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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1378569
審判番号 不服2020-15390  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-06 
確定日 2021-10-19 
事件の表示 特願2016- 77753「無線基地局及び通信制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月12日出願公開、特開2017-188834、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成28年4月8日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

令和元年12月 5日付け 拒絶理由通知書
令和2年 2月10日 意見書の提出
令和2年 8月12日付け 拒絶査定
令和2年11月 6日 審判請求書及び手続補正書の提出
令和3年 3月26日 上申書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和2年8月12日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記(引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項1,5に対して,引用文献2及び3

<引用文献等一覧>
引用文献2. 国際公開第2014/128805号
引用文献3. InterDigital Communications,"Architecture-related Aspects for Interworking between NR and LTE",3GPP TSG-RAN WG2#93bis R2-162786,2016年4月11日

第3 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明(以下,「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は,令和2年11月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
張出装置と中央集約装置とを含み、前記張出装置はユーザ装置と無線通信を行い、前記中央集約装置は前記ユーザ装置と無線通信を行わない無線基地局であって、
前記中央集約装置は、
前記ユーザ装置がアクティブタイム中であるか否かを示す動作状態情報を前記張出装置へ通知する動作状態通知部を備え、
前記張出装置は、
前記動作状態情報を受信する動作状態情報取得部と、
前記動作状態情報に基づいて、前記ユーザ装置との間の信号の送信と受信の少なくとも一方又は前記中央集約装置との間の信号の送信と受信の少なくとも一方を制御する制御部と、
を備える無線基地局。
【請求項2】
前記制御部は、前記ユーザ装置がアクティブタイム中でないことを示す前記動作状態情報を受信した場合、前記中央集約装置に対する前記ユーザ装置との間の無線品質を示す品質情報の送信を抑制する請求項1に記載の無線基地局。
【請求項3】
前記制御部は、前記ユーザ装置からランダムアクセスプリアンブルを受信した後、前記中央集約装置から前記ユーザ装置がアクティブタイム中であることを示す前記動作状態情報を受信した場合、前記ユーザ装置からの前記ランダムアクセスプリアンブルの受信を抑制する請求項1に記載の無線基地局。
【請求項4】
前記制御部は、前記ユーザ装置がアクティブタイム中でないことを示す前記動作状態情報を受信した後、前記中央集約装置から前記ユーザ装置に対する下りリンク制御信号を受信した場合、前記中央集約装置に対してエラーを通知する請求項1に記載の無線基地局。
【請求項5】
張出装置と中央集約装置とを含み、前記張出装置はユーザ装置と無線通信を行い、前記中央集約装置は前記ユーザ装置と無線通信を行わない無線基地局における通信制御方法であって、
前記中央集約装置が、前記ユーザ装置がアクティブタイム中であるか否かを示す動作状態情報を前記張出装置へ通知するステップと、
前記張出装置が、前記中央集約装置から受信した前記動作状態情報に基づいて、前記ユーザ装置との間の信号の送信と受信の少なくとも一方又は前記中央集約装置との間の信号の送信と受信の少なくとも一方を制御するステップと、
を含む通信制御方法。」

第4 引用文献,引用発明及び技術的事項
1 引用文献2について
原査定の拒絶の理由で引用され、本願優先日前に公開された引用文献2(国際公開第2014/128805号)には,以下の記載がある。(なお,下線は当審において付与した。)

(1)「上述した態様によれば、異なる無線局によって運用される複数セルのキャリアアグリゲーションにおいて、無線端末(UE)の無駄な電力消費を抑制することに寄与する無線通信システム、無線局、無線端末、通信制御方法、及びプログラムを提供できる。」(段落【0023】)

(2)「本実施形態に係る無線通信システムは、第1の無線局1、第2の無線局2、及び無線端末3を含む。無線局1及び2は、コアネットワーク4に接続され、第1のセル10及び第2のセル20をそれぞれ運用する。無線局1及び2は、例えば、無線基地局、基地局制御局、又は無線基地局の一部の機能(プロトコルレイヤ)のみを有する簡易無線基地局である。」(段落【0026】)

