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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 F21S
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F21S
管理番号 1378287
審判番号 不服2021-1494  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-02-03 
確定日 2021-10-14 
事件の表示 特願2017-10946号「照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年8月2日出願公開、特開2018-120730号、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年1月25日の出願であって、令和2年7月30日付けで拒絶理由通知がされ、同年9月29日に意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲について補正をする手続補正書が提出されたが、同年10月21日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされたものであり、それに対して令和3年2月3日に拒絶査定不服審判の請求と同時に、特許請求の範囲及び明細書について補正する手続補正書が提出され、当審が同年6月17日付けで拒絶理由通知をし、同年8月19日に意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲及び明細書について補正をする手続補正書が提出されたものである。

第2 当審拒絶理由について
・特許法第36条第6項第1号について
当審では、筐体の開口を蓋で覆うことで、通信モジュールの落下及び盗難の防止という課題を解決できると解されるところ、請求項1の「前記接続用端子を覆うように前記筐体に設けられた蓋と」なる記載では、必ずしも発明の詳細な説明に記載の上記課題を解決できるものとは認められないから、請求項1における上記記載は、発明の詳細な説明によって技術的に裏付けられたものとはいえない旨の拒絶理由、及び、請求項2の「前記光源は、前記筐体の内部空間であって前記開口から光を発する位置に配置され」なる記載、並びに、「前記蓋は、前記開口を覆う」なる記載では、上記光源からの光が開口から外に出るためには、上記蓋は透光性があるものと解されるが、発明の詳細な説明には、蓋の材料として透光性があるものは何ら記載されておらず、示唆もなく、金属材料を使うことが例示されているのみであり、光源からの光が開口から外に出るようにするための具体的な構成として、発明の詳細な説明には、光源の位置に合わせて蓋に光源用窓を設けることが開示されているが、このことと、請求項2の上記記載とは、整合していない旨の拒絶理由を通知した。
それに対して、令和3年8月19日に提出された手続補正書により、請求項1の上記記載は、「前記筐体の開口を覆うように前記筐体に設けられた蓋と」に補正され、請求項2の上記記載が削除されるとともに、請求項1において、「前記蓋は、前記筐体の内部空間に装着された前記無線通信モジュールの一部が観察可能である第1貫通孔と、前記光源の光が外部に出力されるように第2貫通孔とが形成され」との補正がされて、上記拒絶理由は解消された。

第3 本願発明
本願の請求項1?6に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」?「本願発明6」という。)は、令和3年8月19日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。

「【請求項1】
一方の底面が開口した内部空間を有する筐体と;
前記筐体の内部空間に設けられる光源と;
前記筐体の内部空間に着脱可能である蓄電池と;
前記筐体の内部空間に設けられ、前記光源の点灯動作或いは前記蓄電池への充放電動作を行う電源と;
アンテナを有し少なくとも外部装置と無線通信を行う無線通信モジュールが前記筐体の内部空間に挿入された場合に、前記アンテナが操作可能な位置に配置され、かつ前記無線通信モジュールを前記電源に接続する接続用端子と;
前記筐体の開口を覆うように前記筐体に設けられた蓋と;
を具備し、
前記蓋は、前記筐体の内部空間に装着された前記無線通信モジュールの一部が観察可能である第1貫通孔と、前記光源の光が外部に出力されるように第2貫通孔とが形成され、
前記無線通信モジュールは、前記第1貫通孔よりも大きく、
前記蓋は、前記無線通信モジュールが前記筐体の内部空間に挿入された後に前記筐体に取り付けられ、
前記アンテナが操作されたときに点検動作を開始する照明装置。
【請求項2】
前記蓄電池は、前記開口から前記筐体の内部空間に着脱可能であって、前記筐体の内部空間への装着時には前記筐体の内部空間の一部領域に配置され、
前記電源は、前記筐体の内部空間の一部領域以外の他の領域に配置され、
前記接続用端子は、前記無線通信モジュールが前記開口から前記筐体の内部空間に挿入された場合に、前記無線通信モジュールを前記電源に接続する請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記筐体の内部空間の他の領域に、前記無線通信モジュールを収容可能である収容スペースが形成される請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記無線通信モジュールは、前記筐体の内部空間への装着時に、前記無線通信モジュールの前記アンテナ部が前記第1貫通孔から外部に突出する請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記電源は、前記接続用端子を有し、前記収容スペースが形成される請求項3または4に記載の照明装置。
【請求項6】
前記電源は、前記開口側の面上に、所定の処理の実行の有無を示すモニタを有し、
前記無線通信モジュールは、前記筐体の内部空間の装着時には、前記モニタの周辺に位置する請求項2?5のいずれか一つに記載の照明装置。」

