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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C22C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C22C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C22C
管理番号 1378742
異議申立番号 異議2020-700550  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-11-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-08-04 
確定日 2021-09-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6639635号発明「フィンストックとして使用するための高強度な耐食アルミニウム合金及びそれを作製する方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6639635号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-15〕,〔16,17〕について訂正することを認める。 特許第6639635号の請求項1?17に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6639635号(以下「本件特許」という。)の請求項1?17に係る特許についての出願は,2017年(平成29年)3月3日を国際出願日とする特許出願(特願2018-501888号)であって,令和2年1月7日にその特許権の設定登録がなされ,令和2年2月5日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後,令和2年8月4日に,本件特許の請求項1?17(全請求項)に係る特許に対し,特許異議申立人である黒野美穂(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ,以降の本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は,以下のとおりである。

令和 2年11月30日付け:取消理由通知書
令和 3年 3月 1日 :特許権者による意見書及び訂正請求書(以
下「本件訂正請求書」という。)
同年 4月15日 :申立人による意見書


第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求は,本件特許の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1?17について訂正することを求めるものであって,その内容は以下のとおりである。なお,下線は訂正箇所を表す。

(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「0.50?1.50重量%のMg,」とあるのを,「0.65?1.50重量%のMg,」に訂正する。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2?15も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項16に「0.50?1.50重量%のMg,」とあるのを,「0.65?1.50重量%のMg,」に訂正する。
請求項16の記載を引用する請求項17も同様に訂正する。

(3)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1?15について,請求項2?15は,それぞれ請求項1を直接又は間接的に引用するものであり,上記訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから,訂正前の請求項1?15は,一群の請求項である。
また,本件訂正前の請求項16?17について,請求項17は,請求項16を引用するものであり,上記訂正事項2によって訂正される請求項16に連動して訂正されるものであるから,訂正前の請求項16?17は,一群の請求項である。
したがって,本件訂正は,その一群の請求項ごとに請求がされたものである。

2 訂正の適否に関する当審の判断
(1)訂正の目的の適否,特許請求の範囲の拡張・変更の存否,新規事項の
有無
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的の適否,特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1による訂正は,Mg含有量の数値範囲について,本件訂正前の請求項1において「0.50?1.50重量%」とされていたのを,「0.65?1.50重量%」に訂正するものであって,Mg含有量の数値範囲の下限値を大きくすることで当該数値範囲を狭めるものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,または変更するものには該当しない。

(イ)新規事項の有無
本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の【0033】には,「いくつかの例において,合金は,合金の総重量に基づいて,約0.50%?約1.50%(例えば,約0.90%?約1.30%,約1.00%?約1.25%,または約1.13%?約1.27%)の量でマグネシウム(Mg)を含むことができる。例えば,合金は,・・・約0.65%,・・・のMgを含むことができる。全ての百分率は,重量%で表される。」(当審注:「・・・」は記載の省略を表す。)と記載されており,Mg含有量を「0.65%」とすることが具体的に記載され,当該含有量をMg含有量の数値範囲の下限値とすることも当該記載に含まれるといえるから,訂正事項1は,本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。

イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的の適否,特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2による訂正は,Mg含有量の数値範囲について,本件訂正前の請求項16において「0.50?1.50重量%」とされていたのを,「0.65?1.50重量%」に訂正するものであって,Mg含有量の数値範囲の下限値を大きくすることで当該数値範囲を狭めるものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,または変更するものには該当しない。

(イ)新規事項の有無
新規事項の有無について,上記ア(イ)と同様であるから,訂正事項2は,本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。

(2)独立特許要件について
申立人による特許異議の申立ては,訂正前の請求項1?17の全てに対してなされているので,特許法120条の5第9項で読み替えて準用する特許法126条7項は適用されない。

3 訂正の適否についての結論
以上のとおり,本件訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
したがって,特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-15〕,〔16,17〕について訂正することを認める。


第3 本件発明
本件訂正は,上記第2で検討したとおり適法なものであるから,本件特許の特許請求の範囲の請求項1?17に係る発明(以下,それぞれ「本件発明1」?「本件発明17」といい,総称して「本件発明」ともいうことがある。)は,本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定されるとおりの次のものである。

「【請求項1】
0.7?3.0重量%のZn,0.15?0.35重量%のSi,0.25?0.65重量%のFe,0.05?0.20重量%のCu,0.75?1.50重量%のMn,0.65?1.50重量%のMg,最大0.10重量%のCr,最大0.10重量%のTi,及び最大0.15重量%の不純物を含み,残りがAlであり,前記不純物がGa,V,Ni,Sc,Ag,B,Bi,Zr,Li,Pb,Sn,Ca,Hf,Srまたはこれらの組み合わせからなりかつ各不純物を0.05重量%以下の量で含む,アルミニウム合金を含むフィンストック。
【請求項2】
前記アルミニウム合金が1.0?2.5重量%のZn,0.2?0.35重量%のSi,0.35?0.60重量%のFe,0.10?0.20重量%のCu,0.75?1.25重量%のMn,0.90?1.30重量%のMg,最大0.05重量%のCr,最大0.05重量%のTi,及び最大0.15重量%の不純物を含み,残りがAlである,請求項1に記載のフィンストック。
【請求項3】
前記アルミニウム合金が1.5?2.5重量%のZn,0.17?0.33重量%のSi,0.30?0.55重量%のFe,0.15?0.20重量%のCu,0.80?1.00重量%のMn,1.00?1.25重量%のMg,最大0.05重量%のCr,最大0.05重量%のTi,及び最大0.15重量%の不純物を含み,残りがAlである,請求項1に記載のフィンストック。
【請求項4】
前記アルミニウム合金が0.9?2.6重量%のZn,0.2?0.33重量%のSi,0.49?0.6重量%のFe,0.15?0.19重量%のCu,0.79?0.94重量%のMn,1.13?1.27重量%のMg,最大0.05重量%のCr,最大0.05重量%のTi,及び最大0.15重量%の不純物を含み,残りがAlである,請求項1に記載のフィンストック。
【請求項5】
前記アルミニウム合金が1.4?1.6重量%のZn,0.2?0.33重量%のSi,0.49?0.6重量%のFe,0.15?0.19重量%のCu,0.79?0.94重量%のMn,1.13?1.27重量%のMg,最大0.05重量%のCr,最大0.05重量%のTi,及び最大0.15重量%の不純物を含み,残りがAlである,請求項1に記載のフィンストック。
【請求項6】
前記アルミニウム合金が,直接チル鋳造によって,または連続鋳造によって製造される,請求項1?5のいずれか一項に記載のフィンストック。
【請求項7】
前記アルミニウム合金が,均質化,熱間圧延,冷間圧延,及びアニーリングによって製造される,請求項1?6のいずれか一項に記載のフィンストック。
【請求項8】
前記アルミニウム合金が,HテンパーまたはOテンパーである,請求項1?7のいずれか一項に記載のフィンストック。
【請求項9】
前記アルミニウム合金の降伏強度が,少なくとも70MPaである,請求項1?8のいずれか一項に記載のフィンストック。
【請求項10】
前記アルミニウム合金の最大引張強度が,少なくとも170MPaである,請求項1?9のいずれか一項に記載のフィンストック。
【請求項11】
前記アルミニウム合金が,国際軟銅規格(IACS)に基づいて37%超の導電率を含む,請求項1?10のいずれか一項に記載のフィンストック。
【請求項12】
前記アルミニウム合金が,-740mV?-850mVの腐食電位を含む,請求項1?11のいずれか一項に記載のフィンストック。
【請求項13】
前記フィンストックのゲージが,1.0mm以下である,請求項1?12のいずれか一項に記載のフィンストック。
【請求項14】
前記フィンストックのゲージが,0.15mm以下である,請求項1?13のいずれか一項に記載のフィンストック。
【請求項15】
管及び請求項1?14のいずれか一項に記載されるフィンストックを含むフィンを備える物品。
【請求項16】
0.7?3.0重量%のZn,0.15?0.35重量%のSi,0.25?0.65重量%のFe,0.05?0.20重量%のCu,0.75?1.50重量%のMn,0.65?1.50重量%のMg,最大0.05重量%のCr,最大0.05重量%のTi,及び最大0.15重量%の不純物を含み,残りがAlであり,前記不純物がGa,V,Ni,Sc,Ag,B,Bi,Zr,Li,Pb,Sn,Ca,Hf,Srまたはこれらの組み合わせからなりかつ各不純物を0.05重量%以下の量で含むアルミニウム合金を鋳造して,鋳造アルミニウム合金を形成することと,
前記鋳造アルミニウム合金を均質化することと,
前記鋳造アルミニウム合金を熱間圧延して,圧延製品を製造することと,
前記圧延製品をフィンストックに冷間圧延することと,を含む,フィンストックを製造する方法。
【請求項17】
前記フィンストックをアニーリングすることをさらに含む,請求項16に記載の方法。」


