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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G05B
審判 全部申し立て 2項進歩性  G05B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G05B
管理番号 1377841
異議申立番号 異議2021-700469  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-05-17 
確定日 2021-09-27 
異議申立件数
事件の表示 特許第6803145号発明「装置管理システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6803145号の請求項1-6に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6803145号(以下、「本件」という。)の請求項1-6に係る特許についての出願は、平成28年3月16日に出願され、令和2年12月2日にその特許権の設定登録がされ、令和2年12月23日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和3年5月17日に特許異議申立人平賀博(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。

2.本件発明
本件の請求項1-6の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1-6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
商品を生産する生産ラインを構成する複数の生産ライン構成装置、を管理する装置管理システムであって、
前記生産ライン構成装置は、前記商品に関して計量を行う計量装置、前記商品の包装を行う包装装置、及び/又は、包装された前記商品の箱詰めを行う箱詰め装置を含み、
前記生産ライン構成装置に含まれる部品に関する部品情報を蓄積する情報蓄積部と、
前記情報蓄積部に蓄積された前記部品情報を分析する分析処理を行う情報分析部と、
前記分析処理の結果に基づき、前記部品のメンテナンスに関するメンテナンス情報を出力するメンテナンス情報出力部と、
を備え、
前記情報分析部は、同一種類の複数の前記生産ライン構成装置をグルーピングして、特定の前記生産ライン構成装置に関し、前記グルーピングにおいて同一のグループに含まれる他の前記生産ライン構成装置との比較に基づき、前記分析処理を行う、
装置管理システム。
【請求項2】
前記情報分析部は、前記分析処理において前記部品の調整不良を推定する、
請求項1に記載の装置管理システム。
【請求項3】
前記情報分析部は、前記分析処理において前記部品の経年劣化による動作不良又は能力低下を予測する、
請求項1または請求項2に記載の装置管理システム。
【請求項4】
前記情報分析部は、前記部品に関し要求される能力を定義した能力情報に基づき、前記分析処理を行う、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の装置管理システム。
【請求項5】
前記情報蓄積部、前記情報分析部、及び/又は前記メンテナンス情報出力部は、前記生産ライン構成装置と通信ネットワークで接続され、前記生産ライン構成装置が設置される空間から離れた遠隔地に配置される、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の装置管理システム。
【請求項6】
前記部品には、前記包装装置のナイフシリンダ、シールシリンダ、及び/又はベルトが含まれる、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の装置管理システム。」

3.申立理由の概要
異議申立人は、証拠として次の甲第1-5号証を提出し、下記の各申立理由のとおり、請求項1-6に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

甲第1号証:特開2012-252662号公報
甲第2号証:特開2001-356808号公報
甲第3号証:特開2004-331107号公報
甲第4号証:特開2008-77684号公報
甲第5号証:特開2011-103049号公報
(以下、各甲号証を「甲1」などという。)

(1)申立理由1(進歩性)
主たる証拠として甲1及び従たる証拠として甲2-5を提示し、請求項1-6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1-6に係る特許を取り消すべきものである。

(2)申立理由2(進歩性)
主たる証拠として甲4及び従たる証拠として甲3を提示し、請求項1-6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1-6に係る特許を取り消すべきものである。

(3)申立理由3(明確性)
請求項1,6に係る特許は、次のア.及びイ.に示すとおり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであるから、請求項1,6に係る特許及び請求項1を引用する請求項2-5に係る特許を取り消すべきものである。

ア.請求項1には、「前記生産ライン構成装置は、前記商品に関して計量を行う計量装置、前記商品の包装を行う包装装置、及び/又は、包装された前記商品の箱詰めを行う箱詰め装置を含み」と記載されているところ、「及び/又は」という記載があるために、生産ライン構成装置が、計量装置、包装装置、箱詰め装置のいずれを含む組み合わせのものを表しているのか明確でない。(以下、「申立理由3のア.」という。)

