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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B |
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管理番号 | 1377523 |
審判番号 | 不服2020-16345 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-11-27 |
確定日 | 2021-09-02 |
事件の表示 | 特願2019-49837号「貯蔵庫用カメラ装置及びこれを備えた貯蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔令和元年6月20日出願公開、特開2019-95816号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年8月28日に出願した特願2013-176760号(以下「原出願」という。)の一部を平成29年7月4日に新たな特許出願とした特願2017-131104号の一部をさらに平成31年3月18日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 平成31年 3月18日 :上申書の提出 令和2年 2月21日付け:拒絶理由通知 令和2年 4月23日 :意見書、手続補正書の提出 令和2年 6月24日付け:拒絶理由(最後)通知 令和2年 8月17日 :意見書、手続補正書の提出 令和2年 8月31日付け:令和2年8月17日付け手続補正の却下、拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和2年11月27日 :審判請求 第2 本願発明 令和2年4月23日になされた手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「【請求項1】 貯蔵庫の内部を撮像する貯蔵庫用カメラ装置であって、 前記貯蔵庫には、板部材が設けられ、 撮像手段を備え、 前記板部材は、扉に設けられている収納部を形成するものであり、 前記収納部には、上下方向延びて収納領域を区画する縦壁が設けられており、 前記撮像手段は、前記板部材を通して、前記貯蔵庫の内部を撮像する貯蔵庫用カメラ装置。」 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶理由は、次のとおりのものである。 本願発明は、本願の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、その原出願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2012-251722号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1の記載 引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。 (1)「【技術分野】 【0001】 本発明は、庫内を撮影するカメラを備えた冷蔵庫に関するものである。」 (2)「【0024】 (実施の形態1) ・・・ 【0025】 図1?図8において、冷蔵庫本体10の上部に圧縮機11が配設され、冷凍室12の背面側には冷却器13で生成される冷気を庫内へ送風する庫内ファン14が設けられている。そして、冷蔵室15の内部に庫内を撮影するカメラ16が配設され、カメラ16には透明カバー17が設けられている。また、冷蔵室15の内部には食品を載置するための棚18が複数枚配設されている。棚18と対向する背面壁に凹部19が設けられ、凹部19内にカメラ16が収納される。冷蔵室15内の背面壁に配置されているダクト20の略中央部には中空円筒状の枠体21が設けられ、枠体21の内部にカメラが配設される。 【0026】 以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。 ・・・ 【0036】 そして、棚18の上方の棚18、棚18の下方の棚18に載置された食品も、上方と下方の棚18を高透明な材料で構成することにより、上方と下方の棚18を透かして、載置されている食品の分布状態を撮影することができるので、冷蔵室15内の食品の分布状態の精度の高い画像を得ることができる。 ・・・ 【0038】 また、カメラを広角・魚眼レンズ仕様にすることで、カメラの台数を最小限にして食品検知の精度を高めることができる。 ・・・ 【0044】 (実施の形態2) 図9は、本発明の第2の実施の形態の冷蔵庫の縦断面図を示すものである。