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審決分類 |
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する A61K |
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管理番号 | 1379057 |
審判番号 | 訂正2021-390089 |
総通号数 | 264 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-12-24 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2021-06-04 |
確定日 | 2021-09-21 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6457696号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第6457696号の明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件訂正審判の請求に係る特許第6457696号(以下「本件特許」という。)は、2016年(平成28年)7月22日(パリ条約による優先権主張 2015年7月23日、2016年4月22日 いずれも欧州特許庁(EP))を国際出願日とする、特願2018-502794号(以下「本件特許に係る出願」という。)の請求項1ないし13に係る発明について、平成30年12月28日に特許権の設定登録がなされたものである。 その後、令和3年5月27日(受付日)に一般承継による本件特許権の持分移転がなされ、本件特許権のうちの「ユニヴェルシテ・パリ・シュド」の持分が「ユニヴェルシテ・パリ・サクレー」に移転された。 そして、令和3年6月4日に、本件特許の権利者である「アンスティテュ・キュリ」、「サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク」、「オンクセオ」、「アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル」及び「ユニヴェルシテ・パリ・サクレー」(以下、これら5名を併せて「請求人」という。)により本件訂正審判の請求がなされた。 第2 請求の趣旨及び訂正の内容 本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第6457696号の明細書を、本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを認める、との審決を求める、というものである。 そして、請求人が求めている訂正の内容は、次のとおりである。 <訂正事項> 明細書の段落【0040】、【0067】、【0072】、【0073】及び【0074】の、 「テトラエチレングリコールリンカー(10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-テトラエチレングリコールラジカル」 を、 「テトラエチレングリコールリンカー(13-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-テトラエチレングリコールラジカル」 に訂正する。(下線は訂正による変更箇所を示す。) 第3 当審の判断 1 訂正の目的について (1)請求人が主張する訂正の目的 訂正事項は、明細書の段落【0040】、【0067】、【0072】、【0073】及び【0074】の5箇所に記載されている「テトラエチレングリコールリンカー(10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-テトラエチレングリコールラジカル」について、「10-O-」とされているのを、「13-O-」に訂正する、というものである。 請求人は、当該訂正事項について、誤記の訂正を目的とするものである旨を主張しているから(審判請求書3頁下から4行?5頁3行)、まず、当該訂正事項が誤記の訂正を目的とするものであるか検討する。 「誤記の訂正」とは、本来その意であることが、特許請求の範囲、明細書又は図面などから明らかな内容の字句、語句に正すことをいい、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものをいうと解される。 そこで、上記「10-O-」との記載が明らかな誤りであって、当該記載が当然に「13-O-」の意味であるといえるか否かについて、以下、検討する。 (2)本件明細書の記載 本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)には、以下の記載がある(なお、「N」との記載における下線以外は、下線は当審が付したものである。) ・摘記ア 「【0038】 核酸分子 コンジュゲートしているか又はしていない、本発明で使用するための核酸分子は、以下の式によって記載することができる: 【化6】 (式中、Nは、ヌクレオチドであり、nは、少なくとも1の整数であり、下線付きNは、修飾ホスホジエステル骨格を有するか又は有しないヌクレオチドを指し、L’は、リンカーであり、Cは、エンドサイトーシスを促進する分子であり、Lは、リンカーであり、m及びpは、独立して、0又は1である整数である)。式(II)及び(III)中、C-Lmは、それぞれ、ヌクレオチドの5’末端又は3’末端に結合している。・・・。分子がコンジュゲートしているとき、pは1である。・・・。 【0039】 好ましい実施態様では、式(I)、(II)、又は(III)の分子は、以下の特徴のうちの1つ又は幾つかを有する: ・・・ - 結合しているL’は、・・・、1,19-ビス(ホスホ)-8-ヒドラザ-2-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカン、及び2,19-ビス(ホスホル)-8-ヒドラザ-1-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカンからなる群から選択される;及び/又は - mは1であり、そして、Lは、カルボキサミドポリエチレングリコール、より好ましくは、カルボキサミドトリエチレングリコール、若しくはカルボキサミドテトラエチレングリコールである;及び/又は - Cは、・・・、好ましくは、コレステロール又はトコフェロール、更により好ましくは、コレステロールである。 【0040】 好ましくは、C-Lmは、トリエチレングリコールリンカー(10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-トリエチレングリコールラジカルである。あるいは、C-Lmは、テトラエチレングリコールリンカー(10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-テトラエチレングリコールラジカルである。」 ・摘記イ 「【0065】 したがって、コンジュゲートしたDbait分子又はヘアピン核酸分子は、以下からなる群から選択され得る: ・・・ (NNNN-(N)n-Nは、配列番号4である) 【化11】 ・・・ (L、L’、C、p、及びmについては式(I)、(II)、及び(III)と同じ定義を有する)。 【0066】 好ましい実施態様では、式・・・、(Id)、(IId)、(IIId)、・・・の分子は、以下の特徴のうちの1つ又は幾つかを有する: ・・・ - 結合しているL’は、・・・、1,19-ビス(ホスホ)-8-ヒドラザ-2-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカン、及び2,19-ビス(ホスホル)-8-ヒドラザ-1-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカンからなる群から選択される;及び/又は - mは1であり、そして、Lは、カルボキサミドポリエチレングリコール、より好ましくは、カルボキサミドトリエチレングリコール、若しくはカルボキサミドテトラエチレングリコールである;及び/又は - Cは、・・・、好ましくは、コレステロール又はトコフェロール、更により好ましくは、コレステロールである。 【0067】 好ましくは、C-Lmは、トリエチレングリコールリンカー(10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-トリエチレングリコールラジカルである。あるいは、C-Lmは、テトラエチレングリコールリンカー(10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-テトラエチレングリコールラジカルである。」 ・摘記ウ 「【0071】 非常に具体的な実施態様では、Dbait分子又はヘアピン核酸分子は、以下の式を有する: 【化15】 (式中、C-Lmは、ラジカルであり、 【化16】 L’は、2,19-ビス(ホスホル)-8-ヒドラザ-1-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカンであり、そして、下線付きヌクレオチドは、ホスホロチオアート骨格を有する)。したがって、前記分子は、以下の構造を有し、そして、実施例の項では「coDbait」と称される。 【化17】 配列番号21 」 ・摘記エ 「【0072】 式・・・、(Id)、(IId)、(IIId)、・・・、好ましくは式・・・、(IId)、・・・のDbait分子又はヘアピン核酸分子の特定の実施態様では、Cは、コレステロールであり、C-Lmは、テトラエチレングリコールリンカー(10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-テトラエチレングリコールラジカルである。 【0073】 好ましい実施態様では、コンジュゲートしたDbait分子又はヘアピン核酸分子は、・・・、(IId)、・・・からなる群から選択され、式中、C-Lmは、テトラエチレングリコールリンカー(10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-テトラエチレングリコールラジカルであり、そして、L’は、好ましくは、・・・、1,19-ビス(ホスホ)-8-ヒドラザ-2-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカン、及び2,19-ビス(ホスホル)-8-ヒドラザ-1-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカンからなる群から選択され、より好ましくは、1,19-ビス(ホスホ)-8-ヒドラザ-2-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカンである。 【0074】 非常に具体的な実施態様では、Dbait分子又はヘアピン核酸分子(AsiDNA又はDT01)は、以下の式を有する: 【化18】 (式中、C-Lmは、テトラエチレングリコールリンカー(10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-テトラエチレングリコールラジカルであり、そして、L’は、1,19-ビス(ホスホ)-8-ヒドラザ-2-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカンである)。 【化19】 」 (3)誤記についての判断 ア 上記「摘記ア」には、「本発明で使用するための核酸分子」として、次の式(I)、(II)又は(III): 「 」 の分子が記載され(段落【0038】)、これらの式の分子中における「リンカー」である「L」を含む構造部分「C-Lm」の好ましい例として、 a:「トリエチレングリコールリンカー(10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-トリエチレングリコールラジカル」 及び b:「テトラエチレングリコールリンカー(10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-テトラエチレングリコールラジカル」 が記載されている(段落【0040】)。 イ また、上記「摘記イ」には、「Dbait分子又はヘアピン核酸分子」として、次の式(Id)、(IId)又は(IIId): 「 」 の分子が記載され(段落【0065】)、これらの分子は、上記式(I)、(II)又は(III)の分子について、それぞれ構造を限定したものと認められるところ、これらの式の分子中の構造部分「C-Lm」の好ましい例としても、 a:「トリエチレングリコールリンカー(10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-トリエチレングリコールラジカル」 及び b:「テトラエチレングリコールリンカー(10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-テトラエチレングリコールラジカル」 が記載されている(段落【0067】)。 ウ 上記ア及びイで説示した、式(I)、(II)又は(III)の分子、及びそれらの構造を限定した式(Id)、(IId)又は(IIId)の分子中における構造部分「C-Lm」の好ましい例とされている、 a:「トリエチレングリコールリンカー(10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-トリエチレングリコールラジカル」 及び b:「テトラエチレングリコールリンカー(10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-テトラエチレングリコールラジカル」 について、両者の構造を比較すると、前者(a)は「トリエチレングリコール」としてエチレングリコールの繰り返し単位(-CH_(2)-CH_(2)-O-)を3つ含んでいるのに対して、後者(b)は「テトラエチレングリコール」を含んでおり、エチレングリコールの繰り返し単位が4つ存在するため、構成原子数が3つ多くなるにもかかわらず、これらの繰り返し単位の末端に隣接する酸素原子の置換位置については、前者(a)と後者(b)のいずれでも「10-O-」とされており、不整合が生じている。 そして、前者(a)における「トリエチレングリコール」の部分は、構成原子数が9であることから、これに隣接する酸素原子の置換位置が「10-O-」とされるのは合理的であるのに対して、後者(b)における「テトラエチレングリコール」の部分は構成原子数が12であることから、これに隣接する酸素原子の置換位置は、「10-O-」では矛盾が生じ、「13-O-」と記載されるべきものであったと解される。 そうすると、後者(b)、すなわち、段落【0040】及び【0067】に記載された「テトラエチレングリコールリンカー(10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-テトラエチレングリコールラジカル」において、「10-O-」という記載は、明らかな誤りであって、正しくは当然に「13-O-」の意味であるといえる。 エ 次いで、上記「摘記ウ」には、「Dbait分子又はヘアピン核酸分子」の非常に具体的な実施態様として、次の構造: 「【化17】 配列番号21 」 を有する分子が記載されているところ(段落【0071】)、当該分子は、式(IId): 「【化15】 」 の分子中の構造部分「C-Lm」が、ラジカルであり、 「【化16】 」 であることが記載されている(段落【0071】)。 上記【化16】のラジカルは、エチレングリコールの繰り返し単位(-CH_(2)?CH_(2)?O-)を3つ含んでおり、その構造からみて、上記ア及びイで説示した、式(IId)等の分子中における構造部分「C-Lm」の好ましい例とされている、 a:「トリエチレングリコールリンカー(10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-トリエチレングリコールラジカル」 に該当するものと認められ、「トリエチレングリコール」の部分は構成原子数が9であるから、これに隣接する酸素原子の置換位置が「10-O-」とされていることは、上記【化16】のラジカルの構造とも整合している。 オ 一方で、上記「摘記エ」には、「Dbait分子又はヘアピン核酸分子」の別の非常に具体的な実施態様として、次の構造: 「【化19】 」 を有する分子(AsiDNA又はDT01)が記載されており(段落【0074】)、当該分子は、式(IId): 「【化18】 」 の分子中の構造部分「C-Lm」が、「テトラエチレングリコールリンカー(10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-テトラエチレングリコールラジカル」であるとされているところ(段落【0074】)、当該ラジカルは、上記ア及びイで説示した、式(IId)等の分子中における構造部分「C-Lm」の好ましい例とされている、 b:「テトラエチレングリコールリンカー(10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-テトラエチレングリコールラジカル」 と同じものである。 しかし、上記ウで説示したように、当該ラジカルの表記において、「10-O-」という記載は、明らかな誤りであって、正しくは当然に「13-O-」の意味であるというべきである。 この点につき、上記【化19】の分子(AsiDNA又はDT01)において、上記式(IId)の分子中の構造部分「C-Lm」とされる「テトラエチレングリコールリンカー(10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-テトラエチレングリコールラジカル」に対応する部分は、 「 」 であると解されるところ、当該ラジカルは、エチレングリコールの繰り返し単位(-CH_(2)-CH_(2)-O-)を4つ含んでおり、「テトラエチレングリコール」の部分は構成原子数が12であることから、これに隣接する酸素原子の置換位置が「10-O-」とされることは技術的に矛盾し、当該置換位置が、正しくは当然に「13-O-」であるということは、上記【化19】の分子(AsiDNA又はDT01)の構造からも裏付けられる。 カ さらに、上記「摘記エ」には、式(IId)等の「Dbait分子又はヘアピン核酸分子」の特定の実施態様(段落【0072】)、及び、「Dbait分子又はヘアピン核酸分子」の好ましい実施態様(段落【0073】)では、これらの式の分子中の構造部分「C-Lm」が「テトラエチレングリコールリンカー(10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-テトラエチレングリコールラジカル」であると記載されているところ、当該ラジカルは、上記ア及びイで説示した、式(IId)等の分子中における構造部分「C-Lm」の好ましい例とされている、 b:「テトラエチレングリコールリンカー(10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-テトラエチレングリコールラジカル」 と同じものである。 