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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 F21S 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F21S |
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管理番号 | 1377372 |
審判番号 | 不服2020-8953 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-06-29 |
確定日 | 2021-09-14 |
事件の表示 | 特願2015-155207号「照明器具」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月 9日出願公開,特開2017- 33872号,請求項の数(1)〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は,平成27年8月5日の出願であって,令和1年5月27日付けで拒絶理由が通知され,同年6月13日に出願人名義変更届が提出され,同年6月25日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされたが,同年11月25日付けで最後の拒絶理由が通知され,同年12月17日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされたが,同年12月17日付けの手続補正の補正の却下の決定が令和2年5月19日付けでされるとともに,同日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ,これに対し,同年6月29日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,令和3年2月4日付けで拒絶理由が通知され,同年4月2日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ,同年6月10日に再度拒絶理由が通知され,同年6月21日付けで手続補正がされたものである。 第2.原査定の概要 原査定(令和2年5月19日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 (進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項 1-3 ・引用文献等 A,B ・請求項 4,5 ・引用文献等 A-C <引用文献等一覧> A.特開2012-239597号公報 B.特開2014-56787号公報 C.特開2011-17465号公報 第3.当審の拒絶理由の概要 1.令和3年2月4日付け拒絶理由通知による拒絶理由の概要 (進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項 1 ・引用文献等 1,2 <引用文献等一覧> 1.特開2014-56787号公報(以下「引用文献1」という。拒絶査定時の引用文献B) 2.特開2012-239597号公報(以下「引用文献2」という。拒絶査定時の引用文献A) 審判請求時(令和2年6月29日付け)の手続補正により,請求項1に係る発明は,「前記光源および前記導出部の左方に配置され,前記光源に電気を供給する電源とを含む筐体」と補正されたことに対応するため,令和3年2月4日付け拒絶理由通知においては,電源(電源回路)について記載されている引用文献1を主引用文献とした。 2.令和3年6月10日付け拒絶理由通知による拒絶理由の概要 (明確性)本件出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 ・請求項1の「前記光源および前記導出部の左方に配置され」及び「前記光源および前記導出部の左方となる」という記載の「左方」は,どの方向からみて左方なのかが不明である。 第4.