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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1377597
審判番号 不服2021-46  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-04 
確定日 2021-09-28 
事件の表示 特願2016- 53276「RFID(無線識別)装置を使用する開封検出のためのシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月17日出願公開、特開2016-194917、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成28年3月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年3月19日(以下,「優先日」という。) 米国)の出願であって,令和2年2月12日付けで拒絶理由通知がされ,令和2年5月18日付けで意見書が提出されると同時に手続補正がされたが,令和2年8月26日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,令和3年1月4日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(令和2年8月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の請求項1-15に係る発明は,以下の引用文献1-3に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2013-242731号公報
2.特開2014-154084号公報
3.米国特許出願公開第2007/0232164号明細書


第3 本願発明
本願請求項1ないし15に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明15」という。)は,令和3年1月4日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりのものである。

「【請求項1】
状態表示のためのシステムであって、
分離可能な物体の分離境界の第1の側に配置可能な第1の部分、及び前記分離境界の第2の側に配置可能な第2の部分を有し、第1の帰還信号を提供するように構成された第1の無線識別(RFID)回路を有する、保安装置、並びに、
マイクロプロセッサ及びシステムメモリ、RFIDリーダー、並びに無線アンテナを備え、第1のRFID回路との間で無線周波数信号を送受信するように構成され、前記第1の帰還信号を、前記分離可能な物体の開封されていない状態を示すものとして認識するように構成された、データ装置
を備えるシステムであって、
前記第1のRFID回路が前記第1及び第2の部分に及び、前記第2の部分上に全体が含まれた第2のRFID回路を更に備え、前記第2のRFID回路が、第2の帰還信号を提供するように構成され、前記データ装置が、前記第1及び第2の帰還信号の両方のほぼ同時の受信を、前記分離可能な物体の前記開封されていない状態を示すものとして認識し、前記第2の帰還信号のみの受信を、前記分離可能な物体の開封された状態を示すものとして認識するように構成され、
前記保安装置が、内部に埋め込まれた前記第1及び第2のRFID回路を有する開封明示ストリップを備え、前記第1のRFID回路の一部分が前記開封明示ストリップの破壊可能部分に及び、前記第1及び第2の部分が前記破壊可能部分を横切って連結されており、前記破壊可能部分を横断する前記第1のRFID回路を断ち切ることが、前記第1の帰還信号の送信を妨げる、システム。
【請求項2】
前記開封明示ストリップが、使い捨て用粘着ストリップを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記保安装置が、マルチパートRFIDセンサを更に備え、前記マルチパートRFIDセンサが、
物理的に分離された第1及び第2の部分、並びに
前記第1及び第2の部分の間の選択的に破壊可能な電気接続であって、前記第1及び第2の部分が、各々、前記第1のRFID回路の一部分を含み、前記選択的に破壊可能な電気接続が接続されている場合にのみ、前記第1の帰還信号の送信が可能である、電気接続を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1及び第2の部分が、前記システムの内部位置にある前記分離可能な物体上に配置可能である、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1及び第2の部分のうちの一方の上に配置され、リセット入力を受信して前記第1のRFID回路をリセットするように構成された、リセット装置を更に備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記データ装置が、携帯型の装置の放送範囲内で、複数の保安装置に問い合わせ、前記複数の保安装置から帰還信号を受信するように構成された、前記携帯型の装置を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記データ装置に電気的に接続された複数のアンテナであって、各アンテナが、複数の前記保安装置に対して固定された場所に配置され、前記複数の保安装置のうちの少なくとも一部との間で信号を送受信するように構成された、複数のアンテナを更に備え、
前記データ装置が、前記アンテナに対して固定された場所に配置可能であり、前記複数の保安装置のうちの全ての状態に関する情報を提供するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
無線識別(RFID)装置であって、該RFID装置は、
分離可能な物体の分離境界を横断して配置されるように構成された分離領域において連結された、第1の部分及び第2の部分であって、当該第1の部分及び第2の部分が、開封明示ストリップの対向する部分を備え、前記分離領域が、前記開封明示ストリップの破壊可能部分を備える、前記第1の部分及び第2の部分と、
第1の信号を送信するように構成され、前記第1及び第2の部分の両方に関連付けられた回路部分を有し、前記分離領域を横断して延在する、前記開封明示ストリップの基板内に埋め込まれた第1のRFID回路であって、前記第1及び第2の部分の分離が前記第1の信号の送信を妨げる、第1のRFID回路と、
前記第2の部分上に全体が配置され、第2の信号を送信するように構成された、前記開封明示ストリップの基板内に埋め込まれた第2のRFID回路と
を備え、
前記第1の信号の送信が、前記分離可能な物体の開封されていない状態を示し、
前記第1及び第2の信号のほぼ同時の送信が、前記分離可能な物体の前記開封されていない状態を示し、
前記第1の信号の送信の失敗とほぼ同時の前記第2の信号の送信が、前記分離可能な物体の開封された状態を示す、RFID装置。
【請求項9】
前記開封明示ストリップが、使い捨て用粘着ストリップである、請求項8に記載のRFID装置。
【請求項10】
前記第1及び第2の部分が、RFIDセンサ装置の対向する部分を備え、前記分離領域が、前記第1及び第2の部分の間の選択的に破壊可能な電気接続を備える、請求項8に記載のRFID装置。
【請求項11】
前記選択的に破壊可能な電気接続が、前記分離領域を横断する前記第1のRFID回路の一部分の非接触電磁近傍接続を備える、請求項10に記載のRFID装置。
【請求項12】
複数の密封された物体の検査を容易にするための方法であって、
密封された物体の分離境界を横断して無線識別(RFID)装置を配置すること、ここで該RFID装置は、
第1の部分と、
第2の部分と、
前記第1の部分及び前記第2の部分に及ぶ第1のRFID回路と、
前記第2の部分上に全体が含まれた第2のRFID回路と
を備える開封明示ストリップを有するものであり、前記第2の部分は、前記開封明示ストリップの破壊可能な部分を横切って前記第1の部分に連結されており、
前記第1のRFID回路からの第1の帰還信号と前記第2のRFID回路からの第2の帰還信号とをスキャン及び受信するように、データ装置を構成すること、ここで前記データ装置は、前記第1及び第2の帰還信号の両方のほぼ同時の受信を、前記密封された物体の開封されていない状態を示すものとして認識し、前記第2の帰還信号のみの受信を、前記密封された物体の開封された状態を示すものとして認識するように構成されるものであり、並びに
前記データ装置を介して、前記開封された状態を示す出力を提供することを含む、方法。
【請求項13】
前記第1及び第2のRFID回路が、パッシブRFID回路であり、前記データ装置を構成することが、伝送半径内にある場合に、RFID装置からの前記第1及び第2の帰還信号をスキャン及び受信するように、携帯型の計算装置を構成することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記データ装置を構成することが、
固定された場所に計算装置を提供すること、及び
前記データ装置を、前記RFID装置との間で信号を送受信するように構成された、場所が固定された無線アンテナと接続すること
を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記データ装置を構成することが、開封された状態の信号が受信された後で、前記RFID装置をリセットすることとほぼ同時にリセットされるように、前記データ装置をプログラムすることを更に含む、請求項12に記載の方法。」