しかし、上記ウ?オにて説示したように、当該ラジカルの表記において、「10-O-」という記載は、明らかな誤りであり、正しくは当然に「13-O-」の意味であるというべきである。 キ 上記ア?カの説示のとおり、本件明細書の段落【0040】、【0067】、【0072】、【0073】及び【0074】の5箇所に記載されている「テトラエチレングリコールリンカー(10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-テトラエチレングリコールラジカル」において、「10-O-」という記載は、いずれも明らかな誤りであって、当該記載は当然に「13-O-」の意味であるといえる。 (4)小括 したがって、訂正事項は、特許法第126条第1項第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」のうち「誤記の訂正」を目的とするものに該当する。 2 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項 の範囲内の訂正であることについて 上記1にて説示したように、訂正事項は、誤記の訂正を目的とするものであって、本件明細書に記載された事項(上記1(2)の摘記ア?エの事項)に基づいて導き出されるものである。 本件特許に係る出願は、外国語でされた国際特許出願であって、特許法第184条の6第2項の規定により、国際出願日における明細書の翻訳文が、同法第36条第2項の規定により願書に添付して提出した明細書と、国際出願日における請求の範囲の翻訳文が、同項の規定により願書に添付して提出した特許請求の範囲と、国際出願日における図面(図面の中の説明を除く。)及び図面の中の説明の翻訳文が、同項の規定により願書に添付して提出した図面とみなされ、これらの書面は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面となるところ、そのうちの明細書については、本件訂正審判の請求までに補正も訂正もなされていないから、上記1(2)の摘記ア?エの事項は、願書に最初に添付した明細書に記載されている事項であり、訂正事項は、これらの事項から同様に自ずと導き出されるものである。 したがって、上記訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 3 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないことについて 上記1にて説示したように、訂正事項は、誤記の訂正を目的とするものであって、本件明細書に記載された事項(上記1(2)の摘記ア?エの事項)に基づいて導き出されるものである。 そして、当該訂正事項は、請求人の主張(審判請求書第5頁第4?9行)のとおり、本件特許の請求項1、12及び13に係る医薬組成物、同請求項2に係るキット、並びに、同請求項3?11に係る医薬組成物又はキット、のいずれの発明とも関連しない、明細書の記載部分の誤記を訂正するものであるから、特許請求の範囲を実質的に拡張し又は変更するものではない。 したがって、上記訂正事項は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 4 独立特許要件について 訂正事項は、明細書の誤記の訂正を目的とするものであるから、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないところ、上記3にて説示したとおり、当該訂正事項は、本件特許の請求項1?13に係る発明のいずれとも関連しない、明細書の記載部分の誤記を訂正するものであり、訂正後における特許請求の範囲の請求項1?13に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由を発見しないから、上記訂正事項は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。 第4 むすび 以上のとおり、本件訂正審判の請求に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合するものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 癌を処置するためのDbait分子とPARPインヒビターとの組合せの使用 【技術分野】 【0001】 本発明は、医学、具体的には、腫瘍学の分野に関する。 【0002】 背景技術 ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼPARP1(及びPARP2)は、DNAの損傷に結合し、そして、修復酵素を引き寄せるADPリボースのポリマーを形成することによってDNAの修復を促進する酵素である。PARPは、塩基除去修復経路による一本鎖切断の重要な酵素である。修復されないまま残った場合、一本鎖切断は、複製中に二本鎖切断に変化し、これは、本質的に相同組み換えによって修復される。したがって、PARPの阻害は、相同組み換え欠損細胞では死をもたらす。この所見は、その相同組み換え能を無能にする突然変異を既に有する癌を処置するためのPARPインヒビターの開発につながった。 【0003】 2つの主な酵素:PARP1及びPARP2が、PARPインヒビターによって標的とされる。通常条件下では、いったん修復プロセスが進行中になると、DNAからPARP1及びPARP2が放出される。しかし、これらが幾つかのPARPインヒビターに結合したとき、PARP1及びPARP2は、DNAに捕捉される。捕捉されたPARP-DNA複合体は、修復されていない一本鎖DNA切断よりも細胞に対する毒性が強い。2つのクラスのPARPインヒビターが存在する:(i)主にPARP酵素活性を阻害する作用を有し、そして、DNAにPARPタンパク質を捕捉しない触媒インヒビター、及び(ii)PARP酵素活性をブロックし、そして、損傷部位からそれが放出されるのを防ぐ結合インヒビター。多くのPARPインヒビターが開発されているが、それが(i)型に分類されるか(ii)型に分類されるかは明らかではない。ベリパリブは(i)型である可能性があり、そして、オラパリブ、ニラパリブ、BM673は(ii)型に属する可能性があることが提案されている。更に、PARPは多くの細胞プロセスに関与しているので、腫瘍細胞におけるPARPインヒビターの作用機序は、未だ完全には解明されていない。 【0004】 患者は、現在、特定の腫瘍型(例えば、高悪性度漿液性卵巣癌又はトリプルネガティブ脳癌)を有するか又は関連する分子サブタイプに属する可能性がある癌(例えば、BRCA1/2変異型の乳癌、卵巣癌、膵臓癌、又は前立腺癌)の場合にのみ、PARPインヒビターの治験が検討されている。 【0005】 PARPインヒビター(PARPi)単剤療法は病院において有望な有効性及び安全性のプロファイルを示したが、その主な制約は、HR欠損の必要性及び抵抗性の急速な出現である。PARPi処置に対して最初は応答した多くの腫瘍は、最終的に、HR活性を回復させるか又は別の修復経路の活性を刺激する代償突然変異を通して再発する。 【0006】 したがって、PARPインヒビターの使用は、特定の腫瘍型に限定され、そして、任意の癌を処置するために使用することはできない。 【0007】 発明の概要 本発明は、特に相同組み換え欠失に関連するものに限定されることなく、任意の種類の癌を処置するためにPARPインヒビターを使用することを可能にする併用処置を提供する。更に、本発明は、PARPインヒビターと本明細書に定義される核酸分子との組合せであって、腫瘍に対する相乗効果をもたらす組合せを提供する。 【0008】 したがって、本発明は、特に癌を処置するために使用するための、PARPインヒビターと本明細書に定義される核酸分子とを含む医薬組成物に関する。 【0009】 また、本発明は、本明細書に定義される核酸分子と組み合わせて癌を処置するために使用するためのPARPインヒビター、又はPARPインヒビターと組み合わせて癌を処置するために使用するための本明細書に定義される核酸分子に関する。 【0010】 本発明は、更に、特に癌の処置において、同時に、別々に、又は逐次使用するための複合調製物としての、PARPインヒビターと本明細書に定義される核酸分子とを含むキットに関する。 【0011】 好ましくは、前記核酸分子は、少なくとも1つの自由末端と、ヒトゲノムにおける任意の遺伝子に対して60%未満の配列同一性を有する6?200bpのDNA二本鎖部分とを有する。 【0012】 より好ましくは、前記核酸分子は、以下の式のうちの1つを有する: 【化1】 (式中、Nは、デオキシヌクレオチドであり、nは、1?195の整数であり、下線付きNは、修飾ホスホジエステル骨格を有するか又は有しないヌクレオチドを指し、L’は、リンカーであり、Cは、好ましくは受容体介在性エンドサイトーシスを可能にする細胞受容体を標的とする親油性分子及びリガンドから選択される、エンドサイトーシスを促進する分子であり、Lは、リンカーであり、m及びpは、独立して、0又は1である整数である)。 【0013】 より具体的には、前記核酸分子は、以下の式のうちの1つを有する: 【化2】 (式中、下線付きヌクレオチドは、ホスホロチオアート又はメチルホスホナートの骨格を有するヌクレオチドを指し、結合しているL’は、ヘキサエチレングリコール、テトラデオキシチミジラート(T4)、1,19-ビス(ホスホ)-8-ヒドラザ-2-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカン、及び2,19-ビス(ホスホル)-8-ヒドラザ-1-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカンからなる群から選択され、mは1であり、そして、Lは、カルボキサミドオリゴエチレングリコールであり、Cは、単鎖又は二重鎖の脂肪酸(例えば、オクタデシル及びジオレオイル)、コレステロール、トコフェロール、葉酸、糖(例えば、ガラクトース及びマンノース)及びそのオリゴ糖、ペプチド(例えば、RGD及びボンベシン)、並びにインテグリン等のタンパク質からなる群から選択され、好ましくは、コレステロール又はトコフェロールである)。 【0014】 好ましい実施態様では、前記核酸分子は、 【化3】 からなる群から選択される。 【0015】 より好ましくは、エンドサイトーシスを促進する分子は、コレステロール又はトコフェロールである。 【0016】 非常に具体的な実施態様では、前記核酸分子は、以下の式を有する。 【化4】 【0017】 別の非常に具体的な実施態様では、前記核酸分子は、以下の式を有する: 【化5】 (式中、Cは、コレステリルであり、Lmは、テトラエチレングリコールであり、pは1であり、そして、L’は、1,19-ビス(ホスホ)-8-ヒドラザ-2-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカンである)。 【0018】 好ましくは、PARPインヒビターは、ルカパリブ(AG014699、PF-01367338)、オラパリブ(AZD2281)、ベリパリブ(ABT888)、イニパリブ(BSI 201)、ニラパリブ(MK 4827)、タラゾパリブ(BMN673)、AZD 2461、CEP 9722、E7016、INO-1001、LT-673、MP-124、NMS-P118、XAV939、これらのアナログ、誘導体、又は混合物からなる群から選択される。より好ましくは、PARPインヒビターは、AZD2281(オラパリブ)、ABT888(ベリパリブ)、BMN673、BSI-21(イニパリブ)、AZD 2461、MK-4827(ニラパリブ)、及びAG 014699(ルカパリブ)からなる群から選択される。 【0019】 具体的な態様では、PARPインヒビターは、処置量以下で使用される。 【0020】 全ての癌型を処置することができる。より好ましくは、癌は、白血病、リンパ腫、肉腫、黒色腫、並びに頭頸部、腎臓、卵巣、膵臓、前立腺、甲状腺、肺(具体的には、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌)、食道、乳房、膀胱、結腸直腸、肝臓、子宮頸部の癌、並びに子宮内膜及び腹膜の癌から選択される。具体的には、癌は、固形癌である。具体的な態様では、癌は、転移癌又は高悪性度若しくは進行癌である。具体的な実施態様では、癌は、白血病、リンパ腫、黒色腫、肉腫、頭頸部の癌、乳癌、脳癌、結腸直腸癌、及び子宮頸部の癌から選択される。 【図面の簡単な説明】 【0021】 【図1】オラパリブ(OLA)、ベリパリブ(VELI)、及びDT01の幾つかの用量における生細胞の百分率によって測定されるオラパリブ及びベリパリブとDT01との組合せの超相加性の例。 【図2】DT01及びオラパリブの超相加効果は、細胞株及びDNA-PK又はBRCA突然変異に依存しない。0.1μM オラパリブ(黒)、100μg/mL DT01(灰色)、又は0.1μM オラパリブ+100μg/mL DT01の両処理(斜線(hached))に曝露した細胞の生存を、様々な腫瘍細胞(子宮頸癌、神経膠芽腫、血液癌、乳癌由来)及び2つの非腫瘍性乳腺細胞においてモニタリングした。 【図3】DT01及びオラパリブのインビボにおける相乗作用。 【図4A】細胞死に対するDNA修復インヒビターAsiDNA又はオラパリブの効果。4.8μM AsiDNA(A)又は0.1μM Ola(B)で処理したBC細胞株(MDAMB436、HCC1937、BC227、HCC38、BC173、MDAMB468、HCC1143、BT20、MDAMB231、HCC1187、及びHCC70)、子宮頸部腺癌細胞株(HeLa CTL SX、HeLa BRCA1 SX、及びHeLa BRCA2 SX)、及び非腫瘍哺乳類細胞株(184B5、MCF10、及びMCF12A)における細胞死の分析。点線は、各処理についての感受性細胞株(死細胞%の平均差が2倍を超えることによって定義される)を示す。 【図4B】細胞死に対するDNA修復インヒビターAsiDNA又はオラパリブの効果。4.8μM AsiDNA(A)又は0.1μM Ola(B)で処理したBC細胞株(MDAMB436、HCC1937、BC227、HCC38、BC173、MDAMB468、HCC1143、BT20、MDAMB231、HCC1187、及びHCC70)、子宮頸部腺癌細胞株(HeLa CTL SX、HeLa BRCA1 SX、及びHeLa BRCA2 SX)、及び非腫瘍哺乳類細胞株(184B5、MCF10、及びMCF12A)における細胞死の分析。点線は、各処理についての感受性細胞株(死細胞%の平均差が2倍を超えることによって定義される)を示す。 【図5】細胞生存に対するDNA修復インヒビターAsiDNA又はオラパリブの効果。4.8μM AsiDNA又は0.1μM Olaで処理したBC細胞株(MDAMB436、HCC1937、BC227、HCC38、BC173、MDAMB468、HCC1143、BT20、MDAMB231、HCC1187、HCC70)、子宮頸部腺癌細胞株(HeLa CTL SX、HeLa BRCA1 SX、及びHeLa BRCA2 SX)、及び非腫瘍哺乳類細胞株(184B5、MCF10、及びMCF12A)における細胞生存の分析。生存は、生存非処理細胞の%として表される。 【図6】併用処置は、超相加的有効性を示す。AsiDNA(4.8μM)、オラパリブ(0、0.1、及び1μM)、又は両方の有効性を、トリパンブルーで標識した後に細胞計数することによって処理6日間後にモニタリングした。(A)非処理条件(NT)に対する生細胞の百分率。(B)死細胞の百分率。データは、少なくとも2回の独立した実験の平均±Sc.D.として表される。点線は、AsiDNAとオラパリブとの間に相加性がある場合の細胞生存の計算値を示す。 【図7】AsiDNA及びオラパリブの併用処置の効果。0.1μM Olaで処理した(黒)又は処理していない(灰色)培養物における腫瘍細胞株(A図)及び非腫瘍細胞株(B図)の細胞生存(上図)及び細胞死(下図)の分析。不連続線は、AsiDNAとオラパリブとの間に相加性がある場合の細胞生存の計算値を示す(AsiDNAに対する生存×オラパリブに対する生存)。トリパンブルーで染色し、そして、手動で計数する(処理の6日間後)ことによって、生存及び細胞死をモニタリングした。生存は、生存非処理細胞の%として表され、そして、細胞死は、死細胞の頻度として表される。 【図8】オラパリブは、AsiDNAとは無関係にXRCC1の損傷部位への動員を阻害する。(A)レーザー損傷の40秒間後のXRCC1-eYFP動員の代表的な画像、並びに(B)Ola(1μM)及び/又はAsiDNA(16μM)で24時間処理した後のMDAMB231細胞におけるXRCC1-eYFP動員の動態。ns:有意差無し;^(****):p<0.0001。これら実験は、制御された環境(37℃、5% CO2)下で63/1.4対物レンズを用いてDMI6000スタンドに取り付けられたLeica SP5共焦点システムを用いて実施した。適切なサンプリング頻度(512_512画像、線平均:4、及びズーミング:8に設定)及び対象となる蛍光タンパク質に適応したアルゴンレーザー線(YFPの場合514nm)を用いて全ての記録を行った。第1の工程では、任意の光力学的損傷を誘導しない程度に十分低く設定したレーザーエネルギーで、2?3秒間以内に2枚の画像を取得した。次いで、405nmレーザー線(ダイオード)を100ms間最大出力に設定し、そして、核内の一定サイズ(176nm)の単一スポットに焦点を当てて、再現可能なエネルギー量で光損傷点を引き起こした。次いで、損傷前のシーケンスと同じ設定を用いて、対象となるタンパク質の動員を蛍光によってモニタリングした。AsiDNA(16μM)、オラパリブ(1μM)、又は両方で処理した24時間後、レーザー損傷を誘導した。その後52秒間、2秒間隔で画像を取得した。 【図9】DNA修復に対するAsiDNA及びオラパリブの併用処置の効果。Ola及び/又はAsiDNAで24時間処理したMDAMB231(A)又はMCF10(C)細胞におけるγH2AX(赤)及びRad51又は53BP1(緑)フォーカスの代表的な画像。(B、D)Ola及び/又はAsiDNA処理の24時間後の100個のMDAMB231細胞(B)又はMCF10A細胞(D)における53BP1及びRad51フォーカスのナンバリング。赤色のバーは、平均値を表す。