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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L
管理番号 1377240
審判番号 不服2020-4061  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-26 
確定日 2021-09-09 
事件の表示 特願2016-558574「ネットワーク障害のトラブルシューティング・オプションの識別」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 1日国際公開、WO2015/148234、平成29年 3月30日国内公表、特表2017-509262、請求項の数(21)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)3月19日(パリ条約による優先権主張 外国受理庁2014年3月24日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 3月 7日 手続補正書の提出
平成31年 3月15日付け 拒絶理由通知書
令和 元年 6月18日 意見書、手続補正書の提出
令和 元年11月29日付け 拒絶査定
令和 2年 3月26日 審判請求書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和元年11月29日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の請求項1ないし21に係る発明は、その優先権主張日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先権主張日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2006-85538号公報
2.特開平8-288944号公報

第3 本願発明
本願の請求項1ないし21に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明21」という。」は、令和2年3月26日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
データ・センター内のデバイスによって生成されたアラームを受信するステップであって、前記アラームは、前記データ・センターにおけるネットワーク障害を示す障害状況を含む、ステップと、
前記アラームの受信に応答して且つ前記アラームに基づいて、前記ネットワーク障害を引き起こした障害デバイスであって、前記アラームを生成した前記デバイスとネットワーク・リンクにより通信するように結合された前記データ・センター内の別のデバイスである障害デバイスを識別するステップと、
前記障害デバイスの識別に応答して、データ・リポジトリに保持される履歴データにおいて、前記アラームの前記障害状況を前記ネットワーク障害の障害症状にマッピングするステップであって、前記履歴データは、前記障害症状と、前記ネットワーク障害を軽減するために前記データ・センター内の前記障害デバイスに関して以前にとられた複数のトラブルシューティング・オプションとを含む、ステップと、
前記障害デバイスの履歴障害頻度を示すデータを前記障害デバイスの識別に応答して出力するステップであって、前記障害デバイスの前記履歴障害頻度は、前記履歴データ内のデバイス障害履歴テーブルに含まれる、ステップと、
前記障害デバイスの識別に応答して、前記複数のトラブルシューティング・オプションを識別するステップと、
前記複数のトラブルシューティング・オプションにラベルを割り当てるステップであって、前記ラベルは、前記複数のトラブルシューティング・オプションが前記障害デバイスに関してとられたときに前記障害症状を軽減するであろう確率を示す、ステップと、
前記複数のトラブルシューティング・オプションと、それらのラベルとを出力するステップと
を含む、少なくとも1つのプロセッサが実行する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
フィードバックをオペレータから受信するステップであって、前記フィードバックは、前記障害症状が軽減され、前記複数のトラブルシューティング・オプションのうちの第1のトラブルシューティング・オプションが前記障害症状を軽減するために用いられたというものである、ステップと、
前記履歴データを前記フィードバックに基づき更新するステップと
を更に含む方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記デバイス障害履歴テーブルは、前記障害デバイスが以前に呈した複数の障害症状を更に含み、マッピングされた前記障害症状は前記障害デバイスが以前に呈した前記複数の障害症状に含まれ、前記デバイス障害履歴テーブルは、前記障害デバイスが以前に呈した前記複数の障害症状のための複数のトラブルシューティング・オプションを更に含む、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記履歴データは、前記障害デバイスと同じプラットフォームにある第2のデバイスについての第2のデバイス障害履歴テーブルを含み、前記第2のデバイス障害履歴テーブルは、前記第2のデバイスが以前に呈した複数の障害症状を含み、マッピングされた前記障害症状は、前記第2のデバイスが以前に呈した前記複数の障害症状に含まれる、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記履歴データはリンク障害履歴テーブルを更に含み、前記リンク障害履歴テーブルは、前記データ・センターにおけるリンクの履歴障害に関するデータを含み、前記リンク障害履歴テーブルは、前記障害症状を含む、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、
前記複数のトラブルシューティング・オプションからの1つのトラブルシューティング・オプションの選択を受信するステップと、
前記1つのトラブルシューティング・オプションの前記選択を受信することに応答して、デバッギング・ステップを表示するステップであって、前記デバッギング・ステップは、前記ネットワーク障害を解決するための命令を含む、ステップと
を更に含む方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、
前記複数のトラブルシューティング・オプションと、それらのラベルとを出力することに応答して、前記データ・センター内のデバイスに信号を送信するステップであって、前記信号は、前記データ・センター内の前記デバイスに、前記複数のトラブルシューティング・オプションのうちの1つのトラブルシューティング・オプションを、オペレータの介在なく実行させる、ステップ
を更に含む方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、
前記アラームを受信するのに応答して、前記アラームを、前記ネットワーク障害を表す第2のアラームと相関させるステップと、
前記アラームの前記障害状況を、前記履歴データにおける前記障害症状に、前記アラームを前記第2のアラームと相関させるのに応答してマッピングするステップと
