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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E04H
管理番号 1377819
異議申立番号 異議2021-700569  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-06-16 
確定日 2021-09-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第6799897号発明「立体駐車装置の無人確認システムとこれを備える立体駐車装置、及び立体駐車装置の無人確認方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6799897号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6799897号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成26年11月12日に出願され、令和2年11月26日に特許権の設定登録がされ、令和2年12月16日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許に対し、令和3年6月16日に、特許異議申立人 小松 珠美(以下「申立人」という。)より、特許異議申立書(以下「申立書」という。)が提出され、請求項1?3に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。


2 本件発明
特許第6799897号の請求項1?3の特許に係る発明(以下「本件発明1」等といい、全体の発明を「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
複数の可動式パレットと、前面に開閉ゲートとを備えた立体駐車装置を対象として、無人確認を行うための無人確認システムであって、
前記複数の可動式パレットのうち、車両を入出庫する高さにある各可動式パレットの周辺の物体を検知する複数のセンサと、該複数のセンサの検知状態を表示する表示部と、前記立体駐車装置内の無人確認済入力操作が行われる操作部と、システム制御部とを含み、
該システム制御部は、前記複数のセンサの各々の検知状態を、使用者が物体を検出中のセンサを特定できるように前記表示部に表示させると共に、前記複数のセンサによる物体の検知状態の如何に関わらず、前記操作部に対して前記入力操作が行われるまで、前記開閉ゲートの閉動作を抑止するものであり、
前記複数のセンサは、前記開閉ゲートの前面側を検知するためのゲート前面センサと、前記開閉ゲートの後面側を検知するためのゲート後面センサと、前記可動式パレットの後部側を検知するための後部センサと、並列方向に隣接する前記可動式パレット間及び並列方向の最も外側にある2つの可動式パレットの外側側部を検知するための側部センサとを含み、
前記表示部は、前記立体駐車装置を平面視したときの、車両を入出庫する高さにある可動式パレットの設置レイアウトを表示し、更に、該表示したレイアウト上或いはレイアウトの周囲に、前記複数のセンサの設置レイアウトに対応して、各センサの検知状態を表示するためのセンサレイアウト表示部を表示し、該センサレイアウト表示部は、前記複数のセンサと1対1で対応する複数のセンサ表示を備え、物体を検知している状態のセンサに対応した前記センサ表示が点灯表示されると共に、物体を検知していない状態のセンサに対応した前記センサ表示が消灯されることを特徴とする立体駐車装置の無人確認システム。

【請求項2】
請求項1記載の立体駐車装置の無人確認システムを備えた立体駐車装置であって、
前記開閉ゲートの開閉操作及び前記可動式パレットの呼び出し操作を行うための操作盤と、装置を制御する装置制御部とを含み、
前記表示部及び前記操作部が前記操作盤に組み込まれ、前記システム制御部が前記装置制御部に組み込まれていることを特徴とする立体駐車装置。

【請求項3】
複数の可動式パレットと、前面に開閉ゲートとを備えた立体駐車装置を対象として、無人確認を行うための無人確認方法であって、
前記複数の可動式パレットのうち、車両を入出庫する高さにある各可動式パレットの周辺の物体を検知するための複数のセンサと、該複数のセンサの検知状態を表示するための表示部と、前記立体駐車装置内の無人確認済入力操作を行うための操作部と、システム制御部とを設置し、
前記複数のセンサの各々の検知状態を、使用者が物体を検出中のセンサを特定できるように前記表示部に表示させ、使用者が該表示部の表示を参照しながら前記立体駐車装置内の無人確認を行った後に、前記操作部に対して前記入力操作を行うまで、前記複数のセンサによる物体の検知状態の如何に関わらず、前記システム制御部により前記開閉ゲートの閉動作を抑止し、
前記複数のセンサとして、前記開閉ゲートの前面側を検知するためのゲート前面センサと、前記開閉ゲートの後面側を検知するためのゲート後面センサと、前記可動式パレットの後部側を検知するための後部センサと、並列方向に隣接する前記可動式パレット間及び並列方向の最も外側にある2つの可動式パレットの外側側部を検知するための側部センサとを設置し、
前記表示部に、前記立体駐車装置を平面視したときの、車両を入出庫する高さにある可動式パレットの設置レイアウトを表示させ、更に、該表示させたレイアウト上或いはレイアウトの周囲に、前記複数のセンサの設置レイアウトに対応して、各センサの検知状態を表示するためのセンサレイアウト表示部を表示させ、該センサレイアウト表示部により、前記複数のセンサと1対1で対応する複数のセンサ表示を表示し、このとき、物体を検知している状態のセンサに対応した前記センサ表示を点灯表示すると共に、物体を検知していない状態のセンサに対応した前記センサ表示を消灯することを特徴とする立体駐車装置の無人確認方法。」


3 申立理由の概要
申立人は、主たる証拠として、以下の甲第1号証(以下「甲1」という。)を、周知技術の例として以下の甲第2?8号証(以下、それぞれ「甲2」?「甲8」という。)を提出し、請求項1?3に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1?3に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

甲1:特開平9-209591号公報
甲2:特開平8-93255号公報
甲3:特開2014-202042号公報
甲4:特開2004-257205号公報
甲5:特開2002-235451号公報
甲6:特開2009-282842号公報
甲7:特公平5-19197号公報
甲8:特開平9-91033号公報


4 証拠の記載
(1)甲1
ア 甲1には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。以下同様。)
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表示面がタッチスイッチを兼ねるディスプレーによって入出庫等の管理を対話形式で行えるようにした立体駐車設備に関するものである。」