(E、F)MDAMB231(E)又はMCF10A(F)細胞におけるOla及び/又はAsiDNA処理の24時間後に、アルカリコメットアッセイによってモニタリングしたDNA損傷。ns:有意差無し;^(*):p<0.05;^(****):p<0.0001。 【図10】AsiDNAは、放射線で誘導された53BP1フォーカスを阻害する。10Gy 放射線の2時間後、AsiDNA及び/又はOlaによる前処理の22時間後における100個のMDAMB231細胞における53BP1フォーカスのナンバリング。赤色のバーは、平均値を表す。^(*):p<0.05;^(**):p<0.01;^(****):p<0.0001。 【図11A】AsiDNA及びPARP欠損の相乗作用。(A)様々な同質遺伝子DT40細胞株に対するAsiDNAの細胞毒性。(B)DT40細胞の野性型(WT;黒)若しくはPARP KO(赤)のみ(連続線)又は1μM ベリパリブとの併用(青の不連続線)における、AsiDNAに対する細胞 生存の比較。(36)に記載の通り様々な突然変異DT40細胞において、ATPlite 1-stepキット(処理72時間後)によって生存をモニタリングした。生存は、非処理細胞の%として表される。結果は、3回の独立した実験の平均生存±SEMとして表される。 【図11B】AsiDNA及びPARP欠損の相乗作用。(A)様々な同質遺伝子DT40細胞株に対するAsiDNAの細胞毒性。(B)DT40細胞の野性型(WT;黒)若しくはPARP KO(赤)のみ(連続線)又は1μM ベリパリブとの併用(青の不連続線)における、AsiDNAに対する細胞生存の比較。(36)に記載の通り様々な突然変異DT40細胞において、ATPlite 1-stepキット(処理72時間後)によって生存をモニタリングした。生存は、非処理細胞の%として表される。結果は、3回の独立した実験の平均生存±SEMとして表される。 【図12】AsiDNAのベリパリブとの会合は、超相加効果を示す。AsiDNA(4.8μM)、ベリパリブ(0、10、及び50μM)、又は両方の有効性を、トリパンブルー染色によって処理6日間後にモニタリングした。(A)非処理条件(NT)に対する生細胞の百分率。(B)死細胞の百分率。点線は、AsiDNAとベリパリブとの間に相加性がある場合の細胞生存の計算値を示す。 【図13】MDAMB231に対するAsiDNA及び様々なPARPiの併用処置の効果。4.8μM AsiDNA(黒)、16μM AsiDNA(濃い灰色)で処理したか又は処理していない(淡い灰色)培養物における、MDAMB231細胞株の細胞生存(A)及び細胞死(B)の分析。不連続線は、AsiDNAとPARPiとの間に相加性がある場合の細胞生存の計算値を示す(AsiDNAに対する生存×PARPiに対する生存)。処理の6日間後に生存及び細胞死をモニタリングした。生存は、生存非処理細胞の%として表され、そして、細胞死は、死細胞の頻度として表される。80%及び50%の生存を与えるようにPARPi用量を選択した(表2)。発明を実施するための形態 【0022】 したがって、本発明は、以下に関する: - 特に癌の処置において使用するための、PARPインヒビターと、本明細書に定義される核酸分子と、任意で、薬学的に許容し得る担体とを含む医薬組成物; - 特に癌の処置において、同時に、別々に、又は逐次使用するための複合調製物としての、PARPインヒビターと本明細書に定義される核酸分子とを含む物又はキット; - 特に癌の処置において、同時に、別々に、又は逐次使用するための、PARPインヒビターと本明細書に定義される核酸分子とを含む複合調製物; - 本明細書に定義される核酸分子による処置と組み合わせて、癌の処置において使用するための、PARPインヒビターを含む医薬組成物; - PARPインヒビターによる処置と組み合わせて癌の処置において使用するための、本明細書に定義される核酸分子を含む医薬組成物; - 本明細書に定義される核酸分子による処置と組み合わせて癌を処置するための医薬を製造するための、PARPインヒビターを含む医薬組成物の使用; - PARPインヒビターによる処置と組み合わせて癌を処置するための医薬を製造するための、本明細書に定義される核酸分子を含む医薬組成物の使用; - 癌を処置するための医薬を製造するための、PARPインヒビターと、本明細書に定義される核酸分子と、任意で、薬学的に許容し得る担体とを含む医薬組成物の使用; - a)本明細書に定義される核酸分子と、b)PARPインヒビターと、薬学的に許容し得る担体とを含む医薬組成物を有効量投与することを含む、それを必要としている被験体における癌を処置する方法; - PARPインヒビターを含む医薬組成物の有効量と、本明細書に定義される核酸分子を含む医薬組成物の有効量とを投与することを含む、それを必要としている被験体における癌を処置する方法; - PARPインヒビターと、本明細書に定義される核酸分子とを含む医薬組成物を有効量投与することを含む、それを必要としている被験体における癌を処置する方法。 【0023】 用語「キット」、「物」、又は「複合調製物」とは、本明細書で使用するとき、上に定 義した組合せパートナーを独立に、又は識別される量の組合せパートナーとの様々な固定の組合せを使用することによって、すなわち、同時に又は異なる時点で投与し得るという意味で、特に「キットオブパーツ」を定義する。次いで、キットオブパーツのパーツを、同時に、又は経時的に交互に、すなわち、キットオブパーツの任意のパーツについて異なる時点で、そして、等しい又は異なる時間間隔で投与してよい。複合調製物で投与される組合せパートナーの全量の比は変動し得る。組合せパートナーは、同じ経路で又は異なる経路で投与してよい。 【0024】 本発明の状況において、処置という用語は、治癒的、対症療法的、及び予防的な処置を意味する。本発明の医薬組成物、キット、物、及び複合調製物は、癌の進行の早期又は後期を含む、既存の癌又は腫瘍を有するヒトにおいて用いることができる。本発明の医薬組成物、キット、物、及び複合調製物は、癌を有する患者を必ずしも治癒させはしないが、進行を遅延若しくは減速させるか又は疾患の更なる進行を防ぎ、それによって、患者の病態を回復させる。具体的には、本発明の医薬組成物、キット、物、及び複合調製物は、腫瘍の発達を低減し、腫瘍量を低減し、哺乳類宿主における腫瘍を退縮させ、及び/又は転移の発生及び癌の再発を防ぐ。癌の処置において、本発明の医薬組成物は、処置的に有効な量で投与される。 【0025】 「処置的に有効な量」とは、単独で、又は医薬組成物、キット、物、若しくは複合調製物の他の活性成分と組み合わせて、ヒトを含む哺乳類における癌の有害作用を防ぐ、取り除く、又は低減する、本発明の医薬組成物の量を意味する。投与される用量は、組成物中の各化合物について、単独で又は本明細書に記載される組合せ以外の処置と併用される各化合物について定義される「処置的に有効な量」まで下げてもよいことが理解される。当業者は、患者、病状、投与方式等に従って組成物の「処置的に有効な量」を適応させる。 【0026】 本明細書全体のいずれにおいても、「癌の処置」等は、本発明の医薬組成物を参照して言及され、a)癌を処置する方法であって、このような処置を必要としている被験体に本発明の医薬組成物を投与することを含む方法;b)癌を処置するための、本発明の医薬組成物の使用;c)癌を処置するための医薬を製造するための、本発明の医薬組成物の使用;及び/又はd)癌の処置において使用するための本発明の医薬組成物を意味する。 【0027】 本明細書で企図される医薬組成物は、活性成分に加えて薬学的に許容し得る担体を含み得る。用語「薬学的に許容し得る担体」は、活性成分の生物活性の有効性に干渉せず、そして、投与される宿主に対して毒性ではない任意の担体(例えば、担持体、物質、溶媒等)を包含することを意味する。例えば、非経口投与については、生理食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミン、及びリンゲル液等のビヒクル中で活性化合物を注射用の単位剤形に製剤化してよい。 【0028】 医薬組成物は、当技術分野において公知の方法で薬学的に適合し得る溶媒中の液剤として、又は好適な薬学的溶媒若しくはビヒクル中の乳剤、懸濁剤、若しくは分散剤として、又は固体ビヒクルを含有する丸剤、錠剤、若しくはカプセル剤として製剤化することができる。経口投与に好適な本発明の製剤は、それぞれ所定の量の活性成分を含有するカプセル剤、サッシェ剤、錠剤、又はロゼンジ剤として別々の単位の形態であってもよく;粉剤又は顆粒剤の形態であってもよく;水性液体又は非水性液体中の液剤又は懸濁剤の形態であってもよく;水中油型エマルション又は油中水型エマルションの形態であってもよい。非経口投与に好適な製剤は、便利なことに、好ましくはレシピエントの血液と等張である活性成分の無菌の油性又は水性の調製物を含む。また、全てのこのような製剤は、他の薬学的に適合し得かつ非毒性の補助剤、例えば、安定剤、抗酸化剤、結合剤、染料、乳化剤、又は着香物質等も含有し得る。したがって、本発明の製剤は、薬学的に許容し得る担体、そして、場合により他の処置成分と共に活性成分を含む。担体は、製剤の他の成分と適合し得かつそのレシピエントに対して有害ではないという意味で「許容可能」でなければならない。医薬組成物は、有利なことに、好適な無菌溶液の注射若しくは静脈内注入によって、又は消化管によって経口投薬として適用される。これら化学療法剤の大部分を安全かつ有効に投与する方法は、当業者に公知である。更に、これらの投与は、標準的な文献に記載されている。 【0029】 PARPインヒビター 用語「PARP」とは、本明細書で使用するとき、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼを指す。PARPは、β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD^(+))のニコチンアミド及びポリ-ADP-リボース(PAR)への変換を触媒する。PARPは、DNA一本鎖切断(SSB)の修復において重要な分子である。本明細書で使用するとき、用語「PARP」(EC 2.4.2.30)は、「PARS」(ポリ(ADP-リボース)シンテターゼ)、「ADPRT」(NADrタンパク質(ADP-リボシル)トランスフェラーゼ(重合))、又は「pADPRT」(ポリ(ADP-リボース)トランスフェラーゼ)と等価である。 【0030】 本明細書で使用するとき、用語「PARPインヒビター」とは、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)の活性を減少させる能力を有する任意の化合物を指す。PARP阻害は、主に2つの異なる機序に依存する:(i)主にPARP酵素活性を阻害することによって作用する触媒阻害、及び(ii)PARP酵素活性をブロックし、そして、損傷部位からそれが放出されるのを防ぐ結合阻害。結合インヒビターは、触媒インヒビターよりも細胞に対する毒性が強い。本発明に係るPARPインヒビターは、好ましくは、触媒及び/又は結合インヒビターである。 【0031】 好ましい実施態様では、PARPインヒビターは、PARPファミリーの任意の酵素、優先的には、PARP1及び/又はPARP2のインヒビターである。 【0032】 PARP活性は、当業者に周知の様々な技術によって測定することができる。通常、これら技術は、標識されたポリ(ADP-リボース)のヒストンタンパク質への取り込みを測定することを含む。このような技術の市販キットが利用可能である(例えば、ビオチン化ポリ(ADP-リボース)を含むTervigen製キットを参照)。また、その開示全体が参照により本明細書に組み入れられるPutt KS et al(Anal Biochem,326(1):78-86,2004)によって開発されたもの等の他の方法を用いてもよい。これら方法は、公知の又は予測されるPARPインヒビターのIC50値の測定にとって理想的である。 【0033】 多くのPARPインヒビターが公知であり、したがって、公知であるか、商業的に入手することができるか、又は文献中の対応する化合物を調製するために用いられる方法によって調製することができる出発物質から公知の方法によって合成することができる。 【0034】 本発明に係る好適なPARPインヒビターの例は、オラパリブ(AZD-2281、4-[(3-[(4-シクロプロピルカルボニル)ピペラジン-4-イル]カルボニル)-4-フルオロフェニル]メチル(2H)-フタラジン-l-オン)、ベリパリブ(ABT-888、CAS 912444-00-9、2-((fi)-2-メチルピロリジン-2-イル)-lW-ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド)、CEP-8983(ll-メトキシ-4,5,6,7-テトラヒドロ-lH-シクロペンタ[a]ピロロ[3,4-c]カルバゾール-l,3(2H)-ジオン)又はそのプロドラッグ(例えば、CEP-9722)、ルカパリブ(AG014699、PF-01367338、8-フルオロ-2-{4-[(メチルアミノ)メチル]フェニル}-l,3,4,5-テトラヒドロ-6H-アゼピノ[5,4,3-cd]インドール-6-オン)、E7016(GPI-21016、10-((4-ヒドロキシピペリジン-l-イル)メチル)クロメノ-[4,3,2-de]フタラジン-3(2H)-オン)、タラゾパリブ(BMN-673、(8S,9R)-5-フルオロ-8-(4-フルオロフェニル)-9-(l-メチル-lH-l,2,4- トリアゾール-5-イル)-8,9-ジヒドロ-2H-ピリド[4,3,2de]フタラジン-3(7H)-オン)、INO-1001(4-フェノキシ-3-ピロリジン-l-イル-5-スルファモイル-安息香酸)、KU0058684(CAS 623578-11-0)、ニラパリブ(MK 4827、Merck & Co Inc)、イニパリブ(BSI 201)、イニパリブ-met(イニパリブのC-ニトロソ代謝物)、CEP 9722(Cephalon Inc)、LT-673、MP-124、NMS-P118、XAV939、AZD 2461、ニコチンアミド、5-メチルニコチンアミド、4-アミノ-l,8-ナフタルイミド、ピコリンアミド、ベンズアミド、3-置換ベンズアミド、3-メトキシベンズアミド、3-ヒドロキシベンズアミド、3-アミノベンズアミド、3-クロロプロカインアミド、3-ニトロソベンズアミド、4-アミノベンズアミド、2-アミノベンズアミド、メチル3,5-ジヨード-4-(4’-メトキフェノキシ)ベンゾアート、メチル-3,5-ジヨード-4-(4’-メトキシ-3’,5’-ジヨード-フェノキシ)ベンゾアート、環状ベンズアミド、1,5-ジ[(3-カルバモイルフェニル)アミノカルボニルオキシ]ペンタン、インドール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール-4-カルボキサミド、ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド、2-置換ベンズオキサゾール4-カルボキサミド、2-置換ベンズイミダゾール4-カルボキサミド、2-アリールベンズイミダゾール4-カルボキサミド、2-シクロアルキルベンズイミダゾール-4-カルボキサミド、2-(4-ヒドロキシフェニル)ベンズイミダゾールA-カルボキサミド、キノキサリンカルボキサミド、イミダゾピリジンカルボキサミド、2-フェニルインドール、2-置換ベンズオキサゾール、2-フェニルベンズオキサゾール、2-(3-メトキシフェニル)ベンズオキサゾール、2-置換ベンズイミダゾール、2-フェニルベンズイミダゾール、2-(3-メトキシフェニル)ベンズイミダゾール、1,3,4,5-テトラヒドロ-アゼピノ[5,4,3-cd]インドール-6-オン、アゼピノインドール、アゼピノインドロン、1,5-ジヒドロ-アゼピノ[4,5,6-cd]インドリン-6-オン、ジヒドロジアザピノインドリノン、3-置換ジヒドロジアザピノインドリノン、3-(4-トリフルオロメチルフェニル)-ジヒドロジアザピノインドリノン、テトラヒドロジアザピノインドリノン、5,6-ジヒドロイミダゾ[4,5,1-j,k][l,4]ベンゾジアゾピン-7(4H)-オン、2-フェニル-5,6-ジヒドロ-イミダゾ[4,5,l-jk][l,4]ベンゾジアゼピン-7(4H)-オン、2,3-ジヒドロ-イソインドール-1-オン、ベンズイミダゾール-2-ピペラジン、ベンズイミダゾール-2-ピペラジン複素環式誘導体、4-ヨード-3-ニトロベンズアミド、ベンゾピロン、1,2-ベンゾピロン6-ニトロソベンゾピロン、6-ニトロソ1,2-ベンゾピロン、5-ヨード-6-アミノベンゾピロン、ベンゾイルウレア、キノロン、イソキノロン、イソキノリノン、ジヒドロイソキノリノン、2H-イソキノリン-l-オン、3H-キナゾリン-4-オン、5-置換ジヒドロイソキノリノン、5-ヒドロキシジヒドロイソキノリノン、5-メチルジヒドロイソキノリノン、5-ヒドロキシイソキノリノン、5-アミノイソキノリン-1-オン、5-ジヒドロキシイソキノリノン、1,5-ジヒドロキシイソキノリン、1,5-イソキノリンジオール、4-ヒドロキシキナゾリン、置換チアゾリル-イソキノリノン、置換オキサゾリル-イソキノリノン、テトラヒドロ-2H-イソキノリン-1-オン、3,4-ジヒドロイソキノリン-l(2H)-オン、3,4-ジヒドロ-5-メトキシ-イソキノリン-l(2H)-オン、3,4-ジヒドロ-5-メチル-l(2H)イソキノリノン、3H-キナゾリン、-4-オン、イソキノリン-l(2H)-オン、3,4ジヒドロイソキノリン-l(2H)-オン、4-カルボキサミド-ベンズイミダゾール、置換6-シクロへキシルアルキル置換2-キノリノン、置換6-シクロへキシルアルキル置換2-キノキサリノン、7-フェニルアルキル置換2-キノリノン、7-フェニルアルキル置換2-キノキサリノン、6-置換2-キノリノン、6-置換2-キノキサリノン、1-(アリールメチル)キナゾリン-2,4(1H,3H)-ジオン、4,5-ジヒドロ-イミダゾ[4,5,l-ij]キノリン-6-オン、l,6-ナフチリジン-5(6H)-オン、1,8-ナフタルイミド、4-アミノ-l,8-ナフタルイミド、3,4-ジヒドロ-5-[4-l(l-ピペリジニル)ブトキシ]-l(2H)-イソキノリノン、2,3-ジヒドロベンゾ[de]イソキノリン-l-オン、1-1lb-ジヒドロ-[2H]ベ ンゾピラノ[4,3,2-de]イソキノリン-3-オン、四環式ラクタム、ベンゾピラノイソキノリノン、ベンゾピラノ[4,3,2-de]イソキノリノン、キナゾリン、キナゾリノン、キナゾリンジオン、A-ヒドロキシキナゾリン、2-置換キナゾリン、8-ヒドロキシ-2-メチルキナゾリン-4-(3H)オン、フタラジン、フタラジノン、フタラジン-l(2H)-オン、5-メトキシ-4-メチル-l(2)フタラジノン、4-置換フタラジノン、4-(l-ピペラジンイル)-l(2H)-フタラジノン、四環式ベンゾピラノ[4,3,2-de]フタラジノン、及び四環式インデノ[l,2,3-de]フタラジノン、三環式フタラジノン、2-アミノフタルヒドラジド、フタラジノンケトン、ジヒドロピリドフタラジノン、6-置換5-アリールアミノ-1h-ピリジン-2-オン、ピリダジノン、テトラヒドロピリドピリダジノン、テトラアザフェナレン-3-オン、チエノ[2,3-c]イソキノリン-5-オン(TIQ-A)、2,5-ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ピリミドイミダゾール、イソインドリノン、フェナントリジン、フェナントリジノン、5[H]フェナントリジン-6-オン、置換5[H]フェナントリジン-6-オン、2,3-置換5[H]フェナントリジン-6-オン、6(5H)フェナントリジノンのスルホンアミド/カルバミド誘導体、チエノ[2,3-c]イソキノロン、9-アミノチエノ[2,3-c]イソキノロン、9-ヒドロキシチエノ[2,3-c]イソキノロン、9-メトキシチエノ[2,3-c]イソキノロン、N-(6-オキソ-5,6-ジヒドロフェナントリジン-2-イル]-2-(N,N-ジメチルアミノ}アセトアミド、置換4,9-ジヒドロシクロペンタ[imn]フェナントリジン-5-オン、不飽和ヒドロキシム酸誘導体、O-(3-ピペリジノ-2-ヒドロキシ-l-プロピル)ニコチン酸アミドキシム、O-(2-ヒドロキシ-3-ピペリジノ-プロピル)-3-カルボン酸アミドキシム、ピリダジン、ピラジンアミド、BGB-290、PF-1367338(Pfizer Inc)、AG014699(Pfizer,Inc.)