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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1378253
審判番号 不服2020-15476  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-09 
確定日 2021-09-16 
事件の表示 特願2019-117674号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 9月12日出願公開、特開2019-150727号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成26年7月24日(以下「遡及日」という。)に出願した特願2014-150944号の一部を平成30年4月12日に新たな特許出願とした特願2018-76498号の一部をさらに新たな特許出願(特願2019-117674号)としたものであって、令和2年3月16日付けで拒絶理由が通知され、同年4月8日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月21日付け(謄本送達日:同年9月1日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対し、同年11月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年11月9日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についてする補正を含むものであって、令和2年4月8日提出の手続補正書によって補正された本件補正前の請求項1に、
「遊技結果に関連した変動表示ゲームを実行可能な変動表示ゲーム実行手段と、
遊技の進行に伴い演出を実行する演出実行手段と、
前記演出実行手段により実行され得る複数種類の演出と、当該演出ごとに選択率の基準となる数値範囲とを対応付けて規定する演出選択率規定手段と、
前記複数種類の演出からいずれかの演出を選択するための数値を取得する数値取得手段と、
前記演出の選択率を変更するための変更値を決定し、当該変更値を設定する変更値設定手段と、
前記演出選択率規定手段に規定された前記複数種類の演出の各々に対応する数値範囲と、前記数値取得手段により取得された数値と、前記変更値設定手段により設定された変更値とに基づいて、前記複数種類の演出からいずれかの演出を選択する演出選択手段と、
前記演出選択手段により選択された演出を前記演出実行手段に実行させる制御を行う演出実行制御手段と、
を備え、
前記演出実行制御手段は、
前記演出選択手段が第1の演出パターンを選択した場合に当該第1の演出パターンが選択されたことを遊技者に報知可能な第1の画像を前記演出実行手段に表示可能であり、
前記演出選択手段が前記第1の演出パターンとは異なる第2の演出パターンを選択した場合に当該第2の演出パターンが選択されたことを遊技者に報知可能な第2の画像を前記演出実行手段に表示可能であり、
前記第1の画像及び前記第2の画像は、前記変動表示ゲームの実行中に表示可能な画像であるとともに、前記変動表示ゲームの結果として当り結果、又は、はずれ結果となる場合の何れの場合であっても表示可能な画像であることを特徴とする遊技機。」とあったものを、

「遊技結果に関連した変動表示ゲームを実行可能な変動表示ゲーム実行手段と、
遊技の進行に伴い演出を実行する演出実行手段と、
前記演出実行手段により実行され得る複数種類の演出と、当該演出ごとに選択率の基準となる数値範囲とを対応付けて規定する演出選択率規定手段と、
前記複数種類の演出からいずれかの演出を選択するための数値を取得する数値取得手段と、
前記演出の選択率を変更するための変更値を決定し、当該変更値を設定する変更値設定手段と、
前記演出選択率規定手段に規定された前記複数種類の演出の各々に対応する数値範囲と、前記数値取得手段により取得された数値と、前記変更値設定手段により設定された変更値とに基づいて、前記複数種類の演出からいずれかの演出を選択する演出選択手段と、
前記演出選択手段により選択された演出を前記演出実行手段に実行させる制御を行う演出実行制御手段と、
を備え、
前記演出実行制御手段は、
前記演出選択手段により第1の演出パターンが選択されたことに応じて当該第1の演出パターンが選択されたことを遊技者に報知する第1の画像を前記演出実行手段に表示可能であり、
前記演出選択手段により前記第1の演出パターンとは異なる第2の演出パターンが選択されたことに応じて当該第2の演出パターンが選択されたことを遊技者に報知する第2の画像を前記演出実行手段に表示可能であり、
前記第1の画像及び前記第2の画像は、前記変動表示ゲームの実行中に表示可能な画像であるとともに、前記変動表示ゲームの結果として当り結果、又は、はずれ結果となる場合の何れの場合であっても表示可能な画像であることを特徴とする遊技機。」とする補正を含むものである(なお、下線は補正前後の箇所を明示するために合議体が付した。下記2についても同様。)。

2 補正の適否について
(1) 補正の目的
ア 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記演出選択手段が第1の演出パターンを選択した場合に当該第1の演出パターンが選択されたことを遊技者に報知可能な第1の画像を前記演出実行手段に表示可能であり、」を「前記演出選択手段により第1の演出パターンが選択されたことに応じて当該第1の演出パターンが選択されたことを遊技者に報知する第1の画像を前記演出実行手段に表示可能であり、」とするものである。
そうすると、本件補正は、本件補正前の「前記演出選択手段が第1の演出パターンを選択した場合に」を「前記演出選択手段により第1の演出パターンが選択されたことに応じて」と表現を単に変えるとともに、本件補正前の「第1の画像」が「第1の演出パターンが選択されたことを遊技者に」「報知可能な」ものから、「報知する」ものに限定するものである。

イ 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記演出選択手段が前記第1の演出パターンとは異なる第2の演出パターンを選択した場合に当該第2の演出パターンが選択されたことを遊技者に報知可能な第2の画像を前記演出実行手段に表示可能であり、」を「前記演出選択手段により前記第1の演出パターンとは異なる第2の演出パターンが選択されたことに応じて当該第2の演出パターンが選択されたことを遊技者に報知する第2の画像を前記演出実行手段に表示可能であり、」とするものである。
そうすると、本件補正は、本件補正前の「前記演出選択手段が前記第1の演出パターンとは異なる第2の演出パターンを選択した場合に」を「前記演出選択手段により前記第1の演出パターンとは異なる第2の演出パターンが選択されたことに応じて」と表現を単に変えるとともに、本件補正前の「第2の画像」が「第1の演出パターンが選択されたことを遊技者に」「報知可能な」ものから、「報知する」ものに限定するものである。

ウ 上記ア及びイからみて、本件補正は、全体として、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含む。

(2)新規事項
本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面における【0432】ないし【0434】及び図49等の記載に基づくものであり、新たな技術事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)についても、以下、検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明を再掲すると、次のとおりのものである(なお、AないしIについては、分説するため合議体が付した。以下A等を付した事項を「特定事項A」等という。)。