第4 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1)本願の優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された,特開2013-242731号公報(以下,これを「引用文献1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付与。以下同じ。)

A 「【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態について、図1?図9に基づいて詳細に説明する。図1は、一実施形態に係る無線タグとの通信を行うリーダ・ライタ20の使用状態を示す図である。このリーダ・ライタ20は、航空機や船舶などの輸送機(本実施形態では航空機とする)内の点検確認作業を行う作業者によって利用される端末である。リーダ・ライタ20は、主に、座席80下に設置された収納袋10(ライフジャケットが収納されている)の存在有無及び開封/未開封の情報を管理するための端末である。
【0011】
図2には、収納袋10が斜視図にて示されている。収納袋10は、内部にライフジャケットを収納するための袋であり、その口部分には、図2に示すように複数の紐通し穴14が設けられている。収納袋10内にライフジャケットが収納された後に、紐通し穴14の一部に留め具16が取り付けられると、収納袋10は、未開封の状態となる。
【0012】
収納袋10の一部には、存在確認用無線タグ11が設けられている。存在確認用無線タグ11は、例えばパッシブ型のRFIDタグを含み、リーダ・ライタ20から送出されるUHF帯(例えば920MHz)の電波を整流して駆動電力とし、当該駆動電力を利用してリーダ・ライタ20との間で通信することで、存在確認用無線タグ11の情報(タグID等)をリーダ・ライタ20に送信する。
【0013】
また、収納袋10の口部分には、3つの紐通し穴14(図8の紐通し穴14A?14C)を利用して、開封確認用無線タグ12が設けられている。開封確認用無線タグ12は、パッシブ型のRFID(Radio Frequency IDentification)タグを含み、存在確認用無線タグ11と同様、リーダ・ライタ20から送出されるUHF(Ultra-High Frequency)帯(例えば920MHz)の電波を整流して駆動電力とし、当該駆動電力を利用してリーダ・ライタ20との間で通信することで、開封確認用無線タグ12の情報(タグID等)をリーダ・ライタ20に送信する。
【0014】
図3(a)には、開封確認用無線タグ12の外観図が示され、図3(b)には、開封確認用無線タグ12が有するインレイ60を取り出した状態が示されている。また、図4(a)には、開封確認用無線タグ12の断面構造が模式的に示されている。
【0015】
これらの図に示すように、開封確認用無線タグ12は、インレイ60(図3(b)参照)と、当該インレイ60を難燃性両面テープ62a,62bを介して両側から挟む難燃性フィルム(PEEK材等)64a,64bとを有する(図4(a)参照)。
【0016】
インレイ60は、図3(b)に示すように、PET(Polyethylene terephthalate)等を材料とするフィルム51と、アンテナ部としてのタグアンテナ52と、給電線路(ストラップ)54と、集積回路としてのICチップ(RFIDチップ)56とを有する。

・・・中略・・・

【0020】
難燃性フィルム64a,64bのインレイ60近傍には、図3(a)に示すように、第1の貫通孔58aと、第1の貫通孔58aよりも径が小さい複数の第2の貫通孔58bと、が形成されている。これら第1、第2の貫通孔58a,58bは、収納袋10に対して結束バンドを用いて開封確認用無線タグ12を取り付ける際に用いられる孔である。図3(a)では、第2の貫通孔58bの径は、第1の貫通孔58aの径よりも小さい。しかし、第2の貫通孔58bの径は、第1の貫通孔58aと同等あるいは第一の貫通孔58aが大きくてもよい。
【0021】
なお、開封確認用無線タグ12は、製造上の制約により、図4(b)に示すように、剥離台紙68上に貼付された状態で出荷等される。しかるに、本実施形態では、開封確認用無線タグ12は、結束バンドを用いて収納袋10に取り付けられるため剥離台紙68に貼付される面に両面テープ等が付着したままでは使い勝手が悪い。そこで、本実施形態では、剥離台紙68と開封確認用無線タグ12との間に両面テープ67と微粘着フィルム66とを介在させている。これにより、剥離台紙68から開封確認用無線タグ12を剥がすときには、微粘着フィルム66と難燃性フィルム64bとの間が剥がれるようにすることができる。この場合、開封確認用無線タグ12に両面テープ67が残ることがなくなるので、開封確認用無線タグ12の使い勝手を向上することができる。結束バンドは、例えば針金など結束帯である。
【0022】
ここで、開封確認用無線タグ12のRFIDチップ56を含む第1部分(五角形部分)(図3(a)等において符号「12A」で表記)と、開封確認用無線タグ12の第1部分以外の第2部分(符号「12B」で表記)、との間の境界部分には、他の部分よりも破断しやすく加工されたミシン目70が形成されている。なお、ミシン目70は、難燃性フィルム64a,64bと、インレイ60とを貫通するように形成されている。」