、KU-59436(KuDOS/AstraZeneca PJ34、4-アミノ-l,8-ナフファリニド(naphfhalirnide)(Trevigen)、6(5H)-フェナントリジノン(Trevigen)、NU1025、4-HQN、BGP-15、A-966492、GPI21016、6(5H)-フェナントリジノン(Phen)、テオブロミド、テオフィリン、カフェイン、メチルキサンチン、チミジン、3-アミノフタルヒドラジド、これらのアナログ、誘導体、又は混合物を含むが、これらに限定されない。 【0035】 更なるPARPインヒビターは、例えば、国際公開公報第14201972号、国際公開公報第14201972号、国際公開公報第12141990号、国際公開公報第10091140号、国際公開公報第9524379号、国際公開公報第09155402号、国際公開公報第09046205号、国際公開公報第08146035号、国際公開公報第08015429号、国際公開公報第0191796号、国際公開公報第0042040号、米国特許出願公開第2006004028号、欧州特許第2604610号、欧州特許第1802578号、中国特許第104140426号、中国特許第104003979号、米国特許第060229351号、米国特許第7041675号、国際公開公報第07041357号、国際公開公報第2003057699号、米国特許第06444676号、米国特許出願公開第20060229289号、米国特許出願公開第20060063926号、国際公開公報第2006033006号、国際公開公報第2006033007号、国際公開公報第03051879号、国際公開公報第2004108723号、国際公開公報第2006066172号、国際公開公報第2006078503号、米国特許出願公開第20070032489号、国際公開公報第2005023246号、国際公開公報第2005097750号、国際公開公報第2005123687号、国際公開公報第2005097750号、米国特許第7087637号、米国特許第6903101号、国際公開公報第20070011962号、米国特許出願公開第20070015814号、国際公開公報第2006135873号、UA20070072912、国際公開公報第2006065392号、国際公開公報第2005012305号、国際公開公報第2005012305号、欧州特許第412848号、欧州特許第453210号、欧州特許第454831号、欧州特許第879820号、欧州特許第87982 0号、国際公開公報第030805号、国際公開公報第03007959号、米国特許第6989388号、米国特許出願公開第20060094746号、欧州特許第1212328号、国際公開公報第2006078711号、米国特許第06426415号、米国特許第06514983号、欧州特許第1212328号、米国特許出願公開第20040254372号、米国特許出願公開第20050148575号、米国特許出願公開第20060003987号、米国特許第06635642号、国際公開公報第200116137号、国際公開公報第2004105700号、国際公開公報第03057145A2号、国際公開公報第2006078711号、国際公開公報第2002044157号、米国特許出願公開第20056924284号、国際公開公報第2005112935号、米国特許出願公開第20046828319号、国際公開公報第2005054201号、国際公開公報第2005054209号、国際公開公報第2005054210号、国際公開公報第2005058843号、国際公開公報第2006003146号、国際公開公報第2006003147号、国際公開公報第2006003148号、国際公開公報第2006003150号、国際公開公報第2006003146号、国際公開公報第2006003147、UA20070072842、米国特許第05587384号、米国特許出願公開第20060094743号、国際公開公報第2002094790号、国際公開公報第2004048339号、欧州特許第1582520号、米国特許出願公開第20060004028号、国際公開公報第2005108400号、米国特許第6964960号、国際公開公報第20050080096号、国際公開公報第2006137510号、UA20070072841、国際公開公報第2004087713号、国際公開公報第2006046035号、国際公開公報第2006008119号、国際公開公報第06008118号、国際公開公報第2006042638号、米国特許出願公開第20060229289号、米国特許出願公開第20060229351号、国際公開公報第2005023800号、国際公開公報第1991007404号、国際公開公報第2000042025号、国際公開公報第2004096779号、米国特許第06426415号、国際公開公報第02068407号、米国特許第06476048号、国際公開公報第2001090077号、国際公開公報第2001085687号、国際公開公報第2001085686号、国際公開公報第2001079184号、国際公開公報第2001057038号、国際公開公報第2001023390号、国際公開公報第01021615A1号、国際公開公報第2001016136号、国際公開公報第2001012199号、国際公開公報第95024379号、国際公開公報第200236576号、国際公開公報第2004080976号、国際公開公報第2007149451号、国際公開公報第2006110816号、国際公開公報第2007113596号、国際公開公報第2007138351号、国際公開公報第2007144652号、国際公開公報第2007144639号、国際公開公報第2007138351号、国際公開公報第2007144637号、Banasik et al.(J.Biol.Chem.,267:3,1569-75,1992)、Banasik et al.(Molec.Cell.Biochem,138:185-97,1994)、Cosi et al.(Expert Opin.Ther.Patents 12(7),2002)、Southan and Szabo(Curr Med Chem,10 321-340,2003)、Underhill C.et al.(Annals of Oncology,doi:10.1093/annonc/mdq322,pp 1-12,2010)、Murai J.et al.(J.Pharmacol.Exp.Ther.,349:408-416,2014)に記載されており、これら特許及び刊行物は全て、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。 【0036】 好ましい実施態様では、PARPインヒビター化合物は、ルカパリブ(AG014699、PF-01367338)、オラパリブ(AZD2281)、ベリパリブ(ABT888)、イニパリブ(BSI 201)、ニラパリブ(MK 4827)、タラゾパリブ(BMN673)、AZD 2461、CEP 9722、E7016、INO-1001、LT-673、MP-124、NMS-P118、XAV939、これらのアナログ、誘導体、又は混合物からなる群から選択される。 【0037】 更により好ましい実施態様では、PARPインヒビターは、ルカパリブ(AG014699、PF-013 67338)、オラパリブ(AZD2281)、ベリパリブ(ABT888)、イニパリブ(BSI 201)、ニラパリブ(MK 4827)、タラゾパリブ(BMN673)、AZD 2461、これらのアナログ、誘導体、又は混合物からなる群から選択される。 【0038】 核酸分子 コンジュゲートしているか又はしていない、本発明で使用するための核酸分子は、以下の式によって記載することができる: 【化6】 (式中、Nは、ヌクレオチドであり、nは、少なくとも1の整数であり、下線付きNは、修飾ホスホジエステル骨格を有するか又は有しないヌクレオチドを指し、L’は、リンカーであり、Cは、エンドサイトーシスを促進する分子であり、Lは、リンカーであり、m及びpは、独立して、0又は1である整数である)。式(II)及び(III)中、C-L_(m)は、それぞれ、ヌクレオチドの5’末端又は3’末端に結合している。式(I?III)中、C-L_(m)は、好ましくは、ジスルフィド結合(S-S)を通してL’に結合している。分子がコンジュゲートしているとき、pは1である。好ましくは、下線付きNは、修飾ホスホジエステル骨格を有するヌクレオチドを指す。 【0039】 好ましい実施態様では、式(I)、(II)、又は(III)の分子は、以下の特徴のうちの1つ又は幾つかを有する: - Nは、好ましくは、A(アデニン)、C(シトシン)、T(チミン)、及びG(グアニン)からなる群から選択され、そして、CpGジヌクレオチドの出現を回避するようにかつヒトゲノムにおける任意の遺伝子に対して80%若しくは70%未満、更には60%若しくは50%未満の配列同一性を有するように選択されるデオキシヌクレオチドである;及び/又は - nは、1?195、好ましくは、3?195、23?195、又は25?195、場合により、1?95、2?95、3?95、5?95、15?195、19?95、21?95、23?95、25?95、27?95、1?45、2?35、3?35、5?35、15?45、19?45、21?45、若しくは27?45の整数である。特に好ましい実施態様では、nは27である;及び/又は - 下線付きNは、ホスホロチオアート又はメチルホスホナート骨格、より好ましくは、ホスホロチオアート骨格を有するか若しくは有しないヌクレオチドを指し;好ましくは、下線付きNは、修飾ホスホジエステル骨格を有するヌクレオチドを指す;及び/又は - 結合しているL’は、ヘキサエチレングリコール、テトラデオキシチミジラート(T4)、1,19-ビス(ホスホ)-8-ヒドラザ-2-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカン、及び2,19-ビス(ホスホル)-8-ヒドラザ-1-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカンからなる群から選択される;及び/又は - mは1であり、そして、Lは、カルボキサミドポリエチレングリコール、より好ましくは、カルボキサミドトリエチレングリコール、若しくはカルボキサミドテトラエチレングリコールである;及び/又は - Cは、コレステロール、単鎖若しくは二重鎖の脂肪酸(例えば、オクタデシル、オレイン酸、ジオレオイル、又はステアリン酸)、又は葉酸、トコフェロール、糖(例えば、ガラクトース及びマンノース)及びそのオリゴ糖、ペプチド(例えば、RGD及びボンベシン)、並びにタンパク質(例えば、トランスフェリング(transferring)及びインテグリン)等の細胞受容体を標的とするリガンド(ペプチド、タンパク質、アプタマーを含む)からなる群から選択され、好ましくは、コレステロール又はトコフェロール、更により好ましくは、コレステロールである。 【0040】 好ましくは、C-Lmは、トリエチレングリコールリンカー(10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-トリエチレングリコールラジカルである。あるいは、C-Lmは、テトラエチレングリコールリンカー(13-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-テトラエチレングリコールラジカルである。 【0041】 好ましい実施態様では、コンジュゲート化Dbait分子又はヘアピン核酸分子は、以下の式を有する: 【化7】 (N、N、n、L、L’、C、及びmについては式(I)、(II)、(II’)、及び(III)と同じ定義を有する)。 【0042】 具体的な実施態様では、核酸分子は、例えば、その開示が参照により本明細書に組み入れられる国際公開公報第2005/040378号、同第2008/034866号、及び同第2008/084087号に広範に記載されているもの等のDbait分子であってよい。 【0043】 Dbait分子は、その処置活性に必須の多数の特徴、例えば、その最低長さ、少なくとも1つの自由末端の存在、及び二本鎖部分、好ましくは、DNA二本鎖部分の存在によって定義され得る。以下で論じる通り、Dbait分子の正確なヌクレオチド配列がその活性に影響を与えないことに留意するのが重要である。更に、Dbait分子は、修飾及び/又は非天然の骨格を含有し得る。 【0044】 好ましくは、Dbait分子は、非ヒト起源であり(すなわち、そのヌクレオチド配列及び/又は立体構造(例えば、ヘアピン)は、ヒト細胞においてそれ自体としては存在しない)、最も好ましくは、合成起源である。Dbait分子の配列は、たとえ果たすとしても、少しの役割しか果たさないので、Dbait分子は、好ましくは、公知の遺伝子、プロモータ、エンハンサ、5’-又は3’-上流配列、エキソン、イントロン等に対して高度の配列相同性又は同一性を有しない。言い換えれば、Dbait分子は、ヒトゲノムにおける任意の遺伝子に対して80%又は70%未満、更には60%又は50%未満の配列同一性を有する。配列同一性を求める方法は、当技術分野において周知であり、そして、例えば、Blastを含む。Dbait分子は、ストリンジェントな条件下で、ヒトゲノムDNAにハイブリダイズしない。典型的なストリンジェントな条件は、完全に相補的な核酸を部分的に相補的な核酸と区別できるような条件である。 【0045】 更に、Dbait分子の配列は、好ましくは、周知のtoll様受容体媒介性免疫学的反応を避けるために、CpGを有しない。 【0046】 Dbait分子の長さは、Ku及びDNA-PKcsタンパク質を含むKuタンパク質複合体を適切に結 合させるのに十分である限り、可変であり得る。Dbait分子の長さは、このようなKu複合体に対する結合及びDNA-PKcsの活性化を確保するために、20bp超、好ましくは約32bpでなければならないことが示された。好ましくは、Dbait分子は、20?200bp、より好ましくは24?100bp、更により好ましくは26?100、そして、最も好ましくは、24?200、25?200、26?200、27?200、28?200、30?200、32?200、24?100、25?100、26?100、27?100、28?100、30?100、32?200、又は32?100bpを含む。例えば、Dbait分子は、24?160、26?150、28?140、28?200、30?120、32?200、又は32?100bpを含む。「bp」とは、分子が指定の長さの二本鎖部分を含むことを意図する。 【0047】 具体的な実施態様では、少なくとも32pb又は約32bpの二本鎖部分を有するDbait分子は、Dbait32(配列番号1)、Dbait32Ha(配列番号2)、Dbait32Hb(配列番号3)、Dbait32Hc(配列番号4)、又はDbait32Hd(配列番号5)と同じヌクレオチド配列を含む。場合により、Dbait分子は、Dbait32、Dbait32Ha、Dbait32Hb、Dbait32Hc、又はDbait32Hdと同じヌクレオチド組成を有するが、そのヌクレオチド配列は異なる。次いで、Dbait分子は、3個のA、6個のC、12個のG、及び11個のTを含む二本鎖部分の一本鎖を含む。好ましくは、Dbait分子の配列は、任意のCpGジヌクレオチドを含有しない。 【0048】 あるいは、二本鎖部分は、Dbait32(配列番号1)、Dbait32Ha(配列番号2)、Dbait32Hb(配列番号3)、Dbait32Hc(配列番号4)、又はDbait32Hd(配列番号5)の少なくとも16個、18個、20個、22個、24個、26個、28個、30個、又は32個の連続するヌクレオチドを含む。より具体的な実施態様では、二本鎖部分は、Dbait32(配列番号1)、Dbait32Ha(配列番号2)、Dbait32Hb(配列番号3)、Dbait32Hc(配列番号4)、又はDbait32Hd(配列番号5)の20個、22個、24個、26個、28個、30個、又は32個の連続するヌクレオチドからなる。 【0049】 本明細書に開示する核酸は、DSBの模倣体として、少なくとも1つの自由末端を有していなければならない。前記自由末端は、自由平滑末端又は5’-/3’-突出末端のいずれであってもよい。「自由末端」とは、本明細書では、核酸分子、具体的には、5’末端及び3’末端の両方を有するか、又は3’末端若しくは5’末端のいずれかを有する二本鎖核酸部分を指す。場合により、5’及び3’末端のうちの一方を用いて核酸分子をコンジュゲートすることもでき、又はブロッキング基に結合、例えば、3’-3’ヌクレオチド結合することもできる。 【0050】 別の実施態様では、核酸分子は、2つの自由末端を含有し、そして、直鎖状であり得る。したがって、Dbait分子は、2つの自由末端を有し、そして、Dbait32(配列番号1)、Dbait32Ha(配列番号2)、Dbait32Hb(配列番号3)、Dbait32Hc(配列番号4)、又はDbait32Hd(配列番号5)のヌクレオチド配列を有する二本鎖分子であってもよい。 