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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1377057
審判番号 不服2020-12662  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-09 
確定日 2021-08-12 
事件の表示 特願2018-166939「ゲームプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月13日出願公開、特開2018-196775〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年1月30日を国際出願日(以下「基準日」という。)とする特願2014-559419号の一部を、平成30年9月6日に新たな特許出願としたものであって、令和1年9月2日付けで拒絶理由が通知され、令和2年1月9日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年5月18日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年9月9日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1?9に係る発明は、令和2年1月9日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものであって、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
タッチパネル式の表示装置を備えるコンピュータ装置において実行されるゲームプログラムであって、
コンピュータ装置を、
タッチパネルを介してプレイヤが入力すべき接触操作を示す指示標識を表示画面に表示する指示標識表示手段と、
表示された指示標識それぞれにより特定される接触操作を判定するための判定時間においてプレイヤにより入力された接触操作について、該指示標識に対応する接触操作であるかを判定する判定手段
として機能させるものであり、
複数種類の指示標識が設けられており、
指示標識に対応する接触操作が、タッチパネルの定位置で所定の時間の接触を行った後に、接触位置について所定の方向へ所定の距離を移動させるものであり、
指示標識に対応する接触操作における所定の距離が、指示標識の種類に応じて異なるものである、ゲームプログラム。」


第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、次に概略を記した理由を含むものである。
本願の請求項1?8に係る発明は、下記引用文献2に、下記引用文献1を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.特開2010-233958号公報
2.「シアトリズム ファイナルファンタジー ニンテンドー3DSソフト 取扱説明書」,日本,SQUARE ENIX,2012年 2月17日,p.8-11,22-26,独立行政法人「工業所有権情報・研修館」受入


第4 引用例に記載された事項及び引用発明について
1 引用例1
(1)引用例1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用文献2として引用され、本願の基準日前に頒布された引用例1(「シアトリズム ファイナルファンタジー ニンテンドー3DSソフト 取扱説明書」)には、次の事項が記載されている。(下線は審決で付した。以下同じ。)
ア 「How To Play
基本的な遊びかた」(10頁大見出し)
イ 「基本的な遊びかた」(10頁上段中見出し)
ウ 「楽曲にあわせて表示される「トリガー」が「ジャストサークル」にぴったり重なったタイミングで下画面を操作して、楽曲を奏でていきます。
トリガーの種類は右ページ、ミュージックステージごとの画面や詳しい遊びかたは、P.22?P.25を参照してください。」(10頁上段中見出し下)
エ 「評価」(10頁中段小見出し)
オ 「下画面を操作したタイミングでトリガーごとに評価が決まります。タイミングがぴったりあっていると「CRITICAL」となり、タイミングが早かったり遅かったりすると評価が下がっていきます。タイミングが大きくずれたり、タイミングがあっていても操作を間違ったときは「BAD」、まったく操作できなかったときは「MISS」となります。」(10頁中段小見出し下)
カ 「

」10頁中段右)
キ 「トリガーの種類」(11頁上段中見出し)
ク 「トリガーは、操作の種類ごとに色分けされています。」(11頁上段中見出し下)
ケ 「タッチトリガー:タッチ操作」(11頁上段小見出し)
コ 「

下画面をタッチするトリガーです。」(11頁上段小見出し下)
サ 「スライドトリガー:スライド操作」(11頁中段小見出し)
シ 「

下画面を矢印の方向にスライドするトリガーです。タッチペンを弾くように跳ね上げてしまうとタッチと判定されるので、しっかりスライドさせましょう。」(11頁中段小見出し下)
ス 「ホールドトリガー:ホールド(タッチし続ける)操作」(11頁下段小見出し)
セ 「

始めのトリガーで下画面をタッチして、終わりのトリガーまでタッチし続けるトリガーです。終わりのトリガーにスライドトリガーと同じ矢印が表示されているときは、タッチペンを離すときに矢印の方向にスライドしてください」(11頁下段小見出し下)
ソ 「

