• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1377424
審判番号 不服2020-9135  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-30 
確定日 2021-09-14 
事件の表示 特願2017-222790「情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月20日出願公開、特開2019- 95899、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年11月20日の出願であって、平成31年1月18日付けで拒絶理由が通知され、平成31年3月19日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、令和元年8月15日付けで拒絶理由が通知され、令和元年10月25日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、令和2年3月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、令和2年6月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 補正の却下の決定
1.補正の却下の決定の結論
令和2年6月30日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

2.補正の却下の決定の理由
(1)本件補正の内容
本件補正は、令和元年10月25日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1を、

「【請求項1】
電子商取引サービスを利用するユーザが保有する企業通貨である保有通貨に関する情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された保有通貨に関する情報が前記ユーザによる電子商取引の売買に伴う資金移動に関する所定の条件である通貨条件を満たす場合に、前記保有通貨から前記電子商取引の売買に伴う所定の金額に相当する保有通貨を引いて、前記所定の金額を前記ユーザの投資用口座に入金する入金処理を行う入金部と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。」
から
「【請求項1】
電子商取引サービスを利用するユーザによる前記電子商取引サービスを利用した電子商取引に伴う所定の金額の受け渡しが行われる場合に、電子商取引サーバから前記ユーザの端末装置に配信されるコンテンツに含まれる第1選択ボタンであって、前記第1選択ボタンが選択された場合に、前記電子商取引に伴う所定の金額の受け渡しを企業通貨によって行うとともに、前記所定の金額の全部または一部を前記ユーザの投資用口座に資金移動させる要求を前記端末装置から情報処理装置に対して送信する第1選択ボタンが前記ユーザによって選択された場合に、前記所定の金額の全部または一部に相当する企業通貨を前記ユーザの企業通貨を管理する企業通貨口座に加えるとともに、前記企業通貨口座から前記所定の金額の全部または一部に相当する企業通貨を引いて、前記所定の金額の全部または一部を前記ユーザの投資用口座に入金する入金処理を行う入金部、
を備えることを特徴とする情報処理装置。」
と補正することを含むものである。(下線は、補正箇所を示す。)

(2)本件補正の適否の判断
本件補正は、以下の補正事項a.及び補正事項b.を含むものである。

補正事項a.補正前の請求項1の「前記取得部によって取得された保有通貨に関する情報が前記ユーザによる電子商取引の売買に伴う資金移動に関する所定の条件である通貨条件を満たす場合に、前記保有通貨から前記電子商取引の売買に伴う所定の金額に相当する保有通貨を引いて、前記所定の金額を前記ユーザの投資用口座に入金する入金処理を行う」という処理を、「電子商取引サービスを利用するユーザによる前記電子商取引サービスを利用した電子商取引に伴う所定の金額の受け渡しが行われる場合に」、「前記所定の金額の」「一部を前記ユーザの投資用口座に資金移動させる要求を前記端末装置から情報処理装置に対して送信する」「第1選択ボタンが前記ユーザによって選択された場合に、前記所定の金額の」「一部に相当する企業通貨を前記ユーザの企業通貨を管理する企業通貨口座に加えるとともに、前記企業通貨口座から前記所定の金額の」「一部に相当する企業通貨を引いて、前記所定の金額の」「一部を前記ユーザの投資用口座に入金する入金処理を行う」という処理を含む構成に変更する補正。

補正事項b.補正前の請求項1の「電子商取引サービスを利用するユーザが保有する企業通貨である保有通貨に関する情報を取得する取得部」を削除する補正。

一方、出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、「所定の金額」の入金に関連して以下の記載がある(下線は、当審が付与した。)。

ア.「【0019】
以下、図1を用いて、情報処理の一例を説明する。図1に示す例では、オークションサーバ20は、オークションの出品者であるユーザU1によって出品された商品が落札された場合に、オークションの売上金受取サービスを提供するためのコンテンツをユーザU1の端末装置10に配信する(ステップS11)。
【0020】
端末装置10は、オークションの売上金受取サービスを提供するためのコンテンツをオークションサーバ20から受信すると、オークションの売上金の受取方法に対応する選択ボタンを画面に表示する。続いて、端末装置10は、オークションの売上金を電子マネーで受け取って投資用口座に資金移動する受取方法がユーザU1によって選択されると、オークションの売上金を電子マネーで受け取って投資用口座に資金移動させる要求を情報処理装置100に送信する(ステップS12)。
【0021】
続いて、情報処理装置100は、オークションの売上金を電子マネーで受け取って投資用口座に資金移動させる要求を端末装置10から受け付けると、ユーザU1に対して目論見書を交付済みであるか否かを判定する(ステップS13)。ここでは、上述したようにユーザU1に対して目論見書を交付済みであるものとする。
【0022】
続いて、情報処理装置100は、ユーザU1に対して目論見書を交付済みであると判定すると、オークションの売上金に相当する電子マネーをユーザU1の電子マネー口座に加える(ステップS14)。つまり、情報処理装置100は、オークションの売上金が10,000円である場合には、オークション売上金として10,000円に相当する電子マネーをユーザU1の電子マネー口座の預入金額に付加する。
【0023】
続いて、情報処理装置100は、オークションの売上金に相当する電子マネーをユーザU1の電子マネー口座に加えた場合に、オークションの売上金に相当する電子マネーをユーザU1が取得したか否かを判定する(ステップS15)。すなわち、情報処理装置100は、ユーザU1の電子マネー口座の残高が元々50,000円である場合には、ユーザU1の電子マネー口座の残高が50,000円から60,000円に増えたか否かを判定する。
【0024】
続いて、情報処理装置100は、オークションの売上金に相当する電子マネーをユーザU1が取得したと判定した場合は、投資用口座への資金移動条件を満たすと判定する。そして、情報処理装置100は、投資用口座への資金移動条件を満たすので、ユーザU1の投資用口座に移動する資金として、オークションの売上金に相当する電子マネーをユーザU1の電子マネー口座から引く(ステップS16)。
【0025】
続いて、情報処理装置100は、オークションの売上金をユーザU1の投資用口座に入金する(ステップS17)。
【0026】
投資用口座管理サーバ30は、ユーザU1の投資用口座にオークションの売上金が入金された場合、情報処理装置100を管理する投資資産の運用会社の運用指図に従って、ユーザU1の投資用口座に預けられた投資資産の投資の対象である投資信託の買付取引を行う(ステップS18)。
【0027】
上述したように、情報処理装置100は、オークションサービスのユーザU1が保有する電子マネーに関する情報を取得する。そして、情報処理装置100は、ユーザU1の電子マネーに関する情報が所定の条件である通貨条件を満たす場合に、ユーザU1の電子マネー口座からオークションの売上金に相当する電子マネーを引いて、オークションの売上金をユーザU1の投資用口座に入金する入金処理を行う。これにより、情報処理装置100は、ユーザU1がオークションサービスで取得した売上金をユーザU1の投資用口座に資金移動することができる。したがって、情報処理装置100は、ユーザU1の投資を促すことができる。」