【0051】 別の具体的な実施態様では、前記Dbait分子は、自由末端を1つだけ含有する。好ましくは、Dbait分子は、二本鎖DNAステム及びループを有するヘアピン核酸で構成される。ループは、核酸若しくは当業者に公知の他の化学基、又はこれらの混合物であってよい。ヌクレオチドリンカーは、2?10個のヌクレオチド、好ましくは、3、4、又は5個のヌクレオチドを含み得る。非ヌクレオチドリンカーは、非網羅的に、脱塩基ヌクレオチド、ポリエーテル、ポリアミン、ポリアミド、ペプチド、炭水化物、脂質、ポリ炭化水素、又は他のポリマー化合物(例えば、オリゴエチレングリコール、例えば、2?10個のエチレングリコール単位、好ましくは、4、5、6、7、又は8個のエチレングリコール単位を有するもの)を含む。好ましいリンカーは、ヘキサエチレングリコール、テトラデオキシチミジラート(T4)、1,19-ビス(ホスホ)-8-ヒドラザ-2-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカン、及び他のリンカー、例えば、2,19-ビス(ホスホル)-8-ヒドラザ-1-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカンからなる群から選択される。したがって、具体的な実施態様では、Dbait分子は、Dbait32(配列番号1)、Dbait32Ha(配列番号2)、Dbait32Hb(配列番号3)、Dbait32Hc(配列番号4)、又はDbait32Hd(配列番号5)の少なくとも16、18、20、22、24、26、28、30、又は32個の連続するヌクレオチドを含む二本鎖部分又はステムと、ヘキサエチレングリコールリンカー、テトラデオキシチミジラートリンカー(T4)、1,19-ビス(ホスホ)-8-ヒドラザ-2-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカン、又は2,19-ビス(ホスホル)-8-ヒドラザ-1-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカンであるループとを有するヘアピン分子であり得る。より具体的な実施態様では、これらDbait分子は、Dbait32(配列番号1)、Dbait32Ha(配列番号2)、Dbait32Hb(配列番号3)、Dbait32Hc(配列番号4)、又はDbait32Hd(配列番号5)の少なくとも20、22、24、26、28、30、又は32個の連続するヌクレオチドからなる二本鎖部分を有し得る。 【0052】 Dbait分子は、好ましくは、2’-デオキシヌクレオチド骨格を含み、そして、場合により、アデニン、シトシン、グアニン、及びチミン以外の1つ又は幾つか(2、3、4、5、又は6個)の修飾ヌクレオチド及び/又はヌクレオベースを含む。したがって、Dbait分子は、本質的に、DNA構造である。具体的には、Dbait分子の二本鎖部分又はステムは、デオキシリボヌクレオチドで構成される。 【0053】 好ましいDbait分子は、一方の鎖又は各鎖の末端に1つ又は幾つかの化学的に修飾されたヌクレオチド又は基を含むが、これらは、具体的には、当該ヌクレオチド又は基を分解から保護するためである。特に好ましい実施態様では、Dbait分子の自由末端は、一方の鎖又は各鎖の末端において1、2、又は3つの修飾ホスホジエステル骨格によって保護されている。好ましい化学基、具体的には、修飾ホスホジエステル骨格は、ホスホロチオアートを含む。あるいは、好ましいDbaitは、3’-3’ヌクレオチド結合、又はメチルホスホナート骨格を有するヌクレオチドを有する。他の修飾骨格は、当技術分野において周知であり、そして、ホスホルアミダート、モルホリノ核酸、2’-0,4’-Cメチレン/エチレン架橋ロックド核酸、ペプチド核酸(PNA)、及び短鎖アルキル、あるいは可変長のシクロアルキル糖間結合又は短鎖ヘテロ原子若しくは複素環式糖内結合、あるいは当業者に公知の任意の修飾ヌクレオチドを含む。第1の好ましい実施態様では、Dbait分子は、一方の鎖又は各鎖の末端において1、2、又は3つの修飾ホスホジエステル骨格によって、より好ましくは、少なくとも3’末端であるが、更により好ましくは5’及び3’末端の両方において、3つの修飾ホスホジエステル骨格(具体的には、ホスホロチオアート又はメチルホスホナート)によって保護されている自由末端を有する。 【0054】 最も好ましい実施態様では、Dbait分子は、32bpのDNA二本鎖部分又はステム(例えば、配列番号1?5からなる群から選択される配列、具体的には、配列番号4を有する)と、ヘキサエチレングリコール、テトラデオキシチミジラート(T4)、1,19-ビス(ホスホ)-8-ヒドラザ-2-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカン、及び2,19-ビス(ホスホル)-8-ヒドラザ-1-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカンからなる群から選択されるリンカーを含むか又はからなる、該DNA二本鎖部分又はステムの二本鎖を結合するループとを含むヘアピン核酸分子であり、該DNA二本鎖部分又はステムの自由末端(すなわち、ループの反対側)は、3つの修飾ホスホジエステル骨格(具体的には、ホスホロチオアートヌクレオチド間結合)を有する。 【0055】 前記核酸分子は、化学合成、半生合成、又は生合成、任意の増幅方法に続いて、任意の抽出及び調製方法、並びに任意の化学修飾によって作製される。リンカーは、標準的な核酸化学合成によって組み込むことができるように提供される。 【0056】 より好ましくは、核酸分子は、特別に設計された収束合成によって作製される:適切なリンカー前駆体の組み込みを含む標準的な核酸化学合成によって2本の相補鎖を調製し、それを精製した後、互いに共有結合させる。 【0057】 場合により、核酸分子は、エンドサイトーシス又は細胞取り込みを促進する分子にコンジュゲートしてよい。 【0058】 具体的には、エンドサイトーシス又は細胞取り込みを促進する分子は、親油性分子(例えば、コレステロール)、単鎖又は二重鎖の脂肪酸、又は受容体媒介性エンドサイトーシスを可能にする細胞受容体を標的とするリガンド(例えば、葉酸及び葉酸誘導体、又はトランスフェリン)であってよい(Goldstein et al.Ann.Rev.Cell Biol.1985 1:1-39;Leamon & Lowe,Proc Natl Acad Sci USA.1991,88:5572-5576.)。また、該分子は、トコフェロール、糖(例えば、ガラクトース及びマンノース)及びそのオリゴ糖、ペプチド(例えば、RGD及びボンベシン)、並びにタンパク質(例えば、インテグリン)であってもよい。脂肪酸は、飽和又は不飽和であってよく、そして、C_(4)?C_(28)、好ましくはC_(14)?C_(22)、更により好ましくはC_(18)、例えば、オレイン酸又はステアリン酸であってよい。具体的には、脂肪酸は、オクタデシル又はジオレオイルであってよい。脂肪酸は、例えば、グリセロール、ホスファチジルコリン、若しくはエタノールアミン等の適切なリンカーと結合しているか、又はDbait分子に結合するために用いられるリンカーによって互いに結合している二重鎖形態として見出すことができる。本明細書で使用するとき、用語「葉酸塩」とは、プテロイン酸誘導体及びアナログを含む、葉酸塩及び葉酸塩誘導体を指すことを意味する。本発明で使用するのに好適な葉酸のアナログ及び誘導体は、抗葉酸、ジヒドロ葉酸、テトラヒドロ葉酸、フォリン酸、プテロポリグルタミン酸、1-デザ、3-デアザ、5-デアザ、8-デアザ、10-デアザ、1,5-デアザ、5,10ジデアザ、8,10-ジデアザ、及び5,8-ジデアザ葉酸、抗葉酸、及びプテロイン酸誘導体を含むが、これらに限定されない。更なる葉酸アナログは、米国特許出願公開第2004/242582号に記載されている。したがって、エンドサイトーシスを促進する分子は、単鎖又は二重鎖の脂肪酸、葉酸塩、及びコレステロールからなる群から選択され得る。より好ましくは、エンドサイトーシスを促進する分子は、ジオレオイル、オクタデシル、葉酸、及びコレステロールからなる群から選択される。最も好ましい実施態様では、核酸分子は、コレステロールにコンジュゲートされる。 【0059】 エンドサイトーシスを促進する分子は、好ましくはリンカーを通して、Dbait分子にコンジュゲートされる。当技術分野において公知の任意のリンカーを用いて、エンドサイトーシスを促進する分子をDbait分子に共有結合させることができる。例えば、国際公開公報第09/126933号は、38?45ページに便利なリンカーについての概説を提供している。リンカーは、非網羅的に、脂肪族鎖、ポリエーテル、ポリアミン、ポリアミド、ペプチド、炭水化物、脂質、ポリ炭化水素、又は他のポリマー化合物(例えば、オリゴエチレングリコール、例えば、2?10個のエチレングリコール単位、好ましくは、3、4、5、6、7、又は8個のエチレングリコール単位、更により好ましくは6個のエチレングリコール単位を有するもの)であってもよく、更には、化学的又は酵素的に分解し得る任意の結合、例えば、ジスルフィド結合、保護されたジスルフィド結合、酸に不安定な結合(例えば、ヒドラゾン結合)、エステル結合、オルトエステル結合、ホスホンアミド結合、生切断性ペプチド結合、アゾ結合、又はアルデヒド結合を組み込んでもよい。このような切断可能なリンカーは、国際公開公報第2007/040469号の12?14ページ、国際公開公報第2008/022309号の22?28ページに詳述されている。 【0060】 具体的な実施態様では、核酸分子は、1つのエンドサイトーシスを促進する分子に結合することができる。あるいは、幾つかのエンドサイトーシスを促進する分子(例えば、2 、3、又は4個)が1つの核酸分子に結合することもできる。 【0061】 特定の実施態様では、エンドサイトーシスを促進する分子、具体的にはコレステロールと、核酸分子との間のリンカーは、CO-NH-(CH_(2)-CH_(2)-O)_(n)(式中、nは、1?10の整数であり、好ましくは、nは、3、4、5、及び6からなる群から選択される)である。非常に具体的な実施態様では、リンカーは、CO-NH-(CH_(2)-CH_(2)-O)_(4)(カルボキサミドテトラエチレングリコール)である。別の具体的な実施態様では、リンカーは、CO-NH-(CH_(2)-CH_(2)-O)_(3)(カルボキサミドトリエチレングリコール)である。リンカーは、核酸分子の活性を変化させない任意の便利な位置において核酸分子に結合することができる。具体的には、リンカーは、5’末端、3’末端、又は核酸分子がヘアピンであるときはループにおいて結合し得る。したがって、好ましい実施態様では、企図されるコンジュゲートしたDbait分子は、ヘアピン構造を有し、そして、その5’末端において、好ましくはリンカーを通して、エンドサイトーシスを促進する分子にコンジュゲートしているDbait分子である。 【0062】 別の特定の実施態様では、エンドサイトーシスを促進する分子、具体的にはコレステロールと、核酸分子との間のリンカーは、ジアルキル-ジスルフィド{例えば、(CH_(2))_(r)-S-S-(CH_(2))_(s)、r及びsは、1?10の整数、好ましくは3?8、例えば、6である}である。 【0063】 最も好ましい実施態様では、コンジュゲートしたDbait分子は、32bpのDNA二本鎖部分又はステム(例えば、配列番号1?5、具体的には、配列番号4からなる群から選択される配列を有する)と、ヘキサエチレングリコール、テトラデオキシチミジラート(T4)、1,19-ビス(ホスホ)-8-ヒドラザ-2-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカン、及び2,19-ビス(ホスホル)-8-ヒドラザ-1-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカンからなる群から選択されるリンカーを含むか又はからなる、該DNA二本鎖部分又はステムの二本鎖を結合するループとを含むヘアピン核酸分子であり、該DNA二本鎖部分又はステムの自由末端(すなわち、ループの反対側)は、3つの修飾ホスホジエステル骨格(具体的には、ホスホロチオアートヌクレオチド間結合)を有し、そして、該Dbait分子は、その5’末端において、好ましくはリンカー(例えば、カルボキサミドオリゴエチレングリコール、好ましくは、カルボキサミドトリエチレングリコール、又はカルボキサミドテトラエチレングリコール)を通して、コレステロールにコンジュゲートしている。 【0064】 好ましい実施態様では、NNNN-(N)_(n)-Nは、Dbait32(配列番号1)、Dbait32Ha(配列番号2)、Dbait32Hb(配列番号3)、Dbait32Hc(配列番号4)、若しくはDbait32Hd(配列番号5)の少なくとも6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、又は32個の連続するヌクレオチドを含むか、又はDbait32(配列番号1)、Dbait32Ha(配列番号2)、Dbait32Hb(配列番号3)、Dbait32Hc(配列番号4)、若しくはDbait32Hd(配列番号5)の20、22、24、26、28、30、又は32個の連続するヌクレオチドからなる。具体的な実施態様では、NNNN-(N)_(n)-Nは、Dbait32(配列番号1)、Dbait32Ha(配列番号2)、Dbait32Hb(配列番号3)、Dbait32Hc(配列番号4)、又はDbait32Hd(配列番号5)、より好ましくはDbait32Hc(配列番号4)を含むか又はからなる。 【0065】 したがって、コンジュゲートしたDbait分子又はヘアピン核酸分子は、以下からなる群から選択され得る: (NNNN-(N)_(n)-Nは、配列番号1である) 【化8】 (NNNN-(N)_(n)-Nは、配列番号2である) 【化9】 (NNNN-(N)_(n)-Nは、配列番号3である) 【化10】 (NNNN-(N)_(n)-Nは、配列番号4である) 【化11】 (NNNN-(N)_(n)-Nは、配列番号5である) 【化12】 (L、L’、C、p、及びmについては式(I)、(II)、及び(III)と同じ定義を有する)。 【0066】 好ましい実施態様では、式(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、及び(IIIe)の分子、好ましくは、式(II)、(IIa)、(IIb)、(IIc)、(IId)、及び(IIe)の分子は、以下の特徴のうちの1つ又は幾つかを有する: - 下線付きヌクレオチドは、ホスホロチオアート若しくはメチルホスホナート骨格、より好ましくは、ホスホロチオアート骨格を有するか若しくは有しないヌクレオチドを指し;好ましくは、下線付きヌクレオチドは、ホスホロチオアート又はメチルホスホナート骨格、より好ましくは、ホスホロチオアート骨格を有するヌクレオチドを指す;及び/又は - 結合しているL’は、ヘキサエチレングリコール、テトラデオキシチミジラート(T4)、1,19-ビス(ホスホ)-8-ヒドラザ-2-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカン、及び2,19-ビス(ホスホル)-8-ヒドラザ-1-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカンからなる群から選択される;及び/又は - mは1であり、そして、Lは、カルボキサミドポリエチレングリコール、より好ましくは、カルボキサミドトリエチレングリコール、若しくはカルボキサミドテトラエチレングリコールである;及び/又は - pは1である;及び/又は - Cは、コレステロール、単鎖若しくは二重鎖の脂肪酸(例えば、オクタデシル、オレイン酸、ジオレオイル、又はステアリン酸)、又は葉酸、トコフェロール、糖(例えば、ガラクトース及びマンノース)及びそのオリゴ糖、ペプチド(例えば、RGD及びボンベシン)、並びにタンパク質(例えば、トランスフェリング及びインテグリン)等の細胞受容体を標的とするリガンド(ペプチド、タンパク質、アプタマーを含む)からなる群から選択され、好ましくはコレステロールである。 【0067】 好ましくは、C-Lmは、トリエチレングリコールリンカー(10-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-トリエチレングリコールラジカルである。あるいは、C-Lmは、テトラエチレングリコールリンカー(13-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-テトラエチレングリコールラジカルである。 【0068】 式(I)、(II)、(II’)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、及び(IIIe)、好ましくは式(II)、(II’)、(IIa)、(IIb)、(IIc)、(IId)、及び(IIe)のDbait分子又はヘアピン核酸分子の特定の実施態様では、L’は、好ましくは、ヘキサエチレングリコール、テトラデオキシチミジラート(T4)、1,19-ビス(ホスホ)-8-ヒドラザ-2-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカン、及び2,19-ビス(ホスホル)-8-ヒドラザ-1-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカンからなる群から選択される。 【0069】 (I)、(II)、(II’)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、及び(IIIe)、好ましくは式(II)、(II’)、(IIa)、(IIb)、(IIc)、(IId)、及び(IIe)のDbait分子又はヘアピン核酸分子の特定の実施態様では、Cは、コレステロールであり、C-L_(m)は、ラジカルである。 【化13】 【0070】 好ましい実施態様では、コンジュゲートしたDbait分子又はヘアピン核酸分子は、(II)、(II’)、(IIa)、(IIb)、(IIc)、(IId)、及び(IIe)からなる群から選択され、式中、C-L_(m)は、ラジカルであり、 【化14】 そして、L’は、好ましくは、ヘキサエチレングリコール、テトラデオキシチミジラート(T4)、1,19-ビス(ホスホ)-8-ヒドラザ-2-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカン、及び2,19-ビス(ホスホル)-8-ヒドラザ-1-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカンからなる群から選択され、より好ましくは、2,19-ビス(ホスホル)-8-ヒドラザ-1-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカンである。 