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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1377487
審判番号 不服2021-1959  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-02-12 
確定日 2021-09-14 
事件の表示 特願2019-500060「窒化膜成膜方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月23日国際公開,WO2018/150452,請求項の数(3)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2017年(平成29年)2月14日を国際出願日とする出願であって,令和元年5月23日に手続補正がされ,令和2年4月15日付けで拒絶理由通知がされ,同年6月3日付けで意見書が提出され,同年11月20日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,令和3年2月12日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,同年4月27日に前置報告がされ,同年6月11日に審判請求人から前置報告に対する上申がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年11月20日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1?3に係る発明は,以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献3?5に記載された技術常識に基づいて,また,本願請求項4に係る発明は,以下の引用文献1,2に記載された発明及び引用文献3?5に記載された技術常識に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開昭61-222534号公報
2.特開2015-119025号公報
3.特開2008-117878号公報
4.特開平07-014826号公報
5.特開平04-136171号公報

第3 本願発明
本願請求項1?3に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」?「本願発明3」という。)は,令和3年2月12日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
処理室(10)内に配置された基板(1)上に窒化膜を成膜する窒化膜成膜方法であって,
(a) シラン系ガスを前記処理室に供給するステップと,
(b) 窒素ラジカルガスを前記処理室に供給するステップと,
(c) 前記処理室内でプラズマ現象を生じさせることなく,前記ステップ(a) で供給されるシラン系ガスと前記ステップ(b) で供給される窒素ラジカルガスとを反応させて,前記基板上に窒化膜を成膜するステップとを備え,
前記ステップ(c) は,シラン系ガスが分解する温度以上に前記基板の表面温度を加熱する加熱処理を含み,
前記ステップ(b) は,前記処理室とは別に設けられたラジカル発生器(20)内で窒素ガスから窒素ラジカルガスを生成し,生成した窒素ラジカルガスを前記処理室に供給するステップを含み,
前記ラジカル発生器を加熱することで400℃以下の状態で窒素ラジカルガスを生成することを特徴とする,
窒化膜成膜方法。」

なお,本願発明2,3は,本願発明1を減縮した発明である。

第4 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開昭61-222534号公報)には,次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下,同様である。)。
ア 「(イ)産業上の利用分野
この発明は,所定の放射光および活性種を作成し,これらを併用することによって,殊に半導体デバイスの絶縁体膜,半導体膜,金属膜の膜生成,エッチング,表面クリーニング,表面改質等の表面処理を行なう表面処理方法およびその装置に関する。」(2ページ左上欄17行?右上欄3行)

イ 「(ハ)発明の目的
この発明は,表面処理に有用で純度の高い,強力な放射光および活性種を安定して作成し,これらを用いることによって,工業的に利用可能な程の充分な速度で,良質で有効的な表面処理を行なうことのできる,新規な表面処理方法およびその装置の提供を目的とする。」(3ページ左上欄10?16行)

ウ 「(ホ)実施例
第1図は,この発明の実施例の表面処理装置を示したものである。10は放電室であり,20は反応室である。放電室10は高周波(数KHz?数百MHz)の電源1,コイル2及び放電管6で構成されており,電源1から発する高周波電圧がコイル2に印加されると,放電管6の内部の高周波誘導結合された放電用空間60に放電が生じる。・・・
印加する高周波電力を大きくしてゆくにしたがって先づ高周波グロー放電を生じるが,さらに大きい電力を加えるときはプラズマがピンチされてLTE(Local Thermal Equilibrium局所熱平衡)プラズマ3の生じるのが観察される。・・・
更に続けると,上記の導入ガスが水素の場合には,LTEプラズマ内には,通常の高周波グロー放電と比較して極めて多量の水素原子および水素分子の励起状態,水素ラジカル,イオン等の活性種の存在するのが発光分光分析で確認できる。LTE放電プラズマで多量の活性種の生れることは,他のガス,例えば窒素の場合も同じであって,第2図及び第3図は,窒素の真空紫外発光分光分析の結果を示したものである。第2図は,LTEプラズマの発光分析,第3図は高周波グロープラズマの発光分析である。両プラズマは同じ装置を使ってともに13.56MHz,2.5kW,圧力700mTorr,N_(2)流量30sccmの条件下でえられたものである。この装置のこの作成条件では,丁度,LTEと高周波グローの二つの状態が,互に他にヒステリシス的に移行するため,同1条件でLTEと高周波グローの二つの状態を作り出し比較することができる。発光強度を示す縦軸は,両図とも任意単位となっているが,LTEのグラフの縦軸の目盛は,グロー放電のグラフの縦軸の目盛100倍近くにまで目盛が強度に縮められており120nmの光の強度で比較すると,LTEの方が高周波グローに比較して120倍の発光強度がある。そして先述の水素の場合と同様にこの窒素の場合でもLTEプラズマは短波長光の輝度が強く,そのスペクトルは,窒素原子からの発光に属することから,LTEプラズマの内部に活性種,特に窒素ラジカルを多く含まれることが明らかである。なお水素,窒素のみならず酸素やそのほかのガスについても同様な結果が得られる。
・・・
次に反応室20について説明すると,反応室20は,必要ならば気密に保つことができる反応容器7とその中に設けられた反応気体を導入するための導入リング13,基体16を設置するための基体ホルダ8で構成されている。
そして反応室20と放電室10の間には,放電室10内に発生したLTEプラズマ3からの活性種18または,放射光17と活性種18を反応室20の基板16の表面上に導入するメッシュ状の電極30が設けられている。所定の反応ガスはバルブ11を介して流れの方向12から中空の導入リング13内に導かれ,リングの内側に多数設けられた小孔130から基体16の表面に吹き出されることで反応容器7の内部に供給される。基体ホルダー8には温度コントローラー9が設置されており必要に応じて基体16の温度を調節できる。
・・・
第1図の装置を使用し,放電室10の導入ガスとして窒素を用い,反応室20に導入するガスとしてシランガスを用いたとき,基体16の上にSiN膜が作成できた。このときの条件は,基体温度200℃,圧力700mTorr,SiH_(4)流量25sccm,N_(2)流量200sccm,電力3.5kW(13.56MHz)である。このSiN膜の成膜メカニズムは,LTEプラズマにより生成した窒素ラジカルと,LTEプラズマから発する短波長光により活性化(励起および分解)したシランとが反応したものである。」(3ページ左下欄3行?5ページ右下欄3行)