(イ)「【0029】図19及び図20に示すように、各立体駐車設備のパレットの駆動制御等を行う制御装置1は、好ましくは、1台の親機2と、各基本ユニットに対応して設けられる複数台の子機3とにより構成される。そして、各基本ユニットに属するパレットの駆動及びパレットの位置検出等は、各子機3が行う一方、親機2は各子機3を介して立体駐車設備内の全てのパレットの位置を把握するとともに、移動が必要なパレットを有する子機3に対して当該パレットの駆動を指令するようになっている。なお、各基本ユニット毎に子機3を設ける代わりに、例えば、図24に示すように、2つの基本ユニットをそれぞれ1制御単位として、この制御単位毎に1台の子機3を設け、前述と同様の制御を行うこともできる。」

(ウ)「【0033】以下、より具体的な実施の形態を説明する。図1に示すように、この立体駐車設備は3層型で、且つ横方向に3列の並びとなっており、第1列Iは第2基本ユニットA2(図17参照)により、第2列II及び第3列IIIは各々の第3基本ユニットA3(図18参照)により構成されて、最大限8台の車両の収容が可能である。すなわち、この立体駐車設備は、第2列II及び第3列IIIの横行段内に、各々左側に横行可能な2個の横行パレットP12、P13を備え、第1列I乃至第3列IIIにおける各上段の昇降段内に、各々横行段との間で昇降可能な昇降パレットP21、P22、P23を備え、更に第1列I乃至第3列IIIの下段の昇降段内に、各々横行段との間で昇降可能な昇降パレットP31、P32、P33を備えている。図1に示す状態では、第1列I内の昇降パレットP21が横行段に下降している。なお、ここでは、各パレットにそれぞれパレット番号が付与されており、例えば、上段の昇降パレットP21、P22及びP23のパレット番号が“1”、“2”及び“3”、横行パレットP12及びP13のパレット番号が“4”及び“5”、下段の昇降パレットP31、P32及びP33のパレット番号が“6”、“7”及び“8”である。」

(エ)「【0036】前記横行段に面した入出庫口路面には、入出庫時のみに上昇して、車両の通過を許容する昇降ゲート4が設けられている。更に、前記横行段には、前記発光素子5及び受光素子6からなり、車両のはみ出しの有無を検出する光電スイッチ(図1には図示せず)が設置される。
【0037】本立体駐車設備では第1列I乃至第3列IIIがそれぞれ独立した制御単位をなし、第1列I乃至第3列IIIの各基本ユニットA2、A3、A3に属するパレットの駆動の制御等を行うために、第1乃至第3子機3a乃至3cが個別に設けられ、更に、第3子機3cに隣接して親機2が設置されている。
・・・
【0042】親機2は、前記ディスプレー14上に表示される後述の各種タッチスイッチによるタッチ入力に基づいて、各子機3a乃至3cに所定のパレットの駆動を指令するパレット駆動信号等を送信するとともに、各子機3a乃至3cにより検出されて親機2に送信されてくる動作情報、つまり、各基本ユニットに属するパレットの駆動状況を、ディスプレー14上に動作情報画面(後述)として表示するようになっている。」

(オ)「【0046】次に、マンション等の集合住宅に本立体駐車設備を設けた場合における、入出庫のための操作手順をディスプレー14への表示内容とともに説明する。図3のフローチャートにおいて、まず、前記入出庫操作装置13の切換スイッチ13bの切換位置により、前記運転モードまたは保守モードのいずれが選択されているかが親機2により判定され(S1)、保守モードが選択されていれば、ディスプレー14に所定の保守メニューが表示される(S2)。この保守メニューは、例えば、ID番号の設定、保守情報の表示等、複数のメニューを含むことができるが、ここでは詳述しない。
・・・
【0057】パレット呼出の進行に伴って、S10からS12に進行し、次の段階の動作情報画面が表示される。この動作情報画面では、例えば、中段の横行パレットの退避中である旨のメッセージが表示されると共に、保守スイッチ26(タッチスイッチ)が表示される。この時、万一、立体駐車設備内に人が侵入する等の事態により、安全光線が遮断されると、S13のように安全光線遮断のメッセージが表示され、操作者に安全確認が促されるとともに、確認スイッチ27(タッチスイッチ)が表示される。安全確認後、確認スイッチ27がタッチされると、S6のID番号入力画面に復帰する。
・・・
【0061】昇降ゲート4の閉鎖中に万一の事故の発生等により、非常停止スイッチ13aがオン動作されると、前記S11と同様に本立体駐車設備の非常停止が行われるとともに、S21で非常停止のメッセージが表示され、且つ、ブザーによる警報音が発生される。また、S20で安全光線が遮断されると、S23に進んで、S13と同様に安全光線遮断のメッセージが表示され、同時に確認スイッチ34(タッチスイッチ)が表示される。安全確認後、安全スイッチ34がタッチされると、前記S6のID番号入力画面に復帰する。」

(カ)図1、図2、図7は以下のとおり。

【図1】


【図2】


【図7】


イ 上記アからみて、甲1には、 次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。
「3層型で、且つ横方向に3列の並びとなっており、第2列II及び第3列IIIの横行段内に、各々左側に横行可能な2個の横行パレットP12、P13を備え、第1列I乃至第3列IIIにおける各上段の昇降段内に、各々横行段との間で昇降可能な昇降パレットP21、P22、P23を備え、更に第1列I乃至第3列IIIの下段の昇降段内に、各々横行段との間で昇降可能な昇降パレットP31、P32、P33を備え、
横行段に面した入出庫口路面には、入出庫時のみに上昇して、車両の通過を許容する昇降ゲート4が設けられ、
横行段には、発光素子5及び受光素子6からなり、車両のはみ出しの有無を検出する光電スイッチが設置され、
各立体駐車設備のパレットの駆動制御等を行う制御装置1は、1台の親機2と、複数台の子機3とにより構成され、
親機2は、各子機3a乃至3cにより検出されて親機2に送信されてくる動作情報を、ディスプレー14上に動作情報画面として表示し、
立体駐車設備内に人が侵入する等の事態により、安全光線が遮断されると、動作情報画面として安全光線遮断のメッセージがディスプレー14に表示され、昇降ゲート4の閉鎖中に安全光線が遮断されると、これと同様に安全光線遮断のメッセージがディスプレー14に表示され、同時に確認スイッチ34が表示され、安全確認後、確認スイッチ34がタッチされると、ID番号入力画面に復帰する、
立体駐車設備。」