第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要
1 特許異議の申立ての理由の概要
申立人は,証拠方法として下記(4)の甲第1号証?甲第8号証を提出し,下記(1)?(3)を概要とする申立理由1?3を主張し,本件特許の請求項1?17に係る特許は取り消されるべき旨を申立てた。

(1)申立理由1(新規性)
ア 申立理由1-1(取消理由として一部採用)
本件訂正前の請求項1?3,15?17に係る発明は,甲第1号証に記載された発明であるから,同発明に係る特許は特許法29条1項3号の規定に違反してされたものであり,同法113条2号に該当し,取り消されるべきものである。

イ 申立理由1-2(取消理由として不採用)
本件訂正前の請求項1?3,15?17に係る発明は,甲第2号証に記載された発明であるから,同発明に係る特許は特許法29条1項3号の規定に違反してされたものであり,同法113条2号に該当し,取り消されるべきものである。

ウ 申立理由1-3(取消理由として不採用)
本件訂正前の請求項1?3,15?17に係る発明は,甲第3号証に記載された発明であるから,同発明に係る特許は特許法29条1項3号の規定に違反してされたものであり,同法113条2号に該当し,取り消されるべきものである。

(2)申立理由2(進歩性)
ア 申立理由2-1(取消理由として一部採用)
本件訂正前の請求項1?17に係る発明は,甲第1号証に記載された発明と甲第2号証?甲第8号証に記載された事項及び周知技術に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,同発明に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,同法113条2号に該当し,取り消されるべきものである。

イ 申立理由2-2(取消理由として不採用)
本件訂正前の請求項1?17に係る発明は,甲第2号証に記載された発明と甲第1号証,甲第3号証?甲第8号証に記載された事項及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,同発明に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,同法113条2号に該当し,取り消されるべきものである。

ウ 申立理由2-3(取消理由として不採用)
本件訂正前の請求項1?17に係る発明は,甲第3号証に記載された発明と甲第1号証,甲第2号証,甲第4号証?甲第8号証に記載された事項及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,同発明に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,同法113条2号に該当し,取り消されるべきものである。

(3)申立理由3(サポート要件)(取消理由として不採用)
以下の理由により,本件訂正前の請求項1,6?17に係る発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから,同発明に係る特許は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり,同法113条4号に該当し,取り消されるべきものである。

本件訂正前の請求項1に係る発明においては,Mg含有量の範囲が0.50?1.50重量%%と,非常に広い範囲で規定されている一方,本件明細書には,本件訂正前の請求項1に係る発明の構成要件を充足する実例として,【0064】の【表5】において,Mg:1.2?1.23重量%の例(合金1?4)しかなく,1.2重量%未満という下限側の範囲の例は全く記載されていない。明細書における【0024】?【0037】には,Mgその他の元素の含有量の範囲が種々列挙されているものの,実験によって発明の効果を確認して初めて発明が完成する合金の分野においては,これらの単なる数値の列挙を,課題解決手段として有効な範囲として当業者が認識することは不可能である。
高強度と耐食性の両立を課題とすると解される本件特許に係る発明(本件明細書【0002】等参照。)において,Mg含有量の増加がアルミニウム合金の高強度化に寄与することを技術常識として有する当業者にとっては,Mg含有量が1.2重量%未満の場合に本件の課題を解決しうるか否かを理解することは困難である。
化学成分組成の範囲を同じくする,本件訂正前の請求項6?17に係る発明においても同様である。

(4)証拠方法
・甲第1号証:特開平3-94037号公報
・甲第2号証:特開平5-263173号公報
・甲第3号証:特開昭55-140098号公報
・甲第4号証:特開平6-306519号公報
・甲第5号証:特表2015-530552号公報
・甲第6号証:特開昭57-155340号公報
・甲第7号証:社団法人日本アルミニウム協会標準化総合委員会編,「ア
ルミニウムハンドブック(第7版)」,2007年1月3
1日,社団法人日本アルミニウム協会発行,5,18,1
9,32頁
・甲第8号証:特開昭62-127446号公報
以下,「甲第1号証」?「甲第8号証」について,それぞれ「甲1」?「甲8」という。

2 当審から通知した取消理由
当審は,上記1の特許異議の申立ての理由を検討した結果,上記「1(1)申立理由1(新規性)」のうちの「ア 申立理由1-1」の一部である本件発明1,15?17についての新規性違反を採用するとともに,職権により,本件発明6?14についての新規性違反を追加して取消理由1とし,さらに,上記「1(2)申立理由2(進歩性)」のうちの「ア 申立理由2-1」の一部である本件発明1,6?17についての進歩性違反を採用して取消理由2として,令和2年11月30日付けで取消理由を通知した。


第5 当審の判断
当審は,特許権者が提出した令和3年3月1日付けの意見書及び訂正請求書,申立人が提出した令和3年4月15日付け意見書を踏まえて検討した結果,以下のとおり,取消理由は解消するとともに,特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由及びその他の理由によっても,本件特許の請求項1?17に係る特許を取り消すことはできないと判断した。

1 取消理由1及び申立理由1-1(新規性),取消理由2及び申立理由
2-1(進歩性)について(甲1を主引用例とするもの)
(1)甲1に記載された発明
ア 甲1の記載事項
上記甲1には,以下の事項が記載されている。

