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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  F16G
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  F16G
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F16G
管理番号 1377761
異議申立番号 異議2019-700896  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-11-13 
確定日 2021-07-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6513283号発明「強靭な布を含む同期ベルト」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6513283号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、〔3?8〕、9、10、11、12、13、14、15、16について訂正することを認める。 特許第6513283号の請求項1ないし15に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6513283号の請求項1ないし18に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)7月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年7月29日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成31年4月19日にその特許権の設定登録がされ、令和1年5月15日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許について、特許異議申立人川崎安代(当審注:「崎」は原文はたつさき。以下、「異議申立人」という。)により、請求項1ないし15に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和1年11月13日 :特許異議申立人による特許異議の申立て
令和2年 1月16日付け:取消理由通知書
令和2年 4月20日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
令和2年 5月29日付け:訂正拒絶理由通知書
令和2年 7月10日 :特許権者による手続補正書及び意見書の提出
令和2年10月 5日 :異議申立人による意見書の提出
令和2年11月 6日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和3年 2月12日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
令和3年 5月10日付け:審尋(特許権者)
令和3年 6月 8日 :特許権者による回答書の提出
なお、令和3年2月12日の訂正請求書による訂正の請求によって、令和2年4月20日の訂正請求書による訂正の請求は、取り下げられたものとみなされる(特許法第120条の5第7項)。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和3年2月12日の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸伸度と横糸強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であることを特徴とする歯付伝動ベルト。」と記載されているのを、「前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
前記織布が、テクスチャード加工された、単糸である縦糸と、前記縦糸と比べてより高度にテクスチャード加工された、単糸である横糸とで構成され、
横糸方向の布引張強靱度が、縦糸方向の布引張強靱度より大きいことを特徴とする歯付伝動ベルト。」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「横糸が、0.03?0.049N/dtexの範囲の破断強度をもつ、もしくは中間のテナシティをもつナイロン66である場合、横糸方向の布引張強靭度が、60mJ/mm^(2)以上であり、
あるいは、横糸が、0.05N/dtexを超える破断強度をもつ、もしくは高テナシティのナイロン66である場合、横糸方向の布引張強靭度は、およそ80mJ/mm^(2)を超えることを特徴とする請求項1に記載の歯付伝動ベルト。」と記載されているのを、訂正後の請求項1に係る発明特定事項の一部を含む独立形式に変更し、「歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
前記織布を構成する、テクスチャード加工された、単糸である横糸が、0.03?0.049N/dtexの範囲の破断強度をもつ、もしくは中間のテナシティをもつナイロン66である場合、前記織布が、横糸方向の布引張強靭度が、60mJ/mm^(2)以上となる横糸の特性を有し、
あるいは、前記織布を構成するテクスチャード加工された、単糸である横糸が、0.05N/dtexを超える破断強度をもつ、もしくは高テナシティのナイロン66である場合、前記織布が、横糸方向の布引張強靭度が80mJ/mm^(2)を超える横糸の特性を有することを特徴とする歯付伝動ベルト。」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「歯ピッチが、概して14mmであることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の歯付伝動ベルト。」と記載されているのを、訂正後の請求項1に係る発明特定事項の一部を含む独立形式に変更し、「歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
横糸が、0.05N/dtexを超える破断強度をもつ、もしくは高テナシティのナイロン66である場合、横糸方向の布引張強靱度は、90mJ/mm^(2)以上であり、
歯ピッチが、概して14mmであることを特徴とする歯付伝動ベルト。」に訂正する。請求項3を引用する請求項4ないし8も同様に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に「前記布が、ジグザグの斜文織を有することを特徴とする請求項3に記載の歯付伝動ベルト。」と記載されているのを、「前記織布が、ジグザグの斜文織を有することを特徴とする請求項3に記載の歯付伝動ベルト。」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に「前記布が、4×2の斜文織を有することを特徴とする請求項6に記載の歯付伝動ベルト。」と記載されているのを、「前記織布が、4×2の斜文織を有することを特徴とする請求項6に記載の歯付伝動ベルト。」

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8に「前記布が、2層の織物構造を有することを特徴とする請求項3に記載の歯付伝動ベルト。」と記載されているのを、「前記織布が、2層の織物構造を有することを特徴とする請求項3に記載の歯付伝動ベルト。」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項9に「注型ポリウレタンのベルト本体と、
前記ベルト本体に埋め込まれたカーボンファイバ心線と、
明細書の表1に示した実施例2の特性をもつ歯布と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の歯付伝動ベルト。」と記載されているのを、訂正後の請求項1に係る発明特定事項の一部を含む独立形式に変更し、
「歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
注型ポリウレタンのベルト本体と、前記ベルト本体に埋め込まれたカーボンファイバ心線と、明細書の表1に示した実施例2の横糸の特性をもつ前記織布とを備えたことを特徴とする歯付伝動ベルト。」に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項10に「注型ポリウレタンのベルト本体と、
前記ベルト本体に埋め込まれたカーボンファイバ心線と、
明細書の表1に示した実施例3の特性をもつ歯布と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の歯付伝動ベルト 。」と記載されているのを、訂正後の請求項1に係る発明特定事項の一部を含む独立形式に変更し、
「歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
注型ポリウレタンのベルト本体と、
前記ベルト本体に埋め込まれたカーボンファイバ心線と、
明細書の表1に示した実施例3の横糸の特性をもつ前記織布と
を備えたことを特徴とする歯付伝動ベルト。」に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項11に「注型ポリウレタンのベルト本体と、
前記ベルト本体に埋め込まれたカーボンファイバ心線と、
明細書の表2に示した実施例5、実施例6もしくは実施例7の特性をもつ歯布と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の歯付伝動ベルト。」と記載されているのを、訂正後の請求項1に係る発明特定事項の一部を含む独立形式に変更し、「歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
注型ポリウレタンのベルト本体と、
前記ベルト本体に埋め込まれたカーボンファイバ心線と、
明細書の表2に示した実施例5、実施例6もしくは実施例7の横糸の特性をもつ前記織布と
を備えたことを特徴とする歯付伝動ベルト。」に訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項12に「エラストマーベルト本体と、
前記ベルト本体に埋め込まれた心線と、
明細書の表1に示した実施例2もしくは実施例3の特性をもつ歯布、または明細書の表2に示した実施例5、実施例6もしくは実施例7の特性をもつ歯布と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の歯付伝動ベルト。」と記載されているのを、訂正後の請求項1に係る発明特定事項の一部を含む独立形式に変更し、「歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
エラストマーベルト本体と、
前記ベルト本体に埋め込まれた心線と、
明細書の表1に示した実施例2もしくは実施例3の横糸の特性をもつ前記織布、または明細書の表2に示した実施例5、実施例6もしくは実施例7の横糸の特性をもつ前記織布と
を備えたことを特徴とする歯付伝動ベルト。」に訂正する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項13に「前記エラストマーベルト本体が、硫化ゴム、熱可塑性エラストマーまたは注型エラストマーであることを特徴とする請求項12に記載の歯付伝動ベルト。」と記載されているのを、訂正後の請求項12に係る発明特定事項を含む独立形式に変更し、「歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
エラストマーベルト本体と、
前記ベルト本体に埋め込まれた心線と、
明細書の表1に示した実施例2もしくは実施例3の横糸の特性をもつ前記織布、または明細書の表2に示した実施例5、実施例6もしくは実施例7の横糸の特性をもつ前記織布とを備え、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
前記エラストマーベルト本体が、硫化ゴム、熱可塑性エラストマーまたは注型エラストマーであることを特徴とする歯付伝動ベルト。」