「A 遊技結果に関連した変動表示ゲームを実行可能な変動表示ゲーム実行手段と、
B 遊技の進行に伴い演出を実行する演出実行手段と、
C 前記演出実行手段により実行され得る複数種類の演出と、当該演出ごとに選択率の基準となる数値範囲とを対応付けて規定する演出選択率規定手段と、
D 前記複数種類の演出からいずれかの演出を選択するための数値を取得する数値取得手段と、
E 前記演出の選択率を変更するための変更値を決定し、当該変更値を設定する変更値設定手段と、
F 前記演出選択率規定手段に規定された前記複数種類の演出の各々に対応する数値範囲と、前記数値取得手段により取得された数値と、前記変更値設定手段により設定された変更値とに基づいて、前記複数種類の演出からいずれかの演出を選択する演出選択手段と、
G 前記演出選択手段により選択された演出を前記演出実行手段に実行させる制御を行う演出実行制御手段と、
を備え、
G1 前記演出実行制御手段は、
前記演出選択手段により第1の演出パターンが選択されたことに応じて当該第1の演出パターンが選択されたことを遊技者に報知する第1の画像を前記演出実行手段に表示可能であり、
G2 前記演出選択手段により前記第1の演出パターンとは異なる第2の演出パターンが選択されたことに応じて当該第2の演出パターンが選択されたことを遊技者に報知する第2の画像を前記演出実行手段に表示可能であり、
H 前記第1の画像及び前記第2の画像は、前記変動表示ゲームの実行中に表示可能な画像であるとともに、前記変動表示ゲームの結果として当り結果、又は、はずれ結果となる場合の何れの場合であっても表示可能な画像である
I ことを特徴とする遊技機。」

(2)引用例、引用発明
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願の遡及日前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012-75616号公報(平成24年4月19日出願公開、以下「引用例」という。)には、遊技機(発明の名称)に関し、次の事項が図とともに記載されている(なお、下線は引用発明等の認定に関連する箇所を明示するために合議体が付した。以下同様。)。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、判定図柄を確定表示する前の変動表示中に各種演出を行うようにした遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の遊技機としては、判定図柄の変動表示中に行われる各種表示演出の中に、希にしか出現しない特別表示演出を設定したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
・・・略・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述した従来の遊技機では、特別表示演出の出現頻度が低調なまま遊技が進行するため、遊技に詳しい遊技者は特別表示演出の出現を当初から期待しておらず、特別表示演出に対する鑑賞意欲を喚起することが困難であった。これに対し、特別表示演出の出現頻度を単に上げてしまうと、その希少性が損なわれるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、特別表示演出の希少性を保ちつつ特別表示演出に対する鑑賞意欲を喚起することが可能な遊技機の提供を目的とする。」

イ 「【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の「遊技機」としてのパチンコ遊技機10に係る一実施形態を、図1?図32に基づいて説明する。図1に示すように、パチンコ遊技機10の遊技盤11には、遊技媒体としての遊技球を誘導可能な誘導レール12に囲まれた略円形の遊技領域R1が設けられている。
・・・略・・・
【0049】
具体的には、特別図柄表示装置34には、図1に示すように、通常、3つの左、中、右の特別図柄32A,32B,32Cが横並びに停止表示されている。これら各特別図柄32A,32B,32Cは、例えば、「0」?「11」の数字を表記した複数種類のもので構成されており、通常は、各特別図柄32A,32B,32Cごと、所定の種類のものが停止表示されている。そして、始動入賞口14A,14Bに遊技球が入賞したときに、これら3つの特別図柄32A,32B,32Cが、上下方向にスクロール表示され、所定時間後に、例えば、左、右、中の順で各特別図柄32A,32B,32Cが停止表示される。当否判定結果が大当たり(以下、「特別図柄当たり」という)の場合には、各特別図柄32A,32B,32Cが全て同じ図柄(ゾロ目)で停止表示され、遊技が「大当たり状態」に移行する。これに対し、当否判定結果が外れ(以下、「特別図柄外れ」という)の場合には、ゾロ目以外の組み合わせで停止表示され、通常の遊技状態が続行する。なお、特別図柄32A,32B,32Cは、本発明の「判定図柄」に相当し、特別図柄表示装置34は、本発明の「表示部」に相当する。
・・・略・・・
【0093】
図10に示すように、特別図柄選択処理(S204)に次いで、特別図柄変動態様選択処理(S205)を実行する。この処理(S205)は、図13に示されており、特別図柄当否判定の結果やリーチの有無等に基づいて、特別図柄32A,32B,32Cが停止表示するまでの変動表示態様に関するデータを選択する。なお、特別図柄変動態様選択処理(S205)は、本発明の「演出態様選択手段」に相当する。」

