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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61G |
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管理番号 | 1378196 |
審判番号 | 不服2021-3276 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-03-11 |
確定日 | 2021-10-05 |
事件の表示 | 特願2019-505572号「介助装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年9月20日国際公開、WO2018/167856号、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2017年3月14日を国際出願日とする出願であって、令和2年4月27日付けで拒絶理由通知がされ、令和2年7月6日に意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲及び明細書について補正する手続補正書が提出されたが、同年12月8日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対して令和3年3月11日に拒絶査定に対する審判請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 1 (理由1)この出願の下記に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2 (理由2)この出願の下記に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (1)理由1について ・請求項 1,6 ・引用文献 1 (2)理由2について ・請求項 1?3,6 ・引用文献 1 ・請求項 4 ・引用文献 1,2 ・引用文献等一覧 1.特開2016-144628号公報 2.特開2003-180754号公報 第3 本願発明 本願の請求項1?6に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」?「本願発明6」という。)は、令和3年3月11日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。 「【請求項1】 被介助者の移乗を介助する介助装置であって、 基台と、 前記基台に前後方向に揺動可能に設けられるアームと、 前記被介助者の身体の一部を支持し、前記アームに前後方向に揺動可能に設けられる支持部と、 前記基台に設けられ、第一端と第二端との間を移動する移動部を備える直動のアクチュエータと、 前記移動部が前記第一端から所定の中間位置まで移動するときに、前記移動部の動きを前記アームに対する前記支持部の前方への揺動に伝達しつつ、前記基台に対する前記アームの一定の姿勢を維持し、且つ、前記移動部が前記所定の中間位置から前記第二端まで移動するときに、前記移動部の動きを前記基台に対する前記アームの前方への揺動に伝達しつつ、前記支持部が前記アームに対する一定の姿勢を維持するように前記アームに対する 前記支持部の後方への揺動を規制するリンク機構と、 を備える、介助装置。 【請求項2】 前記介助装置は、さらに、前記アームに固定され、前記移動部が前記アームに対して自由移動することを規制する規制部材を備え、 前記規制部材は、 前記移動部が前記第一端から前記所定の中間位置まで移動するときに、前記移動部を非規制状態とすることにより、前記移動部の動きを前記アームに対する前記支持部の前方への揺動に伝達し、 前記移動部が前記所定の中間位置から前記第二端まで移動するときに、前記移動部を規制状態とすることにより、前記移動部の動きを前記基台に対する前記アームの前方への揺動に伝達する、請求項1に記載の介助装置。 【請求項3】 前記アクチュエータは、前記基台に揺動可能に設けられる本体部と、前記本体部に直動可能に設けられた前記移動部と、を備え、 前記リンク機構は、 前記アームに第一揺動軸線を中心に揺動可能に設けられ、且つ、前記移動部に第二揺動軸線を中心に揺動可能に設けられる第一リンク部材と、 前記第一リンク部材と前記支持部とを連結する第二リンク部材と、 を備える、請求項1又は2に記載の介助装置。 【請求項4】 前記第二リンク部材は、前記第一リンク部材と前記支持部とを連動させる連動状態と、 前記第一リンク部材と前記支持部とを非連動とする非連動状態とを許容し、 前記支持部は、前記第二リンク部材が前記非連動状態を許容されることにより、前記アームに対して前方に自由揺動可能である、請求項3に記載の介助装置。 