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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G06F
管理番号 1377833
異議申立番号 異議2021-700454  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-05-13 
確定日 2021-09-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第6818567号発明「配管ルート作成装置、配管ルート作成方法及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6818567号の請求項1?6に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6818567号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成29年1月26日の出願であって、令和3年1月5日にその特許権の設定登録(特許公報発行日 令和3年1月20日)がされた。
その後、令和3年5月13日に特許異議申立人石井久夫により請求項1?6に対して特許異議の申立てがされた。

2 本件発明
本件特許の請求項1?6に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明6」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
ここで、本件発明1?6の各構成には、(A)?(O)の符号を当審において付した。以下、構成A?構成Oという。

〔本件発明1〕【請求項1】
(A)予め定められた空間に配置された複数の機器を接続するための配管ルートを作成する配管ルート作成装置であって、
(B)接続する機器の組合せの指定を受け付ける入力手段と、
(C)前記入力手段が受け付けた各組合せに含まれる一方の機器と他方の機器の基準面までのそれぞれの距離の和を算出し、その値が小さい組合せの順に、前記配管ルートを作成する配管ルート作成手段と、
を備える
(A)配管ルート作成装置。

〔本件発明2〕【請求項2】
(D)前記空間を複数の小空間に分割する分割手段と、
(E)前記分割手段により分割された前記複数の小空間毎に、前記空間における位置と、前記配管ルート作成手段が作成した配管ルートに含まれるか否かを示す情報とを対応付けたテーブルを作成するテーブル作成手段と、を備え、
(F)前記配管ルート作成手段は、前記テーブル作成手段により作成された前記テーブルに格納されたデータに基づいて、新たな配管ルートを作成する、
(A?C)請求項1に記載の配管ルート作成装置。

〔本件発明3〕【請求項3】
(G)前記テーブル作成手段は、前記配管ルート作成手段が作成した配管ルートに含まれる小空間の下方に位置する小空間に対して配管敷設作業の困難度を示す情報を付与する、
(A?F)請求項2に記載の配管ルート作成装置。

〔本件発明4〕【請求項4】
(H)前記テーブル作成手段は、配管敷設作業の困難度を示す情報に対して、重み付けを付与する、
(A?G)請求項3に記載の配管ルート作成装置。

〔本件発明5〕【請求項5】
(I)予め定められた空間に配置された複数の機器を接続するための配管ルートを作成する配管ルート作成方法であって、
(J)接続する機器の組合せの指定を受け付ける入力ステップと、
(K)前記入力ステップで受け付けた各組合せに含まれる一方の機器と他方の機器の基準面までのそれぞれの距離の和を算出し、その値が小さい組合せの順に、前記配管ルートを作成する配管ルート作成ステップと、
を備える
(I)配管ルート作成方法。

〔本件発明6〕【請求項6】
(L)予め定められた空間に配置された複数の機器を接続するための配管ルートを作成する配管ルート作成装置で用いられるプログラムであって、
前記配管ルート作成装置が備えるコンピュータに、
(N)接続する機器の組合せの指定を受け付ける入力処理と、
(O)前記入力処理で受け付けた各組合せに含まれる一方の機器と他方の機器の基準面までのそれぞれの距離の和を算出し、その値が小さい組合せの順に、前記配管ルートを作成する配管ルート作成処理と、
(L)を実行させるためのプログラム。

3 特許異議申立理由
特許異議申立理由の概要は、以下のとおりである。

本件発明1?本件発明6は、甲第1号証?甲第3号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件発明1?本件発明6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

甲第1号証:特開2002-288250号公報
甲第2号証:特開平7-244685号公報
甲第3号証:特開2007-219988号公報

4 甲号証について
(1)甲第1号証について
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、次の記載がある。なお、以降の下線は当審で付したものである。

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、産業プラント向け配管CADシステムの配管自動ルーティング方法に関する。」