ウ 「【0125】
以下、図25?図30を参照しつつメインコマンド解析処理(S583)について詳説する。図25に示すように、メインコマンド解析処理(S583)では先ず、主制御基板50から受信したコマンドが、特別図柄32A,32B,32Cの変動表示に関するコマンドであるか否かを判断する(S600)。変動表示に関するコマンド以外である場合(S600でNo)には、そのコマンドに対応したその他の設定処理(S601)を行ってこの処理(S583)を抜ける。
【0126】
一方、特別図柄32A,32B,32Cの変動表示に関するコマンドであれば(S600でYes)、変動中予告抽選処理(S602)を行って予告演出を選択する。「予告演出」とは、特別図柄32A,32B,32Cの変動表示中に行われる表示演出であって、例えば、リーチ発生や特別図柄当たりに対する期待を高めるための前兆演出である。そして、変動中予告抽選処理(S602)は、予め設定された複数種類の予告演出態様データ(本発明の「表示演出態様データ」に相当する)の中から、1つの予告演出態様データを選択するための処理である。本実施形態では、例えば、5つの予告演出が設定されている。このうち、予告演出1?4は、特別図柄当否判定の結果に関係なく選択され得る通常の予告演出であって、例えば、遊技内容に関連したアニメーション映像となっている。これに対し、予告演出5は「特別図柄当たり」でかつ後述する条件を満たした場合だけ選択される予告演出(プレミア演出)であって、例えば、遊技内容に関連する実写映像となっている。つまり、予告演出態様データ1?4は、比較的頻繁に選択されるのに対し、予告演出態様データ5は、他の予告演出態様データに比べて選択され難くなっている。予告演出態様データ1?4は本発明の「第一の演出」及び「通常表示演出態様データ」に相当し、予告演出態様データ5は本発明の「第二の演出」及び「特別表示演出態様データ」に相当する。また、変動中予告抽選処理(S602)は本発明の「演出選択率変更手段」に相当する。
【0127】
変動中予告抽選処理(S602)は、図26に示されており先ず、RAM52Bに記憶された現在のゲームキャラクターのレベルを読み出して対応する可変数値(補正値)をセットする(S700)。本実施形態では、例えば、図32(B)に示すように、9段階のレベルG?EXが設定され、各レベル毎にそれぞれ異なる可変数値が設定されている。例えば、最低のレベルGの可変数値は「0」であり、レベルアップに従って可変数値が大きくなり、最高のレベルEXでは「120」となっている。後に詳説するが、ゲームキャラクターのレベル、即ち、可変数値は、遊技の進行過程で更新可能となっている。ステップS700の処理は、本発明の「数値可変設定手段」に相当する。
【0128】
可変数値をセットしたら、演出選択用カウンタ(ラベル-TRND-E)の値を取得し、これを「演出選択値」としてRAM52Bに記憶する(S701)。
【0129】
次に、演出選択値(演出選択用カウンタの取得値)に、上記ステップS700でセットした可変数値を加算(合算)して演出選択値を補正し、その補正された演出選択値をRAM52Bに記憶する(S702)。なお、ステップS701は、本発明の「取得手段」に相当し、ステップS702は、本発明の「補正手段」に相当する。以下、補正前後の演出選択値を区別するため、補正前を「演出選択値A」とし、補正後を「演出選択値B」という。
【0130】
ここで、演出選択値A及び演出選択値Bになり得る数値の個数は共に「100個」で一定であるが、演出選択値Bの「上下限値」は加算(合算)される可変数値によって変化する。即ち、例えば、可変数値が「10」の場合、演出選択値Bは、演出選択値Aに対して「10」底上げされるので、演出選択値Bになり得る数値は「10?109」となる。また、可変数値が「120」の場合、演出選択値Bは、演出選択値Aに対して「120」底上げされるので、演出選択値Bになり得る数値は「120?219」となる。ここで、可変数値が「0」の場合(レベルGの場合)は、可変数値の加算(合算)前後の演出選択値A,Bが同一であり、演出選択値Bは実質的に補正されたことにはならない。
【0131】
図26に戻って説明を続けると、演出選択値A及び演出選択値Bの設定が済んだら、予告演出を行う変動態様が「当たり変動態様」(変動態様1又は変動態様2)か否かを判定する(S703)。当たり変動態様である場合(S703でYes)には、可変数値によって補正した演出選択値Bを使用して大当たり予告選択処理(S704)を行う。一方、外れ変動態様(変動態様3?6)である場合(S703でNo)には、演出選択用カウンタ(ラベル-TRND-E)の取得値そのものである(未補正の)演出選択値Aを使用して外れ予告選択処理(S705)を行う。そして、これら選択処理(S704又はS705)で選択された予告演出態様データをRAM52Bの送信バッファにセット(S706)してこの処理(S602)を抜ける。なお、ステップS704,S705は、本発明の「演出態様選択手段」、「演出選択手段」に相当する。
【0132】
図29に示すように、外れ予告選択処理(S705)では、選択された変動態様が「変動態様3」?「変動態様6」のうちのどれであるかを判定し(S900?S902)、各変動態様3?6毎に個別設定された演出振分テーブルTb3?Tb6(図32(A)参照)と演出選択値Aとに基づいて予告選択処理(S903?S906)が行われる。なお、図32(A)における「予告1」、「予告2」・・・等は、それぞれ「予告演出態様データ1及び予告演出1」、「予告演出態様データ2及び予告演出2」・・・を意味する。
【0133】
変動態様3?6の予告抽選処理(S903?S906)で行われる処理内容は同一である。以下、変動態様5(確変中のリーチ外れ)の予告抽選処理(S905)を例に挙げて説明する。図30に示すように、予告抽選処理(S905)では先ず、演出選択値Aをセット(S910)し、これを演出振分テーブルTb5(図32(A)参照)の予告演出態様データ1に割り振られた振分数値1(具体的には例えば、「40」)と比較する(S911)。演出選択値Aが振分数値1未満である場合(S911でYes)は、予告演出態様データ1(予告演出1)を選択する(S912)。一方、演出選択値Aが振分数値1以上である場合(S911でNo)は、その演出選択値Aから振分数値1を減算した値を新たな演出選択値Aとして更新する(S913)。
【0134】
次に、ステップS913で更新された演出選択値Aを、予告演出態様データ2(予告演出2)に割り振られた振分数値2(具体的には例えば、「30」)と比較する(S914)。更新後の演出選択値Aが振分数値2未満である場合(S914でYes)は、予告演出態様データ2を選択する(S915)一方、演出選択値Aが振分数値2以上である場合(S914でNo)は、その演出選択値Aから振分数値2を減算した値を新たな演出選択値Aとして更新する(S916)。
【0135】
次に、ステップS916で更新された演出選択値Aを、予告演出態様データ3(予告演出3)に割り振られた振分数値3(具体的には例えば、「25」)と比較する(S917)。更新後の演出選択値Aが振分数値3未満である場合(S917でYes)は、予告演出態様データ3を選択する(S918)一方、更新後の演出選択値Aが振分数値3以上である場合(S917でNo)は、予告演出態様データ4(予告演出4)を選択する(S919)。
【0136】
つまり、ステップS701(図26)にて取得された当初の演出選択値A(ラベル-TRND-E)が「0?39」の数値範囲に含まれる40個の数値の何れかに該当する場合に予告演出態様データ1を選択し、「40?69」の数値範囲に含まれる30個の数値の何れかに該当する場合に予告演出態様データ2を選択し、「70?94」の数値範囲に含まれる25個の数値の何れかに該当する場合に予告演出態様データ3を選択し、「95?99」の数値範囲に含まれる5個の数値の何れかに該当する場合に予告演出態様データ4を選択する。このときの選択率は、予告演出態様データ1?4の順に、「40/100」,「30/100」,「25/100」,「5/100」となる(図32(A)参照)。
【0137】
同様に、変動態様6(確変中のリーチ無し外れ)の予告選択処理(S906)では、例えば、当初の演出選択値Aが「0?34」の数値範囲に含まれる35個の数値の何れかに該当する場合に予告演出態様データ1を選択し、「35?59」の数値範囲に含まれる25個の数値の何れかに該当する場合に予告演出態様データ2を選択し、「60?89」の数値範囲に含まれる30個の数値の何れかに該当する場合に予告演出態様データ3を選択し、「90?99」の数値範囲に含まれる10個の数値の何れかに該当する場合に予告演出態様データ4を選択するように演出振分テーブルTb6が設定されている。選択率は図32(A)の「変動態様6」の欄に示す通りである。
【0138】
変動態様3(非確変リーチ外れ)の予告選択処理(S903)では、例えば、当初の演出選択値Aが「0?14」の数値範囲に含まれる15個の数値の何れかに該当する場合に予告演出態様データ1を選択し、「15?69」の数値範囲に含まれる55個の数値の何れかに該当する場合に予告演出態様データ2を選択し、「70?79」の数値範囲に含まれる10個の数値の何れかに該当する場合に予告演出態様データ3を選択し、「80?99」の数値範囲に含まれる20個の数値の何れかに該当する場合に予告演出態様データ4を選択するように演出振分テーブルTb3が設定されている。選択率は図32(A)の「変動態様3」の欄に示す通りである。
【0139】
変動態様4(非確変リーチ無し外れ)の予告選択処理(S904)では、例えば、当初の演出選択値Aが「0?39」の数値範囲に含まれる40個の数値の何れかに該当する場合に予告演出態様データ1を選択し、「40?69」の数値範囲に含まれる30個の数値の何れかに該当する場合に予告演出態様データ2を選択し、「70?94」の数値範囲に含まれる25個の数値の何れかに該当する場合に予告演出態様データ3を選択し、「95?99」の数値範囲に含まれる5個の数値の何れかに該当する場合に予告演出態様データ4を選択するように演出振分テーブルTb4が設定されている。選択率は図32(A)の「変動態様4」の欄に示す通りである。
【0140】
以上が、外れ予告選択処理(S705)である。このように、「特別図柄外れ」の場合には、予告演出態様データ1?4の何れかを選択し、予告演出態様データ5を選択しないように設定されている。なお、演出振分テーブルTb3?Tb6の振分数値(予告演出1?4の選択率、図32(A)参照)は、上記した設定値に限定するものではない。
・・・略・・・
【0148】
ここで、予告演出態様データ1?5の選択率は、演出選択値A(演出選択用カウンタの取得値)に加算(合算)された可変数値に応じて変化する。例えば、ゲームキャラクターが最低の「レベルG」で可変数値が「0」であった場合、即ち、演出選択値Bが実質的に補正されていない場合、演出選択値Bは「0?99」の数値範囲の何れかの値となり、その数値範囲で予告演出態様データ1?5が振り分けられる。従って、このときの予告演出態様データ1?5の選択率は、予告演出態様データ1?5の順に、「10/100」,「15/100」,「20/100」,「25/100」,「30/100」となる。」