(1a)「(4)Mg0.05?0.6wt%,Si1.0wt%以下,Fe1.2wt%以下,Mn2.0wt%以下,Cu1.0wt%以下を含有し,さらにIn0.03?0.3wt%,Sn0.03?0.3wt%,Zn0.05?2.0wt%の範囲内で何れか1種または2種以上を含有し,残部アルミニウムと不可避的不純物からなる気相ろう付け用アルミニウム合金フィン材。」(特許請求の範囲)

(1b)「本発明合金は不可避的不純物として,鋳造時の結晶粒微細化材として添加されるTi,Bや強度,成形性,鋳造性等を目的として添加される,Zn,Ca,V,Bi,Pb,Ag,Be,等の元素をそれぞれ0.05%未満,総量で0.15%未満含んでも差し支えない。」(5頁右上欄12?18行)

(1c)「〔実施例〕
以下実施例にもとずき本発明を詳細に説明する。
第1表に示した組成合金鋳塊(400mm)を面削後,520℃×2hrの均質化処理を行い,そのまま3.0mmまで熱間圧延を行った。この熱間圧延板を0.12mmまで冷間圧延を行い,360℃×2hrの焼鈍を施した後,0.09mmまで冷間圧延を行い,フィン材を得た。」(5頁左下欄12行?右下欄1行)

(1d)「このフィン材と板厚0.4mmのチューブ材(芯材3003,皮材4343: 10%外側,皮材7072:10%内側)と板厚1.6mmのヘッダー材(芯材3003,皮材4343:8%外側,皮材7072:10%内側)を使用し,第1図に示す様にチューブ(2)間にフィン(1)を配置し,チューブ(2)両端にヘッダー材プレート(3)を取付けてコア(4)を形威し,該コア(4)のヘッダープレート(3)にパッキン(5)を介して樹脂タンク(6)を取付けたラジエーターを第2表で示すろう付け条件にて作製した。」(5頁右下欄2?12行)

(1e)「


(6頁)

イ 引用発明
上記アに摘示した(1a)の特許請求の範囲(4)に記載された発明の実施例といえる同(1e)の第1表の番号10の組成合金鋳塊に着目すると,甲1には,「Mg0.50wt%,Si0.16wt%,Fe0.40wt%,Cu0.11wt%,Mn1.11wt%,Zn1.24wt%を含有し,残部アルミニウムと,不可避的不純物からなる気相ろう付け用アルミニウム合金フィン材。」が記載されている。
ここで,不可避不純物については同(1b)のとおりであって,実施例においても同様であると認められるところ,例示された不可避不純物のうち,Znは,上記番号10の組成合金鋳塊においては必須成分として含まれることから,Znは不可避不純物から除かれるものといえる。
さらに,同(1c)から,フィン材は,組成合金鋳塊を面削後,均質化処理を行い,熱間圧延を行って,冷間圧延を行い,焼鈍を施した後,0.09mmまで冷間圧延を行い得られたものである。
してみると,甲1には,以下の2つ発明(以下「甲1A発明」及び「甲1B発明」という。)が記載されているものと認められる。

<甲1A発明>
Mg0.50wt%,Si0.16wt%,Fe0.40wt%,Cu0.11wt%,Mn1.11wt%,Zn1.24wt%を含有し,残部アルミニウムと,不可避的不純物として,Ti,B,Ca,V,Bi,Pb,Ag,Beをそれぞれ0.05%未満,総量で0.15%未満含む組成合金鋳塊を面削後,均質化処理を行い,熱間圧延を行って,冷間圧延を行い,焼鈍を施した後,0.09mmまで冷間圧延を行い得られた,気相ろう付け用アルミニウム合金フィン材。

<甲1B発明>
Mg0.50wt%,Si0.16wt%,Fe0.40wt%,Cu0.11wt%,Mn1.11wt%,Zn1.24wt%を含有し,残部アルミニウムと,不可避的不純物として,Ti,B,Ca,V,Bi,Pb,Ag,Beをそれぞれ0.05%未満,総量で0.15%未満含む組成合金鋳塊を面削後,均質化処理を行い,熱間圧延,冷間圧延を行い,焼鈍を施した後,0.09mmまで冷間圧延を行い気相ろう付け用アルミニウム合金フィン材を得る方法。

さらに,同(1d)から,甲1には,以下の発明(以下「甲1C発明」という。)も記載されているものと認められる。

<甲1C発明>
甲1A発明に係るフィン材,チューブ材及びヘッダー材を使用した,フィン,チューブ及びヘッダープレートを含むラジエーター。

(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1A発明とを対比すると,Si,Fe,Cu,Mn,Zn及びTiの含有量について,甲1A発明は,本件発明1の含有量範囲に含まれるものであるから,甲1A発明と本件発明1とは,当該含有量について重複し,両者は,Mgを含有する点で共通する。
また,Crの含有量について,本件発明1は,「最大0.10重量%のCr」とされているところ,本件明細書の【0034】によれば,「いくつかの場合において,」「合金中に存在しない(すなわち,0%)。」ものであることから,Crを含有しない甲1A発明は,本件発明1と当該含有量について重複している。
さらに,不純物の含有量並びに不純物元素の種類及び個々の含有量について,甲1A発明と本件発明1とは重複している。
そして,甲1A発明の「フィン材」は,本件発明1の「フィンストック」に相当するものである。
してみると,本件発明1と甲1A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「0.7?3.0重量%のZn,0.15?0.35重量%のSi,0.25?0.65重量%のFe,0.05?0.20重量%のCu,0.75?1.50重量%のMn,Mg,最大0.10重量%のCr,最大0.10重量%のTi,及び最大0.15重量%の不純物を含み,残りがAlであり,前記不純物がGa,V,Ni,Sc,Ag,B,Bi,Zr,Li,Pb,Sn,Ca,Hf,Srまたはこれらの組み合わせからなりかつ各不純物を0.05重量%以下の量で含む,アルミニウム合金を含むフィンストック。」である点。

<相違点1-1>
Mgの含有量について,本件発明1は「0.65?1.50重量%」であるのに対し,甲1A発明は「0.50wt%」である点。

イ 相違点についての判断
(ア)相違点が実質的な相違点であるか否かについて
相違点1-1は,Mgの含有量が明らかに相違するものであるから,実質的な相違点である。

(イ)容易想到性について
相違点1-1について検討すると,甲1の4頁左上欄19行?左下欄10行には,Mgの添加について,「ろう付け性を向上させ」(4頁右上欄19?20行),「合金の常温強度を向上する」(4頁左下欄4?5行)ものであるが,「Mg添加量を0.05?0.6%としたのは,0.05%未満では上記の気相ろう付け性の向上作用が十分でなく,0.6%を越えると合金の融点低下の作用により,高温座屈性が低下してしまうためである。」(4頁左下欄6?10行)と記載されているように,甲1に記載された気相ろう付け用アルミニウム合金フィン材において,Mg添加量の上限が0.6%であることから,甲1A発明のMg含有量0.50%を0.65重量%以上とすることには阻害要因があるし,甲2?8及び周知技術を参酌しても,当該阻害要因があるにもかかわらず,高温座屈性を低下させてまでMg含有量を0.65重量%以上とする動機付けがあるともいえない。
そして,本件発明1は,相違点1-1に係る特定事項を有することにより,アルミニウム合金が高強度及び耐食性を示すという顕著な効果を奏するものであると認められる。
以上によれば,甲1A発明において,Mgの含有量を「0.65?1.50重量%」とすることは,当業者が容易に想到し得るとは認められない。