「【0041】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面と共に説明する。図1に示す実施の形態の配管の自動ルーティングシステムは、プラントの鉄骨、床、機器、階段等を入力し、入力結果を3次元表示する3D-CAD1-1と、配管の接続情報(座標、口径、材質、肉厚等)を有する配管系統DB(データベース)1-2と、配管自動ルータ1-3で構成される。3D-CAD1-1のシステムから機器の形状を抽出し、配管ルーティングする際の機器障害物情報とする。配管系統DB1-2から配管座標、口径等の情報を抽出し、障害物情報と組合せ、配管自動ルータ1-3にてルート探索し、ルート探索結果を3D-CAD1-1にて表示するシステム構成である。配管自動ルータが本特許の主要部位に相当する。
【0042】図2に前記図1の配管の自動ルーティングシステムの配管自動ルータの処理フローを示す。まず、配管ルーティング領域を定義し、ルーティング階層レベル、各階層のメッシュ分割数を設定する。障害物(鉄骨、床、機器等)となる物の形状、座標情報からメッシュ分割したセルに空間情報を割り当てる。各セルには、1)障害物の有無、2)下方向障害物までの距離、3)上方向障害物までの距離、4)下方向床面までの距離、5)上方向床面までの距離、6)セル周辺の障害物混雑度を属性データとして格納する。
【0043】配管系統DB1-2の中でルーティング優先度の高いものから配管情報(始点、終点座標等)を抽出する。ルーティング優先度は配管の持つ各種要素から決定する。例えば、後からルーティングする配管ほど障害物を回避するための曲りが多くなるため、口径の太い配管の優先度を高くし、また同径配管の場合は高級材質、肉厚大であるほど優先度を高くする。
【0044】次に、選択した配管の始点、終点座標をセルに割付け、各階層のルーティング条件を設定した後、迷路法をベースにした2点間のルート探索を行い、セル上の経路を求める。所期のパターン数が生成されるまで、各階層のルーティング条件の設定値を変更し、異なる配管ルートパターンを生成する。全ルートパターンの生成が完了すれば、その中で最も施工性評価値の良いルートパターンを配管ルートとして選択し、セル上の経路を求める。
【0045】最適なルートパターンが選択されると、セル座標を実座標に変換し、ルーティング結果を格納する。選択した配管ルートは、以降のルーティングに対しては障害物として認識させる。この手順を全配管のルート探索完了するまで繰り返す。図2は、本特許の処理フローの概要を示しているが、本発明の具体的な処理内容を以下に言及する。」

イ 甲1発明
上記アから、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
ここで、甲1発明の各構成には、(a)?(d)の符号を当審において付した。以下、各構成を「構成a」?「構成d」という。

〔甲1発明〕
(a)プラントの鉄骨、床、機器、階段等を入力し、入力結果を3次元表示する3D-CADと、配管の接続情報(座標、口径、材質、肉厚等)を有する配管系統DB(データベース)と、配管自動ルータで構成される配管の自動ルーティングシステムにおける、配管自動ルータであって、(【0041】)
(b)配管自動ルータは、配管系統DBの中でルーティング優先度の高いものから配管情報(始点、終点座標等)を抽出し、例えば、後からルーティングする配管ほど障害物を回避するための曲りが多くなるため、口径の太い配管の優先度を高くし、また同径配管の場合は高級材質、肉厚大であるほど優先度を高くし、(【0042】、【0043】)
(c)次に、選択した配管の始点、終点座標をセルに割付け、各階層のルーティング条件を設定した後、迷路法をベースにした2点間のルート探索を行い、セル上の経路を求め、所期のパターン数が生成されるまで、各階層のルーティング条件の設定値を変更し、異なる配管ルートパターンを生成し、全ルートパターンの生成が完了すれば、その中で最も施工性評価値の良いルートパターンを配管ルートとして選択し、セル上の経路を求め、(【0044】)
(d)最適なルートパターンが選択されると、セル座標を実座標に変換し、ルーティング結果を格納する(【0045】)
(a)配管自動ルータ。