イ.請求項6には、「前記部品には、前記包装装置のナイフシリンダ、シールシリンダ、及び/又はベルトが含まれる」と記載されているところ、「及び/又は」という記載があるために、部品が、ナイフシリンダ、シールシリンダ、ベルトのいずれを含む組み合わせのものを表しているのか明確でない。(以下、「申立理由3のイ.」という。)

(4)申立理由4(サポート要件)
請求項2に係る特許は、次に示すとおり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであるから、請求項2に係る特許及び請求項2を引用する請求項3-6に係る特許を取り消すべきものである。

請求項2には、「前記情報分析部は、前記分析処理において前記部品の調整不良を推定する」と記載されているところ、発明の詳細な説明には、調整不良のみを推定するものは記載されていない。

(5)申立理由5(実施可能要件)
請求項2に係る特許は、次に示すとおり、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないものであるから、請求項2に係る特許及び請求項2を引用する請求項3-6に係る特許を取り消すべきものである。

請求項2には、「前記情報分析部は、前記分析処理において前記部品の調整不良を推定する」と記載されているところ、発明の詳細な説明は、調整不良のみを推定するものは記載されておらず、請求項2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。

4.各甲号証の記載
(1)甲1
ア.甲1の記載事項
a.【0018】
「(1)生産ラインの構成
生産ラインでは、スナック菓子やキャンディーなどの工業的に大量生産された物品が、所定の重量または個数ごとに小分けされ、袋詰めにされて下流工程に送られる。生産ラインの下流工程では、袋詰めにされた物品の品質検査が行われて不良品が取り除かれ、良品のみが箱詰めにされて出荷される。 」

b.【0019】
「本実施形態に係る生産ライン100の概念図を図1に示す。生産ライン100のブロック構成図を図2に示す。生産ライン100は、後述する生産ライン管理装置7によって管理される。生産ライン100は、計量装置1、包装装置2、検査ライン3、振分装置4、箱詰装置5、および、ケースチェッカー6を含む。・・・」

c.【0023】
「次に、計量装置1は、包装装置2に供給する物品Pの重量が所定値になるように、複数の計量ホッパ16による物品Pの重量の測定値を選択して組み合わせる。そして、選択された測定値を示す計量ホッパ16内の物品Pが排出されて合流して、包装装置2に供給される。」

d.【0024】
「(1-2)包装装置
包装装置2は、計量装置1によって所定の重量または個数ごとに小分けされた物品を、包材を用いて袋詰めにして、検査ライン3に送る。・・・」

e.【0030】
「(1-4)振分装置
振分装置4は、検査ライン3で不良品と判定された物品を、生産ライン100から取り除き、箱詰装置5に送る。具体的には、振分装置4は、異物検出装置31によって異物が検出された不良品と、重量チェッカー32によって重量が所定の範囲内にないと判定された不良品と、シールチェッカー33によってシール不良が検出された不良品と、を生産ライン100から取り除き、良品のみを箱詰装置5に送る。」

f.【0031】
「(1-5)箱詰装置
箱詰装置5は、振分装置4から送られた物品を、所定の個数だけ箱に詰めて封緘する。・・・」

イ.甲1の技術的事項
上記ア.の記載事項から、甲1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

a.上記ア.のb.からみて、計量装置1、包装装置2、検査ライン3、振分装置4、箱詰装置5、および、ケースチェッカー6は、生産ライン100を構成する生産ライン構成装置であるといえる。

b.上記ア.のb.からみて、生産ライン管理装置7は生産ライン100を管理しており、生産ライン100は生産ライン構成装置から構成されていることから、生産ライン管理装置7は生産ライン構成装置を管理しているといえる。

ウ.甲1発明
上記ア.の記載事項及びイ.の技術的事項からみて、甲1には、以下の発明が記載されている。

「スナック菓子やキャンディーなどの工業的に大量生産された物品を生産する生産ライン100を構成する複数の生産ライン構成装置、を管理する生産ライン管理装置7であって、
前記生産ライン構成装置は、前記物品に関して計量を行う計量装置1、前記物品の包装を行う包装装置2、及び、包装された前記物品の箱詰めを行う箱詰め装置5を含む、生産ライン管理装置100。」
(以下、「甲1発明」という。)

