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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G08G
管理番号 1378264
審判番号 不服2020-16300  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-27 
確定日 2021-09-29 
事件の表示 特願2020-35972号「自動運転車」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年9月16日出願公開、特開2021-138224号、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和2年3月3日の出願であって、令和2年7月17日付けで拒絶理由通知がされ、同年8月28日に意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲及び明細書について補正をする手続補正書が提出されたが、同年10月22日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対して同年11月27日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に、特許請求の範囲及び明細書について補正する手続補正書が提出され、当審が令和3年5月13日付けで拒絶理由通知をし、同年5月21日に意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲及び明細書について補正をする手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
本願の請求項1?8に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基いて、本願出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願の請求項1?8に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・引用文献等一覧
1.特開2019-87099号公報

第3 本願発明
本願の請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」?「本願発明4」という。)は、令和3年5月21日の手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。ここで、本願発明1?4は、それぞれ、令和2年8月28日の手続補正書により補正された(原査定時の)請求項1,3,9,10に係る発明と同じである。

「【請求項1】
設定された走行経路に沿って自動的に走行可能な自動運転車において、
自車の左折又は右折を表示する方向指示部と、
自車が現在走行する車線と隣接する車線であって、自車が走行予定の上記走行経路に沿った分岐路を有する車線における分岐点から所定の距離だけ手前の地点にて、上記分岐路を有する車線に車線変更するために前記方向指示部を作動させる制御部と、
上記分岐路を有する車線の自車前側及び後側の所定の範囲における所定時間内の交通量を計測する交通量計測部と、
当該交通量計測部が計測した交通量と所定の交通量との比較結果に基づいて、前記方向指示部の作動に係る上記所定の距離を変更する変更部と、
を有する自動運転車。
【請求項2】
設定された走行経路に沿って自動的に走行可能な自動運転車において、
自車の左折又は右折を表示する方向指示部と、
自車が現在走行する車線と隣接する車線であって、自車が走行予定の上記走行経路に沿った分岐路を有する車線における分岐点に達する前の所定の時間に達すると、上記分岐路を有する車線に車線変更するために前記方向指示部を作動させる制御部と、
上記分岐路を有する車線の自車前側及び後側の所定の範囲における所定時間内の交通量を計測する交通量計測部と、
当該交通量計測部が計測した交通量と所定の交通量との比較結果に基づいて、前記方向指示部の作動に係る上記所定の時間を変更する変更部と、
を有する自動運転車。
【請求項3】
設定された走行経路に沿って自動的に走行可能な自動運転車において、
自車の左折又は右折を表示する方向指示部と、
自車が現在走行する車線と隣接する車線であって、自車が走行予定の上記走行経路に沿った分岐路を有する車線における分岐点から所定の距離だけ手前の地点にて、又は、上記分岐点に達する前の所定の時間に達すると、上記分岐路を有する車線に車線変更するために前記方向指示部を作動させる制御部と、
上記分岐路を有する車線の交通量を計測する交通量計測部と、
自車が現在走行中の道路が高速道路か又は一般道かを検出するカーナビゲーション機能部と、
当該交通量計測部が計測した交通量と所定の交通量との比較結果に基づいて、
前記カーナビゲーション機能部が上記現在走行中の道路が一般道であることを検出した場合、上記所定の距離を変更し、
前記カーナビゲーション機能部が上記現在走行中の道路が高速道路であることを検出した場合、上記所定の時間を変更する変更部と、
を有する自動運転車。
【請求項4】
設定された走行経路に沿って自動的に走行可能な自動運転車において、
自車の左折又は右折を表示する方向指示部と、
自車が現在走行する車線と隣接する車線であって、自車が走行予定の上記走行経路に沿った分岐路を有する車線における分岐点から所定の距離だけ手前の地点にて、又は、上記分岐点に達する前の所定の時間に達すると、上記分岐路を有する車線に車線変更するために前記方向指示部を作動させる制御部と、
上記分岐路を有する車線の交通量を計測する交通量計測部と、
自車が現在走行中の道路が高速道路か又は一般道かを検出するカーナビゲーション機能部と、
当該交通量計測部が計測した交通量と所定の交通量との比較結果に基づいて、
前記カーナビゲーション機能部が上記現在走行中の道路が一般道であることを検出した場合、上記所定の距離を設定する距離計測部と、
前記カーナビゲーション機能部が上記現在走行中の道路が高速道路であることを検出した場合、上記所定の時間を設定するタイミング算出部と、
を有する自動運転車。」