B 「【0027】
上記のように第1部分が切り離された場合、図6に示すように、第1部分12Aには、例えばRFIDチップ56の両側約1cmの長さだけタグアンテナ52が残ることになる。この場合、リーダ・ライタ20からの送信出力が2W EIRPであれば、開封確認用無線タグ12とリーダ・ライタ20との間の通信は不能となる。また、リーダ・ライタ20の送信出力を増大して4W EIRPとした場合でも、開封確認用無線タグ12とリーダ・ライタ20と間の通信距離は10cm未満となり、遠距離からの通信(図1の状態での通信)には不十分となる。
【0028】
ここで、図7(a)には、比較例としてのミシン目70’が図示されている。この図7(a)に示すミシン目70’は、略矩形状の形状(角部の角度が約90°)を有している。このようなミシン目70’を採用した場合、図7(b)に示すような力Fを第1部分12Aに与えると、角部A,Bにおいては、力Fが切り込み部分に沿った方向に分解されない。このため、力Fを加え続けると、図7(b)に示すように第2部分12Bを切り裂いてしまうような事態が発生する恐れがある。この場合、図7(b)に示すように、タグアンテナ52の多くの範囲がRFIDチップ56と接続されたままとなるので、比較的遠距離に位置するリーダ・ライタ20との通信が可能となってしまうことになる。
【0029】
本実施形態では、作業者は、上記のように構成される開封確認用無線タグ12の2つの第2の貫通孔58bに対して、図8に示すように結束バンドを通し、かつ当該結束バンドを収納袋10の紐通し穴14B,14Cに通して結束することで、収納袋10に開封確認用無線タグ12を取り付ける。そして、作業者は、図2に示すように留め具16で収納袋10の口を塞いだ後(未開封とした後)、開封確認用無線タグ12の第1の貫通孔58aに対して、結束バンドを通し、かつ当該結束バンドを収納袋10の紐通し穴14A(図8参照)に通して結束する(図2参照)。
【0030】
この場合、航空機の乗客等が収納袋10を図9に示すように開封すると、開封確認用無線タグ12の第1部分12Aと第2部分12Bとが切り離されることになる。
【0031】
本実施形態では、ライフジャケットの点検を行う作業者が図1に示すようにリーダ・ライタ20を保持しつつ、座席間の通路を移動することで、各ライフジャケットの収納袋10に設けられた存在確認用無線タグ11及び開封確認用無線タグ12と通信を行い、各タグの情報(タグIDなど)を収集する。そして、リーダ・ライタ20は、ある座席80に設置された収納袋10に設けられた存在確認用無線タグ11及び開封確認用無線タグ12のそれぞれと通信ができた場合には、当該収納袋10が未開封の状態で座席80下に存在していることを検出する。また、リーダ・ライタ20は、ある座席80に設置された収納袋10に設けられた存在確認用無線タグ11及び開封確認用無線タグ12のうち、存在確認用無線タグ11のみと通信ができた場合には、当該収納袋10が開封された状態で座席80下に存在していることを検出する。更に、リーダ・ライタ20は、ある座席80に設置された収納袋10に設けられた存在確認用無線タグ11及び開封確認用無線タグ12のいずれとも通信ができない場合には、当該収納袋10が座席80下に存在していないことを検出する。
【0032】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、開封確認用無線タグ12は、タグアンテナ52と、タグアンテナ52に対して電気的に接続されたRFIDチップ56と、これらを一体的にパッケージングした難燃性フィルム64a,64bと、を有しており、RFIDチップ56を含む第1部分12Aとそれ以外の第2部分12Bとの間の境界部分が、他の部分よりも破断しやすく加工されたミシン目70とされている。これにより、本実施形態では、簡易に(例えば鋏やカッターなどの用具を用いずに)、第1部分12Aと第2部分12Bとを切り離すことが可能となる。したがって、本実施形態のように、未開封の収納袋10に開封確認用無線タグ12を取り付けておけば、収納袋10が開封されたときに、開封確認用無線タグ12に掛かる力によって第1部分12Aと第2部分12Bとが切り離される。この場合、第1部分12Aには、タグアンテナ52がわずかに残るのみなので、開封確認用無線タグ12とリーダ・ライタ20との遠距離通信が不可能となる。これにより、リーダ・ライタ20を用いた収納袋10の開封/未開封の確認を遠距離から容易に行うことが可能となる。この場合、座席80下に格納されている全てのライフジャケット(収納袋10)の点検において、作業員が座席80下に潜り込む体勢で点検することが不要となるので、作業者の作業負荷が軽減され、点検作業を効率良く行うことができる。」