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項14に「歯付ベルトの形で平ベルト、マルチVベルトまたはVベルトであることを特徴とする請求項12に記載の歯付伝動ベルト。」と記載されているのを、訂正後の請求項12に係る発明特定事項を含む独立形式に変更し、「歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
エラストマーベルト本体と、
前記ベルト本体に埋め込まれた心線と、
明細書の表1に示した実施例2もしくは実施例3の横糸の特性をもつ前記織布、または明細書の表2に示した実施例5、実施例6もしくは実施例7の横糸の特性をもつ前記織布とを備え、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
歯付ベルトの形で平ベルト、マルチVベルトまたはVベルトであることを特徴とする歯付伝動ベルト。」に訂正する。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項15に「前記布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置されていることを特徴とする請求項12に記載の歯付伝動ベルト。」と記載されているのを、訂正後の請求項12に係る発明特定事項を含む独立形式に変更し、「歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
エラストマーベルト本体と、
前記ベルト本体に埋め込まれた心線と、
明細書の表1に示した実施例2もしくは実施例3の横糸の特性をもつ前記織布、または明細書の表2に示した実施例5、実施例6もしくは実施例7の横糸の特性をもつ前記織布とを備え、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置されていることを特徴とする歯付伝動ベルト。」に訂正する。

(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項16に「前記布が、縦糸に対する横糸の比が5.2より大きく、そして、相対的により高度にテクスチャード加工された横糸と、相対的に軽くテクスチャード加工された、あるいはまったくテクスチャード加工されていない縦糸とを有することを特徴とする請求項1に記載の歯付伝動ベルト。」と記載されているのを、訂正後の請求項1に係る発明特定事項の一部を含む独立形式に変更し、「歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
前記織布が、縦糸に対する横糸の重量比が5.2より大きく、そして、相対的により高度にテクスチャード加工された横糸と、相対的に軽くテクスチャード加工された、あるいはまったくテクスチャード加工されていない縦糸とを有することを特徴とする歯付伝動ベルト。」

(15)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし16は、請求項2、3、9、10、11、12、16が、それぞれ請求項1を引用し、また、請求項4、6、8が、請求項1を引用する請求項3を引用し、請求項5、7が、それぞれ請求項3を引用する請求項4、6を引用し、請求項13、14、15が、それぞれ請求項1を引用する請求項12を引用するものであるから、本件訂正は、一群の請求項1ないし16について請求されている。
また、本件訂正後の請求項2、3ないし8、9、10、11、12、13、14、15、16に係る訂正について、特許権者は、当該訂正が認められる場合には、請求項1とは別の訂正単位として扱われることを求めている。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
a 訂正の目的
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1において「横糸伸度と横糸強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靱度)」と記載されていたものを、「横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靱度)」とすることで、「布引張強靱度」をより明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1において、ベルトに対する織布の配置構成、織布を構成する横糸及び縦糸の構成、および、横糸方向と縦糸方向での布引張強靱度の比較についていずれも特定されていないものを、「前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、前記織布が、テクスチャード加工された、単糸である縦糸と、前記縦糸と比べてより高度にテクスチャード加工された、単糸である横糸とで構成され、横糸方向の布引張強靱度が、縦糸方向の布引張強靱度より大きい」とすることで、織布の特徴をさらに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
b 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1のうち、横糸方向の布伸度と布引張強度については、願書に添付した明細書の段落【0028】及び【0029】の記載に基づくものである。また、訂正事項1のうち、織布の横糸方向がベルト長手方向に配置されることは、願書に添付した明細書の段落【0025】及び特許請求の範囲の【請求項15】の記載に基づくものである。さらに、訂正事項1のうち、横糸と縦糸とがテクスチャード加工された単糸であり、横糸が縦糸よりも高度にテクスチャード加工されることは、願書に添付した明細書の段落【0039】の記載に基づくものである。加えて、訂正事項1のうち、横糸方向と縦糸方向の布引張強靱度の比較については、願書に添付した明細書の段落【0010】、【0031】、【0039】及び【0046】の記載に基づいている。したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
c 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aのとおり、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められない。
また、訂正事項1は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第6項の規定に適合する。
d 特許請求の際に独立して特許を受けることができること
本件訂正前の請求項1について特許異議申立てがされているから、本件訂正後の請求項1に係る訂正事項1について、独立特許要件は課されない。

(2)訂正事項2
a 訂正の目的
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2が請求項1を引用する形式であったものを、独立形式請求項に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項第4号における他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的としている。
また、訂正事項2は、本件訂正前の請求項2において、「横糸方向の布引張強靱度は、およそ80mJ/mm^(2)を超える」と記載されていたものを、「横糸方向の布引張強靱度は、80mJ/mm^(2)を超える」とすることで、横糸方向の布引張強靱度の範囲を明確にするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。加えて、訂正事項2により、横糸の破断強度の2通りにおいて「前記織布が、・・・となる横糸の特性を有し」と訂正することは、歯カバーを構成する織布の横糸の特性であることを明確にするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
さらに、訂正事項2により、横糸が「前記織布を構成するテクスチャード加工された、単糸である」ものと特定することは、横糸の構成を特定するものであるから、特許法120条の5第2項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2におけるその余の事項は、上記(1)aと同様に特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
b 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2のうち、「横糸方向の布引張強靱度は、80mJ/mm^(2)を超える」との点は、願書に添付した明細書の段落【0036】の記載に基づくものである。また、訂正事項2のうち、横糸がテクスチャード加工されたものであることは、段落【0039】の記載に基づくものである。そして、訂正事項2におけるその余の事項は、上記(1)bと同様である。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
c 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aのとおり、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められない。
また、訂正事項2は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第6項の規定に適合する。
d 特許請求の際に独立して特許を受けることができること
本件訂正前の請求項2について特許異議申立てがされているから、本件訂正後の請求項2に係る訂正事項2について、独立特許要件は課されない。

(3)訂正事項3
a 訂正の目的
訂正事項3は、本件訂正前の請求項3が請求項1又は2を引用する形式であったものを、独立形式請求項に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項第4号における他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的としている。
また、訂正事項3は、本件訂正前の請求項3において、引用する請求項1又は2に加えて横糸の特性について更なる特定をしていなかったものを、「横糸が、0.05N/dtexを超える破断強度をもつ、もしくは高テナシティのナイロン66である場合」の「横糸方向の布引張強靱度は、90mJ/mm^(2)以上で」あることを特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項3におけるその余の事項は、上記(1)aと同様に特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
b 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3のうち、「横糸が、0.05N/dtexを超える破断強度をもつ、もしくは高テナシティのナイロン66である場合」の「横糸方向の布引張強靱度」は、願書に添付した明細書の段落【0036】に記載されている。また、訂正事項2におけるその余の事項は、上記(1)bと同様である。
したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
c 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aのとおり、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められない。
また、訂正事項3は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第6項の規定に適合する。
d 特許請求の際に独立して特許を受けることができること
本件訂正前の請求項3について特許異議申立てがされているから、本件訂正後の請求項3に係る訂正事項3について、独立特許要件は課されない。

(4)訂正事項4
a 訂正の目的
訂正事項4は、本件訂正前の請求項6において「前記布が、」と記載されていたものを、「前記織布が、」とすることで、請求項6が引用する請求項3における「織布」との記載と整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
b 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4について、織布がジグザグの斜文織であることは、願書に添付した明細書の段落【0043】に記載されている。したがって、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
c 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aのとおり、訂正事項4は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められない。
また、訂正事項4は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第6項の規定に適合する。
d 特許請求の際に独立して特許を受けることができること
本件訂正前の請求項6について特許異議申立てがされているから、本件訂正後の請求項6に係る訂正事項4について、独立特許要件は課されない。