本願発明 本願請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,令和3年6月21日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 LEDからなる光源と,前記光源が発する光を拡散する光拡散部と,前記光源が発する光と前記光拡散部が拡散する光を混合して外部に導出するための光を導出可能な光透過性を有する導出部と,前記光源に電気を供給する電源とを含む筐体を有し, 前記光源は,前記筐体における一つの面である光源の設置面に設けられ, 前記導出部は,前記筐体における前記光源の設置面に対向する前記導出部の設置面に設けられ, 前記光拡散部は,前記筐体において,前記光源の設置面と前記導出部の設置面とを結ぶ光拡散部の設置面に設けられ, 前記光源の設置面と前記導出部の設置面とが,非平行であり,かつ,前記光源の設置面と前記導出部の設置面との間の距離が前記拡散部の設置面に近づくにつれて短くなり, 前記光源の設置面及び前記光拡散部の設置面が,前記導出部の設置面に対する垂直方向に対して傾斜しており, 前記光源の設置面における前記光源は前記光拡散部の設置面側に偏在しているとともに,前記光源の設置面と,前記導出部の設置面とのなす角度が,5?25度であり, 前記光拡散部の設置面と,前記導出部の設置面に対する垂直方向とのなす角度が,5?25度であって, 前記電源は,前記光源に対して前記光拡散部の反対側であって前記導出部を外れた,前記筐体によって形成された空間に配置されるとともに, レンジフードまたはショーケースに設置される, ことを特徴とする照明器具。」 第5.引用文献,引用発明等 1.引用文献1について 引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。 ・「【技術分野】 【0001】 本発明は,照明装置関し,特に,商品等を陳列する棚板等の下面等に取り付けられて商品等を照明するのに好適な照明装置に関する。 【背景技術】 【0002】 一般的なコンビニエンスストアやスーパーマーケット等において,屋内照明のほかに,商品陳列棚に照明が設けられ,消費者が陳列された商品を目で確認しやすくし,それにより購買意欲を高めるようにしている。」 ・「【0004】 これに対し,特許文献2には,反射部材を用いることで,消費電力がより少ないLEDからの出射光を2方向に出射できる照明装置が開示されている。特許文献2の照明装置は,棚板の下面に配置することで,LEDからの直接出射光により下方を照明し,LEDの下方奥側に立設した反射部材からの反射光を用いて,前方側を照明するようになっている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0005】 【特許文献1】特開2005-141911号公報 【特許文献2】特開2010-251294号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら,特許文献2の照明装置は,以下に述べるような問題がある。かかる問題を,図面を参照して説明する。図9は,特許文献2に示す照明装置の1形態の断面図である。図9の照明装置は,不図示の棚板に取り付けられ筐体BXに固定された基板STと反射部材MRとを有する。基板STの下面にはLEDチップLedが取り付けられている。反射部材MRは,LEDチップLedの中心を通る基板STの法線NLに沿ってLEDチップLedから遠ざかるにつれて,法線NLに近づくように傾いている。しかるに,図9の構成では,反射部材MRがLEDチップLedから比較的離れているので,反射部材MRに入射する光は,法線NLに対して傾いた方向に出射する強度が弱い光である。従って,このような弱い光を,反射部材MRで,図で左方斜め上方側に向かって反射しても,かかる方向の照度を顕著に高めることができないという問題がある。更に,LEDチップLedから出射した光の残りは,矢印で示すように反射部材MRに反射した後,基板STに入射して,ここで殆ど吸収されてしまい,光の有効利用が図れないという問題もある。基板STに反射膜を形成することも考えられるが,コストの増大を招く。加えて,図9の構成では,反射部材MRの背後に,スペースがないため,LEDチップLedを駆動する駆動回路をいずれに設置するかという問題もある。 【0007】 かかる問題点を内包する図9の照明装置を,図10に示すように,反射部材MRの上縁をLEDチップLed側に倒すように改良することもできる。これにより反射部材MRの背後にスペースが生じるので,ここにLEDチップLed駆動用の駆動回路DR等を設置できる。ところが,図10の構成では,LEDチップLedから出射して反射部材MRで反射した光は,法線NLに沿った方向に出射するので,LEDチップLedから出射する光の殆どが,下方側から出射してしまうため問題である。 