」(11頁右段)
タ 「FMS(フィールドミュージックステージ)」(23頁上段中見出し)
チ 「FMSは、フィールドでの移動をモチーフにしたステージです。」(23頁上段中見出し下)
ツ 「

」(23頁上段中見出し下)
テ 「遊びかた」(23頁中段小見出し)
ト 「フィールドの左からトリガーが流れてきます。ジャストサークルにぴったり重なったタイミングでトリガーにあわせた操作を行ってください。トリガーの位置にかかわらず、下画面のどこで操作しても構いません。ただし、ホールドトリガーは、ホールド中にタッチペンを上下に動かして、緑色のラインをなぞる必要があります。ステージ中に特殊な色のトリガーが登場するフィーチャーゾーンで入力に成功すると、チョコボに乗って速く遠くまで移動することができます。遠くまで移動するほど、アイテムの入手確率がアップします。」(23頁小見出し下)
ナ 「

」(23頁小見出し右)
ニ 上記ウ、カ、ツ、ト及びナより、上画面には、楽曲にあわせて画面の左から右へ「トリガー」が移動するように表示され、「ジャストサークル」は同上画面の右寄りの位置に表示されるものと認める。
ヌ 上記ウ?オより、ユーザは、下画面上でタッチペンをタッチ及びスライド操作し、「トリガー」が「ジャストサークル」に重なったタイミングと操作のタイミングがあっているか否か、及び「トリガー」の種類に対応した操作(タッチ及びスライド操作)であるか否かが評価されるものと認める。
ネ 上記エ?ソより、「トリガー」には、下画面をタッチする操作が評価される「タッチトリガー」、下画面を矢印の方向にスライドする操作が評価される「スライドトリガー」、及び始めのトリガーで下画面をタッチして、ホールド中にトリガーの上下方向の位置に応じてタッチペンを上下に動かして、終わりのトリガーまでタッチし続ける操作が評価される「ホールドトリガー」があると認められる。
ノ 上記ス及びセより、「ホールドトリガーの終わりのトリガーに矢印が表示されているトリガー」に対しては、始めのトリガーで下画面をタッチして、終わりのトリガーまでタッチし続ける、タッチペンを離すときに矢印の方向にスライドする操作を行うものと認める。
ハ 引用例1のタイトルからして、引用例1は、ニンテンドー3DSにおいて実行されるゲームソフト「シアトリズム ファイナルファンタジー」に係る発明が記載されているものと認められ、該ゲームソフトは、ニンテンドー3DSに上記ネ及びノの操作を実現させるものと認める。

(2)引用例1に記載された発明
上記ア?ハから、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「ニンテンドー3DSにおいて実行されるゲームソフト「シアトリズム ファイナルファンタジー」であって、
上画面には、楽曲にあわせて画面の左から右へ「トリガー」が移動するように表示され、同上画面の右寄りの位置には、「ジャストサークル」が表示され、
ユーザは、下画面上でタッチペンをタッチ及びスライド操作し、「トリガー」が「ジャストサークル」に重なったタイミングと操作のタイミングが早かったり遅かったりしているか否か、及び「トリガー」の種類に対応した操作(タッチ及びスライド操作)であるか否かが評価され、
「トリガー」には、下画面をタッチする操作が評価される「タッチトリガー」、下画面を矢印の方向にスライドする操作が評価される「スライドトリガー」、及び始めのトリガーで下画面をタッチして、ホールド中にトリガーの上下方向の位置に応じてタッチペンを上下に動かして、終わりのトリガーまでタッチし続ける操作が評価される「ホールドトリガー」があり、さらに、
「ホールドトリガーの終わりのトリガーに矢印が表示されているトリガー」に対しては、始めのトリガーで下画面をタッチして、終わりのトリガーまでタッチし続ける、タッチペンを離すときに矢印の方向にスライドする操作を行うものである、
ニンテンドー3DSにおいて実行されるゲームソフト「シアトリズム ファイナルファンタジー」。」