(2)甲2
ア 甲2には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、立体駐車装置およびその制御方法に関し、より特定的には、車両の入出庫操作にリモートコントロールシステムを用いた場合の、立体駐車装置内の事故を未然に防止することのできる立体駐車装置およびその制御方法に関する。」

(イ)「【0030】まず、図1を参照して、この実施例における車両入退室110の構造について説明する。この実施例における車両入退室110の内部には、入庫車の入出庫を確認するための車両入退室チェック光電管11が設けられている。また、パレット22上の所定の位置に入庫車が位置しているかどうかを確認するための後部車長制限光電管12、実車検知光電管13および前部車長制限光電管14がそれぞれ設けられている。なお、図中実線a?dは、各光電管の光軸を示している。
【0031】さらに、本実施例においては、車両入退室110内の人の存在を検知するための前配置右側人検知センサ15、後配置右側人検知センサ16、前配置左側人検知センサ17、後配置左側人検知センサ18、右配置全体人検知センサ19および左配置全体人検知センサ20が設けられている。
【0032】前配置右側人検知センサ15、後配置右側人検知センサ16、前配置左側人検知センサ17および後配置左側人検知センサ18は、パレット22の左右両端の車両への乗入れ方向と平行な延長線上の入出庫口のドアの裏面および壁面に設けられ、車両入退室110内へ出入りする利用者を検知している。さらに、車両入退室110内の入出庫口側の左右両隅部に、右配置全体人検知センサ19および左配置全体人検知センサ20が設けられている。」

(ウ)「【0046】次に、車両が右ハンドルの場合、運転者が前配置右側人検知センサ15および後配置右側人検知センサ16の検知エリアに車両から降りる。その後、前配置右側人検知センサ15および後配置右側人検知センサ16が運転者を検知して、プログラマブルコントローラ2に信号を伝え、立体駐車装置が起動しないように処理する。
【0047】次に、運転者が車両入退室より退室し、前配置右側人検知センサ15および後配置右側人検知センサ16が作動しなくなる。その後、運転者が車両入退室内の安全を確認した後、操作盤7で安全確認ボタンを押す。
【0048】そのとき、前配置右側人検知センサ15、後配置右側人検知センサ16、前配置全体人検知センサ17、後配置左側人検知センサ18、右配置全体人検知センサ19および左配置全体人検知センサ20が作動していなければ、立体駐車装置が起動できるようにプログラマブルコントローラ2で処理を行なう。
【0049】その後、運転者が操作盤7で車両入退室のドア閉ボタンを押し、ドアを閉める。これにより車両の立体駐車装置への入庫が完了する。」

(エ)図1は以下のとおり。

【図1】


(オ)上記(エ)の図1から、車両入退室110に1つのパレット22が設けられることが看取される。

イ 上記アからみて、甲2には、次の技術事項(以下「甲2技術事項」という。)が記載されているものと認める。
「立体駐車装置において、
車両入退室110に1つのパレット22が設けられ、
車両入退室110の内部には、入庫車の入出庫を確認するための車両入退室チェック光電管11が設けられて、パレット22上の所定の位置に入庫車が位置しているかどうかを確認するための後部車長制限光電管12、実車検知光電管13および前部車長制限光電管14がそれぞれ設けられており、
前配置右側人検知センサ15、後配置右側人検知センサ16、前配置左側人検知センサ17および後配置左側人検知センサ18が、パレット22の左右両端の車両への乗入れ方向と平行な延長線上の入出庫口のドアの裏面および壁面に設けられ、車両入退室110内へ出入りする利用者を検知し、車両入退室110内の入出庫口側の左右両隅部に、右配置全体人検知センサ19および左配置全体人検知センサ20が設けられ、
前配置右側人検知センサ15および後配置右側人検知センサ16が運転者を検知して、プログラマブルコントローラ2に信号を伝え、立体駐車装置が起動しないように処理し、
運転者が車両入退室より退室し、前配置右側人検知センサ15および後配置右側人検知センサ16が作動しなくなり、その後、運転者が車両入退室内の安全を確認した後、操作盤7で安全確認ボタンを押し、
このとき、前配置右側人検知センサ15、後配置右側人検知センサ16、前配置全体人検知センサ17、後配置左側人検知センサ18、右配置全体人検知センサ19および左配置全体人検知センサ20が作動していなければ、立体駐車装置が起動できるようにプログラマブルコントローラ2で処理を行なう点。」

(3)甲3
ア 甲3には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
本発明は、機械式駐車場設備に係り、特に車両の入出庫操作時に、その入出庫操作を行う操作者の認証が行われる機械式駐車場設備の制御装置、これを備えた機械式駐車場設備、および機械式駐車場設備の制御方法に関するものである。」