(5)訂正事項5
a 訂正の目的
訂正事項5は、本件訂正前の請求項7において「前記布が、」と記載されていたものを、「前記織布が、」とすることで、請求項7が引用する請求項6における「織布」との記載と整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
b 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5について、織布が4×2の斜文織であることは、願書に添付した明細書の段落【0043】に記載されている。したがって、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
c 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aのとおり、訂正事項5は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められない。
また、訂正事項5は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第6項の規定に適合する。
d 特許請求の際に独立して特許を受けることができること
本件訂正前の請求項7について特許異議申立てがされているから、本件訂正後の請求項7に係る訂正事項5について、独立特許要件は課されない。

(6)訂正事項6
a 訂正の目的
訂正事項6は、本件訂正前の請求項8において「前記布が、」と記載されていたものを、「前記織布が、」とすることで、請求項8が引用する請求項3における「織布」との記載と整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
b 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項6について、織布が2層の織物構造であることは、願書に添付した明細書の段落【0044】に記載されている。したがって、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
c 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aのとおり、訂正事項6は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められない。
また、訂正事項6は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第6項の規定に適合する。
d 特許請求の際に独立して特許を受けることができること
本件訂正前の請求項8について特許異議申立てがされているから、本件訂正後の請求項8に係る訂正事項6について、独立特許要件は課されない。

(7)訂正事項7
a 訂正の目的
訂正事項7は、本件訂正前の請求項9が請求項1を引用する形式であったものを、独立形式請求項に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項第4号における他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的としている。
また、訂正事項7は、本件訂正前の請求項9において、「明細書の表1に示した実施例2の特性を持つ歯布」と記載されていたものを、「明細書の表1に示した実施例2の横糸の特性をもつ前記織布」とすることで、同表1の実施例2に、横糸、縦糸及び織布の特性が記載されているところ、このうち横糸の特性に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとともに、本件訂正前の請求項9が引用する請求項1における「織布」との記載と整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
さらに、訂正事項7のその余の事項については、上記(1)aと同様に特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、訂正事項7は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
b 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項7のうち、「明細書の表1に示した実施例2の横糸の特性をもつ前記織布」とする訂正は、願書に添付した明細書の【0045】の【表1】に記載されている。また、訂正事項7におけるその余の事項は、上記(1)bと同様である。
したがって、訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
c 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aのとおり、訂正事項7は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められない。
また、訂正事項7は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第6項の規定に適合する。
d 特許請求の際に独立して特許を受けることができること
本件訂正前の請求項9について特許異議申立てがされているから、本件訂正後の請求項9に係る訂正事項7について、独立特許要件は課されない。

(8)訂正事項8
a 訂正の目的
訂正事項8は、本件訂正前の請求項10が請求項1を引用する形式であったものを、独立形式請求項に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項第4号における他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的としている。
また、訂正事項8は、本件訂正前の請求項10において、「明細書の表1に示した実施例3の特性を持つ歯布」と記載されていたものを、「明細書の表1に示した実施例3の横糸の特性をもつ前記織布」とすることで、同表1の実施例3に、横糸、縦糸及び織布の特性が記載されているところ、このうち横糸の特性に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとともに、訂正前の請求項10が引用する請求項1における「織布」との記載と整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
さらに、訂正事項8のその余の事項については、上記(1)aと同様に特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、訂正事項8は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
b 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項8のうち、「明細書の表1に示した実施例8の横糸の特性をもつ前記織布」とする訂正は、願書に添付した明細書の【0045】の【表1】に記載されている。また、訂正事項8におけるその余の事項は、上記(1)bと同様である。
したがって、訂正事項8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
c 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aのとおり、訂正事項8は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められない。
また、訂正事項8は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第6項の規定に適合する。
d 特許請求の際に独立して特許を受けることができること
本件訂正前の請求項10について特許異議申立てがされているから、本件訂正後の請求項10に係る訂正事項8について、独立特許要件は課されない。

(9)訂正事項9
a 訂正の目的
訂正事項9は、本件訂正前の請求項11が請求項1を引用する形式であったものを、独立形式請求項に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項第4号における他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的としている。
また、訂正事項9は、本件訂正前の請求項11において、「明細書の表2に示した実施例5、実施例6もしくは実施例7の特性を持つ歯布」と記載されていたものを、「明細書の表2に示した実施例5、実施例6もしくは実施例7の横糸の特性を持つ前記織布」とすることで、同表2における実施例5、実施例6及び実施例7の横糸の特性であることを明確にするとともに、本件訂正前の請求項11が引用する請求項1における「織布」との記載と整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
さらに、訂正事項9のその余の事項は、上記(1)aと同様に特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、訂正事項9は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
b 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項9のうち、「明細書の表2に示した実施例5、実施例6もしくは実施例7の横糸の特性を持つ前記織布」とする訂正は、願書に添付した明細書の【0049】の【表2】に記載されている。また、訂正事項9におけるその余の事項は、上記(1)bと同様である。
したがって、訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
c 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aのとおり、訂正事項9は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められない。
また、訂正事項9は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第6項の規定に適合する。
d 特許請求の際に独立して特許を受けることができること
本件訂正前の請求項11について特許異議申立てがされているから、本件訂正後の請求項11に係る訂正事項9について、独立特許要件は課されない。

(10)訂正事項10
a 訂正の目的
訂正事項10は、本件訂正前の請求項12が請求項1を引用する形式であったものを、独立形式請求項に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項第4号における他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的としている。
また、訂正事項10は、本件訂正前の請求項12において、「明細書の表1に示した実施例2もしくは実施例3の特性を持つ歯布、または明細書の表2に示した実施例5、実施例6もしくは実施例7の特性を持つ歯布」と記載されていたものを、「明細書の表1に示した実施例2もしくは実施例3の横糸の特性を持つ前記織布、または明細書の表2に示した実施例5、実施例6もしくは実施例7の横糸の特性を持つ前記織布」とすることで、同表1の実施例2及び実施例3に、横糸、縦糸、及び織布の特性が記載されているところ、このうち横糸の特性に限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであることに加え、同表2における実施例5、実施例6及び実施例7の横糸の特性であることを明確にするとともに、訂正前の請求項12が引用する請求項1における「織布」との記載と整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
さらに、訂正事項10のその余の事項は、上記(1)aと同様に特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、訂正事項10は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
b 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項10のうち、「明細書の表1に示した実施例2もしくは実施例3の横糸の特性を持つ前記織布、または明細書の表2に示した実施例5、実施例6もしくは実施例7の横糸の特性を持つ前記織布」とする訂正は、願書に添付した明細書の【0045】の【表1】及び【0049】の【表2】に記載されている。また、訂正事項10におけるその余の事項は、上記(1)bと同様である。
したがって、訂正事項10は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
c 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aのとおり、訂正事項10は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められない。
また、訂正事項10は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第6項の規定に適合する。
d 特許請求の際に独立して特許を受けることができること
本件訂正前の請求項12について特許異議申立てがされているから、本件訂正後の請求項12に係る訂正事項10について、独立特許要件は課されない。