を更に含む方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記アラームを前記第2のアラームと相関させるステップは、前記アラームが生成されたときと前記第2のアラームが生成されたときとの間の時間と、前記アラーム及び前記第2のアラームをそれぞれ生成させたデバイスと、前記アラーム及び前記第2のアラームをそれぞれ生成させたデバイスのタイプと、前記アラーム及び前記第2のアラームをそれぞれ生成させたデバイス間のホップ数とのうちの少なくとも1つに基づく、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、前記確率のそれぞれを、前記複数のトラブルシューティング・オプションのそれぞれについての、当該トラブルシューティング・オプションがとられたと前記履歴データにおいて示された回数と、当該トラブルシューティング・オプションが前記ネットワーク障害を成功裏に解決したと示された回数とに基づいて計算するステップを更に含む方法。
【請求項11】
データ・センターにおけるネットワーク障害の解決を手助けする解決システムであって、該解決システムは、
少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサにより実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに動作を行わせる命令を記憶したメモリと
を備え、前記動作は、
前記データ・センター内のデバイスによって生成されたアラームを受信するステップであって、前記アラームは、前記データ・センターにおけるネットワーク障害を示す、ステップと、
前記アラームの受信に応答して、前記ネットワーク障害の障害症状を、受信した前記アラームにおける障害状況に基づき識別するステップと、
前記ネットワーク障害を引き起こした障害デバイスを識別するステップであって、前記障害デバイスは、前記アラームに基づき識別され、前記アラームを生成した前記デバイスとネットワーク・リンクにより通信するように結合された前記データ・センター内の別のデバイスである、ステップと、
前記障害デバイスの履歴障害頻度を示すデータを、前記障害デバイスの識別に応答して出力するステップと、
前記ネットワーク障害を解決するための複数のトラブルシューティング・オプションを、前記障害症状に基づき出力するステップであって、前記複数のトラブルシューティング・オプションはそれらに割り当てられたラベルを有し、前記ラベルは前記複数のトラブルシューティング・オプションが、前記データ・センターのオペレータによって実行された時に、前記ネットワーク障害を解決するであろう確実性を示す、ステップと
を含む、解決システム。
【請求項12】
請求項11に記載の解決システムであって、前記動作は、前記ラベルを、前記複数のトラブルシューティング・オプションに関するオペレータのフィードバックに基づき求めるステップを更に含み、前記オペレータのフィードバックは、前記複数のトラブルシューティング・オプションが前記ネットワーク障害を以前に解決したかどうかを示す、解決システム。
【請求項13】
請求項11に記載の解決システムであって、前記解決システムは履歴データを含むデータ・ストアを更に含み、前記履歴データは、ネットワーク・デバイスについての障害履歴テーブルを含み、前記障害履歴テーブルは、前記ネットワーク・デバイスが呈した前記障害症状を含み、前記障害履歴テーブルにおける前記障害症状は、前記アラームの前記障害状況にマッピングされた、解決システム。
【請求項14】
請求項13に記載の解決システムであって、前記動作は、
フィードバックを前記オペレータから受信するステップであって、前記フィードバックは、前記オペレータが前記ネットワーク障害を、あるトラブルシューティング・オプションを用いて成功裏に解決したかどうかを示す、ステップと、
前記障害履歴テーブルを、前記フィードバックに基づき更新するステップと
を更に含む、解決システム。
【請求項15】
請求項11に記載の解決システムであって、前記アラームはネットワーク・インフラストラクチャ・デバイスが生成させ、該ネットワーク・インフラストラクチャ・デバイスは、スイッチと、ルータと、リルータと、ゲートウェイと、ハブと、ブリッジとのうちの1つである、解決システム。
【請求項16】
請求項11に記載の解決システムであって、前記動作は、前記複数のトラブルシューティング・オプションのうちの1つのトラブルシューティング・オプションに対応するデバッギング・ステップを出力するステップを更に含み、前記デバッギング・ステップは、前記オペレータに前記ネットワーク障害を解決するための命令を提供する、解決システム。
【請求項17】
請求項11に記載の解決システムであって、前記動作は、前記障害デバイスの、前記データ・センター内の他のデバイスの履歴障害頻度に対する履歴障害頻度を示すデータを、前記障害デバイスが識別されるのに応答して出力するステップを更に含む、解決システム。
【請求項18】
プロセッサに動作を行わせるプログラムであって、前記動作は、
アラームを受信するステップであって、前記アラームは、データ・センターにおけるネットワーク障害を示す障害状況を含む、ステップと、
前記アラームを受信するのに応答して、前記ネットワーク障害を引き起こした障害デバイスを識別するステップであって、前記障害デバイスは、前記障害状況に基づき識別され、前記アラームを生成した前記デバイスとネットワーク・リンクにより通信するように結合された前記データ・センター内の別のデバイスである、ステップと、
前記障害デバイスの履歴障害頻度を示すデータを、前記障害デバイスが識別されるのに応答して出力するステップと、
前記障害デバイスを識別するのに応答して、前記アラームの前記障害状況を障害履歴テーブルの障害症状にマッピングするステップであって、前記障害履歴テーブルは、前記障害デバイスが以前に呈した前記障害症状を示し、前記障害履歴テーブルは、前記障害症状を軽減するために以前用いられた複数のトラブルシューティング・オプションを含む、ステップと、
前記複数のトラブルシューティング・オプションを、前記障害状況を前記障害症状にマッピングするのに応答して読み出すステップと、
前記複数のトラブルシューティング・オプションと。前記複数のトラブルシューティング・オプションについてのラベルとを出力するステップであって、前記ラベルは、前記複数のトラブルシューティング・オプションが、オペレータによって用いられたときに前記障害症状を軽減するであろう確実性を示す、ステップと
を含む、プログラム。
【請求項19】
請求項18に記載のプログラムであって、前記動作は、
フィードバックを前記オペレータから受信するステップであって、前記フィードバックは、前記障害症状が軽減され、前記複数のトラブルシューティング・オプションのうちの第1のトラブルシューティング・オプションが前記障害症状を軽減するために用いられたというものである、ステップと、
前記障害履歴テーブルを前記フィードバックに基づき更新するステップと
を更に含むプログラム。
【請求項20】
請求項18に記載のプログラムであって、前記動作は、前記ラベルを、前記複数のトラブルシューティング・オプションに関するオペレータのフィードバックに基づき求めるステップを更に含み、前記オペレータのフィードバックは、前記複数のトラブルシューティング・オプションが前記ネットワーク障害を以前解決したかどうかを示す、プログラム。
【請求項21】
請求項18?20のうちの何れか一項に記載のプログラムを記憶したコンピュータ可読記憶媒体。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、復旧支援方法及びシステムにかかり、特に、コンピュータシステムなど対象装置の障害に対する復旧を支援する方法及びシステムに関する。また、復旧手順用プログラムに関する。」