第4 引用文献の記載事項
1 引用文献1について
引用文献1には、図面とともに以下の記載がある(下線は当審が付与。以下同様)。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムに関する。」

(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、非常時でない場合に、路肩に車両を寄せることについては検討されていなかった。ところが、高速道路の出口付近などにおいては、出口に向かう車両で路肩が渋滞し、車両がスムーズに出口に進入できない場合がある。この場合、出口に向かわない後続車両の走行が制限されたり、後続車両が意図せぬ減速をしなければならない場面が生じ得る。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、路肩の状況を考慮して運転制御を実行することができる車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。」

(3)「【0016】
[全体構成]
図1は、実施形態に係る車両制御装置を利用した車両システム1の構成図である。車両システム1が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機を備える場合、電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
【0017】
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、ファインダ14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ナビゲーション装置50と、MPU(Map Positioning Unit)60と、運転操作子80と、自動運転制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220と、方向指示器230とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。」

(4)「【0029】
自動運転制御装置100は、例えば、第1制御部120と、第2制御部160とを備える。第1制御部120と第2制御部160は、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。・・・
【0030】
図2は、第1制御部120および第2制御部160の機能構成図である。第1制御部120は、例えば、認識部130と、行動計画生成部140とを備える。第1制御部120は、例えば、AI(Artificial Intelligence;人口知能)による機能と、予め与えられたモデルによる機能とを並行して実現する。例えば、「交差点を認識する」機能は、ディープラーニング等による交差点の認識と、予め与えられた条件(パターンマッチング可能な信号、道路標示などがある)に基づく認識とが並行して実行され、双方に対してスコア付けして総合的に評価することで実現される。これによって、自動運転の信頼性が担保される。
【0031】
行動計画生成部140は、分岐制御部141を備える。分岐制御部141は、分岐手前判定部143と、路肩状況判定部145と、分岐制御実行部147とを備える。・・・」

(5)「【0037】
行動計画生成部140は、原則的には推奨車線決定部61により決定された推奨車線を走行し、更に、自車両Mの周辺状況に対応できるように、自動運転において順次実行されるイベントを決定する。イベントには、例えば、一定速度で同じ走行車線を走行する定速走行イベント、前走車両に追従する追従走行イベント、前走車両を追い越す追い越しイベント、障害物との接近を回避するための制動および/または操舵を行う回避イベント、カーブを走行するカーブ走行イベント、交差点や横断歩道、踏切などの所定のポイントを通過する通過イベント、車線変更イベント、合流イベント、分岐イベント、自動停止イベント、自動運転を終了して手動運転に切り替えるためのテイクオーバイベントなどがある。
【0038】
行動計画生成部140は、起動したイベントに応じて、自車両Mが将来走行する目標軌道を生成する。・・・
【0040】
第2制御部160は、行動計画生成部140によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220を制御する。」