(11)訂正事項11
a 訂正の目的
訂正事項11は、本件訂正前の請求項13が、請求項12を引用する形式であったものを、独立形式請求項に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項第4号における他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的としている。
また、訂正事項11のその余の事項は、上記(1)a及び(10)aと同様に特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、訂正事項11は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
b 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項11は、上記(1)b及び(10)bと同様に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
c 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aのとおり、訂正事項11は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められない。
また、訂正事項11は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第6項の規定に適合する。
d 特許請求の際に独立して特許を受けることができること
本件訂正前の請求項13について特許異議申立てがされているから、本件訂正後の請求項13に係る訂正事項11について、独立特許要件は課されない。

(12)訂正事項12
a 訂正の目的
訂正事項12は、本件訂正前の請求項14が、請求項12を引用する形式であったものを、独立形式請求項に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項第4号における他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的としている。
また、訂正事項12のその余の事項は、上記(1)a及び(10)aと同様に特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、訂正事項12は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
b 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項12は、上記(1)b及び(10)bと同様に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
c 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aのとおり、訂正事項12は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められない。
また、訂正事項12は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第6項の規定に適合する。
d 特許請求の際に独立して特許を受けることができること
本件訂正前の請求項14について特許異議申立てがされているから、本件訂正後の請求項14に係る訂正事項12について、独立特許要件は課されない。

(13)訂正事項13
a 訂正の目的
訂正事項13は、本件訂正前の請求項15が、請求項12を引用する形式であったものを、独立形式請求項に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項第4号における他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的としている。
また、訂正事項13のその余の事項は、上記(1)a及び(10)aと同様に特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、訂正事項13は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
b 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項13は、上記(1)b及び(10)bと同様に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
c 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aのとおり、訂正事項13は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められない。
また、訂正事項13は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第6項の規定に適合する。
d 特許請求の際に独立して特許を受けることができること
本件訂正前の請求項15について特許異議申立てがされているから、本件訂正後の請求項15に係る訂正事項13について、独立特許要件は課されない。

(14)訂正事項14
a 訂正の目的
訂正事項14は、本件訂正前の請求項16が請求項1を引用する形式であったものを、独立形式請求項に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項第4号における他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的としている。
また、訂正事項14は、本件訂正前の請求項1において「横糸伸度と横糸強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靱度)」と記載されていたものを、「横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靱度)」とすることで、「布引張強靱度」をより明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
さらに、訂正事項14は、本件訂正前の請求項16において「前記布が、」と記載されていたものを、「前記織布が、」とすることで、本件訂正前の請求項16が引用する請求項1における「織布」との記載と整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
加えて、訂正事項14は、本件訂正前の請求項16において「縦糸に対する横糸の比」と記載されていたものを、「縦糸に対する横糸の重量比」とすることで、縦糸と横糸との比が重量比であることを明確にするものである。ここで、願書に添付した明細書の段落【0038】には、「織り比(Yarn weave ratio)」と記載されており、また、段落【0045】の【表1】及び同段落【0049】の【表2】には、該織り比の各実施例及び比較例における値が記載されているが、これらはいずれも「5.2」よりも小さいものである。そして、願書に添付した明細書の段落【0039】に、「縦糸に対する横糸の重量比(AD ratio)を5.2あるいは5.5よりも大きくなるように選択することがアドバンテージとなる。」と記載されていることを考慮すると、本件訂正前の請求項16の「前記布が、縦糸に対する横糸の比が5.2より大きく、」との記載における「比」が「重量比」を意味しているものであることは明らかである。このため、訂正事項14は、特許法第120条の5第2項第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、訂正事項14は、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
b 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項14のうち、横糸方向の布伸度と布引張強度については、願書に添付した明細書の段落【0028】及び【0029】の記載に基づくものである。
また、訂正事項14のうち、縦糸に対する横糸の重量比については、前述のとおり、願書に添付した明細書の段落【0039】の記載に基づくものである。
したがって、訂正事項14は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
c 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aのとおり、訂正事項14は、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められない。
また、訂正事項14は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第6項の規定に適合する。
d 特許請求の際に独立して特許を受けることができること
本件訂正前の請求項16について特許異議申立てがされていないが、上記aのとおり、訂正事項14は明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるから、本件訂正後の請求項16に係る訂正事項14について、独立特許要件は課されない。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求に係る訂正事項1ないし14は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、〔3?8〕、9、10、11、12、13、14、15、16について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし16に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明16」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
[本件発明1]
「【請求項1】
歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
前記織布が、テクスチャード加工された、単糸である縦糸と、前記縦糸と比べてより高度にテクスチャード加工された、単糸である横糸とで構成され、
横糸方向の布引張強靱度が、縦糸方向の布引張強靱度より大きいことを特徴とする歯付伝動ベルト。」
[本件発明2]
「【請求項2】
歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
前記織布を構成する、テクスチャード加工された、単糸である横糸が、0.03?0.049N/dtexの範囲の破断強度をもつ、もしくは中間のテナシティをもつナイロン66である場合、前記織布が、横糸方向の布引張強靭度が、60mJ/mm^(2)以上となる横糸の特性を有し、
あるいは、前記織布を構成するテクスチャード加工された、単糸である横糸が、0.05N/dtexを超える破断強度をもつ、もしくは高テナシティのナイロン66である場合、前記織布が、横糸方向の布引張強靭度が80mJ/mm^(2)を超える横糸の特性を有することを特徴とする歯付伝動ベルト。」
[本件発明3]
「【請求項3】
歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
横糸が、0.05N/dtexを超える破断強度をもつ、もしくは高テナシティのナイロン66である場合、横糸方向の布引張強靱度は、90mJ/mm^(2)以上であり、
歯ピッチが、概して14mmであることを特徴とする歯付伝動ベルト。」
[本件発明4]
「【請求項4】
注型ポリウレタンを備えたベルト本体をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の歯付伝動ベルト。」
[本件発明5]
「【請求項5】
カーボンファイバの心線を備えることを特徴とする請求項4に記載の歯付伝動ベルト。」
[本件発明6]
「【請求項6】
前記織布が、ジグザグの斜文織を有することを特徴とする請求項3に記載の歯付伝動ベルト。」
[本件発明7]
「【請求項7】
前記織布が、4×2の斜文織を有することを特徴とする請求項6に記載の歯付伝動ベルト。」
[本件発明8]
「【請求項8】
前記織布が、2層の織物構造を有することを特徴とする請求項3に記載の歯付伝動ベルト。」
[本件発明9]
「【請求項9】
歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
注型ポリウレタンのベルト本体と、
前記ベルト本体に埋め込まれたカーボンファイバ心線と、明細書の表1に示した実施例2の横糸の特性をもつ前記織布とを備えたことを特徴とする歯付伝動ベルト。」
[本件発明10]
「【請求項10】
歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
注型ポリウレタンのベルト本体と、
前記ベルト本体に埋め込まれたカーボンファイバ心線と、
明細書の表1に示した実施例3の横糸の特性をもつ前記織布と
を備えたことを特徴とする歯付伝動ベルト。」
[本件発明11]
「【請求項11】
歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
注型ポリウレタンのベルト本体と、
前記ベルト本体に埋め込まれたカーボンファイバ心線と、
明細書の表2に示した実施例5、実施例6もしくは実施例7の横糸の特性をもつ前記織布と
を備えたことを特徴とする歯付伝動ベルト。」
[本件発明12]
「【請求項12】
歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
エラストマーベルト本体と、
前記ベルト本体に埋め込まれた心線と、
明細書の表1に示した実施例2もしくは実施例3の横糸の特性をもつ前記織布、または明細書の表2に示した実施例5、実施例6もしくは実施例7の横糸の特性をもつ前記織布と
を備えたことを特徴とする歯付伝動ベルト。」
[本件発明13]
「【請求項13】
歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
エラストマーベルト本体と、
前記ベルト本体に埋め込まれた心線と、
明細書の表1に示した実施例2もしくは実施例3の横糸の特性をもつ前記織布、または明細書の表2に示した実施例5、実施例6もしくは実施例7の横糸の特性をもつ前記織布とを備え、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
前記エラストマーベルト本体が、硫化ゴム、熱可塑性エラストマーまたは注型エラストマーであることを特徴とする歯付伝動ベルト。」
[本件発明14]
「【請求項14】
歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
エラストマーベルト本体と、
前記ベルト本体に埋め込まれた心線と、
明細書の表1に示した実施例2もしくは実施例3の横糸の特性をもつ前記織布、または明細書の表2に示した実施例5、実施例6もしくは実施例7の横糸の特性をもつ前記織布とを備え、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
歯付ベルトの形で平ベルト、マルチVベルトまたはVベルトであることを特徴とする歯付伝動ベルト。」
[本件発明15]
「【請求項15】
歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
エラストマーベルト本体と、
前記ベルト本体に埋め込まれた心線と、
明細書の表1に示した実施例2もしくは実施例3の横糸の特性をもつ前記織布、または明細書の表2に示した実施例5、実施例6もしくは実施例7の横糸の特性をもつ前記織布とを備え、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置されていることを特徴とする歯付伝動ベルト。」
[本件発明16]
「【請求項16】
歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
前記織布が、縦糸に対する横糸の重量比が5.2より大きく、そして、相対的により高度にテクスチャード加工された横糸と、相対的に軽くテクスチャード加工された、あるいはまったくテクスチャード加工されていない縦糸とを有することを特徴とする歯付伝動ベルト。」

