)、甲第7号証(特開2008-176059号公報)に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している。また、特許異議申立人は、本件特許発明2?9は、甲第6号証(引用例2)、引用例4(甲第4号証)、引用例5(甲第5号証)、甲第7号証(特開2008-176059号公報)の記載された発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとも主張している。

2 「理由B」について
(1) 本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と、甲第6号証(引用例2)の請求の範囲の請求項2に記載された「液晶表示装置」の発明(以下、「引用発明6」という。)とを対比すると、両者は、少なくとも次の点で相違する。
(相違点6-1-1)
本件特許発明1は、「偏光板」が、「バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され」たものであり、「前記光透過性甚材(2)は、ポリエステル基材であり」、「前記光透過性基材(2)に、偏光された光が入射されるものであり」、「前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とは、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層されて」いるのに対して、引用発明6は、そのようなものであるかどうか不明である点。

イ 判断
相違点6-1-1について検討する。
引用発明6の「液晶表示装置」は、「偏光子保護フィルムの少なくとも1つ」を「3000?30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルム」としたものである。
しかしながら、甲第6号証(引用例2)の[0001]?[0024]の記載に接した当業者であれば、引用発明6の「液晶表示装置」においては、液晶セルの偏光特性を変化させてしまうため、偏光特性が必要とされる箇所に「3000?30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルム」を配置することは好ましくないと理解する。
そうすると、たとえ、甲第8号証の1(特開2009-169389号公報)、甲第8号証の2(特開2009-157347号公報)、甲第8号証の3(特開2011-90042号公報)、甲第8号証の4(特開2009-109993号公報)及び甲第8号証の5(特開2009-300661号公報)に例示されるように、「偏光板とバックライト光源との間に輝度向上フィルム(即ち、反射型偏光分離フィルム)を配置し、光源側偏光子保護フィルムとして延伸PETフィルムを使用し、延伸PETフィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸を直交関係に配置する」ことが、本件特許の出願前に周知技術であったとしても、引用発明6に基づいて発明をする当業者が、この周知技術を考慮するとはいえない。

以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲第6号証(引用例2)、甲第7号証(特開2008-176059号公報)に記載された発明及び(甲第8号証の1乃至甲第8号証の5に記載された)周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(2) 本件特許発明2?9について
本件特許発明2?9は、いずれも相違点6-1-1に係る本件特許発明1の構成を具備する発明である。
よって、本件特許発明1と同様の理由により、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2?9は、甲第6号証(引用例2)、引用例4(甲第4号証)、引用例5(甲第5号証)、甲第7号証(特開2008-176059号公報)に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(3) 本件特許発明10について
ア 対比
本件特許発明10と、引用例2の請求の範囲の請求項2の記載及び技術常識から理解される、引用発明6の製造方法の発明(以下、「引用製造方法発明6」という。)とを対比すると、両者は、少なくとも次の点で相違する。
(相違点6-10-1)
本件特許発明10は、「偏光板」が、「少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され」たものであり、「前記光透過性甚材(2)は、ポリエステル基材であるものを用い」、「前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とを、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層する工程を有し」いるのに対して、引用製造方法発明6は、そのようなものであるかどうか不明である点。
相違点6-10-1について検討すると、たとえ「偏光板とバックライト光源との間に輝度向上フィルム(即ち、反射型偏光分離フィルム)を配置し、光源側偏光子保護フィルムとして延伸PETフィルムを使用し、延伸PETフィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸を直交関係に配置する」ことが、本件特許の出願前に周知技術であったとしても、本件特許発明1と同様な理由により、引用製造方法発明6に基づいて発明をする当業者が、この周知技術を考慮するとはいえない。
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明10は、甲第6号証(引用例2)、甲第7号証(特開2008-176059号公報)に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(4) 本件特許発明11
本件特許発明10と同様の理由により、本件特許発明11は、甲第6号証(引用例2)、甲第7号証(特開2008-176059号公報)に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した理由及び特許異議申立書に記載した理由によっては、本件特許の請求項1?11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に、本件特許の請求項1?11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
画像表示装置、画像表示装置の製造方法及び画像表示装置の視認性改善方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板複合体、偏光板セット、画像表示装置、偏光板複合体の製造方法、偏光板セットの製造方法、画像表示装置の製造方法及び画像表示装置の視認性改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、省電力、軽量、薄型等といった特徴を有していることから、従来のCRTディスプレイに替わり様々な分野で用いられている。特に、近年急速に普及している携帯電話やスマートフォン等のモバイル機器では、液晶表示装置が必須となっている。
このような液晶表示装置には液晶セルの画像表示面側に偏光素子が配置されており、通常、取扱い時に偏光素子に傷が付かないように硬度を付与することが要求されることから、偏光板保護フィルムとして、光透過性基材上にハードコート層を設けたハードコートフィルムを利用することにより、画像表示面に硬度を付与することが一般になされている。
また、このような液晶表示装置は、例えば、バックライト光源上に、観察者側とバックライト光源側とに一対の偏光板が、液晶セルを介してクロスニコルの関係となるように配置された構成が知られている。
そして、このような構成の液晶表示装置は、バックライト光源から照射された光が、バックライト光源側の偏光板、液晶セル及び観察者側の偏光板を透過し、表示画面にて映像が表示される。
【0003】
従来、ハードコートフィルムの光透過性基材として、トリアセチルセルロースに代表されるセルロースエステルからなるフィルムが用いられていた。また、通常、従来の液晶表示装置の偏光板としては、偏光子と光透過性基材とが積層された構造を有し、上記偏光板の光透過性基材にも、トリアセチルセルロースに代表されるセルロースエステルからなるフィルムが用いられている(例えば、特許文献1参照)。これは、セルロースエステルは、透明性、光学等方性に優れ、面内にほとんど位相差を持たない(リタデーション値が低い)ため、入射直線偏光の振動方向を変化させることが極めて少なく、液晶表示装置の表示品質への影響が少ないことや、適度な透水性を有することから、光学積層体を用いてなる偏光板を製造した時に偏光子に残留した水分を、光学積層体を通して乾燥させることができる等の利点に基づくものである。
しかしながら、セルロースエステルフィルムは、耐湿、耐熱性が充分でなく、ハードコートフィルムを偏光板保護フィルムとして高温多湿の環境下で使用すると、偏光機能や色相等の偏光板機能を低下させるという欠点があり、また、偏光板の光透過性基材として使用すると、透湿度が高すぎるため、耐湿試験を行うと褪色による、偏光度の低下をきたすこと等の問題があった。また、セルロースエステルは、コスト的にも不利な素材でもあった。
【0004】
このようなセルロースエステルフィルムの問題点から、透明性、耐熱性、機械強度に優れ、かつ、セルロースエステルフィルムに比べて安価で市場において入手が容易な、あるいは簡易な方法で製造することが可能な汎用性フィルムを光学積層体の光透過性基材や偏光板の光透過性基材として用いることが望まれており、例えば、セルロースエステル代替フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルムを利用する試みがなされている(例えば、特許文献2?5参照)。
【0005】
ところが、ポリエステルフィルムは、分子鎖中に分極率の大きい芳香族環を持つため固有複屈折が極めて大きく、優れた透明性、耐熱性、機械強度を付与させるための延伸処理による分子鎖の配向に伴って複屈折が発現しやすいという性質を有する。このようなポリエステルフィルムのような面内に複屈折率を有する光透過性基材を用いた光学積層体を画像表示装置の表面に設置した場合、光学積層体の表面での反射防止性能が著しく低下し、明所コントラストが低下してしまうことがあった。
【0006】
また、このような構成の液晶表示装置において、バックライト光源から照射された光を効率よく表示画面まで透過させることは、表示画面の輝度向上に重要である。特に、近年急速に普及しているスマートフォン等のモバイル機器では、バッテリーの持続時間に直接影響するため、より効率よくバックライト光源からの光を表示画面まで透過させることが求められている。
【0007】
このような液晶表示装置として、例えば、バックライト光源と該バックライト光源側の偏光板との間に、偏光分離フィルムを設ける等してバックライト光源側の偏光板に偏光された光を入射させ、表示画面の輝度を向上させたものが知られている。なお、上記偏光分離フィルムとは、特定の偏光成分を透過させるとともに、その他の偏光成分を反射してバックライト光源側に戻す機能を有するフィルムである。
ところが、このような構成の液晶表示装置のバックライト光源側の偏光板として、ポリエステルフィルムからなる保護フィルムを用いた偏光板を用いた場合、透過率が低下してしまうことがあった。これは、ポリエステルフィルムは、分子鎖中に分極率の大きい芳香族環を持つため固有複屈折が極めて大きく、優れた透明性、耐熱性、機械強度を付与させるための延伸処理による分子鎖の配向に伴って複屈折が発現しやすいという性質を有するためである。
このため、このようなポリエステルフィルムのような面内に複屈折率を有する光透過性基材を用いた偏光板を、液晶表示装置のバックライト側の偏光板として使用した場合、偏光分離フィルムを通過した特定の偏光成分の偏光状態を変化させてしまうため、透過率が低下してしまうことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6-51120号公報
【特許文献2】特開2004-205773号公報
【特許文献3】特開2009-157343号公報
【特許文献4】特開2010-244059号公報
【特許文献5】WO2011/162198
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記現状に鑑み、反射防止性能と明所コントラストとに優れ、更にはニジムラも防止できるとともに、光透過率にも優れる偏光板複合体、偏光板セット、画像表示装置、偏光板複合体の製造方法、偏光板セットの製造方法、画像表示装置の製造方法及び画像表示装置の視認性改善方法を提供することを目的とする。
なお、本発明において、「視認性改善された状態」とは、少なくとも反射防止性能と明所コントラストに優れた状態を示し、更に、ニジムラも防止できている状態を、「視認性改善が極めてよくされた状態」という。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、上記画像表示装置の前記バックライト光源側に配置して用いられる偏光板とを有する偏光板複合体であって、上記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸が、上記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置され、上記光透過性基材(2)に、偏光された光が入射されるものであり、上記光透過性基材(2)と上記偏光子(2)とは、上記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、上記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層されていることを特徴とする偏光板複合体である。
【0011】
本発明の偏光板複合体において、上記光透過性基材(1)は、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であることが好ましい。
また、上記光透過性基材(1)は、リタデーションが3000nm以上であることが好ましい。
また、本発明の偏光板複合体は、上記光透過性基材(1)と光学機能層との間にプライマー層を有し、上記プライマー層の屈折率(np)が、上記光透過性基材(1)の遅相軸方向の屈折率(nx)及び上記光学機能層の屈折率(nf)よりも大きい場合(np>nx,nf)、又は、上記プライマー層の屈折率(np)が、上記光透過性基材(1)の進相軸方向の屈折率(ny)及び上記光学機能層の屈折率(nf)よりも小さい場合(np<ny,nf)、上記プライマー層の厚みが3?30nmであることが好ましい。
また、本発明の偏光板複合体は、上記光透過性基材(1)と光学機能層との間にプライマー層を有し、上記プライマー層の屈折率(np)が、上記光透過性基材(1)の遅相軸方向の屈折率(nx)よりも大きく、上記光学機能層の屈折率(nf)よりも小さい場合(nx<np<nf)、又は、上記プライマー層の屈折率(np)が、上記光透過性基材(1)の進相軸方向の屈折率(ny)よりも小さく、上記光学機能層の屈折率(nf)よりも大きい場合(nf<np<ny)、上記プライマー層の厚みが65?125nmであることが好ましい。
また、本発明の偏光板複合体は、上記光透過性基材(1)と光学機能層との間にプライマー層を有し、上記プライマー層の屈折率(np)が、上記光透過性基材(1)の進相軸方向の屈折率(ny)と上記光透過性基材の遅相軸方向の屈折率(nx)との間に存在する(ny<np<nx)ことが好ましい。
また、本発明の偏光板複合体において、上記光透過性基材(2)と偏光子(2)とは、上記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、上記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±15°又は90°±15°となるように積層されていることが好ましい。
また、上記光透過性基材(2)は、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、上記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.01以上であることが好ましい。
また、上記光透過性基材(2)の屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、上記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)と、上記光透過性基材(2)の平均屈折率(N)とが、下記式の関係を有し、かつ、上記進相軸と上記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が0°±2°であることが好ましい。
nx>N>ny
【0012】
また、本発明は、面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有する光学積層体が、偏光子(1)上に設けられ、画像表示装置の表面に配置して用いられる偏光板(1)と、バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、上記画像表示装置の前記バックライト光源側に配置して用いられる偏光板(2)とを有する偏光板セットであって、上記光学積層体(1)と上記偏光子(1)とは、上記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、上記偏光子(1)の吸収軸とが垂直となるように配置され、上記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸が、上記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置され、上記光透過性基材(2)に、偏光された光が入射されるものであり、上記光透過性基材(2)と上記偏光子(2)とは、上記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、上記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層されていることを特徴とする偏光板セットでもある。
本発明の偏光板セットにおいて、上記光透過性基材(1)は、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、上記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であることが好ましい。
また、本発明の偏光板セットにおいて、上記光透過性基材(1)は、リタデーションが3000nm以上であることが好ましい。
また、本発明の偏光板セットにおいて、上記光透過性基材(1)と光学機能層との間にプライマー層を有し、上記プライマー層の屈折率(np)が、上記光透過性基材(1)の遅相軸方向の屈折率(nx)及び上記光学機能層の屈折率(nf)よりも大きい場合(np>nx,nf)、又は、上記プライマー層の屈折率(np)が、上記光透過性基材(1)の進相軸方向の屈折率(ny)及び上記光学機能層の屈折率(nf)よりも小さい場合(np<ny,nf)、上記プライマー層の厚みが3?30nmであることが好ましい。
また、本発明の偏光板セットにおいて、上記光透過性基材(1)と光学機能層との間にプライマー層を有し、上記プライマー層の屈折率(np)が、上記光透過性基材(1)の遅相軸方向の屈折率(nx)よりも大きく、上記光学機能層の屈折率(nf)よりも小さい場合(nx<np<nf)、又は、上記プライマー層の屈折率(np)が、上記光透過性基材(1)の進相軸方向の屈折率(ny)よりも小さく、上記光学機能層の屈折率(nf)よりも大きい場合(nf<np<ny)、上記プライマー層の厚みが65?125nmであることが好ましい。
また、本発明の偏光板セットにおいて、上記光透過性基材(1)と光学機能層との間にプライマー層を有し、上記プライマー層の屈折率(np)が、上記光透過性基材(1)の進相軸方向の屈折率(ny)と上記光透過性基材(1)の遅相軸方向の屈折率(nx)との間に存在する(ny<np<nx)ことが好ましい。
【0013】
本発明はまた、本発明の偏光板複合体又は本発明の偏光板セットを備えることを特徴とする画像表示装置でもある。
本発明の画像表示装置は、バックライト光源として白色発光ダイオードを備えたVAモード又はIPSモードの液晶表示装置であることが好ましい。
上記バックライト光源と面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)との間に、偏光分離フィルムを有することが好ましい。
【0014】
本発明はまた、面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子とがこの順に積層され、前記画像表示装置の前記バックライト光源側に配置して用いられる偏光板とを有する偏光板複合体の製造方法であって、上記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、上記画像表示装置の表示画面の上下方向とが平行となるように、上記光学積層体を配置する工程と、上記光透過性基材(2)と上記偏光子とを、上記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、上記偏光子の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層する工程を有することを特徴とする偏光板複合体の製造方法でもある。