(2)甲2
ア.甲2の記載事項
a.【0027】
「センサ5は、機械部品4の寿命関係要因を検出するセンサであり、例えば、振動センサ、温度センサ等である。・・・」

b.【0028】
「顧客企業の事業所2には、センサ5で検出した情報(生データ)またはこの情報を加工した情報であるセンサ情報s1を回線9に送信するセンサ情報送信手段10が設けられてる(当審注:「設けられている」の誤記。)。回線9は、電話回線網等の公衆回線であっても、専用回線であっても良い。センサ情報送信手段10は、複数の機械部品4に対して設けられた各センサ5の検出情報を収集する情報収集部11と、この情報収集部11で収集した情報を上記センサ情報s1として回線9に送信する情報送信部12とを有する。・・・センサ情報送信手段10は、センサ5から得たセンサ情報s1を記憶する記憶手段を有するものとすることが好ましい。この記憶手段は、情報収集部11と情報送信部12のいずれに設けても良く、またこれらと別個に設けても良い。・・・」

c.【0032】
「図3において、診断手段14は、センサ情報受信手段13で受信したセンサ情報s1から機械部品4の寿命状況を診断する手段である。診断手段14は、診断結果情報として、機械部品4が正常に使用可能か否かの判定結果と、使用可能である場合の使用可能期間の判定結果とを含むものであることが好ましい。診断手段14は、データベース19に登録された機械部品4の機種別仕様の情報を診断に利用するものとしてある。診断手段14は、さらにデータベース19に登録された診断事例の情報を診断に利用するものとしてある。データベース19において、診断事例は機械部品4の機種別に登録されている。・・・」

d.【0033】
「診断手段14は、センサ情報s1が入力されることで、少なくとも機械部品4が正常に使用可能か否かの判定を自動的に行う判定器21と、この判定器21による判定結果に対して、人による診断結果を付加し、または人による診断結果で修正を行う人為診断部22とを備えている。判定器21は、正常に使用可能か否かの判定結果に加えて、使用可能である場合の使用可能期間の判定結果を出力するものであることが好ましい。・・・」

e.【0044】
「この実施形態における処理の流れを、図3,図7と共に説明する。顧客企業の機械部品4を監視するセンサ5の検出情報は、センサ情報送信手段10によって、センサ情報s1として回線9に送信される(図7(A))。このセンサ情報s1には、部品機種および部品使用箇所等の部品特定データが含まれている。このセンサ情報s1は、生産販売企業1のセンサ情報受信手段13で受信されて、診断手段14で診断される。診断には、データベース19,29の登録情報が利用される。その診断結果情報s2(図7(B)は、部品特定情報と共に、使用可または使用不可の区別と共に、使用可である場合の使用可能期間とが含まれ、必要な場合には、人為診断情報が付加される。この診断結果情報s2に対して、商品情報付加手段15によって、データベース23を参照して、商品情報s3が付加され、かつ発注伺い情報s4が付加される。商品情報s3は、価格情報および納期情報を含む。発注伺い情報s4は、発注か保留かの意思確認の入力を促す情報と、希望納期を伺う情報とを含む。この診断結果情報s2,商品情報s3,および発注伺い情報s4が付加された情報である商品情報付加・診断結果情報s5は、診断結果情報送信手段16で回線9に送信される。」

(3)甲4
ア.甲4の記載事項
a.【0016】
「・・・図1に示すように、本実施の形態のシステムは、ベンダの供給する機器10が使用される工場101と、工場101からは遠隔地にあるベンダの事業所102と、工場101とベンダ事業所102とを結ぶ通信回線100と、から構成されている。」

b.【0017】
「工場101は、例えば、半導体製造工場であり、内部には、機器10と、工場側コンピュータ11と、機器10と工場側コンピュータ11とを結ぶ工場内配線網12と、が配備されている。」