第4 取消理由の概要
当審において、令和2年11月6日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は以下のとおりである。
[取消理由1](新規性)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するから、請求項1及び2に係る発明の特許は同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
[取消理由2](進歩性)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。本件特許の請求項3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし5に記載された周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。本件特許の請求項4及び5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載の技術的事項及び引用文献2ないし5に記載された周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。本件特許の請求項6及び7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明、引用文献2ないし5に記載された周知技術1並びに引用文献6及び7に記載された周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。本件特許の請求項8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明、引用文献8に記載された技術的事項及び引用文献2ないし5に記載された周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、請求項1ないし8に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
[取消理由3](サポート要件)
請求項1ないし15に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
したがって、本件特許の請求項1ないし15の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

引用文献
1.特開平8-312724号公報(申立人の提出した甲第1号証、以下同様。)
2.特開2010-96229号公報(甲第2号証)
3.特開平10-148238号公報
4.特開平7-54929号公報
5.米国特許出願公開第2003/0211912号明細書
6.特開2003-161345号公報(甲第3号証)
7.特開2013-213576号公報
8.特開2014-1777号公報(甲第4号証)

第5 当審の判断
1 引用文献1に記載の事項及び発明
(1)引用文献1に記載の事項
取消理由通知で引用した引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
(1a)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、例えば自動車用エンジン等に用いられる歯付ベルトに関し、特にベルト本体の歯部側表面を被覆する歯布の改良に関する。」
(1b)「【0006】この発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、歯付ベルト本体の歯部側表面を被覆する歯布について、そのベルト長さ方向に延びるように配置せしめられる緯糸の糸使いを工夫することで、緯糸に要求される伸びの条件を損なうことなく、歯布の耐摩耗性及びベルト長さ方向での強力を高めて、歯付ベルトにおける耐摩耗性及び耐疲労性の向上が図れるようにすることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、請求項1の発明では、緯糸に、ウーリー加工糸を下撚り糸としてなる諸撚り糸を用いるようにすることで、撚り数の多い分だけ強力を高めることができる割りには、上記ウーリー加工糸の十分な伸びが発揮できるようにした。」
【0008】具体的には、この発明では、ベルト本体の歯部側表面を、経糸がベルト幅方向に延びかつ緯糸がベルト長さ方向に延びるように配置せしめた歯布により被覆してなる歯付ベルトが前提である。
【0009】そして、上記歯布の緯糸は、複数本のウーリー加工糸からなる下撚り糸を該下撚り糸の加撚方向と逆の方向に上撚りしてなる諸撚り糸で構成されているものとする。」
(1c)「【0013】
【作用】以上の構成により、請求項1の発明では、諸撚り糸は、下撚りに上撚りが加えられたものであることから、撚り数が多いので、この諸撚り糸が緯糸に用いられた歯布では、耐摩耗性及び緯糸方向での強力が共に高くなる。つまり、下撚りの撚り数及び上撚りの撚り数に応じた高い耐摩耗性及び緯糸方向での強力が得られる。」
(1d)「【0019】
【実施例】以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。図2は、この発明の実施例に係る歯付ベルトを示している。この歯付ベルトは、例えば水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(H-NBR)等のゴム状弾性材からなるベルト本体1と、このベルト本体1の同図上面側に貼着された歯布2とを備えている。
【0020】上記ベルト本体1は、ベルト長さ方向に延びる断面矩形状の背ゴム層3と、この背ゴム層3の図2上面側にベルト長さ方向に所定ピッチ間隔をおいて配設された多数の歯部4,4,…とからなっている。また、上記背ゴム層3にはベルト幅方向に所定ピッチ間隔をあけて並ぶようにスパイラル状に巻かれた心線5が埋設されている。そして、上記歯布2は、各歯部4の表面及び各歯部4,4間における背ゴム層2の表面(歯底面)の全面に貼着されている。
【0021】上記歯布2は、経糸2aと緯糸2bとが互いに組み合わされてなっており、その経糸2aがベルト幅方向に延びかつ緯糸2bがベルト長さ方向に延びるように配置されている。この歯布2にはレゾルシン-ホルマリン-ゴムラテックス(RFL)液に浸漬された後に糊ゴムが塗布されていて、ベルト成形時に上記糊ゴムがベルト本体1に一体に加硫成形されることで貼着されている。また、歯布2の表面は、該表面に滲み出した一部の糊ゴムにより被覆されている。」
(1e)「【0031】
【表1】


(1f)「【0032】先ず、緯糸については、上記比較例では、各々、太さが210デニールであるナイロン66の3本のフィラメント糸を引き揃えて1m当たり160回の割合でZ撚りしたものを用いた。一方、発明例1及び2では互いに同じ緯糸を用いた。すなわち、各々、太さが210デニールであるナイロン66のウーリー加工糸をそれぞれ1m当たり320回の割合でS撚りして得た3本の下撚り糸を引き揃え、これに1m当たり320回の割合でZ撚りしたものである。
【0033】次に、経糸については、上記比較例及び発明例1では互いに同じとした。すなわち、各々、太さが20番手であるアラミド繊維としての「コーネックス(登録商標)」(帝人社製)の2本のフィラメント糸を撚り合わせてたものを用いた。一方、発明例2では、太さが210デニールであるナイロン66の1本のフィラメント糸を用いた。
【0034】そして、上記経糸及び緯糸の密度としては、比較例及び発明例1では共に同じく110×100となるように、また発明例2では133×121となるようにしている。
【0035】上記のようにして作製した比較例、発明例1及び2について、緯糸方向での強力〔単位:N/3cm〕、切断時の伸び〔単位:%〕及び50%だけ伸長されたときの応力(モジュラス)〔単位:N/3cm〕をそれぞれ測定した。その結果は、上記表1の併せて示されているとおりである。
【0036】先ず、比較例及び発明例1を対比すると、強力及び切断時の伸びについては略同じ値をとりながら、50%モジュラスでは発明例1が比較例の4.9よりも大幅に小さい2.9の値をとっている。つまり、発明例1では、比較例の場合よりも小さい引張力で伸長することになり、よって、優れた伸長性を有するものであることが判る。
【0037】次に比較例及び発明例2を対比すると、強力については発明例2が比較例の場合よりも約15%だけ小さい。ところが、切断時の伸び及び50%モジュラスについては何れも比較例の場合よりも約25%だけ増加している。つまり、発明例2では、強力については少しだけ劣るものの、伸長性については発明例1の場合よりも優れていることが判る。」