「【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明である障害支援システムは、障害が発生したコンピュータ(対象装置)の障害状況に基づいて、障害箇所を的確に特定し、これに対応する復旧手順を特定する、ことを特徴としている。以下の実施例にて、その構成及びその動作について詳述する。」

「【0029】
<全体構成>
図1に示すように、復旧支援システム1は、それぞれネットワークNを介して接続された障害推定サーバ10と、復旧手順書管理サーバ20と、ユーザ情報管理サーバ30と、保守作業者端末40と、により構成されている。ここで、上記復旧支援システム1は、ユーザが使用するコンピュータ50の保守、管理等を行う業者にて運営されるシステムである。そして、上記復旧支援システム1によるサービスを受けるユーザ51が存在し、当該ユーザ51が使用するコンピュータ50に障害が発生したときに利用する、というシステムである。以下、各構成について詳述する。」

「【0031】
また、ユーザ51は、保守作業者端末40を操作する保守作業者41への連絡先情報を所持しており、ユーザコンピュータ50の障害が発生したときに、例えば、所有している携帯電話52にて保守作業者41の携帯電話42にコールして、ユーザコンピュータ50の障害状況を通知する。例えば、「ユーザABC出版株式会社にて使用しているサーバ装置で電源を入れたがエラーコード123を表示しそのまま止まる」、との状況を通知する。その後は、保守作業者が復旧作業を行いに来るのを待つ。あるいは、復旧作業内容が通知されるのを待ち、通知された復旧作業内容にしたがってユーザ51自ら復旧作業を行う。」