【0015】
本発明はまた、面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有する光学積層体が、偏光子(1)上に設けられ、画像表示装置の表面に配置して用いられる偏光板(1)と、バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、上記画像表示装置の上記バックライト光源側に配置して用いられる偏光板(2)とを有する偏光板セットの製造方法であって、上記光学積層体(1)と上記偏光子(1)とは、上記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、上記偏光子(1)の吸収軸とが垂直となるように配置され、上記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸が、上記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置する工程と、上記光透過性基材(2)と上記偏光子(2)とは、上記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、上記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層する工程を有することを特徴とする偏光板セットの製造方法でもある。
【0016】
本発明はまた、面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、画像表示装置のバックライト光源側に配置して用いられる偏光板を備えた画像表示装置の製造方法であって、上記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、上記画像表示装置の表示画面の上下方向とが平行となるように、上記光学積層体を配置する工程と、上記光透過性基材(2)と上記偏光子(2)とを、上記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、上記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層する工程を有することを特徴とする画像表示装置の製造方法でもある。
【0017】
本発明はまた、面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、画像表示装置のバックライト光源側に配置して用いられる偏光板を備えた画像表示装置の視認性改善方法であって、上記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、上記画像表示装置の表示画面の上下方向とが平行となるように、上記光学積層体を配置するとともに、上記光透過性基材(2)と上記偏光子(2)とを、上記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、上記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層することを特徴とする画像表示装置の視認性改善方法でもある。
以下に、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明では、特別な記載がない限り、モノマー、オリゴマー、プレポリマー等の硬化性樹脂前駆体も“樹脂”と記載する。
【0018】
本発明者は、鋭意検討した結果、面内に複屈折率を有する光透過性基材を用いた光学積層体と、光透過性基材と偏光子とが積層され、画像表示装置のバックライト光源側に配置して用いられるとともに、偏光された光が入射される偏光板を有する偏光板複合体について、鋭意検討した結果、上記光学積層体及び偏光板を画像表示装置に設置する際に、上記光学積層体の光透過性基材の屈折率の大きい方向である遅相軸を、画像表示装置の表示画面に対して特定の方向となるようにすることで、反射防止性能及び明所コントラストを優れた画像表示装置とすることができることを見出した。
また、上記偏光板に面内に複屈折率を有する光透過性基材を用いた場合、該偏光板の光透過率には、該光透過性基材の屈折率の小さい方向である進相軸と偏光子の透過軸との間で角度依存性があることを見出した。すなわち、本発明者らは、上記偏光板の面内に複屈折率を有する光透過性基材の屈折率の小さい方向である進相軸と、上記偏光子の透過軸とが特定の角度範囲となるように積層することで、該偏光板の光透過率を向上させることができることを見出した。
そして、このような知見に基づき本発明者らは、更に鋭意検討した結果、従来、光学等方性材料として用いられてきたセルロースエステル等の材料からなる光学積層体の光透過性基材や偏光板の光透過性基材に対しても、敢えて複屈折率を持たせた光透過性基材とすることにより、光学等方性材料のまま用いるよりも、明所コントラスト及び光透過率を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
なお、上述のように従来光学積層体や偏光板に用いられていたトリアセチルセルロースに代表されるセルロースエステルからなるフィルムは、光学等方性に優れ、面内にほとんど位相差を持たない。このため、該セルロースエステルからなるフィルムを光透過性基材として用いた光学積層体又は偏光板の場合、該光透過性基材の設置方向は考慮する必要がなかった。すなわち、上述した反射防止性能及び明所コントラスト並びに光透過率の問題は、光学積層体及び偏光板の光透過性基材として、面内に複屈折率を有する光透過性基材を用いたことにより生じたものである。
【0019】
本発明の偏光板複合体は、面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体を有し、上記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸が、上記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置される。
ここで、画像表示装置は、通常、室内に設置して用いられるものであるため、壁面や床面で反射した光の該画像表示装置の表示画面(光学積層体の表面)での反射を防止することで、反射防止性能を優れたものとすることができる。
本発明者らは、上記壁面や床面で反射し、上記画像表示装置の表示画面に入射する光は、その多くが上記表示画面の左右方向に振動した状態となっていることに着目し、上記光学積層体を、上記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸が、上記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置するものとしたのである。すなわち、本発明の偏光板複合体における上記光学積層体は、その用途を画像表示装置の表面に設置するものに限定し、該光学積層体を有する本発明の偏光板複合体を設置した画像表示装置は、上記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸が、上記壁面や床面で反射した光の振動方向に対して垂直な方向を向いた状態となっている。このように光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸の方向を特定の方向となるように上記光学積層体を設置してなる画像表示装置は、反射防止性能と明所コントラストとに優れたものとなる。
これは、上述した特定の状態で本発明の偏光板複合体を配置した構成の画像表示装置では、上記表示画面に入射する割合の多い左右方向に振動する光(S偏光)に対し、上記光透過性基材(1)の屈折率が小さい方向である進相軸の方向が平行となり、最表面での外光反射が低減できるためである。
この理由は、Nなる屈折率を有する基材表面の反射率Rは、
R=(N-1)^(2)/(N+1)^(2)
で表されるが、上記光学積層体における光透過性基材(1)のような屈折率異方性を有する基材においては、画像表示装置において上記構成とすることにより、上記屈折率Nは、屈折率の小さい進相軸の屈折率が適用される割合が増加するからである。
また、上記理由によって、面内位相差を有する光透過性基材(1)を用いた光学積層体であるにもかかわらず、画像表示装置への配置方向を考慮せずに光学積層体を設置した場合と、本発明のように、光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸の方向を特定の方向となるように光学積層体を設置した場合に、後者の場合の反射率が、前者の反射率よりも低くなっている。本発明における「反射防止性能が優れた状態」とは、このような状態のことを言う。
また、画像表示装置のコントラストは、暗所コントラストと明所コントラストとに分けられ、暗所コントラストは、(白表示の輝度/黒表示の輝度)として算出され、明所コントラストは、{(白表示の輝度+外光反射)/(黒表示の輝度+外光反射)}として算出される。いずれのコントラストの場合も分母の影響がより大きくなることで、コントラストが低下する。つまり、最表面での外光反射を低減できれば、結果として、明所コントラストが向上する。
なお、上記「上記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸が、上記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置される」とは、上記遅相軸が、上記表示画面の上下方向に対して0°±40°の範囲で光学積層体が画像表示装置に配置された状態を意味する。
また、本発明の偏光板複合体において、上記光透過性基材(1)の遅相軸と上記表示画面の上下方向との角度は、0°±30°であることが好ましく、0°±10°であることがより好ましく、0°±5°であることが更に好ましい。本発明の偏光板複合体において、上記光学積層体の上記光透過性基材の遅相軸と上記表示画面の上下方向との角度が0°±40°であることで、本発明の偏光板複合体による明所コントラストの向上を図ることができる。
なお、本発明の偏光板複合体では、上記光学積層体の上記光透過性基材の遅相軸と上記表示画面の上下方向との角度は0°であることが、明所コントラストの向上を図る上で最も好ましい。このため、上記光透過性基材の遅相軸と上記表示画面の上下方向との角度は、0°±40°であるよりも、0°±30°であることが好ましく、より好ましくは0°±10°となる。更に、上記光透過性基材の遅相軸と上記表示画面の上下方向との角度が0°±5°であると、該角度が0°である場合と同レベルの明所コントラストの向上を図ることができ、更に好ましい。
本明細書において、2つの軸のなす角度に関し、観察者側から見て、基準となる角度に対して時計回りになす角度をプラス(+)とし、基準となる角度に対して反時計回りになす角度をマイナス(-)とする。そして、特に表記せず角度を示した場合、基準となる角度に対して時計回りになす角度である場合(すなわち、プラスである場合)を意味する。
【0020】
上記面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)としては特に限定されず、例えば、ポリカーボネート、アクリル、ポリエステル等からなる基材が挙げられるが、なかでも、コスト及び機械的強度において有利なポリエステル基材であることが好適である。なお、以下の説明では、面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)をポリエステル基材として説明する。
なお、本発明において、上記光透過性基材(1)としては、従来、光学等方性材料として用いられていたセルロースエステル等からなる光透過性基材であっても、敢えて複屈折率を持たせることで使用することができる。
【0021】
上記ポリエステル基材は、ニジムラ発生を防止でき、視認性改善が極めて良好となることから、リタデーションが3000nm以上であることが好ましい。3000nm未満であると、本発明の偏光板複合体を液晶表示装置(LCD)で使用した場合、虹色の縞模様のようなニジムラが視認され、表示品位が低下することがある。一方、上記ポリエステル基材のリタデーションの上限としては特に限定されないが、3万nm程度であることが好ましい。3万nmを超えると、膜厚が相当に厚くなるため好ましくない。
上記ポリエステル基材のリタデーションは、薄膜化の観点から、5000?25000nmであることが好ましい。より好ましい範囲は、7000?2万nmであり、この範囲であると、上記光学積層体が画像表示装置に、上記ポリエステル基材の遅相軸が、上記表示画面の上下方向に対して0°±30°?40°の範囲で配置された場合、つまり、上記ポリエステル基材の遅相軸が、上記表示画面の上下方向に対して完全な平行よりも少しずれた角度を持って配置されている場合であっても、ニジムラ防止性を更に良好にできる。なお、上記光学積層体は、上記ポリエステル基材の遅相軸の配置が、上記表示画面の上下方向に対して完全な平行より±30°?40°であっても、リタデーションが3000nm以上であれば、ニジムラ防止性を有し、実質使用上に問題はない。
【0022】
なお、上記リタデーションとは、ポリエステル基材の面内において最も屈折率が大きい方向(遅相軸方向)の屈折率(nx)と、遅相軸方向と直交する方向(進相軸方向)の屈折率(ny)と、ポリエステル基材の厚み(d)とにより、以下の式によって表わされるものである。
リタデーション(Re)=(nx-ny)×d
また、上記リタデーションは、例えば、王子計測機器社製KOBRA-WRによって測定(測定角0°、測定波長589.3nm)することができる。
また、二枚の偏光板を用いて、ポリエステル基材の配向軸方向(主軸の方向)を求め、配向軸方向に対して直交する二つの軸の屈折率(nx、ny)を、アッベ屈折率計(アタゴ社製 NAR-4T)によって求める。ここで、より大きい屈折率を示す軸を遅相軸と定義する。ポリエステル基材厚みd(nm)は、電気マイクロメータ(アンリツ社製)を用いて測定し、単位をnmに換算する。屈折率差(nx-ny)と、フィルムの厚みd(nm)との積より、リタデーションを計算することもできる。
なお、屈折率は、アッベ屈折率計や、エリプソメーターを用いて測定することもできるし、分光光度計(島津製作所社製のUV-3100PC)を用いて、上記光学積層体における光学機能層の波長380?780nmの平均反射率(R)を測定し、得られた平均反射率(R)から、以下の式を用い、屈折率(n)の値を求めてもよい。
光学機能層の平均反射率(R)は、易接着処理のない50μmPET上にそれぞれの原料組成物を塗布し、1?3μmの厚さの硬化膜にし、PETの塗布しなかった面(裏面)に、裏面反射を防止するために測定スポット面積よりも大きな幅の黒ビニールテープ(例えば、ヤマトビニールテープNo200-38-21 38mm幅)を貼ってから各硬化膜の平均反射率を測定した。ポリエステル基材の屈折率は、測定面とは反対面に同様に黒ビニールテープを貼ってから測定を行った。
R(%)=(1-n)^(2)/(1+n)^(2)
また、光学積層体となった後に光学機能層の屈折率を測定する方法としては、各層の硬化膜をカッターなどで削り取り、粉状態のサンプルを作製し、JIS K7142(2008)B法(粉体又は粒状の透明材料用)に従ったベッケ法を用いることができる。なお、上記ベッケ法とは、屈折率が既知のカーギル試薬を用い、上記粉状態のサンプルをスライドガラスなどに置き、そのサンプル上に試薬を滴下し、試薬でサンプルを浸漬する。その様子を顕微鏡観察によって観察し、サンプルと試薬の屈折率が異なることによってサンプル輪郭に生じる輝線;ベッケ線が目視で観察できなくなる試薬の屈折率を、サンプルの屈折率とする方法である。
なお、ポリエステル基材の場合は、方向によって屈折率(nx、ny)が異なるので、ベッケ法ではなく、光学機能層の処理面に上記黒ビニールテープを貼ることで、分光光度計(V7100型、自動絶対反射率測定ユニットVAR-7010 日本分光社製)を用いて、偏光測定:S偏光にて、光透過性基材の遅相軸を平行に設置した場合と、進相軸を平行に設置した場合との5度反射率を測定し、遅相軸と進相軸の屈折率(nx、ny)を上記式より算出もできる。
【0023】
なお、本発明では、上記ポリエステル基材が後述するポリエチレンテレフタレート(PET)を原料とするPET基材である場合、上記nx-ny(以下、Δnとも表記する)は、0.05以上であることが好ましい。上記Δnが0.05未満であると、進相軸の屈折率が大きいため、上述した画像表示装置の明所コントラストの向上が図れないことがある。更に、上述したリタデーション値を得るために必要な膜厚が厚くなってしまうことがある。一方、上記Δnは、0.25以下であることが好ましい。0.25を超えると、PET基材を過度に延伸する必要が生じるため、PET基材が裂け、破れ等を生じやすくなり、工業材料としての実用性が著しく低下することがある。
以上の観点から、上記PET基材である場合のΔnのより好ましい下限は0.07、より好ましい上限は0.20である。なお、上記Δnが0.20を超えると、耐湿熱性試験でのPET基材の耐久性が劣ることがある。耐湿熱性試験での耐久性が優れることから、上記PET基材である場合のΔnの更に好ましい上限は0.15である。
なお、上記PET基材である場合の(nx)としては、1.66?1.78であることが好ましく、より好ましい下限は1.68、より好ましい上限は1.73である。また、上記PET基材である場合の(ny)としては、1.55?1.65であることが好ましく、より好ましい下限は1.57、より好ましい上限は1.62である。
上記nx及びnyが上記範囲にあり、かつ、上述したΔnの関係を満たすことで、好適な反射防止性能及び明所コントラストの向上を図ることができる。
また、上記ポリエステル基材が後述するポリエチレンナフタレート(PEN)を原料とするPEN基材である場合、上記Δnは、好ましい下限が0.05であり、好ましい上限が0.30である。上記Δnが0.05未満であると、上述したリタデーション値を得るために必要な膜厚が厚くなるため、好ましくない。一方、上記Δnが0.30を超えると、PEN基材として、裂け、破れ等を生じやすくなり、工業材料としての実用性が著しく低下することがある。上記PEN基材である場合のΔnのより好ましい下限は0.07、より好ましい上限は0.27である。Δnが0.07よりも小さいと、上述した充分なニジムラ及び色味変化の抑制効果を得にくくなるためである。なお、上記Δnが0.27を超えると、耐湿熱性試験でのPEN基材の耐久性が劣ることがある。また、耐湿熱性試験での耐久性が優れることから、上記PEN基材である場合のΔnの更に好ましい上限は0.25である。
なお、上記PEN基材である場合の(nx)としては、1.70?1.90であることが好ましく、より好ましい下限は1.72、より好ましい上限は1.88である。また、上記PEN基材である場合の(ny)としては、1.55?1.75であることが好ましく、より好ましい下限は1.57、より好ましい上限は1.73である。
【0024】
上記ポリエステル基材を構成する材料としては、上述したリタデーションを充足するものであれば特に限定されないが、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルが挙げられる。かかるポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレート(ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリエチレン-1,4-ナフタレート、ポリエチレン-1,5-ナフタレート、ポリエチレン-2,7-ナフタレート、ポリエチレン-2,3-ナフタレート)などを例示することができる。また、ポリエステル基材に用いられるポリエステルは、これらのポリエステルの共重合体であってもよく、上記ポリエステルを主体(例えば80モル%以上の成分)とし、少割合(例えば20モル%以下)の他の種類の樹脂とブレンドしたものであってもよい。上記ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンナフタレートが力学的物性や光学物性等のバランスが良いので特に好ましい。特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなることが好ましい。ポリエチレンテレフタレートは汎用性が高く、入手が容易であるからである。本発明においてはPETのような、汎用性が極めて高いフィルムであっても、表示品質の高い液晶表示装置を作製することが可能な、光学積層体を得ることができる。更に、PETは、透明性、熱又は機械的特性に優れ、延伸加工によりリタデーションの制御が可能であり、固有複屈折が大きく、膜厚が薄くても比較的容易に大きなリタデーションが得られる。
【0025】
上記ポリエステル基材を得る方法としては、上述したリタデーションを充足する方法であれば特に限定されないが、例えば、材料の上記PET等のポリエステルを溶融し、シート状に押出し成形された未延伸ポリエステルをガラス転移温度以上の温度においてテンター等を用いて横延伸後、熱処理を施す方法が挙げられる。