c.【0027】
「機器10から工場内配線網12を介して工場側コンピュータ11に送信される稼働状況データは、通信回線100を介して、同様にベンダ側に送られる。また、機器10から定期的に送出される部品交換に関するメンテナンスデータについても、工場側コンピュータ11を介して、ベンダ側に送られる。・・・」

d.【0037】
「履歴情報データベース32には、工場側コンピュータ11から受信した稼働状況データ及びメンテナンスデータが格納されている。履歴情報データベース32に格納されている情報は、複数の工場101、110、120等において、稼働している各機器10から取得した、所定期間内の稼働状況データ及びメンテナンスデータである。」

e.【0050】
「中央処理部27は、上記初期情報と、履歴情報データベース32に記憶されたメンテナンスデータとを参照して、所定のプログラムにより各部品の最適交換周期を算出する。中央処理部27は、新規なメンテナンスデータを取得する毎に上記処理を行い、新たに算出された最適交換周期は、交換周期情報データベース35に更新して記憶される。交換周期情報データベース35に記憶された最適交換周期は、機器10の運用にフィードバック可能な情報として、工場側に定期的に送信される。」

f.【0084】
「履歴情報データベース32には、稼働状況データ、メンテナンスデータ及びウエハWの測定データが格納されている。稼働状況データ及びメンテナンスデータは、上述のシステムでのデータの構成とほぼ同様である。ただし、稼働状況データには、所定の部品交換またはクリーニング後、何回目(または何時間目)の稼働であるかを示すRAN回数(RAN時間)も記憶されている。CVD装置36のRAN回数によってもウエハW上に成膜される膜の物性が異なるためである。測定データは、図14に示すように、CVD装置36によりウエハW上に成膜された膜の膜厚、膜の均一性等のデータであり、稼働状況データに対応して記憶されている。測定データは、測定装置41により測定され、ベンダ側コンピュータ26に定期的に送信される。」

g.【0101】
「また、ベンダ側コンピュータ26は、機器の使用回数、使用時間に応じて、工場側及びベンダ側の作業員に、部品の交換等を行う必要があることを報知してもよい。例えば、ベンダ側コンピュータ26は、履歴情報データベース32に格納した稼働状況データから、CVD装置36がウエハWの成膜処理を行った回数を判別する。そして、ベンダ側コンピュータ26は、図15に示す交換周期情報データベース35を参照して、所定回数、例えば、××回ウエハWの成膜処理を行った場合(RUN××回)には、工場側及びベンダ側の作業員にウエハボート323のクリーニングを行う必要があることを報知する。さらに、ベンダ側コンピュータ26は、ウエハWの成膜処理を○○回行ったと判別した場合(RUN○○回)には、工場側及びベンダ側の作業員にウエハボート323の交換を行う必要があることを報知する。」

h.【0113】
「上記実施の形態では、ベンダ側コンピュータ26に、工場側コンピュータ11を介して接続された機器は、同一タイプであるものとした。しかし、同一工場内に複数のタイプの機器を配備し、上記実施の形態と同様の構成により各機器の保守管理情報をベンダ側コンピュータ26が把握するようにしてもよい。このとき、ベンダ側コンピュータ26は、機種別にデータベースを構築するなどして保守管理情報の管理を行う。」

イ.甲4の技術的事項
上記ア.の記載事項から、甲4には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

a.上記ア.のa.、f.及びg.からみて、機器10がCVD装置36を含み、ベンダ側コンピュータ26は、機器10を管理しているといえる。

b.上記ア.のg.からみて、ベンダ側コンピュータ26は、履歴情報データベース32に格納されたCVD装置36の稼働状況データを分析する分析処理を行っているといえる。

c.上記ア.のh.からみて、ベンダ側コンピュータ26は、同一工場内の複数のタイプの機器の保守管理情報を管理するにあたり、機種別にグルーピングしてデータベースを構築しているといえる。