2 引用例2
(1)引用例2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用した本願の基準日前に出願公開された引用例2(特開2010-233958号公報)には、次の事項及び図面が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータに所定のゲームを実行させるためのプログラム等に関する。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は接触操作を利用した新しい感覚のゲームを実現することである。」
ウ 「【0038】
[ゲーム装置の構成]
図1は、携帯型ゲーム装置の構成例を説明するための外観図である。本実施形態における携帯型ゲーム装置1400は、プレーヤがゲーム操作を入力するための方向入力キー1402及びボタンスイッチ1404と、第1液晶ディスプレイ1406と、第2液晶ディスプレイ1408と、スピーカ1410と、制御ユニット1450とを、ヒンジ1414で開閉自在なフリップフロップ型の装置本体1401に備えている。そして、第1液晶ディスプレイ1406及び第2液晶ディスプレイ1408の表面には、スタイラスペン1416などで触れることによって表示画面の任意位置を接触入力することのできるタッチパネル1407、1409がそれぞれ装着されている。
【0039】
また、装置本体1401には、コンピュータ読み出し可能な情報記憶媒体であるメモリカード1440にデータを読み書きできるメモリカード読取装置1418が備えられている。メモリカード1440には、携帯型ゲーム装置1400の制御ユニット1450がゲームプレイに係る各種演算処理を実行するために必要なプログラムや各種設定データが記憶されている。またその他、装置本体1401には図示されていない内臓バッテリーや電源ボタン、音量調節ボタン等が設けられている。」
エ 「【0043】
そして制御ユニット1450は、メモリカード読取装置1418によってメモリカード1440に格納されているプログラムやデータを読み出して、搭載するICメモリにこれらを一時記憶する。そして、読み出したプログラムを実行して演算処理を実行し、方向入力キー1402やボタンスイッチ1404、タッチパネル1407及び1409からの操作入力に応じて携帯型ゲーム装置1400の各部を制御して、音楽ゲームを実行する。

【0045】
[ゲーム及び操作入力方法の概要]
図2は、本実施形態におけるゲーム画面例と基本的な操作入力例を示す図である。本実施形態の音楽ゲームでは、スピーカ1410から音楽が放音されるとともに、第2液晶ディスプレイ1408にゲーム画面W2が表示される。
【0046】
ゲーム画面W2の上部領域には、公知の音楽ゲームの操作ガイドと同様にして、音楽のテンポに応じた時間間隔で操作ガイド4が画面右端から左方向へ流れるように表示される。プレーヤは、操作ガイド4が入力タイミング枠6に入ったタイミングで、当該操作ガイド4の示す種類の操作入力をタッチパネル1409に入力する。本実施形態では、タッチパネル1409の面にタッチして素早くスライドさせてタッチを解除する操作、換言するとタッチ面を払うようにして操作する「フリック操作」による方向入力を操作入力の基本とする。」
オ 「【0050】
図4は、本実施形態における操作ガイドの設定例を示す図である。本実施形態で表示される操作ガイド4は、上下左右の4方向のうちの何れかを向いた標準操作ガイド4a及びショート操作ガイド4bが設定されている。標準操作ガイド4aとショート操作ガイド4bとでは、操作入力時に入力適合と判定される基準長Lm,Lsが異なっている。前者は後者より長く設定されている。
【0051】
そして、標準操作ガイド4aとショート操作ガイド4bそれぞれの入力適合判定範囲が、操作入力する利手と逆利手の別に設定されている。本実施形態では、逆利手の場合には入力適合と判定されやすいように判定範囲が利手の場合よりも広く設定されているが、その反対に、逆利手の判定範囲の方が利手の場合より狭くなる設定としても良い。」
カ 「【0056】
図7は、本実施形態によるゲーム画面の変化の例を示す図であって、連続2回の入力適合の場合の例を示している。
ゲーム画面W4では、入力タイミング枠6に入っている操作ガイド4は下方向を示している。プレーヤは、スタイラスペン1416等でタッチパネル1409に触れて下方向へのフリック操作を入力する。制御ユニット1450は、フリック操作の方向を判定するとともにその操作量(この場合スライド量)を算出し、入力タイミング枠6に入っている操作ガイド4に対する操作入力としての適否を判定する。
【0057】
入力タイミング枠6に入っている操作ガイド4の示す方向と操作入力方向が合致し、且つ当該操作ガイド4(この場合標準操作ガイド4a)の基準長Lmを中心とした入力適合判定範囲に操作量が入っていれば適合判定される。すると、ゲーム画面W6に示すように、制御ユニット1450はスクリーン10に対して背景レイヤー14を操作入力方向へ1単位分だけスクロールさせる。すると、ゲーム画面W4のイメージ画像(PICT023)の次順のイメージ画像(PICT024)が現れる。また、本実施形態では正しい操作入力をするとゲームのポイントが加算される。
【0058】
次いでゲーム画面W8に示すように、次の操作ガイド4が入力タイミング枠6に入るとプレーヤは次の操作入力をする。ここでは、左方向を指したショート操作ガイドが入力タイミング枠6に入っている。プレーヤが、左方向へフリック操作し、操作量が基準量Lsを中心とした入力適合判定範囲に入っていれば入力適合となり適合判定される。すると、ゲーム画面W10に示すように、制御ユニット1450はスクリーン10に対して背景画像20を操作入力方向へ1単位分だけスクロールさせる。すると、ゲーム画面W8のイメージ画像(PICT024)の次順のイメージ画像(PICT025)が現れる。
【0059】
このように、操作ガイド4に従って正しい操作入力を繰り返すと、次から次へと適順にイメージ画像が画面に表示されるので、プレーヤは音楽を聴きながら画面をはじくようにしてパラパラアニメ風の映像を楽しむことができる。」
キ 「【図2】


