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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F25D |
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管理番号 | 1378262 |
審判番号 | 不服2021-406 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-01-12 |
確定日 | 2021-10-05 |
事件の表示 | 特願2016-146385号「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月 1日出願公開、特開2018- 17428号、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年7月26日の出願であって、令和2年3月17日付けで拒絶理由通知がされ、令和2年5月15日に意見書が提出され、令和2年10月16日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、令和3年1月12日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 本願請求項1?8に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2014-59109号公報 2.特開平10-132445号公報 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 審判請求時の補正によって、補正前の請求項1?3、5?8の「ことを特徴とする」という記載を削除する補正がなされた。当該補正は、明瞭でない記載の釈明を目的としたものであると認められる。 また、審判請求時の補正によって、補正前の請求項3の「外気温」の記載を、補正後の請求項3の「凝縮温度の変化をもたらす外気温」とする補正がなされた。当該補正は、冷蔵庫の技術分野において技術常識である、外気温が与える影響(凝縮温度の変化をもたらすこと)を明確化したものであり、明瞭でない記載の釈明を目的としたものであると認められる。 第4 本願発明 本願請求項1?8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明8」という。)は、令和3年1月12日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 本体と、 前記本体内に収容されている圧縮機と、 前記圧縮機に対して送風するファンと、 前記圧縮機に接続され、前記ファンによる送風経路上の配置されている凝縮器と、 前記凝縮器に接続されているとともに、前記本体の表面に埋設されている放熱パイプと、 前記本体の表面に結露が発生する可能性を判定する結露判定部と、 常には前記凝縮器から前記圧縮機に向かって送風されるように前記ファンの回転方向を制御する一方、前記結露判定部によって結露が発生する可能性があると判定されると、前記圧縮機から前記凝縮器に向かって送風されるように前記ファンの回転方向を制御する制御部と、 を備える冷蔵庫。 【請求項2】 湿度を取得する湿度取得部を備え、 前記結露判定部は、前記湿度取得部によって取得した湿度が予め定められている基準湿度以上となると、前記本体の表面に結露が発生する可能性があると判定する請求項1記載の冷蔵庫。 【請求項3】 凝縮温度の変化をもたらす外気温を検出する外気温取得部を備え、 前記結露判定部は、前記外気温取得部によって取得した外気温が予め定められている基準外気温度以下になると、前記本体の表面に結露が発生する可能性があると判定する請求項1または2記載の冷蔵庫。 【請求項4】 前記圧縮機の回転数を取得する圧縮機回転数取得部を備え、 前記結露判定部は、前記圧縮機回転数取得部によって取得した前記圧縮機の回転数が予め定められている基準圧縮機回転数以下になると、前記本体の表面に結露が発生する可能性があると判定することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の冷蔵庫。 【請求項5】 前記ファンの回転数を取得するファン回転数取得部を備え、 前記結露判定部は、前記ファン回転数取得部によって取得した前記ファンの回転数が予め定められている基準ファン回転数以下になると、前記本体の表面に結露が発生する可能性があると判定する請求項1から4のいずれか一項記載の冷蔵庫。 【請求項6】 前記凝縮器による凝縮温度を取得する凝縮温度取得部を備え、 前記結露判定部は、前記凝縮温度取得部によって取得した前記凝縮温度が予め定められている基準凝縮温度以下になると、前記本体の表面に結露が発生する可能性があると判定する請求項1から5のいずれか一項記載の冷蔵庫。 