イ.「【0066】
〔1-4-1.電子マネーによる支払いを行う場合に投資用口座に入金する〕
図1では、情報処理装置100は、ユーザU1が電子マネーを取得した場合にユーザU1が取得した電子マネーに相当する金額を投資用口座に入金する例を示したが、ユーザU1が電子マネーによる支払いを行う場合に所定の金額を投資用口座に入金してもよい。すなわち、入金部133は、ユーザが保有通貨によって所定のサービスの支払いを行う場合に、所定の金額をユーザの投資用口座に入金する入金処理を行う。また、入金部133は、保有通貨から、所定のサービスの支払い金額に対して所定の割合を占める金額と所定のサービスの支払い金額とを引いて、所定の割合を占める金額をユーザの投資用口座に入金する。
【0067】
この点について、図6を用いて説明する。図6は、変形例に係る情報処理の一例を示す図である。ショッピングサーバ20Aは、複数の店舗から複数の商品の出品を受け付けて、インターネットを通じて商品を販売するショッピングサービスを提供するサーバ装置である。図6に示す例では、ショッピングサーバ20Aは、ショッピングサービスでユーザU1によって商品が注文される場合に、商品代金の支払いサービスを提供するためのコンテンツをユーザU1の端末装置10に配信する(ステップS21)。
【0068】
端末装置10は、商品代金の支払いサービスを提供するためのコンテンツをショッピングサーバ20Aから受信すると、商品代金の支払いサービスを提供するためのコンテンツに商品代金の支払い方法に対応する選択ボタンを画面に表示する。続いて、端末装置10は、商品代金を電子マネー払いで支払って、かつ、商品代金の所定の割合を占める金額を投資用口座に資金移動させる支払い方法がユーザU1によって選択されると、商品代金の所定の割合を占める金額を投資用口座に資金移動させる要求を情報処理装置100に送信する(ステップS22)。
【0069】
続いて、判定部132は、商品代金の所定の割合を占める金額を投資用口座に資金移動させる要求を端末装置10から受け付けると、ユーザU1に対して目論見書を交付済みであるか否かを判定する(ステップS23)。ここでは、ユーザU1に対して目論見書を交付済みであるものとする。
【0070】
続いて、判定部132は、ユーザU1に対して目論見書を交付済みであると判定すると、商品代金に相当する電子マネーをユーザU1の電子マネー口座から引く(ステップS24)。つまり、判定部132は、商品代金が70,000円である場合には、商品代金として70,000円に相当する電子マネーをユーザU1の電子マネー出金額としてユーザU1の電子マネー残高から引く。
【0071】
続いて、判定部132は、商品代金に相当する電子マネーをユーザU1の電子マネー口座から引いた場合に、電子マネー口座情報記憶部121を参照して、電子マネーに関する情報が通貨条件として、商品代金に相当する電子マネーを出金したか否かを判定する(ステップS25)。すなわち、判定部132は、ユーザU1の電子マネー口座の残高が元々200,000円である場合には、ユーザU1の電子マネー口座の残高が200,000円から130,000円に減ったか否かを判定する。
【0072】
続いて、判定部132は、商品代金に相当する電子マネーを出金したと判定した場合は、電子マネーに関する情報が通貨条件を満たすと判定する。そして、判定部132は、電子マネーに関する情報が通貨条件を満たすので、投資用口座への資金移動条件を満たすと判定する。そして、入金部133は、判定部132によって投資用口座への資金移動条件を満たすと判定された場合に、ユーザU1の投資用口座に移動する資金として、商品代金の所定の割合を占める金額に相当する電子マネーをユーザU1の電子マネー口座から引く(ステップS26)。すなわち、入金部133は、所定の割合が10%である場合には、ユーザU1の投資用口座に移動する資金として、商品代金の70,000円のうち10%を占める金額である7,000円に相当する電子マネーをユーザU1の電子マネー口座から引く。
【0073】
続いて、入金部133は、商品代金の所定の割合を占める金額をユーザU1の投資用口座に入金する(ステップS27)。
【0074】
投資用口座管理サーバ30は、ユーザU1の投資用口座に商品代金の所定の割合を占める金額が入金された場合、情報処理装置100を管理する投資資産の運用会社の運用指図に従って、ユーザU1の投資用口座に預けられた投資資産の投資の対象である投資信託の買付取引を行う(ステップS28)。
【0075】
このように、情報処理装置100は、ユーザU1が日常の買い物をするついでにユーザU1の投資用口座に資金移動することができる。すなわち、情報処理装置100は、ユーザU1がわざわざ投資をするために投資用口座に入金をするという手間を省くことができる。したがって、情報処理装置100は、ユーザU1の投資を促すことができる。なお、図6では、情報処理装置100を管理する投資資産の運用会社がユーザU1に対して目論見書を交付済みである例を示したが、ユーザU1に対して目論見書を交付していなくてもよい。すなわち、ステップS23において、判定部132は、ユーザU1に対して目論見書を交付していないと判定した場合は、図1の説明で述べたように、目論見書を電子交付サービス等によってユーザU1に交付する。」

上記ア.より、当初明細書等には、ユーザU1の投資用口座への入金について、オークションの売上金に相当する電子マネーの「全部」をユーザU1の電子マネー口座に加えた場合に、売上金に相当する電子マネーの「全部」をユーザU1の電子マネー口座から引き、オークションの売上金の「全部」をユーザU1の投資用口座に入金することは記載されているものの、売上金の一部に相当する企業通貨を企業通貨口座に加えたのち、売上金の一部に相当する企業通貨を企業通貨口座から引き、売上金の一部を投資用口座に入金することは記載も示唆もされていない。

また、上記イ.より、当初明細書等には、ユーザU1の投資用口座への入金について、商品代金に相当する電子マネーをユーザU1の電子マネー口座から引き、商品代金に相当する電子マネーを出金したと判定した場合に、商品代金の所定の割合を占める金額に相当する電子マネーをユーザU1の電子マネー口座から引き、商品代金の所定の割合を占める金額をユーザU1の投資用口座に入金すること、すなわち、最初に「商品代金に相当する電子マネー」を電子マネー口座から引き、続いて、電子マネーの出金を判定すると、「商品代金に相当する電子マネー」とは別の「商品代金」の「所定の割合」に相当する電子マネーを投資用金口座に入金することは記載されているものの、売上金の一部に相当する企業通貨を企業通貨口座に加えたのち、売上金の一部に相当する企業通貨を企業通貨口座から引き、売上金の一部を投資用口座に入金すること、すなわち、売上金の「一部」を投資用口座に入金することは記載も示唆もされていない。

さらに、上記ア.は、オークションの「売上金」を「受け取る」という、ユーザU1が電子マネーを取得するためのものであり、これに対して上記イ.は、「商品の代金」を「支払う」という、ユーザU1が電子マネーによる支払いを行うためのものである。よって、上記ア.のオークションの売上金に相当する電子マネーの全部をユーザU1の電子マネー口座に加える場合の処理と、上記イ.の商品代金に相当する電子マネーをユーザU1の電子マネー口座から引く場合の処理とは、前提となる状況が異なるものであるから、相容れないものである。また、上記ア.及びイ.のどちらも売上げの「一部」を投資用口座に入金するものではないことから、仮に、これらの形態を組み合わせたとしても、売上げの「一部」を投資用口座に入金することを開示するものでもない。

してみると、当初明細書等の上記ア.、イ.には、「前記所定の金額の」「「一部」を前記ユーザの投資用口座に資金移動させる要求を前記端末装置から情報処理装置に対して送信する」「第1選択ボタンが前記ユーザによって選択された場合に、前記所定の金額の」「「一部」に相当する企業通貨を前記ユーザの企業通貨を管理する企業通貨口座に加えるとともに、前記企業通貨口座から前記所定の金額の」「「一部」に相当する企業通貨を引いて、前記所定の金額の」「「一部」を前記ユーザの投資用口座に入金する入金処理を行う」ことは記載も示唆もされておらず、当業者にとって自明の事項でもない。また、当初明細書等の他の箇所にも、当該事項は、記載も示唆もされておらず、当業者にとって自明な事項でもない。そして、当該事項は、出願時の技術常識でもない。

よって、「前記所定の金額の」「一部を前記ユーザの投資用口座に資金移動させる要求を前記端末装置から情報処理装置に対して送信する」「第1選択ボタンが前記ユーザによって選択された場合に、前記所定の金額の」「一部に相当する企業通貨を前記ユーザの企業通貨を管理する企業通貨口座に加えるとともに、前記企業通貨口座から前記所定の金額の」「一部に相当する企業通貨を引いて、前記所定の金額の」「一部を前記ユーザの投資用口座に入金する入金処理を行う」は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないので、上記のとおり本件補正を却下する。

また仮に、本件補正が特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしているとしても、本件補正は、上記補正事項b.(補正前の請求項1の「電子商取引サービスを利用するユーザが保有する企業通貨である保有通貨に関する情報を取得する取得部」を削除する補正)を含むものであるから、補正前の請求項1の発明特定事項を概念的に、より下位の発明特定事項とするものではない。よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく、同項第1号に掲げる請求項の削除、同項第4号に掲げる誤記の訂正あるいは同項第5号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものではないことは明らかである。
したがって、仮に、本件補正が特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしているとしても、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしていない。
よって、上記のとおり本件補正を却下する。

第3 原査定の概要
原査定(令和2年3月25日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
請求項1-19に係る発明は、下記引用文献1-7に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.特許第6154517号公報
引用文献2.特許第6209647号公報
引用文献3.スマホでラクラク稼ぐ!メルカリで得するコレだけ!技 初版,株式会社技術評論社,2016年11月25日,第80-82頁
引用文献4.特開2015-64699号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5.米国特許出願公開第2017/323345号明細書
引用文献6.特開2012-64083号公報
引用文献7.米国特許出願公開第2015/242949号明細書

第4 本願発明
本件補正は、上記「第2 補正の却下の決定」のとおり、却下された。
したがって、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、令和元年10月25日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
電子商取引サービスを利用するユーザが保有する企業通貨である保有通貨に関する情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された保有通貨に関する情報が前記ユーザによる電子商取引の売買に伴う資金移動に関する所定の条件である通貨条件を満たす場合に、前記保有通貨から前記電子商取引の売買に伴う所定の金額に相当する保有通貨を引いて、前記所定の金額を前記ユーザの投資用口座に入金する入金処理を行う入金部と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1(特許第6154517号公報)
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。下線は、当審が付した。