(ウ)申立人の主張
申立人は,令和3年4月15日付け意見書において,本件発明1におけるMg含有量の下限値である0.65%は,下限値としての臨界的意義やその他の技術的意義は存在しないといえる」から,「「0.65%」をMg含有量に設定することに困難性はなく,容易であるといえる」旨主張している。
しかしながら,甲1A発明において,Mg含有量の下限値を0.65%とすることを阻害する要因があり,さらにその動機付けがないことは上記(イ)のとおりであるから,申立人の主張を採用することはできない。

ウ 本件発明1についての小括
よって,本件発明1は,甲1A発明でないし,甲1A発明と甲2?8に記載された事項及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)本件発明2?14について
本件発明2?14は,請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから,少なくとも相違点1-1において甲1A発明と相違し,その相違点の判断については,上記(2)イのとおりである。
よって,本件発明2,3,6?14は,甲1A発明でないし,本件発明2?14は,甲1A発明と甲2?8に記載された事項及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4)本件発明15について
本件発明15と甲1C発明とを対比すると,甲1C発明の「チューブ」,「ラジエーター」は,それぞれ,本件発明15の「管」,「物品」に含まれるものである。
また,上記(2)アの検討を踏まえれば,甲1C発明の「甲1A発明に係るフィン材」は,本件発明15の「請求項1」「に記載されるフィンストック」に対応するものであって,両者は,相違点1-1において相違するものと認められる。
そして,上記相違点についての判断は,上記(2)イのとおりである。
よって,本件発明15は,甲1C発明でないし,甲1C発明と甲2?8に記載された事項及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(5)本件発明16について
ア 対比
本件発明16と甲1B発明とを対比すると,Si,Fe,Cu,Mn,Zn及びTiの含有量について,甲1B発明は,本件発明16の含有量範囲に含まれるものであるから,甲1B発明と本件発明16とは,当該含有量について重複し,両者は,Mgを含有する点で共通する。
また,Crの含有量について,本件発明16は,「最大0.05重量%のCr」とされているところ,本件明細書の【0034】によれば,「いくつかの場合において,」「合金中に存在しない(すなわち,0%)。」ものであることから,Crを含有しない甲1B発明は,本件発明16と当該含有量について重複している。
さらに,不純物の含有量並びに不純物元素の種類及び個々の含有量について,甲1B発明と本件発明16とは重複している。
そして,甲1B発明の「フィン材」は,本件発明1の「フィンストック」に相当するものである。
してみると,本件発明16と甲1B発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「0.7?3.0重量%のZn,0.15?0.35重量%のSi,0.25?0.65重量%のFe,0.05?0.20重量%のCu,0.75?1.50重量%のMn,Mg,最大0.05重量%のCr,最大0.05重量%のTi,及び最大0.15重量%の不純物を含み,残りがAlであり,前記不純物がGa,V,Ni,Sc,Ag,B,Bi,Zr,Li,Pb,Sn,Ca,Hf,Srまたはこれらの組み合わせからなりかつ各不純物を0.05重量%以下の量で含むアルミニウム合金を鋳造して,鋳造アルミニウム合金を形成することと,
前記鋳造アルミニウム合金を均質化することと,
前記鋳造アルミニウム合金を熱間圧延して,圧延製品を製造することと,
前記圧延製品をフィンストックに冷間圧延することと,を含む,フィンストックを製造する方法。」である点。

<相違点1-2>
Mgの含有量について,本件発明16は「0.65?1.50重量%」であるのに対し,甲1B発明は「0.50wt%」である点。

イ 相違点についての判断
相違点1-2についての判断は,上記(2)イと同様であって,甲1B発明において,Mgの含有量を「0.65?1.50重量%」とすることは,当業者が容易に想到し得るとは認められない。

ウ 本件発明16についての小括
よって,本件発明16は,甲1B発明でないし,甲1B発明と甲2?8に記載された事項及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(6)本件発明17について
本件発明17は,請求項16を引用するものであるから,少なくとも上記相違点1-2において甲1B発明と相違し,その判断については,上記(5)イのとおりである。
よって,本件発明17は,甲1B発明でないし,甲1B発明と甲2?8に記載された事項及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(7)取消理由1及び申立理由1-1(新規性),取消理由2及び申立理由
2-1(進歩性)について(甲1を主引用例とするもの)の小括
したがって,本件特許の請求項1?3,6?17に係る発明は,甲1に記載された発明でないし,本件特許の請求項1?17に係る発明は,甲1に記載された発明と甲2?8に記載された事項及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

2 申立理由1-2(新規性)及び申立理由2-2(進歩性)について(
甲2を主引用例とするもの)
(1)甲2に記載された発明
甲2における請求項4の記載から,熱交換器フィン材に着目すると,甲2には,以下の発明(以下「甲2A発明」という。)が記載されているものと認められる。
なお,当該請求項4には,「Zr:0.3wt%」と記載されているが,甲2における【0017】の記載からみて,「Zr:0.3wt%以下」の誤記であると認められる。

<甲2A発明>
Si:0.05?1.1wt%,Fe:0.05?1.1wt%,Mn:0.10?1.5wt%を含有し,さらにCu:0.5wt%以下,Mg:1.0wt%以下,Cr:0.3wt%以下,Zr:0.3wt%以下,Ti:0.3wt%以下のうちの1種または2種以上を含有し,またさらにZn:2.5wt%以下,In:0.3wt%以下,Sn:0.3wt%以下のうちの1種または2種以上を含有し,残部Alと不可避的不純物とからなる合金であって,ろう付け加熱終了後に400?500℃の温度で10分以上30時間以内の再加熱処理を施されて使用されるアルミニウム合金を用いた熱交換器フィン材。

また,甲2には,甲2A発明に係る熱交換器フィン材であって,アルミニウム合金を製造してから熱交換器フィン材を製造する方法として,以下の発明(以下「甲2B発明」という。)も記載されているということができる。

<甲2B発明>
Si:0.05?1.1wt%,Fe:0.05?1.1wt%,Mn:0.10?1.5wt%を含有し,さらにCu:0.5wt%以下,Mg:1.0wt%以下,Cr:0.3wt%以下,Zr:0.3wt%以下,Ti:0.3wt%以下のうちの1種または2種以上を含有し,またさらにZn:2.5wt%以下,In:0.3wt%以下,Sn:0.3wt%以下のうちの1種または2種以上を含有し,残部Alと不可避的不純物とからなるアルミニウム合金を製造し,ろう付け加熱終了後に400?500℃の温度で10分以上30時間以内の再加熱処理を施されて使用されるアルミニウム合金を用いた熱交換器フィン材の製造方法。

