ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01P |
---|---|
管理番号 | 1378446 |
審判番号 | 不服2020-17442 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-12-21 |
確定日 | 2021-10-19 |
事件の表示 | 特願2017- 78251「層間伝送線路」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月15日出願公開,特開2018-182500,請求項の数(6)〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成29年4月11日の出願であって,その手続の経緯の概要は以下のとおりである。 令和 2年 1月24日付け 拒絶理由通知書 令和 2年 3月25日 意見書・手続補正書の提出 令和 2年 5月11日付け 拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書 令和 2年 7月20日 意見書・手続補正書の提出 令和 2年 8月31日付け 拒絶査定 令和 2年12月21日 審判請求書・手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定の拒絶の理由の概要は,次のとおりである。 本願は,請求項1?6の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 「複数の同心円」とは,「最も内側の前記同心円」(以下,「C1」という。)と「最も内側以外の」1つの「前記同心円」(以下,「C2」という。)の2つの同心円からなる態様を包含するが,当該態様を含む前記記載は,「信号ビア5を伝送する高周波信号を,効率よく閉じ込める」(段落[0019])という課題を解決するための手段が反映されていない。 よって,請求項1?6に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものでない。 第3 本願発明 本願の請求項1?6に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」?「本願発明6」といい,これらを総称して「本願発明」という。)は,令和2年12月21日の手続補正書によって補正された特許請求の範囲に記載される以下のとおりのものであると認める。 「 【請求項1】 積層された複数の誘電体層(L1?L3)と, 前記複数の誘電体層を積層方向に貫通し,積層された前記複数の誘電体層の両外面に形成された信号線パターン(3,4)同士を接続する信号ビア(5)と, 前記複数の誘電体層の間にそれぞれ配置され,前記信号ビアを中心とした円形の領域である除去部位(61)の周囲を覆うグランドプレーン(6)と, 前記複数の誘電体層のうち少なくとも1層を該誘電体層の積層方向に貫通し,かつ,前記信号ビアを中心とする複数の同心円に沿って配置され,前記グランドプレーンと導通する複数のグランドビア(7,7a,7b)と, を備え, 前記除去部位の外周縁が,前記信号ビアを内部導体とする同軸線路において外部導体が配置されるべき位置と一致するように前記同軸線路のインピーダンスに従って設定され, 前記グランドビアが配置される前記複数の同心円は,最も内側の前記同心円が前記除去部位の外周縁が形成する円であり,最も内側以外の前記同心円の半径が前記信号ビアを伝搬する信号の管内波長の1/2の整数倍に設定された 層間伝送線路。 【請求項2】 請求項1に記載の層間伝送線路であって, 前記複数のグランドビアは,それぞれが前記複数の同心円のいずれかに外接するように配置されている, 層間伝送線路。 【請求項3】 請求項2に記載の層間伝送線路であって, 隣接する二つの前記同心円のうち,外側の同心円に外接する複数のグランドビアは,前記同心円の中心から見て,内側の同心円に外接する複数のグランドビアの間に位置するように配置されている, 層間伝送線路。 【請求項4】 請求項1に記載の層間伝送線路であって, 前記複数のグランドビアの一部(7b)は,前記複数の同心円のいずれかの径をビア径とするように構成されている, 層間伝送線路。 【請求項5】 積層された複数の誘電体層(L1?L3)と, 前記複数の誘電体層を積層方向に貫通し,積層された前記複数の誘電体層の両外面に形成された信号線パターン(3,4)同士を接続する信号ビア(5)と, 前記複数の誘電体層の間にそれぞれ配置され,前記信号ビアを中心とした円形の領域である除去部位(61)の周囲を覆うグランドプレーン(6)と, 前記複数の誘電体層のうち少なくとも1層を該誘電体層の積層方向に貫通し,かつ,前記信号ビアを中心とする複数の同心円に沿って配置され,前記グランドプレーンと導通する複数のグランドビア(7,7a,7b)と, を備え, 前記除去部位の外周縁が,前記信号ビアを内部導体とする同軸線路において外部導体が配置されるべき位置と一致するように前記同軸線路のインピーダンスに従って設定され, 前記グランドビアが配置される前記複数の同心円は,最も内側の前記同心円が前記除去部位の外周縁が形成する円であり,最も内側以外の前記同心円の半径が前記ビアを伝搬する信号の管内波長の1/2の整数倍に設定され,前記複数のグランドビアの一部(7b)は,前記複数の同心円のいずれかの径をビア径とするように構成されている, 層間伝送線路。 