【0071】 非常に具体的な実施態様では、Dbait分子又はヘアピン核酸分子は、以下の式を有する: 【化15】 (式中、C-L_(m)は、ラジカルであり、 【化16】 L’は、2,19-ビス(ホスホル)-8-ヒドラザ-1-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカンであり、そして、下線付きヌクレオチドは、ホスホロチオアート骨格を有する)。したがって、前記分子は、以下の構造を有し、そして、実施例の項では「coDbait」と称される。 【化17】 【0072】 式(I)、(II)、(II’)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、及び(IIIe)、好ましくは式(II)、(II’)、(IIa)、(IIb)、(IIc)、(IId)、及び(IIe)のDbait分子又はヘアピン核酸分子の特定の実施態様では、Cは、コレステロールであり、C-L_(m)は、テトラエチレングリコールリンカー(13-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-テトラエチレングリコールラジカルである。 【0073】 好ましい実施態様では、コンジュゲートしたDbait分子又はヘアピン核酸分子は、(II)、(II’)、(IIa)、(IIb)、(IIc)、(IId)、及び(IIe)からなる群から選択され、式中、C-L_(m)は、テトラエチレングリコールリンカー(13-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-テトラエチレングリコールラジカルであり、そして、L’は、好ましくは、ヘキサエチレングリコール、テトラデオキシチミジラート(T4)、1,19-ビス(ホスホ)-8-ヒドラザ-2-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカン、及び2,19-ビス(ホスホル)-8-ヒドラザ-1-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカンからなる群から選択され、より好ましくは、1,19-ビス(ホスホ)-8-ヒドラザ-2-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノ ナデカンである。 【0074】 非常に具体的な実施態様では、Dbait分子又はヘアピン核酸分子(AsiDNA又はDT01)は、以下の式を有する: 【化18】 (式中、C-L_(m)は、テトラエチレングリコールリンカー(13-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-テトラエチレングリコールラジカルであり、そして、L’は、1,19-ビス(ホスホ)-8-ヒドラザ-2-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカンである)。 【化19】 【0075】 別の好ましい実施態様では、核酸分子は、以下の式のうちの1つを有する: 【化20】 (式中、Nは、デオキシヌクレオチドであり、nは、1?15の整数であり、下線付きNは、修飾ホスホジエステル骨格を有するか又は有しないヌクレオチドを指し、L’は、リンカーであり、Cは、コレステロールであり、Lは、リンカーであり、mは、0又は1である整数であり、そして、pは1である)。好ましくは、下線付きNは、修飾ホスホジエステル骨格を有するヌクレオチドを指す。好ましい実施態様では、核酸分子は、式(II)の通りである。 【0076】 したがって、本発明は、また、上に開示したDbait分子又は核酸分子の使用、PARPインヒビターと組み合わせて、そして、放射線療法及び/又は放射性同位元素療法及び/又は抗腫瘍化学療法と組み合わせて又は組み合わせずに、好ましくは、以下に詳述するDNA損傷性抗腫瘍剤と組み合わせて癌の処置において使用するための、前記Dbait分子又は核酸分子と場合により薬学的に許容し得る担体とを含む医薬組成物に関する。 【0077】 更なる組合せ 場合により、本明細書に開示する核酸分子及びPARPインヒビターによる処置は、放射線療法、放射性同位元素療法及び/若しくは別の抗腫瘍化学療法、免疫療法、又はホルモン療法と併用してもよい。好ましくは、抗腫瘍化学療法は、直接又は間接的に、DNA損傷性抗腫瘍剤による処置である。 【0078】 本明細書で使用するとき、用語「抗腫瘍化学療法」又は「化学療法」とは、化学物質又は生化学物質を使用する、具体的には、1つ又は幾つかの抗悪性腫瘍剤を使用する癌の療法的処置を指す。具体的には、ホルモン療法及び免疫療法も含む。用語「ホルモン療法」とは、ホルモンをブロック、追加、又は除去する目的を有する癌処置を指す。例えば、乳癌では、女性ホルモンであるエストロゲン及びプロゲステロンが、一部の乳癌細胞の成長を促進し得る。したがって、これら患者では、エストロゲンをブロックするためにホルモン療法が行われ、そして、一般的に使用される薬物の非網羅的リストは、以下を含む:タモキシフェン、フェアストン、アリミデックス、アロマシン、フェマーラ、ゾラデックス/リュープロン、メガセ、及びハロテスチン。用語「免疫療法」とは、癌を拒絶するために免疫系を使用する癌の療法的処置を指す。療法的処置は、患者の免疫系を刺激して、悪性腫瘍細胞を攻撃する。 【0079】 具体的な態様では、本明細書に開示される核酸分子及びPARPインヒビターは、DNA損傷性処置と併用される。DNA損傷性処置は、放射線療法、又はDNA損傷性抗腫瘍剤による化学療法、又はこれらの組合せであり得る。DNA損傷性処置とは、好ましくは癌細胞において比較的特異的にDNA鎖切断を誘導する処置を指す。 【0080】 DNA鎖切断は、電離放射線(放射線療法)によって達成され得る。放射線療法は、γ線、X線、及び/又は放射性同位元素の腫瘍細胞への直接送達を含むが、これらに限定され ない。他の放射線療法は、マイクロ波及びUV照射を含む。放射線療法に対する他のアプローチも本発明において企図される。 【0081】 DNA鎖切断は、放射性同位元素療法、具体的には、放射性同位元素、好ましくは、標的とされる放射性同位元素の投与によって達成され得る。ターゲティングは、同位元素の化学的性質、例えば、他の器官よりも1000倍多く甲状腺によって特異的に吸収される放射性ヨウ素によるものであり得る。あるいは、ターゲティングは、ターゲティング特性を有する別の分子、例えば、ハプテン又は抗体を放射性同位元素に結合させることによっても達成され得る。インジウム-111、ルテニウム-171、ビスマス-212、ビスマス-213、アスタチン-211、銅-62、銅-64、銅-67、イットリウム-90、ヨウ素-125、ヨウ素-131、リン-32、リン-33、スカンジウム-47、銀-111、ガリウム-67、プラセオジム-142、サマリウム-153、テルビウム-161、ジスプロシウム-166、ホルミウム-166、レニウム-186、レニウム-188、レニウム-189、鉛-212、ラジウム-223、アクチニウム-225、鉄-59、セレン-75、ヒ素-77、ストロンチウム-89、モリブデン-99、ロジウム-105、パラジウム-109、プラセオジム-143、プロメチウム-149、エルビウム-169、イリジウム-194、金-198、金-199、及び鉛-211を含むがこれらに限定されない、多数の好適な放射性同位体のいずれを使用してもよい。 【0082】 DNA損傷性抗腫瘍剤は、好ましくは、トポイソメラーゼI又はIIのインヒビター、DNA架橋剤、DNAアルキル化剤、代謝拮抗剤、及び紡錘体のインヒビターからなる群から選択される。 【0083】 トポイソメラーゼI又はIIのインヒビターは、エトポシド、トポテカン、カンプトセシン、イリノテカン、アムサクリン、イントプリシン、アントラサイクリン、例えば、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、及びミトキサントロンを含むが、これらに限定されない。トポイソメラーゼI又はIIのインヒビターは、イントプリシンを含むが、これらに限定されない。 【0084】 DNA架橋剤は、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチンを含むが、これらに限定されない。 【0085】 代謝拮抗剤は、核酸の合成に関与する酵素をブロックするか、又はDNAに組みこまれて、不正確な遺伝コードを生成し、そして、アポトーシスを引き起こす。その非網羅的な例は、葉酸アンタゴニスト、ピリミジンアナログ、プリンアナログ、及びアデノシンデアミナーゼインヒビターを含むが、これらに限定されず、そして、より具体的には、メトトレキサート、フロクスウリジン、シタラビン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、フルダラビンホスファート、ペントスタチン、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、及びカペシタビンである。 【0086】 DNA損傷性抗腫瘍剤は、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホナート、ニトロソ尿素、金属塩、及びトリアゼンを含むが、これらに限定されないアルキル化剤であり得る。その非網羅的な例は、ウラシルマスタード、クロルメチン、シクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホラミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ホテムスチン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、チオテパ、ストレプトゾシン、ダカルバジン、及びテモゾロマイドを含む。 【0087】 紡錘体のインヒビターは、パクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン、ラロタキセ ル(XRP9881とも呼ばれる、Sanofi-Aventis)、XRP6258(Sanofi-Aventis)、BMS-184476(Bristol-Meyer-Squibb)、BMS-188797(Bristol-Meyer-Squibb)、BMS-275183(Bristol-Meyer-Squibb)、オルタタキセル(IDN 5109、BAY 59-8862、又はSB-T-101131とも呼ばれる;Bristol-Meyer-Squibb)、RPR 109881A(Bristol-Meyer-Squibb)、RPR 116258(Bristol-Meyer-Squibb)、NBT-287(TAPESTRY)、PG-パクリタキセル(CT-2103、PPX、パクリタキセルポリグルメクス、パクリタキセルポリグルタミン酸、又はXyotax(商標)とも呼ばれる)、ABRAXANE(登録商標)(Nab-パクリタキセルとも呼ばれる;ABRAXIS BIOSCIENCE)、テセタキセル(DJ-927とも呼ばれる)、IDN 5390(INDENA)、タキソプレシン(ドコサヘキサエン酸-パクリタキセルとも呼ばれる;PROTARGA)、DHA-パクリタキセル(Taxoprexin(登録商標)とも呼ばれる)、及びMAC-321(WYETH)を含むが、これらに限定されない。また、Hennenfent & Govindanの総説(2006,Annals of Oncology,17,735-749)も参照。 【0088】 処置される癌又は腫瘍 用語「癌」、「癌性」、又は「悪性腫瘍」は、典型的には、無調節の細胞成長を特徴とする哺乳類における生理学的病態を指すか又は説明する。癌の例は、例えば、白血病、リンパ腫、芽細胞腫、癌腫、及び肉腫を含む。 【0089】 このような癌のより具体的な例は、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病(Ph+ALL)、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、胃腸癌、腎臓癌、卵巣癌、肝臓癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、神経芽細胞腫、膵臓癌、多形神経膠芽腫、子宮頸癌、胃癌、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌、結腸癌、及び頭頸部癌、胃癌、胚細胞腫瘍、小児肉腫、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病、肥満細胞症、及び肥満細胞症に関連する任意の症状を含む。 【0090】 「白血病」とは、造血器官の進行性悪性疾患を指し、そして、一般的に、血液及び骨髄における白血球及びその前駆体の増殖及び発達の異常を特徴とする。白血病は、一般的に、(1)疾患の期間及び特徴-急性又は慢性;(2)関与する細胞の種類;骨髄(骨髄性)、リンパ球(リンパ性)、又は単球;並びに(3)血液中の異常細胞の数の増加又は非増加-白血性又は非白血性(亜白血性)に基づいて臨床的に分類される。白血病は、例えば、急性非リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性顆粒球性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性前骨髄球性白血病、成人T細胞白血病、非白血性白血病、白血球性白血病、好塩基球性白血病、芽細胞白血病、ウシ白血病、慢性骨髄性白血病、皮膚白血病、未分化細胞性白血病、好酸球性白血病、グロス白血病、ヘアリーセル白血病、血芽球性白血病、血球芽細胞性白血病、組織球性白血病、幹細胞白血病、急性単球性白血病、白血球減少性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、リンパ性白血病、リンパ行性白血病、リンパ様白血病、リンパ肉腫細胞性白血病、肥満細胞白血病、巨核球白血病、小骨髄芽球性白血病、単球性白血病、骨髄芽球白血病、骨髄性白血病、骨髄顆粒球性白血病、骨髄単球性白血病、ネーゲリ白血病、形質細胞白血病、形質細胞性白血病、前骨髄球性白血病、リーダー細胞性白血病、シリング白血病、幹細胞白血病、亜白血性白血病、及び未分化細胞白血病を含む。特定の態様では、本発明は、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、及び/又はフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病(Ph+ALL)の処置を提供する。 【0091】 膀胱(加速性及び転移性の膀胱癌を含む)、乳房、結腸(結腸直腸癌を含む)、腎臓、肝臓、肺(小細胞及び非小細胞肺癌、並びに肺腺癌を含む)、卵巣、前立腺、精巣、泌尿生殖器、リンパ系、直腸、咽頭、膵臓(膵外分泌癌腫を含む)、食道、胃、胆嚢、子宮頸部、甲状腺、及び皮膚(扁平上皮癌腫を含む)の癌腫を含む癌腫;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫 、非ホジキンリンパ腫、ヘアリーセルリンパ腫、組織球性リンパ腫、及びバーキットリンパ腫を含むリンパ球系列の造血器腫瘍;急性及び慢性の骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病、並びに前骨髄球性白血病を含む骨髄細胞系列の造血器腫瘍;星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、及び神経鞘腫を含む中枢及び末梢神経系の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫、及び骨肉腫を含む間葉起源の腫瘍;黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、上皮腫、甲状腺濾胞癌、及び奇形癌を含む他の腫瘍;黒色腫、切除不能なステージIII又はIVの悪性黒色腫、扁平上皮細胞癌腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、胃腸癌、腎臓癌、卵巣癌、肝臓癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、神経芽細胞腫、膵臓癌、多形神経膠芽腫、子宮頸癌、胃癌、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌、結腸癌腫、及び頭頸部癌、網膜芽腫、胃癌、胚細胞腫瘍、骨癌、骨腫瘍、骨の成人悪性線維性組織球腫;骨の小児悪性線維性組織球腫、肉腫、小児肉腫;骨髄異形成症候群;神経芽細胞腫;精巣性胚細胞腫瘍、眼球内黒色腫、骨髄異形成症候群;骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、滑膜肉腫を含むが、これらに限定されない様々な癌も本発明の範囲に包含される。 【0092】 本発明の好ましい実施態様では、癌は、固形癌である。例えば、癌は、肉腫及び骨肉腫、例えば、カポジ肉腫、AIDS関連カポジ肉腫、黒色腫、具体的には、ブドウ膜黒色腫、並びに頭頸部、腎臓、卵巣、膵臓、前立腺、甲状腺、肺、食道、乳房、膀胱、結腸直腸、肝臓、及び胆管、子宮、虫垂、及び子宮頸部の癌、精巣癌、消化器癌、並びに子宮内膜及び腹膜の癌であってよい。好ましくは、癌は、肉腫、黒色腫、具体的には、ブドウ膜黒色腫、並びに頭頸部、腎臓、卵巣、膵臓、前立腺、甲状腺、肺、食道、乳房、膀胱、結腸直腸、肝臓、子宮頸部の癌、並びに子宮内膜及び腹膜の癌であってよい。 【0093】 本明細書に記載される医薬組成物及び物、キット、又は複合調製物は、固形腫瘍の成長を阻害し、腫瘍量を減少させ、腫瘍の転移拡散及び微小転移巣の成長又は発達を防ぐために有用であり得る。本発明に記載される医薬組成物及び物、キット、又は複合調製物は、具体的には、予後不良の患者又は放射線若しくは化学療法抵抗性の腫瘍の処置に好適である。 【0094】 具体的な実施態様では、癌は、高悪性度癌若しくは進行癌であるか、又は転移性癌である。 【0095】 別の具体的な実施態様では、癌は、相同組み換え修復が欠失してもおらず、機能が損なわれてもいない(例えば、BRCA変異型でもBRCAnessでもない)。 【0096】 レジメン、投与量、及び投与経路 本発明の複合調製物で使用される各組合せパートナーの有効投与量は、使用される具体的な化合物又は医薬組成物、投与方式、処置される病態、処置される病態の重篤度に依存して変動し得る。