上記横延伸温度としては、80?130℃が好ましく、より好ましくは90?120℃である。また、横延伸倍率は2.5?6.0倍が好ましく、より好ましくは3.0?5.5倍である。上記横延伸倍率が6.0倍を超えると、得られるポリエステル基材の透明性が低下しやすくなり、横延伸倍率が2.5倍未満であると、延伸張力も小さくなるため、得られるポリエステル基材の複屈折が小さくなり、リタデーションを3000nm以上とできないことがある。
また、本発明においては、二軸延伸試験装置を用いて、上記未延伸ポリエステルの横延伸を上記条件で行った後、該横延伸に対する流れ方向の延伸(以下、縦延伸ともいう)を行ってもよい。この場合、上記縦延伸は、延伸倍率が2倍以下であることが好ましい。上記縦延伸の延伸倍率が2倍を超えると、Δnの値を上述した好ましい範囲にできないことがある。
また、上記熱処理時の処理温度はしては、100?250℃が好ましく、より好ましくは180?245℃である。
【0026】
上述した方法で作製したポリエステル基材のリタデーションを3000nm以上に制御する方法としては、延伸倍率や延伸温度、作製するポリエステル基材の膜厚を適宜設定する方法が挙げられる。具体的には、例えば、延伸倍率が高いほど、延伸温度が低いほど、また、膜厚が厚いほど、高いリタデーションを得やすくなり、延伸倍率が低いほど、延伸温度が高いほど、また、膜厚が薄いほど、低いリタデーションを得やすくなる。
【0027】
上記ポリエステル基材の厚みとしては、5?500μmの範囲内であることが好ましい。5μm未満であると、裂け、破れ等を生じやすくなり、工業材料としての実用性が著しく低下することがある。一方、500μmを超えると、ポリエステル基材が非常に剛直であり、高分子フィルム特有のしなやかさが低下し、やはり工業材料としての実用性が低下するので好ましくない。上記ポリエステル基材の厚さのより好ましい下限は10μm、より好ましい上限は300μmであり、更に好ましい上限は150μmである。
【0028】
また、上記ポリエステル基材は、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、84%以上であるものがより好ましい。なお、上記透過率は、JIS K7361-1(プラスチック-透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
【0029】
また、本発明において、上記ポリエステル基材には本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、けん化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、及び火炎処理等の表面処理を行ってもよい。
【0030】
上記光学機能層は、ハードコート性能を有するハードコート層であることが好ましく、該ハードコート層は、硬度が、JIS K5600-5-4(1999)による鉛筆硬度試験(荷重4.9N)において、H以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましい。
上記ハードコート層は、上記光学積層体の表面のハードコート性を担保する層であり、例えば、紫外線により硬化する樹脂である電離放射線硬化型樹脂と光重合開始剤とを含有するハードコート層用組成物を用いて形成されたものであることが好ましい。
【0031】
上記光学積層体において、上記電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、アクリレート系の官能基を有する化合物等の1又は2以上の不飽和結合を有する化合物を挙げることができる。1の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N-ビニルピロリドン等を挙げることができる。2以上の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等及びこれらをエチレンオキサイド(EО)等で変性した多官能化合物、又は、上記多官能化合物と(メタ)アクリレート等の反応生成物(例えば多価アルコールのポリ(メタ)アクリレートエステル)等を挙げることができる。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート及びアクリレートを指すものである。
【0032】
上記化合物のほかに、不飽和二重結合を有する比較的低分子量(数平均分子量300?8万、好ましくは400?5000)のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も上記電離放射線硬化型樹脂として使用することができる。なお、この場合の樹脂とは、モノマー以外のダイマー、オリゴマー、ポリマー全てを含む。
本発明における好ましい化合物としては、3以上の不飽和結合を有する化合物が挙げられる。このような化合物を用いると形成するハードコート層の架橋密度を高めることができ、塗硬度を良好にできる。
具体的には、本発明においては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ポリエステル多官能アクリレートオリゴマー(3?15官能)、ウレタン多官能アクリレートオリゴマー(3?15官能)等を適宜組み合わせて用いることが好ましい。
【0033】
上記電離放射線硬化型樹脂は、溶剤乾燥型樹脂と併用して使用することもできる。溶剤乾燥型樹脂を併用することによって、塗布面の被膜欠陥を有効に防止することができる。なお、上記溶剤乾燥型樹脂とは、熱可塑性樹脂等、塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂をいう。
上記電離放射線硬化型樹脂と併用して使用することができる溶剤乾燥型樹脂としては特に限定されず、一般に、熱可塑性樹脂を使用することができる。
上記熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂及びゴム又はエラストマー等を挙げることができる。上記熱可塑性樹脂は、非結晶性で、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒)に可溶であることが好ましい。特に、製膜性、透明性や耐候性の観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
【0034】
また、上記ハードコート層用組成物は、熱硬化性樹脂を含有していてもよい。
上記熱硬化性樹脂としては特に限定されず、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を挙げることができる。
【0035】
上記光重合開始剤としては特に限定されず、公知のものを用いることができ、例えば、上記光重合開始剤としては、具体例には、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α-アミロキシムエステル、チオキサントン類、プロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、アシルホスフィンオキシド類が挙げられる。また、光増感剤を混合して用いることが好ましく、その具体例としては、例えば、n-ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ-n-ブチルホスフィン等が挙げられる。
【0036】
上記光重合開始剤としては、上記電離放射線硬化型樹脂がラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等を単独又は混合して用いることが好ましい。また、上記電離放射線硬化型樹脂がカチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、上記光重合開始剤としては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を単独又は混合物として用いることが好ましい。
本発明において用いる開始剤としては、ラジカル重合性不飽和基を有する電離放射線硬化型樹脂の場合は、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンが、電離放射線硬化型樹脂との相溶性、及び、黄変も少ないという理由から好ましい。
【0037】
上記ハードコート層用組成物にける上記光重合開始剤の含有量は、上記電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して、1?10質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、上記光学積層体におけるハードコート層の硬度を上述した範囲とすることができないことがあり、10質量部を超えると、塗設した膜の深部まで電離放射線が届かなくなり内部硬化が促進されず、目標であるハードコート層の表面の鉛筆硬度3H以上が得られないおそれがあるためである。
上記光重合開始剤の含有量のより好ましい下限は2質量部であり、より好ましい上限は8質量部である。上記光重合開始剤の含有量がこの範囲にあることで、膜厚方向に硬度分布が発生せず、均一な硬度になりやすくなる。
【0038】
上記ハードコート層用組成物は、溶剤を含有していてもよい。
上記溶剤としては、使用する樹脂成分の種類及び溶解性に応じて選択して使用することができ、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、水、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)等が例示でき、これらの混合溶媒であってもよい。
特に本発明においては、ケトン系の溶媒でメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンのいずれか、又は、これらの混合物を少なくとも含むことが、樹脂との相溶性、塗工性に優れるという理由から好ましい。
【0039】
上記ハードコート層用組成物中における原料の含有割合(固形分)として特に限定されないが、通常は5?70質量%、特に25?60質量%とすることが好ましい。
【0040】
上記ハードコート層用組成物には、ハードコート層の硬度を高くする、硬化収縮を抑える、ブロッキングを防止する、屈折率を制御する、防眩性を付与する、粒子やハードコート層表面の性質を変える等の目的に応じて、従来公知の有機、無機微粒子、分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤等を添加していてもよい。
【0041】
また、上記ハードコート層用組成物は、光増感剤を混合して用いてもよく、その具体例としては、例えば、n-ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ-n-ブチルホソフィン等が挙げられる。
【0042】
上記ハードコート層用組成物の調製方法としては各成分を均一に混合できれば特に限定されず、例えば、ペイントシェーカー、ビーズミル、ニーダー、ミキサー等の公知の装置を使用して行うことができる。
【0043】
また、上記ハードコート層用組成物を上記光透過性基材(1)上に塗布する方法としては特に限定されず、例えば、グラビアコート法、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ピードコーター法等の公知の方法を挙げることができる。
【0044】
上記光透過性基材(1)上に上記ハードコート層用組成物を塗布して形成した塗膜は、必要に応じて加熱及び/又は乾燥し、活性エネルギー線照射等により硬化させることが好ましい。
【0045】
上記活性エネルギー線照射としては、紫外線又は電子線による照射が挙げられる。上記紫外線源の具体例としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等の光源が挙げられる。また、紫外線の波長としては、190?380nmの波長域を使用することができる。電子線源の具体例としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が挙げられる。
【0046】
なお、上記ハードコート層の好ましい膜厚(硬化時)は0.5?100μm、より好ましくは0.8?20μm、カール防止性やクラック防止性が特に優れるので、もっとも好ましくは2?10μmの範囲である。上記ハードコート層の膜厚は、断面を電子顕微鏡(SEM、TEM、STEM)で観察し、任意の10点を測定した平均値(μm)である。ハードコート層の膜厚は、このほかの方法として、厚さ測定装置ミツトヨ社製のデジマチックインジケーターIDF-130を用いて任意の10点を測定し、平均値を求めてもよい。
【0047】
上記ハードコート層用組成物中に帯電防止剤を含有させることで、上記ハードコート層に帯電防止性能を付与することがでる。
上記帯電防止剤としては従来公知のものを用いることができ、例えば、第4級アンモニウム塩等のカチオン性帯電防止剤や、スズドープ酸化インジウム(ITO)等の微粒子や、導電性ポリマー等を用いることができる。
上記帯電防止剤を用いる場合、その含有量は、全固形分の合計質量に対して1?30質量%であることが好ましい。
【0048】
また、上記光学積層体は、上記ハードコート層上に更に低屈折率層を有することが好ましい。
上記低屈折率層としては、好ましくは1)シリカ又はフッ化マグネシウム等の低屈折率無機微粒子を含有する樹脂、2)低屈折率樹脂であるフッ素系樹脂、3)シリカ又はフッ化マグネシウム等の低屈折率無機微粒子を含有するフッ素系樹脂、4)シリカ又はフッ化マグネシウム等の低屈折率無機薄膜等のいずれかで構成される。フッ素系樹脂以外の樹脂については、上述したバインダー樹脂と同様の樹脂を用いることができる。
また、上述したシリカは、中空シリカ微粒子であることが好ましく、このような中空シリカ微粒子は、例えば、特開2005-099778号公報の実施例に記載の製造方法にて作製できる。
これらの低屈折率層は、その屈折率が1.47以下、特に1.42以下であることが好ましい。
また、低屈折率層の厚みは限定されないが、通常は10nm?1μm程度の範囲内から適宜設定すれば良い。
【0049】
上記フッ素系樹脂としては、少なくとも分子中にフッ素原子を含む重合性化合物又はその重合体を用いることができる。重合性化合物としては特に限定されないが、例えば、電離放射線で硬化する官能基、熱硬化する極性基等の硬化反応性の基を有するものが好ましい。また、これらの反応性の基を同時に併せ持つ化合物でもよい。この重合性化合物に対し、重合体とは、上記のような反応性基などを一切もたないものである。
【0050】
上記電離放射線で硬化する官能基を有する重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合を有するフッ素含有モノマーを広く用いることができる。より具体的には、フルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロブタジエン、パーフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール等)を例示することができる。(メタ)アクリロイルオキシ基を有するものとしては、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、α-トリフルオロメタクリル酸メチル、α-トリフルオロメタクリル酸エチルのような、分子中にフッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物;分子中に、フッ素原子を少なくとも3個持つ炭素数1?14のフルオロアルキル基、フルオロシクロアルキル基又はフルオロアルキレン基と、少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル化合物等もある。
【0051】
上記熱硬化する極性基として好ましいのは、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基等の水素結合形成基である。これらは、塗膜との密着性だけでなく、シリカ等の無機超微粒子との親和性にも優れている。熱硬化性極性基を持つ重合性化合物としては、例えば、4-フルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体;フルオロエチレン-炭化水素系ビニルエーテル共重合体;エポキシ、ポリウレタン、セルロース、フェノール、ポリイミド等の各樹脂のフッ素変性品等が挙げられる。
上記電離放射線で硬化する官能基と熱硬化する極性基とを併せ持つ重合性化合物としては、アクリル又はメタクリル酸の部分及び完全フッ素化アルキル、アルケニル、アリールエステル類、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類、完全又は部分フッ素化ビニルエステル類、完全又は部分フッ素化ビニルケトン類等を例示することができる。
【0052】
また、フッ素系樹脂としては、例えば、次のようなものを挙げることができる。
上記電離放射線硬化性基を有する重合性化合物の含フッ素(メタ)アクリレート化合物を少なくとも1種類含むモノマー又はモノマー混合物の重合体;上記含フッ素(メタ)アクリレート化合物の少なくとも1種類と、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートの如き分子中にフッ素原子を含まない(メタ)アクリレート化合物との共重合体;フルオロエチレン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、3,3,3-トリフルオロプロピレン、1,1,2-トリクロロ-3,3,3-トリフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンのような含フッ素モノマーの単独重合体又は共重合体など。これらの共重合体にシリコーン成分を含有させたシリコーン含有フッ化ビニリデン共重合体も用いることができる。この場合のシリコーン成分としては、(ポリ)ジメチルシロキサン、(ポリ)ジエチルシロキサン、(ポリ)ジフェニルシロキサン、(ポリ)メチルフェニルシロキサン、アルキル変性(ポリ)ジメチルシロキサン、アゾ基含有(ポリ)ジメチルシロキサン、ジメチルシリコーン、フェニルメチルシリコーン、アルキル・アラルキル変性シリコーン、フルオロシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、脂肪酸エステル変性シリコーン、メチル水素シリコーン、シラノール基含有シリコーン、アルコキシ基含有シリコーン、フェノール基含有シリコーン、メタクリル変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボン酸変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等が例示される。なかでも、ジメチルシロキサン構造を有するものが好ましい。
【0053】
更には、以下のような化合物からなる非重合体又は重合体も、フッ素系樹脂として用いることができる。すなわち、分子中に少なくとも1個のイソシアナト基を有する含フッ素化合物と、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基のようなイソシアナト基と反応する官能基を分子中に少なくとも1個有する化合物とを反応させて得られる化合物;フッ素含有ポリエーテルポリオール、フッ素含有アルキルポリオール、フッ素含有ポリエステルポリオール、フッ素含有ε-カプロラクトン変性ポリオールのようなフッ素含有ポリオールと、イソシアナト基を有する化合物とを反応させて得られる化合物等を用いることができる。
【0054】
また、上記したフッ素原子を持つ重合性化合物や重合体とともに、上記に記載したような各バインダー樹脂を混合して使用することもできる。更に、反応性基等を硬化させるための硬化剤、塗工性を向上させたり、防汚性を付与させたりするために、各種添加剤、溶剤を適宜使用することができる。
【0055】
上記低屈折率層の形成においては、低屈折率剤及び樹脂等を添加してなる低屈折率層用組成物の粘度を好ましい塗布性が得られる0.5?5mPa・s(25℃)、好ましくは0.7?3mPa・s(25℃)の範囲のものとすることが好ましい。可視光線の優れた反射防止層を実現でき、かつ、均一で塗布ムラのない薄膜を形成することができ、かつ、密着性に特に優れた低屈折率層を形成することができる。
【0056】
樹脂の硬化手段は、後述するハードコート層における硬化手段と同様であってよい。硬化処理のために加熱手段が利用される場合には、加熱により、例えばラジカルを発生して重合性化合物の重合を開始させる熱重合開始剤がフッ素系樹脂組成物に添加されることが好ましい。
【0057】
上記光学積層体の製造方法としては、例えば、上述した方法で作製したポリエステル基材上にハードコート層用塗膜を形成し、必要に応じて乾燥させた後、上記ハードコート層用塗膜を硬化させてハードコート層を形成する。そして、必要に応じて上記低屈折率層を上記ハードコート層上に公知の方法で形成することで上記光学積層体を製造することができる。
また、上記ハードコート層用塗膜の乾燥の方法としては特に限定されないが、一般的に30?120℃で3?120秒間乾燥を行うとよい。
【0058】