【請求項6】 請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の層間伝送線路であって, 前記誘電体層を3層以上有し,前記グランドビアの少なくとも一部(7a)は,前記信号線パターンが形成される二つの誘電体層以外の誘電体層である中間層を貫通し,前記中間層に接する前記複数のグランドプレーンと導通するように形成された, 層間伝送線路。」 第4 特許法第36条第6項第1号について 1 本願発明の課題 本願の発明の詳細な説明には【発明が解決しようとする課題】として,【0004】に「伝送する信号の周波数が高くなると,ビアのランドパターンや信号線パターン等,パターン間のクリアランスが確保できず,製造が困難になるという課題が見出された。」及び【0006】に「本開示は,伝送信号の周波数によらず製造が容易な層間伝送線路を実現する技術を提供する。」の記載があるから,本願発明の課題は,ビアのランドパターンや信号線パターン等,パターン間のクリアランスを確保することで,伝送信号の周波数によらず製造が容易な層間伝送線路を実現すること,にあるといえる。 2 本願発明の課題を解決するための手段 本願の発明の詳細な説明(下線は当審が付与。)には【課題を解決するための手段】として,【0007】,【0008】に,次の記載がある。 「【0007】 本開示の1つの局面による層間伝送線路は,複数の誘電体層(L1?L3)と,信号ビア(5)と,グランドプレーン(6)と,複数のグランドビア(7)と,を備える。 複数の誘電体層は,積層されている。信号ビアは,複数の誘電体層を積層方向に貫通し,積層された複数の誘電体層の両外面に形成された信号線パターン同士を接続する。グランドプレーンは,複数の誘電体層の間にそれぞれ配置され,信号ビアを中心とした円形の領域である除去部位の周囲を覆う。複数のグランドビアは,複数の誘電体層のうち少なくとも1層を誘電体層の積層方向に貫通し,かつ,信号ビアを中心とする複数の同心円に沿って配置され,グランドプレーンと導通する。 【0008】 このような構成によれば,グランドビアの配置の自由度が高く,ビア間のクリアランスを容易に確保することができるため,層間伝送線路の設計,製造を容易にすることができる。」 したがって,ビア間のクリアランスを容易に確保することで,層間伝送線路の設計,製造を容易にすることができるためには, 複数の誘電体層(L1?L3)と,信号ビア(5)と,グランドプレーン(6)と,複数のグランドビア(7)と,を備え, 複数の誘電体層は,積層され,信号ビアは,複数の誘電体層を積層方向に貫通し,積層された複数の誘電体層の両外面に形成された信号線パターン同士を接続し,グランドプレーンは,複数の誘電体層の間にそれぞれ配置され,信号ビアを中心とした円形の領域である除去部位の周囲を覆い,複数のグランドビアは,複数の誘電体層のうち少なくとも1層を誘電体層の積層方向に貫通し,かつ,信号ビアを中心とする複数の同心円に沿って配置され,グランドプレーンと導通する構成とする。 ことが必要であること,が発明の詳細な説明に記載されている。 3 判断 (1)本願発明1について 本願発明1は,「積層された複数の誘電体層(L1?L3)と,前記複数の誘電体層を積層方向に貫通し,積層された前記複数の誘電体層の両外面に形成された信号線パターン(3,4)同士を接続する信号ビア(5)と,前記複数の誘電体層の間にそれぞれ配置され,前記信号ビアを中心とした円形の領域である除去部位(61)の周囲を覆うグランドプレーン(6)と,前記複数の誘電体層のうち少なくとも1層を該誘電体層の積層方向に貫通し,かつ,前記信号ビアを中心とする複数の同心円に沿って配置され,前記グランドプレーンと導通する複数のグランドビア(7,7a,7b)と,を備え,」るから,上記2.に記載した,ビア間のクリアランスを容易に確保することで,製造が容易な層間伝送線路を実現するという本願発明の課題を解決するための手段,は記載されている。 また,他に特許法第36条第6項第1号に規定する用件を満たしていない理由もない。 よって,請求項1の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。 (2)本願発明2?6について 本願発明2?6は,本願発明1の構成を含むから,同様に特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。 第5 むすび 以上のとおり,原査定の拒絶の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-09-30 |
出願番号 | 特願2017-78251(P2017-78251) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(H01P)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 岸田 伸太郎 |
特許庁審判長 |
伊藤 隆夫 |
特許庁審判官 |
吉田 隆之 佐藤 智康 |
発明の名称 | 層間伝送線路 |
代理人 | 名古屋国際特許業務法人 |
代理人 | 名古屋国際特許業務法人 |