(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)ウの記載から,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「反応容器7の中に設置された基体16上にSiN膜を成膜するSiN膜成膜方法であって,
シランガスを反応室20に導入するステップと,
窒素ガスを放電室10に導入し,放電室10内に発生したLTEプラズマ3からの放射光17と活性種18を反応室20の基板16の表面上に導入するステップと,
基体温度200℃で,LTEプラズマにより生成した窒素ラジカルと,LTEプラズマから発する短波長光により活性化(励起および分解)したシランとを反応させて,基体16上にSiN膜を成膜するステップを含む,
SiN膜成膜方法。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2015-119025号公報)には,次の事項が記載されている。
「【0018】
活性種生成部3は、本例においては、2つの活性種生成ユニットを備えている。1つは、活性種源を含む第1のガスから無声放電により第1の活性種を生成する第1の活性種生成ユニット12である。もう1つは、活性種源を含む第2のガスから誘導結合プラズマ、容量結合プラズマ、およびマイクロ波プラズマの少なくとも1つにより第2の活性種を生成する第2の活性種生成ユニット13である。本例においては、第2の活性種生成ユニット13は、誘導結合プラズマにより第2の活性種を生成する。
【0019】
第1の活性種生成ユニット12は、第1の活性種を生成する第1の生成室121を有している。第1の生成室121の、例えば、天板には、活性種源を含む第1のガスが供給される活性種源供給孔122が設けられている。処理ガス供給源2は、第1のガスとして窒素ガス(N_(2):図2参照)を、活性種源供給孔122を介して第1の生成室121の内部に供給する。
【0020】
第1の生成室121の内部の圧力は、例えば、常圧とされる。常圧は、例えば、大気圧であり、約1013hPa(760Torr:図2参照。なお、本明細書では1Torrを133.3Paと定義する)である。内部の圧力を常圧とした第1の生成室121においては、窒素ガス(N_(2))から無声放電により第1の活性種として窒素ラジカル(N^(*):図2参照)が生成される。
【0021】
第1の生成室121の内部には、高周波電極対123a、123bが設けられている。高周波電極対123a、123bは相対向して第1の生成室121の内部に配置されており、その表面は、例えば、絶縁膜124により覆われている。高周波電極対123a、123bには第1の高周波電源125に接続されている。第1の高周波電源125からの高周波電力が、高周波電極対123a、123bに印加されると、第1の生成室121の内部には放電が起こり、これにより、供給された窒化ガス(N_(2))から窒素ラジカル(N^(*))が生成される。窒素ラジカル(N^(*))の濃度(ラジカル濃度)は、無声放電を用いることから、例えば、1×10^(14)cm^(-3)オーダーとなる。」