(イ)「【0064】
空きパレット18が乗入室7に到着すると、図10に示す入庫指示画面が表示されるとともに、入出庫扉4aが開く。契約利用者は車両2を運転して乗入室7に乗り入れる。車両2が乗入室7の定位置に停車すると、操作画面35の表示が図11に示す安全確認指示画面に変わり、「場内の安全を確認し、確認ボタンを押して下さい」という案内と、確認ボタン56が表示される。契約利用者は車両2のアンテナが格納されているか、ドアミラーが畳まれているか、ドアが開いていないか、エンジンが停止しているか、車体がパレットからはみ出していないか、等を一通り確認し、異常が無ければ確認ボタン56にタッチする。
【0065】
すると、図12に示す閉扉操作画面に変わり、「場内の無人を確認し、扉を閉めて下さい」という案内と、閉扉ボタン57が表示される。契約利用者は、場内の無人を再度確認してから閉扉ボタン57にタッチして入出庫扉4aを閉める。これで入庫操作が完了する。なお、出庫の場合は、図8?図12中に表示されている「入庫」の文字が「出庫」となる。」

イ 上記アからみて、甲3には、次の技術事項(以下「甲3技術事項」という。)が記載されているものと認める。
「機械式駐車場設備において、
車両2が乗入室7の定位置に停車すると、操作画面35の表示が安全確認指示画面に変わり、「場内の安全を確認し、確認ボタンを押して下さい」という案内と、確認ボタン56が表示され、契約利用者は車両2のアンテナが格納されているか、ドアミラーが畳まれているか、ドアが開いていないか、エンジンが停止しているか、車体がパレットからはみ出していないか、等を一通り確認し、異常が無ければ確認ボタン56にタッチすると、閉扉操作画面に変わり、「場内の無人を確認し、扉を閉めて下さい」という案内と、閉扉ボタン57が表示され、契約利用者は、場内の無人を再度確認してから閉扉ボタン57にタッチして入出庫扉4aを閉める点。」

(4)甲4
ア 甲4には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ピット内に格納操作自在とされたパレットと、地上に露出するパレットとの複数段のパレットを備えたピット多段式駐車装置およびその制御方法に関するものである。」

(イ)「【0033】
そして、地上乗入部に位置する上段パレット2に対して長尺車両W2を入庫する際、車両W2の侵入方向前側位置および後側位置を検知する前記同様の光電式検知器からなる車両後端規制用検知器22および車両乗入側検知器としての車両前端規制用検知器23がデッキ20上の両側部間にわたってそれぞれ備えられている。
【0034】
また、地上乗入部に位置する中段パレット3や下段パレット4に対して普通車両W1を入庫する際、車両W1の侵入方向前側位置および後側位置を検知する前記同様の光電式検知器からなる車両後端規制用検知器24a、24b、24cおよび車両前端規制用検知器23がデッキ20上と利用者通路21上の相互間やデッキ20上の両側部間にわたってそれぞれ備えられている。
【0035】
そして、本実施形態においては、上段パレット2の車止め部17をより後方位置に配置することにより、中段パレット3や下段パレット4に搭載された普通車両W1と、上段パレット2に搭載された長尺車両W2との乗入側を揃える方式とし、車両前端規制用検知器23を中段パレット3や下段パレット4に搭載される普通車両W1と上段パレット2に搭載される長尺車両W2の検知に兼用する構造とされている。
【0036】
また、各パレット2、3、4に対して車両W1、W2を入庫する際、車両W1、W2の侵入方向左端位置および右端位置を検出する前記同様の光電式検知器からなる左端規制用検知器25および右端規制用検知器26が各列それぞれ備えられている。
【0037】
ここに、車両後端規制用検知器22、車両前端規制用検知器23、左端規制用検知器25および右端規制用検知器26により、上段パレット2に搭載される長尺車両W2の許容寸法オーバーを検知する長尺車両用検知手段が構成され、車両前端規制用検知器23、車両後端規制用検知器24a、24b、24c、左端規制用検知器25および右端規制用検知器26により、中段パレット3および下段パレット4に搭載される普通車両W1の格納寸法オーバーを検知する格納車両用検知手段が構成されている。」

イ 上記アからみて、甲4には、次の技術事項(以下「甲4技術事項」という。)が記載されているものと認める。
「ピット多段式駐車装置において、
車両W1、W2を入庫する際、車両W1、W2の侵入方向前側位置及び後側位置を検知する光電式検知器からなる車両後端規制用検知器22、24a、24b、24c及び車両前端規制用検知器23がデッキ20上と利用者通路21上の相互間やデッキ20上の両側部間にわたってそれぞれ備えられており、
各パレット2、3、4に対して車両W1、W2を入庫する際、車両W1、W2の侵入方向左端位置及び右端位置を検出する光電式検知器からなる左端規制用検知器25及び右端規制用検知器26が各列にそれぞれ備えられ、
車両後端規制用検知器22、24a、24b、24c、車両前端規制用検知器23、左端規制用検知器25及び右端規制用検知器26により、各パレット2、3、4に搭載される車両W1、W2の許容寸法オーバーを検知する格納車両用検知手段が構成されている点。」

(5)甲5
ア 甲5には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は多段式駐車設備に関する。さらに詳しくは、車両入出庫口に上方に開作動しうる前面柵を備え、この前面柵に接近する車両等を検出して柵の作動を制御する安全用検出装置を備えた多段式駐車設備に関する。」