エ 「【図32】




オ 「【0166】
さて、特別図柄表示装置34では、特別図柄32A,32B,32Cが停止表示する前の変動表示中に、特別図柄当たりやリーチ発生の期待度を高める予告演出が行われる。具体的には、特別図柄32A,32B,32Cの停止表示がぞろ目とならない(特別図柄外れ)の場合、「予告演出1」?「予告演出4」の中の何れかがランダムに選択されて実行される。「予告演出1」?「予告演出4」が行われると、遊技内容に関連するアニメーション映像が表示されて、特別図柄当たりやリーチへの期待感を高める。一方、特別図柄32A,32B,32Cの停止表示がゾロ目となる(特別図柄当たり)場合は、上記4つの予告演出に「予告演出5」を加えた5つの予告演出の中の何れかがランダムに選択されて実行される。「予告演出5」が行われると、「予告演出1」?「予告演出4」のようなアニメーション映像ではなく、遊技内容に関連する実写映像が表示されて、特別図柄当たりやリーチへの期待感を高める。
・・・略・・・
【0168】
また、予告演出5とは別の予告演出3が行われた場合には、特別図柄表示装置34上でミニゲームが行われる。ミニゲームでは特別図柄表示装置34にゲームキャラクターが登場し、遊技者は、そのゲームキャラクターを演出用入力スイッチ27Jを操作することで動かしてミニゲームのクリアを目指す。ミニゲームをクリアするとゲームキャラクターの獲得ポイントが上がってレベルアップに近づくので、仮に、「特別図柄当たり」や「予告演出5」に至らなくても、レベルアップに近づいたという満足感を与えることができる。このとき、獲得ポイントの増加やレベルアップを表示装置や音声等によって遊技者に報知してもよい。
【0169】
さて、パチンコ遊技機10の電源投入直後(初期状態)は、ゲームキャラクターのレベルが最低のレベルGになっている。本実施形態では、「特別図柄当たり」になればレベルに拘わらず「予告演出5」が出現する可能性があるが、最低レベルGではその出現確率は低調である。その理由は、レベルGに対応する可変数値は「0」であり、この可変数値を演出選択値A(演出選択用カウンタの取得値)に加算(合算)した演出選択値Bは演出選択値Aと同一、つまり実質的に補正されていないからである。具体的には、最低レベルGにおける予告演出5の出現確率は、非確変中の大当たり(変動態様1)の場合で「2/630×30/100=60/63000」であり、確変中の大当たり(変動態様2)の場合で「9/630×10/100=90/63000」となる。」

カ 「【0186】
[他の実施形態] 本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
・・・略・・・
【0191】
(4)上記実施形態では、予告演出3が行われかつミニゲームをクリアしたときに、レベルアップして可変数値が更新可能となるように構成されていたが、以下のような更新条件を含めてもよい。例えば、「特別図柄当たり」、「特別図柄外れ」、「普通図柄当たり」、「普通図柄外れ」の発生回数を更新条件に含めてもよい。「特別図柄外れ」や「普通図柄外れ」の発生回数を更新条件に含めれば、「外れ」によって薄れかけた遊技への興味を、特別表示演出(予告演出5)の出現によって回復することが可能になる。」