さらに,甲2の【0020】における「〔実施例1〕表1に示す組成のアルミニウム合金フィン材とチューブ材およびヘッダープレート材と組合せ図1に示すラジエーターを組み立てた。」との記載と,当該記載における「表1に示す組成のアルミニウム合金フィン材」は,甲2A発明を用いたものでもあることから,甲2には,以下の発明(以下「甲2C発明」という。)も記載されているものと認められる。

<甲2C発明>
甲2A発明に係る熱交換器フィン材とチューブ材およびヘッダープレート材と組合せ,組み立てたラジエーター。

(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2A発明とを対比すると,両者は,アルミニウム合金の組成としてZn,Si,Fe,Cu,Mn,Mg,Cr,Ti及び不純物を含有するものである点で共通する。
また,甲2A発明の「熱交換器フィン材」は,本件発明1の「フィンストック」に相当するものである。
してみると,本件発明1と甲2A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「Zn,Si,Fe,Cu,Mn,Mg,Cr,Ti,及び不純物を含み,残りがAlである,アルミニウム合金を含むフィンストック。」である点。

<相違点2-1>
Znの含有量について,本件発明1は「0.7?3.0重量%」であるのに対し,甲2A発明は「2.5wt%以下」である点。

<相違点2-2>
Siの含有量について,本件発明1は「0.15?0.35重量%」であるのに対し,甲2A発明は「0.05?1.1wt%」である点。

<相違点2-3>
Feの含有量について,本件発明1は「0.25?0.65重量%」であるのに対し,甲2A発明は「0.05?1.1wt%」である点。

<相違点2-4>
Cuの含有量について,本件発明1は「0.05?0.20重量%」であるのに対し,甲2A発明は「0.5wt%以下」である点。

<相違点2-5>
Mnの含有量について,本件発明1は「0.75?1.50重量%」であるのに対し,甲2A発明は「0.10?1.5wt%」である点。

<相違点2-6>
Mgの含有量について,本件発明1は「0.65?1.50重量%」であるのに対し,甲2A発明は「1.0wt%以下」である点。

<相違点2-7>
Crの含有量について,本件発明1は「最大0.10重量%」であるのに対し,甲2A発明は「0.3wt%以下」である点。

<相違点2-8>
Tiの含有量について,本件発明1は「最大0.10重量%」であるのに対し,甲2A発明は「0.3wt%以下」である点。

<相違点2-9>
不純物について,本件発明1は,「最大0.15重量%の不純物を含み」,「不純物がGa,V,Ni,Sc,Ag,B,Bi,Zr,Li,Pb,Sn,Ca,Hf,Srまたはこれらの組み合わせからなりかつ各不純物を0.05重量%以下の量で含む」ものであるのに対し,甲2A発明は「不可避的不純物」を含むものであるが,当該不可避不純物の種類及び含有量は特定されておらず,本件発明1で不純物とされるZr及びSnの含有量が,「Zr:0.3wt%以下」及び,「Sn:0.3wt%以下」である点。

イ 相違点についての判断
(ア)実質的な相違点であるか否かについて
相違点2-1?2-9は,一部重複はあるにしても,それぞれの合金組成の含有量範囲が相違するものであり,また,以下の(イ)で述べる,Zn含有量及びMg含有量の技術的意義に関する本件発明1と甲2A発明との相違や,甲2A発明の具体的態様である甲2の実施例における合金組成も考慮すると,実質的な相違点である。

(イ)容易想到性について
a 事案に鑑み,相違点2-1(Zn含有量)及び相違点2-6(Mg含有量)について合わせて検討する。

b 本件明細書における【0022】には,以下の記載がある。

「【0022】
合金組成物
新規のアルミニウム合金が後述される。ある特定の態様において,合金は,高強度,耐食性,及び/または高い成形性を示す。合金の特性は,合金の元素組成及び合金を加工して説明したシート,プレート,及びシェートを製造する方法により達成される。具体的には,増加された亜鉛(Zn)含有量は,銅または他のアルミニウム合金管に取り付けられるときに,優先的に腐食し,これによって,管に対するカソード保護を提供する合金を提供する。驚くべきことに,Zn添加は,増加されたマグネシウム(Mg)含有量の強化効果に加えて,付加的な溶質強化を示した。加えて,最適なZn含有量が観察された。いくつかの例において,約2.0重量%超のZnの添加は,望ましくなく,このような量は,導電率及び自己腐食率に対して有害な影響を有することがあるためである。しかしながら,いくつかの例において,管の十分なカソード保護を可能にするために,それらの導電性及び腐食性を犠牲にすることが望ましなり得る。この目的のために,最大約3.0重量%の最大Zn含有量は,所望の腐食性,導電性,及び強度特性を提供するために使用することができる。」

c 上記記載からみて,本件発明1における強度の強化は,Mg含有量の強化効果とZn添加による付加的な溶質強化によるものであり,Znの含有量は,優先的な腐食による耐食性及び自己腐食率との関係と強度特性の観点から下限及び上限の範囲が定められるものであることから,本件発明1においては,「0.7?3.0重量%のZn」と「0.65?1.50重量%のMg」との特定含有量範囲におけるZnとMgの相関関係が必要なものであると認められる。

d これに対して,甲2A発明は,「Zn:2.5wt%以下」及び「Mg:1.0wt%以下」であり,ZnとMgの含有量の上限を示すだけであって,その含有量の一部範囲は個々に本件発明1と重複はするものの,Znについては,犠牲効果を高めるために,必要に応じて添加するが,2.5%を超えて添加するとフィンの耐高温座屈性が低下し(甲2【0018】),Mgについては,主に強度の向上を目的として添加するが,1.0%を超えて添加するとフィンの耐高温座屈性が低下する(甲2【0018】)というものであって,本件発明1とはその技術的意義が異なるものであり,甲1,3?8に記載された事項及び周知技術を参酌しても,相違点2-1及び相違点2-6に係る特定範囲の組合せとする動機付けは認められない。

e さらに,甲2A発明の具体的態様である甲2の実施例(【0021】の【表1】)における合金組成において,ZnとMgの両者ともを必須成分として含有する例はないことからみても,相違点2-1及び相違点2-6に係る特定範囲の組合せとする動機付けは認められない。

f 以上によれば,甲2A発明において,相違点2-1及び相違点2-6に係る事項が容易に想到し得るとは認められない。

ウ 本件発明1についての小括
よって,本件発明1は,甲2A発明でないし,他の相違点について検討するまでもなく,甲2A発明と甲1,3?8に記載された事項及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)本件発明2?14について
本件発明2?14は,請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから,少なくとも相違点2-1?2-9において甲2A発明と相違し,その判断については,上記(2)イのとおりである。
よって,本件発明2,3は,甲2A発明でないし,本件発明2?14は,甲2A発明と甲1,甲3?8に記載された事項及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4)本件発明15について
本件発明15と甲2C発明とを対比すると,甲2C発明の「チューブ材」,「ラジエーター」は,それぞれ,本件発明15の「管」,「物品」に含まれるものである。
また,上記(2)アの検討を踏まえれば,甲2C発明の「甲2A発明に係る熱交換器フィン材」は,本件発明15の「請求項1」「に記載されるフィンストック」に対応するものであって,両者は,相違点2-1?2-9において相違するものと認められる。
そして,上記相違点についての判断は,上記(2)イのとおりである。
よって,本件発明15は,甲2C発明でないし,甲2C発明と甲1,甲3?8に記載された事項及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(5)本件発明16について
ア 対比
本件発明16と甲2B発明とを対比すると,両者は,アルミニウム合金の組成としてZn,Si,Fe,Cu,Mn,Mg,Cr,Ti及び不純物を含有するものである点で共通する。
また,甲2B発明の「熱交換器フィン材」は,本件発明16の「フィンストック」に相当するものである。
してみると,本件発明16と甲2B発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「Zn,Si,Fe,Cu,Mn,Mg,Cr,Ti,及び不純物を含み,残りがAlであるアルミニウム合金を製造し,フィンストックを製造する方法。」である点。