上記ハードコート層用塗膜を硬化させる方法としては、構成成分に応じて公知の方法を適宜選択すればよい。例えば、含有するバインダー樹脂成分が紫外線硬化型のものであれば、塗膜に紫外線を照射することにより硬化させればよい。
上記紫外線を照射する場合は、紫外線照射量が80mJ/cm^(2)以上であることが好ましく、100mJ/cm^(2)以上であることがより好ましく、130mJ/cm^(2)以上であることが更に好ましい。
【0059】
上記光学積層体は、上記光透過性基材と光学機能層との間にプライマー層を有することが好ましい。
上記プライマー層は、上述したポリエステル基材とハードコート層の密着性向上を第一目的として設ける層であるが、該プライマー層の好ましい厚みは、上記プライマー層が設けられたことに起因した干渉縞の発生を防止する観点から、上記光透過性基材(1)の屈折率(nx、ny)、光学機能層の屈折率(nh)及びプライマー層の屈折率(np)との関係で、以下のように適宜選択される。
(1)プライマー層の屈折率(np)が、上記光透過性基材(1)の遅相軸方向の屈折率(nx)及び上記光学機能層の屈折率(nf)よりも大きい場合(np>nx,nf)、又は、上記プライマー層の屈折率(np)が、上記光透過性基材(1)の進相軸方向の屈折率(ny)及び上記光学機能層の屈折率(nf)よりも小さい場合(np<ny,nf)、上記プライマー層の厚みは、3?30nmであることが好ましい。
(2)上記プライマー層の屈折率(np)が、上記光透過性基材(1)の遅相軸方向の屈折率(nx)よりも大きく、上記光学機能層の屈折率(nf)よりも小さい場合(nx<np<nf)、又は、上記プライマー層の屈折率(np)が、上記光透過性基材(1)の進相軸方向の屈折率(ny)よりも小さく、上記光学機能層の屈折率(nf)よりも大きい場合(nf<np<ny)、上記プライマー層の厚みは、65?125nmであることが好ましい。
(3)上記プライマー層の屈折率(np)が、上記光透過性基材(1)の進相軸方向の屈折率(ny)と上記光透過性基材の遅相軸方向の屈折率(nx)との間に存在する(ny<np<nx)場合、上記プライマー層の厚みは、干渉縞の防止の観点からは特に限定されない。なお、上記プライマー層と上記光透過性基材(1)との界面での反射量を減じて干渉縞を弱めるとの観点から、上記プライマー層の屈折率(np)は、(nx+ny)/2に近いほど好ましい。
【0060】
上述した(1)及び(2)においてそれぞれプライマー層の厚みが好ましい理由は、(1)においては、プライマー層と光学機能層との界面(界面A)と、光透過性基材(1)とプライマー層との界面(界面B)とを比較したとき、外光入射に対する屈折率の変化の大小関係は、界面Aと界面Bとでは逆である。そのため、外光が界面で反射するとき、界面Aと界面Bの一方で自由端反射をすると、他方では固定端反射となり、位相が逆転しているので、プライマー層が薄いと両界面での反射光は干渉して強度が減少するからである。一方、(2)においては、屈折率の変化が上記界面Aと界面Bとで同じであるから、界面Aと界面Bでの反射光の位相は同じでとなるから、プライマー層の光学膜厚は光の波長の1/4であるとき両界面での反射光は干渉して強度が減少するからである。ここで、(2)におけるプライマー層の厚みの範囲は、プライマー層の屈折率は、後述するように通常1.47?1.63程度であることから、この範囲の中間値である1.55を屈折率とし、光の波長380?780nmで計算した値である。
なお、プライマー層と光透過性基材及び光学機能層との屈折率の差が等しいときに両界面での反射率も等しくなり、上記(1)及び(2)での干渉による効果が最も発揮される。
【0061】
上記プライマー層は、上記(1)の場合においては厚みが3?30nmであることが好ましい。3nm未満であると、上記ポリエステル基材とハードコート層との密着性が不充分となることがあり、30nmを超えると、上記光学積層体の干渉縞防止性が不充分となることがある。上記(1)の場合におけるプライマー層の厚みのより好ましい下限は10nm、より好ましい上限は20nmである。
また、上記プライマー層は、上記(2)の場合においては、厚みが65?125nmであることが好ましい。この範囲を外れると、本発明の光学積層体の干渉縞防止性が不充分となることがある。上記(2)の場合におけるプライマー層の厚みのより好ましい下限は70nm、より好ましい上限は110nmである。
また、上記プライマー層は、上記(3)の場合においては、厚みは特に限定されず任意に設定すればよいが、好ましい下限は3nm、好ましい上限は125nmである。
なお、上記プライマー層の厚みは、例えば、上記プライマー層の断面を、電子顕微鏡(SEM、TEM、STEM)で観察することにより、任意の10点を測定して得られた平均値(nm)である。非常に薄い厚みの場合は、高倍率観察したものを写真として記録し、更に拡大することで測定する。拡大した場合、層界面ラインが、境界線として明確に分かる程度に非常に細い線であったものが、太い線になる。その場合は、太い線幅を2等分した中心部分を境界線として測定する。
【0062】
このようなプライマー層を構成する材料としては光透過性基材(1)との密着性を有すれば特に限定されず、従来、光学積層体のプライマー層として用いられているものを用いることができる。
ただし、従来の光学積層体用のプライマー層の材料から考えた場合、密着性や硬度も満たすものを選択すると、上記プライマー層の屈折率は1.47?1.63の範囲となるが、プライマー層厚みを制御しない場合と比較し、上記光学積層体では、プライマー層の材料選択範囲が非常に大きく好ましい。
なお、上記光学機能層の屈折率(nf)は、上記(1)及び(2)での干渉による効果が最も発揮されるので、プライマー層と光透過性基材(1)及び光学機能層との屈折率の差が近いほど好ましく、(3)においては、界面の増加を抑制するとの観点から、プライマー層の屈折率に近いほど好ましい。
【0063】
上記光学積層体において、上記プライマー層は、上述した材料と、必要に応じて光重合開始剤及び他の成分とを溶媒中に混合分散させて調製したプライマー層用組成物を用いて形成することができる。
上記混合分散は、ペイントシェーカー、ビーズミル、ニーダー等の公知の装置を使用して行うとよい。
【0064】
上記溶媒としては、水が好ましく用いられ、水溶液、水分散液或いは乳化液等の水性塗液の形態で使用されることが好ましい。また、多少の有機溶媒を含んでもよい。
上記有機溶媒としては、例えば、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、ベンジルアルコール、PGME、エチレングリコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ヘプタノン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n-メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン)、エーテルアルコール(例、1-メトキシ-2-プロパノール)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル)等が挙げられる。
【0065】
上記他の成分としては特に限定されず、例えば、レベリング剤、有機又は無機微粒子、光重合開始剤、熱重合開始剤、架橋剤、硬化剤、重合促進剤、粘度調整剤、帯電防止剤、酸化防止剤、防汚剤、スリップ剤、屈折率調整剤、分散剤等が挙げられる。
【0066】
上記プライマー層用組成物は、総固形分が3?20%であることが好ましい。3%未満であると、残留溶剤が残ったり、白化が生じるおそれがある。20%を超えると、プライマー層用組成物の粘度が高くなり、塗工性が低下して表面にムラやスジが出たり、所望の膜厚が得られないおそれがある。上記総固形分は、4?10%であることがより好ましい。
【0067】
上記プライマー層用組成物の上記ポリエステル基材への塗布は、任意の段階で実施することができるが、ポリエステル基材の製造過程で実施するのが好ましく、更には配向結晶化が完了する前のポリエステル基材に塗布することが好ましい。
ここで、結晶配向が完了する前のポリエステル基材とは、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向又は横方向の何れか一方に配向せしめた一軸配向フィルム、更には縦方向及び横方向の二方向に低倍率延伸配向せしめたもの(最終的に縦方向又は横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)等を含むものである。なかでも、未延伸フィルム又は一方向に配向せしめた一軸延伸フィルムに、上記プライマー層用組成物の水性塗液を塗布し、そのまま縦延伸及び/又は横延伸と熱固定とを施すのが好ましい。
上記プライマー層用組成物をポリエステル基材に塗布する際には、塗布性を向上させるための予備処理としてポリエステル基材表面にコロナ表面処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施すか、あるいはプライマー層用組成物と共にこれと化学的に不活性な界面活性剤を併用することが好ましい。
【0068】
上記プライマー層用組成物の塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えば、ロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等を単独又は組合せて用いることができる。なお、塗膜は必要に応じポリエステル基材の片面のみに形成してもよいし、両面に形成してもよい。
【0069】
また、上述したように、上記プライマー層の屈折率と厚みを上記特定の範囲としたことで、上記プライマー層による干渉縞防止性能が発現する。
このような屈折率が特定の関係を有するプライマー層やハードコート層は、上述したハードコート層用組成物やプライマー層用組成物に、高屈折率微粒子や低屈折率微粒子を含有させて屈折率を調整した組成物を用いて形成することが好ましい。
【0070】
上記高屈折率微粒子としては、例えば、屈折率が1.50?2.80の金属酸化物微粒子等が好適に用いられる。上記金属酸化物微粒子としては、具体的には、例えば、酸化チタン(TiO_(2)、屈折率:2.71)、酸化ジルコニウム(ZrO_(2)、屈折率:2.10)、酸化セリウム(CeO_(2)、屈折率:2.20)、酸化錫(SnO_(2)、屈折率:2.00)、アンチモン錫酸化物(ATO、屈折率:1.75?1.95)、インジウム錫酸化物(ITO、屈折率:1.95?2.00)、燐錫化合物(PTO、屈折率:1.75?1.85)、酸化アンチモン(Sb_(2)O_(5)、屈折率:2.04)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO、屈折率:1.90?2.00)、ガリウム亜鉛酸化物(GZO、屈折率:1.90?2.00)及びアンチモン酸亜鉛(ZnSb_(2)O_(6)、屈折率:1.90?2.00)等が挙げられる。なかでも、酸化錫(SnO_(2))、アンチモン錫酸化物(ATO)、インジウム錫酸化物(ITO)、燐錫化合物(PTO)、酸化アンチモン(Sb_(2)O_(5))、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム亜鉛酸化物(GZO)及びアンチモン酸亜鉛(ZnSb_(2)O_(6))は、導電性金属酸化物であり、微粒子の拡散状態を制御し、導電パスを形成することで、帯電防止性を付与できるという利点がある。
また、上記低屈折率微粒子としては、例えば、屈折率が1.20?1.45のものが好適に用いられる。このような低屈折率微粒子としては、従来公知の低屈折率層に用いられている微粒子を用いることができ、例えば、上述した中空シリカ微粒子や、LiF(屈折率1.39)、MgF_(2)(フッ化マグネシウム、屈折率1.38)、AlF_(3)(屈折率1.38)、Na_(3)AlF_(6)(氷晶石、屈折率1.33)及びNaMgF_(3)(屈折率1.36)等の金属フッ化物微粒子が挙げられる。
【0071】
上記高屈折率微粒子及び上記低屈折率微粒子の含有量としては特に限定されず、例えば、ハードコート層用組成物に添加する樹脂成分の硬化物の、予め測定した屈折率の値との加重平均で、形成するハードコート層の屈折率が上述した関係を満たすよう、その他の成分との関係で適宜調整すればよい。
【0072】
なお、上記ハードコート層は、上述の方法で形成したプライマー層上に上記ハードコート層用組成物を塗布してハードコート層用塗膜を形成し、必要に応じて乾燥させた後、上記ハードコート層用塗膜を硬化させて形成できる。
また、上記ハードコート層用組成物が紫外線硬化型樹脂を含む場合においては、上記プライマー層用組成物中に上記ハードコート層用塗膜の硬化に用いる開始剤を含有させておくことで、ハードコート層とプライマー層との密着性をより確実に得ることができる。
【0073】
上記光学積層体は、硬度が、JIS K5600-5-4(1999)による鉛筆硬度試験(荷重4.9N)において、HB以上であることが好ましく、H以上であることがより好ましい。
【0074】
また、上記光学積層体は、全光線透過率が80%以上であることが好ましい。80%未満であると、画像表示装置に装着した場合において、色再現性や視認性を損なうおそれがある他、所望のコントラストが得られないおそれがある。上記全光線透過率は、90%以上であることがより好ましい。
上記全光線透過率は、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM-150)を用いてJIS K-7361に準拠した方法により測定することができる。
【0075】
また、上記光学積層体は、ヘイズが1%以下であることが好ましい。1%を超えると、所望の光学特性が得られず、上記光学積層体を画像表示表面に設置した際の視認性が低下する。
上記ヘイズは、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM-150)を用いてJIS K-7136に準拠した方法により測定することができる。
【0076】
上記光学積層体は、上記光学機能層がハードコート層である場合、光透過性基材(1)上に、例えば、上述したハードコート層用組成物を使用してハードコート層を形成することにより製造することができる。また、上記光学機能層が上記ハードコート層上に低屈折率層が積層された構造の場合、光透過性基材(1)上に、上述したハードコート層用組成物を使用してハードコート層を形成した後、上述した低屈折率層用組成物を使用してハードコート層上に低屈折率層を形成することにより製造することができる。
上記ハードコート層用組成物及びハードコート層の形成方法、低屈折率層用組成物及び低屈折率層の形成方法については、上述したのと同様の材料、方法が挙げられる。
【0077】
本発明の偏光板複合体は、バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、上記画像表示装置の上記バックライト光源側に配置して用いられる偏光板を有する。
上記光透過性基材(2)としては、面内に複屈折率を有するものであれば特に限定されず、例えば、上述した光透過性基材(1)と同様のものが挙げられるが、なかでも、コスト及び機械的強度において有利なポリエステル基材であることが好適である。なお、以下の説明では、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)をポリエステル基材(2)として説明する。
【0078】
上記偏光板において、上記ポリエステル基材(2)の面内において屈折率が大きい方向(遅相軸方向)の屈折率(nx)と、上記遅相軸方向と直交する方向(進相軸方向)の屈折率(ny)との差nx-ny(以下、Δnとも表記する)は、0.01以上であることが好ましい。上記Δnが0.01未満であると、透過率向上効果が少なくなることがある。一方、上記Δnは、0.30以下であることが好ましい。0.30を超えると、ポリエステル基材を過度に延伸する必要が生じるため、ポリエステル基材が裂け、破れ等を生じやすくなり、工業材料としての実用性が著しく低下することがある。
以上の観点から、上記Δnのより好ましい下限は0.05、より好ましい上限は0.27である。なお、上記Δnが0.27を超えると、耐湿熱性試験でのポリエステル基材(2)の耐久性が劣ることがある。耐湿熱性試験での耐久性が優れることから、上記Δnの更に好ましい上限は0.25である。このようなΔnを満たすことで、好適な光透過率の向上を図ることができる。
【0079】
なお、本明細書において、光透過性基材が面内に複屈折率を有しているか否かは、波長550nmの屈折率において、Δn(nx-ny)≧0.0005であるものは、複屈折性を有しているとし、Δn<0.0005であるものは、複屈折性を有していないとする。複屈折率は、王子計測機器社製KOBRA-WRを用いて、測定角0°かつ測定波長552.1nmに設定して、測定を行うことができる。このとき、複屈折率算出には、膜厚、平均屈折率が必要となる。膜厚は、例えば、マイクロメーター(Digimatic Micrometer、ミツトヨ社製)や、電気マイクロメータ(アンリツ社製)を用いて測定できる。平均屈折率は、アッベ屈折率計や、エリプソメーターを用いて測定することができる。
なお、一般的に等方性材料として知られる、トリアセチルセルロースからなるTD80UL-M(富士フィルム社製)、シクロオレフィンポリマーから成るZF16-100(日本ゼオン社製)のΔnは、上記測定方法により、それぞれ、0.00007、0.00005であり、複屈折性を有していない(等方性)と判断した。
その他、複屈折を測定する方法として、二枚の偏光板を用いて、光透過性基材(2)の配向軸方向(主軸の方向)を求め、配向軸方向に対して直交する二つの軸の屈折率(nx、ny)を、アッベ屈折率計(アタゴ社製 NAR-4T)によって求めることもできるし、裏面に黒ビニールテープ(例えば、ヤマトビニールテープNo200-38-21 38mm幅)を貼ってから、分光光度計(V7100型、自動絶対反射率測定ユニット、VAR-7010 日本分光社製)を用いて、偏光測定:S偏光にて、S偏光に対して、遅相軸を平行にした場合と、進相軸を平行にした場合の5度反射率を測定し、反射率(R)と屈折率(n)との関係を示す下記式(1)より、遅相軸と進相軸の各波長の屈折率(nx、ny)を算出することもできる。
R(%)=(1-n)^(2)/(1+n)^(2) 式(1)
【0080】
また、平均屈折率は、アッベ屈折率計や、エリプソメーターを用いて測定することができ、光透過性基材(2)の厚み方向の屈折率nzは、上記の方法によって測定した、nx、nyを用いて、下記式(2)より、計算できる。
平均屈折率N=(nx+ny+nz)/3 式(2)
【0081】
ここで、nx、ny、nzの算出方法を、具体例を挙げて説明する。
なお、nxは、光透過性基材(2)の遅相軸方向の屈折率、nyは、光透過性基材(2)の進相軸方向の屈折率、nzは、光透過性基材(2)の厚み方向の屈折率である。
(3次元屈折率波長分散の算出)
まずは、シクロオレフィンポリマーを例に挙げて、3次元屈折率波長分散の算出方法を具体的に説明する。
面内に複屈折率を有さないシクロオレフィンポリマーフィルムの平均屈折率波長分散を、エリプソメーター(UVISEL 堀場製作所)を用いて測定し、その結果を図1に示した。この測定結果より、面内に複屈折率を有さないシクロオレフィンポリマーフィルムの平均屈折率波長分散を、nxとny、nzの屈折率波長分散とした。
このフィルムを延伸温度155℃で自由端一軸延伸して、面内に複屈折率を有するフィルムを得た。膜厚は、100μmであった。この自由端一軸延伸したフィルムを、複屈折測定計(KOBRA-21ADH、王子計測機器)により、入射角0°及び40°のリタデーション値を4波長(447.6nm、547.0nm、630.6nm、743.4nm)で測定した。
各波長での、平均屈折率(N)と、リタデーション値とを元に、複屈折測定計付属の3次元波長分散計算ソフトを用いて、Cauchy又はSellmeierの式などを用いて、3次元屈折率波長分散を算出し、その結果を図2に示した。なお、図2中、nyはnzとほぼ重なって示されている。この結果より、面内に複屈折率を有するシクロオレフィンポリマーの3次元屈折率波長分散を得た。
(分光光度計を用いた屈折率nx、ny、nzの算出)
ポリエチレンテレフタレートを例に挙げて、分光光度計を用いた屈折率nx、ny、nzの算出方法を具体的に説明する。
面内に複屈折率を有さないポリエチレンテレフタレートの平均屈折率波長分散は、上記3次元屈折率波長分散の算出方法と同様に行った。
面内に複屈折率を有するポリエチレンテレフタレートの屈折率波長分散(nx、ny)は、分光光度計(V7100型、自動絶対反射率測定ユニットVAR-7010 日本分光社製)を用いて算出した。測定面とは反対面に、裏面反射を防止するために測定スポット面積よりも大きな幅の黒ビニールテープ(例えば、ヤマトビニールテープNo200-38-21 38mm幅)を貼ってから、偏光測定:S偏光にて、光透過性基材(2)の配向軸を平行に設置した場合と、配向軸に対して直交する軸を平行に設置した場合との5度分光反射率を測定した。結果を図3に示す。反射率(R)と屈折率(n)との関係を示す上記式(1)より、屈折率波長分散(nx、ny)を算出した。より大きい反射率(上記式(1)により算出された屈折率)を示す方向をnx(遅相軸ともいう)とし、より小さい反射率(上記式(1)により算出された屈折率)を示す方向をny(進相軸ともいう)とした。ここで、配向軸とは、光源の上に、クロスニコル状態に設置された二枚の偏光板の間に、面内に複屈折率を有するフィルムを挟み、フィルムを回転させ、光漏れがもっとも少ない状態の時、偏光板の透過軸、又は、吸収軸と同一方向が、フィルムの配向軸とすることができる。また、屈折率nzは、上記平均屈折率(N)と上記式(2)とにより算出できる。