第4 原査定の概要
この出願の下記に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



・請求項 1?6
・引用文献等 1?4

・引用文献等一覧
1.特開2008-192334号公報
2.特開2014-220162号公報
3.特開2008-192333号公報
4.特開2004-185978号公報

第5 引用文献の記載事項等
1 引用文献1について
引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審が付与。以下同様。)。

(1)「【技術分野】
【0001】
この発明は、商用電源が遮断された場合に、蓄電池駆動により点灯して所要箇所の照明を行う非常用照明器具に関するものである。」

(2)「【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下添付図面を参照して、本発明に係る非常用照明器具の実施例を説明する。各図において同一の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。実施例に係る非常用照明器具は、図1に示すように、有底筒状の容器である本体10に、蓄電池ボックス20、ユニットケース30が配設される。
【0013】
蓄電池ボックス20は、図6に示すように平面形状がほぼU字状である。ユニットケース30は、図2に示すように蓄電池ボックス20が収納されるスペースを除く本体10内のスペースに配置され、中央部に向かって反射板41の形状に対応して放物面に近い傾斜面を有し、中央部にはランプソケット43が埋設されている。
【0014】
反射板41は、上記ユニットケース30と蓄電池ボックス20により本体10の内側中央部に形成される穴部42へ配置される。ランプソケット43には、光源であるハロゲンランプ等のランプ44が嵌合される。
【0015】
ユニットケース30には、図3に示されるような回路などが収納されている。本体10に設けられているACコネクタ11を介して交流電源(AC100V)に接続され、蓄電池ボックス20内の蓄電池21を充電する充電回路31、蓄電池21の電力に基づきランプ44を点灯させると共に点検等の各種場合に制御を行う点灯回路33、点灯回路33がリモコンと通信を行うためのリモコンモジュール35、点灯回路33が有線ラインにより主操作盤などと通信を行うための有線通信コネクタ34が備えられている。」

(3)「【0023】
更に、本実施例では、図2、図4、図12に示すリモコンモジュール35が図4に示すようにプリント配線板51と蓄電池ボックスの間に(図4の基板面51b側に)配置されている。このリモコンモジュール35は、受光素子と発光素子などの無線通信部品であり、低発熱性の電子部品、または低発熱性の電子部品により構成されるモジュールを構成し、プリント配線板51の基板面51a側に設けられる高発熱性の部品が発生する熱的影響を、リモコンモジュール35が緩和し、熱が蓄電池側へ伝導し難くなり、蓄電池の劣化を抑制する。
【0024】
また、リモコンモジュール35は、平面形状がほぼU字状の蓄電池ボックス20において、コネクタ29が設けられている端部とは反対側の端部に設けられており、プリント配線板51と蓄電池とを接続する配線長の短縮に寄与している。ユニットケース30側のコネクタ36はリモコンモジュール35のコネクタ29と結合するもので、蓄電池ボックス20内において蓄電池がコネクタ29に近く配置されている。そして、プリント配線板51とコネクタ36、29が接続され、コネクタ29から蓄電池ボックス20内において複数本の蓄電池が接続されコネクタ29に戻るように配線がなされている。・・・
【0026】
以上の構成において非常用照明器具の設置及び組み立ての場合には、まず、ユニットケース30が配設された状態の本体10を天井にネジにより配置する。このとき、ACコネクタ11の機能を有する電源端子台55に交流電源(AC100V)を接続すると共に有線通信コネクタ34の機能を有する信号端子台54と通信ケーブルを接続する。この状態の本体10に対し、図6に示されるように蓄電池ボックス20を支え、本体10内の空きスペースに蓄電池ボックス20を合わせると共に接続部を構成するコネクタ29をユニットケース30の接続部を構成するコネクタ36に対応付けて、蓄電池ボックス20を本体10方向へ押し上げ、バネ22、23の段部22a、23aと突起13、14と係合させる。
【0027】
本体10の開口側からは、有底筒状のカバー60が被せられる。図1に示されるように、カバー60の表面中央部には、ランプ44の照射光が射出する投光開口を構成する穴61が形成され、また表面には、充電モニタ用LED47、ランプモニタ用LED48、ツマミ49、リモコンモジュール35にそれぞれ対応する位置に穴64、65、66、67が形成されている。」

図1


図3


図6


(4)引用文献1の記載から認められること
ア 上記(2)の【0012】?【0014】、上記(3)の【0027】及び図1の記載によれば、非常用照明器具は、有底筒状の本体10と、本体10内のスペースの中央部に埋設されるランプソケット43に嵌合されるランプ44と、本体10内のスペースに収納される蓄電池ボックス20と、本体10内のスペースに配置されるユニットケース30と、本体10の開口側から被せられるカバー60と、を有することが認められる。