(2)引用文献1に記載の技術的事項
上記(1a)?(1f)において適記した引用文献1の記載及び【図2】の記載内容より、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているといえる。
(2a)ベルト本体1の歯部4側表面を、経糸2aがベルト幅方向に延びかつ緯糸2bがベルト長さ方向に延びるように配置せしめた歯布2により被覆してなる自動車用エンジン等に用いられ、心線5が埋設されゴム状弾性体からなるベルト本体1を備える歯付ベルト(適記(1a)、(1b)、(1d)及び【図2】)。
(2b)発明例2の歯布2は、緯糸2bが太さ210デニールであるナイロン66のウーリー加工糸からなる3本の下撚り線をZ撚りしたものからなり、経糸2aが太さが210デニールであるナイロン66の1本のフィラメント糸を用いるものであって、経糸及び緯糸の密度が133×121[本数/5cm]であって、緯糸方向での織物物性として、強力が2385.1[N/3cm]、切断時の伸びが233.0[%]を有する歯布2(適記(1b)、(1e)及び(1f))。

(3)引用文献1に記載の発明
上記引用文献1に記載の技術的事項(2a)及び(2b)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
[引用発明]
「歯布2を備えた自動車用エンジン等に用いられる歯付ベルトであって、前記歯布2は、経糸2a及び緯糸2bの密度が133×121[本数/5cm]であって、緯糸方向での織物物性として、強力が2385.1[N/3cm]、切断時の伸びが233.0[%]を有し、
前記歯布2の緯糸2bがベルト長さ方向に延びるように配置され、
前記緯糸2bが、太さが210デニールであるナイロン66のウーリー加工糸からなる3本の下撚り線をZ撚りしたものからなり、前記経糸2aが、太さが210デニールであるナイロン66の1本のフィラメント糸を用い、
心線5が埋設されゴム状弾性体からなるベルト本体1を備える歯付ベルト。」

2 対比・判断
(1)本件発明1
a 対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
(a)引用発明の「歯布2」は、引用文献1の段落【0031】の【表1】のとおりの織物物性を有するものであるから、本件発明1の「歯カバー」に相当する。
同様に、「緯糸2b」は「横糸」に、「経糸2a」は「縦糸」に、「ベルト長さ方向」は「ベルト長手方向」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「歯付ベルト」は、自動車用エンジン等に用いられるものであるから、本件発明1の「歯付伝動ベルト」に相当する。
さらに、引用発明の「緯糸2b」が、「ウーリー加工糸からなる3本の下撚り線をZ撚りしたものから」なることは、本件発明1の横糸との関係において、「加工された」「横糸」である限りにおいて共通する。同様に、引用発明の「経糸2a」が、「1本のフィラメント糸」からなることは、本件発明1の縦糸との関係において、「単糸である縦糸」である限りにおいて共通する。
(b)また、引用発明の織物物性に基いて、布引張強靱度を計算すると、以下のとおりとなる。
布引張強靱度(=1/2×緯糸伸度×緯糸強度)
=1/2×切断時の伸び×強力[N/3cm]/30[mm]
=1/2×2.33×2385.1/30=92.6mJ/mm^(2)
(c)以上のとおりであるから、本件発明1と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点1]
「歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
前記織布が、単糸である縦糸と、加工された横糸とで構成されることを特徴とする歯付伝動ベルト。」
[相違点1-1]
本件発明1は、「前記織布が、テクスチャード加工された、単糸である縦糸と、前記縦糸と比べてより高度にテクスチャード加工された、単糸である横糸とで構成」されるものであるのに対し、引用発明の歯布の経糸2a及び緯糸2bは、該構成を有していない点。
[相違点1-2]
本件発明1は、「横糸方向の布引張強靱度が、縦糸方向の布引張強靱度より大きい」ものであるのに対し、引用発明は、緯糸方向の布引張強靱度と経糸方向の布引張強靱度が不明である点。

b 判断
相違点1-1について検討する。
引用文献1では、ベルト長さ方向に延びるように配置せしめられる緯糸の伸びの条件を損なうことなく、歯布の耐摩耗性及びベルト長さ方向での強力を高めることを技術的課題とし(段落【0006】)、緯糸を複数のウーリー加工された糸を撚ることで構成される諸撚り糸を用いることを解決手段としている(段落【0007】及び【0013】)。そうすると、引用発明において、緯糸を複数本の糸から成る諸撚り糸で構成することは、必須の技術的事項であるから、これを単糸で構成する動機付けは存在せず、阻害要因を有しているものといえる。
また、引用文献1には、経糸を加工することについても示唆がなく、仮に緯糸を加工された単糸とし、同様に経糸を加工された単糸から構成したとしても、その加工の程度についても示唆がないことから、本件発明1における布引張強靱度の範囲となるように加工することが当業者にとって容易になし得たということはできない。
したがって、相違点1-2について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2
a 対比
本件発明2と引用発明とを対比する。
(a)引用発明の「歯布2」は、引用文献1の段落【0031】の【表1】のとおりの織物物性を有するものであるから、本件発明2の「歯カバー」に相当する。
同様に、「緯糸2b」は「横糸」に、「経糸2a」は「縦糸」に、「ベルト長さ方向」は「ベルト長手方向」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「歯付ベルト」は、自動車用エンジン等に用いられるものであるから、本件発明2の「歯付伝動ベルト」に相当する。
さらに、引用発明の「緯糸2b」が、「ウーリー加工糸からなる3本の下撚り線をZ撚りしたものから」なることは、本件発明2の横糸との関係において、「加工された」「横糸」である限りにおいて共通する。
そして、引用発明の「緯糸2b」の材質が「ナイロン66」であることは、本件発明2の「横糸」の材質が「中間のテナシティをもつナイロン66」であることとの関係において、材質が「ナイロン66」である限りにおいて共通する。
(b)引用発明における織物物性に基いて、緯糸の破断強度を計算すると、以下のとおりとなる。
緯糸の破断強度
=強力[N/3cm]/30[mm]÷緯糸密度[本数/5cm]/50[mm]
÷(デニール[de]×10/9[dtex/de])
=2385.1/30÷121/50÷(210×3×10/9)=0.047N/dtex
(c)以上のとおりであるから、本件発明2と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点2]
「歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
前記織布を構成する、加工された横糸が、0.03?0.049N/dtexの範囲の破断強度をもつ、ナイロン66である場合、前記織布が、横糸方向の布引張強靭度が、60mJ/mm^(2)以上となる横糸の特性を有する歯付伝動ベルト。」
[相違点2]
本件発明2の織布を構成する横糸は、「テクスチャード加工された、単糸である」のに対し、引用発明の歯布の緯糸2bは、複数のウーリー加工された下撚り糸3本を諸撚り糸として構成しているものである点。