【0082】
上記ポリエステル基材(2)を構成する材料としては、上述したΔnを充足するものであれば特に限定されないが、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルが挙げられる。かかるポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレート(ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリエチレン-1,4-ナフタレート、ポリエチレン-1,5-ナフタレート、ポリエチレン-2,7-ナフタレート、ポリエチレン-2,3-ナフタレート)などを例示することができる。また、ポリエステル基材(2)に用いられるポリエステルは、これらのポリエステルの共重合体であってもよく、上記ポリエステルを主体(例えば80モル%以上の成分)とし、少割合(例えば20モル%以下)の他の種類の樹脂とブレンドしたものであってもよい。上記ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンナフタレートが力学的物性や光学物性等のバランスが良いので特に好ましい。特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなることが好ましい。ポリエチレンテレフタレートは汎用性が高く、入手が容易であるからである。本発明においてはPETのような、汎用性が極めて高いフィルムであっても、光透過率に優れる偏光板を得ることができる。更に、PETは、透明性、熱又は機械的特性に優れ、延伸加工によりΔnの制御が可能であり、固有複屈折が大きいため、比較的容易に複屈折率を持たせることができる。
【0083】
上記ポリエステル基材(2)を得る方法としては、上述したΔnを充足する方法であれば特に限定されないが、例えば、材料の上記PET等のポリエステルを溶融し、シート状に押出し成形された未延伸ポリエステルをガラス転移温度以上の温度においてテンター等を用いて横延伸後、熱処理を施す方法が挙げられる。
上記横延伸温度としては、80?130℃が好ましく、より好ましくは90?120℃である。また、横延伸倍率は2.5?6.0倍が好ましく、より好ましくは3.0?5.5倍である。上記横延伸倍率が6.0倍を超えると、得られるポリエステル基材の透明性が低下しやすくなり、横延伸倍率が2.5倍未満であると、延伸張力も小さくなるため、得られるポリエステル基材の複屈折が小さくなることがある。
また、本発明においては、二軸延伸試験装置を用いて、上記未延伸ポリエステルの横延伸を上記条件で行った後、該横延伸に対する流れ方向の延伸(以下、縦延伸ともいう)を行ってもよい。この場合、上記縦延伸は、延伸倍率が2倍以下であることが好ましい。上記縦延伸の延伸倍率が2倍を超えると、Δnの値を上述した好ましい範囲にできないことがある。
また、上記熱処理時の処理温度はしては、100?250℃が好ましく、より好ましくは180?245℃である。
【0084】
上記ポリエステル基材(2)の厚みとしては、5?500μmの範囲内であることが好ましい。5μm未満であると、裂け、破れ等を生じやすくなり、工業材料としての実用性が著しく低下することがある。一方、500μmを超えると、ポリエステル基材(2)が非常に剛直であり、高分子フィルム特有のしなやかさが低下し、やはり工業材料としての実用性が低下するので好ましくない。上記ポリエステル基材(2)の厚さのより好ましい下限は10μm、より好ましい上限は300μmであり、更に好ましい上限は150μmである。
【0085】
また、上記ポリエステル基材(2)は、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、84%以上であるものがより好ましい。なお、上記透過率は、JIS K7361-1(プラスチック-透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
【0086】
また、本発明において、上記ポリエステル基材(2)には本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、けん化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、及び火炎処理等の表面処理を行ってもよい。
【0087】
上記偏光子(2)としては特に限定されず、例えば、ヨウ素等により染色し、延伸したポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等を使用することができる。
【0088】
上記偏光板において、上記光透過性基材(2)と上記偏光子(2)とは、上記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と上記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層されている。上記偏光板は、上記光透過性基材(2)と上記偏光子(2)とが上述のように配置されるため、上述のような光透過率を優れたものとすることができる。すなわち、上記光透過性基材(2)の進相軸と上記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が上記範囲を外れる場合、具体的には、45°±15°未満である場合、上記偏光板の光透過率が極めて低いものとなる。これは、以下の理由によるものである。
光源と偏光子(2)との間に偏光分離フィルムを備えた偏光板では、通常、偏光子(2)の透過軸を透過する光の偏光軸の方向と、偏光分離フィルムを透過した偏光された光の偏光軸の方向とは、一致するように設置されている。このため、偏光子(2)と偏光分離フィルムとの間に、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)が設置され、かつ、上記光透過性基材(2)の進相軸と上記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、45°±15°未満の範囲である場合、偏光分離フィルムを透過した偏光された光の偏光軸が変化してしまい、偏光子(2)の吸収軸によって吸収されてしまい、偏光板の光透過率が極めて低くなってしまう。
【0089】
上記偏光板において、上記光透過性基材(2)と上記偏光子(2)とは、上記光透過性基材(2)の進相軸と上記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±15°又は90°±15°となるように積層されていることが好ましい。上記光透過性基材(2)の進相軸と上記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が上記範囲にあることで、上記偏光板の光透過率が極めて良好なものとなる。
【0090】
上記偏光板において、上記光透過性基材(2)と上記偏光子(2)とは、上記光透過性基材(2)の進相軸と上記偏光子の透過軸とのなす角度が、0°±5°となるように積層されていることがさらに好ましい。上記光透過性基材(2)の進相軸と上記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が上記範囲にあることで、上記偏光板の光透過率が極めて良好なものとなる。これは、上記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と上記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、上記の範囲のとき、偏光された光が、上記光透過性基材(2)に入射する際の反射率を小さくすることができるからである。
この理由は、以下の理由による。
すなわち、偏光分離フィルムを透過した偏光された光が偏光板に入射する場合、上記光透過性基材(2)の進相軸と上記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が0°であっても、90°であっても、上記偏光分離フィルムを透過した偏光された光は、その振動方向を保ったまま、光透過性基材(2)を通過する。しかし、この光が、空気界面から、光透過性基材(2)に入る場合、下記式によって反射が起こる。ここで、下記式中、ρは、反射率を示し、naは、光の振動方向と同じ方向の光透過性基材(2)の面内の屈折率を示す。
ρ=(1-na)^(2)/(1+na)^(2)
そして、上記偏光板の透過率τは、下記式によって求められるが、吸収率αは、材料が同じであるため、同じ値であることを考えれば、透過率τを大きくするためには、反射率ρを小さくすれば良い。
τ=1-ρ-α
すなわち、上記面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と上記偏光子(2)とは、該光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、上記偏光子(2)の透過軸とがなす角度が0°である場合、光は、光透過性基材(2)の面内において、最も小さい屈折率と空気の屈折率との差によって反射が起こるため、反射率を最も小さくでき、透過率を上げることができる。一方、上記面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と上記偏光子(2)とは、該光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、上記偏光子(2)の透過軸とがなす角度が90°である場合、光は、光透過性基材(2)の面内において、最も大きい屈折率と空気の屈折率との差によって反射が起こるため、反射率が最も大きくなり、結果として、透過率が低下する。
【0091】
更に、上記偏光板では、上記面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)の屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、上記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)と、上記光透過性基材(2)の平均屈折率(N)とが、下記式の関係を有し、かつ、上記進相軸と偏光子(2)の透過軸とのなす角度が0°±2°であるとき、光透過性基材(2)を等方性材料のまま用いたときよりも透過率を向上できるため最も好ましい。
nx>N>ny
なお、上記偏光板は、面内に複屈折を有する光透過性基材(2)の偏光子(2)が積層されている側とは反対の面に、上記光透過性基材(2)の進相軸方向の屈折率nyよりも小さな屈折率を有する低屈折率層が設けられていてもよい。このような低屈折率層としては、屈折率が上記光透過性基材(2)の進相軸方向の屈折率nyよりも小さなものであれば特に限定されず、従来公知の材料からなるものが挙げられる。
【0092】
上記偏光板は、上記面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)に、偏光された光が入射される。
上記偏光板において、上記偏光された光としては特に限定されないが、例えば、液晶表示装置等の画像表示装置のバックライト光源から生じた光が、偏光分離フィルムを透過して偏光された光が好適に挙げられる。なお、上記偏光板の光源として従来公知の偏光光源を用いてもよい。
上記偏光分離フィルムは、上記バックライト光源から出射される光のうち、特定の偏光成分のみを透過し、それ以外の偏光成分を反射する偏光分離機能を有する部材である。上記偏光板を液晶表示装置に用いた場合、液晶セルと偏光分離フィルムとの間に上記偏光板が設けられた構成となり、上記偏光板は、特定の偏光成分のみを選択的に透過するので、偏光分離フィルムを用いて特定の偏光成分(上記偏光板を透過する偏光成分)以外の偏光成分を選択的に反射させ再利用することで、上記偏光板を通過する光の量を多くし、上記液晶表示装置の表示画面の輝度を向上させることができる。
上記偏光分離フィルムとしては、液晶表示装置に用いられている一般的なものを用いることができる。また、偏光分離フィルムとして市販品を用いてもよく、例えば、住友スリーエム社製のDBEFシリーズを用いることができる。
【0093】
上記偏光板は、光透過性基材(2)と偏光子(2)とが、光透過性基材(2)の進相軸と偏光子(2)の透過軸とが特定の関係となるように積層されているため、光透過率が改善されたものとなる。
【0094】
また、上記偏光板は、上記面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と上記偏光子(2)とを、上記面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、上記偏光子の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層することで製造することができる。
上記面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と上記偏光子(2)との積層は、公知の接着剤を介して行うことが好ましい。
【0095】
上記光学積層体と偏光板とを備えた本発明の偏光板複合体の製造方法もまた、本発明の一つである。
すなわち、本発明の偏光板複合体の製造方法は、面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子とがこの順に積層され、上記画像表示装置の上記バックライト光源側に配置して用いられる偏光板とを有する偏光板複合体の製造方法であって、上記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、上記画像表示装置の表示画面の上下方向とが平行となるように、上記光学積層体を配置する工程と、上記光透過性基材(2)と上記偏光子とを、上記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、上記偏光子の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層する工程を有することを特徴とする。
上記光学積層体及び偏光板の製造方法としては、上述した方法が挙げられる。
【0096】
また、面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有する光学積層体が、偏光子(1)上に設けられ、画像表示装置の表面に配置して用いられる偏光板と、バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、上記画像表示装置の上記バックライト光源側に配置して用いられる偏光板とを有する偏光板セットであって、上記光学積層体(1)と上記偏光子(1)とは、上記光透過性基材の屈折率が大きい方向である遅相軸と、上記偏光子(1)の吸収軸とが垂直となるように配置され、上記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸が、上記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置され、上記光透過性基材(2)に、偏光された光が入射されるものであり、上記光透過性基材(2)と上記偏光子(2)とは、上記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、上記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層されていることを特徴とする偏光板セットもまた、本発明一つである。
【0097】
本発明の偏光板セットにおける上記光学積層体及び上記光透過性基材(2)と偏光子(2)とを有し、バックライト光源側に配置される偏光板としては、上述した本発明の偏光板複合体における光学積層体及び偏光板と同様のものが挙げられる。
本発明の偏光板セットにおいて、上記面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)は、上述した本発明の光学積層体と同様の理由により、リタデーションが3000nm以上であることが好ましく、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、上記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であることが好ましい。
また、本発明の偏光板セットは、上述した光学積層体と同様の理由により、上記光透過性基材(1)と光学機能層との間にプライマー層を有し、上記プライマー層の厚みは、上述した(1)?(3)に従って適宜選択されることが好ましい。
【0098】
上記偏光子(1)としては特に限定されず、例えば、上述した偏光板複合体において説明した偏光板(2)と同様のものが挙げられる。
上記偏光子(1)と上記光学積層体とのラミネート処理においては、光透過性基材にケン化処理を行うことが好ましい。ケン化処理によって、接着性が良好になり帯電防止効果も得ることができる。
【0099】
本発明の偏光板セットにおいて、上記光透過性基材(1)と上記偏光子(1)とは、上記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、上記偏光子(1)の吸収軸とが垂直となるように配置されている。本発明の偏光板セットは、上記光透過性基材(1)と上記偏光子(1)とが上述のように配置され、更に、上記光透過性基材(1)の屈折率の大きい方向である遅相軸が、画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に設置されるため、上述した光学積層体と同様に、反射防止性能と明所コントラストとに優れたものとなる。
なお、上記「上記光透過性基材(1)と上記偏光子(1)とは、上記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、上記偏光子(1)の吸収軸とが垂直に配置されている」とは、上記光透過性基材(1)の遅相軸と、上記偏光子(1)の吸収軸とのなす角度が、90°±40°の範囲となるように、上記光透過性基材(1)と上記偏光子(1)とが設置された状態を意味する。
10
【0100】
このような本発明の偏光板セットは、上記光学積層体の光透過性基材(1)と上記偏光子(1)とを、上記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、上記偏光子(1)の吸収軸とが垂直となるように配置することで製造することができ、上記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸が、上記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置される。
【0101】
上述した本発明の偏光板複合体、又は、本発明の偏光板セットを備えてなる画像表示装置もまた、本発明の一つである。
本発明の画像表示装置は、LCD、PDP、FED、ELD(有機EL、無機EL)、CRT、タブレットPC、タッチパネル、電子ペーパー等の画像表示装置であってもよく、特に限定されないが、LCDが好適である。
【0102】
上記の代表的な例であるLCDは、透過性表示体と、上記透過性表示体を背面から照射する光源装置とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がLCDである場合、この透過性表示体の表面に、上記光学積層体又は上記偏光板が形成されてなるものである。
【0103】
本発明の画像表示装置が、本発明の偏光板複合体又は本発明の偏光板セットを有する液晶表示装置の場合、光源装置の光源は、本発明の偏光板複合体又は本発明の偏光板セットの下側から照射される。なお、液晶表示素子と本発明の偏光板複合体又は本発明の偏光板セットとの間に、位相差板が挿入されてよい。この液晶表示装置の各層間には必要に応じて接着剤層が設けられてよい。
【0104】
上記PDPは、表面に電極を形成した表面ガラス基板と、当該表面ガラス基板に対向して間に放電ガスが封入されて配置され、電極及び、微小な溝を表面に形成し、溝内に赤、緑、青の蛍光体層を形成した背面ガラス基板とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がPDPである場合、上記表面ガラス基板の表面、又は、その前面板(ガラス基板又はフィルム基板)に上述した本発明の偏光板複合体又は本発明の偏光板セットにおける上記光学積層体を備えるものでもある。
【0105】
本発明の画像表示装置は、電圧をかけると発光する硫化亜鉛、ジアミン類物質:発光体をガラス基板に蒸着し、基板にかける電圧を制御して表示を行うELD装置、又は、電気信号を光に変換し、人間の目に見える像を発生させるCRTなどの画像表示装置であってもよい。この場合、上記のような各表示装置の最表面又はその前面板の表面に上述した本発明の偏光板複合体又は本発明の偏光板セットにおける上記光学積層体を備えるものである。
【0106】