【0008】 また別な改良として,図11に示すように,反射部材MRの傾きを維持したまま,全体をLEDチップLed側にシフトさせることもできる。これにより,反射部材MRの背後にスペースが生じるので,ここにある程度の大きさのLEDチップLed駆動用の駆動回路等を設置できる。又,反射部材MRは,LEDチップLedから出射する比較的法線NLに近い光を,図で左方斜め上方側向かって反射できるので,かかる方向の照度が高くなり好都合である。」 ・図9?図11には,以下の内容が示されている。 ・上記段落【0006】の下線部の記載事項と,図9からみて,照明装置は,筐体BXを有すること,反射部材MRは平坦な反射面を有すること,及び,LEDチップLedから発する光と,反射部材MRが反射する光とを混合して外部に導出するための光を導出可能な光透過性を有する導出部と,を有し,前記導出部は,筐体BXにおける基板STに対向する前記導出部の設置面に設けられ,前記反射部材MRは,前記筐体BXにおいて,基板STの設置面と前記導出部の設置面との間に反射部材MRの設置面が設けられ,LEDチップLedが取り付けられた基板STを設置する面と前記導出部の設置面とが非平行であり,且つ,基板STを設置する面と前記導出部との距離が反射部材MRの設置面に近づくにつれて短くなり,基板STを設置する面及び前記反射部材MRの設置面が前記導出部の設置面に対する垂直方向に対して傾斜していることが理解できる。 これらの事項からみて,引用文献1には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「商品等を陳列する棚板等に取り付けられて商品等を照明するのに好適な照明装置に関し, 照明装置は,筐体BXと,筐体BXに固定された基板STと反射部材MRとを有し,基板STの下面にはLEDチップLedが取り付けられ,反射部材MRは,平坦な反射面を有し,LEDチップLedの中心を通る基板STの法線NLに沿ってLEDチップLedから遠ざかるにつれて,法線NLに近づくように傾いており,LEDチップLedから発する光と,反射部材MRが反射する光とを混合して外部に導出するための光を導出可能な光透過性を有する導出部と,を有し,前記導出部は,筐体BXにおける基板STに対向する前記導出部の設置面に設けられ,前記反射部材MRは,前記筐体BXにおいて,基板STの設置面と前記導出部の設置面との間に反射部材MRの設置面が設けられ,LEDチップLedが取り付けられた基板STを設置する面と前記導出部の設置面とが非平行であり,且つ,基板STを設置する面と前記導出部との距離が反射部材MRの設置面に近づくにつれて短くなり,基板STを設置する面及び前記反射部材MRの設置面が前記導出部の設置面に対する垂直方向に対して傾斜している, 照明器具。」 (2)引用文献2について 引用文献2には,図面とともに以下の事項が記載されている。 ・「【技術分野】 【0001】 本発明はショーケースに係り,さらに詳しくは,照明装置の取り付け位置を工夫することで内部の清掃性の向上を図れ,また,照明装置の交換を容易に行えるようにしたショーケースに関する。」 ・「【0027】 最初に上面用枠部材45を説明する。 上面用枠部材45は,図7に詳細を示すように,内部に凹部45Aを有し,全体断面外形形状が略台形,つまり略扁平となった長尺に形成され,このような上面用枠部材45は,放熱性に優れたアルミを押し出し成形して形成されている。 【0028】 上面用枠部材45の内部の凹部45Aには,当該上面用枠部材45の上面45Bに対して前面側に低くなるように傾斜したLED基板取付け面45Cが形成され,この基板取付け面45Cの表面に,LED基板46がその裏面に塗布された接着剤等により貼り付けられている。そして,LED基板46の表面には多数個のLED51が装備されている。 上記傾斜角度は,水平に対して,例えば15度?30度の範囲に設定されると好適である。そのため,ガラス上面に対して,つまり最上段の陳列棚31の陳列商品に対して,LED51の光が前面側から背面側に向けて斜め上方から当たるようになっている。但し,上記傾斜角度は任意に設定することができる。ケース本体10の大きさ,つまり,商品棚の広さ等に対応して,商品を最適の範囲で照らせるようになっていればよい。 【0029】 また,上面用枠部材45の下面側には,LED51を保護するための透明パネル52が嵌め込まれている。そして,この透明パネル52は,上面用枠部材45の上面45Bと平行になっている。」 ・図7には以下の内容が示されている。 (3)引用文献Cについて 引用文献Cには,図面とともに以下の事項が記載されている。 ・「【技術分野】 【0001】 本発明は,ガスコンロ,電気コンロ,或いは電磁誘導加熱式クッキングヒータ(いわゆるIHクッキングヒータ)などの加熱調理器具による調理中に発生する廃ガス,油煙,湯煙(鍋などからの湯気)などの汚染空気の流れを整えるとともに吸込み捕獲効率を高めるために,フード部の下向き開口する捕獲空間に備えられる整流板,およびこの整流板を備えたレンジフードに関する。」 ・「【0026】 ≪薄型レンジフードの構成≫ 薄型レンジフードAは,図1に示すように,加熱調理器Bの略真上に位置してキッチン壁K1に取り付け設置されて,調理中に発生する廃ガス,油煙,水蒸気,熱気などの汚染空気(汚染物質)Gを吸込み捕獲し,図示省略の排気ダクトを通して屋外に排気するように構成されている。 この薄型レンジフードAは,図1に示すように,薄型(平型)で下向きに開口する捕獲空間Mを有するフード部1の上に排気装置2を設置して構成され,さらに,フード部1の捕獲空間Mに開口周縁部3a?3cとの間に吸込み隙間S1?S3を確保するように整流板(整流板本体)4を備えている。」 ・「【0037】 照明ボックス18は,図1および図5に示すように,熱口bを前側2ヶ所と,後側中央1ヶ所に備えている加熱調理器Bの全体(トッププレート17の全体)を万遍に照らすように,真下よりも加熱調理器Bの中央付近に向けた斜め下向きにて照明設置部9にネジ止めなどによって取り付け内蔵される。そして,図6に示すように,内側に段差を付けて開口する開口部21には膨出面20と段差がない略面一の状態で耐熱ガラスなどからなる透視板22を有する蓋体23が止めネジ24によって開閉自在に取り付けられて閉蓋されるようになっている。」 ・「【0045】 また,図1に一点鎖線で示す矢印のように,整流板4の窪み部4aから加熱調理器Bの略中央部位に向けて臨むようにフード部1の前側に備えられた照明(ランプ)16によって,調理者の手元は勿論,前側2ヶ所の熱口bにかけられている調理鍋Cの鍋底から加熱調理器B全体を万遍に,かつ,確実に照らすことができる。」 ・図1,図6には,以下の内容が示されている。 【図6】 第6.判断 1 当審拒絶理由の進歩性(29条2項)について (1)本願発明と引用発明とを対比すると,後者の「LEDチップLed」は前者の「LEDからなる光源」または「光源」に相当し,以下同様に,「導出部」は「導出部」に,「筐体BX」は「筐体」に,「LEDチップLedが取り付けられた基板STを設置する面」及び「基板STを設置する面」は「筐体における一つの面である光源の設置面」に,「商品等を陳列する棚板等に取り付けられて商品等を照明するのに好適な照明装置」は「レンジフードまたはショーケースに設置される,照明器具」に,それぞれ相当する。 (2)後者の「反射部材MR」は「平坦な反射面を有」するものであり,点光源である「LEDチップLedから発する光」を平坦な反射面で反射すれば光は拡散することになるから,後者の「反射部材MR」は前者の「光拡散部」に相当する (3)後者の「筐体BXと,筐体BXに固定された基板STと反射部材MRとを有し,基板STの下面にはLEDチップLedが取り付けられ,反射部材MRは,平坦な反射面を有し, LEDチップLedの中心を通る基板STの法線NLに沿ってLEDチップLedから遠ざかるにつれて,法線NLに近づくように傾いており,LEDチップLedから発する光と,反射部材MRが反射する光とを混合して外部に導出するための光を導出可能な光透過性を有する導出部と,を有」することと,前者の「LEDからなる光源と,前記光源が発する光を拡散する光拡散部と,前記光源が発する光と前記拡散部が拡散する光を混合して外部に導出するための光を導出可能な光透過性を有する導出部と,前記光源および前記導出部の左方に配置され,前記光源に電気を供給する電源とを含む筐体を有」することとは,「LEDからなる光源と,前記光源が発する光を拡散する光拡散部と,前記光源が発する光と前記拡散部が拡散する光を混合して外部に導出するための光を導出可能な光透過性を有する導出部と,筐体を有」することにおいて共通する。 (4)後者の「LEDチップLedが取り付けられた基板STを設置する面」は「筐体BX」にあるから,後者のかかる構成は,前者の「前記光源は,前記筐体における一つの面である光源の設置面に設けられ」ることに相当する。 (5)後者の「前記導出部は,筐体BXにおける基板STに対向する前記導出部の設置面に設けられ」ることは,上記(4)を踏まえると,前者の「前記導出部は,前記筐体における前記光源の設置面に対向する前記導出部の設置面に設けられ」ることに相当する。 (6)後者の「前記反射部材MRは,前記筐体BXにおいて,基板STの設置面と前記導出部の設置面との間に反射部材MRの設置面が設けられ」ることと,上記(1),(2),(4)の相当関係を踏まえると,前者の「前記光拡散部は,前記筐体において,前記光源の設置面と前記導出部の設置面とを結ぶ光拡散部の設置面に設けられ」ることとは,「前記光拡散部は,前記筐体において,前記光源の設置面と前記導出部の設置面との間に光拡散部の設置面が設けられ」ることにおいて共通する。 (7)後者の「LEDチップLedが取り付けられた基板STを設置する面と前記導出部の設置面とが非平行であり,且つ,基板STを設置する面と前記導出部との距離が反射部材MRの設置面に近づくにつれて短くなり,基板STを設置する面及び前記反射部材MRの設置面が前記導出部の設置面に対する垂直方向に対して傾斜している」ことは,前者の「前記光源の設置面と前記導出部の設置面とが,非平行であり,かつ,前記光源の設置面と前記導出部の設置面との間の距離が前記拡散部の設置面に近づくにつれて短くなり,前記光源の設置面及び前記光拡散部の設置面が,前記導出部の設置面に対する垂直方向に対して傾斜して」いることに相当する。 (8)そうすると,両者は, 「LEDからなる光源と,前記光源が発する光を拡散する光拡散部と,前記光源が発する光と前記拡散部が拡散する光を混合して外部に導出するための光を導出可能な光透過性を有する導出部と,筐体を有し, 前記光源は,前記筐体における一つの面である光源の設置面に設けられ, 前記導出部は,前記筐体における前記光源の設置面に対向する前記導出部の設置面に設けられ, 前記光拡散部は,前記筐体において,前記光源の設置面と前記導出部の設置面との間に光拡散部の設置面が設けられ, 前記光源の設置面と前記導出部の設置面とが,非平行であり,かつ,前記光源の設置面と前記導出部の設置面との間の距離が前記拡散部の設置面に近づくにつれて短くなり, 前記光源の設置面及び前記光拡散部の設置面が,前記導出部の設置面に対する垂直方向に対して傾斜しており, レンジフードまたはショーケースに設置される,照明器具。」 の点で一致し,以下の各点で相違すると認められる。 <相違点1> 本願発明では,「前記光源に電気を供給する電源とを含む」筐体を有し,「前記電源は,前記光源に対して前記光拡散部の反対側であって前記導出部を外れた,前記筐体によって形成された空間に配置され」ているのに対して,引用発明では,そのような特定はなされていない点。 <相違点2> 前記光拡散部は,前記筐体において,前記光源の設置面と前記導出部の設置面との間に光拡散部の設置面を設けることに関して,本願発明では,前記光源の設置面と前記導出部の設置面と「を結ぶ」光拡散部の設置面に設けられているのに対して,引用発明では,そのような特定はない点。 <相違点3> 本願発明では「前記光源の設置面における前記光源は前記光拡散部の設置面側に偏在している」のに対して,引用発明では,そのような特定はなされていない点。 <相違点4> 前記光源の設置面及び前記光拡散部の設置面が,前記導出部の設置面に対する垂直方向に対して傾斜していることに関して,本願発明では,「前記光源の設置面と,前記導出部の設置面とのなす角度が,5?25度」であり,「前記光拡散部の設置面と,前記導出部の設置面に対する垂直方向とのなす角度が,5?25度」であるのに対して,引用発明では,そのような特定はない点。 (9)相違点の判断 <相違点1について> 引用発明を開示する引用文献1には,段落【0006】に「図9の構成では,反射部材MRの背後に,スペースがないため,LEDチップLedを駆動する駆動回路をいずれに設置するかという問題もある。」との記載があり,駆動回路(電源)をどこかに配置する必要があることは記載されているといえる。 しかしながら,引用文献1における引用発明は,図9に関する部分であり,図9は,引用文献1における先行技術文献である特許文献2(特開2010-251294号公報)の照明装置である。引用文献1には,特許文献2について,段落【0004】に,「特許文献2には,反射部材を用いることで,消費電力がより少ないLEDからの出射光を2方向に出射できる照明装置が開示されている。」と記載されている。さらに,特許文献2における引用発明(図9)に対応する図2及び段落【0028】には,「このカバー部材(又は照明フード)は,前記発光素子列13の下方域に形成された透明プレート部(透明な透光域)16と,少なくとも前方域乃至前方の斜め上部域(前方から斜め上部に至る領域)に形成された乳白色のカバープレート部(乳白色の透光域)17とを備えている。