(6)「【0045】
方向指示器230は、車両の側面に沿って配設され、左側の方向指示器と右側の方向指示器とを備える。・・・」

(7)「【0046】
次に、行動計画生成部140に含まれる分岐制御部141について、詳細に説明する。分岐制御部141は、自車両Mが分岐手前区間内を走行している間、路肩に存在する他車両を考慮した分岐時の運転制御(以下、分岐制御と記す)を実行する。分岐手前区間とは、例えば、自車両Mの経路上の分岐地点から、当該分岐地点よりも所定距離手前の位置までの区間である。自車両Mの経路上の分岐地点とは、自車両Mの走行予定の経路上に出現する分岐地点であって、例えば、高速道路の本線から出口やパーキングエリア、サービスエリアへ進入する分岐地点等である。自車両Mの経路上の分岐地点は、例えば、ナビゲーション装置50により生成された経路と、地図との関係に基づいて把握される。
【0047】
分岐制御において、分岐制御部141は、路肩認識部131により認識された路肩に存在する他車両mを監視し、路肩に存在する他車両mの状態に基づく運転制御を実行する。この運転制御については、後で詳細に説明する。一方、自車両Mが分岐手前区間内を走行していない場合、分岐制御部141は、分岐制御を実行しない。このため、自車両Mが分岐手前区間内を走行していない場合、行動計画生成部140は、路肩に存在する他車両に基づく運転制御を原則的には実行しない。つまり、分岐制御部141は、分岐手前区間内において路肩に対する監視度合を、分岐手前区間外における監視度合よりも高くする。なお、分岐制御部141が備える各構成の機能については、以下に説明するフローチャートにおいて説明する。」

(8)「【0048】
次に、図4を参照して、本実施形態に係る処理例について説明する。図4は、第1実施形態において分岐制御部141により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0049】
まず、分岐手前判定部143は、自車両Mが分岐手前区間に進入したか否かを判定する(ステップS101)。例えば、分岐手前判定部143は、自車両Mの現在位置から地図上の分岐地点Pbまでの距離Dが、予め決められている第1閾値D1以下であるか否かを判定する。分岐地点Pbとは、自車両Mの経路上の分岐地点である。第1閾値D1は、例えば、2[km]程度の距離である。ステップS101の判定に代えて、「自車両Mが高速道路を下りる予定の出口から一つ前の出口を通過したか否か」を判定してもよい。自車両Mが分岐手前区間に進入したと判定しない場合、分岐手前判定部143は、肯定的な判定結果を得るまで、ステップS101の処理を繰り返す。
【0050】
ステップS101において、分岐手前判定部143により自車両Mが分岐手前区間に進入したと判定された場合、路肩状況判定部145は、認識部130による認識結果と、路肩認識部131による認識結果とに基づいて、路肩状況を取得する(ステップS103)。路肩状況には、例えば、路肩における他車両mの存在の有無や速度等が含まれる。例えば、路肩状況判定部145は、認識部130により認識された他車両mのうち、路肩認識部131により認識された路肩に存在する他車両mの状況を、路肩状況として取得する。
【0051】
路肩状況判定部145は、取得した路肩状況に基づいて、路肩に複数の他車両mが並んで走行しているか否かを判定する(ステップS105)。ステップS105において否定的な判定結果を得た場合、分岐手前判定部143は、自車両Mが分岐地点Pbの直前を走行しているか否かを判定する(ステップS107)。例えば、分岐手前判定部143は、自車両Mの現在位置から分岐地点Pbまでの距離Dが、予め決められている第2閾値D2以下であるか否かを判定する。第2閾値D2は、例えば、分岐地点Pbにおいて分岐車線へ車線変更するために必要な距離である。ステップS107において自車両Mが分岐地点Pbの直前を走行していないと判定した場合、分岐手前判定部143は、ステップS107において肯定的な判定結果を得るまで、ステップS103に戻り、処理を繰り返す。
【0052】
ステップS107において、分岐手前判定部143により自車両Mが分岐地点Pbの直前を走行していると判定された場合、分岐制御実行部147は、分岐する側の方向指示器230を点滅させるよう、方向指示器230を制御する(ステップS109)。次いで、分岐制御実行部147は、自車両Mを減速させるよう、速度制御部164に指示する(ステップS111)。そして、分岐制御実行部147は、分岐先の車線に進入する目標軌道を生成し、第2制御部160に出力する(ステップS113)。
【0053】
一方、ステップS105おいて、路肩状況判定部145により、路肩に複数の他車両mが並んで走行していると判定された場合、分岐制御実行部147は、路肩に存在する複数の他車両mを認識した時点で、路肩に移動して複数の他車両mのうち最後尾の他車両m(或いは最も追従しやすい位置関係にある他車両m)に向かう目標軌道を生成し、第2制御部160に出力する。また、分岐制御実行部147は、自車両Mに対して前走車両となった他車両mに追従走行するよう、第2制御部160を制御する(ステップS115)。なお、ステップS115に先立って、分岐制御実行部147は、分岐する側の方向指示器230を点滅させるよう、方向指示器230を制御してもよい。分岐車線L4に繋がる路肩を走行する他車両mは、いずれ分岐車線L4に進入すると推定される。従って、自車両Mは、上記のように追従走行をすることで、分岐地点Pbにおいて自然と分岐車線L4へ進入することができる。次いで、分岐制御実行部147は、自車両Mが分岐車線に進入したか否かを判定する(ステップS117)。そして、分岐制御実行部147は、自車両Mが分岐車線に進入したと判定した場合、追従走行を解除する(ステップS119)。」