「【0009】
本発明は、以上のような従来の技術が有する課題を解決するために提案されたものであり、ユーザの日々の支払い等に基づいて所定の端数金額を算出し、それらを目標金額に対する貯蓄金として振り替えることにより、無理のない範囲で効率よく継続的な貯蓄を実現することでき、支出の抑制や節約等も促して積極的な貯蓄行動を自然に奨励・喚起することができる、金融商品の購入資金の貯蓄等に好適な、端数資金振替蓄積装置とそれに用いられるプログラム及び方法の提供を目的とする。」
「【0016】
[システム構成]
図1に、本発明の一実施形態に係る端数資金振替蓄積装置を備えたシステム構成を示す。
同図に示す本発明の一実施形態に係るシステムは、端数資金振替蓄積サーバ10と、金融機関装置20,30、顧客端末40を備えた端数資金振替蓄積システム1として構成されている。
これら端数資金振替蓄積システム1を構成する端数資金振替蓄積サーバ10,金融機関装置20,30,顧客端末40は、例えばインターネット等の所定のネットワークを介して、相互にデータ通信可能に接続される。
【0017】
[端数資金振替蓄積サーバ10]
端数資金振替蓄積サーバ10は、顧客の入力操作に応じて設定されたルール情報に基づいて、当該顧客の資金口座から所定の蓄積口座へ資金を振り替えて、所定の目標金額を蓄積させるための情報処理装置であり、本発明に係る端数資金振替蓄積装置を構成している。
具体的には、端数資金振替蓄積サーバ10は、例えば1又は2以上のサーバコンピュータや、クラウドコンピューティングサービス上に構築された1又は2以上の仮想サーバからなるサーバシステム等によって構成することができる。なお、図1に示される端数資金振替蓄積サーバ10の構成要素を、適宜、顧客端末40に持たせることも可能であり、例えば、資金計算ルールDB11、資金計算手段13及び資金計算結果DB14を顧客端末40上で実装することもできる。
この端数資金振替蓄積サーバ10には、図示しないOS(Operating System)やDBMS(DataBase Management System)などが備えられ、サーバコンピュータとして運用されるようになっている。」
「【0021】
そして、以上のような端数資金振替蓄積サーバ10は、具体的には、図1に示すように、資金計算ルールDB11,口座情報DB12,資金計算手段13,資金計算結果DB14,資金振替指示手段15,資金振替結果DB16,蓄積資金参照手段17として機能するように構成されている。
資金計算ルールDB11は、後述する顧客端末40から入力操作に応じて設定された目標金額を含む所定の資金計算ルール情報を記憶する手段である。
ここで、資金計算ルールDB11に記憶される資金計算ルール情報としては、後述するように、ユーザが顧客端末40を介して設定する所定情報として、所定の目標金額や、目標金額を達成するための各種のルール(端数ルール,節約ルール,定期ルール,その他ルール等)などがある(後述する図2参照)。
【0022】
口座情報DB12は、ユーザの資金口座等を管理する金融機関装置20,30から、当該顧客の資金口座等に関する口座情報を受信して記憶する記憶手段である。
ここで、口座情報DB12に記憶される口座情報としては、後述するカード会社の金融機関装置20から送信されるカードの利用明細情報、銀行の金融機関装置30から送信される資金口座の取引情報などがある(後述する図3,4,9,11参照)。
【0023】
資金計算手段13は、上述の資金計算ルール情報及び口座情報に基づいて、当該ユーザの資金口座から所定の蓄積口座へ振り替えるべき振替資金を計算する手段である(後述する図3,4,9,11参照)。
具体的には、資金計算手段13は、ユーザの資金口座の引落金額と所定の設定金額との差で示される端数金額を、本発明に係る「振替金額」として算出するようになっている。 また、資金計算手段13は、上記の端数金額とともに、又は端数金額に換えて、所定の固定金額を、本発明に係る「振替金額」として算出することができる。
また、資金計算手段13は、所定のイベント情報が入力された場合に、上述した固定金額を「振替金額」として算出することができる。」
「【0025】
資金計算結果DB14は、資金計算手段13で算出される振替資金を含む資金計算結果を示す情報を記憶する記憶手段である。
資金計算結果DB14に記憶される資金計算結果情報は、上記のような資金計算手段13で計算・算出された「振替金額」を含む、後述する資金口座から蓄積口座への振替処理を実行するために必要となる所定の情報である(後述する図3,4,9,11参照)。
資金振替指示手段15は、資金計算結果DB14に記憶される資金計算結果情報に基づいて、金融機関装置30に所定の資金振替指示情報を送信する手段である。
【0026】
資金振替結果DB16は、資金振替指示情報を送信した金融機関装置30から、当該資金振替指示情報に基づく資金振替結果を示す情報を受信して記憶する手段である。
資金振替結果DB16に記憶される資金振替結果情報は、上記のような資金振替指示手段15の指示によって金融機関装置30で実行された資金口座から蓄積口座への振替処理の結果を示す所定の情報である(後述する図3,4,9,11参照)。」
「【0028】
[金融機関装置20,30]
金融機関装置20,30は、例えばカード会社や銀行などの金融機関に備えられる情報処理装置であって、上述した端数資金振替蓄積サーバ10とデータ通信可能に接続されるようになっている。
図1に示す例では、金融機関装置20はカード会社に設置される情報処理装置、金融機関装置30は銀行に設置される情報処理装置となっている。
【0029】
[カード会社]
カード会社に設置される金融機関装置20は、当該カード会社が運営するカードの利用明細情報が記憶される記憶手段としてカード利用明細DB21が備えられる。
カード利用明細DB21に記憶される情報としては、当該カード会社が管理・運営する各カードについてのユーザの属性情報と、当該カードの利用日時や利用金額,利用内容等を示す利用明細情報などがある。
このカード会社が保有・管理する利用明細情報が、ユーザが目標金額の蓄積のための振替金額を算出するための、本発明に係る「引落金額」となる。
【0030】
ここで、カード会社が運営するカードとしては、例えばクレジットカード,交通系カード,流通系プリペイドカード,各種電子マネーカード,ポイントカードなどがある。
そして、カード利用明細DB21に記憶される情報が、ネットワークを介して端数資金振替蓄積サーバに送信され、各ユーザの口座情報として口座情報DBに記憶されるようになっている。」
「【0033】
また、金融機関装置30は、当該銀行が運営する預金口座として、ユーザが目標金額の蓄積のために振り返る資金の振替先となる、本発明に係る「蓄積口座」(資金貯金口座)の情報が記憶される記憶手段として蓄積口座DB32が備えられる。
蓄積口座は、本発明に係る振替資金を蓄積・貯金するために用いられる口座であり、ユーザが入出金等の取引を行うことができない専用の口座、例えば当該金融機関の別段預金や債券購入用のプール口座等が割り当てられる。この蓄積口座が、ユーザが目標金額の蓄積のために振り返る資金の振替先となる、本発明に係る「蓄積口座」を構成している。
蓄積口座DB32に記憶される情報としては、当該口座を利用する各ユーザの属性情報と、ユーザ毎の蓄積口座の残高や出入金履歴等の取引情報などがある。
この蓄積口座DB32に記憶される取引情報が、ユーザが目標金額の蓄積のための資金の振替結果を含む所定情報を示す、本発明に係る「蓄積参照情報」となる。」
「【0035】
そして、金融機関装置30では、上記のような蓄積口座の振替金額が所定金額になると、その振替資金によって、所定の金融商品の購入処理(資金の移動)を実行することができる。金融商品の購入処理は、金融機関装置30において自動的に、あるいは、ユーザの承認・依頼を得た後に実行することができる。
ここで、蓄積口座の振替資金によって購入(資金移動)可能な金融商品としては、例えば定期預金や外貨預金、投資信託や株式・債券等の証券などがある。
なお、金融商品の購入(資金移動)は、金融機関装置30が備えられる同一の金融機関(銀行)において、当該金融機関が販売する金融商品(定期預金等)を購入することもできるが、金融機関装置30が備えられる金融機関とは異なる他の金融機関、例えば他の銀行や証券会社、外国銀行等が販売する金融商品を購入することもできる。その場合には、購入資金となる振替資金を、他の金融機関に送金・振替等を行って所望の金融商品を購入することができる。」
「【0043】
具体的には、図2に示す例では、所定の「目標金額」達成のために以下のような「ルール」が設定可能であり、設定されたルールに従って算出される金額が「振替資金」として所定の資金口座から蓄積口座への振替対象とされ、「自動」又は「手動」の振替モードによって振替処理されるようになる。
[端数ルール]
・100円?999円の引落:1000円との差額の下2桁・手動
・1,000円?9,999円の引落:10,000円との差額の下3桁・手動
・10,000円以上の引落:10,000円単位との差額の下3桁・手動
[節約ルール]
・電気料金:20,000円との差額・自動
・水道料金:10,000円との差額・自動
・通信料金:10,000円との差額・自動
・外食:40,000円との差額・自動
[定期ルール]
・毎月:5,000円・自動
・毎週:0円・自動
・毎日:0円・自動
[その他ルール]
・キャッシュバック:全額・自動
・●●ポイント:全額・自動
・巨人勝利:100円・自動
・10Km走:100円・自動
【0044】
以上のような「資金計算ルール」が設定されることにより、まず「端数ルール」により、ユーザが日々の買い物等でカードを利用して引落口座からの引落があると、現金の紙幣(お札)で支払いをした場合に発生する釣銭(おつり)に相当する端数が資金計算手段13で算出され、その金額が振替資金として資金口座から蓄積口座に振り替えられることになる。例えば、「4,860円」の引落がある場合には、資金計算手段13で「5,000円-4,860円=140円」の計算処理が行われ、振替資金が「140円」と算出される。
なお、カードの利用・引落は、カード会社の金融機関装置20から送信されるカード利用明細情報に基づいて資金計算手段13によって参照・判別される。」
「【0048】
さらに、「その他ルール」として、キャッシュバックやポイント付与のサービスについて、それらを受け取らなかったことにして全額を蓄積口座に振り替えることができる。 また、ユーザが任意でルールを設定することができ、所定のイベントが発生した場合、例えば贔屓とするスポーツチーム(例えば巨人,浦和レッズ等)が勝利した場合には一定金額(例えば100円)を貯蓄することができ、貯蓄することが楽しみになるという効果が得られる。
なお、このようなイベント発生の有無は、例えばインターネット上のニュースサイトから該当するイベント情報が入力されることで判定することができる。」
「【0052】
[動作]
以上のような「資金計算ルール」が設定されている場合の、本実施形態における端数資金振替蓄積システム1の動作の一例について、図3,4を参照しつつ説明する。
図3及び4は、本実施形態における端数資金振替蓄積システム1の動作の一例を示す説明図である。
まず、端数資金振替蓄積サーバ10では、図3に示すように、定期的に口座情報DB12に格納されている銀行口座やカード利用明細の情報が参照され、資金計算ルールDB11に設定された資金計算ルールに従って、資金計算手段13で資金計算が実行され、その資金計算結果が資金計算結果DB14に出力され記憶される。
なお、口座情報DB12に格納される口座情報は、カード会社の金融機関装置20及び銀行の金融機関装置30から所定のタイミング(例えば日次処理)で必要な情報が送信され、口座情報DB12の情報が更新されるようになっている。
【0053】
図3に示す例では、4月11日の処理動作が示されており、銀行の金融機関装置30からの口座情報として、当該ユーザの普通預金口座の取引として「4月3日:電気料金・15,220円」、「4月11日:テニススクール・4,860円」の引落情報が送信され、また、カード会社の金融機関装置20からのカード利用明細情報として「4月11日:NIFTY・6,230円」の利用明細情報が送信され、それぞれ口座情報DB12の口座情報として記憶されている。
この状態で、所定のタイミング(例えば毎日,一日2回等)で資金計算手段13による資金計算処理が実行さる。
資金計算処理は、上述した予め設定された「資金計算ルール」が参照されて所定の計算処理が行われる。
【0054】
図3に示す例では、4月11日の資金計算処理として、「4月11日:テニススクール・4,860円」について、「資金額:140円・資金振替モード:手動・資金振替ステータス:未貯金」の計算・判別が行われ、また、「4月11日:NIFTY・6,230円」について、「資金額:770円・資金振替モード:手動・資金振替ステータス:未貯金」の計算・判別が行われる。
さらに、「資金計算ルール」に基づいて、「4月11日:定期ルール(毎月)・資金額5,000円・資金振替モード:自動・資金振替ステータス:未貯金」の計算・判別が実行される。
この資金計算手段13での計算結果は、資金計算結果DB14に格納される。
【0055】
その後、資金計算結果DB14の格納された資金計算結果情報に基づいて、資金振替指示手段15により銀行の金融機関装置30に対して資金振替指示情報が送信される。
この資金振替指示では、資金計算結果DB14の資金振替モードが「自動」、又は資金振替ステータスが「貯金する」(図4参照)に設定されている明細を処理対象とする。
資金振替モードが「手動」に設定されている場合には、ユーザの手動操作が行われるまでは、資金振替指示は送信されない。
【0056】
資金振替指示が送信されると、対象となる金融機関装置30では、該当する資金口座(普通預金口座等)の残高が不足しない範囲で、銀行内の別口座(蓄積口座)への振替処理が実行される。
その後、振替指示の結果が、振替指示を金融機関装置30に送信した後、所定のタイミングで送信され、端数資金振替蓄積サーバ10で取得され、その情報が資金振替結果DB16に格納される。
なお、この金融機関装置30からの振替処理の結果は、振替処理が実行されるのと同時にリアルタイムで送信され、あるいは、金融機関の振替処理が終了した後に、所定のタイミングで金融機関装置30から通知を受けることができる。また、この金融機関装置30から振替結果が取得されるまでは、端数資金振替蓄積サーバ10側での資金振替ステータスは「未貯金」のままとなる。」