図10は、本発明の第2の実施の形態の冷蔵庫の縦断面図を示すものである。なお、実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。 【0045】 図9、図10において、冷蔵室15の扉22の内壁に凹部19を設け、凹部19内に庫内を撮影するカメラ16が配設されている。また、冷蔵室15内には庫内の温度を検知するための温度センサ23が配設されている。 【0046】 以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。 ・・・ 【0050】 また、冷蔵室15の扉22内面側に凹部19を設け、凹部19の略中央にカメラを設置し、カメラ16が冷蔵室15の扉22内面の平面から少し窪んで配設されるようにすることで、冷蔵室15内への食品の出入れ等に伴って、食品がカメラに接触して、カメラが破損するといった事態を未然に防止することができる。 【0051】 また、冷蔵室15の扉22内面側にカメラが突出することがないので、外観的にも優れた特徴を有する。この場合、カメラを保護する半円形状のカバーは付けなくてもよい。 【0052】 また、カメラの設置場所は、扉内面側のポケット部に設けてもよく、カメラをポケット部に埋設、或いは、ポケット部の庫内側に張り出して設置してもよい。」 <以下略> (3)図9は次のとおりである。 【図9】 2 引用発明 (1)上記1からみて、冷蔵庫が冷蔵室15及び扉22を備えることは明らかである。 また、当該扉22が内面側にポケット部を備えることも明らかである(【0052】)。 さらに、当該扉22に設けられるポケット部が収納領域を形成する収納部であって、当該ポケット部が、ポケット部の底面を形成する板状の部材とポケット部の側面を形成する板状の部材から構成されることも技術常識である。 (2)したがって、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「冷蔵庫の庫内を撮影するカメラ(【0001】)であって、 前記冷蔵庫は、冷蔵室及び扉を備え(上記(1))、 前記冷蔵室の内部には食品を載置するための棚が複数枚配設され(【0025】)、また、前記扉は内面側にポケット部を備え、前記ポケット部が、ポケット部の底面を形成する板状の部材とポケット部の側面を形成する板状の部材から構成され(上記(1))、 前記棚は、高透明な材料で構成することにより、上方と下方の棚を透かして、載置されている食品の分布状態を撮影することができるものであり(【0036】)、 前記カメラの設置場所は、扉内面側のポケット部に設けられた(【0052】)、 冷蔵庫の庫内を撮影するカメラ(【0001】)。」 第5 対比 (1)まず、本願発明の「板部材」と「縦壁」との関係について検討する。 本願の発明の詳細な説明の段落【0083】には、「ケース200の一面部201Iを板部材としてのドアポケット109bの縦壁内面に配置しても良い。この場合、ドアポケット109bの縦壁は庫内を向くから一面部201Iも庫内を向くことになる。よって、ドアポケット109bを利用して一面部201Iを適正向きに配置できる。」と記載されており、「板部材」は、「扉に設けられている収納部を形成する板状の部材」のすべてを意味し、「縦壁」は、「扉に設けられている収納部を形成する板状の部材」のうち、特に鉛直方向に配置されるものを意味すると解するのが妥当である(すなわち、扉に設けられている収納部を形成する板状の部材のうち、特に鉛直方向に配置されるものは板部材であって、なおかつ縦壁でもあるといえる。)。 以下では、このことを踏まえて、本願発明と、引用発明とを対比する。 (2)引用発明の「冷蔵庫」は、本願発明の「貯蔵庫」に相当するから、引用発明の「冷蔵庫庫内を撮影するカメラ」は、本願発明の「貯蔵庫の内部を撮像する貯蔵庫用カメラ装置」及び「撮影手段を備え」ることに相当する。 また、引用発明の「冷蔵庫の庫内を撮影するカメラ」は、本願発明の「前記撮像手段は、前記板部材を通して、前記貯蔵庫の内部を撮像する貯蔵庫用カメラ装置」であることと、「前記撮像手段は、前記貯蔵庫の内部を撮像する貯蔵庫用カメラ装置」である点で一致する。 (3)引用発明の「冷蔵庫」の「扉」の「内面側に」備わる「ポケット部」は、本願発明の「貯蔵庫」の「扉に設けられている収納部」に相当する。 また、引用発明の「冷蔵庫」の「扉」の「内面側に」は、「ポケット部の底面を形成する板状の部材とポケット部の側面を形成する板状の部材」が備えられていることは、上記(1)を踏まえると、本願発明の「貯蔵庫には、板部材が設けられ」ていることに相当する。 (4)引用発明の「冷蔵庫」の「扉」の「内面側に」備わる「ポケット部の底面を形成する板状の部材とポケット部の側面を形成する板状の部材」は、上記(1)を踏まえると、本願発明の「貯蔵庫」の「扉に設けられている収納部を形成する」「板部材」に相当する。 