(3)「無線局間キャリアアグリゲーションが設定されているときの無線端末3の間欠的な受信又は送信を可能とするために、本実施形態の無線通信システムは、以下のように動作する。すなわち、無線局1又は2は、無線端末3に制約情報(Constraint information)を送信する。制約情報は、無線局間キャリアアグリゲーションが行われているときの第1のセル10及び第2のセル20の少なくとも一方における受信制限及び送信制限の少なくとも一方を特定するために必要な情報要素を含む。ここで、受信制限は、信号の送受信単位(例えば1サブフレーム)期間以上にわたる無線端末3における下りリンク信号の受信に関する制限であり、例えば無線端末3が所定期間(又はタイミング)で所定の下りリンク信号を受信又は復号しなくてもよいこと、又は所定期間(又はタイミング)で所定の下りリンク信号を受信又は復号すべきであること、などを含む。所定の下りリンク信号は、例えば、下りリンク制御チャネル(例えば、LTEのPDCCH)で送信される信号、ページングを送信するための信号、システム情報を送信するための信号、などである。」(段落【0032】)

(4)「図2は、第1の無線局1の構成例を示すブロック図である。無線通信部11は、無線端末3から送信された上りリンク信号(uplink signal)をアンテナを介して受信する。受信データ処理部13は、受信された上りリンク信号を復元する。得られた受信データは、通信部14を経由して他のネットワークノード、例えばコアネットワーク4のデータ中継装置若しくはモビリティ管理装置、又は他の無線局に転送される。例えば、無線端末3から受信された上りリンクユーザーデータは、上位ネットワークのデータ中継装置に転送される。また、無線端末3から受信された制御データのうち非アクセス層(Non-Access Stratum(NAS))の制御データは、上位ネットワークのモビリティ管理装置に転送される。さらに、受信データ処理部13は、無線局2に送信される制御データを通信制御部15から受信し、これを通信部14を経由して無線局2に送信する。」(段落【0047】)

(5)「図5は、手順例1に係る通信制御方法を示すシーケンス図の一例である。ステップS101及びS102では、第1の無線局1は、制約情報を無線端末3及び第2の無線局2に送信する。ステップS103では、第1の無線局1及び無線端末3は、制約情報に基づいて特定される受信制限(例えば、受信ギャップ)又は送信制限(例えば、送信ギャップ)に従って、第1のセル10において信号を送受信する。ステップS104では、第2の無線局2及び無線端末3は、制約情報に基づいて特定される受信制限(例えば、受信ギャップ)又は送信制限(例えば、送信ギャップ)に従って、第2のセル20において信号を送受信する。」(段落【0055】)

引用文献1の上記記載,及び通信分野における技術常識を考慮すると,次のことがいえる。

ア 上記「(1)」の「無線端末(UE)の無駄な電力消費を抑制することに寄与する無線通信システム・・・(中略)・・・を提供できる。」との記載,及び上記「(2)」の「無線通信システムは、第1の無線局1、第2の無線局2、及び無線端末3を含む。」との記載によれば,「無線端末3」は「UE」であるといえる。また,上記「(2)」の「無線通信システムは、第1の無線局1、第2の無線局2、及び無線端末3を含む。無線局1及び2は、コアネットワーク4に接続され、第1のセル10及び第2のセル20をそれぞれ運用する。」との記載によれば,「第1の無線局1」と「無線局1」が同じものを表していることが明らかである。そして,上記「(2)」の「無線局1及び2は、例えば、無線基地局、基地局制御局、又は無線基地局の一部の機能(プロトコルレイヤ)のみを有する簡易無線基地局である。」との記載によれば,「第1の無線局1」は「無線基地局」であるといえる。さらに,上記「(4)」の「図2は、第1の無線局1の構成例を示すブロック図である。無線通信部11は、無線端末3から送信された上りリンク信号(uplink signal)をアンテナを介して受信する。」との記載によれば,第1の無線局1が無線端末3と無線通信を行うことは明らかである。
してみれば,「第1の無線局1」は「無線端末3(UE)と無線通信を行う無線基地局」であるといえる。