「【0058】
まず、ユーザコンピュータ50において障害が発生すると(ステップA1)、ユーザ51は担当の保守作業者41に対して、障害コールを行う(ステップA2)。保守作業者41は、ユーザ51から障害の内容を確認し、保守作業者端末40を用いてインターネットやイントラネットなどのネットワークNを介して、障害推定サーバ10にアクセスし、障害内容を送信する。送信する障害内容の例としては「ユーザABC出版株式会社殿にて使用しているサーバ装置AAAA-AAAで電源を入れたがエラーコード123を表示しそのまま止まる」などである(ステップA3)。
【0059】
続いて、障害推定サーバ10は、ユーザコンピュータ50の障害部分を推定する処理を行う(ステップA4、障害箇所特定工程)。その具体的な動作を、図15のフローチャートを参照して説明する。まず、障害推定サーバ10は、障害状況データを受信すると(ステップS1)、受信した障害内容から障害推定するために必要な情報を抽出するため、文字列検索を実施する(ステップS2)。文字列検索は、障害推定に必要な情報(ユーザ名、ユーザコード、コンピュータ名、コンピュータ型番、部品名、部品番号、エラーコード、障害の詳細内容など)と、障害推定に直接必要ない情報(接続詞や助詞など)を切り分けし、障害推定に必要な部分を取得する(ステップS3)。障害推定に必要な部分の例としては、予め登録された接続詞や助詞などを取り除いた文字情報である「ABC出版株式会社/AAAA-AAA/エラーコード123」などである。これらの文字情報を取得できると(ステップS4にて肯定判断)、当該取得した情報と、障害推定サーバ10に記憶されているデータベース15,16,17に基づいて、障害部分を特定する。具体的には、抽出した文字情報と、障害部分特定データベース15とに基づいて、必要であれば、マイニング用手順書データベース16やマイニング用ユーザ情報データベース17も用いて、ユーザ名やコンピュータ名、コンピュータ型番、エラーコード、部品などを特定し(ステップS5,S6,S7)、さらに、障害部分、障害内容を特定する(ステップS8)。そして、特定された障害部品に対応可能な復旧手順書番号、及び、その手順書を用いたときの復旧率を読み出して、これらを含めた障害推定結果データ(図6参照)を作成し、保守作業者端末40に送信する(復旧情報出力工程)。
【0060】
そして、障害推定サーバ10から障害推定結果データを受信した保守作業者端末40は、ネットワークNを介して自動的に復旧手順書管理サーバ20に接続し、復旧手順書データの送信要求を行う。このとき、保守作業者41は、障害推定結果データ中に示された復旧手順書番号のうち、復旧率の最も高いものから要求することも可能である。その後、復旧手順書管理サーバ20は、保守作業者端末40から復旧手順書の送信要求を受信すると、復旧手順書データベース25にある該当する復旧手順書データを保守作業者端末40に送信する(ステップA6、復旧手順データ出力工程)。
【0061】
続いて、復旧手順書データを保守作業者端末40にて受信した保守作業者41は、受信した復旧手順書データをもとに、ユーザコンピュータ50の保守作業を実施し(ステップA7)、障害を復旧させる(ステップA8)。
【0062】
その後、保守作業者41は、ネットワークNを介して復旧手順書管理サーバ20とユーザ情報管理サーバ30にアクセスし、保守作業で交換を実施した被疑部品の部品名や部品番号、交換した時の作業内容、交換した後に障害復旧したかなどの結果を登録する(ステップA9)。
【0063】
そして、復旧手順書管理サーバ20は、保守作業者端末40から送信された保守作業で交換した被疑部品の部品名や部品番号、交換した時の作業内容、交換した後に障害復旧したかなどの結果をもとに、復旧手順書使用状況データベース26にある送信回数、復旧回数、復旧率の更新を行う。送信回数に関しては、保守作業者端末40に被疑部品の交換作業に関する復旧手順書を送信した回数であり、送信した時に送信回数のカウントを1上げる。復旧回数は、送信した復旧手順書をもとに作業を実施し障害復旧した回数であり、障害復旧した情報を受信した時に復旧回数のカウントを1上げる。また障害復旧しなかったときは復旧回数のカウントはそのままとなる。復旧率は、復旧回数から送信回数を割った数値であり、送信回数や復旧回数が更新される度に復旧率も更新される。復旧率が高い復旧手順書は、送信された障害内容と同等である別の障害発生時に使用した場合、障害復旧する可能性が高いと推定することができる。送信回数、復旧回数、復旧率の更新が終了した後(ステップA10)、その更新データを障害推定サーバ10に送信する(ステップA11)。
【0064】
また、ユーザ情報管理サーバ30は、保守作業者端末40から送信されたユーザ名やユーザコードやコンピュータ名やコンピュータ型番、復旧作業を行った日、障害内容や復旧作業内容をもとに、作業履歴情報データベース34に1レコードとして追記し更新を行い(ステップA12)、その更新データを障害推定サーバ10に送信する(ステップA13)。
【0065】
障害推定サーバ10は、復旧手順書管理サーバ20から送信された復旧手順書使用状況データベース26の復旧率に関する更新データとユーザ情報管理サーバ30から送信された作業履歴情報データベース34の追記された1レコードに関する更新データをもとに、マイニング用復旧手順書データベース16とマイニング用ユーザ情報データベース17を更新する。更新内容として、マイニング用復旧手順書データベース16は、障害復旧にて部品交換するときに使用した復旧手順書に関する情報を、保守作業者端末40から送信された復旧作業後の情報と結び付けを行い、データベースに追加する。またマイニング用ユーザ情報データベース17は、障害復旧作業を実施したユーザ情報を、保守作業者端末40から送信された作業内容と結び付けを行い、データベースに追加する(ステップA14)。」