上記記載によると、次のことがいえる。

(1)【0016】、【0017】の記載によれば、引用文献1には、金融機関装置20,30、顧客端末40と相互にデータ通信可能に接続された端数資金振替蓄積サーバ10であって、端数資金振替蓄積サーバ10は、顧客の入力操作に応じて設定されたルール情報に基づいて、当該顧客の資金口座から所定の蓄積口座へ資金を振り替えて、所定の目標金額を蓄積させるための「情報処理装置」が記載されている。

(2)【0021】、【0022】の記載によれば、端数資金振替蓄積サーバ10は、「金融機関装置20から送信されるカードの利用明細情報、銀行の金融機関装置30から送信される資金口座の取引情報などの口座情報を受信して記憶する手段である口座情報DB12」を有している。

(3)【0021】、【0023】の記載によれば、端数資金振替蓄積サーバ10は、資金計算ルールDB11、資金計算手段13、資金計算結果DB14、資金振替指示手段15として機能するものであり、資金計算ルールDB11は、端数ルール等の資金計算ルール情報を記憶し、前記資金計算手段13は、端数ルール等の資金計算ルール情報及び口座情報に基づいて、当該ユーザの資金口座から所定の蓄積口座へ振り替えるべき振替資金を計算する手段として機能する。
そして【0023】、【0043】、【0044】の記載によれば、「・100円?999円の引落:1000円との差額の下2桁・手動」という端数ルールが設定されることにより、ユーザが日々の買い物等でカードを利用して引落口座からの引落があると、資金計算手段13は、引落金額と所定の設定金額との差で示される端数金額を、振替金額として算出する。
また、【0025】、【0056】の記載によれば、資金計算結果DB14は、資金計算手段13で算出される振替資金を含む資金計算結果を示す情報を記憶し、資金振替指示手段15は、資金計算結果DB14に記憶される資金計算結果情報に基づいて、金融機関装置30に所定の資金振替指示情報を送信し、金融機関装置30は、資金口座から蓄積口座への振替処理を実行する。
さらに、【0033】、【0035】の記載によれば、金融機関装置30は、蓄積口座の振替資金によって、投資信託や株式・債券等の証券などの金融商品の購入処理を実行することができる。
してみると、端数資金振替蓄積サーバ10は、
「 『・100円?999円の引落:1000円との差額の下2桁・手動』という端数ルール等の資金計算ルール情報、及び、ユーザの買い物等でカードを利用したことによる引落口座からの引落を含む口座情報に基づいて、当該ユーザの資金口座から、引落金額と所定の設定金額との差で示される端数金額等の、所定の蓄積口座へ振り替えるべき振替資金を計算する資金計算手段13、
資金計算手段で算出される振替資金を含む資金計算結果を示す情報を記憶する資金計算結果DB14、
資金計算結果DBに記憶される資金計算結果情報に基づいて、金融機関装置に、資金口座から、投資信託や株式・債券等の証券などの金融商品が購入可能な蓄積口座への資金振替指示情報を送信する資金振替指示手段15」として機能するものである。

(4)以上、(1)?(3)によると、引用文献1には、
「 金融機関装置20から送信されるカードの利用明細情報、銀行の金融機関装置30から送信される資金口座の取引情報などの口座情報を受信して記憶する手段である口座情報DB11を有し、
『・100円?999円の引落:1000円との差額の下2桁・手動』という端数ルール等の資金計算ルール情報、及び、ユーザの買い物等でカードを利用したことによる引落口座からの引落を含む口座情報に基づいて、当該ユーザの資金口座から、引落金額と所定の設定金額との差で示される端数金額等の、所定の蓄積口座へ振り替えるべき振替資金を計算する資金計算手段13、
資金計算手段で算出される振替資金を含む資金計算結果を示す情報を記憶する資金計算結果DB14、
資金計算結果DB14に記憶される資金計算結果情報に基づいて、金融機関装置30に、資金口座から、投資信託や株式・債券等の証券などの金融商品が購入可能な蓄積口座への資金振替指示情報を送信する資金振替指示手段15、
として機能する情報処理装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