【請求項7】 当該冷蔵庫は、除霜機能を有しており、 除霜が行われた除霜時間を取得する除霜時間取得部を備え、 前記結露判定部は、前記除霜時間取得部によって取得した除霜時間が予め定められている基準除霜時間以上になると、前記本体の表面に結露が発生する可能性があると判定する請求項1から6のいずれか一項記載の冷蔵庫。 【請求項8】 前記凝縮器の下部に設けられている蒸発皿と、 前記蒸発皿内の水位を取得する水位取得部と、を備え、 前記結露判定部は、前記水位取得部によって取得した前記蒸発皿内の水位が予め定められている基準水位以上になると、前記本体の表面に結露が発生する可能性があると判定する請求項1から7のいずれか一項記載の冷蔵庫。」 第5 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 1-1 引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、「冷蔵庫」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審が付与した。以下同様である。)。 (1-a)「【0005】 しかしながら、上記従来の冷蔵庫は、例えば外気の湿度が比較的高いときなど結露が発生し易い状況にあって結露防止を強化したいが、そのための熱量が不足している場合の対策について考慮されていない。したがって、冷蔵庫全体としての消費電力の増加を抑制しながら、結露防止パイプで効果的に放熱させる必要があるといった課題があった。」 (1-b)「【0006】 本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、冷蔵庫全体としての消費電力の増加を抑制しながら、冷蔵庫の筐体要所の結露を防止するための結露防止パイプにおいて効果的に放熱させることが可能な冷蔵庫を提供することを目的とする。」 (1-c)「【0022】 冷蔵庫1は、図1に示すように断熱構造の本体筐体2を備える。本体筐体2はその内部に食品等の貯蔵室として上方から順に冷蔵室3、上側冷凍室4、下側冷凍室5及び野菜室6を備える。冷蔵室3と上側冷凍室4との間は仕切り部7によって仕切られ、上側冷凍室4と下側冷凍室5との間は仕切り部8によって仕切られ、下側冷凍室5と野菜室6との間は仕切り部9によって仕切られる。」 (1-d)「【0025】 本体筐体2の背面下部には、図1及び図2に示す機械室10が形成される。機械室10には、図3に示す冷凍サイクル20の構成要素である圧縮機21、補助凝縮器23及びドライヤ26が配置される。また、機械室10には蒸発皿11及び凝縮器ファン12が配置される。」 (1-e)「【0026】 冷凍サイクル20は、図3に示すように圧縮機21、コンデンサ(凝縮器)22、補助凝縮器23、結露防止パイプ24、切替弁25、ドライヤ26、キャピラリーチューブ27、蒸発器(冷却器)28及びサクションパイプ29を構成要素として含む。なお、図3の配管に近接して描画した矢印が冷媒の流通方向を示す。」 (1-f)「【0028】 コンデンサ(凝縮器)22は高温の冷媒を凝縮させる機能を有する。コンデンサ22は本体筐体2の背面、上面、右側面、左側面といった放熱、凝縮し易い箇所に設けられる。コンデンサ22は本体筐体2の背面でバックコンデンサ22Bとなり、左右の側面でサイドコンデンサ22L、22Rとなる。」 (1-g)「【0029】 コンデンサ22の途中であって機械室10には補助凝縮器23が配置される。補助凝縮器23は、図2に示すように所定の間隔を設けて並置された複数の平面視矩形をなす放熱板23aを備える。補助凝縮器23は複数の放熱板23aの通風方向が凝縮器ファン12が発生させる気流の流通方向、すなわち図2の左右方向と一致するように設けられる。なお、凝縮器ファン12が発生させる気流は図2の右方から左方に向かって流通する。」 (1-h)「【0030】 結露防止パイプ24は三方弁からなる切替弁25を介してコンデンサ22の途中から分岐する。結露防止パイプ24は本体筐体2の要所の結露を防止するためのものであって、ここでは冷蔵庫1の前面の各開口部に相当する間口の結露を防止するために設けられる。すなわち、結露防止パイプ24は冷蔵庫1の間口部分、特にその間口部分の下側であって上側冷凍室4の開口部4a及び下側冷凍室5の開口部5aの周囲に配置される。切替弁25から分岐するコンデンサ22の他方はバイパスコンデンサ22Pとなる。以下、切替弁25から常時結露防止パイプ24に冷媒が流通するものとして説明する。」 (1-i)「【0031】 なお、冷蔵庫1は間口部分の結露を検出する結露検出部13(図4参照)を間口周辺に備える。結露検出部13は、例えば湿度センサや結露センサ、乾湿計などを利用して構成される。」 (1-j)「【0036】 冷蔵庫1はその全体の動作制御を行うために、本体筐体2に図4に示す制御部30を収容している。