イ 上記(2)の【0015】の記載によれば、蓄電池ボックス20には、蓄電池21が備えられること、及び、ユニットケース30には、蓄電池21を充電する充電回路31と、ランプ44を点灯させると共に点検等の各種場合に制御を行う点灯回路33と、リモコンと通信を行うためのリモコンモジュール35が備えられることが認められ、上記(3)の【0024】及び図3も参照すると、ユニットケース30側のコネクタ36はリモコンモジュール35のコネクタ29と結合し、点灯回路33を介してリモコンモジュール35を蓄電池21と接続することが認められる。

ウ 上記(3)の【0023】の記載によれば、リモコンモジュール35は、受光素子と発光素子などの無線通信部品により構成されることが認められ、上記(3)の【0027】及び図1の記載によれば、カバー60には、ランプ44の照射光が射出する投光開口を構成する穴61と、リモコンモジュール35に対応する位置に穴67が形成されることが認められる。

エ 上記(3)の【0026】、【0027】及び図6,1の記載によれば、カバー60は、蓄電池ボックス20とユニットケース30が本体10内のスペースに収容された後に本体10に被せられることが認められる。

(5)上記(4)ア?エを総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「有底筒状の本体10と、
本体10内のスペースの中央部に埋設されるランプソケット43に嵌合されるランプ44と、
本体10内のスペースに収納される蓄電池ボックス20と、
本体10内のスペースに配置されるユニットケース30と、
本体10の開口側から被せられるカバー60と、
を有し、
蓄電池ボックス20には、蓄電池21が備えられ、
ユニットケース30には、蓄電池21を充電する充電回路31と、ランプ44を点灯させると共に点検等の各種場合に制御を行う点灯回路33と、リモコンと通信を行うための、受光素子と発光素子などの無線通信部品により構成されるリモコンモジュール35が備えられ、
ユニットケース30側のコネクタ36はリモコンモジュール35のコネクタ29と結合し、点灯回路33を介してリモコンモジュール35を蓄電池21と接続し、
カバー60には、ランプ44の照射光が射出する投光開口を構成する穴61と、リモコンモジュール35に対応する位置に穴67が形成され、
カバー60は、蓄電池ボックス20とユニットケース30が本体10内のスペースに収容された後に本体10に被せられる、非常用照明器具。」

2 引用文献2について
引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0031】
なお、実施の形態1において、光照射側とは、光が出射する側であって、LEDユニット100を基準にして、LEDユニット100から光が取り出される側である。図1Aでは、光照射側が上側となるように、また、図1Bでは、光照射側が下側となるように図示されている。
【0032】
LEDユニット100は、光照射側の中心部分に、LEDユニット100の内部に向かって凹んだ円筒状の凹部を有する。凹部の底面には、第一接続部190が設けられる。凹部には、機能付加装置200が挿入され、第一接続部190には、機能付加装置200の第二接続部210が接続される。すなわち、LEDユニット100には、機能付加装置200が接続される。
【0033】
機能付加装置200は、LEDユニット100に接続されることによってLEDユニット100に機能を付加する装置である。機能付加装置200は、実施の形態1では、センサ部250(機能付加部)によって赤外線を検知し、LEDユニット100の点灯及び消灯を制御するための制御信号をLEDユニット100に送信する。
【0034】
LEDユニット100は、機能付加装置200が接続されていないときは、通常通り、壁等に設けられたスイッチのON・OFFに応じて点灯及び消灯する動作を行う。
【0035】
LEDユニット100は、ユーザによって機能付加装置200が接続されたときは、赤外線を検知するいわゆる人感センサ付のLEDユニットとして、赤外線の検知後、一定時間点灯した後、自動的に消灯する動作を行う。つまり、機能付加装置200によって、LEDユニット100には、赤外線検知機能が付加される。
【0036】
次に、実施の形態1に係るLEDユニット100及び機能付加装置200の詳細構成について、図2を用いて説明する。図2は、実施の形態1に係るLEDユニット100の側面図及び断面図である。図2の(a)は、LEDユニット100の側面図、図2の(b)は、LEDユニット100の断面図である。なお、図2は、光照射側を下側とした場合の図であり、機能付加装置200が接続された状態におけるLEDユニット100の断面図である。
【0037】
図2に示されるように、実施の形態1に係るLEDユニット100は、透光性カバー110と、筐体120と、支持台130と、LEDモジュール140と、回路基板160(駆動回路)と、熱伝導シート170と、接続ピン180と、第一接続部190とを備える。」