キ 上記アないしカから、引用例には、次の発明が記載されている。なお、aないしiについては本願補正発明の特定事項AないしIに概ね対応させて付与し、引用箇所の段落番号等を併記した。
「a 3つの特別図柄32A,32B,32Cが、上下方向にスクロール表示され、当否判定結果が大当たりの場合には、各特別図柄32A,32B,32Cが全て同じ図柄(ゾロ目)で停止表示され、当否判定結果が外れの場合には、ゾロ目以外の組み合わせで停止表示され(【0049】)、
b 特別図柄32A,32B,32Cが停止表示する前の変動表示中に、特別図柄当たりやリーチ発生の期待度を高める予告演出が行われる、特別図柄表示装置34(【0166】)と、
c 予告抽選処理は、変動態様5の予告抽選処理を例に挙げると(【0133】)、演出選択値Aが「0?39」の数値範囲に含まれる40個の数値の何れかに該当する場合に予告演出1に対応する予告演出態様データ1を選択し、「40?69」の数値範囲に含まれる30個の数値の何れかに該当する場合に予告演出2に対応する予告演出態様データ2を選択し、「70?94」の数値範囲に含まれる25個の数値の何れかに該当する場合に予告演出3に対応する予告演出態様データ3を選択し、「95?99」の数値範囲に含まれる5個の数値の何れかに該当する場合に予告演出4に対応する予告演出態様データ4を選択するものであり(【0133】ないし【0136】)、
d 演出選択用カウンタの値を取得し、これを「演出選択値」としてRAM52Bに記憶し(【0128】)、
e RAM52Bに記憶された現在のゲームキャラクターのレベルを読み出して対応する可変数値(補正値)をセットし(【0127】)、可変数値に応じて予告演出に対応する予告演出態様データ1?5の選択率を変化させ(【0133】ないし【0135】、【0148】)、
f 演出選択値(演出選択用カウンタの取得値)に、セットした可変数値を加算(合算)して演出選択値を補正し、その補正された演出選択値をRAM52Bに記憶し、補正前後の演出選択値を区別するため、補正前を「演出選択値A」、補正後を「演出選択値B」とし(【0129】)、当たり変動態様である場合には、可変数値によって補正した演出選択値Bを使用して大当たり予告選択処理を行い、外れ変動態様である場合には、演出選択値Aを使用して外れ予告選択処理を行うものであり(【0131】)、
g、g1、g2、h 5つの予告演出が設定されており、このうち、予告演出1?4は、特別図柄当否判定の結果に関係なく選択され得る通常の予告演出であって、例えば、遊技内容に関連したアニメーション映像となっているのに対し、予告演出5は「特別図柄当たり」で選択される予告演出(プレミア演出)であって、例えば、遊技内容に関連する実写映像となっている(【0126】)、
i パチンコ遊技機10(【0038】)。」(以下「引用発明」という。)

(3)周知例、周知技術
ア 原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用され、本願の遡及日前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2014-33893号公報(平成26年2月24日発行、以下「周知例1」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
遊技球が発射される遊技領域を備えた弾球遊技機に関する。」

(イ)「【0169】
次に、通常モードにおいて表示対象となるSP予告演出について詳細に説明する。 本実施例では上述のように、通常モードにおける比較的当り期待度の高い予告演出としてSP予告演出(「特定演出」に対応する)が含まれる。このSP予告演出は、装飾図柄190の擬似連続変動演出とともに表示される。ここで、「擬似連続変動演出」は、装飾図柄190の1回の変動時間(つまり特別図柄の変動時間)において擬似的に複数回の図柄変動が含まれるようにみせる演出である。SP予告演出は、この擬似連続変動演出ごとに敵キャラクタを登場させ、味方キャラクタと対戦させるSPバトルを表示させる。味方キャラクタが敵キャラクタに勝利すると、上述した「大当り1」を獲得することができる。このSP予告演出において味方キャラクタが勝利できる期待度(大当り期待度)は、SPバトルの種類(対戦相手となる敵キャラクタの種類)や、その対戦終盤に割り込むカットイン(「付加演出」に対応する)の種類により異なる傾向となる。このため、遊技者は、いずれの敵キャラクタが出現するか、いずれのカットインが出現するか等によって期待感が煽られるようになる。
【0170】
図26は、SP予告演出として表示されるSPバトルの種類と敵キャラクタとの関係を模式的に示す説明図である。図27は、SP予告演出において表示されるSPバトルの種類と、カットインの種類および属性との関係を模式的に示す説明図である。
【0171】
図26に示すように、本実施例ではSPバトルα,β,γの3種類が設けられる。SPバトルαにおける対戦相手は敵キャラクタAであり、SPバトルβにおける対戦相手は敵キャラクタBであり、SPバトルγにおける対戦相手は敵キャラクタCである。大当り期待度は、傾向としてSPバトルα<SPバトルβ<SPバトルγの順に高期待度となるよう設定されているが、カットインとの組み合わせによっても期待度は異なる。
【0172】
一方、図27に示すように、カットイン予告として、SPバトルαには剣のカットイン、SPバトルβには盾のカットイン、SPバトルγには鎧のカットインが設定されている。各カットインにはそれぞれ属性として色が異なる複数のカットインが含まれる。すなわち、「金」,「赤」,「緑」の属性が設定され、その大当り期待度は金>赤>緑の順に高期待度となるよう設定されている。したがって、遊技者は、各SPバトルにおいて金色のカットインが表示されると、大当り期待度が高いと認識することができる。」

(ウ)「【図26】


【図27】




イ 原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用され、本願の遡及日前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2014-79465号公報(平成26年5月8日発行、以下「周知例2」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技領域に設けられた始動領域を遊技媒体が通過したことに基づいて、各々を識別可能な複数種類の識別情報の可変表示を行う可変表示手段に予め定められた特定表示結果が導出されたときに、遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御する遊技機に関する。」

(イ)「【0062】
また、本実施例では、このような先読み予告演出とは別に、変動表示が実行されるときに、当該変動表示の変動パターンや変動表示結果に基づいて、当該変動表示結果が「大当り」となる可能性などが予告される変動中予告演出(キャラクタ予告演出またはセリフ予告演出)が実行されるようになっている。」