ク 「【図4】


ケ 「【図7】


コ 上記キ「【図2】」及びケ「【図7】」より、入力タイミング枠は、ゲーム画面の上部領域の中央部に表示されるものと認める。
サ 上記エより、音楽ゲームは、入力タイミング枠に入っている操作ガイドが示す操作入力に対するプレイヤの操作入力の適否が判定されるものであって、操作ガイドが示す操作入力の種類には、上下左右の4方向のうちの何れかの方向と、操作入力の長さを判定する長さが長い標準の基準長とショートの基準長が設定されているものと認める。

(2)引用例2に記載された発明
上記ア?サから、引用例2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「スタイラスペンによるタッチパネルへの操作入力に応じて携帯型ゲーム装置の各部を制御して、音楽ゲームを実行するプログラムであって、
ゲーム画面の上部領域には、中央部に入力タイミング枠が表示され、音楽のテンポに応じた時間間隔で操作ガイドが画面右端から左方向へ流れるように表示され、
プレーヤは、操作ガイドが入力タイミング枠に入ったタイミングで、当該操作ガイドの示す種類の操作入力をタッチパネルに入力し、入力タイミング枠に入っている操作ガイドが示す操作入力に対するプレイヤの操作入力の適否が判定されるものであって、
操作ガイドが示す操作入力の種類には、上下左右の4方向のうちの何れかの方向と、操作入力の長さを判定する長さが長い標準の基準長とショートの基準長が設定されているものである、
音楽ゲームを実行するプログラム。」