(2)甲第2号証について
ア 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、次の記載がある。

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、配管スプール設計方法に係り、特に遺伝的アルゴリズムを用いた配管スプール設計方法に関する。」

「【0011】次に、上記の如く構成された配管スプール設計方法を説明する。図3はCADデータから抽出されたビル設備天井配管ルート40である。図4は全体を枠で囲み配管ルート40を|─等で示したもので、つまり、メッシュ分割したもので1本で1つの配管ルートを示している。更に、図5には図4の各コラム(セル)をナンバリングしたものが示されている。尚、図4、5の枠外周に記載された(1)、(2)、(3)(当審注:「(1)」「(2)」「(3)」は、甲第2号証ではいずれも丸中数字である。)…は、座標軸表示である。図6は配管ルートの位置関係を図5のコラム番号を用いて数テーブルで示したもので、数値は図5のコラム番号に相当する。同テーブルにおいて、最上欄の「5」は図4の右上コラム5を示し、コラム5の上には何もないので、上欄は─(なしを意味する)、コラム5の下はコラム11であるため下欄には11と記載されている。最上欄の「0」は、図4のコラム0の上と左には何もなく、下にはコラム6、右にはコラム1が接続されていることを示している。また、最上欄の「17」からは、コラム17の上にはコラム15、下にはコラム23、左にはコラム16、右にはコラム18が接続されていることが読み取ることができる(図2のステップ20)。
【0012】図7は配管ルート図からコーディングされた遺伝子テーブルである。遺伝子の「0」はスプール切断点を示し、「1」はスプール内部の点を示している。ここで、コンピュータがコラム0?4を1つの切断単位(スプール)として判断したので、コラム4の遺伝子が「0」となり「コラム4で切断せよ」を意味している。また、コラム12?16を1スプールとして切断する場合、コラム12及び16の遺伝子が「0」となる。但し、この切断はある根拠に基づいたものではなく、ランダムに切断したものである。従って、図8のように他の切断方法を示すテーブルをコンピュータで多数作成する(図2のステップ22、24に相当)。」

「【図面の簡単な説明】
【図1】一般的な遺伝的アルゴリズムの概略を示すフローチャート
【図2】本発明の配管スプール設計方法示すフローチャート
【図3】本発明の配管スプール設計方法を説明するためのビル設備天井配管ルート図
【図4】図3をメッシュ分割した配管ルート図
【図5】図4をナンバリングした配管ルート図
【図6】図5中のナンバリングを用いて配管接続関係を示したテーブル
【図7】配管ルート図からコーディングされた遺伝子テーブル
【図8】コンピュータで多数作成された遺伝子テーブル
【図9】絞り込まれた遺伝子テーブル
【図10】図9が示す配管スプール切断方法
【図11】人間の最終判断による遺伝子置換えを示すテーブル
【図12】遺伝子置換えに使用するテンプレート」





イ 甲2技術
上記アから、甲第2号証には、次の技術(以下、「甲2技術」という。)が記載されている。

〔甲2技術〕
配管スプール設計において、
全体を枠で囲み配管ルートを|─等で示したもので、つまり、メッシュ分割したもので1本で1つの配管ルートを示したもの(図4)、
図4の各コラム(セル)をナンバリングしたもの(図5)、
配管ルートの位置関係を図5のコラム番号を用いて数テーブルで示したもの(図6)、
配管ルート図からコーディングされた遺伝子テーブル(図7)、
他の切断方法を示すテーブル(図8)
を用いる技術。

(3)甲第3号証について
ア 甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、プラント内における配管経路の生成方法、および配管経路等の線状パターンを生成するのに適した線状パターン生成装置等に関する。」