(ウ)「【0328】
このステップS800の処理では、例えば図34(A)に示すような決定割合で、キャラクタ予告パターンが決定されればよい。図34(A)に示す決定割合の設定例では、当該変動表示の変動表示結果が「ハズレ(その他)」、「ハズレ(スーパーリーチ)」、「大当り」、「小当り」のいずれであるかに応じて、キャラクタ予告パターンの決定割合を異ならせている。
【0329】
具体的には、当該変動表示の変動表示結果が「ハズレ(その他)」の場合には、キャラクタAの予告パターンに決定される割合が60%、キャラクタBの予告パターンに決定される割合が30%、キャラクタCの予告パターンに決定される割合が10%に設定され、当該変動表示の変動表示結果が「ハズレ(スーパーリーチ)」の場合には、キャラクタAの予告パターンに決定される割合が50%、キャラクタBの予告パターンに決定される割合が35%、キャラクタCの予告パターンに決定される割合が5%に設定され、当該変動表示の変動表示結果が「大当り」の場合には、キャラクタAの予告パターンに決定される割合が5%、キャラクタBの予告パターンに決定される割合が30%、キャラクタCの予告パターンに決定される割合が65%に設定され、当該変動表示の変動表示結果が「小当り」の場合には、キャラクタAの予告パターンに決定される割合が40%、キャラクタBの予告パターンに決定される割合が35%、キャラクタCの予告パターンに決定される割合が25%に設定されている。
【0330】
つまり、本実施例では、当該変動表示の変動表示結果が大当りとなる可能性(期待度)は、キャラクタAの予告パターン<キャラクタBの予告パターン<キャラクタCの予告パターンの順となるように設定されており、キャラクタCの予告パターンのキャラクタ予告演出が実施された場合には、キャラクタ予告演出が実施されない場合や、キャラクタAの予告パターンやキャラクタBの予告パターンのキャラクタ予告演出が実施された場合よりも、当該変動表示で大当りとなる可能性が高くなる。」

(エ)「【図34】




ウ 上記ア及びイに示された周知例1及び2の記載からみて、以下の事項が周知であると認められる。
「変動表示中に実行される複数の演出パターンにそれぞれ対応したキャラクタ等の画像を表示する、遊技機。」(以下「周知技術」という。)

(4)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する(見出し(a)ないし(i)は、本願補正発明の特定事項AないしIに概ね対応する。)。

(a)引用発明のaにおける「3つの特別図柄32A,32B,32Cが、上下方向にスクロール表示され、当否判定結果が大当たりの場合には、各特別図柄32A,32B,32Cが全て同じ図柄(ゾロ目)で停止表示され、当否判定結果が外れの場合には、ゾロ目以外の組み合わせで停止表示され」ることは、本願補正発明の「遊技結果に関連した変動表示ゲーム」に相当する。
そして、引用発明において、本願補正発明の「遊技結果に関連した変動表示ゲーム」を実行可能な特別図柄表示装置34を備えているから、引用発明のaは、本願補正発明の「A 遊技結果に関連した変動表示ゲームを実行可能な変動表示ゲーム実行手段」を備える。

(b)引用発明のbの「予告演出」は、本願補正発明の「演出」に相当する。
また、引用発明のbの特別図柄表示装置34は、特別図柄32A,32B,32Cが停止表示する前の変動表示中に、特別図柄当たりやリーチ発生の期待度を高める予告演出(演出)を行うのであるから、本願補正発明の「B 遊技の進行に伴い演出を実行する演出実行手段」に相当する。

(c)引用発明の「『予告演出1』ないし『予告演出4』」及び「数値範囲」は、それぞれ本願補正発明の「複数種類の演出」及び「数値範囲」に相当する。
そして、引用発明のcにおいて、変動態様5の予告抽選処理を例に挙げると、演出選択値Aが「0?39」の数値範囲に含まれる40個の数値の何れかに該当する場合に予告演出1に対応する予告演出態様データ1を選択し、「40?69」の数値範囲に含まれる30個の数値の何れかに該当する場合に予告演出2に対応する予告演出態様データ2を選択し、「70?94」の数値範囲に含まれる25個の数値の何れかに該当する場合に予告演出3に対応する予告演出態様データ3を選択し、「95?99」の数値範囲に含まれる5個の数値の何れかに該当する場合に予告演出4に対応する予告演出態様データ4を選択するものである。
そうすると、引用発明のcは、予告演出1ないし4(複数種類の演出)と、当該演出ごとに選択率の基準となる各数値範囲(数値範囲)とを対応付けて規定しているといえる。
そうしてみると、引用発明のcは、本願補正発明の「C 前記演出実行手段により実行され得る複数種類の演出と、当該演出ごとに選択率の基準となる数値範囲とを対応付けて規定する演出選択率規定手段」を備えるといえる。

(d)引用発明のdの「『取得』された『演出選択用カウンタの値』である『演出選択値』」は、本願補正発明の「数値」に相当する。
そして、引用発明のdは、演出選択用カウンタの値を取得し、これを「演出選択値」(数値)としてRAM52Bに記憶しているから、本願補正発明の「D 前記複数種類の演出からいずれかの演出を選択するための数値を取得する数値取得手段」を備えるといえる。

(e)引用発明のeの「可変数値(補正値)」は、本願補正発明の「変更値」に相当する。
そして、引用発明のeは、現在のゲームキャラクターのレベルを読み出して対応する可変数値(変更値)をセットし、該可変数値に応じて予告演出(演出)に対応した予告演出態様データ1?5の選択率を変化させるから、本願補正発明の「E 前記演出の選択率を変更するための変更値を決定し、当該変更値を設定する変更値設定手段」を備えるといえる。

(f)上記(c)で示した事項も考慮すると、引用発明のfは、規定された予告演出1ないし4(複数種類の演出)の各々に対応する数値範囲と、当該演出ごとに選択率の基準となる各数値範囲(数値範囲)とを対応付けて規定されていることを前提として、演出選択値(数値)に、可変数値(変更値)を加算(合算)して演出選択値を補正し、当たり変動態様である場合には、可変数値によって補正した演出選択値Bを使用して大当たり予告選択処理を行い、外れ変動態様である場合には、演出選択値Aを使用して外れ予告選択処理を行うものであり、各数値範囲(数値範囲)と、演出選択値(数値)と、可変数値(変更値)とに基づいて、予告演出(演出)を選択しているといえる。
そうすると、引用発明のfは、本願補正発明の「前記演出選択率規定手段に規定された前記複数種類の演出の各々に対応する数値範囲と、前記数値取得手段により取得された数値と、前記変更値設定手段により設定された変更値とに基づいて、前記複数種類の演出からいずれかの演出を選択する演出選択手段」を備えるといえる。

(g)上記(b)で示したとおり、引用発明の予告演出(演出)は、特別図柄表示装置34(演出実行手段)で実行されるものであり、予告演出を特別図柄表示装置34(演出実行手段)に実行させる制御を行う手段を備えることは自明であるから、引用発明は、本願補正発明の「G 前記演出選択手段により選択された演出を前記演出実行手段に実行させる制御を行う演出実行制御手段」を備える。