以上によれば,引用文献2には,以下の発明が記載されていると認められる。
「活性種源を含む第1のガスから無声放電により第1の活性種を生成する第1の活性種生成ユニット12であって,
前記第1の活性種を生成する第1の生成室121を有し,
前記第1の生成室121には、活性種源を含む第1のガスが供給される活性種源供給孔122が設けられ,
処理ガス供給源2は、第1のガスとして窒素ガス(N_(2))を、前記活性種源供給孔122を介して第1の生成室121の内部に供給し,
前記第1の生成室121の内部には、相対向して高周波電極対123a、123bが設けられ,その表面は絶縁膜124により覆われており,
前記高周波電極対123a、123bには第1の高周波電源125に接続されており,前記第1の高周波電源125からの高周波電力を、前記高周波電極対123a、123bに印加して、前記第1の生成室121の内部に放電を起こすことにより、供給された前記窒化ガス(N_(2))から窒素ラジカル(N^(*))を生成する第1の活性種生成ユニット12。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に技術常識を示す文献として引用された引用文献3(特開2008-117878号公報)には,次の事項が記載されている。
「【0027】
次に,化学的気相成長反応炉内に半導体装置本体20を導入し,SiO_(2)を成膜する。材料ガスには珪素源として例えばシランやジシラン,ジクロロシラン,ジフロロシラン,テトラエトキシシラン(TEOS)などの珪素原子を含むガスを用いることができ,酸素源として例えば,酸素(O,O_(2)),オゾン(O_(3)),酸素ラジカル,N_(2)Oなどの酸素原子を含むガスを用いることが出来る。またこれらの分解には熱励起やプラズマ励起,光励起などを用いることが出来る。好ましくはそれらの熱分解により成膜することで,半導体装置本体20にダメージを与えずに良質の二酸化珪素を成膜できる。膜厚は50?200nmあればよい。膜厚は成膜条件により制御できるが,熱酸化法に比べて大幅に成膜時間を短縮することが可能である。また,成膜温度は1100℃以下とする。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に技術常識を示す文献として引用された引用文献4(特開平07-014826号公報)には,次の事項が記載されている。
「【0048】反応容器(1)の内部には,試料ホルダ(2)上に載置された被処理基体(3)が収容されるようになっており,前記反応容器(1)内へは,ガス導入管(4),(5)を介してそれぞれ第1の反応性ガスX(6)の活性種と第2の反応性ガスY(7)が導入されるとともに,排気系(図示せず)へ接続された排気管(8)を介して排気されるものとなっている。ここで,第1,第2の反応性ガスは,マスフローコントローラ(図示せず)で流量を調整するようになっている。前記第1の反応性ガスX(6)の活性化は,前記ガス導入管(4)と接続されたマイクロ波放電部(9)で行なわれる。ここでは,ガス導入管(4)は石英製のものを用いた。放電部(9)へは,マイクロ波電源(10)から導波管(11)を介してマイクロ波電力が供給される。反応性ガスX(6)の活性化は,この実施例ではプラズマにより行なったが,熱励起,光励起,電子線励起等により行なってもよい。また,容器(1)内圧力は,バルブ(図示せず)のコンダクタンスを変化させることにより設定し,隔膜真空計(図示せず)によって測定し,制御するようにする。」

5 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に技術常識を示す文献として引用された引用文献5(特開平04-136171号公報)には,次の事項が記載されている。
「ジケトナート錯体を用いた気相成長方法,特にCVD法においては,励起手段として,レーザー励起,熱励起,液相励起,プラズマ励起,光励起などの各手段を採用することができる。」(3ページ左上欄下から4行?最下行)

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「反応容器7」,「基体16」,「SiN膜」は,それぞれ,本願発明1の「処理室(10)」,「基板(1)」,「窒化膜」に相当する。
そうすると,引用発明の「反応容器7の中に設置された基体16上にSiN膜を成膜するSiN膜成膜方法」は,本願発明1の「処理室(10)内に配置された基板(1)上に窒化膜を成膜する窒化膜成膜方法」に相当する。

イ 引用発明の「シランガスを反応室20に導入するステップ」は,本願発明1の「(a) シラン系ガスを前記処理室に供給するステップ」に相当する。

ウ 引用発明の「窒素ガスを放電室10に導入し,放電室10内に発生したLTEプラズマ3からの放射光17と活性種18を反応室20の基板16の表面上に導入するステップ」は,「LTEプラズマにより生成した窒素ラジカル」との事項を参酌すると,反応室20とは別に設けられた放電室内で窒素ガスから窒素ラジカルガスを生成し,生成した窒素ラジカルガスを反応室に供給しているといえるから,本願発明1の「(b) 窒素ラジカルガスを前記処理室に供給するステップ」及び「前記ステップ(b) は,前記処理室とは別に設けられたラジカル発生器(20)内で窒素ガスから窒素ラジカルガスを生成し,生成した窒素ラジカルガスを前記処理室に供給するステップを含」むことに相当する。