2 引用文献2(特許第6209647号公報)
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。下線は、当審が付した。

「【0002】
近年、インターネット等のネットワークの普及に伴い、所定の団体等に対して、例えば、寄付や投資といった形で容易に金銭を提供することが可能となってきている。」
「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の従来技術では、ユーザによる所有品の売却意欲を高めることができるとは限らない。具体的には、上記の従来技術では、オークション等により販売される販売商品の販売価格および販売価格に対応する寄付金額(寄付率)を購入者に提示し、購入者による支払いが完了した場合に、購入者により設定された寄付情報に基づいて、寄付金額が寄与される団体を決定する。
【0006】
このような上記の従来技術では、例えば、購入者が商品購入と寄付とを一度に行えるようになることが考えられるが、ユーザによる所有品の売却意欲を高めることができるとは限らない。
【0007】
本願は、上記に鑑みてなされたものであって、ユーザによる物品の売却意欲を高めることができる情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願にかかる情報処理装置は、物品を売りに出すことで当該物品の売主が得ることのできる売上金額を蓄積する蓄積部と、前記蓄積部により蓄積された売上金額の累計額を支援先に提供される提供金として管理する管理部とを有することを特徴とする。」
「【0020】
情報処理装置の一例であるオークション管理装置100は、売主である出品者が物品をオークションに出品することで、かかる出品者が得ることのできる売上金額を蓄積する。そして、オークション管理装置100は、蓄積した売上金額の累計額を事業主に提供される提供金として管理する。
【0021】
ここで、第1の実施形態にかかる事業主について説明する。第1の実施形態にかかる事業主は、「ふるさと納税」制度に加入する団体、すなわち地方自治体であるものとする。このような制度に加入する地方自治体は、寄付という形で金銭(寄付金)の提供を受け付け、受け付けた寄付金の金額(以下、「寄付金額」と表記する)に応じた対価(返礼品)として、例えば、特産品を寄付者に送付する。
【0022】
また、このようなことからオークション管理装置100は、より具体的には、物品をオークションに出品することで出品者が得ることのできる売上金額のうち、どれだけの金額を「ふるさと納税」制度に加入する地方自治体に寄付する寄付金として蓄積させるかの指定を出品者から受け付ける。そして、オークション管理装置100は、出品者によって指定された情報である指定情報に基づいて、売上金額の少なくとも一部を蓄積する。そして、オークション管理装置100は、指定情報に基づき蓄積した金額の累計額が、例えば、出品者により指定された寄付金額に達した場合に、その寄付金額を寄付金として決定する。
【0023】
なお、第1の実施形態においてオークション管理装置100が売上金額を蓄積するというのは、売上金額のうち出品者により指定された金額を、当該出品者が寄付以外の用途に使用不可能な状態で、かつ、当該出品者が寄付金を賄うためだけに蓄積することを意味する。以下では、オークション管理装置100の具体的な処理について説明する。
【0024】
第1の実施形態では、オークション管理装置100は、出品者が物品を出品することで得ることのできる売上金額のうち、どれだけの金額を地方自治体への寄付金のために蓄積させるかの指定を、出品時(例えば、出品設定を行う際)出品者から受け付ける。また、オークション管理装置100は、出品者から寄付金額の指定を受け付け、蓄積した金額の累計額が当該出品者により指定された寄付金額に達した場合に、その寄付金額を寄付金として管理する。
【0025】
図1の例では、まず、売主装置10は、出品者B1の操作に従って、物品を出品するための出品設定の際に、売上金額の蓄積に関する各種設定(以下、「蓄積設定」と表記する)を行うための蓄積設定ページをオークション管理装置100に対して要求する(ステップS1)。オークション管理装置100は、売主装置10から要求を受け付けると、売主装置10に蓄積設定ページを配信する(ステップS2)。蓄積設定ページは、売上金額の蓄積に関する各種蓄積設定を売主である出品者から受け付けるためのウェブページである。
【0026】
ここで、図2に、オークション管理装置100により配信される蓄積設定ページの一例を示す。例えば、オークション管理装置100は、これまでに出品者B1により蓄積設定が行われていない場合には、図2(a)に示す蓄積設定ページP1-1を配信する。図2(a)の例では、蓄積設定ページP1-1は、領域R11と、領域R12と、領域R13aとを含む。
【0027】
また、図2(a)の例では、蓄積設定ページP1-1において領域R11には、蓄積設定よりも前の段階で、出品者B1により設定された出品情報が表示される。図2(a)では、出品者B1が、商品「B11」を開始価格「5,000円」で出品するといった出品設定を行った例を示す。
【0028】
また、図2(a)では、蓄積設定ページP1-1において領域R12には、売上金額のうち、当該売上金額に対してどれだけの割合の金額を地方自治体への寄付金のために蓄積させるかといった蓄積割合が指定可能な状態で表示される例を示す。図2(a)では、蓄積割合「5%」、「20%」、「40%」、「80%」、「全額(100%)」が指定可能な状態で表示される例を示す。」
「【0036】
例えば、オークション管理装置100は、オークション処理により利用者U1を商品B11の購入者(落札者)として決定したとする。また、商品B11の落札価格が「10,000円」であったとすると、オークション管理装置100は、蓄積情報記憶部122を参照し、出品者B1の商品B11に対応する蓄積割合「40%」を取得する。そして、オークション管理装置100は、商品B11の落札価格「10,000円」の「40%」に相当する「4,000円」を指定金額として算出し、算出した指定金額「4,000円」を蓄積情報記憶部122に格納する。」
「【0040】
オークション管理装置100は、入金情報を受け付けると、出品者B1から受け付けた指定情報に基づいて、売上金額を蓄積する蓄積処理を行う(ステップS8)。ここで、落札金額は、売上金額に相当するものである。したがって、オークション管理装置100は、商品B11の落札価格「10,000円」のうち、指定金額「4,000円」を出品者B1が寄付以外の用途に使用不可能な状態で、かつ、出品者B1が寄付金額「10,000円」を賄えるように蓄積する。
【0041】
ここで、蓄積処理についてより具体的に説明する。落札金額「10,000円」は、本来、出品者B1に支払われなければならないが、オークション管理装置100は、入金された落札金額「10,000円」のうち、指定金額「4,000円」については出品者B1に支払わず自口座に蓄積する(貯めておく)。一方、オークション管理装置100は、残りの「6,000円」を出品者B1に送金する。」
「【0053】
また、かかる場合、オークション管理装置100は、ステップS9の判定処理で、現在蓄積している指定金額の累計額が1回目の「4,000円」と2回目の「6,000円」とを合わせて「10,000円」となることから、出品者B1により指定された寄付金額「10,000円」に達したと判定する。
【0054】
このように、累計額が寄付金額に達した場合、オークション管理装置100は、出品者B1に寄付の申し込みを行わせるための寄付申込みページを売主装置10に配信するとともに、寄付金が貯まった旨を出品者B1に通知する(ステップS10)。寄付の申し込みとは、例えば、寄付先の自治体の指定や、寄付の対価として希望する商品の指定である。」
「【0059】
オークション管理装置100は、出品者B1から寄付の申込みを受け付けると、出品者B1に代わって、出品者B1により指定された地方自治体「T1市」へ寄付金額「10,000円」を寄付する寄付処理を行う(ステップS12)。例えば、インターネットバンク利用が可能な場合には、オークション管理装置100は、地方自治体「T1市」により指定された口座に寄付金額「10,000円」を送金する。」
「【0118】
〔4-1.電子マネーを蓄積〕
上記第1の実施形態では、オークション管理装置100の蓄積部134が、所定の口座に売上金額を蓄積する例を示した。しかし、蓄積部134は、第2受付部133により受け付けられた落札金額のうち第1受付部131により受け付けられた指定金額を所定の仮想通貨として、例えば、電子マネーに変換する。そして、蓄積部134は、変換した電子マネーを、電子マネーを管理する電子マネー管理装置300における出品者の口座に蓄積してもよい。この点について、図9を用いて説明する。」
「【0121】
例えば、蓄積部134は、出品者B1の出品商品B11が落札された落札金額「10,000」のうち、指定金額「4,000円」を「4,000円」分の電子マネーに変換する。そして、蓄積部134は、変換した電子マネー「4,000円」を、出品者B1が寄付以外の用途に使用不可能な状態で、電子マネー管理装置300に蓄積する。さらに一例を示すと、蓄積部134は、電子マネー管理装置300によって管理されている出品者B1の電子マネー口座に電子マネー「4,000円」を、出品者B1が使用できない状態で蓄積するよう電子マネー管理装置300に指示する。また、かかる場合、電子マネー管理装置300は、例えば、オークション管理装置100の指示に応じて、対応する自治体への寄付として、電子マネーの送金を行ってよい。」
「【0123】
〔4-2.各種仮想通貨〕
また、第2受付部133は、電子マネーや電子ポイントといった仮想通貨の形式で購入者によって支払われる落札金額に関する情報を受け付けてよい。そして、蓄積部134は、第2受付部133により受け付けられた落札金額のうち、第1受付部131により受け付けられた指定金額を、電子マネーや電子ポイントといった仮想通貨の形式で蓄積する。
【0124】
例えば、第2受付部133により、電子マネー形式で支払われた落札金額に関する情報が受け付けられた場合には、蓄積部134は、その落札金額のうち指定金額に対応する金額の電子マネーを変形例「4-1」で示したように、電子マネー管理装置300に蓄積する。」
「【0248】
〔1.支援先の事業主について〕
上記各実施形態では、オークション管理装置100が、蓄積した売上金額の累計額を、「ふるさと納税」制度に加入する地方自治体に提供される寄付金として管理する例を示した。しかし、オークション管理装置100は、蓄積した売上金額の累計額を、クラウドファンディングの立案者に提供される資金として管理してもよい。
【0249】
かかる場合、オークション管理装置100は、図3に示す申込設定ページP21において、地方自治体から提供を受けることのできる商品一覧の代わりに、各種クラウドファンディングに関する情報一覧を表示させる。
【0250】
また、クラウドファンディングには、一般的に寄付型と投資型が存在する。例えば、売主は、寄付申込ページにおいて、寄付型のクラウドファンディングを選択した場合、対応する立案者から何かしらの対価を得ることはない。一方、売主は、投資型のクラウドファンディングを選択した場合、事業が成功した際には、対応する立案者から金銭的な対価を得ることができる。」