(g1)(g2)(h)引用発明のg、g1、g2、hにおいて、予告演出1ないし4は、特別図柄当否判定の結果に関係なく(変動表示ゲームの結果として当り結果、又は、はずれ結果となる場合の何れの場合であっても)選択され得る通常の予告演出であって、遊技内容に関連したアニメーション映像となっているものであり、このことと上記(b)で示した事項を踏まえれば、特別図柄の変動表示中に行われる予告演出1ないし4のうち、いずれかの1の予告演出(第1の演出パターン)が選択されたことに応じて、遊技内容に関連したアニメーション映像(所定の画像)を表示し、予告演出1ないし4のうち前記1の予告演出と異なる他の予告演出(第2の演出パターン)が選択されたことに応じても、遊技内容に関連したアニメーション映像(所定の画像)を表示するものといえる。
そうすると、引用発明のg、g1、g2、hと、本願補正発明の特定事項G1、G2、Hとは、「『前記演出実行制御手段は、前記演出選択手段により第1の演出パターンが選択されたことに応じて』所定の画像『を前記演出実行手段に表示可能であり、前記演出選択手段により前記第1の演出パターンとは異なる第2の演出パターンが選択されたことに応じて』所定の画像『を前記演出実行手段に表示可能であり、前記』所定の画像『は、前記変動表示ゲームの実行中に表示可能な画像であるとともに、前記変動表示ゲームの結果として当り結果、又は、はずれ結果となる場合の何れの場合であっても表示可能な画像である』」で一致する。

(i)引用発明のiの「パチンコ遊技機10」は、本願補正発明の特定事項Iの「遊技機」に相当する。

以上のとおりであるから、本願補正発明と引用発明とは、
「A 遊技結果に関連した変動表示ゲームを実行可能な変動表示ゲーム実行手段と、
B 遊技の進行に伴い演出を実行する演出実行手段と、
C 前記演出実行手段により実行され得る複数種類の演出と、当該演出ごとに選択率の基準となる数値範囲とを対応付けて規定する演出選択率規定手段と、
D 前記複数種類の演出からいずれかの演出を選択するための数値を取得する数値取得手段と、
E 前記演出の選択率を変更するための変更値を決定し、当該変更値を設定する変更値設定手段と、
F 前記演出選択率規定手段に規定された前記複数種類の演出の各々に対応する数値範囲と、前記数値取得手段により取得された数値と、前記変更値設定手段により設定された変更値とに基づいて、前記複数種類の演出からいずれかの演出を選択する演出選択手段と、
G 前記演出選択手段により選択された演出を前記演出実行手段に実行させる制御を行う演出実行制御手段と、
を備え、
G1’前記演出実行制御手段は、
前記演出選択手段により第1の演出パターンが選択されたことに応じて所定の画像を前記演出実行手段に表示可能であり、
G2’ 前記演出選択手段により前記第1の演出パターンとは異なる第2の演出パターンが選択されたことに応じて所定の画像を前記演出実行手段に表示可能であり、
H’前記所定の画像は、前記変動表示ゲームの実行中に表示可能な画像であるとともに、前記変動表示ゲームの結果として当り結果、又は、はずれ結果となる場合の何れの場合であっても表示可能な画像である
I 遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点(特定事項G1、G2、H)
「演出実行制御手段」が「選択された」「演出パターン」に関する「画像」を「演出実行手段に表示可能」とすることに関し、
本願補正発明では、「前記演出選択手段により第1の演出パターンが選択されたことに応じて当該第1の演出パターンが選択されたことを遊技者に報知する第1の画像を前記演出実行手段に表示可能であり、前記演出選択手段により前記第1の演出パターンとは異なる第2の演出パターンが選択されたことに応じて当該第2の演出パターンが選択されたことを遊技者に報知する第2の画像を前記演出実行手段に表示可能であり、前記第1の画像及び前記第2の画像は、前記変動表示ゲームの実行中に表示可能な画像であるとともに、前記変動表示ゲームの結果として当り結果、又は、はずれ結果となる場合の何れの場合であっても表示可能な画像である」のに対し、
引用発明では、5つの予告演出のうち、予告演出1?4(第1の演出パターン又は第2の演出パターン)は、特別図柄当否判定の結果に関係なく選択され得る通常の予告演出であって、例えば、遊技内容に関連したアニメーション映像(前記変動表示ゲームの結果として当り結果、又は、はずれ結果となる場合の何れの場合であっても表示可能な画像)を表示するものの、該アニメーション映像が、予告演出1?4(第1の演出パターン又は第2の演出パターン)のいずれかが選択されたことを遊技者に報知する画像といえるかどうかが明らかでない点。

(5)判断
上記相違点について検討する。
ア 変動表示中に実行される複数の演出パターンにそれぞれ対応したキャラクタ等の画像を表示する遊技機は周知技術(上記(3)ウ)である。
周知技術の「複数の演出パターン」のうち、いずれか1の演出パターン及び該1の演出パターンとは異なる他の1の演出パターンは、それぞれ、本願補正発明の「第1の演出パターン」及び「第2の演出パターン」に相当する。
また、本願発明の「第1の演出パターンが選択されたことを遊技者に報知する第1の画像」及び「第2の演出パターンが選択されたことを遊技者に報知する第2の画像」は、本願の明細書の特に【0432】ないし【0434】を参酌すると、選択された演出パターンに応じた演出画像(キャラクタ)を表示することで特定の演出パターンが選択されたことを遊技者に「報知する」ことを意味していると解される。そうすると、周知技術の「複数の演出パターン」のうち、前記1の演出パターン及び前記他の1の演出パターンに「それぞれ対応したキャラクタ等の画像」は、本願補正発明の「第1の演出パターンが選択されたことを遊技者に報知する第1の画像」及び「第2の演出パターンが選択されたことを遊技者に報知する第2の画像」に相当する。
そうすると、周知技術は、本願補正発明の特定事項G1、G2及びHのうち、「前記演出選択手段により第1の演出パターンが選択されたことに応じて当該第1の演出パターンが選択されたことを遊技者に報知する第1の画像を前記演出実行手段に表示可能であり、前記演出選択手段により前記第1の演出パターンとは異なる第2の演出パターンが選択されたことに応じて当該第2の演出パターンが選択されたことを遊技者に報知する第2の画像を前記演出実行手段に表示可能であり、前記第1の画像及び前記第2の画像は、前記変動表示ゲームの実行中に表示可能な画像である」との特定事項を備える。