エ 引用発明の「基体温度200℃で,LTEプラズマにより生成した窒素ラジカルと,LTEプラズマから発する短波長光により活性化(励起および分解)したシランとを反応させて,基体16上にSiN膜を成膜するステップ」は,反応室20内でプラズマ現象を生じさせていないから,本願発明1の「(c) 前記処理室内でプラズマ現象を生じさせることなく,前記ステップ(a) で供給されるシラン系ガスと前記ステップ(b) で供給される窒素ラジカルガスとを反応させて,前記基板上に窒化膜を成膜するステップ」に相当する。

以上から,本願発明1と引用発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「処理室(10)内に配置された基板(1)上に窒化膜を成膜する窒化膜成膜方法であって,
(a) シラン系ガスを前記処理室に供給するステップと,
(b) 窒素ラジカルガスを前記処理室に供給するステップと,
(c) 前記処理室内でプラズマ現象を生じさせることなく,前記ステップ(a) で供給されるシラン系ガスと前記ステップ(b) で供給される窒素ラジカルガスとを反応させて,前記基板上に窒化膜を成膜するステップとを備え,
前記ステップ(b) は,前記処理室とは別に設けられたラジカル発生器(20)内で窒素ガスから窒素ラジカルガスを生成し,生成した窒素ラジカルガスを前記処理室に供給するステップを含む,
窒化膜成膜方法。」

<相違点>
相違点1:「ステップ(c)」において,本願発明1は,「シラン系ガスが分解する温度以上に前記基板の表面温度を加熱する加熱処理を含」んでいるのに対し,引用発明は,「LTEプラズマから発する短波長光により」「シラン」を「活性化(励起および分解)」している点。
相違点2:本願発明1は,「前記ラジカル発生器を加熱することで400℃以下の状態で窒素ラジカルガスを生成」しているのに対し,引用発明は,そのような事項を備えていない点。

(2)判断
相違点1について検討すると,前記第4 3?5における引用文献3?5の記載によれば,化学気相成長(CVD)の分野において,ガスの励起手法として,光励起,熱励起等の各種手法を選択可能であることは,本願出願時において技術常識であったといえる。
一方,前記第4 1(1)アにおける引用文献1の記載によれば,引用発明は,所定の放射光および活性種を作成し,これらを併用することによって,殊に半導体デバイスの絶縁体膜の膜生成を行う表面処理方法に関するものであり,また,同イにおける引用文献1の記載によれば,引用発明は,表面処理に有用で純度の高い,強力な放射光および活性種を安定して作成し,これらを用いることによって,工業的に利用可能な程の充分な速度で,良質で有効的な表面処理を行なうことのできる,新規な表面処理方法の提供を課題とするものである。
そして,同ウにおける引用文献1の記載によれば,引用発明は,高周波グロー放電よりも短波長の輝度が強く,窒素ラジカルが多く含まれているLTEプラズマを用いることで,LTEプラズマにより生成した窒素ラジカルと,LTEプラズマから発する短波長光により活性化(励起および分解)したシランとを反応させるものである。
そうすると,引用発明は,LTEプラズマによって,窒素ガスから多くの窒素ラジカルを生成するとともに,LTEプラズマから発光する短波長光によって,シランを励起,分解するものであり,これらを併用することにより,工業的に利用可能な程の十分な速度で,良質で有効的なSiN膜が成長できるものである,すなわち,上記課題を解決できるものであるといえる。
以上によれば,引用発明において,LTEプラズマは,シランの励起,分解だけでなく,窒素ラジカルの生成にも用いるものあり,これらを併用することによって,上記課題を解決するものであるから,シランの励起,分解だけ,LTEプラズマを用いずに,熱による励起に変更することには阻害要因があると認められる。
したがって,上記引用文献3?5に記載された技術常識を参酌しても,引用発明において,シランの励起,分解の手法として,LTEプラズマから発光する短波長光に代えて,熱励起による手法を採用すること,すなわち,シランが分解する温度以上に基体16の表面温度を加熱する加熱処理をすることは,当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
よって,相違点2について判断するまでもなく,本願発明1は,引用発明及び引用文献3?5に記載された技術常識に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2,3について
本願発明2,3は,本願発明1を減縮した発明であり,いずれも本願発明1の全ての発明特定事項を有しているから,前記1(2)で検討したのと同様の理由により,引用発明,引用文献2に記載された発明及び引用文献3?5に記載された技術常識に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり,本願発明1?3は,引用文献1,2に記載された発明及び引用文献3?5に記載された技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-08-25 
出願番号 特願2019-500060(P2019-500060)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 早川 朋一  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 河本 充雄
辻本 泰隆
発明の名称 窒化膜成膜方法  
代理人 有田 貴弘  
代理人 吉竹 英俊  
代理人 吉竹 英俊  
代理人 有田 貴弘  

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