この例では,乳白色のカバープレート部(乳白色の透光域)17は,前方の斜め下部域から前方の斜め上部域に至る領域に形成されている。」 と記載されており,引用文献1における段落【0004】のLEDから出射光の方向が,下方と前方(本願発明でいう「光源に対して前記光拡散部の反対側であって前記導出部を外れた」方向)の2方向であることが理解できる。 そうすると,引用発明において,「電源」を,「光源に対して光拡散部の反対側であって導出部を外れた,筐体によって形成された空間に配置」すると,上記前方(本願発明でいう「光源に対して前記光拡散部の反対側であって前記導出部を外れた」方向)に出射できなくなるため,当業者は,「電源」を,「光源に対して光拡散部の反対側であって導出部を外れた,筐体によって形成された空間に配置」しようとはしないといえる。 言い換えると,引用発明において,「電源」を,「光源に対して光拡散部の反対側であって導出部を外れた,筐体によって形成された空間に配置」することには,阻害要因があるといわざるを得ない。 してみれば,引用文献2の記載事項を参照しても,当業者は,引用発明に引用文献2の記載事項を適用しようとはしないし,適用することもできないから,上記相違点1に係る本願発明の構成は,引用発明及び引用文献2の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 そして,本願発明は,簡単な構造で,対象物に光を集めることが可能な照明器具を提供するという格別の作用効果を奏するものである。 したがって,他の相違点について検討するまでもなく,本願発明は,当業者であっても引用発明,引用文献2に記載された事項に基いて,容易に発明できたものであるとはいえない。 2 当審拒絶理由の明確性(36条6項2号)について 令和3年6月21日付けの手続補正により,請求項1に記載の「前記電源は,前記光源および前記導出部の左方となる,前記筐体によって形成された空間に配置される」は,「前記電源は,前記光源に対して前記光拡散部の反対側であって前記導出部を外れた,前記筐体によって形成された空間に配置される」と補正されたことにより,電源と光源および導出部との位置関係は明確となった。 よって,本願の請求項1の記載は,特許法36条6項2号に規定された要件に適合する。 第7.原査定についての判断 令和3年6月21日付けの手続補正により,補正後の請求項1は,「前記電源は,前記光源に対して前記光拡散部の反対側であって前記導出部を外れた,前記筐体によって形成された空間に配置され」ているという技術的事項を有するものとなった。当該「前記電源は,前記光源に対して前記光拡散部の反対側であって前記導出部を外れた,前記筐体によって形成された空間に配置され」ていることは,原査定における引用文献A-Cには,記載されておらず,電源(電源回路)については,引用文献1(引用文献B)にしか記載されていないため,引用文献2(引用文献A)を主引用発明としても,副引用例として,引用文献1(引用文献B)を適用した上で引用文献1(引用文献B)の電源回路の位置を変更しなければ,本願発明の構成には,至らないが,前記第6.1.(8)で述べたとおり,引用文献1において,「電源」を「光源に対して光拡散部の反対側であって導出部を外れた,筐体によって形成された空間に配置」することには,阻害要因があるといわざるを得ないから,本願発明は,当業者であっても,原査定における引用文献A-Cに基いて容易に発明できたものではない。 したがって,原査定を維持することはできない。 第8.むすび 以上のとおり,原査定の理由及び当審の拒絶理由によって,本願を拒絶することはできない。 他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-08-24 |
出願番号 | 特願2015-155207(P2015-155207) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(F21S)
P 1 8・ 121- WY (F21S) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 河村 勝也 |
特許庁審判長 |
一ノ瀬 覚 |
特許庁審判官 |
藤井 昇 畔津 圭介 |
発明の名称 | 照明器具 |
代理人 | 南野 研人 |
代理人 | 辻丸 光一郎 |
代理人 | 伊佐治 創 |
代理人 | 松縄 正登 |