【請求項5】 被介助者の移乗を介助する介助装置であって、 基台と、 前記基台に前後方向に揺動可能に設けられるアームと、 前記被介助者の身体の一部を支持し、前記アームに前後方向に揺動可能に設けられる支持部と、 前記基台に設けられ、第一端と第二端との間を移動する移動部を備える直動のアクチュエータと、 前記移動部が前記第一端から所定の中間位置まで移動するときに前記移動部の動きを前記アームに対する前記支持部の前方への揺動に伝達し、且つ、前記移動部が前記所定の中間位置から前記第二端まで移動するときに前記移動部の動きを前記基台に対する前記アームの前方への揺動に伝達するリンク機構と、を備え、 前記アクチュエータは、前記基台に揺動可能に設けられる本体部と、前記本体部に直動可能に設けられた前記移動部と、を備え、 前記リンク機構は、前記アームに第一揺動軸線を中心に揺動可能に設けられ、且つ、前記移動部に第二揺動軸線を中心に揺動可能に設けられる第一リンク部材と、前記第一リンク部材と前記支持部とを連結する第二リンク部材と、を備え、 前記第二リンク部材は、前記第一リンク部材と前記支持部とを連動させる連動状態と、 前記第一リンク部材と前記支持部とを非連動とする非連動状態とを許容する可撓部材であり、前記支持部が自由揺動する際に前記第一リンク部材と前記支持部との間で撓み変形し、 前記支持部は、前記第二リンク部材が前記非連動状態を許容されることにより、前記アームに対して前方に自由揺動可能である、介助装置。 【請求項6】 前記介助装置は、さらに、前記基台に対する前記アームの揺動角度を規制するストッパを備える、請求項1-5の何れか一項に記載の介助装置。」 第4 引用文献の記載事項等 1 引用文献1について 引用文献1には、図面とともに以下の記載がある。 (1)「【技術分野】 【0001】 本発明は、自力での立ち上がりや移動が困難な老人や傷病者などの被介護者に対する、座位と立位の移行などといった介護者の介護作業を補助する介護者補助装置に関するものである。」 (2)「【背景技術】 【0002】 従来から、自力での立ち上がりや移動が困難な被介護者をベッドや椅子などから移動させる際などに、介護者が被介護者を端座位から抱き上げる介護作業が行われている。具体的には、被介護者と向い合せに対峙した介護者が、前傾姿勢で被介護者の腋に腕を差し入れて支えた状態から徐々に姿勢を起すことにより、被介護者を抱き上げることができる。 【0003】 ところで、このような介護作業において、介護者には、被介護者の抱き上げに大きな力が求められることから、介護者と被介護者の体格などによっては、介護作業が困難であったり、介護者が腰などを痛めてしまうという問題があった。」 (3)「【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、介護者が被介護者の抱き上げによる移乗や姿勢変化などの介護作業を行う際に、介護者の肉体的な負担を簡単かつコンパクトな装置によって低減することができると共に、被介護者に痛みや不安などを与えることなく介護作業を行うことができる、新規な構造の介護者補助装置を提供することにある。」 (4)「【0045】 また、台車部16にはフレーム部18が取り付けられている。フレーム部18は、図5?8に示すように、ベース24と同様の金属などで形成された高剛性の部材であって、支柱部36を備えている。支柱部36は、ベース24から上方に突出する中空乃至は中実の長手形状とされており、本実施形態では、略矩形筒状とされた支柱上部38の下端部が略矩形筒状とされた支柱下部40の上端部に挿入された構造を有している。・・・ 【0047】 また、台車部16のベース24には、アクチュエータ20が取り付けられている。アクチュエータ20は、シリンダ部50とそれに一部を挿入されたピストン部52とを有する一般的な構造のものであって、油圧や空気圧、電気などによってピストン部52がシリンダ部50に対して長さ方向で変位することにより、伸縮による所定の出力が発揮されるようになっている。更に、アクチュエータ20は、シリンダ部50の下端がベース24に対してピン接合されており、ベース24に対して前後方向へ傾動可能とされている。」 (5)「【0089】 また、リンク機構は、必ずしも4つのリンクからなるリンク機構に限定されるものではなく、例えば、5つ以上のリンクからなる構造も採用可能である。具体的には、例えば、図12に示された本発明の第三の実施形態としての介護者補助装置120では、5リンクのリンク機構122が例示されている。このリンク機構122は、前記第一の実施形態の4リンク機構(58)における下側の横リンク(60b)が長さ方向中間部分で分割されてジョイントとしての連結ピン62で傾動可能にピン接合されたような構造を有している。 【0090】 より具体的には、リンク機構122は、5つのリンク124a,124b,124c,124d,124eが五角形の各辺をなすように配されて両端部分を連結ピン62でピン接合された構造を有しており、それら5つのリンク124a,124b,124c,124d,124eが相対傾動することで出力動作が得られるようになっている。