ここで、本発明が偏光板複合体又は偏光板セットを有する液晶表示装置の場合、該液晶表示装置において、バックライト光源としては特に限定されないが、白色発光ダイオード(白色LED)であることが好ましく、本発明の画像表示装置は、バックライト光源として白色発光ダイオードを備えたVAモード又はIPSモードの液晶表示装置であることが好ましい。
上記白色LEDとは、蛍光体方式、すなわち化合物半導体を使用した青色光又は紫外光を発する発光ダイオードと蛍光体を組み合わせることにより白色を発する素子のことである。なかでも、化合物半導体を使用した青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた発光素子からなる白色発光ダイオードは、連続的で幅広い発光スペクトルを有していることから反射防止性能及び明所コントラストの改善に有効であるとともに、発光効率にも優れるため、本発明における上記バックライト光源として好適である。また、消費電力の小さい白色LEDを広汎に利用可能になるので、省エネルギー化の効果も奏することが可能となる。
また、上記VA(Vertical Alignment)モードとは、電圧無印加のときに液晶分子が液晶セルの基板に垂直になるように配向されて暗表示を示し、電圧の印加で液晶分子を倒れ込ますことで明表示を示す動作モードである。
また、上記IPS(In-Plane Switching)モードとは、液晶セルの一方の基板に設けた櫛形電極対に印加された横方向の電界により、液晶を基板面内で回転させて表示を行う方式である。
上記偏光板複合体又は偏光板セットを用いた画像表示装置が、バックライト光源として白色発光ダイオードを備えたVAモード又はIPSモードであることが好ましいのは、以下の理由からである。
すなわち、本発明の画像表示装置は、表示画面に入射する割合の多い左右方向に振動する光(S偏光)の上記光学積層体又は偏光板での反射を低減させることができるが、結果として、多くのS偏光が透過することとなる。通常、これらの透過したS偏光は、表示装置内部で吸収されるが、観測者側に戻ってくる光もごく僅かであるが存在する。VAモード又はIPSモードは、液晶セルよりも観測者側に設置された偏光子の吸収軸が、表示画面に対して左右方向であるため、上記光学積層体又は偏光板を透過したS偏光を吸収することができ、より、観測者側に戻ってくる光を低下させることができるからである。
【0107】
本発明の画像表示装置は、いずれの場合も、テレビジョン、コンピュータ、電子ペーパー、タッチパネル、タブレットPCなどのディスプレイ表示に使用することができる。特に、CRT、液晶パネル(LCD)、PDP、ELD、FED、タッチパネルなどの高精細画像用ディスプレイの表面に好適に使用することができ、なかでも、LCDに好適に使用することができる。
【0108】
また、面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有する光学積層体を備えた画像表示装置の製造方法も本発明の一つである。
すなわち、本発明の画像表示装置の製造方法は、面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、画像表示装置のバックライト光源側に配置して用いられる偏光板を備えた画像表示装置の製造方法であって、上記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、上記画像表示装置の表示画面の上下方向とが平行となるように、上記光学積層体を配置する工程と、上記光透過性基材(2)と上記偏光子とを、上記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、上記偏光子の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層する工程を有することを特徴とする。
本発明の画像表示装置の製造方法において、上記光学積層体及び上記光透過性基材(2)と偏光子(2)有する偏光板としては、上述した本発明の偏光板複合体における光学積層体及び偏光板と同様のものが挙げられる。
また、上記「上記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、上記画像表示装置の表示画面の上下方向とが平行となるように、上記光学積層体を配置する」とは、上記遅相軸と、上記表示画面の上下方向とのなす角度が、0°±40°の範囲となるように、上記光学積層体を配置することを意味する。
【0109】
上述した本発明の画像表示装置は、反射防止性能と明所コントラストとに優れ、視認性が改善されたものとなる。このような本発明の画像表示装置による視認性改善方法もまた、本発明の一つである。
すなわち、本発明の画像表示装置の視認性改善方法は、面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、画像表示装置のバックライト光源側に配置して用いられる偏光板を備えた画像表示装置の視認性改善方法であって、上記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、上記画像表示装置の表示画面の上下方向とが平行となるように、上記光学積層体を配置するとともに、上記光透過性基材(2)と上記偏光子(2)とを、上記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、上記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層することを特徴とする。
本発明の画像表示装置の視認性改善方法において、上記光学積層体及び上記光透過性基材(2)と偏光子(2)有する偏光板としては、上述した本発明の偏光板複合体における光学積層体及び偏光板と同様のものが挙げられ、また、上記画像表示装置としては、上述した本発明の画像表示装置と同様のものが挙げられる。
また、上記「上記光透過性基材の屈折率が大きい方向である遅相軸と、上記画像表示装置の表示画面の上下方向とが平行となるように、上記光学積層体を配置する」とは、上記遅相軸と、上記表示画面の上下方向とのなす角度が、0°±40°の範囲となるように、上記光学積層体を配置することを意味する。
【発明の効果】
【0110】
本発明の偏光板複合体及び偏光板セットは、上述した構成からなるものであるため、ポリエステルフィルムのような面内に複屈折率を有する光透過性基材を、光学積層体及び偏光板に用いた場合であっても、反射防止性能と明所コントラストとに優れる画像表示装置を得ることができ、更に、光透過率にも優れたものとなる。
このため、本発明の偏光板複合体及び偏光板セットは、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、電子ペーパー、タッチパネル、タブレットPC等に好適に適用することができ、なかでも、LCDに好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】面内に複屈折率を有さないシクロオレフィンポリマーフィルムの平均屈折率波長分散を示すグラフである。
【図2】面内に複屈折率を有するシクロオレフィンポリマーフィルムの3次元屈折率波長分散を示すグラフである。
【図3】分光光度計により測定したnx及nyの5度反射率を示すグラフである。
【図4】実施例等で用いた光源のスペクトルである。
【図5】実施例等における偏光板の層構成を示す模式図である。
【図6】実施例等で用いた保護フィルムの屈折率波長分散を示すグラフである。
【図7】実施例等で用いた偏光子の屈折率及び消衰係数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0112】
(明所コントラスト評価法)
反射率測定時のS偏光と光透過性基材の進相軸との関係が同じとなるように、液晶モニター(FLATORON IPS226V(LG Electronics Japan社製))の観察者側の偏光素子上に、光学機能層を観測者側となるように光学積層体を設置し、周辺照度400ルクス(明所)において、表示画面の明所コントラストを目視にて評価した。
具体的には、明所コントラストは下記式により表され、一般に明所白輝度の変化率は小さく明所黒輝度の変化率は大きいので、明所コントラストは明所黒輝度に支配される。また、パネル本来の黒輝度は明所黒輝度に比べて小さく無視できるので、下記要領で黒さ(明所黒輝度)を評価して実質的に明所コントラストの評価とした。
すなわち、S偏光と光透過性基材の進相軸との角度が異なる2種類の液晶モニターについて、一方を液晶モニターA、他方を液晶モニターBとし、液晶モニターA、Bを並べ、15人の被験者により官能評価(黒表示した液晶モニターを50?60cm離れた位置から目視観察し、どちらが黒く見えるかを評価)を行い、黒いと答えた人数が12人以上の液晶モニターを明所コントラストが優れ、人数が12人に満たない場合、つまりは11人以下の場合は劣る評価とした。なお、液晶モニターA、Bへ光学積層体を設置する角度は、各実施例、比較例毎に適宜角度を振って評価を行っている。なお、13人以上の被験者が、黒いと答えた場合には、特に優れているとした。
明所コントラスト: CR=LW/LB
明所白輝度(LW):外光がある明所(周辺照度400ルクス)にて、表示装置を白表示した時の輝度
明所黒輝度(LB):外光がある明所(周辺照度400ルクス)にて、表示装置を黒表示した時の輝度
【0113】
(反射率測定方法)
測定側である、光学積層体の光学機能層を設けた側とは反対側に、黒ビニールテープ(ヤマトビニールテープNo200-38-21 38mm幅を貼った後、分光光度計(V7100型、自動絶対反射率測定ユニットVAR-7010 日本分光社製)を用いて、偏光測定:S偏光に対して、光透過性基材(1)の遅相軸を平行に設置した場合と、進相軸を平行に設置した場合との5度反射率を測定した。
【0114】
(ニジムラの評価)
各実施例、比較例、参考例にて、上記明所コントラスト評価用に光学積層体を設置した液晶モニターを、正面及び斜め方向(約50°)、50?60cm離れた位置から目視及び偏光サングラス越しに表示画像の観察を行い、ニジムラを評価した。
図4に、使用した液晶モニターのバックライト光源スペクトルを示す。
【0115】
(リタデーションの測定)
光透過性基材(1)のリタデーションは、次のようにして測定した。
まず、延伸後の光透過性基材(1)を、二枚の偏光板を用いて、光透過性基材(1)の配向軸方向を求め、配向軸方向に対して直交する二つの軸の波長590nmに対する屈折率(nx、ny)を、アッベ屈折率計(アタゴ社製 NAR-4T)によって求めた。ここで、より大きい屈折率を示す軸を遅相軸と定義する。光透過性基材の厚みd(nm)は、電気マイクロメータ(アンリツ社製)を用いて測定し、単位をnmに換算した。屈折率差(nx-ny)と、フィルムの厚みd(nm)の積より、リタデーションを計算した。
【0116】
(屈折率の測定)
エリプソメーター(UVISEL 堀場製作所社製)を用いて測定した。
【0117】
(参考例1、比較例1)
ポリエチレンテレフタレート材料を290℃で溶融して、フィルム形成ダイを通して、シート状に押出し、水冷冷却した回転急冷ドラム上に密着させて冷却し、未延伸フィルムを作製した。この未延伸フィルムを二軸延伸試験装置(東洋精機社製)にて、120℃にて1分間予熱した後、120℃にて、延伸倍率4.5倍に延伸した後、その延伸方向とは90度の方向に延伸倍率1.5倍にて延伸を行い、nx=1.70、ny=1.60、(nx-ny)=0.10、膜厚120μm、リタデーション=12000nmの光透過性基材を得た。
次に、光学機能層として、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)を、MIBK溶媒に30質量%溶解させ、光重合開始剤(Irg184、BASF社製)を固形分に対して5質量%添加した光学機能層用組成物を、バーコーターにより、乾燥後の膜厚が5μmとなるように塗工し塗膜を形成した。
次いで、形成した塗膜を70℃で1分間加熱して、溶剤を除去し、塗工面に紫外線を照射することにより、固定化し、屈折率(nf)1.53の光学機能層を有する光学積層体を得た。S偏光と光透過性基材の進相軸を平行(S偏光と光透過性基材の進相軸との角度が0°)に設置して測定した参考例1の光学積層体の反射率は、4.45%であり、S偏光と光透過性基材の遅相軸とを平行(S偏光と光透過性基材の進相軸との角度が90°)に設置して測定した比較例1の反射率は、4.73%であり、参考例1の光学積層体の方が反射防止性能に優れていた。
また、反射率測定時のS偏光と光透過性基材の進相軸との関係が同じとなるように、液晶モニター(FLATORON IPS226V(LG Electronics Japan社製))の観察者側の偏光素子上に、光学機能層を観測者側となるように光学積層体を設置し、周辺照度400ルクス(明所)において、表示画面の明所コントラストを目視にて評価した。
参考例1の場合、表示画面に入射する割合の多い該表示画面に対して左右方向に振動するS偏光と、光透過性基材の進相軸を平行(光透過性基材の遅相軸が、表示画面の上下方向と平行、すなわち、光透過性基材の遅相軸と表示画面の上下方向との角度が0°)となるように設置し、比較例1の場合、S偏光と光透過性基材の遅相軸を平行(光透過性基材の遅相軸と表示画面の上下方向の角度を90°)に設置し、評価した。その結果、参考例1の光学積層体を用いた液晶モニターAは、比較例1の光学積層体を用いた液晶モニターBよりも表示画面の明所コントラストが特に優れていた。また、参考例1の光学積層体を用いた液晶モニターAは、ニジムラも無く、視認性改善が極めてよくされた状態であった。一方、比較例1の光学積層体を用いた液晶モニターBは、ニジムラは見られないが、参考例1の光学積層体を用いた液晶モニターAと比較して明所コントラストに劣り、反射防止性能も劣るものであった。
【0118】
(参考例2、比較例2)
ポリエチレンテレフタレート材料を290℃で溶融して、フィルム形成ダイを通して、シート状に押出し、水冷冷却した回転急冷ドラム上に密着させて冷却し、未延伸フィルムを作製した。この未延伸フィルムを二軸延伸試験装置(東洋精機製)にて、120℃にて1分間予熱した後、120℃にて、延伸倍率4.5倍に延伸した後、その延伸方向とは90度の方向に延伸倍率1.8倍にて延伸を行い、nx=1.68、ny=1.62、(nx-ny)=0.06、膜厚80μm、リタデーション=4800nmの光透過性基材を得た。
得られた光透過性基材を用いた以外、参考例1と同様の方法にて、屈折率(nf)1.53の光学機能層を有する光学積層体を得た。得られた光学積層体を用いて、参考例1と同様(S偏光と光透過性基材の進相軸との角度を0°)にして反射率を測定し、明所コントラストを評価したところ、参考例2の光学積層体の反射率は4.46%であり、S偏光と光透過性基材の遅相軸を平行(S偏光と光透過性基材の進相軸との角度を90°)に設置して測定した比較例2の光学積層体の反射率は、4.63%で、参考例2の光学積層体の方が反射防止性能に優れていた。
また、参考例1と同様にして評価した参考例2の光学積層体を用いた液晶モニターAは、比較例2の光学積層体を用いた液晶モニターBよりも表示画面の明所コントラストが特に優れていた。また、参考例2の光学積層体を用いた液晶モニターAは、ニジムラもなく、視認性改善が極めてよくされた状態であった。一方、比較例2の光学積層体を用いた液晶モニターBは、ニジムラは見られないが、参考例2の光学積層体を用いた液晶モニターAと比較して明所コントラストに劣るものであった。
【0119】
(参考例3、比較例3)
ポリエチレンテレフタレート材料を290℃で溶融して、フィルム形成ダイを通して、シート状に押出し、水冷冷却した回転急冷ドラム上に密着させて冷却し、未延伸フィルムを作製した。この未延伸フィルムを二軸延伸試験装置(東洋精機社製)にて、120℃にて1分間予熱した後、120℃にて、延伸倍率4.5倍に延伸した後、片側にポリエステル樹脂の水分散体28.0質量部と水72.0質量部とからなるプライマー層用樹脂組成物を、ロールコーターにて均一に塗布した。次いで、この塗布フィルムを95℃で乾燥し、先の延伸方向とは90度の方向に延伸倍率1.5倍にて延伸を行い、nx=1.70、ny=1.60、(nx-ny)=0.10、膜厚120μm、リタデーション=12000nmのフィルム上に、屈折率1.56、膜厚100nmのプライマー層を設けた光透過性基材を得た。
得られた光透過性基材を用いた以外、参考例1と同様の方法にて、屈折率(nf)1.53の光学機能層を有する光学積層体を得た。得られた光学積層体を用いて、参考例1と同様(S偏光と光透過性基材の進相軸との角度を0°)にして反射率を測定し、明所コントラストを評価したところ、参考例3の光学積層体の反射率は4.36%であり、S偏光と光透過性基材の遅相軸を平行(S偏光と光透過性基材の進相軸との角度を90°)に設置して測定した比較例3の光学積層体の反射率は、4.48%であり、参考例3の光学積層体の方が反射防止性能に優れていた。
また、参考例1と同様にして評価した参考例3の光学積層体を用いた液晶モニターAは、比較例3の光学積層体を用いた液晶モニターBよりも表示画面の明所コントラストが特に優れていた。また、参考例3の光学積層体を用いた液晶モニターAは、ニジムラもなく、視認性改善が極めてよくされた状態であった。一方、比較例3の光学積層体を用いた液晶モニターBは、ニジムラは見られないが、参考例3の光学積層体を用いた液晶モニターAと比較して明所コントラストに劣るものであった。
【0120】
(参考例4、比較例4)
ポリエチレンテレフタレート材料を290℃で溶融して、フィルム形成ダイを通して、シート状に押出し、水冷冷却した回転急冷ドラム上に密着させて冷却し、未延伸フィルムを作製した。この未延伸フィルムを二軸延伸試験装置(東洋精機社製)にて、120℃にて1分間予熱した後、120℃にて、延伸倍率4.0倍に延伸した後、片側にポリエステル樹脂の水分散体28.0質量部と水72.0質量部とからなるプライマー層用樹脂組成物を、ロールコーターにて均一に塗布した。次いで、この塗布フィルムを95℃で乾燥し、先の延伸方向とは90度の方向に延伸倍率1.8倍にて延伸を行い、nx=1.68、ny=1.63、(nx-ny)=0.05、膜厚70μm、リタデーション=3500nmのフィルム上に、屈折率(np)1.56、膜厚100nmのプライマー層を設けた光透過性基材を得た。
得られた光透過性基材を用いた以外、参考例1と同様の方法にて、屈折率(nf)1.53の光学機能層を有する光学積層体を得た。なお、光学機能層はプライマー層上に形成した。得られた光学積層体を用いて、参考例1と同様(S偏光と光透過性基材の進相軸との角度を0°)にして反射率を測定し、明所コントラストを評価したところ、参考例4光学積層体の反射率は4.38%であり、S偏光と光透過性基材の遅相軸を平行(S偏光と光透過性基材の進相軸との角度を90°)に設置して測定した比較例4の光学積層体の反射率は4.47%で、参考例4の光学積層体の方が反射防止性能に優れていた。
また、参考例1と同様にして評価した参考例4の光学積層体を用いた液晶モニターAは、比較例4の光学積層体を用いた液晶モニターBよりも表示画面の明所コントラストが特に優れていた。また、参考例4の光学積層体を用いた液晶モニターAは、ニジムラもなく、視認性改善が極めてよくされた状態であった。一方、比較例4の光学積層体を用いた液晶モニターBは、ニジムラは見られないが、参考例4の光学積層体を用いた液晶モニターAと比較して明所コントラストに劣るものであった。
【0121】
(参考例5、比較例5)
ポリエチレンテレフタレート材料を290℃で溶融して、フィルム形成ダイを通して、シート状に押出し、水冷冷却した回転急冷ドラム上に密着させて冷却し、未延伸フィルムを作製した。この未延伸フィルムを二軸延伸試験装置(東洋精機社製)にて、120℃にて1分間予熱した後、120℃にて、延伸倍率4.5倍に延伸した後、片側にポリエステル樹脂の水分散体28.0質量部と水72.0質量部とからなるプライマー層用樹脂組成物を、ロールコーターにて均一に塗布した。次いで、この塗布フィルムを95℃で乾燥し、先の延伸方向とは90度の方向に延伸倍率1.5倍にて延伸を行い、nx=1.70、ny=1.60、(nx-ny)=0.10、膜厚38μm、リタデーション=3800nmのフィルム上に、屈折率(np)1.56、膜厚100nmのプライマー層を設けた光透過性基材を得た。
得られた光透過性基材を用いた以外、参考例1と同様の方法にて、屈折率(nf)1.53の光学機能層を有する光学積層体を得た。なお、光学機能層はプライマー層上に形成した。得られた光学積層体を用いて、S偏光と光透過性基材の進相軸とのなす角度が30°となるように設置して測定した参考例5の光学積層体の反射率は4.39%であり、S偏光と光透過性基材の遅相軸とのなす角度が30°となるように設置して測定した比較例5の光学積層体の反射率は、4.45%で、参考例5の光学積層体の方が反射防止性能に優れていた。
また、参考例1と同様にして評価した参考例5の光学積層体を用いた液晶モニターAは、比較例5の光学積層体を用いた液晶モニターBよりも表示画面の明所コントラストが優れていた。また、参考例5の光学積層体を用いた液晶モニターAは、ニジムラは、偏光サングラス越しにて、うっすらと見える程度で、実使用上問題ないレベルであり、視認性が改善された状態であった。一方、比較例5の光学積層体を用いた液晶モニターBは、ニジムラは、偏光サングラス越しにて、うっすらと見える程度で、実使用上問題ないレベルであったが、参考例5の光学積層体を用いた液晶モニターAと比較して明所コントラストに劣るものであった。