C 「【図1】



D 「【図2】



E 「【図3】



F 「【図4】





G 「【図8】



H 「【図9】



I 上記Bの段落【0031】には,「ライフジャケットの点検を行う作業者が図1に示すようにリーダ・ライタ20を保持しつつ、座席間の通路を移動することで、各ライフジャケットの収納袋10に設けられた存在確認用無線タグ11及び開封確認用無線タグ12と通信を行い、各タグの情報(タグIDなど)を収集する」ことが記載されている。
したがって,図1(上記C)も参照すると,引用文献1には,“ライフジャケットの点検を行う作業者がリーダ・ライタ20を保持しつつ,座席間の通路を移動することで,各ライフジャケットの収納袋10に設けられた存在確認用無線タグ11及び開封確認用無線タグ12と通信を行い,各タグの情報を収集するシステム”が記載されているといえる。

J 上記Aの段落【0010】には,「リーダ・ライタ20は、主に、座席80下に設置された収納袋10(ライフジャケットが収納されている)の存在有無及び開封/未開封の情報を管理するための端末である」ことが記載されている。

K 上記Aの段落【0012】には,“存在確認用無線タグ11は,パッシブ型のRFIDタグであって,リーダ・ライタ20から送出されるUHF帯の電波を整流して駆動電力とし,当該駆動電力を利用してリーダ・ライタ20との間で通信することで,存在確認用無線タグ11の情報をリーダ・ライタ20に送信するものであ”ることが記載されている。

L 上記Aの段落【0013】には,“収納袋10の口部分には,3つの紐通し穴14を利用して,開封確認用無線タグ12が設けられ” ることが記載されている。

M 上記Aの段落【0013】には,“開封確認用無線タグ12は,パッシブ型のRFIDタグであって,存在確認用無線タグ11と同様,リーダ・ライタ20から送出されるUHF帯の電波を整流して駆動電力とし,当該駆動電力を利用してリーダ・ライタ20との間で通信することで,開封確認用無線タグ12の情報をリーダ・ライタ20に送信するものであ”ることが記載されている。

N 上記Aの段落【0015】には,“開封確認用無線タグ12は,インレイ60と,当該インレイ60を難燃性両面テープ62a,62bを介して両側から挟む難燃性フィルム64a,64bとを有”することが記載されている。

O 上記Aの段落【0016】には,“インレイ60は,PET等を材料とするフィルム51と,アンテナ部としてのタグアンテナ52と,ストラップ54と,集積回路としてのRFIDチップ56とを有” することが記載されている。

P 上記Aの段落【0020】には,“難燃性フィルム64a,64bのインレイ60近傍には,第1の貫通孔58aと,第1の貫通孔58aよりも径が小さい複数の第2の貫通孔58bと,が形成されて”いることが記載されている。

Q 上記Aの段落【0022】には,“開封確認用無線タグ12のRFIDチップ56を含む第1部分12Aと,開封確認用無線タグ12の第1部分以外の第2部分12B,との間の境界部分には,他の部分よりも破断しやすく加工されたミシン目70が形成され”ていることが記載されている。

R 図3(上記E)から,“タグアンテナ52は,開封確認用無線タグ12の第1部分12Aと第2部分12Bとにわたって形成されて”いることが看取できる。

S 上記Bの段落【0029】には,「開封確認用無線タグ12の2つの第2の貫通孔58bに対して、図8に示すように結束バンドを通し、かつ当該結束バンドを収納袋10の紐通し穴14B,14Cに通して結束することで、収納袋10に開封確認用無線タグ12を取り付ける。そして、作業者は、図2に示すように留め具16で収納袋10の口を塞いだ後(未開封とした後)、開封確認用無線タグ12の第1の貫通孔58aに対して、結束バンドを通し、かつ当該結束バンドを収納袋10の紐通し穴14A(図8参照)に通して結束する(図2参照)」と記載され,また,図2(上記D),図8(上記G)によれば,“開封確認用無線タグ12の第2部分12Bの2つの第2の貫通孔58bと結束される収納袋10の紐通し穴14B,14Cは,収納袋10の口部分の一方側であって,また,開封確認用無線タグ12の第1の貫通孔58aと結束される収納袋10の紐通し穴14Aは,収納袋10の口部分の他方側であること”が,看取できる。
してみると,引用文献1には,“開封確認用無線タグ12の第2部分12Bの2つの第2の貫通孔58bに対して,結束バンドを通し,かつ当該結束バンドを収納袋10の口部分の一方側の紐通し穴14B,14Cに通して結束することで,収納袋10に開封確認用無線タグ12を取り付け,留め具16で収納袋10の口を塞いだ後(未開封とした後),開封確認用無線タグ12の第1部分12Aの第1の貫通孔58aに対して,結束バンドを通し,かつ当該結束バンドを収納袋10の口部分の他方側の紐通し穴14Aに通して結束”することが記載されているといえる。

T 上記Bの段落【0027】には,“第1部分が切り離された場合,第1部分12Aには,RFIDチップ56の両側約1cmの長さだけタグアンテナ52が残ることになり,開封確認用無線タグ12とリーダ・ライタ20との間の通信は不能となる”ことが,さらに,段落【0030】には,“航空機の乗客等が収納袋10を開封すると,開封確認用無線タグ12の第1部分12Aと第2部分12Bとが切り離される”ことが記載されている。
してみると,引用文献1には,“航空機の乗客等が収納袋10を開封すると,開封確認用無線タグ12の第1部分12Aと第2部分12Bとが切り離され,第1部分12Aには,RFIDチップ56の両側約1cmの長さだけタグアンテナ52が残ることになり,開封確認用無線タグ12とリーダ・ライタ20との間の通信は不能となるものであ” ることが記載されているといえる。