(9)上記(3)によれば、車両システム1が搭載される車両は、方向指示器230と、自動運転制御装置100とを備えると認められ、上記(4)によれば、自動運転制御装置100は、第1制御部120と第2制御部160を備え、第1制御部120は、行動計画生成部140を備え、行動計画生成部140は、分岐制御部141を備え、分岐制御部141は、分岐手前判定部143と、路肩状況判定部145と、分岐制御実行部147とを備えるから、自動運転制御装置100は、行動計画生成部140を備え、また、分岐手前判定部143と、路肩状況判定部145と、分岐制御実行部147とを備えると認められる。

(10)上記(5)によれば、行動計画生成部140は目標軌道を生成し、第2制御部160は、行動計画生成部140によって生成された目標軌道を、自車両Mが通過するように制御するから、上記(9)も勘案すると、自動運転制御装置100は、生成された目標軌道を自車両Mが通過するように制御すると認められる。

(11)上記(7)によれば、分岐地点とは、自車両Mの走行予定の経路上の分岐地点であり、上記(8)の【0051】によれば、分岐手前判定部143は、自車両Mが分岐地点Pbの直前を走行しているか否かの判定として、自車両Mの現在位置から分岐地点Pbまでの距離Dが、予め決められている第2閾値D2以下であるか否かを判定し、上記(8)の【0052】によれば、分岐手前判定部143により自車両Mが分岐地点Pbの直前を走行していると判定された場合、分岐制御実行部147は、分岐する側の方向指示器230を点滅させるよう、方向指示器230を制御するから、自車両Mの走行予定の経路上の分岐地点Pbまでの距離Dが、予め決められている第2閾値D2以下である地点で、分岐制御実行部147は、分岐する側の方向指示器230を点滅させるよう、方向指示器230を制御すると認められる。

(12)上記(8)の【0049】及び【0050】によれば、自車両Mの現在位置から地図上の分岐地点Pbまでの距離Dが、予め決められている第1閾値D1以下である場合、路肩状況判定部145は、路肩に存在する他車両mの状況を、路肩状況として取得するものであり、上記(8)の【0053】によれば、路肩状況判定部145により、路肩に複数の他車両mが並んで走行していると判定された場合、分岐制御実行部147は、路肩に移動して複数の他車両mのうち最後尾の他車両mに向かう目標軌道を生成し、自車両Mに対して前走車両となった他車両mに追従走行するよう制御するものであり、該追従走行に先立って、分岐する側の方向指示器230を点滅させるように制御するものであるから、路肩状況判定部145により、路肩に複数の他車両mが並んで走行していると判定された場合、分岐制御実行部147は、まず分岐する側の方向指示器230を点滅させるように制御し、自車両Mに対して前走車両となった他車両mに追従走行するよう制御すると認められる。