イ 引用発明と周知技術とは、変動表示中に実行される複数の演出に対応した画像を表示する遊技機である点で技術分野が共通し、演出に対する鑑賞意欲を喚起するという課題を潜在的に有する点でも共通することが明らかであるから、周知技術を引用発明に適用することは当業者が適宜なし得たことである。
具体的に検討すると、引用発明において、予告演出1ないし4(第1の演出パターン、第2の演出パターン)が遊技内容に関連したアニメーション映像を表示するものであるところ、予告演出1ないし4(第1の演出パターン、第2の演出パターン)が異なる演出であることを考慮すれば、予告演出1ないし4(第1の演出パターン、第2の演出パターン)の表示内容が相互に同じ画像であるとは考えにくい。さらに周知技術を考慮すれば、引用発明において、予告演出1ないし4(第1の演出パターン、第2の演出パターン)のそれぞれに対応した画像が表示されるようになし、予告演出1ないし4(第1の演出パターン、第2の演出パターン)のいずれかが選択されたことを前記画像により遊技者に事実上報知するようになすことは当業者が適宜なし得たことである。
してみると、引用発明において、上記相違点に係る本願補正発明の特定事項となすことは、当業者が周知技術に基づいて適宜なし得たことである。

(6)本願補正発明の奏する、演出的魅力を高めることができ、遊技に対する意欲減退を防止しつつ遊技の興趣向上を図ることができるという効果は、引用発明の奏する効果及び周知技術の奏する効果から、予測することができた程度のものである。

(7)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、概ね以下のとおり主張している。
「(c)引用発明の説明
・・・略・・・
しかしながら、本願発明でいうところの演出選択手段は、先述したように、複数種類の演出(演出パターン)の各々に対応する数値範囲(演出決定用乱数の範囲)と、取得された数値(演出決定用乱数の範囲から抽出された値(演出決定用乱数))と、設定された変更値(演出決定用乱数に対して加算する値)とに基づいて演出を選択するように構成されたものである。このような構成からも、本願発明でいう第1の画像及び第2の画像は、演出選択手段によって選択された演出パターンに応じて表示される画像であるといえる。つまり、第1の画像及び第2の画像が演出決定用乱数や演出決定用乱数に対して加算する値等に基づいて決定される演出選択手段によって選択されることは、新請求項1の記載より明らかであると思料する。そのため、審査官殿が上記下線部分においてご指摘されるような事項については、本願の請求項1の記載においても限定されているものと思料する。つまり、本願発明は、変更値の設定等に基づき演出選択手段によって選択された第1又は第2の演出パターンに応じて第1の画像又は第2の画像が表示されるように構成されたものであるのだから、上述したように前回の意見書でも主張した「第1の画像及び第2の画像によって選択された演出パターンが報知されることにより、設定された変更値(加算値)が擬似的に報知される」といった本願発明独特の効果が必ず奏せられるように構成されていることが明らかであると思料する。
・・・略・・・
(d)本願発明と引用発明との対比
・・・略・・・
これによれば、実行中の演出の種類だけでなく当該演出が選択された内部的な制御の流れも看取させることができ、演出の流れを外部的にも内部的にも明快に感じさせることができることから、演出に対する興趣を向上させることができるといった効果を奏する。
また、演出パターンが大きく変化した場合であっても、遊技者は、どのような演出パターンに変化するように選択されたのかを演出画像から確実に認識することができ、演出パターンの変化に伴う演出に対する興趣の低下を抑制することができるといった効果も奏する。
一方、引用文献1?3には、そのような効果を奏し得られるような構成については何ら開示も示唆もされていない。
すなわち、引用文献1には、上述したように、演出決定用乱数に対して加算する値に応じた演出パターンに関する情報を報知するような技術的思想が何ら開示も示唆もされておらず、周知技術と認定された引用文献2、3においても、上述のように、本願発明特有の技術的思想について何ら開示も示唆もされていないと思料する。そのため、本願発明は、引用文献1?3に開示されたものによっても容易に想到することができないものであり、特許性を有するものと思料する。・・・」

しかしながら、上記(5)で示したとおり、周知技術を引用文献1(引用例)に記載された発明(引用発明)に適用することにより、引用文献1に記載された発明(引用発明)において、変更値の設定等に基づき演出選択手段によって選択された第1又は第2の演出パターンに応じて第1の画像又は第2の画像が表示されるように構成されたものとなるものであるから、引用文献1?3には、演出決定用乱数に対して加算する値に応じた演出パターンに関する情報を報知するような技術的思想が何ら開示も示唆もされていないという審判請求人の主張を採用することができない。
また、本願発明は、審判請求人が主張する「第1の画像及び第2の画像によって選択された演出パターンが報知されることにより、設定された変更値(加算値)が擬似的に報知される」といった効果については、変更値(加算値)は可変値であり、変更値(可変値)が比較的大きな値の場合でなければ特定の演出パターンが選択されやすいわけではないから、前記効果が必ず奏せられるものとは認められず、仮に認められるとしても、周知技術を引用文献1(引用例)に記載された発明(引用発明)に適用することにより予測し得る効果にすぎない。
以上のとおり、周知技術を引用文献1(引用例)に記載された発明(引用発明)に適用して本願補正発明のようになすことは当業者が容易になし得たものであるから、審判請求人の主張は採用できない。

(8)まとめ
以上のように、本願補正発明は、当業者が、引用発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、令和2年4月8日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(1)に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、以下のとおりである。

(進歩性)この出願の令和2年4月8日提出の手続補正書により補正された下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・請求項1、2
・引用文献等 1?3

<引用文献等一覧>
1.特開2012-75616号公報
2.特開2014-33893号公報
3.特開2014-79465号公報

3 引用例
引用例(引用文献1)は、上記第2[理由]3(2)に記載したとおりである。

4 対比
本願発明(上記第2〔理由〕1)は、本願補正発明(上記第2〔理由〕3(1))から、上記相違点に係る発明特定事項の一部の発明特定事項を上位概念化したものである。
そして、本願発明と引用発明とを対比すると、相違点は、上記第2の2(4)で説示した相違点と同様のものとなるから、上記第2の2(5)ないし(8)で説示した事項と同様に、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-06-29 
結審通知日 2021-07-06 
審決日 2021-07-20 
出願番号 特願2019-117674(P2019-117674)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 智也  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 千本 潤介
鉄 豊郎
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人タス・マイスター  

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