ウ.甲4発明
上記ア.の記載事項及びイ.の技術的事項から、甲4には、以下の発明が記載されている。

「機器10を管理するベンダ側コンピュータ26であって、
前記機器10は、CVD装置を含み、
履歴情報データベース32に格納されたCVD装置36の稼働状況データを分析する分析処理を行うベンダ側コンピュータ26と、
前記分析処理の結果に基づき、ウエハボード322のクリーニング又は交換を行う必要があることを報知するベンダ側コンピュータ26と、を備え、 ベンダ側コンピュータ26は、機種別にグルーピングしてデータベースを構築するベンダ側コンピュータ26。」
(以下、「甲4発明」という。)

5.当審の判断
(1)申立理由1(進歩性)について
ア.請求項1に係る発明について
(ア)本件発明と甲1発明の対比
請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という)と甲1発明とを対比する。

甲1発明の「スナック菓子やキャンディーなどの工業的に大量生産された物品」は、本件発明の「商品」に相当し、以下同様に、「生産ライン100」は、「生産ライン」に、「生産ライン管理装置7」は、「装置管理システム」に、「計量装置1」は、「計量装置」に、「包装装置2」は、「包装装置」に、「箱詰め装置5」は、「箱詰め装置」に、それぞれ相当する。

以上のことから、本件発明と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「商品を生産する生産ラインを構成する複数の生産ライン構成装置、を管理する装置管理システムであって、
前記生産ライン構成装置は、前記商品に関して計量を行う計量装置、前記商品の包装を行う包装装置、及び、包装された前記商品の箱詰めを行う箱詰め装置を含」んでいる点。

【相違点】
装置管理システムに関して、本件発明は、「生産ライン構成装置に含まれる部品に関する部品情報を蓄積する情報蓄積部と、前記情報蓄積部に蓄積された前記部品情報を分析する分析処理を行う情報分析部と、前記分析処理の結果に基づき、前記部品のメンテナンスに関するメンテナンス情報を出力するメンテナンス情報出力部と、を備え、前記情報分析部は、同一種類の複数の前記生産ライン構成装置をグルーピングして、特定の前記生産ライン構成装置に関し、前記グルーピングにおいて同一のグループに含まれる他の前記生産ライン構成装置との比較に基づき、前記分析処理を行う」のに対し、甲1発明は、そのような構成を有していない点。

(イ)相違点の検討
異議申立人は、上記相違点に係る構成のうち、「特定の前記生産ライン構成装置に関し、前記グルーピングにおいて同一のグループに含まれる他の前記生産ライン構成装置との比較に基づき、前記分析処理を行う」ことについて、甲4の【0113】に記載されており、周知であると主張している(特許異議申立書の第10ページ第14行-第13ページ第7行、第14ページ第25行-第15ページ第15行)。
そこで、当該【0113】の記載を検討すると、「しかし、同一工場内に複数のタイプの機器を配備し、上記実施の形態と同様の構成により各機器の保守管理情報をベンダ側コンピュータ26が把握するようにしてもよい。このとき、ベンダ側コンピュータ26は、機種別にデータベースを構築するなどして保守管理情報の管理を行う。」の記載は、複数のタイプの機器を機種別(タイプ別)に保守管理情報の管理を行う内容であることは認められる。
しかしながら、この記載からは、機種別に保守管理情報を管理される機器に関し、特定の生産ラインに配備される機器と、他の生産ラインに配備される同じタイプの機器とを比較することまでは読み取れないから、甲4には、「特定の前記生産ライン構成装置に関し、前記グルーピングにおいて同一のグループに含まれる他の前記生産ライン構成装置との比較に基づき、前記分析処理を行う」という事項が記載されているとはいえない。また、当該事項は甲2にも記載されていないから、従来周知の事項であるとは認められない。
そうすると、当業者であっても、甲1発明、甲2及び甲4に記載された事項から、相違点に係る構成について容易に想到するということはできない。