制御部30は図示しない演算部や記憶部等を備え、記憶部等に記憶、入力されたプログラム、データに基づき圧縮機21や庫内ファン15、凝縮器ファン12などを制御し、庫内温度が予め設定された目標値に達するように冷凍サイクル20を運転させる。この運転にあたって、制御部30は結露検出部13や蒸発器温度検出部16から得られる結露や着霜に関する温度情報に基づいて関連する構成要素を制御する。また、冷蔵庫1は動作制御に係る時間情報の取得が可能な不図示の計時部を備える。」 (1-k)「【0039】 また、冷凍サイクル20の運転時、結露検出部13が間口の結露に係る所定条件を検出すると、冷蔵庫1は例えば凝縮器ファン12の回転を停止、または通常より低速の回転数に設定して全体放熱バランスの切り替えを実行する。結露検出部13が検出する結露に係る所定条件は冷蔵庫1の外気の予め設定した任意の環境条件を意味する。結露検出部13は前述のように、例えば湿度センサや結露センサ、乾湿計などを利用して構成される。所定条件はこれらのセンサ類が出力する結露が発生した状態、或いは結露発生に近い状態を意味する。」 (1-l)「【0040】 冷蔵庫1は凝縮器ファン12の回転を停止、または通常より低速の回転数に設定することで、補助凝縮器23における冷媒の放熱量が低下する。補助凝縮器23において通常よりも放出できなかった熱量は間口に設けた結露防止パイプ24にわたり、結露防止パイプ24における冷媒の放熱量が増加する。したがって、間口の結露が解消される。そして、結露検出部13が間口の結露の解消に係る条件を検出したとき、冷蔵庫1は凝縮器ファン12の回転を通常どおりに設定して通常の全体放熱バランスに切り替える。」 (1-m)「【0045】 冷蔵庫1における冷凍サイクル20の運転時(図5のスタート)、制御部30は結露検出部13が間口の結露に係る所定条件を検出したか否かを判定する(図5のステップ#101)。結露検出部13が間口の結露に係る所定条件を検出していない場合(ステップ#101のNo)、すなわち間口で結露が発生していない、或いは間口が結露発生に近い状態になっていない場合、制御部30は通常の冷凍サイクル20の運転を継続する。」 (1-n)「【図1】 」 (1-o)「【図2】 」 (1-p)「【図3】 」 (1-q)「【図4】 」 (1-r)「【図5】 」 (1?s)上記(1-e)及び(1-p)の冷凍サイクルの斜視図から、圧縮機21、コンデンサ(凝縮器)22、補助凝縮器23及び結露防止パイプ24は、冷凍サイクル20において互いに接続されていることがわかる。 (1-t)上記(1-e)?(1-h)及び(1?p)の冷凍サイクルの斜視図から、コンデンサ(凝縮器)22は、パイプ状のものであることがわかる。 (1-u)上記(1-h)から、結露防止パイプ24が配置される、冷蔵庫1の間口は、本体筐体2の要所、つまり本体筐体2の一部であるといえる。よって、結露防止パイプ24は、本体筐体2に設けられていることがわかる。 (1-v)上記(1-g)及び上記(1-o)に図示される圧縮機21、補助凝縮器23及び凝縮器ファン12の配置関係から、補助凝縮器23は、凝縮器ファン12による送風経路上に配置され、凝縮器ファン12が発生させる気流は図2の右方から左方に向かって流通するから、凝縮器ファン12は、通常は補助凝縮器23から圧縮機21に向かって送風されるように制御するものであることがわかる。 1-2 引用文献1に記載された発明 上記(1-a)?(1-v)の内容を総合すると、上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「本体筐体2と、 本体筐体2の背面下部に形成される機械室10内に配置される圧縮機21と、 圧縮機21に対して送風する凝縮器ファン12と、 圧縮機21に接続され、凝縮器ファン12による送風経路上の配置されている補助凝縮器23と、 補助凝縮器23に接続されている、本体筐体2に設けられるパイプ状のコンデンサ22及び結露防止パイプ24と、 冷蔵庫1の間口部分に結露が発生した状態、或いは結露発生に近い状態を結露検出部13が検出したか否かを判定する制御部30であって、 通常は補助凝縮器23から圧縮機21に向かって送風されるように凝縮器ファン12を制御する一方、結露検出部13によって結露が発生した状態、或いは結露発生に近い状態が検出されると、凝縮器ファン12の回転を停止、または通常より低速の回転数に設定することで、補助凝縮器23における冷媒の放熱量を低下させる制御を行う制御部30と、 を備える冷蔵庫1。」 2.引用文献2について 2-1 引用文献2に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、「冷蔵庫」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。 (2-a)「【0023】 そしてまた、請求項4記載の発明は、環状凝縮器を通過する風向を反転するように冷却ファンを制御する手段を設け、冷却ファンにより起風される空気の流れを逆転させることにより塵、埃等が環状凝縮器部に付着するのを防止させ、凝縮能力の低下を防ぐことが可能である。」 (2?b)「【0041】 以上のような構成において、圧縮機3が稼働したとき、同時に冷却ファン4を稼働させることで、外気は吸入口16を通って吸引され、環状凝縮器5を通過して仕切り板8および冷却ファン4を通り圧縮機3側へと送風される。」 (2-c)「【0043】 なお、ここでは風の流れとして環状凝縮器を通って冷却ファン、圧縮機と流れるように冷却ファンを回転させているが、機械室の冷却能力がある場合には風の流れを圧縮機側から冷却ファンを通って環状凝縮器に流れるように冷却ファンを回転させてもよい。」 (2-d)「【図1】 」 2-2 引用文献2に記載された技術的事項 したがって、上記2-1を総合すると、上記引用文献2には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。 「環状凝縮器5から圧縮機3に向かって送風されるように冷却ファン4を回転させる一方、機械室の冷却能力がある場合には、圧縮機3から環状凝縮器5に向かって送風されるように冷却ファン4を回転させてもよいこと。」(以下「引2-1事項」という。) 「環状凝縮器を通過する風向を反転するように冷却ファンを制御する手段を設け、冷却ファンにより起風される空気の流れを逆転させることにより塵、埃等が環状凝縮器部に付着するのを防止させ、凝縮能力の低下を防ぐこと。」(以下「引2-2事項」という。) 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを、その機能、構成及び技術的意義を考慮して対比すると、次のことがいえる。 引用発明における「圧縮機21」、「凝縮器ファン12」、「補助凝縮器23」、「制御部30」、「冷蔵庫1」は、本願発明1における「圧縮機」、「ファン」、「凝縮器」、「制御部」、「冷蔵庫」に、それぞれ相当する。 引用発明における「本体筐体2」及び「機械室10」は、本願発明1における「本体」に相当する。 引用発明における「圧縮機21」が「機械室10内に配置される」態様は、本願発明1における「圧縮機」が「本体内に収容されている」態様に相当する。 引用発明における「パイプ状コンデンサ22」及び「結露防止パイプ24」は、放熱するパイプといえるから、本願発明1における「放熱パイプ」に相当する。 そうすると、引用発明の「本体筐体2に設けられるパイプ状のコンデンサ22及び結露防止パイプ24」の態様と、本願発明1の「前記本体の表面に埋設されている放熱パイプ」の態様とは、「前記本体に設けられている放熱パイプ」の態様の限りで一致する。 引用発明における「冷蔵庫1の間口部分」は、冷蔵庫の正面(間口)の部分で(上記「第5」1.(1-u)、(1-p)の図3の配置参照。)、冷蔵庫の本体の表面をなすものであることは明らかであるから、本願発明1における「本体の表面」に相当するといえる。 引用発明における「制御部30」が「結露が発生した状態、或いは結露発生に近い状態を結露検出部13が検出したか否かを判定する」ことは、本願発明1における「結露判定部」が「結露が発生する可能性を判定」することに相当する。 引用発明における「通常は補助凝縮器23から圧縮機21に向かって送風されるように凝縮器ファン12を制御する」ことは、本願発明1における「常には前記凝縮器から前記圧縮機に向かって送風されるように前記ファンの回転方向を制御する」ことに相当する。 引用発明の「結露検出部13によって結露が発生した状態、或いは結露発生に近い状態が検出されると、凝縮器ファン12の回転を停止、または通常より低速の回転数に設定することで、補助凝縮器23における冷媒の放熱量を低下させる制御を行う」ことと、本願発明1の「結露判定部によって結露が発生する可能性があると判定されると、前記圧縮機から前記凝縮器に向かって送風されるように前記ファンの回転方向を制御する」こととは、「前記結露判定部によって結露が発生する可能性があると判定されると、前記ファンの回転を制御する」との限りで一致する。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点1及び2があるといえる。 [一致点] 「本体と、 前記本体内に収容されている圧縮機と、 前記圧縮機に対して送風するファンと、 前記圧縮機に接続され、前記ファンによる送風経路上の配置されている凝縮器と、 前記凝縮器に接続されているとともに、前記本体に設けられている放熱パイプと、 前記本体の表面に結露が発生する可能性を判定する結露判定部と、 常には前記凝縮器から前記圧縮機に向かって送風されるように前記ファンの回転方向を制御する一方、前記結露判定部によって結露が発生する可能性があると判定されると、前記ファンの回転を制御する制御部と、 を備える冷蔵庫。」 [相違点1] 本体に設けられている放熱パイプについて、本願発明1では、「本体の表面に埋設されている放熱パイプ」としているに対して、引用発明では、パイプ状のコンデンサ22及び結露防止パイプ24を、本体筐体2に設けてはいるものの、本体筐体2の表面に埋設していることについてまでは、特定されていない点。 [相違点2] 結露判定部によって結露が発生する可能性があると判定されると、ファンの回転を制御することについて、本願発明1では、「圧縮機から前記凝縮器に向かって送風されるように前記ファンの回転方向を制御する」のに対して、引用発明では、凝縮器ファン12の回転を停止、または通常より低速の回転数に設定する制御を行う点。 (2)相違点についての判断 上記[相違点1]について検討する。 引用発明において、パイプ状コンデンサ22及び結露防止パイプ24は、放熱するパイプであるから、その機能から、本体筐体2の表面に近接した部位に配置することが技術常識である。 そして、その態様は、(1-n)の図1の断面図において、パイプ状コンデンサ22(図1には非図示)及び結露防止パイプ24(図1には非図示)が本体筐体2の表面に近接したものとなり、本体の表面に埋設された態様といえるものであるから、相違点1は実質的な相違点にはあたらない。また、仮に相違するとしても、冷蔵庫の技術分野において、放熱パイプを冷蔵庫の本体の表面(本体筐体)に埋設することは、例示するまでもない周知技術であって、引用発明のパイプ状コンデンサ22及び結露防止パイプ24を冷蔵庫の本体筐体2の表面に埋設することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 上記[相違点2]について検討する。 引用文献2には、上記引2-1事項にあるように、機械室の冷却能力がある場合には、圧縮機3から環状凝縮器5に向かって送風されるように冷却ファン4を回転させてもよいことが記載されている。この場合、冷却ファン4による気流は、冷媒を圧縮することにより発熱する圧縮機3を経由してから環状凝縮器5と熱交換を行うものの、ここでいう「機械室の冷却能力がある場合」の技術的な意味が不明確であるので、環状凝縮器5における冷媒の放熱量が、環状凝縮器5から圧縮機3に向かって送風される場合よりも必ずしも低下するとはいうことはできない。 また、引用文献2には、環状凝縮器5の放熱量を低下させることについて、直接的な記載がなされておらず、環状凝縮器5の放熱量を低下させることを意図して冷却ファン4の回転方向を圧縮機3から環状凝縮器5に向かって送風されるように変えたものであるとはいえない。 さらに、引用文献2には、ファンの回転方向の制御について、結露が発生する可能性があると判定することと関係づけて記載するところはないし、結露が発生する可能性があると判定されると、「圧縮機から前記凝縮器に向かって送風されるように前記ファンの回転方向を制御する」ことが技術常識であるともいえない。 加えて、引2-2事項も、環状凝縮器5の放熱量を低下させることを意図したものではなく、結露が発生する可能性があると判定することとの関係づけたものではない。 これらを踏まえると、引用発明における、ファン(凝縮器ファン12)の回転を停止、または通常より低速の回転数に設定することと、引用文献2に記載された、圧縮機3から環状凝縮器5に向かって送風されるように冷却ファン4を回転させることは、もたらす作用・機能が共通しているとはいえず、引用文献2に記載された事項(引2-1事項及び引2-2事項)を、凝縮器の放熱量を低下させる制御を行う引用発明に適用する動機付けがあるとはいえない。 よって、上記相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2.本願発明2ないし8について 本願発明2ないし8も、本願発明1の上記相違点2に係る「結露判定部によって結露が発生する可能性があると判定されると、前記圧縮機から前記凝縮器に向かって送風されるように前記ファンの回転方向を制御する」事項と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 第7 原査定について <理由(特許法第29条第2項)について> 審判請求時の補正により、本願発明1ないし8は「結露判定部によって結露が発生する可能性があると判定されると、前記圧縮機から前記凝縮器に向かって送風されるように前記ファンの回転方向を制御する」事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-09-16 |
出願番号 | 特願2016-146385(P2016-146385) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(F25D)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 久島 弘太郎 |
特許庁審判長 |
林 茂樹 |
特許庁審判官 |
平城 俊雅 山崎 勝司 |
発明の名称 | 冷蔵庫 |
代理人 | 特許業務法人 サトー国際特許事務所 |