上記(6)、(9)?(12)を総合すると、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「生成された目標軌道を自車両Mが通過するように制御する自動運転制御装置100を備える車両システム1が搭載される車両において、
左側の方向指示器と右側の方向指示器とを備える方向指示器230と、
自車両Mの走行予定の経路上の分岐地点Pbまでの距離Dが、予め決められている第2閾値D2以下である地点で、分岐する側の方向指示器230を点滅させるよう、方向指示器230を制御する分岐制御実行部147と、
自車両Mの現在位置から地図上の分岐地点Pbまでの距離Dが、予め決められている第1閾値D1以下である場合、路肩に存在する他車両mの状況を、路肩状況として取得する路肩状況判定部145と、を備え、
路肩状況判定部145により、路肩に複数の他車両mが並んで走行していると判定された場合、分岐制御実行部147は、まず分岐する側の方向指示器230を点滅させるように制御し、自車両Mに対して前走車両となった他車両mに追従走行するよう制御する、
車両システム1が搭載される車両。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1における「生成された」ことは、本願発明1における「設定された」ことに相当し、以下同様に、「目標軌道」は「走行経路」に、「通過」は「走行」に、「自動運転制御装置100を備える車両システム1が搭載される車両」は「自動運転車」に、「方向指示器230」は「方向指示部」に、「自車両M」は「自車」に、「経路」は「走行経路」に、「分岐地点Pb」は「分岐点」に、「分岐制御実行部147」は「制御部」に、「備え」ることは「有する」ことに、それぞれ相当する。
引用発明1における「生成された目標軌道を自車両Mが通過するように制御する自動運転制御装置100を備える車両システム1が搭載される車両」、「左側の方向指示器と右側の方向指示器とを備える方向指示器230」は、それぞれ、本願発明1における「設定された走行経路に沿って自動的に走行可能な自動運転車」、「自車の左折又は右折を表示する方向指示部」に相当する。
引用発明1における「自車両Mの走行予定の経路上の分岐地点Pb」は、自車両Mの走行中の車線と隣接する車線との分岐地点であるから、引用発明1における「自車両Mの走行予定の経路上の分岐地点Pbまでの距離Dが、予め決められている第2閾値D2以下である地点で」は、本願発明1における「自車が現在走行する車線と隣接する車線であって、自車が走行予定の上記走行経路に沿った分岐路を有する車線における分岐点から所定の距離だけ手前の地点にて」に相当し、引用発明1における「分岐する側の方向指示器230を点滅させるよう、方向指示器230を制御する分岐制御実行部147」は、本願発明1における「上記分岐路を有する車線に車線変更するために前記方向指示部を作動させる制御部」に相当する。
そうすると、本願発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりとなる。

<一致点>
「設定された走行経路に沿って自動的に走行可能な自動運転車において、
自車の左折又は右折を表示する方向指示部と、
自車が現在走行する車線と隣接する車線であって、自車が走行予定の上記走行経路に沿った分岐路を有する車線における分岐点から所定の距離だけ手前の地点にて、上記分岐路を有する車線に車線変更するために前記方向指示部を作動させる制御部と、
を有する自動運転車。」

<相違点1-1>
本願発明1は、「上記分岐路を有する車線の自車前側及び後側の所定の範囲における所定時間内の交通量を計測する交通量計測部」を有するのに対し、引用発明1は、「路肩に存在する他車両mの状況を、路肩状況として取得する路肩状況判定部145」を有する点。

<相違点1-2>
本願発明1は、「当該交通量計測部が計測した交通量と所定の交通量との比較結果に基づいて、前記方向指示部の作動に係る上記所定の距離を変更する変更部」を有するのに対し、引用発明1は、「路肩状況判定部145により、路肩に複数の他車両mが並んで走行していると判定された場合、分岐制御実行部147は、分岐する側の方向指示器230を点滅させるように制御する」点。