また、リンク124aが支柱部36に固定されて上下に延びていると共に、リンク124aの下端に後端を接続されたリンク124bの中央部分には、アクチュエータ20の上端がピン接合されている。更に、リンク124bの前端にピン接合されたリンク124cは、リンク124bと成す角の大きさα(図12(i)参照)が制限されており、例えば100°≦α≦180°とされている。更にまた、リンク124aの上端にピン接合されたリンク124eは、リンク124aと成す角の大きさβ(図12(i)参照)が制限されており、例えば90°≦β≦180°とされている。なお、本実施形態では、リンク124eに胴補助部66が設けられていると共に、リンク124dにサポート部68が設けられている。 【0091】 このような5つのリンク124を備えるリンク機構122においても、前記実施形態の4リンク機構と同様に、アクチュエータ20の伸縮出力によって、リンク機構122の出力動作が生じるようになっている。即ち、図12(i)に示す初期状態からアクチュエータ20が伸長変形すると、先ず、リンク124bとリンク124cの相対的な傾斜角度αがアクチュエータ20の伸長に伴って180°まで徐々に大きくなって、図12の(i)と(ii)に示すように、リンク124dの水平に対する傾斜角度が小さくなることで、リンク124dに設けられたサポート部68が被介護者14の腹部を押し上げて被介護者14の上体を前傾させる。 【0092】 さらに、リンク124bとリンク124cの相対的な傾斜角度αが180°より大きくならないことから、アクチュエータ20が更に伸長すると、リンク124bとリンク124cの水平に対する傾斜角度が大きくなる。これにより、図12の(iii)?(v)に示すように、リンク124dが上方へ変位すると共に、リンク124eのリンク124aに対する相対的な傾斜角度βが90°から180°まで大きくなる。その結果、リンク124eに設けられた胴補助部66が略水平から垂直まで傾動して、介護者12の上体が胴補助部66で押されて起されると共に、被介護者14の上体がサポート部68で押されて上方に持ち上げられる。これらによって、被介護者14が座った状態から抱き上げられて、少なくとも座面から持ち上げられた移乗可能状態に移行せしめられるようになっている。」 図3 図12 (6)上記(1)、(3)及び(5)の【0089】の記載によれば、介護者補助装置120は、被介護者の移乗などの介護作業を補助すると認められ、上記(4)、(5)及び図12の記載によれば、介護者補助装置120は、ベース24と、支柱部36と、アクチュエータ20と、リンク機構122とを有すること、リンク124eは、リンク124aに前後方向に揺動可能にピン接合されること、リンク124dは、サポート部68が設けられ、リンク124eに前後方向に揺動可能にピン接合されること、及び、サポート部68は、被介護者の腹や上体を支持することが認められる。 (7)上記(4)、(5)及び図12の記載によれば、支柱部36は、ベース24から上方に突出すること、アクチュエータ20は、ベース24に取り付けられ、最短の位置と最長の位置との間を変位するピストン部52を有すること、アクチュエータ20は、ベース24に対してピン接合されるシリンダ部50と、シリンダ部50に対して長さ方向で変位するピストン部52とを有すること、及び、リンク機構122は、ピストン部52が最短の位置から中間の位置まで変位するとき、ピストン部52の変位をリンク124eに対するサポート部68の上方への揺動に伝達しつつ、ベース24に対するリンク124eの一定の姿勢を維持し、且つ、ピストン部52が中間の位置から最長の位置まで変位するとき、ピストン部52の変位をベース24に対するリンク124eの前方への揺動に伝達しつつ、サポート部68のリンク124eに対する角度を狭くすることが認められる。 (8)上記(5)?(7)を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下、引用発明)という。)が記載されていると認められる。 「被介護者の移乗などの介護作業を補助する介護者補助装置120であって、 ベース24と、 ベース24から上方に突出する支柱部36と ベース24に取り付けられ、最短の位置と最長の位置との間を変位するピストン部52を有するアクチュエータ20と、 5つのリンク124a,124b,124c,124d,124eが五角形の各辺をなすように配されて両端部分を連結ピン62でピン接合された構造を有するリンク機構122と、 を有し、 アクチュエータ20は、ベース24に対してピン接合されるシリンダ部50と、シリンダ部50に対して長さ方向で変位するピストン部52とを有し、 リンク124aは、支柱部36に固定されて上下に延びており、 リンク124eは、リンク124aに前後方向に揺動可能にピン接合され、 リンク機構122は、ピストン部52が最短の位置から中間の位置まで変位するとき、ピストン部52の変位をリンク124eに対するサポート部68の上方への揺動に伝達しつつ、ベース24に対するリンク124eの一定の姿勢を維持し、且つ、ピストン部52が中間の位置から最長の位置まで変位するとき、ピストン部52の変位をベース24に対するリンク124eの前方への揺動に伝達しつつ、サポート部68のリンク124eに対する角度を狭くする、 介護者補助装置120。」 