第5 当審の判断
1 本願発明と引用発明1との対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
(1)後者の「下画面」、「ニンテンドー3DS」、「ゲームソフト「シアトリズム ファイナルファンタジー」」、「ユーザ」、「タッチ及びスライド操作」、「トリガー」、「上画面」は、それぞれ、前者の「タッチパネル式の表示装置」、「コンピュータ装置」、「ゲームプログラム」、「プレイヤ」、「接触操作」、「接触操作を示す指示標識」、「表示画面」に相当する。
(2)後者の「ニンテンドー3DS」の「上画面」には、楽曲にあわせて画面の左から右へ「トリガー」が移動するように表示されるのであるから、後者の「ニンテンドー3DS」は、「指示標識を表示画面に表示する指示標識表示手段」を有し、後者のゲームソフト「シアトリズム ファイナルファンタジー」は、「ニンテンドー3DS」を、「指示標識を表示画面に表示する指示標識表示手段」として機能させるものといえる。
(3)後者の「ニンテンドー3DS」において実行されるゲームソフト「シアトリズム ファイナルファンタジー」は、「トリガー」が「ジャストサークル」に重なったタイミングと操作のタイミングが早かったり遅かったりしているか否かが評価されるところからすれば、後者の「「トリガー」が「ジャストサークル」に重なったタイミング」とは、「トリガー」が「ジャストサークル」に重なった瞬間のみならず、その重なった瞬間の前後を含めた所定時間幅を持った期間であって、「「トリガー」が「ジャストサークル」に重なったタイミングと操作のタイミングが早かったり遅かったりしているか否か、及び「トリガー」の種類に対応した操作(タッチ及びスライド操作)であるか否かが評価」されるのであるから、後者の「ユーザは、下画面上でタッチペンをタッチ及びスライド操作し、「トリガー」が「ジャストサークル」に重なったタイミングと操作のタイミングが早かったり遅かったりしているか否か、及び「トリガー」の種類に対応した操作(タッチ及びスライド操作)であるか否かが評価」することは、前者の「表示された指示標識それぞれにより特定される接触操作を判定するための判定時間においてプレイヤにより入力された接触操作について、該指示標識に対応する接触操作であるかを判定する」ことに相当する。
そして、後者のゲームソフト「シアトリズム ファイナルファンタジー」は、「トリガー」が「ジャストサークル」に重なったタイミングと操作のタイミングがあっているか否か、及び「トリガー」の種類に対応した操作(タッチ及びスライド操作)であるか否かを評価するものであるから、後者のゲームソフト「シアトリズム ファイナルファンタジー」は、ニンテンドー3DSを「表示された指示標識それぞれにより特定される接触操作を判定するための判定時間においてプレイヤにより入力された接触操作について、該指示標識に対応する接触操作であるかを判定する判定手段」として機能させるものといえる。
(4)後者の「トリガー」には、下画面をタッチする操作が評価される「タッチトリガー」、下画面を矢印の方向にスライドする操作が評価される「スライドトリガー」、及び始めのトリガーで下画面をタッチして、ホールド中にトリガーの上下方向の位置に応じてタッチペンを上下に動かして、終わりのトリガーまでタッチし続ける操作が評価される「ホールドトリガー」があるから、前者の「指示標識」と後者の「トリガー」とは、複数種類のものが設けられているとの概念で一致する。
(5)後者の「ホールドトリガーの終わりのトリガーに矢印が表示されているトリガー」に対応した操作は、始めのトリガーで下画面をタッチして、ホールド中にトリガーの上下方向の位置に応じてタッチペンを上下に動かして、終わりのトリガーまでタッチし続ける、タッチペンを離すときに矢印の方向にスライドする操作を行うものであることから、前者の「指示標識に対応する接触操作」と後者の「ホールドトリガーの終わりのトリガーに矢印が表示されているトリガー」に対する「操作」とは、「指示標識に対応する接触操作が、タッチパネル」「で所定の時間の接触を行った後に、接触位置について所定の方向へ所定の距離を移動させるもの」に限り一致する。

したがって、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
[一致点]
「タッチパネル式の表示装置を備えるコンピュータ装置において実行されるゲームプログラムであって、
コンピュータ装置を、
タッチパネルを介してプレイヤが入力すべき接触操作を示す指示標識を表示画面に表示する指示標識表示手段と、
表示された指示標識それぞれにより特定される接触操作を判定するための判定時間においてプレイヤにより入力された接触操作について、該指示標識に対応する接触操作であるかを判定する判定手段
として機能させるものであり、
複数種類の指示標識が設けられており、
指示標識に対応する接触操作が、タッチパネルで所定の時間の接触を行った後に、接触位置について所定の方向へ所定の距離を移動させるものである、ゲームプログラム。」

[相違点1]
本願発明が、指示標識に対応する接触操作が、タッチパネルの「定位置」で所定の時間の接触を行うものであるのに対し、引用発明1は、ホールド中にトリガーの上下方向の位置に応じてタッチペンを上下に動かすものである点。