上記記載から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「障害が発生したコンピュータ(対象装置)の障害状況に基づいて、障害箇所を的確に特定し、これに対応する復旧手順を特定する、障害支援システムであって、
ネットワークNを介して接続された障害推定サーバ10と、復旧手順書管理サーバ20と、ユーザ情報管理サーバ30と、保守作業者端末40と、により構成され、
上記復旧支援システム1によるサービスを受けるユーザ51が存在し、当該ユーザ51が使用するコンピュータ50に障害が発生したときに利用する、というシステムであり、
ユーザコンピュータ50の障害が発生したときに、ユーザ51が保守作業者41に障害コールを行い、保守作業者が復旧作業を行いに来るのを待ち、
保守作業者41は、ユーザ51から障害の内容を確認し、保守作業者端末40を用いてインターネットやイントラネットなどのネットワークNを介して、障害推定サーバ10にアクセスし、障害状況データを送信し、
障害推定サーバ10は、障害状況データを受信すると、受信した障害内容から障害を推定するために必要な情報を抽出し、
抽出した文字情報と、障害部分特定データベース15とに基づいて、ユーザ名やコンピュータ名、コンピュータ型番、エラーコード、部品などを特定し、さらに、障害部分、障害内容を特定し、
特定された障害部品に対応可能な復旧手順書番号、及び、その手順書を用いたときの復旧率を読み出して、これらを含めた障害推定結果データを作成し、保守作業者端末40に送信し、
障害推定サーバ10から障害推定結果データを受信した保守作業者端末40は、ネットワークNを介して自動的に復旧手順書管理サーバ20に接続し、復旧手順書データの送信要求を行い、
復旧手順書管理サーバ20は、保守作業者端末40から復旧手順書の送信要求を受信すると、復旧手順書データベース25にある該当する復旧手順書データを保守作業者端末40に送信し、
復旧手順書データを保守作業者端末40にて受信した保守作業者41は、受信した復旧手順書データをもとに、ユーザコンピュータ50の保守作業を実施し、障害を復旧させ、
保守作業者41は、ネットワークNを介して復旧手順書管理サーバ20とユーザ情報管理サーバ30にアクセスし、保守作業で交換を実施した被疑部品の部品名や部品番号、交換した時の作業内容、交換した後に障害復旧したかなどの結果を登録し、
復旧手順書管理サーバ20は、保守作業者端末40から送信された保守作業で交換した被疑部品の部品名や部品番号、交換した時の作業内容、交換した後に障害復旧したかなどの結果をもとに、復旧手順書使用状況データベース26にある送信回数、復旧回数、復旧率の更新を行い、送信回数、復旧回数、復旧率の更新が終了した後、その更新データを障害推定サーバ10に送信し、
ユーザ情報管理サーバ30は、保守作業者端末40から送信されたユーザ名やユーザコードやコンピュータ名やコンピュータ型番、復旧作業を行った日、障害内容や復旧作業内容をもとに、作業履歴情報データベース34に1レコードとして追記し更新を行い、その更新データを障害推定サーバ10に送信し、
障害推定サーバ10は、復旧手順書管理サーバ20から送信された復旧手順書使用状況データベース26の復旧率に関する更新データとユーザ情報管理サーバ30から送信された作業履歴情報データベース34の追記された1レコードに関する更新データをもとに、マイニング用復旧手順書データベース16とマイニング用ユーザ情報データベース17を更新し、
更新内容として、マイニング用復旧手順書データベース16は、障害復旧にて部品交換するときに使用した復旧手順書に関する情報を、保守作業者端末40から送信された復旧作業後の情報と結び付けを行い、データベースに追加し、またマイニング用ユーザ情報データベース17は、障害復旧作業を実施したユーザ情報を、保守作業者端末40から送信された作業内容と結び付けを行い、データベースに追加する、
ことを特徴とする、
障害支援システム。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【要約】
【目的】多数の設備からの連鎖的にアラームが発生し、かつ複数の事象の多重発生を想定しなければならない場合に、多数のアラームの中から発生事象に直接的に関連する重要アラームを選別する手段を提供する。
【構成】設備相互関連学習手段101は、監視対象の設備に含まれる各エレメントE1,E2,E3,E4で発生した多数のアラーム信号の発生履歴の同期性から相関のあるアラームを選択した相関データと、連鎖的に発生するアラームの同時発生頻度データを用い、相互関連データを作成後、重要アラーム選別手段102へ供給する。重要アラーム選別手段102は相互関連データをもとにして、障害で発生したアラームパターン中で故障原因であるアラームだけを選別し、他の入力アラームを抑制し、重要アラームを表示手段103に供給する。」

「【特許請求の範囲】
【請求項1】複数の通信設備から異常事象を示すアラームを入力し、前記アラームを用いて、発生のタイミングを検出し、統計的に同期して発生している前記アラームの相関および前記アラームの同時発生頻度を学習する設備相互関連学習手段と、この相関および同時発生頻度を用いて異常事象の原因に密接なアラームを選別できる選別手段を備えたことを特徴とする通信設備管理システム。」

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は通信設備管理システムに関する。」

第5 対比・判断
1 本願発明11について
(1)対比
ア 引用発明の「障害が発生したコンピュータ(対象装置)の障害状況に基づいて、障害箇所を的確に特定し、これに対応する復旧手順を特定する、障害支援システム」と、本願発明11の「データ・センターにおけるネットワーク障害の解決を手助けする解決システム」は、「障害の解決を手助けする解決システム」である点で、共通する。

イ 引用発明の「障害支援システム」は、「障害推定サーバ10と、復旧手順書管理サーバ20と、ユーザ情報管理サーバ30と、保守作業者端末40」を備えており、これらの各サーバが、プロセッサ及びこのプロセッサに動作を行わせる命令を記憶したメモリを備えることは、明らかである。
そして、これらのプロセッサ及びメモリは、本願発明11の「少なくとも1つのプロセッサ」及び「前記少なくとも1つのプロセッサにより実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに動作を行わせる命令を記憶したメモリ」に相当する。
してみれば、引用発明は、本願発明11の「少なくとも1つのプロセッサと、前記少なくとも1つのプロセッサにより実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに動作を行わせる命令を記憶したメモリとを備え」ることと同様の構成を備えていると認められる。