3 引用文献3(スマホでラクラク稼ぐ!メルカリで得するコレだけ!技 初版,株式会社技術評論社,2016年11月25日,第80-82頁)

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、次の事項が記載されている。下線は、当審が付した。

「・売上金の振込申請期限
売上金には定められた1年の申請期限があります。1年以内に振込申請するか、商品購入に利用しましょう。」(82頁)

4 引用文献4(特開2015-64699号公報)
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。下線は、当審が付した。

「【0001】
本発明は、複数の口座をシステム的に関連付けることによって仮想的に1本の口座として扱うことにより利便性を向上することができる仮想統合口座システム及び仮想統合口座方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に金融機関の口座は一般顧客が複数の金融機関で複数の口座を開設していることが多いため、顧客が残高照会や振込等のサービス利用において複数口座の管理が煩雑である。近年においては、インターネットバンキングの普及に伴って口座の一元管理を可能とするサービスも提案されているが、この一元管理は同一金融機関内に限られている。」
「【0006】
本発明の目的は、前述の従来技術による課題を解決しようとするものであり、主たる代表口座の金融機関内だけでなく他行口座とも仮想的に紐付けることにより、仮想的に口座を統合するサービス及び他行への自動資金移動サービスを実現することができる仮想統合口座システム及び仮想統合口座方法を提供することである。」
「【0023】
次いで、仮想統合口座システムは、図2(B)に示す如く、A銀行のIBシステムが前記ステップS306及び307により登録した登録結果を個人PCに返送するステップS201と、利用者が個人PCを用いて各口座に対する付加サービス(例えばB銀行の残高が指定額を下回った場合にC銀行から資金移動を行う付加サービス)をB銀行のIBシステムに登録を依頼するステップS211と、B銀行のIBシステムが前記ステップS2001により依頼された付加サービスをサービス情報DBに登録するステップS308と、該ステップS308による登録結果を個人PCに送信するステップS212と、B銀行のIBシステムが夜間のバッチ処理により残高を監視して条件を満たすこと(例えばB銀行の残高が指定額を下回ったこと)を検知するステップS309と、該ステップS309により検知したサービスを実行するステップS310と、該ステップS310により実行するサービスが資金移動の時、C銀行のIBシステムにサービス実行(資金移動)を依頼するステップS213と、C銀行のIBシステムがステップS213により依頼されたサービスを実行するステップS311と、該ステップS311によるサービス実行結果をA銀行のIBシステムに通知するステップS214と、利用者が個人PCを用いて指定サービスの照会を行うステップS215を実行したとき、A銀行のIBシステムが口座紐付情報DBから紐づけ情報を抽出するステップS312と、該ステップS312により抽出した紐づけ情報及び認証情報DBの認証情報を参照してB銀行のIBシステムにログインするステップS313と、該ステップS313によりログインされたB銀行のIBシステムがB銀行の認証情報を用いてB銀行のIBシステムに認証依頼を行うステップS216と、B銀行のIBシステムが前記ステップS216により依頼された本人認証を行うステップS316と、該ステップS306によりB銀行の口座情報をA銀行のIBシステムに送信するステップS217と、A銀行のIBシステムが該ステップS217により受信したB銀行口座情報を参照して照会処理を行うステップS315と、照会結果のサマリを生成するステップS316と、該ステップS316により頼制したサマリを個人PCに送信することにより個人PCが指定サービス取得結果を入力するステップS218とを実行することによって、利用者が予め指定した資金移動等の付加サービスを自動実行することができると共に、利用者はA銀行のIBシステムにアクセスするたけで異なる金融機関の複数口座のサービス実行結果を知ることができる。
【0024】
このように本実施形態による仮想統合口座システムは、自動引落時に自動的に別口座から不足金額を補填(振り込み/振替)し、払い込み延滞を予防すること、口座の残高が一定金額を超過すると、超過分を別口座に退避すること(余剰金の貯蓄、リスクの分散の効果)、口座の残高が一定金額を下回ったとき不足分を別口座から補填すること(単身赴任者、海外出張などで口座を小口化)と、複数口座の残高照会や入出金照会により所有口座全体の状況掌握を容易にすること、資金配分(入金/出金)の管理を容易にすることができる。」

5 引用文献5(米国特許出願公開第2017/323345号明細書)
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。下線は、当審が付した。

「[0085] In the present aspects, a surplus of funds may be detected when a current account balance exceeds the calculated average daily account balance by a threshold value (e.g., by 10%, 25%, 50%, etc.). Once a surplus is detected, one or more processors 122 may calculate a number of days from the time the surplus is detected for which a statistical probability exceeds a threshold likelihood of the balance of the user's financial account remaining in excess of the average daily account balance. In other words, a likelihood may be calculated that the surplus may remain for some period of time in excess of the average daily account balance. If this likelihood exceeds a threshold likelihood (e.g., 80%), then one or more processors 122 may request a transfer of funds from the financial account with the surplus to another, higher interest-bearing financial account for the calculated number of days in an amount equal to a difference between the threshold value and the average daily account balance. In this way, personalized banking engine 120 may actively monitor user account activity and attempt to optimize accrued interest by automatically moving funds between accounts when a surplus of funds held in a low interest-bearing fund is identified.」

(当審仮訳)
「[0085] 本態様では、現在のアカウント残高が閾値(例えば、10%、25%、50%など)によって算出された平均日別アカウント残高を超えるときに資金余剰が検出されてもよい。余剰が検出されると、1つ以上のプロセッサ122は、ユーザの金融口座の残高が一日の平均口座残高を超えて残っている統計的確率が閾値の可能性を超えている余剰が検出された時点からの日数を計算してもよい。換言すれば、余剰金が一日の平均口座残高を超えている状態が一定期間続く可能性を算出することができる。この可能性が、可能性の閾値(例えば80%)を超える場合、1つまたは複数のプロセッサ122は、閾値と平均日次口座残高との差に等しい金額で、計算された日数分、剰余金のある金融口座から別の高利の金融口座への資金移動を要求してもよい。このようにして、個人化された金融エンジン120は、ユーザアカウントの活動を積極的に監視し、低利率のファンドに保持されている資金の余剰が識別された場合に、アカウント間で資金を自動的に移動させることによって、未収利息の最適化を試みてもよい。」

6 引用文献6(特開2012-64083号公報)
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6には、図面とともに次の事項が記載されている。下線は、当審が付した。