2 引用文献2について 引用文献2には、図面とともに以下の記載がある。 (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、脚腰の筋力が弱った老人、肢体不自由者等を、ベッドから車椅子、あるいは便座等へ相互移乗する際に介助者の補助をする機能を備えた車椅子に関する。」 (2)「【0026】この支持軸5に直交して一対のアームレスト6を凸設し、先端部にはハンドル9と後述するボディサポータ(以下BSという)7を着脱自在に装着している。このハンドル9には凸状の係止部(図示せず)を一体に形成しており、アームレスト6の先端面に形成した凹部(図示せず)に係止し、適宜なロック機構によって固定している。・・・ 【0028】BS7は、車椅子を通常の移動用として使用する場合は、車椅子後部に装着して背もたれとして使用し、ベッド等から車椅子へ移乗する場合には、車椅子の前部に装着し、被介助者の上体を支持する部材として使用する。このBS7は、被介助者の胸背部を支持する上部7aと、被介助者の腹腰部を支持する下部7bと、これら上部7aと下部7bとを屈曲自在に連結する継手部7cとからなる。・・・」 図1 図2 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、後者の「被介護者」は、前者の「被介助者」に相当し、以下同様に、「移乗などの介護作業」は「移乗」に、「補助する」ことは「介助する」ことに、「介護者補助装置120」は「介助装置」に、「ベース24」及び「支柱部36」は「基台」に、「取り付けられ」ることは「設けられ」ること、「最短の位置」は「第一端」に、「最長の位置」は「第二端」に、「変位する」ことは「移動する」ことに、「ピストン部52」は「移動部」に、「有する」ことは「備える」ことに、「アクチュエータ20」は「直動のアクチュエータ」に、「リンク機構122」は「リンク機構」に、「リンク124e」は「アーム」に、「中間の位置」は「所定の中間位置」に、それぞれ相当する。 後者の「ベース24に取り付けられ、最短の位置と最長の位置との間を変位するピストン部52を有するアクチュエータ20」は、前者の「前記基台に設けられ、第一端と第二端との間を移動する移動部を備える直動のアクチュエータ」に相当する。 後者の「被介護者の腹や上体を支持する」ことは、前者の「被介助者の身体の一部を支持」することに相当し、後者の「サポート部68」は、リンク124dに設けられ、リンク124dはリンク124eに前後方向に揺動可能にピン接合されるから、後者の「被介護者の腹や上体を支持するサポート部68」は、前者の「被介助者の身体の一部を支持し、前記アームに前後方向に揺動可能に設けられる支持部」に相当する。 後者の「リンク124e」は、支柱部36に固定されて上下に延びているリンク124aに、前後方向揺動可能にピン接合されるものであるから、前者の「前記基台に前後方向に揺動可能に設けられるアーム」とは、「前記基台に対して前後方向に揺動可能に設けられるアーム」という点で共通している。 後者の「ピストン部52が最短の位置から中間の位置まで変位するとき」は、前者の「前記移動部が前記第一端から所定の中間位置まで移動するとき」に相当し、後者の「ベース24に対するリンク124eの一定の姿勢を維持」することは、前者の「前記基台に対する前記アームの一定の姿勢を維持する」ことに相当し、後者の「ピストン部52が中間の位置から最長の位置まで変位するとき」は、前者の「前記移動部が前記所定の中間位置から前記第二端まで移動するとき」に相当し、後者の「ピストン部52の変位をベース24に対するリンク124eの前方への揺動に伝達」することは、前者の「前記移動部の動きを前記基台に対する前記アームの前方への揺動に伝達」することに相当し、後者の「ピストン部52の変位をリンク124eに対するサポート部68の上方への揺動に伝達」することと前者の「前記移動部の動きを前記アームに対する前記支持部の前方への揺動に伝達」することは、「前記移動部の動きを前記アームに対する前記支持部の」「揺動に伝達」することで共通する。 そうすると、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりとなる。 <一致点> 「被介助者の移乗を介助する介助装置であって、 基台と、 前記基台に対して前後方向に揺動可能に設けられるアームと、 前記被介助者の身体の一部を支持し、前記アームに前後方向に揺動可能に設けられる支持部と、 前記基台に設けられ、第一端と第二端との間を移動する移動部を備える直動のアクチュエータと、 前記移動部が第一端から所定の中間位置まで移動するときに、前記移動部の動きを前記アームに対する支持部の揺動に伝達しつつ、前記基台に対する前記アームの一定の姿勢を維持し、且つ、前記移動部が所定の中間位置から第二端まで移動するときに、前記移動部の動きを前記基台に対する前記アームの前方への揺動に伝達するリンク機構と、 を備える、介助装置。」 <相違点1> アームについて、本願発明1は、「基台」に設けられるのに対し、引用発明は、リンク124aを介して支柱部36(基台)に設けられる点。 <相違点2> リンク機構において、移動部が第一端から所定の中間位置まで移動するときに、本願発明1は、移動部の動きをアームに対する支持部の「前方」への揺動に伝達するのに対し、引用発明は、ピストン部52(移動部)の動きをリンク124e(アーム)に対するサポート部68(支持部)の上方への揺動に伝達し、移動部が所定の中間位置から第二端まで移動するときに、本願発明1では、「支持部がアームに対する一定の姿勢を維持するようにアームに対する支持部の後方への揺動を規制する」のに対し、引用発明では、サポート部68(支持部)のリンク124e(アーム)に対する角度を狭くする点。 (2)判断 ア 新規性について 上記(1)で説示したとおり、本願発明1と引用発明とには、実質的な相違点(相違点1,2)があるから、本願発明1は、引用発明ではない。 イ 進歩性について 事情に鑑み、まず相違点2について検討する。 引用発明において、リンク機構122での、リンク124e(アーム)やサポート部68(支持部)が設けられたリンク124dの動きは、リンク機構122の構造によって制約されるところ、リンク124dやリンク124eの動きを、相違点2に係る本願発明1の構成のように変更することについては、引用文献1には、何ら記載も示唆もない。また、上記変更することや相違点2に係る本願発明1の構成自体が、本願出願前の技術常識や周知技術であると認めるに足る証拠もない。 なお、原査定において、請求項4に対して提示された引用文献2には、車椅子にボディサポータ7を着脱自在に装着し、ボディサポータ7は、車椅子を通常の移動用として使用する場合は、車椅子後部に装着して背もたれとして使用し、ベッド等から車椅子へ移乗する場合には、車椅子の前部に装着し、被介助者の上体を支持する部材として使用することは記載されているが、相違点2に係る本願発明1の構成について、何ら記載も示唆もない。 よって、当業者であっても、引用発明において、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、容易に想到し得たことであるとは認められない。 以上によれば、相違点1を検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 本願発明2?4,6について 本願発明2?4及び請求項1を直接的又は間接的に引用する本願発明6は、本願発明1の構成を全て含み、更なる限定をするものであるから、上記1(2)で説示したのと同様に、請求項1を直接的又は間接的に引用する本願発明6は引用発明ではなく、本願発明2,3及び請求項1を直接的又は間接的に引用する本願発明6も、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、引用文献2には、相違点2に係る本願発明1の構成について、何ら記載も示唆もないから、本願発明4は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 原査定について 上記第5で説示したとおり、本願発明1及び請求項1を直接的又は間接的に引用する本願発明6は、引用発明ではなく、本願発明1?3及び請求項1を直接的又は間接的に引用する本願発明6は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、本願発明4は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、原査定の拒絶理由は維持できない。 なお、原査定は、本願発明5及び請求項5を引用する本願発明6を対象としていない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-09-14 |
出願番号 | 特願2019-505572(P2019-505572) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(A61G)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 井出 和水 |
特許庁審判長 |
島田 信一 |
特許庁審判官 |
藤井 昇 八木 誠 |
発明の名称 | 介助装置 |
代理人 | 特許業務法人 共立 |