「【0011】
また、ノードに位置に応じて予め重み付け係数を設定しておき、経路生成ステップでは、始点から終点に至る複数の配管経路があるときに、それぞれの配管経路上の全てのノードと、それぞれのノードの重み付け係数に基づいて算出される評価の高いものを最適の配管経路として選択するのが有効である。このようにすれば、配管を固定するためのサポート金具の固定対象が確保しやすい障害物の近傍や、ユーザが希望する位置に配管をルーティングすることが可能となる。なお、ユーザが希望する位置には、点状の位置の他、線状や、エリアとすることもできる。
さらに、経路生成ステップで生成される配管経路の長さ、曲がり回数のそれぞれに重み付け係数を設定しておき、経路生成ステップでは、生成された複数の配管経路のそれぞれについて、配管経路の長さ、曲がり回数とそれぞれの重み付け係数、および配管経路上の全てのノードとそれぞれの重み付け係数に基づいて算出される評価の高いものを最適の配管経路として選択することもできる。これにより、重み付け係数の絶対値が大きい項目が、最適の配管経路選択の際に重視されることになる。このとき、重み付け係数の設定を適宜変更することで、配管経路の長さ、曲がり回数、配管を通す位置等、重視する項目を変えることができる。」

イ 甲3技術
上記アから、甲第3号証には、次の技術(以下、「甲3技術」という。)が記載されている

〔甲3技術〕
ノードに位置に応じて予め重み付け係数を設定しておき、重み付け係数の設定を適宜変更することで、配管経路の長さ、曲がり回数、配管を通す位置等、重視する項目を変えることができ、それぞれのノードの重み付け係数に基づいて算出される評価の高いものを最適の配管経路として選択する技術。

5 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。

(ア)構成Aについて
配管とは輸送元の機器と輸送先の機器との間に管を配置することであるから、構成bの「始点、終点座標」は、プラント内の機器の位置であり、構成Aの「予め定められた空間に配置された複数の機器」の位置に相当する。
そして、甲1発明の「配管自動ルータ」(構成a)は、配管の始点、終点座標に基づきルーティング結果を得る(構成c、構成d)ものであるから、本件発明1及び甲1発明は「予め定められた空間に配置された複数の機器を接続するための配管ルートを作成する配管ルート作成装置」である点で一致する。

(イ)構成Bについて
甲1発明の配管自動ルータは、配管系統DBから始点、終点座標を抽出する(構成b)ものであり、当該始点、終点座標は接続する機器の組合せが指定されたものといえるから、本件発明1及び甲1発明は「接続する機器の組合せの指定を受け付ける入力手段」を備える点で一致する。

(ウ)構成Cについて
構成Cの「前記入力手段」とは、構成Bの「接続する機器の組合せの指定を受け付ける入力手段」に対応するものであるから、構成Cの配管ルート作成手段は、「前記入力手段が受け付けた接続する機器の各組合せに含まれる一方の機器と他方の機器の基準面までのそれぞれの距離の和を算出し、その値が小さい組合せの順に、前記配管ルートを作成する配管ルート作成手段」である。
一方、甲1発明の配管自動ルータは、配管系統DBの中でルーティング優先度の高いものから配管情報(始点、終点座標等)を抽出し、例えば、後からルーティングする配管ほど障害物を回避するための曲りが多くなるため、口径の太い配管の優先度を高くし、また同径配管の場合は高級材質、肉厚大であるほど優先度を高く(構成b)するものであるから、本件発明1及び甲1発明は「順に、前記配管ルートを作成する配管ルート作成手段」を備える点で共通する。
しかしながら、前記配管ルートを作成する順が、本件発明1では「前記入力手段が受け付けた接続する機器の各組合せに含まれる一方の機器と他方の機器の基準面までのそれぞれの距離の和を算出し、その値が小さい組合せの順」であるのに対し、甲1発明では「ルーティング優先度の高いものから、例えば、後からルーティングする配管ほど障害物を回避するための曲りが多くなるため、口径の太い配管の優先度を高くし、また同径配管の場合は高級材質、肉厚大であるほど優先度を高く」する順である点で、両者は相違する。