「【要約】
【課題】
消費者が老後の生活に備える貯蓄を自ずと行うことができ、かつ貯蓄に対し負担を感じることなく長期に亘り続けることができる自動貯蓄システムを提供することを目的とする。
【解決手段】
インターネット回線等の通信回線を介して顧客と例えばクレジットカードを取り扱うカード会社が互に接続されてなり、同カード会社が、金融機関の顧客預金口座よりクレジットカードで支払った代金分の預金を引き出す際に、予め情報端末、例えば顧客のパソコンより設定した割増分を加算して引き出し、かつ割増分に相当する額の金銭を同顧客の第2預金口座に自動送付できるようにした。」
「【0007】
本発明の目的とするところは、消費者が老後の生活に備える貯蓄を自ずと行うことができ、かつ貯蓄に対し負担を感じることなく長期に亘り続けることができる自動貯蓄システムを提供できるようにすることにある。
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明に係る自動貯蓄システムは、通信回線を介して顧客と企業が互に接続されてなり、顧客もしくは顧客が認める企業が、同顧客の貯蓄手段より現金もしくは現金と同じ価値を有するポイントなどの蓄財を引き出す際に、予め顧客が情報端末より設定した割増分を加算して引き出し、かつ割増分に相当する蓄財を同顧客の第2貯蓄手段に自動送付できるように構成したものとしてある。」
「【0015】
本発明に係る自動貯蓄システムによれば、消費者が商品代金を支払う際に、同時に貯蓄を行うことができ、しかも支払い金額に対する貯蓄割合を消費者自身で設定できるので、消費額に応じた貯蓄を無理なく自ずと行うことができて、かつ長期に亘り続けることができる。 すなわち、消費者が自分の収入に応じた消費行動を行うことで、相応の貯蓄を自動的に行うことができることにある。」
「【0021】
次いで、消費者が情報端末、例えば個人所有のパソコンより、クレジットカードにより商品を購入した際にこの支払い金額に対し貯蓄に回すための上乗せ金の割合(貯蓄率)を、インターネット回線等の通信回線を介して自動貯蓄システムにおけるホストコンピュータに設定する(図中の符号:(ア))。」
「【0030】
次いで、消費者が自分のパソコンより、クレジットカードにより商品を購入した際にこの支払い金額に対し貯蓄に回すための上乗せ金の割合(貯蓄率)を、インターネット回線を介して自動貯蓄システムにおけるホストコンピュータに設定する(図中の符号:(ア))。
【0031】
これ以後、消費者は自動貯蓄システムの利用が可能となり、クレジットカードにより購入した商品の代金を支払う際に、同時に所定金額の貯蓄を行える。
【0032】
上述のように構成したシステムによる自動貯蓄の流れは以下のとおりである。
【0033】
図2にて、消費者がクレジットカードにより商品を購入すると、商品を販売した店舗から銀行に代金の支払い要求が入る(図中の符号:(イ))。
【0034】
そうすると、銀行は、クレジットカードを使用した消費者を識別し、商品の代金とこの代金を基に算出した貯蓄に回す上乗せ金を合計した合計金額のうち商品の代金を、消費者の預金口座より引き出して店舗に支払う(図中の符号:(ウ))。
【0035】
また銀行は、商品の代金とこの代金を基に算出した貯蓄に回す上乗せ金を合計した合計金額のうち貯蓄に回す上乗せ金を、消費者の預金口座より引き出して同消費者の専用貯蓄口座に送金する(図中の符号:(エ))。
【0036】
また、専用貯蓄口座に貯蓄している金銭は、消費者の任意契約により運用会社にて運用する場合がある。」

7 引用文献7(米国特許出願公開第2015/242949号明細書)
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献7には、図面とともに次の事項が記載されている。下線は、注目箇所に当審が付した。

「[0094] The cardholder may choose to link credit card(s), prepaid card(s), and/or debit card(s) accounts to the investment card; phrased differently, the cardholder may choose to link these different wallet types to his investment card in addition to the different wallets linked to securities. Furthermore, the issuer may approve purchases even though application of the wallet and payment algorithms to the investment card's securities wallets indicates there are insufficient authorized funds in the cardholder's security portfolio(s) to effectuate the purchase by accessing these different wallet types to compensate for any deficit (i.e., the difference between the purchase price and the authorized funds linked to the securities on the investment card).
[0095] In an example of linking a credit card account to the investment card, via application of the wallet and payment algorithms the issuer may conclude the funds in a given wallet (or all wallets) on the investment card linked to securities are insufficient to pay for a purchase. Nonetheless, the issuer may then access the credit card linked to the investment card to finance the difference between the purchase price and the amount of authorized funds linked to the securities wallet(s). Thus, if the purchase price were USD 1,000, and the application of the wallet and payment algorithms provided a maximum authorized funds linked to the securities wallet(s) of USD 800, then the issuer may approve the transaction and use the credit card component of the investment card to fund the deficit (USD 1,000-USD 800=) USD 200 amount. This deficit amount could be recalculated once the net proceeds from the sale of securities linked to the investment card were received, so that for example if the net proceeds from such sale were USD 830, then the credit charge would be recalculated to USD 170 (=USD 1,000-USD 830). In this case, the issuer may initially place a USD 200 hold on the credit card account linked to the investment card, and the hold amount would be recalculated to USD 170 once the net proceeds from the sale of securities linked to the investment card were known.
[0096] The above process can also be applied to prepaid card(s) and debit card(s) accounts linked to the investment card. In those cases, rather than accessing the credit card component of the investment card to finance the deficit amount, a prepaid or debit card account linked to the investment card would be accessed. Similar to the example above, an initial hold of USD 200 would be placed on the prepaid or debit card, and the hold amount recalculated once the net proceeds from the sale of securities linked to the investment card was known. The prepaid card and debit card linked to the investment card could be tied to cash, checking or savings accounts, cash or asset management accounts, margin accounts, or any other repository of funds. Therefore, even if the securities in the wallet(s) of the investment card are insufficient to effectuate the purchase, this deficit amount can be paid by accessing credit card(s), prepaid card(s), and/or debit card(s) accounts linked to the investment card.」

(当審仮訳)
「[0094] カード所有者は、クレジットカード、プリペイドカード、及び/又はデビットカードを投資カードにリンク付けることを選びうる;換言すれば、カード所有者は、証券にリンクされた異なるウォレットに加えてこれらの異なるウォレットタイプを、その加入者の投資カードにリンクすることを選択することができる。さらに、発行者は、投資カードの証券ウォレットへのウォレットおよび支払いアルゴリズムの適用により、カード所有者の証券ポートフォリオに十分な承認された資金がなく、これらの異なるウォレットタイプにアクセスして購入を実行し、不足分(すなわち、購入価格と投資カードの証券にリンクされた承認された資金との差額)を補うことができない場合でも、購入を承認することができる。
[0095] クレジットカード口座を投資カードにリンクする例では、ウォレットと支払いアルゴリズムの適用を介して、発行者は証券にリンクされた投資カードの所定のウォレット(または全てのウォレット)の資金が、購入に対する支払いを行うのに不十分であると結論付けることができる。しかしながら、発行者は、投資カードにリンク付けられたクレジットカードにアクセスし、購入価格と証券ウォレットにリンクされた、許可された資金の差額を調達することができる。このように、購入価格は、1,000米ドルであり、ウォレットおよび決済アルゴリズムの適用により、証券ウォレットにリンクされた最大許可資金が800米ドルであった場合、発行者は取引を承認すると、投資カードのクレジットカードコンポーネントを使用して、不足分の(1,000米ドル-800米ドル=)200米ドルを調達することができる。この赤字額は、投資カードにリンクされた証券の売却による純収入を受け取った時点で再計算される可能性があり、例えば、そのような売却による純収入が830米ドルであった場合、クレジット・チャージは170米ドル(=1,000米ドル-830米ドル)に再計算されることになる。この場合、発行者は最初に投資する必要なしにクレジットカード口座に保持する200米ドルを置き、投資カードにリンクされた証券の売却による収益がわかった時点で保有額を170米ドルに再計算することができる。
[0096] また、上述の方法は投資カードにリンクされたプリペイドカード及びデビットカードの口座に適用することができる。これらの場合、赤字額を調達するために投資カードのクレジットカードコンポーネントにアクセスするのではなく、投資カードにリンクされたプリペイドカードまたはデビットカードの口座にアクセスすることになる。上記の例と同様に、プリペイドカードまたはデビットカードには200米ドルの初期保有が置かれ、投資カードにリンクされた有価証券の売却による純利益が判明した時点で保有額が再計算される。投資カードにリンクされたプリペイドカードやデビットカードは、現金、当座預金、貯蓄口座、現金・資産管理口座、信用取引口座、その他の資金保管場所にリンク付けることができる。したがって、投資カードのウォレット内の証券が購入を実現するために不足している場合でも、この不足分は投資カードにリンクされたクレジットカード、プリペイドカード、および/またはデビットカードの口座にアクセスして支払うことができる。」

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明における、口座に含まれる通貨はユーザの名義で保有されていることは明らかであるから、引用発明の「資金口座の取引情報などを含む口座情報」と本願発明1の「電子商取引サービスを利用するユーザが保有する企業通貨である保有通貨に関する情報」とは、いずれも「ユーザが保有する保有通貨に関する情報」である点で共通する。そして、引用発明の情報処理装置は、通貨に関する情報を受信する機能を備える点で、取得する手段を有していることは明らかであり、この取得する手段は、本願発明1の「取得部」に相当する。
よって、引用発明における「ユーザが保有する通貨に関する情報」を取得する手段と本願発明1の「電子商取引サービスを利用するユーザが保有する企業通貨である保有通貨に関する情報を取得する取得部」とは、いずれも「ユーザが保有する保有通貨に関する情報を取得する取得部」である点で共通する。