<相違点2-10>
Znの含有量について,本件発明16は「0.7?3.0重量%」であるのに対し,甲2B発明は「2.5wt%以下」である点。

<相違点2-11>
Siの含有量について,本件発明16は「0.15?0.35重量%」であるのに対し,甲2B発明は「0.05?1.1wt%」である点。

<相違点2-12>
Feの含有量について,本件発明16は「0.25?0.65重量%」であるのに対し,甲2B発明は「0.05?1.1wt%」である点。

<相違点2-13>
Cuの含有量について,本件発明16は「0.05?0.20重量%」であるのに対し,甲2B発明は「0.5wt%以下」である点。

<相違点2-14>
Mnの含有量について,本件発明16は「0.75?1.50重量%」であるのに対し,甲2B発明は「0.10?1.5wt%」である点。

<相違点2-15>
Mgの含有量について,本件発明16は「0.65?1.50重量%」であるのに対し,甲2B発明は「1.0wt%以下」である点。

<相違点2-16>
Crの含有量について,本件発明16は「最大0.05重量%」であるのに対し,甲2B発明は「0.3wt%以下」である点。

<相違点2-17>
Tiの含有量について,本件発明16は「最大0.05重量%」であるのに対し,甲2B発明は「0.3wt%以下」である点。

<相違点2-18>
不純物について,本件発明16は,「最大0.15重量%の不純物を含み」,「不純物がGa,V,Ni,Sc,Ag,B,Bi,Zr,Li,Pb,Sn,Ca,Hf,Srまたはこれらの組み合わせからなりかつ各不純物を0.05重量%以下の量で含む」ものであるのに対し,甲2B発明は「不可避的不純物」を含むものであるが,当該不可避不純物の種類及び含有量は特定されておらず,本件発明16で不純物とされるZr及びSnの含有量が,「Zr:0.3wt%以下」及び,「Sn:0.3wt%以下」である点。

<相違点2-19>
フィンストックの製造について,本件発明16は,「アルミニウム合金を鋳造して,鋳造アルミニウム合金を形成すること」,「前記鋳造アルミニウム合金を均質化すること」,「前記鋳造アルミニウム合金を熱間圧延して,圧延製品を製造すること」及び「前記圧延製品をフィンストックに冷間圧延すること」を含むものであるが,甲2B発明は,そのような特定がされていない点。

イ 相違点についての判断
相違点2-10?2-18は,相違点2-1?2-9と同様であることから,その判断についても,上記(2)イと同様であって,甲2B発明において,相違点2-10(Zn含有量)及び相違点2-15(Mg含有量)に係る事項が容易に想到し得るとは認められない。

ウ 本件発明16についての小括
よって,本件発明16は,甲2B発明でないし,甲2B発明と甲1,甲3?8に記載された事項及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(6)本件発明17について
本件発明17は,請求項16を引用するものであるから,上記(5)のとおり,少なくとも相違点2-10?2-19において甲2B発明と相違し,その判断については,上記(5)イのとおりである。
よって,本件発明17は,甲2B発明でないし,甲2B発明と甲2?8に記載された事項及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(7)申立理由1-2(新規性)及び申立理由2-2(進歩性)について(
甲2を主引用例とするもの)の小括
したがって,本件特許の請求項1?3,15?17に係る発明は,甲2に記載された発明でないし,本件特許の請求項1?17に係る発明は,甲2に記載された発明と甲1,3?8に記載された事項及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

3 申立理由1-3(新規性)及び申立理由2-3(進歩性)について(
甲3を主引用例とするもの)
(1)甲3に記載された発明
甲3の2頁右下欄1?12行の記載から,甲3には以下の発明(以下「甲3A発明」という。)が記載されているものと認められる。

<甲3A発明>
Zn 1.0?2.0%
Mn 1.0?2.0%
Mg 0.02?0.5%
Si 0.02?0.2%
Fe 0.02?0.5%
を含むアルミ合金に
Cu 0.02?0.2%
Cr 0.01?0.5%
Ti 0.01?0.2%
のうちの1種又は2種以上を加えたアルミ合金としたフィン。

また,甲3には,甲3A発明に係るフィン材であって,アルミ合金を製造してからフィンを製造する方法として,以下の発明(以下「甲3B発明」という。)も記載されているということができる。

<甲3B発明>
Zn 1.0?2.0%
Mn 1.0?2.0%
Mg 0.02?0.5%
Si 0.02?0.2%
Fe 0.02?0.5%
を含むアルミ合金に
Cu 0.02?0.2%
Cr 0.01?0.5%
Ti 0.01?0.2%
のうちの1種又は2種以上を加えたアルミ合金を製造し,フィンを製造する方法。

さらに,甲3の特許請求の範囲には,複数段積重ねたチューブの間にフィンを介装して組合せて一体構造とした熱交換器が記載されており,当該フィンは,甲3A発明に係るフィンを用いるものであるから,甲3には,以下の発明(以下「甲3C発明」という。)も記載されているものと認められる。

<甲3C発明>
複数段積重ねたチューブの間に甲3A発明に係るフィンを介装して組合せて一体構造とした熱交換器。

(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲3A発明とを対比すると,Znの含有量について,甲3A発明は,本件発明1の含有量範囲に含まれるものであるから,甲1A発明と本件発明1とは,当該含有量について重複し,両者は,Si,Fe,Cu,Mn,Mg,Cr,Tiを含有する点で共通する。
また,甲3A発明の「フィン」は,本件発明1の「フィンストック」に相当するものである。
してみると,本件発明1と甲3A発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「0.7?3.0重量%のZn,Si,Fe,Cu,Mn,Mg,Cr,Tiを含み,残りがAlである,アルミニウム合金を含むフィンストック。」である点。