イ 上記「(3)」の「無線端末3の間欠的な受信又は送信を可能とするために、無線局1又は2は、無線端末3に制約情報(Constraint information)を送信する。制約情報は、・・・(中略)・・・受信制限・・・(中略)・・・を含む。ここで、受信制限は、・・・(中略)・・・例えば無線端末3が所定期間(又はタイミング)で所定の下りリンク信号を受信又は復号しなくてもよいこと、又は所定期間(又はタイミング)で所定の下りリンク信号を受信又は復号すべきであること、などを含む。」との記載によれば,「第1の無線局1」は,「無線端末3の間欠的な受信又は送信を可能とするために」,「無線端末3」に「制約情報」を送信し,「制約情報」は「受信制限」を含み,「受信制限」は「無線端末3が所定期間で所定の下りリンク信号を受信又は復号しなくてもよいこと、又は所定期間で所定の下りリンク信号を受信又は復号すべきであること」を含むといえる。すなわち,「第1の無線局1」は,「無線端末3の間欠的な受信又は送信を可能とするために」,「無線端末3が所定期間で所定の下りリンク信号を受信又は復号しなくてもよいこと、又は所定期間で所定の下りリンク信号を受信又は復号すべきであること」を含む「制約情報」を送信するといえる。
また,上記「(5)」の「第1の無線局1は、制約情報を無線端末3及び第2の無線局2に送信する。」との記載によれば,「第1の無線局1」は「制約情報」を「第2の無線局2」へ送信するものといえる。
してみれば,「第1の無線局1」は,「無線端末3の間欠的な受信又は送信を可能とするために,無線端末3が所定期間で所定の下りリンク信号を受信又は復号しなくてもよいこと、又は所定期間で所定の下りリンク信号を受信又は復号すべきであること」を含む「制約情報」を「第2の無線局2」へ送信するものといえる。

したがって,上記「ア」及び「イ」を総合すると,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「無線端末3(UE)と無線通信を行う無線基地局である第1の無線局1であって,
第1の無線局1は,無線端末3の間欠的な受信又は送信を可能とするために,無線端末3が所定期間で所定の下りリンク信号を受信又は復号しなくてもよいこと,又は所定期間で所定の下りリンク信号を受信又は復号すべきであることを含む制約情報を第2の無線局2へ送信する,
第1の無線局1。」

2 引用文献3について
原査定の拒絶の理由で引用され,本願優先日前に公開された引用文献3(InterDigital Communications,"Architecture-related Aspects for Interworking between NR and LTE(当審仮訳:NRとLTEの間の協働のためのアーキテクチャ関連の側面)",3GPP TSG-RAN WG2#93bis R2-162786,2016年4月11日)には,図面とともに以下の事項が記載されている。(なお,下線は当審で付与した。)

(1)「In case where the LTE eNB and the NR RU/RRH are collocated or linked by an ideal interface, both an architecture based on LTE Carrier Aggregation (single MAC instance) or LTE Dual Connectivity (separate MAC instances) are possible.」(第2ページ下から第2行ないし第4行)
(当審仮訳:LTE eNBとNR RU/RRHが理想的なインターフェイスによって併置またはリンクされている場合, LTEキャリアアグリゲーション(単一のMACインスタンス)またはLTEデュアルコネクティビティ(個別のMACインスタンス)に基づくアーキテクチャの両方が可能である。)

(2)


」(第3ページ)

上記記載によれば,引用文献3には,次の技術的事項が記載されていると認められる。

「LTE eNBとNR RU/RRHが併置またはリンクされている場合, LTEキャリアアグリゲーション(単一のMACインスタンス)またはLTEデュアルコネクティビティ(個別のMACインスタンス)に基づくアーキテクチャの両方が可能である。」

第5 対比及び判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

ア 引用発明における「無線端末3(UE)」は,本願発明における「ユーザ装置」に相当する。また,引用発明における「無線基地局である第1の無線局1」は,本願発明1における「無線基地局」に相当する。
してみれば,本願発明1における「張出装置と中央集約装置とを含み、前記張出装置はユーザ装置と無線通信を行い、前記中央集約装置は前記ユーザ装置と無線通信を行わない無線基地局」と,引用発明における「無線端末3(UE)と無線通信を行う無線基地局である第1の無線局1」は,ユーザ装置と無線通信を行う無線基地局である点で共通する。