なお、参考例5の光学積層体におけるS偏光と光透過性基材の進相軸のなす角度をマイナス側に同角度とした液晶モニターA’と、比較例5の光学積層体におけるS偏光と光透過性基材の遅相軸のなす角度をマイナス側に同角度とした液晶モニターB’とについて、反射率及び明所コントラストを評価したところ、参考例5の光学積層体を用いた液晶モニターA及び比較例5の光学積層体を用いた液晶モニターBと同様の結果であった。
【0122】
(参考例6、比較例6)
ポリエチレンテレフタレート材料を290℃で溶融して、フィルム形成ダイを通して、シート状に押出し、水冷冷却した回転急冷ドラム上に密着させて冷却し、未延伸フィルムを作製した。この未延伸フィルムを二軸延伸試験装置にて、120℃にて1分間予熱した後、120℃にて、延伸倍率4.5倍に延伸した後、片側にポリエステル樹脂の水分散体28.0質量部と水72.0質量部とからなるプライマー層用樹脂組成物を、ロールコーターにて均一に塗布した。次いで、この塗布フィルムを95℃で乾燥し、先の延伸方向とは90度の方向に延伸倍率1.5倍にて延伸を行い、nx=1.70、ny=1.60、(nx-ny)=0.10、膜厚10μm、リタデーション=1000nmのフィルム上に、屈折率(np)1.56、膜厚100nmのプライマー層を設けた光透過性基材を得た。
得られた光透過性基材を用いた以外、参考例1と同様の方法にて、屈折率(nf)1.53の光学機能層を有する光学積層体を得た。得られた光学積層体を用いて、S偏光と光透過性基材の進相軸とが平行(S偏光と光透過性基材の進相軸との角度が0°)となるように設置して測定した参考例6の光学積層体の反射率は4.40%、S偏光と遅相軸とが平行(S偏光と光透過性基材の進相軸との角度が90°)となるように設置して測定した比較例6の光学積層体の反射率は4.47%であり、参考例6の光学積層体の方が反射防止性能に優れていた。
また、参考例1と同様にして評価した参考例6の光学積層体を用いた液晶モニターAは、比較例6の光学積層体を用いた液晶モニターBよりも表示画面の明所コントラストが優れていた。また、参考例6の光学積層体を用いた液晶モニターAは、ニジムラもなく、視認性が改善された状態であった。一方、比較例6の光学積層体を用いた液晶モニターBは、ニジムラは見られないが、参考例6の光学積層体を用いた液晶モニターAと比較して明所コントラストに劣るものであった。
【0123】
(参考例7、比較例7)
参考例1で得た光学積層体を用いて、S偏光と光透過性基材の進相軸とのなす角度が5°となるように設置して測定した参考例7の光学積層体の反射率は4.46%であり、S偏光と光透過性基材の遅相軸とのなす角度が5°となるように設置して測定した比較例7の光学積層体の反射率は、4.72%であり、参考例7の光学積層体の方が反射防止性能に優れていた。
また、参考例1と同様にして評価した参考例7の光学積層体を用いた液晶モニターAは、比較例7の光学積層体を用いた液晶モニターBよりも表示画面の明所コントラストが特に優れていた。また、参考例7の光学積層体を用いた液晶モニターAは、ニジムラも無く、視認性改善が極めてよくされた状態であった。一方、比較例7の光学積層体を用いた液晶モニターBは、ニジムラは見られないが、参考例7の光学積層体を用いた液晶モニターAと比較して明所コントラストに劣り、反射防止性能も劣るものであった。
なお、参考例7の光学積層体におけるS偏光と光透過性基材の進相軸のなす角度をマイナス側に同角度とした液晶モニターA’と、比較例7の光学積層体におけるS偏光と光透過性基材の遅相軸のなす角度をマイナス側に同角度とした液晶モニターB’とについて、反射率及び明所コントラストを評価したところ、参考例7の光学積層体を用いた液晶モニターA及び比較例7の光学積層体を用いた液晶モニターBと同様の結果であった。
【0124】
(参考例8、比較例8)
参考例1で得た光学積層体を用いて、S偏光と光透過性基材の進相軸とのなす角度が10°となるように設置して測定した参考例8の光学積層体の反射率は4.48%であり、S偏光と光透過性基材の遅相軸とのなす角度が10°となるように設置して測定した比較例8の光学積層体の反射率は、4.68%であり、参考例8の光学積層体の方が反射防止性能に優れていた。
また、参考例1と同様にして評価した参考例8の光学積層体を用いた液晶モニターAは、比較例8の光学積層体を用いた液晶モニターBよりも表示画面の明所コントラストが特に優れていた。また、参考例8の光学積層体を用いた液晶モニターAは、ニジムラも無く、視認性改善が極めてよくされた状態であった。一方、比較例8の光学積層体を用いた液晶モニターBは、ニジムラは見られないが、参考例8の光学積層体を用いた液晶モニターAと比較して明所コントラストに劣り、反射防止性能も劣るものであった。
なお、参考例8の光学積層体におけるS偏光と光透過性基材の進相軸のなす角度をマイナス側に同角度とした液晶モニターA’と、比較例8の光学積層体におけるS偏光と光透過性基材の遅相軸のなす角度をマイナス側に同角度とした液晶モニターB’とについて、反射率及び明所コントラストを評価したところ、参考例8の光学積層体を用いた液晶モニターA及び比較例8の光学積層体を用いた液晶モニターBと同様の結果であった。
【0125】
(参考例9、比較例9)
参考例1で得た光学積層体を用いて、S偏光と光透過性基材の進相軸とのなす角度が30°となるように設置して測定した参考例9の光学積層体の反射率は4.56%であり、S偏光と光透過性基材の遅相軸とのなす角度が30°となるように設置して測定した比較例9の光学積層体の反射率は、4.64%であり、参考例9の光学積層体の方が反射防止性能に優れていた。
また、参考例1と同様にして評価した参考例9の光学積層体を用いた液晶モニターAは、比較例9の光学積層体を用いた液晶モニターBよりも表示画面の明所コントラストが優れていた。また、参考例9の光学積層体を用いた液晶モニターAは、ニジムラも無く、視認性改善が極めてよくされた状態であった。一方、比較例9の光学積層体を用いた液晶モニターBは、ニジムラは見られないが、参考例9の光学積層体を用いた液晶モニターAと比較して明所コントラストに劣り、反射防止性能も劣るものであった。
なお、参考例9の光学積層体におけるS偏光と光透過性基材の進相軸のなす角度をマイナス側に同角度とした液晶モニターA’と、比較例9の光学積層体におけるS偏光と光透過性基材の遅相軸のなす角度をマイナス側に同角度とした液晶モニターB’とについて、反射率及び明所コントラストを評価したところ、参考例9の光学積層体を用いた液晶モニターA及び比較例9の光学積層体を用いた液晶モニターBと同様の結果であった。
【0126】
(参考例10、比較例10)
ポリエチレンナフタレート材料を290℃で溶融して、フィルム形成ダイを通して、シート状に押出し、水冷冷却した回転急冷ドラム上に密着させて冷却し、未延伸フィルムを作製した。この未延伸フィルムを二軸延伸試験装置(東洋精機社製)にて、120℃にて1分間予熱した後、120℃にて、延伸倍率4.5倍に延伸した後、片側にポリエステル樹脂の水分散体28.0質量部と水72.0質量部とからなるプライマー層用樹脂組成物を、ロールコーターにて均一に塗布した。次いで、この塗布フィルムを95℃で乾燥し、先の延伸方向とは90度の方向に延伸倍率1.5倍にて延伸を行い、nx=1.81、ny=1.60、(nx-ny)=0.21、膜厚40μm、リタデーション=8400nmのフィルム上に、屈折率(np)1.56、膜厚100nmのプライマー層を設けた光透過性基材を得た。
得られた光透過性基材を用いた以外、参考例1と同様の方法にて、屈折率(nf)1.53の光学機能層を有する光学積層体を得た。なお、光学機能層はプライマー層上に形成した。得られた光学積層体を用いて、S偏光と光透過性基材の進相軸とのなす角度が0°となるように設置して測定した参考例10の光学積層体の反射率は4.37%であり、S偏光と光透過性基材の遅相軸とのなす角度が0°となるように設置して測定した比較例10の光学積層体の反射率は、4.79%であり、参考例10の光学積層体の方が反射防止性能に優れていた。
また、参考例1と同様にして評価した参考例10の光学積層体を用いた液晶モニターAは、比較例10の光学積層体を用いた液晶モニターBよりも表示画面の明所コントラストは特に優れていた。また、参考例10の光学積層体を用いた液晶モニターAは、ニジムラもなく、視認性改善が極めてよくされた状態であった。一方、比較例10の光学積層体を用いた液晶モニターBの表示画面は、ニジムラは見られないが、参考例10の光学積層体を用いた液晶モニターAと比較して明所コントラストに劣るものであった。
【0127】
(比較例11)
参考例1で作製した光学積層体を用い、S偏光と光透過性基材の進相軸とのなす角度が45°となるように設置して測定した反射率は、4.59%、S偏光と光透過性基材の遅相軸とのなす角度が45°となるように設置して測定した反射率も同様に4.59%であり、反射率に差はなく、反射防止性能は得られなかった。
参考例9の光学積層体を設置した液晶モニターAとし、比較例11のS偏光と光透過性基材の進相軸とのなす角度が45°となるようにした光学積層体を設置した液晶モニターを液晶モニターBとして、参考例1と同様にして明所コントラストを評価した。その結果、比較例11の光学積層体を用いた液晶モニターBの表示画面の明所コントラストよりも、参考例9の光学積層体を用いた液晶モニターAの表示画面の明所コントラストが優れていた。比較例11のS偏光と光透過性基材の遅相軸とのなす角度が45°となるようにした光学積層体を設置した液晶モニターを液晶モニターB’についても同様に明所コントラストを評価したところ、上記液晶モニターBと同様の結果であった。
次いで、参考例1、7及び8の光学積層体を用いた液晶モニターを液晶モニターAとし、参考例9の光学積層体を用いた液晶モニターを液晶モニターBとして、同様に明所コントラストを評価したところ、参考例9の光学積層体を用いた液晶モニターBの表示画面の明所コントラストよりも、参考例1、参考例7及び参考例8の光学積層体を用いた液晶モニターAの表示画面の明所コントラストが優れていた。
【0128】
(比較例12)
参考例3で作製した光学積層体を用い、S偏光と光透過性基材の進相軸とのなす角度が45°となるように設置して測定した反射率は、4.42%、S偏光と光透過性基材の遅相軸とのなす角度が45°となるように設置して測定した反射率も同様に4.42%であり、反射率に差はなく、反射防止性能は得られなかった。S偏光と光透過性基材の進相軸とのなす角度が45°となるようにした光学積層体を設置した液晶モニターを液晶モニターAとし、S偏光と光透過性基材の遅相軸とのなす角度が45°となるようにした光学積層体を設置した液晶モニターを液晶モニターBとして、参考例1と同様にしてニジムラ及び明所コントラストを評価したところ、いずれの角度に設置した場合もニジムラは見られず、角度毎の明所コントラストにおいても差はなかったが、参考例3に係る光学積層体の光学積層体を用いた液晶モニターAと比較して、比較例12の光学積層体を用いた液晶モニターは、いずれの角度に設置した場合も明所コントラストは劣るものであった。
【0129】
(参考例11)
ポリエチレンテレフタレート材料を290℃で溶融して、フィルム形成ダイを通して、シート状に押出し、水冷冷却した回転急冷ドラム上に密着させて冷却し、未延伸フィルムを作製した。この未延伸フィルムを二軸延伸試験装置にて、120℃にて1分間予熱した後、120℃にて、延伸倍率4.5倍に延伸した後、片側にポリエステル樹脂の水分散体28.0質量部と水72.0質量部からなるプライマー層用樹脂組成物を、ロールコーターにて均一に塗布した。次いで、この塗布フィルムを95℃で乾燥し、先の延伸方向とは90度の方向に延伸倍率1.5倍にて延伸を行い、nx=1.70、ny=1.60、(nx-ny)=0.10、膜厚28μm、リタデーション=2800nmのフィルム上に、屈折率(np)1.56、膜厚100nmのプライマー層を設けた光透過性基材を得た。得られた光透過性基材を用いた以外、参考例1と同様の方法にて、屈折率(nf)1.53の光学機能層を有する光学積層体を得た。得られた光学積層体を用いて、S偏光と光透過性基材の進相軸とのなす角度が30°となるように設置して測定した反射率は4.39%、S偏光と遅相軸とのなす角度が30°となるように設置して測定した反射率は4.45%であり、反射率に差があり、反射防止効果が得られた。明所コントラストにおいても、S偏光と光透過性基材の進相軸とのなす角度が30°となるように設置した光学積層体を設置した液晶モニターを液晶モニターAとし、S偏光と遅相軸とのなす角度が30°となるように設置した液晶モニターを液晶モニターBとして、参考例1と同様にしてニジムラ及び明所コントラストを評価したところ、液晶モニターAのほうが、明所コントラストは優れていたが、リタデーションが3000nm未満であったため、偏光サングラス越しでのニジムラが強く観測された。
なお、参考例11の上記液晶モニターAの光学積層体におけるS偏光と光透過性基材の進相軸とのなす角度をマイナス側に同角度とした液晶モニターを液晶モニターA’とし、参考例11の上記液晶モニターBの光学積層体におけるS偏光と光透過性基材の遅相軸とのなす角度をマイナス側に同角度とした液晶モニターを液晶モニターB’とし、液晶モニターA’及び液晶モニターB’について、反射率及び明所コントラストを評価したところ、参考例11の液晶モニターA及び液晶モニターBと同様の結果であった。
【0130】
(参考例12)
ポリエチレンテレフタレート材料を290℃で溶融して、フィルム形成ダイを通して、シート状に押出し、水冷冷却した回転急冷ドラム上に密着させて冷却し、未延伸フィルムを作製した。この未延伸フィルムを二軸延伸試験装置にて、120℃にて1分間予熱した後、120℃にて、延伸倍率3.8倍に延伸した後、片側にポリエステル樹脂の水分散体28.0質量部と水72.0質量部からなるプライマー層用樹脂組成物を、ロールコーターにて均一に塗布した。次いで、この塗布フィルムを95℃で乾燥し、先の延伸方向とは90度の方向に延伸倍率1.8倍にて延伸を行い、nx=1.66、ny=1.63、(nx-ny)=0.03、膜厚100μm、リタデーション=3500nmのフィルム上に、屈折率(np)1.56、膜厚100nmのプライマー層を設けた光透過性基材を得た。得られた光透過性基材を用いた以外、参考例1と同様の方法にて、屈折率(nf)1.53の光学機能層を有する光学積層体を得た。得られた光学積層体を用いて、S偏光と光透過性基材の進相軸を平行(S偏光と光透過性基材の進相軸との角度を0°)に設置して測定した反射率は、4.41%、S偏光と光透過性基材の遅相軸を平行(S偏光と光透過性基材の遅相軸との角度を0°)に設置して測定した反射率は4.43%であり、反射率に僅かな差があり反射防止効果があった。また、S偏光と光透過性基材の進相軸とのなす角度が0°となるように設置した光学積層体を設置した液晶モニターを液晶モニターAとし、S偏光と遅相軸とのなす角度が0°となるように設置した液晶モニターを液晶モニターBとして、参考例1と同様にしてニジムラ及び明所コントラストを評価したところ、いずれの角度に設置した場合もニジムラは見られなかったが、明所コントラストにおいては、いずれの角度に設置した場合も差が見られず、(nx-ny)=0.03と小さいため、明所コントラストが参考例4、5の光学積層体を用いた液晶モニターと比較すると劣っていた。
【0131】
(参考例13)
nx=1.48026、ny=1.48019、(nx-ny)=0.00007、膜厚80μmであり、面内位相差が5.6nmであるトリアセチルセルロース(TD80ULM 富士フィルム社製)基材上に、参考例1同様の方法にて、屈折率(nf)1.53の光学機能層を設け光学積層体を作製した。
得られた光学積層体を用いて、S偏光と光透過性基材の進相軸を平行(S偏光と光透過性基材の進相軸との角度を0°)に設置して測定した反射率は、4.39%、S偏光と光透過性基材の遅相軸を平行(S偏光と光透過性基材の遅相軸との角度を0°)に設置して測定した反射率も同様に4.39%であり、反射率に差はなかった。上記反射率に差はないが、光透過性基材としてトリアセチルセルロースを用いたので、反射率に問題はない。S偏光と光透過性基材の進相軸とのなす角度が0°となるように設置した光学積層体を設置した液晶モニターを液晶モニターAとし、S偏光と光透過性基材の遅相軸とのなす角度が0°となるように設置して測定した光学積層体を設置した液晶モニターを液晶モニターBとして、参考例1と同様にしてニジムラ及び明所コントラストを評価したところ、いずれの角度に設置した場合も明所コントラストに差はなく、ニジムラも見られなかった。当該参考例13により、従来、液晶表示装置に用いられていた面内に複屈折率を有さない光透過性基材を用いた場合、明所コントラスト及びニジムラの問題が生じず視認性に問題ないことが確認できた。各実施例においては、この参考例13の視認性と同程度に優れた視認性が得られた。
【0132】
(光透過性基材の作製)
(面内に複屈折率を有さない光透過性基材(2)Aの作製)
セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル社製CAP504-0.2)を、塩化メチレンを溶剤として固形分濃度が15%になるように溶解後、ガラス上に流延し、乾燥させ、光透過性基材(2)Aを得た。波長550nmにおけるΔn=0.00002であり、平均屈折率N=1.4838であった。
【0133】
(面内に複屈折を有する光透過性基材(2)aの作製)
光透過性基材(2)Aを、160℃で1.5倍自由端一軸延伸して、面内に複屈折を有する光透過性基材(2)aを作製した。3次元屈折率波長分散を算出した結果、波長550nmにおける屈折率nx=1.4845、ny=1.4835(Δn=0.001)であり、nz=1.4834であった。
【0134】
(面内に複屈折率を有さない光透過性基材(2)Bの作製)
光透過性基材(2)Bとして、シクロオレフィンポリマーよりなる、日本ゼオン社製未延伸ゼオノアを準備した。波長550nmにおけるΔn=0.00004であり、平均屈折率N=1.5177であった。
【0135】
(面内に複屈折を有する光透過性基材(2)bの作製)
光透過性基材(2)Bを、150℃で1.5倍自由端一軸延伸して、面内に複屈折を有する光透過性基材(2)bを作製した。3次元屈折率波長分散を算出した結果、波長550nmにおける屈折率nx=1.5186、ny=1.5172であり、nz=1.5173であった。
【0136】
(面内に複屈折率を有さない光透過性基材(2)Cの作製)
ポリエチレンテレフタレート材料を290℃で溶融して、ガラス上にて、ゆっくりと冷却し、光透過性基材(2)Cを得た。波長550nmにおけるΔn=0.00035であり、平均屈折率N1.6167であった。
【0137】
(面内に複屈折を有する光透過性基材(2)c1の作製)
光透過性基材(2)Cを、120℃で4.0倍固定端一軸延伸して、面内に複屈折を有する光透過性基材(2)c1を作製した。分光光度計を用いて、屈折率波長分散(nx、ny)を計算した。波長550nmにおける屈折率nx=1.701、ny=1.6015であり、nz=1.5476であった。
【0138】
(面内に複屈折を有する光透過性基材(2)c2の作製)
光透過性基材(2)Cを、120℃で2.0倍自由端一軸延伸して、面内に複屈折を有する光透過性基材(2)c2を作製した。分光光度計を用いて、屈折率波長分散(nx、ny)を計算した。波長550nmにおける屈折率nx=1.6511、ny=1.5998であり、nz=1.5992であった。
【0139】
(面内に複屈折を有する光透過性基材(2)c3の作製)
光透過性基材(2)Cを、120℃で二軸延伸の倍率を調整して、面内に複屈折を有する光透過性基材(2)c3を作製した。分光光度計を用いて、屈折率波長分散(nx、ny)を計算した。波長550nmにおける屈折率nx=1.6652、ny=1.6153であり、nz=1.5696であった。
【0140】
(面内に複屈折を有する光透過性基材(2)c4の作製)
光透過性基材(2)Cを、120℃で二軸延伸の倍率を調整して、面内に複屈折を有する光透過性基材(2)c4を作製した。分光光度計を用いて、屈折率波長分散(nx、ny)を計算した。波長550nmにおける屈折率nx=1.6708、ny=1.6189であり、nz=1.5604であった。
【0141】
(面内に複屈折率を有さない光透過性基材(2)Dの作製)
ポリエチレンナフタレート材料を290℃で溶融して、ガラス上にて、ゆっくりと冷却し、光透過性基材(2)Dを得た。波長550nmにおけるΔn=0.0004であり、平均屈折率N=1.6833であった。
【0142】
(面内に複屈折を有する光透過性基材(2)dの作製)
光透過性基材(2)Dを、120℃で4.0倍固定端一軸延伸して、面内に複屈折を有する光透過性基材(2)dを作製した。分光光度計を用いて、屈折率波長分散(nx、ny)を計算した。波長550nmにおける屈折率nx=1.8472、ny=1.6466であり、nz=1.5561であった。
【0143】
(偏光板透過率の計算)