図1A


図2


3 引用文献3について
引用文献3には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0023】
以上の構成において非常用照明器具の設置及び組み立ての場合には、まず、ユニットケース30が設けられた状態の本体10を天井にネジにより配置する。このとき、ACコネクタ11に交流電源(AC100V)を接続すると共に有線通信コネクタ34と通信ケーブルを接続する。この状態の本体10に対し、図6に示されるように蓄電池ボックス20を支え、本体10内の空きスペースに蓄電池ボックス20を合わせると共にコネクタ29をユニットケース30のコネクタ36に対応付けて、蓄電池ボックス20を本体10方向へ押し上げ、バネ22、23の段部22a、23aと突起13、14と係合させる。
【0024】
また、蓄電池ボックス20を取り外す場合には、蓄電池ボックス20に設けられたバネ22、23の端部を適当な指を使って押圧し、図6に示されるように蓄電池ボックス20を支えながら本体10から引き出す。この場合に、指をバネ22、23の端部へ添わせ易く、両手で蓄電池ボックス20を支えるなどの作業が行い易く、また、バネ22の位置近傍にコネクタ29が存在するため、蓄電池ボックス20の引き出しと共にコネクタ29の結合を解除がなされ、コネクタ29、36の破損を回避できるものである。」

図6


4 引用文献4について
引用文献4には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【0034】
本実施形態に係る照明システム1aは、例えばオフィス等の比較的広い空間を有する照明エリアR内に無線LANを構築可能なものであり、複数の非常用照明器具10a及び複数の常用照明器具30等を備えている。
【0035】
まず、非常用照明器具10aについて説明する。非常用照明器具10aは夫々、例えば直管型蛍光ランプ等からなる光源としての常用ランプ14及び電球等からなる光源としての非常用ランプ16とを備えた直付け型の蛍光灯器具である。なお、非常用照明器具10aは埋込み型等の天井装置型であればよい。
【0036】
詳しくは、非常用照明器具10aは、器具本体11と、反射笠12と、ランプソケット13と、照明用の常用ランプ14と、制光体15と、非常用ランプ16と、無線中継器17と、常用点灯制御部22を有する点灯装置20と、非常用点灯制御部60aと、非常用電源55とを備えている。」

(2)「【0039】
器具本体11の中間部は下面が蓋部19aで閉鎖された空間部19となっている。この空間部19には非常用ランプ16及び無線中継器17が収容されている。非常用ランプ16は非常用点灯制御部60aを介して後述するように非常用電線3及び共通電線4と電気的に接続している。無線中継器17が有する一対のアンテナ17aは蓋部19aを貫通して下側に突出している。なお、図1ではアンテナ17aは蓋部19aに対して略垂直に突出しているが、アンテナ17aと蓋部19aとのなす角度は任意に設定可能であり、水平に折れ曲がっていてもよい。」