したがって、本発明の複合調製物の投与レジメンは、投与経路及び患者の状態を含む様々な要因に従って選択される。通常の技量を有する医師、臨床医、又は獣医師は、病態の進行を防ぐ、対抗する、又は停止させるのに必要な単一の活性成分の有効量を容易に決定及び処方することができる。活性成分の濃度を毒性なしに有効性を生じさせる範囲内にするのに最適な精度は、活性成分の標的部位へのアベイラビリティの動態に基づくレジメンを必要とする。 【0097】 本発明は、より具体的には、単独で使用するときの量又は投与量と比較して、PARPインヒビターの量又は投与量を低減することができる医薬組成物、キット、物、又は複合調製物に関する。実際、Dbait分子とPARPインヒビターとの組合せは、少なくとも相加効果をもたらすが、むしろ、2つの活性成分の明らかな相乗効果をもたらす。この増強効果によって、一般的に正常細胞に対して毒性を呈するため有害作用に関連し得るPARPインヒビターの量を減らすことができる。Dbait分子は、有利なことに、最低限の毒性しか呈しない 、そして、更には毒性を呈しない。次いで、本発明の併用処置を用いると、その有害作用、具体的には、PARPインヒビターの有害作用を減少させながら、処置の有効性を保持するか又は更には改善することができる。 【0098】 あるいは、PARPインヒビターの量又は投与量を減少させる代わりに、PARPインヒビターの投与頻度又はその処置期間を低減してもよい。 【0099】 実施態様によれば、本発明は、複合調製物中の本明細書に開示される核酸分子及びPARPインヒビターの量が、2つの活性成分の併用処置効果が相加的、又は好ましくは相乗的であるような量である、上に開示した癌を処置する方法、医薬組成物、物、キット、又は複合調製物に関する。 【0100】 用語「相乗的」処置効果は、組合せから得られる処置効果が、各パートナー単独の処置効果の相加よりも大きい(すなわち、本明細書に開示される核酸分子単独の効果+PARPインヒビター単独の効果よりも大きい)ことを意味する。 【0101】 用語「相加的」処置効果は、組合せから得られる処置効果が、各パートナー単独の処置効果の相加である(すなわち、本明細書に開示される核酸分子単独の効果+PARPインヒビター単独の効果に等しい)ことを意味する。 【0102】 本発明は、PARPインヒビターが、本明細書では処置量以下とも呼ばれる、単独で使用するときに同じ適応症及び同じ投与経路の化学療法において用いられる従来の投与量よりも少ない投与量(すなわち、従来の化学療法において用いられる量と等しい又は好ましくはより少ない量)で使用される、上に開示した癌を処置する方法、医薬組成物、物、キット、又は複合調製物に関する。より具体的には、前記量は、(具体的には、同じ適応症及び同じ投与経路について)従来の処置的投与量の例えば90、80、70、60、50、40、30、20、又は10%であってよい。従来の処置的投与量は、医薬品承認機関(例えば、FDA又はEMEA)によって認可されたものである。その点に関して、本発明は、PARPインヒビターの量が処置量以下で使用され、そして、本明細書に開示される核酸分子の量が、2つの活性成分の併用処置効果が相加的、又はより好ましくは相乗的であるような量である、上に開示した癌を処置する方法、医薬組成物、物、キット、又は複合調製物に関する。 【0103】 本発明は、(a)本明細書に開示される核酸分子と(b)PARPインヒビターとの複合調製物を相乗的に処置的に有効な量投与することを含む、癌を処置する方法に関する。 【0104】 また、本発明は、具体的には癌の処置において、同時に、別々に、又は逐次使用するための、相乗比の(a)本明細書に開示される核酸分子と(b)PARPインヒビターとを含む相乗的組合せに関する。 【0105】 具体的な実施態様では、本明細書に開示される核酸分子は、上に定義されたDT01であり、そして、PARPインヒビターは、AZD2281(オラパリブ)、ABT888(ベリパリブ)、BMN673、BSI-21(イニパリブ)、AZD 2461、MK-4827(ニラパリブ)、及びAG 014699(ルカパリブ)からなる群から選択され、より好ましくは、AZD2281(オラパリブ)又はABT888(ベリパリブ)である。 【0106】 用語「相乗的に処置的に有効な量」又は「相乗比」は、組合せの処置効果が、各パートナー単独の処置効果の相加よりも大きい(すなわち、本明細書に開示される核酸分子単独の処置効果+PARPインヒビター単独の処置効果よりも大きい)ことを意味する。 【0107】 また、本発明は、癌に対して合同で処置的に有効な量の本発明の組合せと、少なくとも1つの薬学的に許容し得る担体とを含む医薬組成物に関する。 【0108】 本発明の具体的な実施態様では、相乗的組合せは、PARPインヒビターが処置量以下で使用又は投与されるような組合せである。具体的には、PARPインヒビターの処置量以下は、単一の薬物として(すなわち、別の薬物と組み合わせずに)癌を処置するために使用される従来の投与量よりも少ない。より具体的には、前記処置量以下は、同じ適応症及び同じ投与経路について従来の処置的投与量の例えば90、80、70、60、50、40、30、20、又は10%であってよい。従来の処置的投与量は、医薬品承認機関(例えば、FDA又はEMEA)によって認可されたものであり、そして、参照文献中に見出すことができる。 【0109】 1つ以上の成分間の相加的又は相乗的な相互作用の決定、該効果のための最適範囲、及び該効果のための各成分の絶対用量範囲は、処置を必要としている患者に様々なw/w比範囲及び用量にわたる該成分を投与することによって確実に測定され得る。ヒトについては、患者において臨床試験を実施する煩雑さ及びコストによって、相乗作用の主要モデルとしてこの形態の試験を使用することが実用的ではなくなる場合がある。しかし、ある種における相乗作用の所見は、相乗効果を測定するために存在する他の種及び動物モデルにおける効果から予測することができ、そして、このような研究の結果は、薬物動態/薬力学的方法を適用することによって他の種で必要な有効用量及び血漿濃度比範囲、並びに絶対用量及び血漿濃度を予測するために使用することもできる。癌モデルとヒトでみられる効果との間の相関は、動物モデルにおいて観察された相乗効果からヒトでの相乗作用も予測できることを示唆する。 【0110】 本発明の組合せの薬理学的活性は、例えば、臨床試験において、又はより好ましくは試験手順において立証され得る。好適な臨床試験は、例えば、進行腫瘍患者における非盲検非無作為化用量増加試験である。このような試験は、本発明の組合せの活性成分の相加又は相乗作用を証明することができる。増殖性疾患に対する有益な効果は、これら試験の結果を通して直接、又はそれ自体当業者に公知の試験設計における変化によって決定することができる。このような試験は、具体的には、本発明の活性成分及び組合せを使用する単剤療法の効果を比較するのに好適である。好ましくは、組合せパートナー(a)を固定用量で投与し、そして、最大耐容投与量に達するまで組合せパートナー(b)の用量を増加させる。あるいは、組合せパートナー(b)を固定用量で投与し、そして、最大耐容投与量に達するまで組合せパートナー(a)の用量を増加させる。 【0111】 本明細書に開示される核酸分子の投与経路は、経口、非経口、静脈内、腫瘍内、皮下、頭蓋内、動脈内、局所、直腸内、経皮、皮内、鼻腔内、筋肉内、腹腔内、骨内等であってよい。好ましい実施態様では、Dbait分子は、処置される腫瘍部位近傍に投与又は注入されるべきである。更に具体的な実施態様では、処置される癌が黒色腫であるとき、本明細書に開示される核酸分子は、皮下又は静脈内への注射によって送達され得る。別の好ましい投与経路は、腫瘍内注入である。 【0112】 DNA損傷性抗腫瘍剤を本明細書に開示される核酸分子及びPARPインヒビターと併用するとき、DNA損傷性抗腫瘍剤、本明細書に開示される核酸分子、及びPARPインヒビターは、同じ経路によって投与してもよく、異なる投与によって投与してもよい。DNA損傷性抗腫瘍剤の投与経路は、経口、非経口、静脈内、腫瘍内、皮下、頭蓋内、動脈内、局所、直腸内、経皮、皮内、鼻腔内、筋肉内、骨内等であってよい。 【0113】 本明細書に開示される核酸分子は、放射線照射及び/又はDNA損傷性抗腫瘍剤の投与の前及び/又は同時及び/又は後に、より好ましくは、放射線照射及び/又はDNA損傷性抗 腫瘍剤の投与の前及び/又は同時に投与すべきである。放射線照射及び/又はDNA損傷性抗腫瘍剤の投与は、放射線照射が適用されたとき又はDNA損傷性抗腫瘍剤が腫瘍細胞に達したときに本明細書に開示される核酸分子が腫瘍細胞に存在するように実施される。通常の技量を有する医師、臨床医、又は獣医師であれば、活性成分、該活性成分の標的部位へのアベイラビリティの動態、又は血漿中における該活性成分の薬物動態プロファイルに基づいてレジメンを決定することができる。予備的な結果は、Dbait分子が1日間活性であり続けることを示す。 【0114】 いったん放射線療法又はDNA損傷性抗腫瘍剤による処置が始まると、放射線療法又はDNA損傷性抗腫瘍剤による処置が適用又は投与される限り、本明細書に開示される核酸分子による処置を続けてよい。あるいは、本明細書に開示される核酸分子による処置を終了してもよい。 【0115】 PARPインヒビターと併用される本明細書に開示される核酸分子の有効投与量は、投与方式、処置される病態、処置される病態の重篤度に依存して変動し得る。したがって、本明細書に開示される核酸分子の投与レジメンは、投与経路及び患者の状態を含む様々な要因に応じて選択される。通常の技量を有する医師、臨床医、又は獣医師であれば、癌の進行を防ぐ、対抗する、又は停止させるのに必要な本明細書に開示される核酸分子の有効量を容易に決定及び処方することができる。 【0116】 例えば、局所投与の場合(例えば、腫瘍内又は皮下への投与を使用するとき)、Dbait分子の効率的な量は、少なくとも0.01mg/1cm^(3)(腫瘍)、好ましくは0.1?40mg/1cm^(3)(腫瘍)、最も好ましくは1?20mg/1cm^(3)(腫瘍)である。効率的な量は、毎日処置プロトコールで投与することができる(例えば、3?6連続週1週間に5日間又は3?6連続週1週間に3回)。あるいは、少なくとも0.01mg/1cm^(3)(腫瘍)、好ましくは0.1?40mg/1cm^(3)(腫瘍)、最も好ましくは1?20mg/1cm^(3)(腫瘍)の効率的な量は、例えば、3?6連続週毎週処置プロトコールで投与することができる。他の投与経路を用いるとき、具体的には、毎日処置プロトコール又は毎週処置プロトコールで、少なくとも0.01mg/1cm^(3)(腫瘍)、好ましくは0.1?40mg/1cm^(3)(腫瘍)、最も好ましくは1?20mg/1cm^(3)(腫瘍)の、腫瘍中のDbait分子の効率的な量を得るために、当業者であれば量を調整することができる。例えば、全身経路の場合、Dbait分子の効率的な量又は単位投与量は、0.1?100mg、好ましくは4?40mgであってよい。したがって、全身経路の場合、Dbait分子の効率的な量又は単位投与量は、0.06?0.6mg/kg(患者)であってよい。無論、化学療法及び/又は放射線療法レジメンを考慮して、当業者は投与量及びレジメンを適応させることができる。 【0117】 放射線療法の場合、当技術分野において公知の任意の放射線療法レジメン、具体的には、定位照射(例えば、15Gy)又は分割照射を用いてよい。分割照射の使用が特に効率的であり得、例えば、放射線照射は、1、2、3、4、5、又は6週間、毎日又は2?5日間毎、好ましくは、3?4日間毎に適用してよい。放射線照射は、1?10Gy、好ましくは、2?5Gy、具体的には、2、3、4、又は5Gyであってよい。例えば、6週間15×2Gy又は2週間4?6×5Gyの分割照射が企図され得る。好ましい実施態様では、企図される放射線療法は、2週間に5Gyを4回照射するプロトコールである。放射線照射及びDbait分子による癌の併用処置の様々なレジメン又は条件が試験されており、そして、Dbait分子による腫瘍の放射線増感は、Dbait分子の用量に依存するが、放射線量には依存しないことが証明されている。 【0118】 化学療法の場合、本発明の複合調製物、キット、若しくは物で、又は本発明の組成物と併用されるDNA損傷性抗腫瘍剤の有効投与量は、使用される具体的なDNA損傷性抗腫瘍剤、投与方式、処置される病態、処置される病態の重篤度に依存して変動し得る。したがって 、DNA損傷性抗腫瘍剤の投与レジメンは、投与経路及び患者の状態を含む様々な要因に応じて選択される。通常の技量を有する医師、臨床医、又は獣医師であれば、癌の進行を防ぐ、対抗する、又は停止させるのに必要なDNA損傷性抗腫瘍剤の有効量を容易に決定及び処方することができる。 【0119】 処置は、1サイクル又は数サイクル、例えば、2?10サイクル、具体的には、2、3、4、又は5サイクルを含み得る。サイクルは、連続していてもよく、離れていてもよい。例えば、各サイクルは、1?8週間、好ましくは、3?4週間離れている。 【0120】 本発明の更なる態様及び利点について以下の実施例に記載するが、これは、例示であるとみなされ、そして、限定するものではない。 【0121】 実施例 実施例1 細胞生存に対するインビボ試験 本発明者らは、細胞の生存に対するDT01とオラパリブ又はベリパリブとの組合せの効果を試験した。より具体的には、結果を図1に示す。 【0122】 乳癌細胞株MDAMB231を、100μg/mL(黒、四角)又は333μg/mL(灰色、十字)DT01で処理したか又はDT01で処理せず(黒、菱形)、そして、0、0.1、及び1μM オラパリブ(上図)又は1、10、及び50μM ベリパリブ(下図)に曝露した。生細胞を検出するためにトリパンブルーを用いて、処理の6日間後に生存を測定した。データを非処理対照の%として表す。DT01は、100及び333μg/mLに曝露した後に88%及び49%が生存している単独効果を有していた。PARPインヒビターであるオラパリブ又はベリパリブを添加すると、細胞死が著しく増加した(実線)。併用処置に対する生存は、両単独処置(点線)の予測相加的効果よりも少なかったので、DT01及びPARPインヒビターの全ての試験した用量において相乗効果が明らかになった。 【0123】 次いで、PARPインヒビターとDbait分子との組合せは、単独処置の効果の予測相加よりも高い抗腫瘍効果を示す。この超相加性は、各薬物の全ての用量で観察される。超相加性は、Dbaitファミリーと全てのPARPインヒビターとの組合せで観察される。実際には、オラパリブはPARPインヒビター(ii)型に属し、一方、ベリパリブは(ii)型に属する。次いで、観察された相乗効果は、阻害機序には依存しない。 【0124】 本発明者らは、幾つかの異なる細胞株に対する組合せの効果を試験した。結果を図2に示す。 【0125】 0.1μM オラパリブ(黒)、100μg/mL DT01(灰色)、又は0.1μM オラパリブ+100μg/mL DT01の両処理(斜線)に曝露した細胞の生存を、様々な腫瘍細胞(子宮頸部、神経膠芽腫、血液、乳癌由来)及び2つの非腫瘍性乳腺細胞においてモニタリングした。DNA修復における主な突然変異を図の下方に示す。 【0126】 組合せの超相加効果は、修復における欠陥がどんなものであろうと、全ての細胞株で観察された(BRCA-/-、相同組み換えの欠陥;DNA-PKcs-/-、非相同末端結合の欠陥)。PARP活性が欠損している細胞のみ(HelaPARP1KO)が、組合せに応答しなかったが、その理由は、PARPインヒビターに対して非感受性であるためである。オラパリブに対して抵抗性であることが知られている癌細胞株、例えば、Hela、MO59K、MO59J、Hut7、IM9、MD231、及びBC173は、併用処置の超相加効果を示す。非腫瘍細胞は、単独処置及び併用処置の両方に対して非感受性であった。 【0127】 材料及び方法 10% ウシ胎仔血清(ATGC,Orleans,France)、1% ピルビン酸ナトリウム、ストレプトマイシン(100mg.mL^(-1))、及びペニシリン(100mg.mL^(-1))(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)を添加した完全RPMI(Gibco,Cergy Pontoise,France)中でヒト細胞株を増殖させた。細胞を、37℃、5% CO_(2)雰囲気下、湿度100%で維持した。無血清培地中、ゼロ時点でヌクレオチド(DT01及びその他)又は/及びPARPインヒビターを添加することによって、処理を実施した。処理開始の24時間後、培地を、ウシ胎仔血清を含有する新鮮培地に交換した。細胞を更に4日間増殖させ(処理の5日間後)、トリプシンで処理し、そして、細胞の総数をカウントした。集団中の生細胞(非着色)をカウントするためにトリパンブルー(0.4%)を添加した。 【0128】 腫瘍成長に対するインビボ試験 脂肪パッドに移植された異種移植MD227ヒト乳癌細胞株を有するヌードマウスを、DT01(5mg/日)及びオラパリブ(200mg/kg/日)の腫瘍内投与によって処理した。腫瘍の成長をモニタリングした(ゼロ時点:処理の開始)。1群当たり8?10頭の動物を処理した(群1:ビヒクル注射(灰色線);群2:DT01(黒点線);群3:オラパリブ(灰色点線);群4:DT01+オラパリブ(黒線))。その後5日間処理を投与した。結果を図3に示し、そして、オラパリブのみ又はDT01のみで処理された動物と比較して腫瘍サイズが減少することを証明する。 【0129】 材料及び方法 成体雌ヌードマウス(Janvier,Le Genest Saint Isle,France)の脂肪パッドに4.10^(6)個の腫瘍細胞を注射することによって、ヒト乳癌異種移植腫瘍を得た。実験を開始する前少なくとも1週間、動物を研究室で飼育した。明暗サイクル(12h:12h)、相対湿度(55%)、及び温度(21℃)の制御された条件下、ケージ1個あたり6頭の動物が存在していた。食物及び水道水は自由に利用可能であった。皮下腫瘍が約125mm^(3)に達したとき、マウスを均質な群に分けて、異なる処置プロトコールを受けさせた:無処理(NT)、1週間DT01のみ(5日間毎日腫瘍内処理 2.5mg及び皮下処理 2.5mg)、1週間オラパリブのみ(200mg/kg/日)(毎日5セッション経口投与)、及び1週間併用処理DT01+オラパリブ(毎日5セッション。全ての実験において、2?3日毎に腫瘍をデジタルノギスで測定した。局所皮膚毒性又は全身毒性は記録されなかった。以下の式を用いて腫瘍体積を計算した:長さ×幅×幅/2。毎週マウスの体重を量り、そして、280日間経過観察した。倫理上の理由から、腫瘍が1500mm^(3)に達したとき、動物を屠殺した。地方の動物実験倫理委員会は、全ての実験を承認した。 