(ウ)小括
よって、本件発明は、甲1発明、甲2及び甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(エ)異議申立人の主張について
異議申立人は、上記(イ)で検討した主張のほかに、特許異議申立書の第15ページ第17-27行において、「本件発明1の『B:前記生産ライン構成装置は、前記商品に関して計量を行う計量装置、前記商品の包装を行う包装装置、及び/又は、包装された前記商品の箱詰めを行う箱詰め装置を含み』に関し、後述するとおり、どのような場合が本件発明1に包含されるのか不明であるところ、例えば、『包装装置』のみによって生産ラインが構成される場合も含まれ得るとも解される。そして、この場合には、『グルーピング』は全てが1つのグループとなり、グルーピングの意味をなさない。すなわち、本件発明1の構成要素F『前記情報分析部は、同一種類の複数の前記生産ライン構成装置をグルーピングして、特定の前記生産ライン構成装置に関し、前記グルーピングにおいて同一のグループに含まれる他の前記生産ライン構成装置との比較に基づき、前記分析処理を行う』という発明特定事項が、技術的に意味を有していないこととなる。」と主張している。
しかしながら、仮に、構成要素Fに技術的意味がないとしても、それだけで構成要素Fが当業者にとって容易想到であると評価することはできないから、異議申立人の上記の主張は失当である。
なお、付言すると、本件の【0011】-【0012】の記載を参酌すると、包装装置のみによって、生産ラインが構成され、全て一つのグループとなった場合であっても、特定の包装装置に関し、グルーピングにおいて同一のグループに含まれる他の包装装置との比較(例えば、第1工場の生産ラインL1の包装装置と、第2工場の生産ラインL1の包装装置との比較)に基づき、分析処理を行うと、生産ラインの設置環境や稼働状況に応じて、各包装装置のメンテナンス情報を高精度に出力することが可能になることから、各包装装置のメンテナンスを適切な時期に行うことが高精度に可能となり、商品の生産性低下がさらに抑制されるという技術的な意味を理解できる。

イ.請求項2-6に係る発明について
請求項2-6に係る発明は、いずれも本件発明を引用しており、本件発明の特定事項を全て含み、さらに構成を限定するものである。
そして、本件発明と甲1発明との相違点のうち、「特定の前記生産ライン構成装置に関し、前記グルーピングにおいて同一のグループに含まれる他の前記生産ライン構成装置との比較に基づき、前記分析処理を行う」という事項は、甲3及び甲5にも記載されていないから、本件発明と同様の理由により、請求項2-6に係る発明は、甲1発明及び甲2-5に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)申立理由2(進歩性)について
ア.請求項1に係る発明について
本件発明と甲4発明とを対比すると、上記(1)ア.(イ)で説示した理由と同様に、「特定の前記生産ライン構成装置に関し、前記グルーピングにおいて同一のグループに含まれる他の前記生産ライン構成装置との比較に基づき、前記分析処理を行う」ことについては、甲4に記載されていないことから、本件発明は、甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ.請求項2-6に係る発明について
請求項2-6に係る発明は、いずれも本件発明を引用しており、本件発明の特定事項を全て含み、さらに構成を限定するものであるから、本件発明と同様の理由により、請求項2-6に係る発明は、甲4発明及び甲3に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)申立理由3(明確性)について
ア.申立理由3のア.について
異議申立人は、請求項1の「前記生産ライン構成装置は、前記商品に関して計量を行う計量装置、前記商品の包装を行う包装装置、及び/又は、包装された前記商品の箱詰めを行う箱詰め装置を含み」という記載について、特許異議申立書の第17ページ第2-23行において、第1-4のパターンを提示し、そのパターンのうち、いずれのパターンを表しているか不明確であるという主張をしている。
第1パターン・・・「計量装置」+「包装装置」+「箱詰め装置」
第2パターン・・・[「計量装置」+「包装装置」]、
又は、「箱詰め装置」
第3パターン・・・[「計量装置」+「包装装置」、
又は、[「計量装置」+「箱詰め装置」]
第4パターン・・・「計量装置」、「包装装置」、又は、「箱詰め装置」
のうちいずれか1つ。
しかしながら、特許請求の範囲の記載において、「A、B及び/又はC」という記載は、通常なされる記載であって、上記第1-4パターンの全てのパターンを表しているものであると解されることから、上記請求項1の記載は明確である。
したがって、異議申立人の申立理由3のア.についての上記主張は採用できない。