(イ)「【0019】図1および図2に示すごとく、前面柵4の外方であって入出庫口2の左右には安全用センサとしての第一光センサ(光電管センサ)6が配設されている。この第一光センサ6の発光器6aが入出庫口2の右側(左側)に配置され、発光器6aからの光線Rを受光する受光器6bが入出庫口2の左側(右側)に配置されている。これら6a、6bはともに前面柵4から5?10cm程度離間した外方であって、床面から40?80cm程度の高さ位置に設置され、上記光線Rを遮って前面柵4に接近する全ての車両および人間等が検出されるようにされている。この目的の必要に応じて複数個の第一光センサ6を配設してもよい。
【0020】この駐車設備1には前面柵4の開閉作動を制御するための制御装置7が備えられている。制御装置7は、前面柵4の開閉作動の最中に上記第一光センサ6がその光線Rを遮って前面柵4に接近する車両および人間等を検出したとき、第一光センサ6の検出信号に基づいて前面柵4の開閉作動を停止させる。前面柵4の開作動中に異物の検出によって開作動を停止する主な目的は、たとえば、子供などが前面柵にぶら下がったりしたときに、そのまま前面柵4を上昇させるのを防止するためである。本駐車設備1では、第一光センサ6が異物を検出したとき、これが閉作動中であれば前面柵4の閉作動を停止するが、開作動中では開ストロークの下部範囲である第一制御範囲においてのみ停止させるようにされている。そして、前面柵4の開ストロークの上部範囲には第二制御範囲が設定されており、前面柵4がこの第二制御範囲を通過している最中には第一光センサ6が異物を検出してもその作動を停止させることはない。この第二制御範囲は、前面柵4の下端が床面にある閉状態から所定高さH2の位置まで開作動した時点(図2中に二点鎖線で示す)から始まり、前面柵4の上限停止位置である全開位置に至るまでの間である。すなわち、開ストロークのうち、床からH2の高さ位置を境にして上部が第二制御範囲とされ、下部が第一制御範囲とされている。これは、運転者の判断ミスによって車両が進入してきても車両が前面柵4と干渉することをできる限り回避するためである。また、以下の目的もある。すなわち、前面柵4の開作動中に利用者が待ちきれずに入庫し、前面柵4が途中で停止したのに気づかずに車両を出庫させようとして前面柵4と接触するような事故を防止することである。この後者の目的のためには、必要に応じて第一光センサ6を前面柵4から5?10cm程度離間した内方に加えて設置してもよい(図示しない)。」

イ 上記アからみて、甲5には、次の技術事項(以下「甲5技術事項」という。)が記載されているものと認める。
「車両入出庫口に上方に開作動しうる前面柵を備え、この前面柵に接近する車両等を検出して柵の作動を制御する安全用検出装置を備えた多段式駐車設備において、
前面柵4の外方であって入出庫口2の左右には安全用センサとしての第一光センサ6が配設されており、
第一光センサ6の発光器6aが入出庫口2の右側(左側)に配置され、発光器6aからの光線Rを受光する受光器6bが入出庫口2の左側(右側)に配置され、発光器6a、受光器6bはともに前面柵4から5?10cm程度離間した外方であって、床面から40?80cm程度の高さ位置に設置され、上記光線Rを遮って前面柵4に接近する全ての車両および人間等が検出されるようにされており、
第一光センサ6を前面柵4から5?10cm程度離間した内方に加えて設置する点。」

(6)甲6
ア 甲6には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、監視領域への侵入を監視する侵入監視装置に関し、特に、侵入監視を容易にする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、原子力プラント、石油備蓄基地、浄水場等の施設に設置され、施設内の監視領域を撮影し、施設内への不法な侵入者等を検知する侵入監視装置が知られている。このような侵入監視装置について、図5を用いて説明する。図5は、侵入監視装置の全体構成ブロック図である。」

(イ)「【0028】
このようなグラフィック表示部20の表示について図2を用いて説明する。図2は、監視領域Fを表示したグラフィック表示部20の画面である。
【0029】
図2において、グラフィック表示部20は、複数台の監視カメラの設置位置Lcを表示するとともに、侵入検知センサの設置位置Lsおよび施設の位置BLを表示する。なお、侵入検知センサは複数台あり、説明を簡単にするため、侵入検知センサの設置位置Lsは帯状に表示されている。
【0030】
侵入検知センサt1が人間Pの侵入を検知したとき、グラフィック表示部20は、侵入発生地点La(侵入検知センサt1の設置位置)を、点滅、点灯または表示色の変更などによって識別表示する。さらに、グラフィック表示部20は、例えばその右下に、侵入発生地点Laの画像Dを表示する。」

イ 上記アからみて、甲6には、次の技術事項(以下「甲6技術事項」という。)が記載されているものと認める。
「監視領域への侵入を監視する侵入監視装置において、
一般に、原子力プラント、石油備蓄基地、浄水場等の施設に設置され、施設内の監視領域を撮影し、施設内への不法な侵入者等を検知する侵入監視装置であって、
侵入検知センサt1が人間Pの侵入を検知したとき、グラフィック表示部20は、侵入検知センサt1の設置位置である侵入発生地点Laを、点灯によって識別表示し、さらに、グラフィック表示部20は、例えばその右下に、侵入発生地点Laの画像Dを表示する点。」

(7)甲7
ア 甲7には、以下の事項が記載されている。
(ア)「工場などでは適所に水漏れセンサ、ガス漏れセンサ、煙感知器などの各種センサを配置し、該センサが発報すると監視所の表示装置に工場(監視区域)のレイアウトと共に発報したセンサを表示し、監視員が現場へ急行できるようにした警報システムが採用されている。この警報システムの表示には第7図aに示す如きクラフイツクパネル方式のもの及びbに示す如きグラフイツクCRT方式のものがある。aはパネル10に、工場の各種機械設備及び柱などに合せて該機械設備の外形12及び柱の外形14を画き(印刷し)、工場内センサ取付け位置に対応する位置に該センサを表わすLED20を設け、また一側にはセンサに関する情報(センサ名など)を書込んだ部分16を設け、センサが動作するとパネル10上の当該LEDを発光させ、発光したセンサの種別を解説欄16で読取つて異常の種類を知り、機械設備12等の配置から現在位置より発光センサ(異常現場)までの最短経路等を知ることができるようにしている。
またbではメモリに工場のレイアウト、センサ位置などの画像データを格納しておき、センサが発報するとbに示すようにCRTの表示面22に該画像データを表示し、発報センサをブリンク、色変更等させる。18はセンサ情報(センサ名など)で、aの解説欄16の代りになるものである。」
(第2欄第17行?第3欄第23行)