ウ 引用発明の「ユーザコンピュータ50の障害が発生したときに、ユーザ51が保守作業者41に障害コールを行い、保守作業者が復旧作業を行いに来るのを待ち、保守作業者41は、ユーザ51から障害の内容を確認し、保守作業者端末40を用いてインターネットやイントラネットなどのネットワークNを介して、障害推定サーバ10にアクセスし、障害状況データを送信し、障害推定サーバ10は、障害状況データを受信する」ことにおいて、「障害状況データ」は、「障害推定サーバ10」が、「ユーザコンピュータ50」の「障害部分、障害内容」を特定するために利用されるものであるから、本願発明11の「前記データ・センターにおけるネットワーク障害を示す」「アラーム」と、対象装置の「障害を示す」情報である点で共通する。
そうすると、引用発明の「障害推定サーバ10」が「障害状況データを受信する」ことと、本願発明11の「前記データ・センター内のデバイスによって生成されたアラームを受信するステップであって、前記アラームは、前記データ・センターにおけるネットワーク障害を示す、ステップ」とは、「障害を示す情報を受信するステップであって、前記障害を示す情報は、対象装置の障害を示す情報を示す、ステップ」である点で共通する。

エ 引用発明の「障害状況データを受信すると、受信した障害内容から障害推定するために必要な情報を抽出」し、「抽出した文字情報と、障害部分特定データベース15とに基づいて、」「障害部分、障害内容を特定」することと、本願発明11の「前記アラームの受信に応答して、前記ネットワーク障害の障害症状を、受信した前記アラームにおける障害状況に基づき識別するステップ」とは、「前記障害を示す情報の受信に応答して、前記障害の障害症状を、受信した前記障害を示す情報における障害状況に基づき識別するステップ」である点で共通する。

オ 引用発明の「障害状況データを受信」し、「受信した障害内容から障害推定するために必要な情報を抽出」し、その「抽出した文字情報と、障害部分特定データベース15とに基づいて、ユーザ名やコンピュータ名、コンピュータ型番、エラーコード、部品などを特定」することと、本願発明11の「前記ネットワーク障害を引き起こした障害デバイスを識別するステップであって、前記障害デバイスは、前記アラームに基づき識別され、前記アラームを生成した前記デバイスとネットワーク・リンクにより通信するように結合された前記データ・センター内の別のデバイスである、ステップ」とは、「前記障害を引き起こした障害デバイスを識別するステップであって、前記障害デバイスは、前記障害を示す情報に基づき識別される、ステップ」である点で共通する。

カ 本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0006】に記載されているように、本願発明11の「トラブルシューティング・オプション」及び「ラベル」は、「ネットワーク障害を解決する可能性のある複数の推奨」及び「そのトラブルシューティング・オプションが、オペレータにより採用された(taken)ときに、アラームが示すネットワーク障害を解決するであろう確率をそれぞれ示すもの」である。
そうすると、引用発明の「復旧手順書」及び復旧「手順書を用いたときの復旧率」は、本願発明11の「トラブルシューティング・オプション」及び「ラベル」に対応する。
してみると、引用発明の「特定された障害部品に対応可能な復旧手順書番号、及び、その手順書を用いたときの復旧率を読み出して、これらを含めた障害推定結果データを作成し、保守作業者端末40に送信」すること、及び「復旧手順書管理サーバ20は、保守作業者端末40から復旧手順書の送信要求を受信すると、復旧手順書データベース25にある該当する復旧手順書データを保守作業者端末40に送信」することと、本願発明11の「前記ネットワーク障害を解決するための複数のトラブルシューティング・オプションを、前記障害症状に基づき出力するステップであって、前記複数のトラブルシューティング・オプションはそれらに割り当てられたラベルを有し、前記ラベルは前記複数のトラブルシューティング・オプションが、前記データ・センターのオペレータによって実行された時に、前記ネットワーク障害を解決するであろう確実性を示す、ステップ」とは、「前記障害を解決するための複数のトラブルシューティング・オプションを、前記障害症状に基づき出力するステップであって、前記複数のトラブルシューティング・オプションはそれらに割り当てられたラベルを有し、前記ラベルは前記複数のトラブルシューティング・オプションが実行された時に、前記障害を解決するであろう確実性を示す、ステップ」である点で共通する。