なお、異議申立人は、第4パターンを含む場合は、「前記情報分析部は、同一種類の複数の前記生産ライン構成装置をグルーピングして、特定の前記生産ライン構成装置に関し、前記グルーピングにおいて同一のグループに含まれる他の前記生産ライン構成装置との比較に基づき、前記分析処理を行う」という発明特定事項が、技術的意味を有しないと主張している。
しかしながら、上記(1)ア.(エ)で付言するとおり、第4パターンを含む場合も技術的意味を有するものである。
したがって、上記主張は採用できない。

よって、請求項1及び請求項1を引用する請求項2-6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。

イ.申立理由3のイ.について
異議申立人は、請求項6の「前記部品には、前記包装装置のナイフシリンダ、シールシリンダ、及び/又はベルトが含まれる」という記載について、特許異議申立書の第17ページ第24行-第18ページ第9行において、第1-4のパターンを提示し、そのパターンのうち、いずれのパターンを表しているか不明確であるという主張をしている。
第1パターン・・・「ナイフシリンダ」+「シールシリンダ」
+「ベルト」
第2パターン・・・[「ナイフシリンダ」+「シールシリンダ」]、
又は、「ベルト」
第3パターン・・・[「ナイフシリンダ」+「シールシリンダ」、
又は、[「ナイフシリンダ」+「ベルト」]
第4パターン・・・「ナイフシリンダ」、「シールシリンダ」、
又は、「ベルト」のうちいずれか1つ。
請求項6の「前記部品には、前記包装装置のナイフシリンダ、シールシリンダ、及び/又はベルトが含まれる」という記載は、上記ア.に示した理由と同様に、上記第1-4パターンの全てのパターンを表しているものであり、明確である。
したがって、異議申立人の申立理由3のイ.についての上記主張は採用できない。
よって、請求項6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。

(4)申立理由4(サポート要件)について
異議申立人は、請求項2の「前記情報分析部は、前記分析処理において前記部品の調整不良を推定する」という記載について、特許異議申立書の第18ページ第10-24行において、本件の【0109】、【0110】、【0111】、【0112】、【0128】、【0131】には、「劣化兆候又は調整不良」、「劣化兆候(摩耗)又は調整不良」、「劣化兆候(弛み)又は調整不良」、「劣化(ベルト摩耗)/調整不良」という記載はなされているが、「調整不良」のみを推定するものは記載されていないと主張している。
一般に、「A又はB」や「A/B」という記載は、AかBのいずれか一方を表すものであって、本件の発明の詳細な説明の上記【0109】等は、劣化兆候か調整不良のいずれか一方を表すものであることから、「調整不良」のみを推定するものを含めて記載されているといえる。
また、本件の発明の詳細な説明の【0141】には、「・・・分析処理(第2分析処理又は第3分析処理)において部品の調整不良を検出(推定)している。・・・」と記載されており、「調整不良」のみを推定するものが記載されている。
したがって、異議申立人の申立理由4についての上記主張は採用できない。
よって、請求項2及び請求項2を引用する請求項3-6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。

(5)申立理由5(実施可能要件)について
異議申立人は、上記申立理由4と同様の理由により、「調整不良」のみを推定するものは記載されておらず、発明の詳細な説明は、請求項2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないと主張している。
しかしながら、上記(4)に示した理由と同様の理由により、本件の発明の詳細な説明には「調整不良」のみを推定するものも含めて記載されているといえることから、発明の詳細な説明は、請求項2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。
したがって、異議申立人の申立理由5についての上記主張は採用できない。
よって、請求項2及び請求項2を引用する請求項3-6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては、請求項1-6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1-6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2021-09-16 
出願番号 特願2016-52480(P2016-52480)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (G05B)
P 1 651・ 121- Y (G05B)
P 1 651・ 537- Y (G05B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 稲垣 浩司  
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 田々井 正吾
久保田 信也
登録日 2020-12-02 
登録番号 特許第6803145号(P6803145)
権利者 株式会社イシダ
発明の名称 装置管理システム  
代理人 新樹グローバル・アイピー特許業務法人  

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