イ 上記アからみて、甲7には、次の技術事項(以下「甲7技術事項」という。)が記載されているものと認める。
「工場などで適所に水漏れセンサ、ガス漏れセンサ、煙感知器などの各種センサを配置し、該センサが発報すると監視所の表示装置に監視区域である工場のレイアウトと共に発報したセンサを表示し、監視員が現場へ急行できるようにした警報システムにおいて、
その表示にはグラフイツクCRT方式のものがあって、センサが発報するとCRTの表示面22に工場のレイアウト、センサ位置などの画像データを表示し、発報センサをブリンクさせる点。」

(8)甲8
ア 甲8には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プラントや工場等で設備機器の稼働状況を監視するために用いられる監視制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図4は、監視制御装置における監視盤の表示画面の一例を示す図である。この表示画面は、水処理プラントの監視制御装置のためのものであり、ポンプの運転/停止やバルブの開/閉などのデジタルデータと、センサから出力される水位や水質等のアナログデータとなどの複数の制御対象のデータが、設備機器のレイアウトなどに対応して予め作成されているグラフィック画面中に合成されて表示されている。この表示画面は、予め定める周期、たとえは1分毎に更新される。」

イ 上記アからみて、甲8には、次の技術事項(以下「甲8技術事項」という。)が記載されているものと認める。
「プラントや工場等で設備機器の稼働状況を監視するために用いられる監視制御装置において、
センサから出力される水位や水質等のアナログデータなどの複数の制御対象のデータが、設備機器のレイアウトなどに対応して予め作成されているグラフィック画面中に合成されて表示される点。」


5 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
(ア)甲1発明の「横行パレットP12、P13」並びに「昇降パレットP21、P22、P23」及び「昇降パレットP31、P32、P33」、「昇降ゲート4」、「ディスプレー14」、「確認スイッチ34」、「制御装置1」は、それぞれ本件発明1の「複数の可動式パレット」、「開閉ゲート」、「表示部」、「操作部」、「システム制御部」に相当する。

(イ)上記4(1)ア(オ)の記載及び技術常識に照らして、甲1発明の「立体駐車設備内に人が侵入する等の事態により、安全光線が遮断される」ことを検知するセンサが存在することは明らかである。
また、本件発明1の「無人確認システム」は「立体駐車装置を対象として、無人確認を行う」ものであること、「操作部」は「前記立体駐車装置内の無人確認済入力操作が行われる」ものであることに照らして、本件発明1における「センサ」が検知する「車両を入出庫する高さにある各可動式パレットの周辺の物体」の「物体」は「人」を含むといえるとともに、甲1発明の「安全光線」は、「立体駐車設備内に人が侵入する等の事態」に応じるものであり、通常、「人が侵入する」ことが想定されるのは入出庫階であるといえる。よって、甲1発明の「立体駐車設備内に」「侵入する」「人」は、本件発明1の「車両を入出庫する高さにある各可動式パレットの周辺の物体」に相当する。
よって、甲1発明の「立体駐車設備内に人が侵入する等の事態により、安全光線が遮断される」ことは、本件発明1の「前記複数の可動式パレットのうち、車両を入出庫する高さにある各可動式パレットの周辺の物体を検知する」「センサ」を備えることに相当する。

(ウ)甲1発明の「立体駐車設備内に人が侵入する等の事態により、安全光線が遮断され」て「安全確認後、確認スイッチ34がタッチされる」ことは、本件発明1の「前記立体駐車装置内の無人確認済入力操作が行われる」ことに相当する。

(エ)甲1発明の「安全光線遮断のメッセージがディスプレー14に表示され」ることは、本件発明1の「表示部」が「センサの検知状態を表示する」ことに相当する。
よって、甲1発明の「1台の親機2と、複数台の子機3とにより構成され」る「制御装置1」の「親機2は、各子機3a乃至3cにより検出されて親機2に送信されてくる動作情報を、ディスプレー14上に動作情報画面として表示し、立体駐車設備内に人が侵入する等の事態により、安全光線が遮断されると、動作情報画面として安全光線遮断のメッセージがディスプレー14に表示され、昇降ゲート4の閉鎖中に安全光線が遮断されると、これと同様に安全光線遮断のメッセージがディスプレー14に表示され」ることと、本件発明1の「該複数のセンサの検知状態を表示する表示部」「を含み」「該システム制御部は、前記複数のセンサの各々の検知状態を、使用者が物体を検出中のセンサを特定できるように前記表示部に表示させる」こととは、「センサの検知状態を表示する表示部を含み」「システム制御部は、センサの検知状態を、表示部に表示させる」点で共通する。

(オ)甲1発明の「立体駐車設備」は、上記(ア)?(エ)を踏まえると、立体駐車設備内に人が侵入する等の事態、すなわち立体駐車設備内での人の有無を検知する機能を有しているといえるから、本件発明1の「立体駐車装置の無人確認システム」に相当する。