キ そうすると、本願発明11と引用発明は、以下の点で一致し、また相違する。

[一致点]
「 障害の解決を手助けする解決システムであって、該解決システムは、
少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサにより実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに動作を行わせる命令を記憶したメモリと
を備え、前記動作は、
障害を示す情報を受信するステップであって、前記障害を示す情報は、対象装置の障害を示す情報を示す、ステップと、
前記障害を示す情報の受信に応答して、前記障害の障害症状を、受信した前記障害を示す情報における障害状況に基づき識別するステップと、
前記障害を引き起こした障害デバイスを識別するステップであって、前記障害デバイスは、前記障害を示す情報に基づき識別される、ステップと、
前記障害を解決するための複数のトラブルシューティング・オプションを、前記障害症状に基づき出力するステップであって、前記複数のトラブルシューティング・オプションはそれらに割り当てられたラベルを有し、前記ラベルは前記複数のトラブルシューティング・オプションが、実行された時に、前記障害を解決するであろう確実性を示す、ステップと
を含む、解決システム。」

[相違点1]
本願発明11は、「データ・センターにおけるネットワーク障害の解決を手助けする解決システム」であるのに対して、引用発明は「障害が発生したコンピュータ(対象装置)」の障害が、データ・センターにおける障害であると特定されていない点。

[相違点2]
「障害を示す情報を受信するステップであって、前記障害を示す情報は、対象装置の障害を示す情報を示す、ステップ」について、本願発明11は、「前記データ・センター内のデバイスによって生成されたアラームを受信するステップであって、前記アラームは、前記データ・センターにおけるネットワーク障害を示す、ステップ」であるのに対して、引用発明の対応する動作は、「ユーザコンピュータ50の障害が発生したときに、ユーザ51が保守作業者41に障害コールを行い、保守作業者が復旧作業を行いに来るのを待ち、保守作業者41は、ユーザ51から障害の内容を確認し、保守作業者端末40を用いてインターネットやイントラネットなどのネットワークNを介して、障害推定サーバ10にアクセスし、障害状況データを送信し、障害推定サーバ10は、障害状況データを受信する」ことであり、「前記データ・センター内のデバイスによって生成されたアラームを受信」しておらず、また「障害状況データ」が「前記データ・センターにおけるネットワーク障害を示す」ものであるとの特定はされていない点。

[相違点3]
「前記障害を示す情報の受信に応答して、前記障害の障害症状を、受信した前記障害を示す情報における障害状況に基づき識別するステップ」について、本願発明11は、「前記アラームの受信に応答して、前記ネットワーク障害の障害症状を、受信した前記アラームにおける障害状況に基づき識別するステップ」であるのに対して、引用発明は、「前記アラーム」を受信しておらず、また、引用発明の「障害」が「ネットワーク障害」であると特定されていない点。

[相違点4]
「前記障害を引き起こした障害デバイスを識別するステップであって、前記障害デバイスは、前記障害を示す情報に基づき識別される、ステップ」について、本願発明11は、「前記ネットワーク障害を引き起こした障害デバイスを識別するステップであって、前記障害デバイスは、前記アラームに基づき識別され、前記アラームを生成した前記デバイスとネットワーク・リンクにより通信するように結合された前記データ・センター内の別のデバイスである、ステップ」であるのに対して、引用発明は「前記ネットワーク障害を引き起こした障害デバイスを識別する」との特定はされておらず、また、「障害デバイス」が「アラームに基づき識別され」るとはいえず、さらに「障害デバイス」が「前記アラームを生成した前記デバイスとネットワーク・リンクにより通信するように結合された前記データ・センター内の別のデバイスである」とはいえない点。

[相違点5]
本願発明11は「前記障害デバイスの履歴障害頻度を示すデータを、前記障害デバイスの識別に応答して出力するステップ」を備えるのに対して、引用発明は対応する出力を行っていない点。

[相違点6]
本願発明11の「トラブルシューティング・オプション」は「ネットワーク障害を解決するための」ものであるのに対して、引用発明は「ネットワーク障害を解決するための」ものであるとの特定がされていない点。