イ 引用発明における「所定期間で所定の下りリンク信号を受信又は復号すべきであること」について,引用発明における当該「所定期間」は,「無線端末3の間欠的な受信又は送信を可能とするため」のものであるから,無線端末3の間欠受信期間であるといえる。一方,引用発明における「所定期間で所定の下りリンク信号を受信又は復号しなくてもよいこと」について,当該「所定期間」は,無線端末3の間欠受信期間ではない期間であるといえる。そうすると,引用発明における「無線端末3が所定期間で所定の下りリンク信号を受信又は復号しなくてもよいこと,又は所定期間で所定の下りリンク信号を受信又は復号すべきであること」は,無線端末3が間欠受信期間中であるか否か,ということと言い換えることができる。そして,間欠受信期間はアクティブタイムとも呼ばれるものであるから(必要であれば特開2013-236240号公報の段落【0046】、国際公開第2014/208622号の段落【0073】等を参照されたい),本願発明1における「前記ユーザ装置がアクティブタイム中であるか否かを示す動作状態情報」と,引用発明における「無線端末3が所定期間で所定の下りリンク信号を受信又は復号しなくてもよいこと,又は所定期間で所定の下りリンク信号を受信又は復号すべきであることを含む制約情報」は,ユーザ装置がアクティブタイム中であるか否かを示す情報である点で共通する。そして,引用発明の「制約情報」は,所定期間で所定の下りリンク信号を受信又は復号すべきであるか,受信又は復号しなくてもよいことを示すものであるから,無線端末3に対して,所定期間において,受信又は復号という動作を行うための状態となるよう制約をかける情報といえる。してみれば,引用発明の「制約情報」は本願発明1の「動作状態情報」に含まれるといえる。

ウ 引用発明における「第1の無線局1は,無線端末3の間欠的な受信又は送信を可能とするために,無線端末3が所定期間で所定の下りリンク信号を受信又は復号しなくてもよいこと,又は所定期間で所定の下りリンク信号を受信又は復号すべきであることを含む制約情報を第2の無線局2へ送信する」ことについて,「制約情報」を「第2の無線局2」へ送信することが「第2の無線局2」へ「制約情報」を通知するためのものであることは明らかであるから,引用発明において「制約情報」を送信することは,本願発明1において「動作状態情報」を「通知する」ことに相当する。また,引用発明が「制約情報」を通知するための通知部を備えることは明らかである。
そうすると,本願発明1における「前記ユーザ装置がアクティブタイム中であるか否かを示す動作状態情報を前記張出装置へ通知する動作状態通知部」と,引用発明における「第1の無線局1は,無線端末3の間欠的な受信又は送信を可能とするために,無線端末3が所定期間で所定の下りリンク信号を受信又は復号しなくてもよいこと,又は所定期間で所定の下りリンク信号を受信又は復号すべきであることを含む制約情報を第2の無線局2へ送信する」ことは,ユーザ装置がアクティブタイム中であるか否かを示す動作状態情報を通知する通知部である点で共通する。
してみれば,本願発明1において「前記ユーザ装置がアクティブタイム中であるか否かを示す動作状態情報を前記張出装置へ通知する動作状態通知部を備え」る「無線基地局」であることと,引用発明において「第1の無線局1は,無線端末3の間欠的な受信又は送信を可能とするために,無線端末3が所定期間で所定の下りリンク信号を受信又は復号しなくてもよいこと,又は所定期間で所定の下りリンク信号を受信又は復号すべきであることを含む制約情報を第2の無線局2へ送信する」ことは,ユーザ装置がアクティブタイム中であるか否かを示す動作状態情報を通知する通知部を備える無線基地局である点で共通する。

したがって,上記「ア」ないし「ウ」を総合すれば,本願発明1と引用発明は,以下の点で一致し,また相違する。

<一致点>
「ユーザ装置と無線通信を行う無線基地局であって、
ユーザ装置がアクティブタイム中であるか否かを示す動作状態情報を通知する通知部を備える、
無線基地局。」

<相違点>
本願発明1における「無線基地局」が「張出装置と中央集約装置とを含み、前記張出装置はユーザ装置と無線通信を行い、前記中央集約装置は前記ユーザ装置と無線通信を行わない」ものであり,「前記中央集約装置」は動作状態情報を「前記張出装置へ通信する動作状態通知部」を備え,「前記張出装置」は,「前記動作状態情報を受信する動作状態情報取得部と、前記動作状態情報に基づいて、前記ユーザ装置との間の信号の送信と受信の少なくとも一方又は前記中央集約装置との間の信号の送信と受信の少なくとも一方を制御する制御部」とを備えるものであるのに対して,引用発明における「無線基地局」は当該発明特定事項について特定されていない点。