(カ)以上のことから、本件発明1と甲1発明は、次の一致点で一致し、相違点で相違する。

(一致点)
「複数の可動式パレットと、前面に開閉ゲートとを備えた立体駐車装置を対象として、無人確認を行うための無人確認システムであって、
前記複数の可動式パレットのうち、車両を入出庫する高さにある各可動式パレットの周辺の物体を検知するセンサと、該センサの検知状態を表示する表示部と、前記立体駐車装置内の無人確認済入力操作が行われる操作部と、システム制御部とを含み、
該システム制御部は、前記センサの検知状態を、前記表示部に表示させる、
立体駐車装置の無人確認システム。」

(相違点1)
センサについて、本件発明1ではセンサが「複数」であって「前記開閉ゲートの前面側を検知するためのゲート前面センサと、前記開閉ゲートの後面側を検知するためのゲート後面センサと、前記可動式パレットの後部側を検知するための後部センサと、並列方向に隣接する前記可動式パレット間及び並列方向の最も外側にある2つの可動式パレットの外側側部を検知するための側部センサとを含」むことが特定されているのに対し、甲1発明では、そのように特定されていない点。

(相違点2)
システム制御部について、本件発明1では「前記複数のセンサによる物体の検知状態の如何に関わらず、前記操作部に対して前記入力操作が行われるまで、前記開閉ゲートの閉動作を抑止するものであ」ることが特定されているのに対し、甲1発明では、そのような構成が特定されていない点。

(相違点3)
システム制御部がセンサの検知状態を表示部に表示させることについて、本件発明1では「使用者が物体を検出中のセンサを特定できるように」し、「前記表示部は、前記立体駐車装置を平面視したときの、車両を入出庫する高さにある可動式パレットの設置レイアウトを表示し、更に、該表示したレイアウト上或いはレイアウトの周囲に、前記複数のセンサの設置レイアウトに対応して、各センサの検知状態を表示するためのセンサレイアウト表示部を表示し、該センサレイアウト表示部は、前記複数のセンサと1対1で対応する複数のセンサ表示を備え、物体を検知している状態のセンサに対応した前記センサ表示が点灯表示されると共に、物体を検知していない状態のセンサに対応した前記センサ表示が消灯される」ことが特定されているのに対し、甲1発明は、「ディスプレー14」(表示部)に「安全光線遮断」のメッセージが表示されるものの、可動式パレットの設置レイアウトに対応したセンサレイアウト表示部として表示されるものではなく、複数のセンサと1対1で対応する複数のセンサ表示が、物体を検知している状態のセンサに対応した前記センサ表示が点灯表示されると共に、物体を検知していない状態のセンサに対応した前記センサ表示が消灯されるものでもない点。

イ 判断
(ア)まず、上記相違点1について検討する。
a 甲2技術事項の「車両入退室チェック光電管11」は、甲2技術事項において開閉ゲートが特定されていないことに照らして、本件発明1の「前記開閉ゲートの前面側を検知するためのゲート前面センサ」及び「前記開閉ゲートの後面側を検知するためのゲート後面センサ」のいずれにも相当しない。また、車両の入退室、すなわち車両の前面側を確認するものであるから、本件発明1の「後部センサ」及び「側部センサ」のいずれにも相当しない。
甲2技術事項の「後部車長制限光電管12」、「実車検知光電管13」、「前部車長制限光電管14」は、「パレット22上の所定の位置」を確認するものであり、「パレット22」の周辺領域までも確認するものであるとまではいえないから、本件発明1の「各可動式パレットの周辺の物体を検知する複数のセンサ」である「ゲート前面センサ」、「ゲート後面センサ」、「後部センサ」及び「側部センサ」のいずれにも相当しない。
甲2技術事項の「前配置右側人検知センサ15」、「後配置右側人検知センサ16」、「前配置左側人検知センサ17」及び「後配置左側人検知センサ18」は、その検知範囲は「パレット22」の右側又は左側であるから、本件発明1の「ゲート前面センサ」、「ゲート後面センサ」及び「後部センサ」のいずれにも相当しない。また、甲2技術事項の「立体駐車装置」は「車両入退室110に1つのパレット22が設けられ」ており、並列方向に隣接する複数の可動式パレットを有するものではないから、本件発明1の「並列方向に隣接する前記可動式パレット間及び並列方向の最も外側にある2つの可動式パレットの外側側部を検知するため」の「側部センサ」にも相当しない。

b 甲4技術事項の「各パレット2、3、4に搭載される車両W1、W2の許容寸法オーバーを検知する」ものである「車両後端規制用検知器22、24a、24b、24c」、「車両前端規制用検知器23」、「左端規制用検知器25」及び「右端規制用検知器26」の検知位置は、「各パレット2、3、4」の端部領域であり、「各パレット2、3、4」の周辺領域までも検知するものであるとまではいえないから、本件発明1の「各可動式パレットの周辺の物体を検知する複数のセンサ」である「ゲート前面センサ」、「ゲート後面センサ」、「後部センサ」及び「側部センサ」のいずれにも相当しない。

c 甲5技術事項の「前面柵4の外方であって入出庫口2の左右に」「配設され」る「第一光センサ6」、「前面柵4から5?10cm程度離間した内方に加えて設置する」「第一光センサ6」は、それぞれ本件発明1の「ゲート前面センサ」、「ゲート後面センサ」に相当する。

d 上記a?cのとおり、甲2、甲4及び甲5のいずれにも、本件発明1の「車両を入出庫する高さにある各可動式パレットの周辺の物体を検知する複数のセンサ」としての「前記開閉ゲートの前面側を検知するためのゲート前面センサ」、「前記開閉ゲートの後面側を検知するためのゲート後面センサ」、「前記可動式パレットの後部側を検知するための後部センサ」及び「並列方向に隣接する前記可動式パレット間及び並列方向の最も外側にある2つの可動式パレットの外側側部を検知するための側部センサ」に対応するセンサを網羅的に設ける点は記載されていない。また、当該構成は周知の技術であるともいえない。
上記の各検討について、甲3及び甲6?8に記載の技術事項を併せみても同様である。
よって、甲1発明に、甲2技術事項、甲4技術事項及び甲5技術事項を適用しても、本件発明1の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