[相違点7]
本願発明11は「前記ネットワーク障害を解決するであろう確実性」が「前記データ・センターのオペレータによって実行された時に、前記ネットワーク障害を解決するであろう確実性」であるのに対して、引用発明の「復旧率」は、「前記データ・センターのオペレータによって実行された時」であるとの特定がされておらず、また、「ネットワーク障害」に関するものであるとの特定もされていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点4について先に検討する。
本願発明11の「アラーム」に対応する、引用発明の「障害状況データ」は、「ユーザコンピュータ50の障害が発生したときに、ユーザ51が保守作業者41に障害コールを行い、」「保守作業者41は、ユーザ51から障害の内容を確認し、保守作業者端末40を用いてインターネットやイントラネットなどのネットワークNを介して、障害推定サーバ10にアクセスし、」送信するデータであるから、「障害状況データ」を生成する際に、「ユーザ51」や「保守作業者41」である人を介して行っている。
そして、これらの人を、「ユーザコンピュータ50の障害が発生したときに、」コールを行うデバイス、及び「障害の内容を確認し」「障害状況データ」を送信するデバイスに置き換えたとしても、「ユーザ51」は、「障害支援システム」の各「サーバ」を接続する「ネットワークN」に接続されていないことから、相違点4に係る「障害デバイス」が「前記アラームを生成した前記デバイスとネットワーク・リンクにより通信するように結合された前記データ・センター内の別のデバイス」とはならない。
そして、引用発明は「障害が発生したコンピュータ(対象装置)の障害状況に基づいて、障害箇所を的確に特定し、これに対応する復旧手順を特定する、障害支援システム」であり、この「障害支援システム」は、「ネットワークN」の外にあるコンピュータを対象として復旧手順を特定するものであるから、この「障害が発生したコンピュータ(対象装置)」を「障害支援システム」の「ネットワークN」に接続すること、すなわち、「前記データ・センター内の別のデバイス」とすることには、阻害要因があるといえる。
また、引用文献2には、上記相違点4に係る構成は記載されておらず、また、相違点4に係る構成が周知の構成であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明11は、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明12ないし17について
本願発明12ないし17も、本願発明11の「前記ネットワーク障害を引き起こした障害デバイスを識別するステップであって、前記障害デバイスは、前記アラームに基づき識別され、前記アラームを生成した前記デバイスとネットワーク・リンクにより通信するように結合された前記データ・センター内の別のデバイスである、ステップ」を備える「解決システム」であるから、本願発明11と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び拒絶査定において引用された引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明1について
本願発明1は、本願発明11に対応する方法の発明であり、本願発明11の「前記ネットワーク障害を引き起こした障害デバイスを識別するステップであって、前記障害デバイスは、前記アラームに基づき識別され、前記アラームを生成した前記デバイスとネットワーク・リンクにより通信するように結合された前記データ・センター内の別のデバイスである、ステップ」に対応する、「前記アラームの受信に応答して且つ前記アラームに基づいて、前記ネットワーク障害を引き起こした障害デバイスであって、前記アラームを生成した前記デバイスとネットワーク・リンクにより通信するように結合された前記データ・センター内の別のデバイスである障害デバイスを識別するステップ」を備える方法であるから、本願発明11と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び拒絶査定において引用された引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

4 本願発明2ないし10について
本願発明2ないし10は、本願発明1の「前記アラームの受信に応答して且つ前記アラームに基づいて、前記ネットワーク障害を引き起こした障害デバイスであって、前記アラームを生成した前記デバイスとネットワーク・リンクにより通信するように結合された前記データ・センター内の別のデバイスである障害デバイスを識別するステップ」を備える方法であるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び拒絶査定において引用された引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

5 本願発明18について
本願発明18は、本願発明11に対応するプログラムの発明であり、本願発明11の「前記ネットワーク障害を引き起こした障害デバイスを識別するステップであって、前記障害デバイスは、前記アラームに基づき識別され、前記アラームを生成した前記デバイスとネットワーク・リンクにより通信するように結合された前記データ・センター内の別のデバイスである、ステップ」に対応する、「前記アラームを受信するのに応答して、前記ネットワーク障害を引き起こした障害デバイスを識別するステップであって、前記障害デバイスは、前記障害状況に基づき識別され、前記アラームを生成した前記デバイスとネットワーク・リンクにより通信するように結合された前記データ・センター内の別のデバイスである、ステップ」を備えるプログラムであるから、本願発明11と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び拒絶査定において引用された引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

6 本願発明19ないし21について
本願発明19及び20は、本願発明18の「前記アラームを受信するのに応答して、前記ネットワーク障害を引き起こした障害デバイスを識別するステップであって、前記障害デバイスは、前記障害状況に基づき識別され、前記アラームを生成した前記デバイスとネットワーク・リンクにより通信するように結合された前記データ・センター内の別のデバイスである、ステップ」を備えるプログラムであり、また、本願発明21は、本願発明18ないし20のプログラムを記憶したコンピュータ可読記憶媒体であるから、本願発明18と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び拒絶査定において引用された引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1ないし10は、「前記アラームの受信に応答して且つ前記アラームに基づいて、前記ネットワーク障害を引き起こした障害デバイスであって、前記アラームを生成した前記デバイスとネットワーク・リンクにより通信するように結合された前記データ・センター内の別のデバイスである障害デバイスを識別するステップ」という事項、本願発明11ないし17は、「前記ネットワーク障害を引き起こした障害デバイスを識別するステップであって、前記障害デバイスは、前記アラームに基づき識別され、前記アラームを生成した前記デバイスとネットワーク・リンクにより通信するように結合された前記データ・センター内の別のデバイスである、ステップ」という事項、本願発明18ないし21は「前記アラームを受信するのに応答して、前記ネットワーク障害を引き起こした障害デバイスを識別するステップであって、前記障害デバイスは、前記障害状況に基づき識別され、前記アラームを生成した前記デバイスとネットワーク・リンクにより通信するように結合された前記データ・センター内の別のデバイスである、ステップ」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1及び2に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-08-25 
出願番号 特願2016-558574(P2016-558574)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 野元 久道  
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 小田 浩
北川 純次
発明の名称 ネットワーク障害のトラブルシューティング・オプションの識別  
代理人 中西 基晴  
代理人 山本 修  
代理人 上田 忠  
代理人 宮前 徹  

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