<相違点3-1>
Siの含有量について,本件発明1は「0.15?0.35重量%」であるのに対し,甲3A発明は「0.02?0.2%」である点。

<相違点3-2>
Feの含有量について,本件発明1は「0.25?0.65重量%」であるのに対し,甲3A発明は「0.02?0.5%」である点。

<相違点3-3>
Cuの含有量について,本件発明1は「0.05?0.20重量%」であるのに対し,甲3A発明は「0.02?0.2%」である点。

<相違点3-4>
Mnの含有量について,本件発明1は「0.75?1.50重量%」であるのに対し,甲3A発明は「1.0?2.0%」である点。

<相違点3-5>
Mgの含有量について,本件発明1は「0.65?1.50重量%」であるのに対し,甲3A発明は「0.02?0.5%」である点。

<相違点3-6>
Crの含有量について,本件発明1は「最大0.10重量%」であるのに対し,甲3A発明は「0.01?0.5%」である点。

<相違点3-7>
Tiの含有量について,本件発明1は「最大0.10重量%」であるのに対し,甲3A発明は「0.01?0.2%」である点。

<相違点3-8>
不純物について,本件発明1は,「最大0.15重量%の不純物を含み」,「不純物がGa,V,Ni,Sc,Ag,B,Bi,Zr,Li,Pb,Sn,Ca,Hf,Srまたはこれらの組み合わせからなりかつ各不純物を0.05重量%以下の量で含む」ものであるのに対し,甲3A発明は,不純物の種類及び含有量を特定していない点。

イ 相違点についての判断
(ア)実質的な相違点であるか否かについて
相違点3-5は,Mgの含有量が明らかに相違するものであるから,実質的な相違点である。

(イ)容易想到性について
事案に鑑み,相違点3-5(Mgの含有量)について検討すると,甲1,2,4?8及び周知技術を参酌しても,甲3A発明において「0.02?0.5%」であるMg含有量を,「0.65?1.50重量%」とする動機付けは認められない。
そして,本件発明1は,相違点3-5に係る特定事項を有することにより,アルミニウム合金が高強度及び耐食性を示すという顕著な効果を奏するものであると認められる。
以上によれば,甲3A発明において,Mgの含有量を「0.65?1.50重量%」とすることは,当業者が容易に想到し得るとは認められない。

ウ 本件発明1についての小括
よって,本件発明1は,甲3発明でないし,他の相違点について検討するまでもなく,甲2発明と甲1,2,4?8に記載された事項及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)本件発明2?14について
本件発明2?14は,請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから,少なくとも相違点3-1?3-8において甲3A発明と相違し,その判断については,上記(2)イのとおりである。
よって,本件発明2,3は,甲1A発明でないし,本件発明2?14は,甲1A発明と甲2?8に記載された事項及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4)本件発明15について
本件発明15と甲3C発明とを対比すると,甲3C発明の「チューブ」,「熱交換器」は,それぞれ,本件発明15の「管」,「物品」に含まれるものである。
また,上記(2)アの検討を踏まえれば,甲3C発明の「甲3A発明に係るフィン」は,本件発明15の「請求項1」「に記載されるフィンストック」に対応するものであって,両者は,相違点3-1?3-8において相違するものと認められる。
そして,上記相違点についての判断は,上記(2)イのとおりである。
よって,本件発明15は,甲3C発明でないし,甲3C発明と甲1,2,4?8に記載された事項及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(5)本件発明16について
ア 対比
本件発明16と甲3B発明とを対比すると,Znの含有量について,甲3B発明は,本件発明16の含有量範囲に含まれるものであるから,甲3B発明と本件発明16とは,当該含有量について重複し,両者は,Si,Fe,Cu,Mn,Mg,Cr,Tiを含有する点で共通する。
また,甲3B発明の「フィン」は,本件発明16の「フィンストック」に相当するものである。
してみると,本件発明16と甲3B発明とは,以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「0.7?3.0重量%のZn,Si,Fe,Cu,Mn,Mg,Cr,Tiを含み,残りがAlである,アルミニウム合金を製造し,フィンストックを製造する方法。」である点。

<相違点3-9>
Siの含有量について,本件発明16は「0.15?0.35重量%」であるのに対し,甲3B発明は「0.02?0.2%」である点。

<相違点3-10>
Feの含有量について,本件発明16は「0.25?0.65重量%」であるのに対し,甲3B発明は「0.02?0.5%」である点。

<相違点3-11>
Cuの含有量について,本件発明16は「0.05?0.20重量%」であるのに対し,甲3B発明は「0.02?0.2%」である点。

<相違点3-12>
Mnの含有量について,本件発明16は「0.75?1.50重量%」であるのに対し,甲3B発明は「1.0?2.0%」である点。

<相違点3-13>
Mgの含有量について,本件発明16は「0.65?1.50重量%」であるのに対し,甲3B発明は「0.02?0.5%」である点。

<相違点3-14>
Crの含有量について,本件発明16は「最大0.05重量%」であるのに対し,甲3B発明は「0.01?0.5%」である点。

<相違点3-15>
Tiの含有量について,本件発明16は「最大0.05重量%」であるのに対し,甲3B発明は「0.01?0.2%」である点。

<相違点3-16>
不純物について,本件発明16は,「最大0.15重量%の不純物を含み」,「不純物がGa,V,Ni,Sc,Ag,B,Bi,Zr,Li,Pb,Sn,Ca,Hf,Srまたはこれらの組み合わせからなりかつ各不純物を0.05重量%以下の量で含む」ものであるのに対し,甲3B発明は,不純物の種類及び含有量を特定していない点。

<相違点3-17>
フィンストックの製造について,本件発明16は,「アルミニウム合金を鋳造して,鋳造アルミニウム合金を形成すること」,「前記鋳造アルミニウム合金を均質化すること」,「前記鋳造アルミニウム合金を熱間圧延して,圧延製品を製造すること」及び「前記圧延製品をフィンストックに冷間圧延すること」を含むものであるが,甲3B発明は,そのような特定がされていない点。

イ 相違点についての判断
相違点3-9?3-16は,相違点3-1?3-8と同様であるから,その判断についても,上記(2)イと同様であって,甲3B発明において,Mgの含有量を「0.65?1.50重量%」とすることは,当業者が容易に想到し得るとは認められない。

ウ 本件発明16についての小括
よって,本件発明16は,甲3B発明でないし,甲3B発明と甲1,2,4?8に記載された事項及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(6)本件発明17について
本件発明17は,請求項16を引用するものであるから,少なくとも相違点3-9?3-17において甲3B発明と相違し,その判断については,上記(5)イのとおりである。
よって,本件発明17は,甲3B発明でないし,甲3B発明と甲1,2,4?8に記載された事項及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(7)申立理由1-3(新規性)及び申立理由2-3(進歩性)について(
甲3を主引用例とするもの)の小括
したがって,本件特許の請求項1?3,15?17に係る発明は,甲3に記載された発明でないし,本件特許の請求項1?17に係る発明は,甲3に記載された発明と甲1,2,4?8に記載された事項及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

4 申立理由3(サポート要件)について
(1)本件明細書の【0002】,【0003】及び【0005】の記載からみて,本件発明が解決しようとする課題(以下「本件課題」という。)は,高強度及び耐食性を示す新規のアルミニウム合金を提供することにあると認められる。