(2)相違点についての判断
上記「第4」の「2」に説示したとおり,引用文献3には「LTE eNBとNR RU/RRHが併置またはリンクされている場合, LTEキャリアアグリゲーション(単一のMACインスタンス)またはLTEデュアルコネクティビティ(個別のMACインスタンス)に基づくアーキテクチャの両方が可能である。」という技術的事項が記載されている。
しかしながら,上記相違点に係る発明特定事項は,当該引用文献3には記載も示唆もされておらず,また通信分野における周知技術であるともいえない。
よって,引用発明において,上記相違点に係る,「無線基地局」が「張出装置と中央集約装置とを含み、前記張出装置はユーザ装置と無線通信を行い、前記中央集約装置は前記ユーザ装置と無線通信を行わない」ものであり,「前記中央集約装置」は動作状態情報を「前記張出装置へ通信する動作状態通知部」を備え,「前記張出装置」は,「前記動作状態情報を受信する動作状態情報取得部と、前記動作状態情報に基づいて、前記ユーザ装置との間の信号の送信と受信の少なくとも一方又は前記中央集約装置との間の信号の送信と受信の少なくとも一方を制御する制御部」とを備えるものとすることは,当業者といえども,容易に想到し得たとはいえない。
したがって,本願発明1は,当業者であっても,引用発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4は,本願発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから,り,本願発明1と同じ理由により,引用発明であるとはいえず,また当業者であっても引用発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本願発明5について
本願発明5は,無線基地局の装置発明である本願発明1を,無線基地局における通信制御方法の方法発明としたものである。そして,本願発明5は,上記「1 本願発明1について」で説示した相違点に対応する「張出装置と中央集約装置とを含み、前記張出装置はユーザ装置と無線通信を行い、前記中央集約装置は前記ユーザ装置と無線通信を行わない無線基地局における通信制御方法」であって、「前記中央集約装置が、前記ユーザ装置がアクティブタイム中であるか否かを示す動作状態情報を前記張出装置へ通知するステップと、前記張出装置が、前記中央集約装置から受信した前記動作状態情報に基づいて、前記ユーザ装置との間の信号の送信と受信の少なくとも一方又は前記中央集約装置との間の信号の送信と受信の少なくとも一方を制御するステップ」という発明特定事項を少なくとも含むものであるから,本願発明1と同様な理由により,当業者であっても引用発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 原査定について
令和2年11月6日にされた手続補正により,本願発明1は,「無線基地局」が「張出装置と中央集約装置とを含み、前記張出装置はユーザ装置と無線通信を行い、前記中央集約装置は前記ユーザ装置と無線通信を行わない」ものであり,「前記中央集約装置」は「動作状態情報を前記張出装置へ通信する動作状態通知部」を備え,「前記張出装置」は,「前記動作状態情報を受信する動作状態情報取得部と、前記動作状態情報に基づいて、前記ユーザ装置との間の信号の送信と受信の少なくとも一方又は前記中央集約装置との間の信号の送信と受信の少なくとも一方を制御する制御部」とを備える」という発明特定事項を備えるものとなっている。また,同手続補正により,本願発明5は,「張出装置と中央集約装置とを含み、前記張出装置はユーザ装置と無線通信を行い、前記中央集約装置は前記ユーザ装置と無線通信を行わない無線基地局における通信制御方法」であって、「前記中央集約装置が、前記ユーザ装置がアクティブタイム中であるか否かを示す動作状態情報を前記張出装置へ通知するステップと、前記張出装置が、前記中央集約装置から受信した前記動作状態情報に基づいて、前記ユーザ装置との間の信号の送信と受信の少なくとも一方又は前記中央集約装置との間の信号の送信と受信の少なくとも一方を制御するステップ」という発明特定事項を備えるものとなっている。してみれば,上記「第5」の「1」及び「3」で説示したとおり,当業者であっても,引用発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって,原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-09-29 
出願番号 特願2016-77753(P2016-77753)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 青木 健  
特許庁審判長 廣川 浩
特許庁審判官 本郷 彰
森田 充功
発明の名称 無線基地局及び通信制御方法  
代理人 三好 秀和  

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