[相違点2]
本願発明が、接触操作における所定の距離が、「指示標識の種類に応じて異なる」ものであるのに対し、引用発明1は、スライドする操作におけるスライドの長さとして、長さの異なるスライドが設定されているのか否か定かでない点。

2 判断
(1)[相違点1]について
引用発明1の「ホールドトリガー」は、画面の左から右へ移動し、上下方向の位置も動く「トリガー」であって、そのような「ホールドトリガー」に対応する操作は、始めのトリガーで下画面をタッチして、ホールド中にトリガーの上下方向の位置に応じてタッチペンを上下に動かして、終わりのトリガーまでタッチし続ける操作であるところ、音楽ゲームにおいて、上下方向に動かない指示標識に対して、タッチパネルの「定位置」での接触操作を評価するゲームプログラムは、当該技術分野において従来より周知の技術手段であるから(例えば、特開2011-212169号公報(特に、【0039】?【0041】参照。)、特開2012-53640号公報(特に、【0055】?【0059】参照。)、特開2012-213512号公報(特に、【0032】、【0033】参照。)、引用発明1の「ホールドトリガー」を、画面の左から右へ移動するだけの、上下方向の位置が動かない「トリガー」とし、タッチペンを上下に動かさずに、タッチし続ける操作を行うようにし、上記相違点1に係る「「定位置」で所定時間の接触を行う操作とすることは、当業者にとって、容易になし得るものである。

(2)[相違点2]について
引用発明2の「操作ガイド」は、入力の長さを判定する長さが長い標準の基準長とショートの基準長が設定されているものであるから、上記相違点に係る本願発明の構成は引用発明2に示されている。
そして、引用発明1も、引用発明2も、表示装置上に表示される指示標識にあわせて所定の操作を行うことで、ゲームを進行させるゲームプログラムである点で共通し、プレイヤが行う操作として、複数種類の操作を設定していることからして、ゲームの趣向性を高めようとしていることは明らかであり、引用発明1の「トリガー」には、下画面をタッチする操作が評価される「タッチトリガー」と下画面をタッチして、ホールド中にトリガーの上下方向の位置に応じてタッチペンを上下に動かして、終わりのトリガーまでタッチし続ける操作が評価される「ホールドトリガー」という、タッチする時間が異なる「トリガー」が設定されていることからすれば、引用発明1の「ホールドトリガーの終わりのトリガーに矢印が表示されているトリガー」の「終わりのトリガー」に、引用発明2のような「操作入力の長さを判定する長さが長い標準の基準長」のものと「ショートの基準長」のものとを設定することにより、上記相違点の指示標識に対応する接触操作における所定の距離が、「指示標識の種類に応じて異なる」ようにすることは、当業者が容易になし得るものである。

審判請求人は、引用文献2において、ホールドトリガーの終わりのトリガーについて、スライド操作量が異なる2種類のトリガーを採用する、動機付けがない、旨主張する。
しかし、上記判断のとおり、引用例1(引用文献2)も、引用例2(引用文献1)と同様に、表示装置上に表示される指示標識にあわせて所定の操作を行うことで、ゲームを進行させるゲームプログラムにおいて、趣向性を高めようとしていることは明らかであるところ、引用発明1の「ホールドトリガーの終わりのトリガーに矢印が表示されているトリガー」の「終わりのトリガー」に、引用発明2のような「操作入力の長さを判定する長さが長い標準の基準長」のものと「ショートの基準長」のものとを設定することで、趣向性が向上することは当業者にとって自明であるから、引用例1(引用文献2)に、引用例2(引用文献1)を組み合わせる動機付けは、あるものといえる。

そして、本願発明によって奏される効果も、引用発明1及び引用発明2から当業者が予測し得る範囲内のものといえる。

以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用発明2から当業者が容易に発明できるものであるから、本願発明は,特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。


第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-06-01 
結審通知日 2021-06-08 
審決日 2021-06-22 
出願番号 特願2018-166939(P2018-166939)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 奈良田 新一  
特許庁審判長 藤田 年彦
特許庁審判官 藤本 義仁
清水 康司
発明の名称 ゲームプログラム  
代理人 特許業務法人ライトハウス国際特許事務所  

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