U 上記Bの段落【0031】には,“リーダ・ライタ20は,ある座席80に設置された収納袋10に設けられた存在確認用無線タグ11及び開封確認用無線タグ12のそれぞれと通信ができた場合には,当該収納袋10が未開封の状態で座席80下に存在していることを検出し,また,リーダ・ライタ20は,ある座席80に設置された収納袋10に設けられた存在確認用無線タグ11及び開封確認用無線タグ12のうち,存在確認用無線タグ11のみと通信ができた場合には,当該収納袋10が開封された状態で座席80下に存在していることを検出し,更に,リーダ・ライタ20は,ある座席80に設置された収納袋10に設けられた存在確認用無線タグ11及び開封確認用無線タグ12のいずれとも通信ができない場合には,当該収納袋10が座席80下に存在していないことを検出”することが記載されている。

V 上記Bの段落【0032】には,“リーダ・ライタ20を用いた収納袋10の開封/未開封の確認を遠距離から容易に行うことが可能となり,座席80下に格納されている全てのライフジャケット(収納袋10)の点検において,作業員が座席80下に潜り込む体勢で点検することが不要となり,作業者の作業負荷が軽減され,点検作業を効率良く行うことができる”ことが記載されている。

(2)上記AないしVの記載内容(特に,下線部を参照)からすると,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。

「ライフジャケットの点検を行う作業者がリーダ・ライタ20を保持しつつ,座席間の通路を移動することで,各ライフジャケットの収納袋10に設けられた存在確認用無線タグ11及び開封確認用無線タグ12と通信を行い,各タグの情報を収集するシステムであって,
リーダ・ライタ20は,主に,座席80下に設置された収納袋10(ライフジャケットが収納されている)の存在有無及び開封/未開封の情報を管理するための端末であって,
存在確認用無線タグ11は,パッシブ型のRFIDタグであって,リーダ・ライタ20から送出されるUHF帯の電波を整流して駆動電力とし,当該駆動電力を利用してリーダ・ライタ20との間で通信することで,存在確認用無線タグ11の情報をリーダ・ライタ20に送信するものであり,
収納袋10の口部分には,3つの紐通し穴14を利用して,開封確認用無線タグ12が設けられており,
開封確認用無線タグ12は,パッシブ型のRFIDタグであって,存在確認用無線タグ11と同様,リーダ・ライタ20から送出されるUHF帯の電波を整流して駆動電力とし,当該駆動電力を利用してリーダ・ライタ20との間で通信することで,開封確認用無線タグ12の情報をリーダ・ライタ20に送信するものであり,
開封確認用無線タグ12は,インレイ60と,当該インレイ60を難燃性両面テープ62a,62bを介して両側から挟む難燃性フィルム64a,64bとを有し,
インレイ60は,PET等を材料とするフィルム51と,アンテナ部としてのタグアンテナ52と,ストラップ54と,集積回路としてのRFIDチップ56とを有し,
難燃性フィルム64a,64bのインレイ60近傍には,第1の貫通孔58aと,第1の貫通孔58aよりも径が小さい複数の第2の貫通孔58bと,が形成されており,
開封確認用無線タグ12のRFIDチップ56を含む第1部分12Aと,開封確認用無線タグ12の第1部分以外の第2部分12B,との間の境界部分には,他の部分よりも破断しやすく加工されたミシン目70が形成されており,
タグアンテナ52は,開封確認用無線タグ12の第1部分12Aと第2部分12Bとにわたって形成されており,
開封確認用無線タグ12の第2部分12Bの2つの第2の貫通孔58bに対して,結束バンドを通し,かつ当該結束バンドを収納袋10の口部分の一方側の紐通し穴14B,14Cに通して結束することで,収納袋10に開封確認用無線タグ12を取り付け,留め具16で収納袋10の口を塞いだ後(未開封とした後),開封確認用無線タグ12の第1部分12Aの第1の貫通孔58aに対して,結束バンドを通し,かつ当該結束バンドを収納袋10の口部分の他方側の紐通し穴14Aに通して結束し,
航空機の乗客等が収納袋10を開封すると,開封確認用無線タグ12の第1部分12Aと第2部分12Bとが切り離され,第1部分12Aには,RFIDチップ56の両側約1cmの長さだけタグアンテナ52が残ることになり,開封確認用無線タグ12とリーダ・ライタ20との間の通信は不能となるものであって,
リーダ・ライタ20は,ある座席80に設置された収納袋10に設けられた存在確認用無線タグ11及び開封確認用無線タグ12のそれぞれと通信ができた場合には,当該収納袋10が未開封の状態で座席80下に存在していることを検出し,また,リーダ・ライタ20は,ある座席80に設置された収納袋10に設けられた存在確認用無線タグ11及び開封確認用無線タグ12のうち,存在確認用無線タグ11のみと通信ができた場合には,当該収納袋10が開封された状態で座席80下に存在していることを検出し,更に,リーダ・ライタ20は,ある座席80に設置された収納袋10に設けられた存在確認用無線タグ11及び開封確認用無線タグ12のいずれとも通信ができない場合には,当該収納袋10が座席80下に存在していないことを検出し,
リーダ・ライタ20を用いた収納袋10の開封/未開封の確認を遠距離から容易に行うことが可能となり,座席80下に格納されている全てのライフジャケット(収納袋10)の点検において,作業員が座席80下に潜り込む体勢で点検することが不要となり,作業者の作業負荷が軽減され,点検作業を効率良く行うことができる,
システム。」

2 引用文献2について
本願の優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された,特開2014-154084号公報(以下,これを「引用文献2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付与。以下同じ。)