(2)判断
まず、相違点1-1について検討する。
引用発明1は、路肩状況判定部145により、路肩に複数の他車両mが並んで走行していると判定された場合、分岐制御実行部147は、自車両Mに対して前走車両となった他車両mに追従走行するよう制御するものであるから、路肩状況判定部145は、自車両Mの前側の路肩に他車両mが走行しているか否かを判定するものであり、自車両Mの後側の路肩については、他車両mが走行しているか否かを判定するものではなく、また、その判定をする必要がないものであることを勘案すると、引用発明1における「路肩状況判定部145」において、自車両Mの後側の路肩に他車両mが走行しているか否かを判定することの動機付けがあるとは認められない。
よって、引用発明1において、相違点1-1に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
したがって、相違点1-2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2について
(1)対比
本願発明2と引用発明1とを対比すると、本願発明2と本願発明1との共通点については、上記1(1)で説示したのと同様である。
引用発明1における「自車両Mの走行予定の経路上の分岐地点Pb」は、自車両Mの走行中の車線と隣接する車線との分岐地点であるから、引用発明1における「自車両Mの走行予定の経路上の分岐地点Pb」は、本願発明2における「自車が現在走行する車線と隣接する車線であって、自車が走行予定の上記走行経路に沿った分岐路を有する車線における分岐点」に相当し、引用発明1における「分岐する側の方向指示器230を点滅させるよう、方向指示器230を制御する分岐制御実行部147」は、本願発明2における「上記分岐路を有する車線に車線変更するために前記方向指示部を作動させる制御部」に相当する。
そして、引用発明1における「分岐地点Pbまでの距離Dが、予め決められている第2閾値D2以下である地点で」と本願発明2における「分岐点に達する前の所定の時間に達すると」とは、「分岐点に近づくと」という点で共通する。
そうすると、本願発明2と引用発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりとなる。

<一致点2>
「設定された走行経路に沿って自動的に走行可能な自動運転車において、
自車の左折又は右折を表示する方向指示部と、
自車が現在走行する車線と隣接する車線であって、自車が走行予定の上記走行経路に沿った分岐路を有する車線における分岐点に近づくと、上記分岐路を有する車線に車線変更するために前記方向指示部を作動させる制御部と、
を有する自動運転車。」

<相違点2-1>
制御部において、本願発明2は、「分岐点に達する前の所定の時間に達すると」、上記分岐路を有する車線に車線変更するために前記方向指示部を作動させるのに対し、引用発明1は、「分岐地点Pbまでの距離Dが、予め決められている第2閾値D2以下である地点で」、分岐する側の方向指示器230を点滅させるよう、方向指示器230を制御する点。

<相違点2-2>
本願発明2は、「上記分岐路を有する車線の自車前側及び後側の所定の範囲における所定時間内の交通量を計測する交通量計測部」を有するのに対し、引用発明1は、「路肩に存在する他車両mの状況を、路肩状況として取得する路肩状況判定部145」を有する点。

<相違点2-3>
本願発明2は、「当該交通量計測部が計測した交通量と所定の交通量との比較結果に基づいて、前記方向指示部の作動に係る上記所定の時間を変更する変更部」を有するのに対し、引用発明1は、路肩状況判定部145により、路肩に複数の他車両mが並んで走行していると判定された場合、分岐制御実行部147は、分岐する側の方向指示器230を点滅させるように制御する点。

(2)判断
事情に鑑み、まず相違点2-2から検討する。
相違点2-2は、相違点1-1と同様の相違点であるから、上記1(2)で説示したのと同様に、引用発明1において、相違点2-2に係る本願発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
したがって、相違点2-1及び2-3を検討するまでもなく、本願発明2は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
上記第5に説示したとおり、当業者であっても、本願発明1,2は、引用文献1に記載された発明に基いて容易に発明することができたものであるとはいえない。なお、本願発明3,4は、それぞれ、原査定時の請求項9,10に係る発明と同じであり、原査定において、拒絶理由の対象ではない。
したがって、原査定の拒絶理由は維持できない。

第7 当審拒絶理由について
1 特許法第36条第6項第2項について
当審では、請求項1?4における「自車が走行予定の上記走行経路に沿った分岐路を有する車線における当該分岐点」なる記載では、「当該分岐点」なる記載の前に、「分岐点」なる記載がないことから、不明確であるとの拒絶理由を通知したが、令和3年5月21日の手続補正において、上記「当該」が削除されて、当該拒絶理由は解消した。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-08-31 
出願番号 特願2020-35972(P2020-35972)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G08G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 下原 浩嗣  
特許庁審判長 一ノ瀬 覚
特許庁審判官 八木 誠
藤井 昇
発明の名称 自動運転車  

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