したがって、引用発明の「板状の部材」が「冷蔵庫」の「扉」の「内面側に」備わる「ポケット部の底面を形成する板状の部材とポケット部の側面を」「形成する」ことは、本願発明の「前記板部材は、扉に設けられている収納部を形成する」ことに相当する。 (5)引用発明の「ポケット部の側面を形成する板状の部材」が当該「ポケット部」における「上下方向延びて収納領域を区画する縦壁」であることは明らかであるから、引用発明の「ポケット部」に「側面を形成する板状の部材」が設けられていることは、本願発明の「前記収納部には、上下方向延びて収納領域を区画する縦壁が設けられて」いることに相当する。 (6)したがって、本願発明と引用発明とは、 「貯蔵庫の内部を撮像する貯蔵庫用カメラ装置であって、 前記貯蔵庫には、板部材が設けられ、 撮像手段を備え、 前記板部材は、扉に設けられている収納部を形成するものであり、 前記収納部には、上下方向延びて収納領域を区画する縦壁が設けられており、 前記撮像手段は、前記貯蔵庫の内部を撮像する貯蔵庫用カメラ装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。 【相違点】 撮像手段が、本願発明は、「前記板部材を通して」前記貯蔵庫の内部を撮像するのに対して、引用発明は、そのようなことにつき特定されない点。 第6 判断 1 上記相違点について判断する。 引用発明の「棚」は、「高透明な材料で構成することにより、上方と下方の棚を透かして、載置されている食品の分布状態を撮影することができるものであ」るから、引用発明は、冷蔵庫内の板状の部材を透明にして撮像することにより、内部の状態を(板状の部材によって遮られることなく)より正確に把握しようとするものである、と理解できる。 そして、引用発明の「カメラの設置場所」を、「扉内面側のポケット部」のどことするかは適宜定め得る設計的事項であるところ、引用発明は、上記技術思想を有するものであるから、カメラの設置場所を、「ポケット部の側面を形成する板状の部材」を透かして冷蔵庫内部の状況を把握し得る、扉内面側のポケット部の中としてもよいといえる。 したがって、「カメラの設置場所」をポケット部の中とするとともに、「冷蔵庫の庫内を撮影するカメラ」となすために、「ポケット部の側面を形成する板状の部材」を「棚」と同様の「高透明な材料で構成することにより」、「ポケット部の側面を形成する板状の部材」「を透かして「冷蔵庫の庫内を撮影する」ことにより、上記相違点に係る本願発明の構成となすことは当業者が容易になし得ることである。 2 請求人の主張 (1)審判請求人は審判請求書の「3.本願が特許されるべき理由」「2)引用文献との対比」において、概略「つまり、引用文献1のものは、原審審査官殿が指摘しているように冷蔵庫の扉内面側のポケット部が板部材により構成されることは技術常識であったとしても、その板部材を介さずに撮像する構成を開示していると考えるのが妥当です。 このように、引用文献1のものは、カメラをポケット部に収容しない構成を開示しているのであり、そのような引用文献1を参照したとしても、また、さらにポケット部が板部材により構成されることは技術常識であるとしても、引用文献1の記載からは、撮像手段を収納部の板部材を通して撮像する構成が想起あるいは導出されることはありません。また、そのような引用文献1と他の引用文献とを組み合わせたとしても、本願発明の構成が想起あるいは導出されることはありません。」と主張する。 (2)しかしながら、上記「1」で検討したとおりであって、請求人の上記主張は採用できない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、その原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明に基づいて、その原出願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-06-21 |
結審通知日 | 2021-06-22 |
審決日 | 2021-07-12 |
出願番号 | 特願2019-49837(P2019-49837) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G03B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藏田 敦之 |
特許庁審判長 |
瀬川 勝久 |
特許庁審判官 |
松川 直樹 吉野 三寛 |
発明の名称 | 貯蔵庫用カメラ装置及びこれを備えた貯蔵庫 |
代理人 | 特許業務法人 サトー国際特許事務所 |