透過率の計算は、2×2行列法や4×4行列法、拡張ジョーンズ行列法を用いて計算できる。実施例、比較例、参考例においては、シミュレーションソフト(LCDMaster、シンテック社製)を用いて、偏光板の透過率を計算した。図5に偏光板の層構成を示す。図5の実施例及び比較例部分に、各光透過性基材(2)の3次元屈折率波長分散を入れて上記計算を行った。面内に複屈折を有さないと判断した光透過性基材(2)は、平均屈折率N=nx=ny=nzとし、面内に複屈折を有すると判断した光透過性基材(2)は、実測値を用いた。各層の膜厚は、実施例、比較例、保護フィルム部分は80μmとし、偏光子(2)部分は20μmとした。
光源のスペクトルは図4に示した通りである。入射する光の偏光状態は、偏光分離フィルム透過後の偏光状態と同じとなるよう、直線偏光とし、偏光子(2)の透過軸方向に振動する光とした。
図6に、用いた保護フィルムの屈折率波長分散を示し、保護フィルムは、等方性材料とした。
図7に、用いた偏光子(2)の屈折率及び消衰係数を示した。なお、図7中、吸収軸方向と透過軸方向とはほぼ重なって示されている。
【0144】
(実施例11)
光透過性基材(2)aの3次元屈折率波長分散を用いて、光透過性基材(2)の進相軸と、偏光子(2)の透過軸とのなす角度が0°となるように設置し、偏光板の透過率を計算した。
【0145】
(実施例12)
光透過性基材(2)aの3次元屈折率波長分散を用いて、光透過性基材(2)の進相軸と、偏光子(2)の透過軸とのなす角度が90°となるように設置し、偏光板の透過率を計算した。
【0146】
(比較例13)
光透過性基材(2)aの3次元屈折率波長分散を用いて、光透過性基材(2)の進相軸と、偏光子(2)の透過軸とのなす角度が45°となるように設置し、偏光板の透過率を計算した。
【0147】
(実施例13)
光透過性基材(2)bの3次元屈折率波長分散を用いて、光透過性基材の進相軸と、偏光子の透過軸とのなす角度が0°となるように設置し、偏光板の透過率を計算した。
【0148】
(実施例14)
光透過性基材bの3次元屈折率波長分散を用いて、光透過性基材の進相軸と、偏光子の透過軸とのなす角度が90°となるように設置し、偏光板の透過率を計算した。
【0149】
(比較例14)
光透過性基材bの3次元屈折率波長分散を用いて、光透過性基材の進相軸と、偏光子の透過軸とのなす角度が45°となるように設置し、偏光板の透過率を計算した。
【0150】
(実施例15)
光透過性基材c1の3次元屈折率波長分散を用いて、光透過性基材の進相軸と、偏光子の透過軸とのなす角度が0°となるように設置し、偏光板の透過率を計算した。
【0151】
(実施例16)
光透過性基材c1の3次元屈折率波長分散を用いて、光透過性基材の進相軸と、偏光子の透過軸とのなす角度が2°となるように設置し、偏光板の透過率を計算した。
【0152】
(実施例17)
光透過性基材c1の3次元屈折率波長分散を用いて、光透過性基材の進相軸と、偏光子の透過軸とのなす角度が30°となるように設置し、偏光板の透過率を計算した。
【0153】
(実施例18)
光透過性基材c1の3次元屈折率波長分散を用いて、光透過性基材の進相軸と、偏光子の透過軸とのなす角度が60°となるように設置し、偏光板の透過率を計算した。
【0154】
(実施例19)
光透過性基材c1の3次元屈折率波長分散を用いて、光透過性基材の進相軸と、偏光子の透過軸とのなす角度が90°となるように設置し、偏光板の透過率を計算した。
【0155】
(実施例15)
光透過性基材c1の3次元屈折率波長分散を用いて、光透過性基材の進相軸と、偏光子の透過軸とのなす角度が45°となるように設置し、偏光板の透過率を計算した。
【0156】
(実施例20)
光透過性基材c2の3次元屈折率波長分散を用いて、光透過性基材の進相軸と、偏光子の透過軸とのなす角度が0°となるように設置し、偏光板の透過率を計算した。
【0157】
(実施例21)
光透過性基材c2の3次元屈折率波長分散を用いて、光透過性基材の進相軸と、偏光子の透過軸とのなす角度が90°となるように設置し、偏光板の透過率を計算した。
【0158】
(比較例16)
光透過性基材c2の3次元屈折率波長分散を用いて、光透過性基材の進相軸と、偏光子の透過軸とのなす角度が45°となるように設置し、偏光板の透過率を計算した。
【0159】
(実施例22)
光透過性基材c3の3次元屈折率波長分散を用いて、光透過性基材の進相軸と、偏光子の透過軸とのなす角度が0°となるように設置し、偏光板の透過率を計算した。
【0160】
(実施例23)
光透過性基材c3の3次元屈折率波長分散を用いて、光透過性基材の進相軸と、偏光子の透過軸とのなす角度が90°となるように設置し、偏光板の透過率を計算した。
【0161】
(比較例17)
光透過性基材c3の3次元屈折率波長分散を用いて、光透過性基材の進相軸と、偏光子の透過軸とのなす角度が45°となるように設置し、偏光板の透過率を計算した。
【0162】
(実施例24)
光透過性基材c4の3次元屈折率波長分散を用いて、光透過性基材の進相軸と、偏光子の透過軸とのなす角度が0°となるように設置し、偏光板の透過率を計算した。
【0163】
(実施例25)
光透過性基材c4の3次元屈折率波長分散を用いて、光透過性基材の進相軸と、偏光子の透過軸とのなす角度が90°となるように設置し、偏光板の透過率を計算した。
【0164】
(比較例18)
光透過性基材c4の3次元屈折率波長分散を用いて、光透過性基材の進相軸と、偏光子の透過軸とのなす角度が45°となるように設置し、偏光板の透過率を計算した。
【0165】
(実施例26)
光透過性基材dの3次元屈折率波長分散を用いて、光透過性基材の進相軸と、偏光子の透過軸とのなす角度が0°となるように設置し、偏光板の透過率を計算した。
【0166】
(実施例27)
光透過性基材dの3次元屈折率波長分散を用いて、光透過性基材の進相軸と、偏光子の透過軸とのなす角度が90°となるように設置し、偏光板の透過率を計算した。
【0167】
(比較例19)
光透過性基材dの3次元屈折率波長分散を用いて、光透過性基材の進相軸と、偏光子の透過軸とのなす角度が45°となるように設置し、偏光板の透過率を計算した。
【0168】
(参考例14)
光透過性基材Aの3次元屈折率波長分散を用いて、偏光板の透過率を計算した。
【0169】
(参考例15)
光透過性基材Bの3次元屈折率波長分散を用いて、偏光板の透過率を計算した。
【0170】
(参考例16)
光透過性基材Cの3次元屈折率波長分散を用いて、偏光板の透過率を計算した。
【0171】
(参考例17)
光透過性基材Dの3次元屈折率波長分散を用いて、偏光板の透過率を計算した。
【0172】
(参考例18)
入射する光の偏光状態をランダム光とした以外は、参考例5同様の方法にて、偏光板の透過率を計算した。
【0173】
(参考例19)
入射する光の偏光状態をランダム光とした以外は、参考例9同様の方法にて、偏光板の透過率を計算した。
【0174】
(参考例20)
入射する光の偏光状態をランダム光とした以外は、比較例3同様の方法にて、偏光板の透過率を計算した。
【0175】
(参考例21)
入射する光の偏光状態をランダム光とした以外は、参考例13同様の方法にて、偏光板の透過率を計算した。
【0176】
実施例11?27、比較例13?19及び参考例14?21に係る各評価結果を表1に示す。
入射する光の偏光状態を直線偏光としたときの透過率は、各材料ごとに、面内に複屈折を有さない場合の透過率を100として、面内に複屈折を有する偏光板の透過率を示している。入射する光の偏光状態をランダム光とした時の透過率も同様に、面内に複屈折を有さない場合の透過率を100として、面内に複屈折を有する偏光板の透過率を示している。
【0177】
【表1】

【0178】
表1に示したように、実施例11、12と比較例13との比較、実施例13、14と比較例14との比較、実施例15?19と比較例15との比較、実施例20、21と比較例16との比較、実施例22、23と比較例17との比較、実施例24、25と比較例18との比較、及び、実施例26、27と比較例19との比較より、光透過性基材(2)の遅相軸と偏光子(2)の透過軸とが所定の角度範囲内にある実施例に係る偏光板は、当該角度範囲を外れる比較例に係る偏光板よりも光透過性に優れていた。
また、実施例11と参考例14との比較、実施例13と参考例15との比較、実施例15、20、22と参考例16との比較、実施例26と参考例17との比較より、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)を用いた実施例に係る偏光板は、面内に複屈折率を有さない光透過性基材(2)を用いた参考例に係る偏光板よりも、光透過性に優れていた。実施例15、19、比較例15、参考例16と、参考例18?21との比較より、偏光された光が入射することにより、光透過性基材(2)の遅相軸と偏光子(2)の透過軸とが所定の角度範囲内にある実施例に係る偏光板は、当該角度範囲を外れる比較例に係る偏光板よりも光透過性に優れていることが確認できた。
【0179】
更に、参考例1?10に係る光学積層体と、実施例11?27に係る偏光板とを適宜組み合わせて偏光板複合体を製造したところ、得られた偏光板複合体は、反射防止性能と明所コントラストとに優れ、更にはニジムラも防止できるとともに、光透過率にも優れるものであることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明の偏光板複合体は、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、タッチパネル、電子ペーパー、タブレットPC等に好適に適用することができる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、
バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、前記画像表示装置の前記バックライト光源側に配置して用いられる偏光板とを有する偏光板複合体を備えた画像表示装置であって、
前記光透過性基材(1)は、ポリエチレンナフタレート基材であり、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、厚みが5μm?500μmであり(ただし、65μm未満である場合を除く)、リタデーションが7000?2万nmであり、
前記光透過性基材(2)は、ポリエステル基材であり、
前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸が、前記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置され、
前記光透過性基材(2)に、偏光された光が入射されるものであり、
前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とは、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層されており、
前記画像表示装置は、前記表示画面に入射する割合の多い左右方向に振動するS偏光に対し、前記光透過性基材(1)の屈折率が小さい方向である進相軸の方向が平行となるように室内に設置されるものである
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、
バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、前記画像表示装置の前記バックライト光源側に配置して用いられる偏光板とを有する偏光板複合体を備えた画像表示装置であって、
前記光透過性基材(1)は、ポリエチレンナフタレート基材であり、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、厚みが5μm?500μmであり(ただし、65μm未満である場合を除く)、リタデーションが7000?2万nmであり、
前記光透過性基材(2)は、ポリエステル基材であり、
前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸が、前記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置され、
前記光透過性基材(2)に、偏光された光が入射されるものであり、
前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とは、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層されており、
前記画像表示装置は、前記表示画面に入射する割合の多い左右方向に振動するS偏光に対し、前記光透過性基材(1)の屈折率が小さい方向である進相軸の方向が平行となるように室内に設置されるものであり、
前記光透過性基材(1)と前記光学機能層との間にプライマー層を有し、
前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材(1)の遅相軸方向の屈折率(nx)及び前記光学機能層の屈折率(nf)よりも大きい場合(np>nx,nf)、又は、
前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材(1)の進相軸方向の屈折率(ny)及び前記光学機能層の屈折率(nf)よりも小さい場合(np<ny,nf)、前記プライマー層の厚みが3?30nmである
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、
バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、前記画像表示装置の前記バックライト光源側に配置して用いられる偏光板とを有する偏光板複合体を備えた画像表示装置であって、
前記光透過性基材(1)は、ポリエチレンナフタレート基材であり、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、厚みが5μm?500μmであり(ただし、65μm未満である場合を除く)、リタデーションが7000?2万nmであり、
前記光透過性基材(2)は、ポリエステル基材であり、
前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸が、前記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置され、
前記光透過性基材(2)に、偏光された光が入射されるものであり、
前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とは、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層されており、
前記画像表示装置は、前記表示画面に入射する割合の多い左右方向に振動するS偏光に対し、前記光透過性基材(1)の屈折率が小さい方向である進相軸の方向が平行となるように室内に設置されるものであり、
前記光透過性基材(1)と前記光学機能層との間にプライマー層を有し、
前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材(1)の遅相軸方向の屈折率(nx)よりも大きく、前記光学機能層の屈折率(nf)よりも小さい場合(nx<np<nf)、又は、
前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材(1)の進相軸方向の屈折率(ny)よりも小さく、前記光学機能層の屈折率(nf)よりも大きい場合(nf<np<ny)、
前記プライマー層の厚みが65?125nmである
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
光透過性基材(1)と光学機能層との間にプライマー層を有し、
前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材(1)の進相軸方向の屈折率(ny)と前記光透過性基材(1)の遅相軸方向の屈折率(nx)との間に存在する(ny<np<nx)請求項1記載の画像表示装置。
【請求項5】
光透過性基材(2)と偏光子(2)とは、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±15°又は90°±15°となるように積層されている請求項1、2、3又は4記載の画像表示装置。
【請求項6】
光透過性基材(2)は、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.01以上である請求項1、2、3、4又は5記載の画像表示装置。
【請求項7】
光透過性基材(2)の屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)と、前記光透過性基材(2)の平均屈折率(N)とが、下記式の関係を有し、かつ、
前記進相軸と偏光子(2)の透過軸とのなす角度が0°±2°である
請求項1、2、3又は4記載の画像表示装置。
nx>N>ny
【請求項8】
バックライト光源として白色発光ダイオードを備えたVAモード又はIPSモードの液晶表示装置である請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の画像表示装置。
【請求項9】
バックライト光源と面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)との間に、偏光分離フィルムを有する請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の画像表示装置。
【請求項10】
面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、
少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、画像表示装置のバックライト光源側に配置して用いられる偏光板とを有する偏光板複合体を備えた画像表示装置の製造方法であって、
前記光透過性基材(1)は、ポリエチレンナフタレート基材であり、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、厚みが5μm?500μmであり(ただし、65μm未満である場合を除く)、リタデーションが7000?2万nmであるものを用い、
前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記画像表示装置の表示画面の上下方向とが平行となるように、前記光学積層体を配置する工程と、
前記光透過性基材(2)は、ポリエステル基材であるものを用い、
前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とを、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層する工程を有し、
前記画像表示装置は、前記表示画面に入射する割合の多い左右方向に振動するS偏光に対し、前記光透過性基材(1)の屈折率が小さい方向である進相軸の方向が平行となるように室内に設置されるものである
ことを特徴とする画像表示装置の製造方法。
【請求項11】
面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、
少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、画像表示装置のバックライト光源側に配置して用いられる偏光板とを有する偏光板複合体を備えた画像表示装置の視認性改善方法であって、
前記光透過性基材(1)は、ポリエチレンナフタレート基材であり、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、厚みが5μm?500μmであり(ただし、65μm未満である場合を除く)、リタデーションが7000?2万nmであるものを用い、
前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記画像表示装置の表示画面の上下方向とが平行となるように、前記光学積層体を配置するとともに、
前記光透過性基材(2)は、ポリエステル基材であるものを用い、
前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とを、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層し、
前記画像表示装置は、前記表示画面に入射する割合の多い左右方向に振動するS偏光に対し、前記光透過性基材(1)の屈折率が小さい方向である進相軸の方向が平行となるように室内に設置されるものである
ことを特徴とする画像表示装置の視認性改善方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-04-30 
出願番号 特願2017-251479(P2017-251479)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小西 隆  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 河原 正
関根 洋之
登録日 2020-01-14 
登録番号 特許第6645491号(P6645491)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 画像表示装置、画像表示装置の製造方法及び画像表示装置の視認性改善方法  
代理人 特許業務法人安富国際特許事務所  
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