b 判断
相違点2について検討する。
上記(1)bの相違点1-1と同様に、引用発明において、引用発明において、緯糸を複数本の糸から成る諸撚り糸で構成することは、必須の技術的事項であるから、これを単糸で構成する動機付けは存在せず、阻害要因を有しているといえる。また、仮に緯糸をテクスチャード加工された単糸により構成したとしても、本件発明2における布引張強靱度の範囲となるように加工することが当業者にとって容易になし得たということはできない。
したがって、本件発明2は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明3
a 対比
本件発明3と引用発明とを対比する。
(a)引用発明の「歯布2」は、引用文献1の段落【0031】の【表1】のとおりの織物物性を有するものであるから、本件発明3の「歯カバー」に相当する。
同様に、「緯糸2b」は「横糸」に、「経糸2a」は「縦糸」に、「ベルト長さ方向」は「ベルト長手方向」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「歯付ベルト」は、自動車用エンジン等に用いられるものであるから、本件発明3の「歯付伝動ベルト」に相当する。
(b)また、引用発明の布引張強靱度及び緯糸の破断強度は、上記(1)a(b)及び(2)a(b)に記載された以下のとおりである。
布引張強靱度=92.6mJ/mm^(2)
緯糸の破断強度=0.047N/dtex
(c)以上のとおりであるから、本件発明3と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点3]
歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
横糸方向の布引張強靱度は、90mJ/mm^(2)以上である歯付伝動ベルト。」
[相違点3-1]
本件発明3は、「横糸が、0.05N/dtexを超える破断強度をもつ、もしくは高テナシティのナイロン66である場合、横糸方向の布引張強靱度は、90mJ/mm^(2)以上で」あるのに対し、引用発明は、緯糸の破断強度が0.047N/dtexであるとともに、高テナシティのナイロン66ではない点。
[相違点3-2]
本件発明3は、「歯ピッチが、概して14mmである」のに対し、引用発明は歯ピッチが特定されていない点。

b 判断
上記相違点3-1について検討する。
引用文献1の段落【0031】の【表1】の比較例及び発明例1の緯糸の破断強度及び布引張強靱度は、上記(1)a(b)及び(2)a(b)と同様に以下のとおり算出することができる。
比較例
布引張強靱度=86.7mJ/mm^(2)
緯糸の破断強度=0.067N/dtex
発明例1
布引張強靱度=87.4mJ/mm^(2)
緯糸の破断強度=0.066N/dtex
これらを総合すると、発明例2のものは布引張強靱度が90mJ/mm^(2)を超えるものであるが、緯糸の破断強度が0.05N/dtexを超えるものではなく、比較例及び発明例1のものは、緯糸の破断強度は0.05N/dtexを超えるものであるが、布引張強靱度が90mJ/mm^(2)を超えるものではない。
ここで、引用発明の歯布は、小さい引張力のときにより優れた伸長性を持たせることが技術的意義であると理解することができる(段落【0036】及び【0037】)。引用発明において、布引張強靱度に対応する切断時の伸びと強力の積の値を維持しつつ、緯糸の破断強度に対応する強力を向上させること、あるいは、緯糸の破断強度に対応する強力を維持しつつ、布引張強靱度に対応する切断時の伸びと強力の積の値を向上させることは、動機付けがなく、当業者が想起し得るものということはできない。
したがって、相違点3-2について検討するまでもなく、本件発明3は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明4ないし8
本件発明4ないし8は、本件発明3の発明特定事項を全て含み、更に限定したものであるから、上記(3)bと同様の理由により、本件発明4ないし8は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
(1)本件発明1
特許権者が請求項1についてした訂正事項1により、請求項1には、「前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され」と記載されている。これにより、本件発明1は、ベルト長手方向に沿って高い伸長性及び耐久性を兼ね備えるために、歯カバーを構成する織布の特性を改善するという本願発明の課題を解決できることを当業者が認識できるものである。
(2)本件発明2ないし14
特許権者が請求項2ないし14についてした訂正事項2ないし12により、請求項2ないし14には、いずれも「前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され」と記載されている。したがって、上記(1)と同様に、本件発明2ないし14は、本願発明の課題を解決できることを当業者が認識できるものである。

第6 取消理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許法第36条第6項第2号(明確性)
(1)特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項1には、歯カバーを構成する織布の布引張強靭度について、「60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい」と記載されているが、これでは、織布の布引張強靭度が、60mJ/mm^(2)より大きいことが要件であるのか、80mJ/mm^(2)より大きいことが要件であるのか不明確であり、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない旨を主張している(特許異議申立書19ページ下から2行ないし同20ページ6行)。
しかしながら、「60mJ/mm^(2)より大きい」ことは、「80mJ/mm^(2)より大きい」ことを包含しているから、上記記載は、「60mJ/mm^(2)より大きい」ことを意味しているものであることが明確である。
したがって、上記主張を採用することができない。

(2)特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項2には、横糸を構成するナイロン66について、「中間のテナシティ」あるいは「高テナシティ」と特定されているが、これでは、どの程度のテナシティが中間のテナシティであるのか、また、高テナシティであるのかが不明確であること、加えて、請求項2には、布引張強靱度について、「およそ80mJ/mm^(2)を超える」と記載されているが、この記載では、布引張強靱度が80mJ/mm^(2)を含むものか否か不明確であることから、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない旨を主張している(特許異議申立書20ページ7行ないし17行)。
しかしながら、本件特許明細書の段落【0036】の記載を参酌すれば、「中テナシティ」とは、「0.030?0.049N/dtexの糸引張強度をもつ材料」のことであり、「高テナシティ」とは、「0.050N/dtexよりも大きな糸引張強度をもつ材料」のことであることが理解できる。
また、特許権者が請求項2についてした訂正事項2により、本件訂正後の請求項2には、「前記織布が、横糸方向の布引張強靭度が80mJ/mm^(2)を超える横糸の特性を有する」と記載されているから、横糸方向の布引張強靭度の下限が明確なものとなった。
したがって、上記主張を採用することができない。

(3)特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項3には、歯ピッチについて、「概して14mm」と特定されているが、これでは、歯ピッチが14mmからどの程度外れる範囲を含むのかが不明確であり、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない旨を主張している(特許異議申立書20ページ18行ないし23行)。
しかしながら、14mmピッチの歯付ベルトは、引用文献2ないし5に記載のように、従来から慣用されているものであり、14mmピッチの歯付ベルトとして認識されるものが該当することは、技術常識から明らかといえる。
したがって、上記主張を採用することができない。