A 「【0020】
本例のICタグ付包装体100は、図1の斜視図に示すように、点線で示した内装容器包装1が、開封テープ2の付いた外装フィルム3で包装されていて、ICタグ4が開封テープ2を跨ぐように取り付けられている。
【0021】
ICタグ4は、図2の断面図のように、インレット基材5と、インレット基材5の上に設けられたアンテナ6と、ICチップ7とからなるインレット8と、インレット8の片面のICチップ7側に接着層9が設けられていて、インレット基材5と接着層9の間に、アンテナ6とICチップ7が挟まれた構造になっている。
【0022】
ICタグ4を開封テープ2に取り付けるときに、インレット8が開封テープ2を跨ぐように、更には、アンテナ6が開封テープ2を跨ぐように設ける。これにより、開封テープ2を引っ張って外装フィルム3を切断して、内装容器包装1を開くときに、確実にICタグ4の機能が破壊され、開封前とICタグ4の応答が異なり、開封したことが確実に判定できる。」

B 「【図1】


C 「【図2】



3 引用文献3について
本願の優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された,米国特許出願公開第2007/0232164号明細書(以下,これを「引用文献3」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

A 「[0036] FIG. 1 is a diagram illustrating a high-level view of a user operating a mobile RFID-enabled inspection device to inspect for life vests under aircraft seats. Inspector 14, also referred to as user 14, uses inspection device 10 to interrogate an RFID tag (or label) 15 attached to one or more life vests 13 to determine whether the life vests are properly located under aircraft seats 12 contained within an aircraft. In this example, inspection device 10 includes screen 3, which provides visual feedback and possibly directions to user 14. In one embodiment, and as described in greater detail below, user 14 uses inspection device 10 to inspect the aircraft for present, altered, missing, moved, improper, expired, or soon-to-be expired life vests (or some subset of this list). ・・・(後略)・・・
(当審訳:図1は,航空機座席の下のライフベストを検査するための,モバイル型のRFID検査装置をユーザが操作する高レベルなビューを示す図である。そして,ユーザでもある検査官14は,検査装置10を使用して,1つまたはそれ以上のライフベスト13に取り付けられたRFIDタグ(またはラベル)に,ライフベストが,適切に航空機内に含まれる座席12の下方に位置しているか否かを判定するために問い合わせをする。この例では,検査装置10は,ユーザ14に視覚フィードバック,及び可能な指示を提供する画面3を含む。一実施形態では,以下により詳細に説明するように,ユーザ14は,検査装置10を利用して,ライフベストが,存在している,変更されている,紛失している,移動している,不適切である,有効期限が切れたまたはまもなく期限切れであること(あるいは,このリストのいくつかのサブセット)を検査する。)」

B 「[0181] FIG. 16 shows an example configuration of life vest 13, folded (13B) and placed within package 2101. RFID tag 15 is situated on package 2101 in a manner such that it not practical to gain access to the life vest without compromising RFID tag 15. Package 2101 includes tear tag 2102. Not all life vest packaging has such a rip tag. There are generally two types of aircraft life vest packages: 5-year and 10-year. A 5-year package is usually composed of a flexible polymer such as polyethylene, and includes a tear tag, such as tear tag 2102 made of a tear-resistant plastic, which is attached to surface of the package, and the package closed by stitching the surfaces together. Pulling tear tag 2102 opens package 2101 by producing a uniform slit across the package. A 10-year package is usually made from the same material as the life vests: nylon, coated with PU. To assist in opening a 10-year package, a notch is cut into the fabric so a tear can propagate in the desired direction. Package 2101 is a 5-year type, and further life vest package examples presented herein are drawn generally to a 5-year type of package. This focus on a 5-year type package is for illustrative purposes only. As will be appreciated by one skilled in the art, this invention may be easily applied to a 10-year type package, and any existing or to-be-conceived packaging solution that includes a mechanism for accessing the package's contents along a pre-defined region of the package's membrane.
(当審訳:図16は,ライフベスト13が,折り曲げられて(13B),パッケージ2101内に配置されたことを示している。RFIDタグ15は,RFIDタグ15を損なうことなくライフベストへのアクセスを得ることができないようにパッケージ2101上に配置されている。パッケージ2101は,引き裂きタグ2102を含んでいる。全てではないが,ライフベストのパッケージングは,そのような引き裂きタグを有する。一般的に,航空機用ライフベストパッケージには5年および10年のタイプの2つのタイプがある。5年パッケージは,普通はポリエチレンのような可撓性ポリマーで構成されており,引き裂き抵抗の大きなプラスチックからなり,パッケージの表面に取り付けられ,パッケージ表面と互いに縫い付けることによって閉じられている引き裂きタグ2102を含む。引き裂きタグ2102を引っ張ると,パッケージ全体に均一なスリットを形成することにより,パッケージ2101が開く。10年のパッケージは,通常,ライフベストと同じ材料であるポリウレタンでコーティングされたナイロンから作製される。パッケージの開封を助けるために,引き裂きが所望の方向で広がることができるように,切り込みが,布に施される。パッケージ2101は,5年タイプであり,本明細書のライフベストパッケージとしては,パッケージの種類は一般的に5年タイプが描かれている。この5年型パッケージに焦点することは,例示の目的のみのためである。当業者には理解されるように,本発明は,10年型パッケージ,パッケージの表面の所定の領域に沿ってパッケージの内容物にアクセスするための機構を含む既存のまたは考えうるパッケージングの答えとして,適用することができる。)」

C「【図1】



D「【図16】




第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「システム」は,「リーダ・ライタ20を用いた収納袋10の開封/未開封の確認を遠距離から容易に行うことが可能」なものであるから,当然,「リーダ・ライタ20」には,「収納袋10の開封/未開封」の状態が表示されていることは明らかである。
してみると,引用発明の「システム」は, 本願発明1の「状態表示のためのシステム」に相当する。