e 上記ア(イ)の検討において、仮に、甲1発明の「入出庫口路面」にある「横行段」に設置される「発光素子5及び受光素子6からなり、車両のはみ出しの有無を検出する光電スイッチ」が、本件発明1の「車両を入出庫する高さにある各可動式パレットの周辺の物体を検知する」「センサ」に相当するとしても、上記ア(カ)の相違点1は依然として存在し、上記a?dのとおり、甲1発明に、甲2技術事項、甲4技術事項及び甲5技術事項を適用しても、本件発明1の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

f 申立人は、「複数のセンサを設ける点については、証拠を挙げるまでもなく周知技術であるし、複数のセンサをどのような位置に配置するかといった点については、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。」(申立書第23頁第16?18行)、「例えば、甲4には、・・・。また、甲5には、・・・。甲1発明において、甲4、甲5に記載されているような位置にセンサを配置し、相違点2の構成とすることは、当業者が容易になし得る事項である。」(申立書第23頁第19行?第24頁第3行)旨を主張している。
しかしながら、立体駐車装置において複数のセンサを設ける点について周知技術であるとしても、センサを配置する位置に依って、当該センサが奏する保安効果は異なるから、複数のセンサ及びその位置を特定して「前記開閉ゲートの前面側を検知するためのゲート前面センサと、前記開閉ゲートの後面側を検知するためのゲート後面センサと、前記可動式パレットの後部側を検知するための後部センサと、並列方向に隣接する前記可動式パレット間及び並列方向の最も外側にある2つの可動式パレットの外側側部を検知するための側部センサとを含」むものとすることが、当業者が適宜なし得る設計的事項であるとまではいえない。また、上記dのとおり、甲4及び甲5には、本件発明1の「各可動式パレットの周辺の物体を検知する複数のセンサ」である「ゲート前面センサ」、「ゲート後面センサ」、「後部センサ」及び「側部センサ」に相当するセンサを網羅的に設ける点が記載されているとはいえない。
よって、申立人の主張は採用できない。

(イ)次に、複数のセンサを前提とする点で相違点1と密接に関連する相違点3について検討する。
a 甲6?8技術事項に照らして、原子力プラント、石油備蓄基地、浄水場、工場等の施設において、複数のセンサの設置レイアウトに対応して、各センサの検知状態を表示するためのセンサレイアウト表示部を設け、検知したセンサの表示を点灯表示とすると共に、検知していないセンサの表示を消灯表示とすることは、周知の技術であるといえる。
一方、甲1発明の「立体駐車設備」と上記施設とは、施設規模、用途、技術分野等の観点で異なることに加え、甲1発明の「動作情報画面として安全光線遮断のメッセージがディスプレー14に表示され」ることについて、立体駐車設備において安全光線遮断の箇所を表示して判別すべき課題は一般的とは認められないから、センサレイアウト表示をディスプレー14に表示する構成とすることに、動機付けがあるとはいえない。
したがって、甲6?8技術事項に係る上記周知技術が存在するとしても、当該周知技術を甲1発明の「立体駐車設備」に適用し、本件発明1の相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

b 申立人は、「センサの検知状態を利用者に通知する際に、監視エリアである立体駐車装置を平面視したときのパレットの設置レイアウトを表示し、更に、表示したレイアウト上またはレイアウトの周囲に複数のセンサの設置レイアウトに対応して各センサの検知状態を表示するためのセンサレイアウトを表示し、センサの検知状態に応じて表示態様を変化させることは、例えば、甲6?8に示されるように、センサの検知状態を利用者にわかりやすく伝える場合に採用される常套手段である。」(申立書第24頁第6?11行)、「甲1発明において、安全光線が遮断されてその旨を通知するメッセージをディスプレー(14)に表示させる際に、甲6?甲8に記載されているような周知の技術を採用し、相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易になし得る事項にすぎない。」(申立書第25頁第3?5行)旨を主張している。
しかしながら、上記aのとおり、甲6?8技術事項に係る周知技術が存在するとしても、当該周知技術を甲1発明の「立体駐車設備」に適用し、本件発明1の相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
よって、申立人の主張は採用できない。

(ウ)上記(ア)及び(イ)を踏まえると、相違点2を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2?8に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の構成を全て含み、発明のカテゴリを「立体駐車装置」とし、さらに限定を付加した発明であるから、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明2は、甲1発明及び甲2?8に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。

(3)本件発明3について
本件発明3は、発明のカテゴリを「無人確認方法」とした、本件発明1と実質的に同一の発明に、さらに「前記操作部に対して前記入力操作を行う」ことについて「使用者が該表示部の表示を参照しながら前記立体駐車装置内の無人確認を行った後に」行うという限定を付加した発明であるから、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明3は、甲1発明及び甲2?8に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。

6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2021-08-23 
出願番号 特願2014-229953(P2014-229953)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (E04H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 美紗子河内 悠  
特許庁審判長 住田 秀弘
特許庁審判官 土屋 真理子
田中 洋行
登録日 2020-11-26 
登録番号 特許第6799897号(P6799897)
権利者 新明和パークテック株式会社
発明の名称 立体駐車装置の無人確認システムとこれを備える立体駐車装置、及び立体駐車装置の無人確認方法  
代理人 特許業務法人はなぶさ特許商標事務所  

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