(4)特許異議申立人は、特許異議申立書において、
訂正前の請求項9には、「明細書の表1に示した実施例2の特性をもつ歯布」と記載されており、
訂正前の請求項10には、「明細書の表1に示した実施例3の特性をもつ歯布」と記載されており、
訂正前の請求項11には、「明細書の表2に示した実施例5、実施例6もしくは実施例7の特性をもつ歯布」と記載されており、
訂正前の請求項12には、「明細書の表1に示した実施例2もしくは実施例3の特性をもつ歯布、または明細書の表2に示した実施例5、実施例6もしくは実施例7の特性をもつ歯布」と記載されているが、
表1及び表2は、英語で表記されているので不明確であること、加えて、表1及び表2には、横糸及び縦糸並びに織布の特性の表示が認められるところ、上記記載は、歯布がそれら全ての特性をもつことが要件であるのか、又は、織布の特性のみをもつことが要件であるのか不明確であることにより、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない旨を主張している(特許異議申立書20ページ24行ないし同22ページ6行)。
しかしながら、本件特許明細書の段落【0025】ないし【0029】の記載及び技術常識を考慮すれば、
「Weft」は「横糸」であり、「Warp」は「縦糸」であり、
「Yarn linear density」は「糸の線密度」であり、
「Yarn ultimeate strain」は「糸の極限伸び」であり、
「Yarn breaking force」は「糸の破断加重」であり、
「Yarn tensile strength」は「糸の引張強度」であり、
「Yarn weave ratio」は「糸の織り比」であり、
「Packing density」は「充填密度」であり、
「Area density」は「エリア密度」であり、
「Fabric ultimate elongation」は「布の極限伸長」であり、
「Fabric tensile strength」は「布引張強度」であり、
「Fabric Tensile Toughness」は「布引張強靱度」であること等が理解できるから、
表1及び2が英語で表記されているからといって、発明が不明確であるとはいえない。
また、特許権者が請求項9についてした訂正事項7により、本件訂正後の請求項9には、「明細書の表1に示した実施例2の横糸の特性をもつ前記織布」と記載されているから、請求項9の織布が表1の実施例2のうち、横糸の特性をもつものであることが明確となった。本件訂正後の請求項10における「明細書の表1に示した実施例3の横糸の特性をもつ前記織布」との記載と、本件訂正後の請求項12ないし15における「明細書の表1に示した実施例2もしくは実施例3の横糸の特性をもつ前記職布、または明細書の表2に示した実施例5、実施例6もしくは実施例7の横糸の特性をもつ前記織布」との記載についても同様である。
そして、表2には、上記主張とは異なり、横糸の特性のみが記載されているものであるから、横糸が、表2に示した実施例5、実施例6もしくは実施例7の特性をもつものという意味であることが明確である。
したがって、上記主張を採用することができない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
前記織布が、テクスチャード加工された、単糸である縦糸と、前記縦糸と比べてより高度にテクスチャード加工された、単糸である横糸とで構成され、
横糸方向の布引張強靭度が、縦糸方向の布引張強靭度より大きいことを特徴とする歯付伝動ベルト。
【請求項2】
歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
前記織布を構成する、テクスチャード加工された、単糸である横糸が、0.03?0.049N/dtexの範囲の破断強度をもつ、もしくは中間のテナシティをもつナイロン66である場合、前記織布が、横糸方向の布引張強靭度が、60mJ/mm^(2)以上となる横糸の特性を有し、
あるいは、前記織布を構成する、テクスチャード加工された、単糸である横糸が、0.05N/dtexを超える破断強度をもつ、もしくは高テナシティのナイロン66である場合、前記織布が、横糸方向の布引張強靭度が80mJ/mm^(2)を超える横糸の特性を有することを特徴とする歯付伝動ベルト。
【請求項3】
歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
横糸が、0.05N/dtexを超える破断強度をもつ、もしくは高テナシティのナイロン66である場合、横糸方向の布引張強靭度は、90mJ/mm^(2)以上であり、
歯ピッチが、概して14mmであることを特徴とする歯付伝動ベルト。
【請求項4】
注型ポリウレタンを備えたベルト本体をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の歯付伝動ベルト。
【請求項5】
カーボンファイバの心線を備えることを特徴とする請求項4に記載の歯付伝動ベルト。
【請求項6】
前記織布が、ジグザグの斜文織を有することを特徴とする請求項3に記載の歯付伝動ベルト。
【請求項7】
前記織布が、4×2の斜文織を有することを特徴とする請求項6に記載の歯付伝動ベルト。
【請求項8】
前記織布が、2層の織物構造を有することを特徴とする請求項3に記載の歯付伝動ベルト。
【請求項9】
歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
注型ポリウレタンのベルト本体と、
前記ベルト本体に埋め込まれたカーボンファイバ心線と、
明細書の表1に示した実施例2の横糸の特性をもつ前記織布と
を備えたことを特徴とする歯付伝動ベルト。
【請求項10】
歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
注型ポリウレタンのベルト本体と、
前記ベルト本体に埋め込まれたカーボンファイバ心線と、
明細書の表1に示した実施例3の横糸の特性をもつ前記織布と
を備えたことを特徴とする歯付伝動ベルト。
【請求項11】
歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
注型ポリウレタンのベルト本体と、
前記ベルト本体に埋め込まれたカーボンファイバ心線と、
明細書の表2に示した実施例5、実施例6もしくは実施例7の横糸の特性をもつ前記織布と
を備えたことを特徴とする歯付伝動ベルト。
【請求項12】
歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
エラストマーベルト本体と、
前記ベルト本体に埋め込まれた心線と、
明細書の表1に示した実施例2もしくは実施例3の横糸の特性をもつ前記織布、または明細書の表2に示した実施例5、実施例6もしくは実施例7の横糸の特性をもつ前記織布と
を備えたことを特徴とする歯付伝動ベルト。
【請求項13】
歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
エラストマーベルト本体と、
前記ベルト本体に埋め込まれた心線と、
明細書の表1に示した実施例2もしくは実施例3の横糸の特性をもつ前記織布、または明細書の表2に示した実施例5、実施例6もしくは実施例7の横糸の特性をもつ前記織布とを備え、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
前記エラストマーベルト本体が、硫化ゴム、熱可塑性エラストマーまたは注型エラストマーであることを特徴とする歯付伝動ベルト。
【請求項14】
歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
エラストマーベルト本体と、
前記ベルト本体に埋め込まれた心線と、
明細書の表1に示した実施例2もしくは実施例3の横糸の特性をもつ前記織布、または明細書の表2に示した実施例5、実施例6もしくは実施例7の横糸の特性をもつ前記織布とを備え、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置され、
歯付ベルトの形で平ベルト、マルチVベルトまたはVベルトであることを特徴とする歯付伝動ベルト。
【請求項15】
歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
エラストマーベルト本体と、
前記ベルト本体に埋め込まれた心線と、
明細書の表1に示した実施例2もしくは実施例3の横糸の特性をもつ前記織布、または明細書の表2に示した実施例5、実施例6もしくは実施例7の横糸の特性をもつ前記織布とを備え、
前記織布の横糸方向が、ベルト長手方向に配置されていることを特徴とする歯付伝動ベルト。
【請求項16】
歯カバーを備えた歯付伝動ベルトであって、
前記歯カバーは、60mJ/mm^(2)あるいは80mJ/mm^(2)より大きい、横糸方向の布伸度と布引張強度の積の1/2(すなわち、ここで定義される布引張強靭度)をもつ織布であり、
前記織布が、縦糸に対する横糸の重量比が5.2より大きく、そして、相対的により高度にテクスチャード加工された横糸と、相対的に軽くテクスチャード加工された、あるいはまったくテクスチャード加工されていない縦糸とを有することを特徴とする歯付伝動ベルト。
【請求項17】
歯カバーを有する歯付伝動ベルトの改良方法であって、
従来の歯布と比べてより大きな布引張強靭度をもつ異なった布を選択し、
最も高い布引張強靭度の方向がベルト長手方向を向くように、前記異なった布を向けることを特徴とする方法。
【請求項18】
前記異なった布の布引張強靭度が、60mJ/mm^(2)以上であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-07-02 
出願番号 特願2018-504109(P2018-504109)
審決分類 P 1 652・ 537- YAA (F16G)
P 1 652・ 121- YAA (F16G)
P 1 652・ 113- YAA (F16G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 前田 浩  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 尾崎 和寛
杉山 健一
登録日 2019-04-19 
登録番号 特許第6513283号(P6513283)
権利者 ゲイツ コーポレイション
発明の名称 強靭な布を含む同期ベルト  
代理人 松浦 孝  
代理人 小倉 洋樹  
代理人 小倉 洋樹  
代理人 松浦 孝  

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