イ 引用発明の「開封確認用無線タグ12」は,「インレイ60と,当該インレイ60を難燃性両面テープ62a,62bを介して両側から挟む難燃性フィルム64a,64bとを有し」,「インレイ60は,PET等を材料とするフィルム51と,アンテナ部としてのタグアンテナ52と,ストラップ54と,集積回路としてのRFIDチップ56とを有し」ており,引用発明の「開封確認用無線タグ12」においては,「タグアンテナ52」と「ストラップ54」と「RFIDチップ56」とからなる回路が,「開封確認用無線タグ12の情報をリーダ・ライタ20に送信」しているものと認められる。さらに,「開封確認用無線タグ12」は,「パッシブ型のRFIDタグ」であるから,「リーダ・ライタ20」からの,何らかの問い合わせ信号に対する帰還信号として「開封確認用無線タグ12の情報」を「送信」しているものと認められる。
また,引用発明では,「開封確認用無線タグ12のRFIDチップ56を含む第1部分12Aと,開封確認用無線タグ12の第1部分以外の第2部分12B,との間の境界部分には,他の部分よりも破断しやすく加工されたミシン目70が形成され」るものである。
そして,引用発明では「開封確認用無線タグ12の第2部分12Bの2つの第2の貫通孔58bに対して,結束バンドを通し,かつ当該結束バンドを収納袋10の口部分の一方側の紐通し穴14B,14Cに通して結束することで,収納袋10に開封確認用無線タグ12を取り付け,留め具16で収納袋10の口を塞いだ後(未開封とした後),開封確認用無線タグ12の第1部分12Aの第1の貫通孔58aに対して,結束バンドを通し,かつ当該結束バンドを収納袋10の口部分の他方側の紐通し穴14Aに通して結束」するものであるから,引用発明の「開封確認用無線タグ12」の「第1部分12A」は,「収納袋10の口部分の他方側」にあり,「第2部分12B」は,「収納袋10の口部分の一方側」にあるものと認められる。
してみると,引用発明の「収納袋10」,「口部分の他方側」,「第1部分12A」,「口部分の一方側」,「第2部分12B」,「タグアンテナ52」と「ストラップ54」と「RFIDチップ56」とからなる回路は,各々,本願発明1の「分離可能な物体」,「分離境界の第1の側」,「第1の部分」,「分離境界の第2の側」,「第2の部分」,「第1の帰還信号を提供するように構成された第1の無線識別(RFID)回路」に相当する。
そして,引用発明の「開封確認用無線タグ12」は,本願発明1の「分離可能な物体の分離境界の第1の側に配置可能な第1の部分、及び前記分離境界の第2の側に配置可能な第2の部分を有し、第1の帰還信号を提供するように構成された第1の無線識別(RFID)回路を有する、保安装置」に相当する。

ウ 引用発明の「リーダ・ライタ20」は,「ある座席80に設置された収納袋10に設けられた存在確認用無線タグ11及び開封確認用無線タグ12のそれぞれと通信ができた場合には,当該収納袋10が未開封の状態で座席80下に存在していることを検出」するものである。
また,いわゆるリーダ・ライタが,マイクロプロセッサ及びシステムメモリ,RFIDリーダー,並びに無線アンテナを備えていることは技術常識である。
してみると,引用発明の「リーダ・ライタ20」は,本願発明1の「マイクロプロセッサ及びシステムメモリ、RFIDリーダー、並びに無線アンテナを備え、第1のRFID回路との間で無線周波数信号を送受信するように構成され、前記第1の帰還信号を、前記分離可能な物体の開封されていない状態を示すものとして認識するように構成された、データ装置」に相当する。

エ 引用発明の「タグアンテナ52」は,「開封確認用無線タグ12の第1部分12Aと第2部分12Bとにわたって形成され」るものであるから,引用発明の「タグアンテナ52」と「ストラップ54」と「RFIDチップ56」からなる回路が,「開封確認用無線タグ12の第1部分12Aと第2部分12B」にあるといえる。
また,引用発明の「存在確認用無線タグ11」は,「パッシブ型のRFIDタグ」であって,「存在確認用無線タグ11の情報をリーダ・ライタ20に送信するもので」あるから,「リーダ・ライタ20」からの,何らかの問い合わせ信号に対する帰還信号として「存在確認用無線タグ11の情報」を「送信」しているものと認められる。
さらに,引用発明の「リーダ・ライタ20は,ある座席80に設置された収納袋10に設けられた存在確認用無線タグ11及び開封確認用無線タグ12のそれぞれと通信ができた場合には,当該収納袋10が未開封の状態で座席80下に存在していることを検出し,また,リーダ・ライタ20は,ある座席80に設置された収納袋10に設けられた存在確認用無線タグ11及び開封確認用無線タグ12のうち,存在確認用無線タグ11のみと通信ができた場合には、当該収納袋10が開封された状態で座席80下に存在していることを検出」するものである。
してみると,引用発明の「存在確認用無線タグ11」,「存在確認用無線タグ11の情報」は,各々,本願発明1の「第2のRFID回路」,「第2の帰還信号」に相当し,引用発明と,本願発明1とは,後記の点では相違するものの,“前記第1のRFID回路が前記第1及び第2の部分にあり,第2のRFID回路を更に備え,前記第2のRFID回路が,第2の帰還信号を提供するように構成され,前記データ装置が,前記第1及び第2の帰還信号の両方のほぼ同時の受信を,前記分離可能な物体の前記開封されていない状態を示すものとして認識し,前記第2の帰還信号のみの受信を,前記分離可能な物体の開封された状態を示すものとして認識するように構成され”るものである点では共通する。