図1


第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、後者の「本体10」は、前者の「筐体」に相当し、以下同様に、「本体10内のスペース」は「前記筐体の内部空間」に、「ランプ44」は「光源」に、「被せられる」ことは「覆う」ことに、「カバー60」は「蓋」に、「有」することは「具備」することに、「蓄電池21」は「蓄電池」に、「充電回路31」及び「点灯回路33」は「電源」に、「リモコン」は「外部装置」に、「リモコンモジュール35」は「無線通信モジュール」に、「コネクタ36」は「接続端子」に、「穴61」は「第2貫通孔」に、「穴67」は「第1貫通孔」に、「非常用照明器具」は「照明装置」に、それぞれ相当する。
後者の「有底筒状の本体10」は、内部にスペースを有し、開口も有するものであるから、前者の「一方の底面が開口した内部空間を有する筐体」に相当する。
後者の「本体10内のスペースの中央部に埋設されるランプソケット43に嵌合されるランプ44」は、前者の「前記筐体の内部空間に設けられる光源」に相当し、後者の「本体10の開口側から被せられるカバー60」は、前者の「前記筐体の開口を覆うように前記筐体に設けられた蓋」に相当し、後者の「カバー60には、ランプ44の照射光が射出する投光開口を構成する穴61と、リモコンモジュール35に対応する位置に穴67が形成され」ることは、穴67からリモコンモジュール35の少なくとも一部が見えるのは明らかであるから、前者の「前記蓋は、前記筐体の内部空間に装着された前記無線通信モジュールの一部が観察可能である第1貫通孔と、前記光源の光が外部に出力されるように第2貫通孔とが形成され」ることに相当する。
上記(3)の【0026】及び図6を参照すると、後者の「蓄電池ボックス20」は、本体10に着脱可能であるのは明らかであるから、後者の「本体10内のスペースに配置されるユニットケース30」に「備えられ」る「蓄電池21」は、前者の「前記筐体の内部空間に着脱可能である蓄電池」に相当する。
後者の「蓄電池21を充電する充電回路31」及び「ランプ44を点灯させる」「点灯回路33」は、本体10内のスペースに配置されるユニットケース30に備えられるものであるから、前者の「前記筐体の内部空間に設けられ、前記光源の点灯動作或いは前記蓄電池への充放電動作を行う電源」に相当する。
後者では、リモコンモジュール35はユニットケース30に備えられるから、後者の「カバー60は、蓄電池ボックス20とユニットケース30が本体10内のスペースに収容された後に本体10に被せられる」ことは、前者の「前記蓋は、前記無線通信モジュールが前記筐体の内部空間に挿入された後に前記筐体に取り付けられ」ることに相当する。
後者の「コネクタ36」は、リモコンと通信を行うためのリモコンモジュール35のコネクタ29と結合し、点灯回路33を介してリモコンモジュール35を蓄電池21と接続するものであるから、前者の「アンテナを有し少なくとも外部装置と無線通信を行う無線通信モジュールが前記筐体の内部空間に挿入された場合に、前記アンテナが操作可能な位置に配置され、かつ前記無線通信モジュールを前記電源に接続する接続用端子」と、「少なくとも外部装置と無線通信を行う無線通信モジュールが前記筐体の内部空間に挿入された場合に、前記無線通信モジュールを前記電源に接続する接続用端子」という点で共通する。
そうすると、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりとなる。

<一致点>
「一方の底面が開口した内部空間を有する筐体と、
前記筐体の内部空間に設けられる光源と、
前記筐体の内部空間に着脱可能である蓄電池と、
前記筐体の内部空間に設けられ、前記光源の点灯動作或いは前記蓄電池への充放電動作を行う電源と、
少なくとも外部装置と無線通信を行う無線通信モジュールが前記筐体の内部空間に挿入された場合に、前記無線通信モジュールを前記電源に接続する接続用端子と、
前記筐体の開口を覆うように前記筐体に設けられた蓋と、
を具備し、
前記蓋は、前記筐体の内部空間に装着された前記無線通信モジュールの一部が観察可能である第1貫通孔と、前記光源の光が外部に出力されるように第2貫通孔とが形成され、
前記蓋は、前記無線通信モジュールが前記筐体の内部空間に挿入された後に前記筐体に取り付けられる照明装置。」

<相違点1>
本願発明1は、無線通信モジュールが、「アンテナを有し、」「前記アンテナが操作可能な位置に配置され、」「前記アンテナが操作されたときに点検動作を開始する」のに対し、引用発明は、リモコンモジュール35が、受光素子と発光素子などの無線通信部品により構成され、アンテナを有しない点。

<相違点2>
本願発明1は、無線通信モジュールが、「第1貫通穴より大きい」のに対し、引用発明は、リモコンモジュール35が、穴67より大きいのか不明である点。

(2)判断
まず、相違点1について検討する。
アンテナは、「空間に電波を放射したり、空間を伝わってきた電波をとらえたりする装置。空中線。」(大辞林第3版)を意味するところ、引用文献2?4には、照明装置に設けられた無線通信モジュールがアンテナを有し、アンテナを操作することによって点検動作を開始することについて、何ら記載されておらず、示唆もない。
また、照明装置に設けられた無線通信モジュールがアンテナを有し、アンテナを操作することによって点検動作を開始することが、本願出願前の技術常識や周知技術であることを認めるに足る証拠もない。
よって、引用発明において、相違点1に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2?4に記載された事項に基いて、本願出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2?6について
本願発明2?6は、本願発明1の全ての構成を含み、更に請求項2?6に記載された事項により特定される限定を付加するものであるから、上記1(2)で説示したのと同様に、引用発明及び引用文献2?4に記載された事項に基いて、本願出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定についての判断
上記第5で説示したとおり、当業者であっても、本願発明1?6は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?4に記載された事項に基いて、本願出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定の拒絶理由は維持できない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-09-28 
出願番号 特願2017-10946(P2017-10946)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F21S)
P 1 8・ 537- WY (F21S)
最終処分 成立  
前審関与審査官 谷口 東虎當間 庸裕  
特許庁審判長 一ノ瀬 覚
特許庁審判官 八木 誠
藤井 昇
発明の名称 照明装置  
代理人 河野 仁志  

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