(2)そして,本件課題を解決する手段に関して,同【0022】には,上記2(2)イ(イ)bに摘示したとおり記載され,同【0024】の【表1】において元素組成が示されているところ,Znが0.7?3.0重量%及びMgが0.50?1.50重量%の組成において,「増加されたマグネシウム(Mg)含有量の強化効果」を示し,「所望の腐食性,導電性,及び強度特性を提供」するものであって,このことにより,本件課題が解決できるものと理解できる。

(3)申立人は,特許異議申立書において,本件明細書の【0064】の【表5】には,Mg:1.2?1.23重量%の例(合金1?4)しかなく,Mg含有量が1.2重量%未満の場合に本件の課題を解決しうるか否かを理解できないと主張するとともに,さらに,令和3年4月15日付け意見書において,参考資料1を示し,Mg含有量が増加するほど強度が高くなることは周知技術であり,実験例で示されたMg含有量1.2重量%のほぼ半分である0.65%させても,機械的特性と耐食性の両方を向上させることができるかは,理解することができない旨主張している。

(4)しかしながら,上記(2)のとおり,Znが0.7?3.0重量%及びMgが0.50?1.50重量%の組成において本件課題が解決できるものと理解できるし,さらに,本件発明は達成すべき機械的特性を具体的な数値として示すものでなく,「増加されたマグネシウム(Mg)含有量の強化効果」を示すものであって,Mg含有量に応じた高強度化がなされているものといえることと,申立人は,Mg含有量が1.2重量%未満の場合に,技術常識から高強度とはいえないことを具体的な根拠を示して主張するものでもないことから,申立人の主張を採用することはできない。

(5)よって,本件発明は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものである。


第6 むすび
以上のとおり,取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項1?17に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件特許の請求項1?17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.7?3.0重量%のZn、0.15?0.35重量%のSi、0.25?0.65重量%のFe、0.05?0.20重量%のCu、0.75?1.50重量%のMn、0.65?1.50重量%のMg、最大0.10重量%のCr、最大0.10重量%のTi、及び最大0.15重量%の不純物を含み、残りがAlであり、前記不純物がGa、V、Ni、Sc、Ag、B、Bi、Zr、Li、Pb、Sn、Ca、Hf、Srまたはこれらの組み合わせからなりかつ各不純物を0.05重量%以下の量で含む、アルミニウム合金を含むフィンストック。
【請求項2】
前記アルミニウム合金が1.0?2.5重量%のZn、0.2?0.35重量%のSi、0.35?0.60重量%のFe、0.10?0.20重量%のCu、0.75?1.25重量%のMn、0.90?1.30重量%のMg、最大0.05重量%のCr、最大0.05重量%のTi、及び最大0.15重量%の不純物を含み、残りがAlである、請求項1に記載のフィンストック。
【請求項3】
前記アルミニウム合金が1.5?2.5重量%のZn、0.17?0.33重量%のSi、0.30?0.55重量%のFe、0.15?0.20重量%のCu、0.80?1.00重量%のMn、1.00?1.25重量%のMg、最大0.05重量%のCr、最大0.05重量%のTi、及び最大0.15重量%の不純物を含み、残りがAlである、請求項1に記載のフィンストック。
【請求項4】
前記アルミニウム合金が0.9?2.6重量%のZn、0.2?0.33重量%のSi、0.49?0.6重量%のFe、0.15?0.19重量%のCu、0.79?0.94重量%のMn、1.13?1.27重量%のMg、最大0.05重量%のCr、最大0.05重量%のTi、及び最大0.15重量%の不純物を含み、残りがAlである、請求項1に記載のフィンストック。
【請求項5】
前記アルミニウム合金が1.4?1.6重量%のZn、0.2?0.33重量%のSi、0.49?0.6重量%のFe、0.15?0.19重量%のCu、0.79?0.94重量%のMn、1.13?1.27重量%のMg、最大0.05重量%のCr、最大0.05重量%のTi、及び最大0.15重量%の不純物を含み、残りがAlである、請求項1に記載のフィンストック。
【請求項6】
前記アルミニウム合金が、直接チル鋳造によって、または連続鋳造によって製造される、請求項1?5のいずれか一項に記載のフィンストック。
【請求項7】
前記アルミニウム合金が、均質化、熱間圧延、冷間圧延、及びアニーリングによって製造される、請求項1?6のいずれか一項に記載のフィンストック。
【請求項8】
前記アルミニウム合金が、HテンパーまたはOテンパーである、請求項1?7のいずれか一項に記載のフィンストック。
【請求項9】
前記アルミニウム合金の降伏強度が、少なくとも70MPaである、請求項1?8のいずれか一項に記載のフィンストック。
【請求項10】
前記アルミニウム合金の最大引張強度が、少なくとも170MPaである、請求項1?9のいずれか一項に記載のフィンストック。
【請求項11】
前記アルミニウム合金が、国際軟銅規格(IACS)に基づいて37%超の導電率を含む、請求項1?10のいずれか一項に記載のフィンストック。
【請求項12】
前記アルミニウム合金が、-740mV?-850mVの腐食電位を含む、請求項1?11のいずれか一項に記載のフィンストック。
【請求項13】
前記フィンストックのゲージが、1.0mm以下である、請求項1?12のいずれか一項に記載のフィンストック。
【請求項14】
前記フィンストックのゲージが、0.15mm以下である、請求項1?13のいずれか一項に記載のフィンストック。
【請求項15】
管及び請求項1?14のいずれか一項に記載されるフィンストックを含むフィンを備える物品。
【請求項16】
0.7?3.0重量%のZn、0.15?0.35重量%のSi、0.25?0.65重量%のFe、0.05?0.20重量%のCu、0.75?1.50重量%のMn、0.65?1.50重量%のMg、最大0.05重量%のCr、最大0.05重量%のTi、及び最大0.15重量%の不純物を含み、残りがAlであり、前記不純物がGa、V、Ni、Sc、Ag、B、Bi、Zr、Li、Pb、Sn、Ca、Hf、Srまたはこれらの組み合わせからなりかつ各不純物を0.05重量%以下の量で含むアルミニウム合金を鋳造して、鋳造アルミニウム合金を形成することと、
前記鋳造アルミニウム合金を均質化することと、
前記鋳造アルミニウム合金を熱間圧延して、圧延製品を製造することと、
前記圧延製品をフィンストックに冷間圧延することと、を含む、フィンストックを製造する方法。
【請求項17】
前記フィンストックをアニーリングすることをさらに含む、請求項16に記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-08-23 
出願番号 特願2018-501888(P2018-501888)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C22C)
P 1 651・ 121- YAA (C22C)
P 1 651・ 537- YAA (C22C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鈴木 毅  
特許庁審判長 平塚 政宏
特許庁審判官 井上 猛
亀ヶ谷 明久
登録日 2020-01-07 
登録番号 特許第6639635号(P6639635)
権利者 ノベリス・インコーポレイテッド
発明の名称 フィンストックとして使用するための高強度な耐食アルミニウム合金及びそれを作製する方法  
代理人 松谷 道子  
代理人 山本 宗雄  
代理人 松谷 道子  
代理人 山本 宗雄  

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