オ 引用発明の「開封確認用無線タグ12」では,「タグアンテナ52」と「ストラップ54」と「RFIDチップ56」からなる回路を有する「インレイ60」は「難燃性フィルム64a,64」で「両側から挟」まれているものであるから,この回路は「難燃性フィルム64a,64」に埋め込まれているといえる。
また,引用発明は「開封確認用無線タグ12の第1部分12A」と「第2部分12B」の「境界部分」に「ミシン目70が形成されており」,「航空機の乗客等が収納袋10を開封すると,開封確認用無線タグ12の第1部分12Aと第2部分12Bとが切り離され,第1部分12Aには,RFIDチップ56の両側約1cmの長さだけタグアンテナ52が残ることになり,開封確認用無線タグ12とリーダ・ライタ20との間の通信は不能となるものであ」って,また,「タグアンテナ52は,開封確認用無線タグ12の第1部分12Aと第2部分12Bとにわたって形成され」るものであるから,引用発明は「タグアンテナ52」は,一部分が「開封確認用無線タグ12」の「ミシン目70」に及び,「第1部分12A」及び「第2部分12B」が「ミシン目70」を横切って連結されており,「ミシン目70」を横断する「タグアンテナ52」を断ち切ることが,「開封確認用無線タグ12の情報」の送信を妨げているといえる。
したがって,引用発明の「難燃性フィルム64a,64」,「タグアンテナ52」,「ミシン目70」は,各々,本願発明1の「開封明示ストリップ」,「第1のRFID回路の一部分」,「破壊可能部分」に相当し,さらに,引用発明と,本願発明1とは,後記の点では相違するものの,“前記保安装置が,内部に埋め込まれた前記第1のRFID回路を有する開封明示ストリップを備え,前記第1のRFID回路の一部分が前記開封明示ストリップの破壊可能部分に及び,前記第1及び第2の部分が前記破壊可能部分を横切って連結されており,前記破壊可能部分を横断する前記第1のRFID回路を断ち切ることが,前記第1の帰還信号の送信を妨げる”ものである点では共通する。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,以下の一致点と相違点とがある。

〈一致点〉
「状態表示のためのシステムであって,
分離可能な物体の分離境界の第1の側に配置可能な第1の部分,及び前記分離境界の第2の側に配置可能な第2の部分を有し,第1の帰還信号を提供するように構成された第1の無線識別(RFID)回路を有する,保安装置,並びに,
マイクロプロセッサ及びシステムメモリ,RFIDリーダー,並びに無線アンテナを備え,第1のRFID回路との間で無線周波数信号を送受信するように構成され,前記第1の帰還信号を,前記分離可能な物体の開封されていない状態を示すものとして認識するように構成された,データ装置,
を備えるシステムであって,
前記第1のRFID回路が前記第1及び第2の部分にあり,第2のRFID回路を更に備え,前記第2のRFID回路が,第2の帰還信号を提供するように構成され,前記データ装置が,前記第1及び第2の帰還信号の両方のほぼ同時の受信を,前記分離可能な物体の前記開封されていない状態を示すものとして認識し,前記第2の帰還信号のみの受信を,前記分離可能な物体の開封された状態を示すものとして認識するように構成され,
前記保安装置が,内部に埋め込まれた前記第1のRFID回路を有する開封明示ストリップを備え,前記第1のRFID回路の一部分が前記開封明示ストリップの破壊可能部分に及び,前記第1及び第2の部分が前記破壊可能部分を横切って連結されており,前記破壊可能部分を横断する前記第1のRFID回路を断ち切ることが,前記第1の帰還信号の送信を妨げる,システム。」

〈相違点〉
「第2のRFID回路」が,本願発明1では,「保安装置」の「前記第2の部分上に全体が含まれ」,さらに「開封明示ストリップ」に有するものであるのに対して,引用発明では,「開封確認用無線タグ12」の「第2部分」はなく,「収納袋10」に設けられるものである点。

(2)相違点についての判断
相違点について検討する。
上記「第4 2及び3」の引用文献2,3には,1つのタグに1つのRFID回路を設け開封の検出をすることは記載されているが,開封の検出を確認するための1つのタグに対して2つのRFID回路を設けることは記載されておらず,このことが本願の優先日前に周知の技術であったとも認められない。
したがって,上記相違点に係る構成が,引用発明及び引用文献2,3に記載の技術事項に基づき当業者が容易に構成し得たものであるとはいえない。
以上のとおりであるから,本願発明1が引用発明及び引用文献2,3に記載の技術事項に基づき当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし7について
本願発明2ないし7は,本願発明1を更に限定したものであるので,同様に,当業者であっても引用発明及び引用文献2,3に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明8について
本願発明8は,本願発明1の「RFID」を備える「システム」を「RFID」の観点から記載した過ぎないものであるから,同様に,当業者であっても引用発明及び引用文献2,3に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 本願発明9ないし11について
本願発明9ないし11は,本願発明8を更に限定したものであるので,同様に,当業者であっても引用発明及び引用文献2,3に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

5 本願発明12について
本願発明12は,本願発明1の「システム」を「方法」の観点から記載したに過ぎないものであるから,同様に,当業者であっても引用発明及び引用文献2,3に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

6 本願発明13ないし15について
本願発明13ないし15は,本願発明12を更に限定したものであるので,同様に,当業者であっても引用発明及び引用文献2,3に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


第6 原査定について
<特許法29条2項について>
審判請求時の補正により,本願発明1ないし15は上記第3に示したとおりのものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用発明(上記第4の引用文献1に記載された発明)及び引用文献2,3に記載の技術事項に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。
したがって,原査定の理由を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結
 
審決日 2021-09-10 
出願番号 特願2016-53276(P2016-53276)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 塚田 肇
山澤 宏
発明の名称 RFID(無線識別)装置を使用する開封検出のためのシステム及び方法  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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