イ 引用発明の「ユーザの買い物等でカードを利用したことによる」ことは、カードを利用した商品等の購入であるから、「売買」であるといえ、引用発明の「ユーザの買い物等でカードを利用したことによる引落口座からの引落」は、売買により引落口座から資金を引き落とすことであるから、「ユーザによる売買に伴う資金移動」であるといえる。
そして、引用発明の「・100円?999円の引落:1000円との差額の下2桁・手動」という端数ルールは、買い物等でカードを利用したことによる引落口座からの引落が、「100円?999円」である場合という条件を含み、当該条件を満たした場合に、「資金計算手段1」において、「1000円との差額の下2桁」を、「当該ユーザの資金口座から、引落金額と所定の設定金額との差で示される端数金額等の、所定の蓄積口座へ振り替えるべき振替資金」として計算するものであるから、引用発明の「『・100円?999円の引落:1000円との差額の下2桁・手動』という端数ルール」のうち、買い物等でカードを利用したことによる引落口座からの引落についての「・100円?999円の引落」という条件と、本願発明1の「前記ユーザによる電子商取引の売買に伴う資金移動に関する所定の条件である通貨条件」とは、いずれも、「売買に伴う資金移動に関する所定の条件である通貨条件」である点で共通する。
そして、引用発明の「資金計算手段1」において計算される「1000円との差額の下2桁」である「当該ユーザの資金口座から、引落金額と所定の設定金額との差で示される端数金額等の、所定の蓄積口座へ振り替えるべき振替資金」は、ユーザが買い物等でカードを利用したことによる引落口座からの引落を含む口座情報に基づいて計算されるものであるから、本願発明1の「前記電子商取引の売買に伴う所定の金額」とは、「売買に伴う所定の金額」である点で共通する。
また、引用発明の「資金口座」からは、引落、振替えが行われることから、引用発明の「資金口座」は「ユーザが保有する保有通貨」を有することは明らかであり、引用発明の「資金口座」に「ユーザが保有する保有通貨」と、本願発明1の「ユーザが保有する企業通貨である保有通貨」とは、いずれも、「ユーザが保有する保有通貨」である点で共通する。
また、引用発明の「蓄積口座」は、投資信託や株式・債券等の証券などの金融商品が購入可能であり、「資金口座」から「蓄積口座」への振替は一般的に同一名義の口座で行われることから、引用発明のユーザの「蓄積口座」は、本願発明1の「前記ユーザの投資用口座」に相当する。
そして、引用発明の「資金口座から蓄積口座への資金振替指示情報」は、資金口座から振替資金を引いて、振替資金を蓄積口座に入金する指示情報といえ、当該資金振替指示情報を送信することにより、当該資金振替指示情報に基づいて資金口座から引く処理、及び、蓄積口座に入金する処理を行わせるものであるから、引用発明における当該「資金振替指示情報を送信する」ことは、資金口座から引く処理、及び、蓄積口座に入金する処理を指示することである。
ここで、当該指示は、引用発明において、「買い物等でカードを利用したことによる引落口座からの引落が、「100円?999円」である場合という条件を満たした場合に、資金計算手段、及び、資金振替指示手段により、資金計算結果DBを用いて行われる処理であるから、これら資金計算手段、資金計算結果DB、及び資金振替指示手段はまとめて「入金のための手段」といえるものである。
以上によると、引用発明の「ユーザの買い物等でカードを利用したことによる引落口座からの引落を含む口座情報に基づいて」、当該引落が「・100円?999円の引落」という条件を満たす場合に、「資金計算手段」により計算される「1000円との差額の下2桁」である「ユーザの資金口座から、引落金額と所定の設定金額との差で示される端数金額等の、所定の蓄積口座へ振り替えるべき振替資金」を、金融機関装置に「資金口座から蓄積口座への資金振替指示情報」として送信することにより、資金振替指示情報に基づいて資金口座から引く処理、及び、蓄積口座に入金する処理を行わせることと、本願発明1の「前記取得部によって取得された保有通貨に関する情報が前記ユーザによる電子商取引の売買に伴う資金移動に関する所定の条件である通貨条件を満たす場合に、前記保有通貨から前記電子商取引の売買に伴う所定の金額に相当する保有通貨を引いて、前記所定の金額を前記ユーザの投資用口座に入金する入金処理を行う入金部」とは、いずれも、「前記取得部によって取得された保有通貨に関する情報が、ユーザによる売買に伴う資金移動に関する所定の条件である通貨条件を満たす場合に、前記保有通貨から前記取引の売買に伴う所定の金額の保有通貨を引いて、前記所定の金額を前記ユーザの投資用口座に入金するための処理を行う入金部」である点で共通する。

ウ 引用発明における「情報処理装置」が、本願発明1と同様の「情報処理装置」であることは明らかである。

エ 以上、上記ア?ウによると、本願発明1と引用発明とは次の一致点、相違点を有する。

[一致点]
ユーザが保有する保有通貨に関する情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された保有通貨に関する情報が、ユーザによる売買に伴う資金移動に関する所定の条件である通貨条件を満たす場合に、前記保有通貨から前記売買に伴う所定の金額の保有通貨を引いて、前記所定の金額を前記ユーザの投資用口座に入金するための処理を行う入金部と、
を備える情報処理装置。

[相違点1]
売買が、本願発明では、「電子商取引」であるのに対し、引用発明では、そのような特定がなく、また、「ユーザ」が、本願発明では、「電子商取引サービスを利用するユーザ」であるのに対し、引用発明ではそのような特定がない点。
[相違点2]
「保有通貨」の「通貨」が、本願発明では、「企業通貨」であるのに対し、引用発明では、そうではない点。
[相違点3]
「入金するための処理を行う入金部」が、本願発明では、入金処理を行うのに対し、引用発明では、金融機関装置に「資金口座から蓄積口座への資金振替指示情報」として送信するに留まり、入金処理を行うものではない点。
[相違点4]
「入金部」による「保有通貨から前記売買に伴う所定の金額の保有通貨を引いて、前記所定の金額を前記ユーザの投資用口座に入金するための処理」が、本願発明では、所定の金額に相当する企業通貨である保有通貨を引くのに対して、引用発明では、保有通貨から所定の金額を引いている点。


(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、相違点2、4をまとめて先に検討する。
引用文献1には、金融機関装置が設置されるカード会社が運営するカードとして、電子マネーカード、ポイントカード等が記載されている(【0028】-【0030】)が、「資金口座」に「ユーザが保有する保有通貨」を電子マネー、ポイントとすることを示唆するものではない。
また、引用文献2には、オークションの落札金額のうち指定金額を電子マネーに変換して出品者の口座に蓄積すること(【0118】)、オークションの落札金額を電子マネーや電子ポイントといった仮想通貨の形式で受け付け、指定金額を電子マネーや電子ポイントといった仮想通貨の形式で蓄積すること(【0123】)が記載されているが、カードの利用に伴う引き落としは、通常、銀行の口座から行われるものであるから、引用発明のカード会社が運営するカードについて、カードを利用したことによる引き落としを行う引落口座を、電子マネー、ポイント等の企業通貨とすること(相違点2に係る構成)が、当業者にとって容易に想到し得た事項であるとはいえない。
さらに、引用発明において、「保有通貨」を「企業通貨」とした場合、相違点4に関して、「所定の金額に相当する企業通貨である保有通貨を引く」構成、すなわち、企業通貨を金額(法定通貨)に換金して、当該金額を投資用口座に入金する構成は、引用文献1及び引用文献2、引用文献3-7には、記載も示唆もなく、相違点4に係る構成を当業者が容易に想到し得た事項であるとはいえない。
以上によると、引用発明、引用文献1に記載された技術的事項、及び、引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて、当業者が上記相違点2及び相違点4に係る構成を容易に想到し得たということはできない。
そして、上記相違点2及び相違点4の構成とすることで、ユーザの投資を促すことができるという特有の効果を奏するものである。
したがって、その他の相違点については検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明、引用文献1に記載された技術的事項、及び、引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2-16について
本願発明2-16は、本願発明1を減縮した発明であり、上記相違点1-4に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同様に、当業者であっても、引用発明、引用文献1に記載された技術的事項、及び、拒絶査定において引用された引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3.本願発明17について
本願発明17は、本願発明1に対応する情報処理方法の発明であり、本願発明1の相違点2、相違点4に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者が、引用発明、引用文献1に記載された技術的事項、及び、引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4.本願発明18について
本願発明18は、本願発明1に対応する情報処理プログラムの発明であり、本願発明1の相違点2、相違点4に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者が、引用発明、引用文献1に記載された技術的事項、及び、拒絶査定において引用された引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第7.むすび
以上のとおり、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-08-30 
出願番号 特願2017-222790(P2017-222790)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小山 和俊  
特許庁審判長 高瀬 勤
特許庁審判官 吉田 誠
松田 直也
発明の名称 情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