(エ)一致点及び相違点
上記(ア)?(ウ)から、本件発明1と甲1発明との間の一致点及び相違点は次のとおりである。

〔一致点〕
(A)予め定められた空間に配置された複数の機器を接続するための配管ルートを作成する配管ルート作成装置であって、
(B)接続する機器の組合せの指定を受け付ける入力手段と、
(C’)順に、前記配管ルートを作成する配管ルート作成手段と、
を備える
(A)配管ルート作成装置。

〔相違点〕
前記配管ルートを作成する順が、本件発明1では「前記入力手段が受け付けた接続する機器の各組合せに含まれる一方の機器と他方の機器の基準面までのそれぞれの距離の和を算出し、その値が小さい組合せの順」であるのに対し、甲1発明では「ルーティング優先度の高いものから、例えば、後からルーティングする配管ほど障害物を回避するための曲りが多くなるため、口径の太い配管の優先度を高くし、また同径配管の場合は高級材質、肉厚大であるほど優先度を高く」する順である点。

イ 判断
上記相違点について検討する。

配管ルートを作成する順を「前記入力手段が受け付けた接続する機器の各組合せに含まれる一方の機器と他方の機器の基準面までのそれぞれの距離の和を算出し、その値が小さい組合せの順」とすることは、甲第1号証?甲第3号証に記載も示唆もされておらず、周知技術であるとも認められないから、当業者であっても当該事項を容易に導出することはできない。

なお、特許異議申立人は、「基準面(例えば、床面)から遠い配管ルートから順に配管した場合、後から配置される基準面に近い配管ルートの配置スペースがなくなる可能性があるため、基準面に近い配管ルートから基準面から遠い配管ルートの順で順次配管ルートを作成することは技術常識である。
また、基準面に最も近い配管ルートを最初に決め、基準面に最も近い配管ルートに支持部材を設け、その支持部材に基準面に2番目に近い配管ルートを固定することもある。このような配管ルートの固定方法を考慮すると、基準面に最も近い配管ルートから基準面から遠い配管ルートの順で順次配管ルートが決定されることになる。
甲第1号証には、ルーティング優先度の高い物から配管ルートを生成することが記載されている(段落0043)。上記の技術常識を顧慮すると、甲1発明において、基準面から近い配管ルートに高い優先順位を付与することは適宜なしうることである。
してみると、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。」と主張している。
しかしながら、甲1発明は、ルーティング優先度が高いものを特定する時点では、各ルートが作成されていないから、各ルートの基準面からの近さを比較することができるものではない。
また、接続する機器の各組合せに含まれる一方の機器と他方の機器の位置は、配管ルートの基準面からの近さを示すものではない(例えば、一方の機器と他方の機器の基準面からの各距離が、2つの組合せの間で遠近が逆転する場合は、どちらが基準面に近い配管ルートか特定できない)から、配管ルートの基準面からの近さを比較する際に、各組合せに含まれる一方の機器と他方の機器の位置を用いようとする動機は存在しない。
以上から、「接続する機器の各組合せに含まれる一方の機器と他方の機器の基準面までのそれぞれの距離の和」を甲1発明のルーティング優先度に適用することは、当業者が容易に想到しえたものということはできない。
したがって、上記特許異議申立人の主張を採用することはできない。

よって、本件発明1は、当業者であっても甲1発明、甲2技術及び甲3技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明2?本件発明6について
本件発明2?本件発明6も、上記相違点に係る構成と同等の構成を備えるものであるから、上記(1)と同じ理由により、甲1発明、甲2技術及び甲3技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件発明1?6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2021-08-30 
出願番号 特願2017-11775(P2017-11775)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G06F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松浦 功  
特許庁審判長 五十嵐 努
特許庁審判官 木方 庸輔
樫本 剛
登録日 2021-01-05 
登録番号 特許第6818567号(P6818567)
権利者 三菱電機株式会社
発明の名称 配管ルート作成装置、配管ルート作成方法及びプログラム  
代理人 八島 耕司  
代理人 美恵 英樹  
代理人 木村 満  

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