【0130】 実施例2 本発明者らは、2つのクラスのDNA修復インヒビターの併用効果を分析し、そして、これらの関連が全ての細胞において合成致死性を模倣することを証明する。12種の乳癌細胞株においてDbait(AsiDNA)及びPARPインヒビター(オラパリブ)の有効性を比較した。これら細胞株から得られた複数のレベルのオミクスデータの解析は、シグナル伝達ネットワークマップの状況において解釈され、Dbait又はオラパリブに対する感受性と関連する様々なDNA修復分子プロファイルを強調し、併用処置を合理化する。Dbait及びオラパリブの併用処置の超相加効果が20種の腫瘍細胞株において確認され、非腫瘍細胞に対しては著しい細胞毒性が存在しなかった。分子分析は、オラパリブ及びDbaitが、それぞれ、損傷部位におけるXRCC1及びRAD51/53BP1修復酵素の動員を防ぎ、そして、併用したときに累積効果を有することを証明する。Dbaitを他のPARPインヒビターと組み合わせたときにも処理の相乗作用が観察された。本結果は、全ての腫瘍において合成致死性を再現するためにDbaitとPARPインヒビターとを併用することの処置上の利益を際立たせる。 【0131】 本発明者らは、まず、乳癌(BC)細胞株のパネルにおいてオラパリブ(Ola)及びDbait に対する感受性を分析した。BCは、最も一般的な女性の悪性腫瘍であり、世界中で毎年1700万人超の新患が診断されている。BRCAの不活化突然変異が、全ての散在性BC腫瘍の8.8%で観察され、Basal-like/トリプルネガティブサブグループの30%に蔓延している。本発明者らは、様々なBRCAnessステータスのBC細胞株のパネルを使用し、そして、まず、独立にPARPi、オラパリブ(Ola)、及びDbaitに対する感受性を分析した。BC細胞株を、Dbait又はOlaに対する感受性に従って分類した。総合的シグナル伝達ネットワークマップの状況においてこれら細胞株から得られた複数のレベルのオミクスデータの分析によって、特にDNA修復機序においてDbait又はOlaの感受性に関連する様々な分子プロファイルが同定され、これら2つの薬物の併用の利益が強調された。本発明者らは、BRCAnessステータスにかかわらず、BC細胞株においてOla及びDbaitの相乗効果を観察し、そして、この組合せが、多くの癌細胞型において、そして、様々なPARPインヒビターと共に有効であることを証明する。 【0132】 結果 BC細胞株は、AsiDNA及びオラパリブに対して様々な感受性を示す。 4BRCA突然変異型細胞株を含む12種のBC細胞株において細胞死及び増殖を測定することによってOla及びAsiDNAの有効性を評価した(図4A及びB、並びに図5)。更に、BRCA1又はBRCA2遺伝子の発現が停止しているHeLa細胞をBRCA突然変異因子の対照として使用し、そして、3種の不死化哺乳類細胞株(MCF10A、MCF12A、及び184B5)を非腫瘍対照として使用した。薬物の濃度(Olaについては0.1μM及びAsiDNAについては4.8μM)は、BC227 BRCA2^(-/-)突然変異体における生存率75?80%に基づいて選択した。全てのBC細胞株において、細胞の相対数の減少は、細胞死の増加と相関しており(図4A、図5)、これは、生細胞の数が細胞毒性作用を反映しており、そして、細胞増殖抑制作用は反映しないことを示す。Ola及びAsiDNA処理は、3種の対照非腫瘍細胞株に対して効果を有していなかった。対照的に、腫瘍細胞株は、Olaについては100%?5%、そして、AsiDNAについては100%?60%で生存が変動することが明らかになった。全てのBRCA^(-/-)細胞株が両処理に対して感受性であった。BRCA活性のある(proficient)腫瘍細胞株の中でも、MDAMB468は両処理に対して感受性であり、BC173及びHCC1143は、AsiDNAに対してのみ感受性であり、そして、HCC1187は、Olaに対してのみ感受性であった。BT20、MDAMB231、MCF7、及びHCC70は、これら用量において両処理に対して抵抗性であった(図4A、4B、及び図5)。AsiDNAに対する応答とOlaに対する応答との間の相関分析によって、有意な相関がないことが明らかになった(スピアマン係数r:0.33及びP値:0.17)。これら結果は、BRCAの欠損がAsiDNA又はOlaの有効性に対して十分であるが必要ではないことを示し、そして、様々な修復の欠陥がこれら薬物に対する感受性を決定することを示唆する。 【0133】 AsiDNA及びオラパリブによる併用処置は、BC細胞株において超相加性有効性を示す。 本発明者らは、Ola及びAsiDNAのみに対して様々な感受性を有する3種のBC細胞株及び2種の非腫瘍細胞株の併用処置に対する細胞生存をモニタリングした(図6;表1)。Ola及びAsiDNA単剤処置の有効性は、用量依存性であった(図7)。しかし、この組合せは、全ての試験した用量において予測された相加効果よりも効率的であったか、又は少なくとも等しかった。興味深いことに、併用処置に対する生存は、単剤処置に対する感受性の程度にかかわらず、3種の癌モデルにおいて超相加性であった。AsiDNAの用量を16μMまで増加させることは、併用処置に対して顕著な効果を有していなかったが、AsiDNA単剤処置の効果を著しく増加させた。対照的に、正常細胞は、AsiDNA及びOlaによる併用処置及び単剤処置の両方に対して非感受性であった(図6;表1)。 【表1】 【0134】 AsiDNA及びオラパリブの組合せの根底にある分子機序 この細胞毒性相乗作用について詳しく調べるために、本発明者らは、DNA修復活性に対するAsiDNA、Ola、又は両方の効果を調べた。本発明者らは、まず、各分子が他の分子の能力に影響を与えて、その標的となる修復酵素の動員を阻害することがないことを確認した。予測通り、OlaはXRCC1フォーカスの動員を著しく遅らせたが、AsiDNAはそうではなかった。XRCC1の動員は、AsiDNAの存在下及び非存在下においてOlaで処理した細胞で同様に遅延した(図8)。AsiDNAによるDNA-PKキナーゼ活性の活性化は、ヒストンH2AXの汎核リン酸化によって容易に明らかになり得る。このリン酸化は、Olaの非存在下と同様に、存在下でも観察された(図9A、C)。H2AXの汎核リン酸化は、AsiDNAによるHR及びNHEJ修復酵素の動員の阻害に関与していると考えられる。放射線照射後、本発明者らは、Olaで処理した及び処理していないAsiDNA処理細胞において53BP1フォーカスの減少を観察した(図10)。DNA損傷性処理の非存在下では、Olaは、53BP1及びRad51フォーカスと共局在するγH2AXフォーカスの形成によって明らかになるDSBの蓄積を誘導する(図9A、B)。AsiDNAの添加は、Olaによって誘導される53BP1及びRad51フォーカスの形成を有意に減少させた(図9A、B)。AsiDNA後のRad51及び53BP1フォーカスの減少が、損傷部位におけるこれらの動員の阻害によって誘導されるものであって、DNA損傷の数の減少によるものではないことを証明するために、本発明者らは、単一細胞アルカリコメットアッセイを使用して様々な処理後のMDAMB231腫瘍細胞における損傷をモニタリングした。γH2AXフォーカスによって示唆される通り、Ola処理は、24時間にわたって損傷の蓄積を誘導したが、AsiDNAは誘導しなかった(図9E)。AsiDNAをOlaと併用すると、Olaによって誘導されるDNA損傷の2倍に増加した。この増加によって、MDAMB231細胞における組合せの効率的な毒性を説明することができた。対照的に、MCF10A非腫瘍細胞では、Ola処理後にDNA損傷のわずかな増加が観察された場合でさえも、AsiDNAとOlaとの併用によって損傷の蓄積は増加しなかった(図9C、D、及びF)。 【0135】 AsiDNAは、他の癌細胞株においてオラパリブの有効性を増大させる。 AsiDNAとOlaとの組合せの有効性がBCに限定されているかどうかを決定するために、本発明者らは、神経膠芽腫、子宮頸癌、結腸癌、血液癌、及び黒色腫を含む様々な癌細胞株の感受性を分析した。全ての腫瘍モデルが、薬物の組合せの超相加効果を示す(表1)。更に、単剤処置及び併用処置に対するDNA修復突然変異体との同質遺伝子対の分析は、AsiDNAが1つの修復欠陥を有する全ての突然変異体(PARP1、BRCA1、BRCA2、Ku70、DNA-PKcs)に対して高い細胞毒性を有するが、Ola感受性は、BRCA突然変異体に本質的に限定されることを示す(表1)。PARP1、BRCA、及びKu70突然変異体のAsiDNAに対する感受性を、DT40トリリンパ腫修復突然変異体の同質遺伝子セットにおいて確認した(図11A)。また、本発明者らは、単剤処置に対してMDAMB231、BC173、及びBC227とは異なる応答プロファイルを有する3つの他のBC細胞株(MDAMB468、HCC1187、及びHCC38)における併用処置の効果についても調べた(表1)。これら3種のBC細胞株におけるAsiDNAとOlaとの間の相乗効果についても観察した。固形腫瘍に由来する細胞株の中でも、Hela-PARP1の発現が停止している細胞のみが、前記組合せから恩恵を得られなかったが、その理由は、Ola処理後にAsiDNAに対する感受性の増大が観察されなかったためである。驚くべきことに、Hut78及びJurkat血液腫瘍T細胞は、計算された両単剤処置の相加効果に近い、併用処置に対する生存を有していた(表1)。両細胞株は単剤処置に対して感受性であったので、相 加性の欠如は、特定のDNA修復欠陥と相関するとは考えられなかった。まとめると、これら結果は、併用処置AsiDNA/Olaの有効性がBCに限定されないこと、そして、AsiDNAは、そのBRCAステータスとは独立に、全ての細胞株をOlaに対して感受性にすることを示す。 【0136】 AsiDNAは、全てのPARPインヒビターとの超相加的有効性を導く。 PARPインヒビターは、少なくとも2つのクラスに属する:PARP酵素活性を阻害する触媒インヒビター、及び両PARP酵素活性をブロックし、そして、DNA損傷部位においてPARPタンパク質を捕捉する二重インヒビター。Olaは、2番目の群に属するが、一方ベリパリブ(Veli)は、触媒インヒビターのみである。したがって、本発明者らは、Olaの代わりにVeliを使用してBC株のパネルにおいて有効性の分析を繰り返した(図12)。3種のBC株においてVeliによる併用処置の相乗効果が観察されたが、この効果は、非腫瘍細胞では存在しなかった。これは、DNAへのPARPの捕捉が効率的な組合せに必須ではないことを示す。DT40リンパ腫細胞でも同様の結果が観察された(図11B)。 【0137】 本発明者らは、臨床応用のために開発された5種の他のPARPi(ルカパリブ、イニパリブ、ニラパリブ、AZD2461、及びBMN673)を用いて、MDAMB231細胞における併用処置の有効性をモニタリングした(図13)。PARPiの適用用量は、亜致死作用及び50%が生存する用量を与えるように選択した(表2)。PARPiとAsiDNAとの組合せの超相加効果が、その作用機序とは独立に、全てのインヒビターで確認された(図13)。これら結果は、観察された相乗効果が一般的であり、オラパリブのみに限定されるものではないことを示す。 【表2】 【0138】 材料及び方法 細胞培養、化学物質、及びAsiDNA分子 4種のBRCA1欠損BC細胞株(BC227(Institut Curie)、HCC1937、HCC38、及びMDAMB436(ATCC))、8種のBRCA1活性を有するBC細胞株(BC173(Institut Curie)、BT20、HCC1143、HCC1187、HCC70、MCF7、MDAMB231、及びMDAMB468(ATCC))、3種の非腫瘍哺乳類細胞株(184B5、MCF10A、及びMCF12A(ATCC))、5種のヒト子宮頸癌HeLa細胞株(BRCA1の発現が停止している(HelaBRCA1SX、Tebu-Bio、00301-00041として参照)、BRCA2の発現が停止している(HelaBRCA2SX、Tebu-Bio、00301-00028として参照)、PARP1の発現が停止している(HeLaPARP1KD、Vincent Pennanaech(Institut Curie,France)から供与)、及び対照(HeLaCTLSX、Tebu-Bio01-00001、及びHeLaCTLKD、Vincent Pennanaech(Institut Curie,France)から供与))、ヒト神経膠芽腫細胞株MO59K及びMO59J(DNA-PKcs欠損)、ヒト黒色腫細胞株SK28LshCTL及びSK28 LshDNA-PKcs、ヒト結腸直腸癌細胞株HCT116 WT及びHCT116 KU70^(+/-)(KU70遺伝子についてヘテロ接合体)、ヒト頭頸部癌細胞株Hep2、腫瘍血液細胞Hut78、IM9、及びJurkatを用いて細胞培養を実施した。供給元の指示に 従って細胞を成長させた。細胞株を、5% CO_(2)の湿潤雰囲気中、37℃で維持した。 【0139】 DT40バーキットリンパ腫細胞は、Murai et al(2012,Cancer Res,72,5588-99)に既に記載されている通り様々な遺伝子がノックアウトされているトリ細胞である。この試験のために、本発明者らは、対照としてのDT40野性型細胞(DT40WT)、並びにBRCA1、KU70、TDP1、及びPARP1の遺伝子がそれぞれノックアウトされた4種の細胞株(DT40BRCA1^(KO)、DT40KU70^(KO)、DT40TDP1^(KO)、及びDT40PARP1^(KO))を用いた。1%トリ血清(Life Technologies,Carlsbad,CA,USA)、10^(-5)M β-メルカプトエタノール、ペニシリン、ストレプトマイシン、及び10%ウシ胎仔血清(FBS)を添加したRoswell Park Memorial Institute(RPMI-1640)培地中、5%CO_(2)、37℃でDT40細胞を培養した。細胞培養用の試薬は、Gibco Invitrogenから入手した。 【0140】 全てのPARPインヒビターAZD-2281(オラパリブ)、AZD-2461、ABT888(ベリパリブ)、MK-4827(ニラパリブ)、BSI-201(イニパリブ)、BMN673(タラゾパリブ)、及びAG-014699(ルカパリブ)は、Medchem express(Princeton,USA)から購入し、そして、DMSOで10mM 原液濃度に希釈した。 【0141】 DBait分子(AsiDNA)は、自動化固相オリゴヌクレオチド合成法によって作製された短い二重鎖32塩基対オリゴヌクレオチド(Agilent,USA)である。配列は、 5’XGCTGTGCCCACAACCCAGCAAACAAGCCTAGA-L’-TCTAGGCTTGTTTGCTGGGTTGTGGGCACAGC-3’(式中、L’は、1,19-ビス(ホスホ)-8-ヒドラザ-2-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカンであり、そして、下線付き文字は、ホスホロジアミダートヌクレオシドである)である。コレステリルテトラエチレングリコール(X)は、5’末端に結合する。 【0142】 薬物に対する細胞感受性の測定 相対的な生存及び細胞死の定量によってAsiDNA又はPARPiの細胞毒性を測定した。接着細胞を適切な密度で24ウェル培養プレートに播種し、そして、AsiDNA及び/又はPARPiを添加する前に37℃で24時間インキュベートした。処理後6日目に細胞を収集し、0.4% トリパンブルー(Sigma Aldrich,Saint-Louis,USA)で染色し、そして、Burkerチャンバでカウントした。生存処理細胞の生存偽処理細胞に対する比として細胞生存を計算した。カウントした細胞の総数に対する死細胞の数として細胞死を計算した。AsiDNAに対する細胞生存とPARPiに対する細胞生存との積によって毒性の相加を計算した。 【0143】 DT40トリリンパ腫修復突然変異体(Murai et al,2012,Cancer Res,72,5588-99)における細胞毒性を測定するために、Perkin Elmer Life Sciences(Waltham,MA,USA)製の96ウェル白色プレート(最終体積 150μL/ウェル)における37℃の指定濃度の薬物(AsiDNA及び/又はベリパリブ)を含むか又は含まない培地に750個の細胞を播種した。72時間後、ATPlite 1-step kit(PerkinElmer,Waltham,MA,USA)を用いてトリプリケートで細胞をアッセイした。簡潔に述べると、ATPlite溶液を各ウェル(DT40細胞については150μL)に添加した。5分間の処理後、発光強度をEnvision 2104 Multilabel Reader(Perkin Elmer Life Sciences(Waltham,MA,USA)製)によって測定した。未処理細胞のシグナル強度を100%として設定した。 【0144】 抗体及び免疫学的試験 免疫染色については、MDAMB231細胞を、5×10^(5)細胞の濃度でカバーガラス(Menzel,Braunschweig,Germany)に播種し、そして、1日間37℃でインキュベートする。次いで、細胞を16μM AsiDNA+/-1μM オラパリブで処理する。処理の24時間後、細胞を4% パラホルムアルデヒド/リン酸緩衝生理食塩水(PBS 1×)中で20分間固定し、0.5%Triton X-100中で10分間透過処理し、2%ウシ血清アルブミン/PBS 1×でブロッキングし、そして、4℃で1時間一次抗体と共にインキュベートする。全ての 二次抗体を室温(RT)で45分間1/200希釈で使用し、そして、DNAを4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)で染色した。以下の抗体を使用した:一次モノクローナルマウス抗ホスホ-H2AX(Millipore,Guyancourt,France)、抗53BP1ウサギ抗体(Cell signaling technology,Danvers,USA)、抗Rad51ウサギ抗体(Merk Millipore,Darmstadt,Allemagne)、Alexa-633にコンジュゲートしている二次ヤギ抗マウスIgG(Molecular Probes,Eugene,OR,USA)、及びAlexa-488とコンジュゲートしている二次ヤギ抗ウサギIgG(Molecular Probes,Eugene,OR,USA)。 【0145】 アルカリ単細胞電気泳動「COMETアッセイ」 AsiDNA(16μM)、オラパリブ(1μM)、又は両方で処理した細胞を、DMEM中0.5%低融点アガロースに懸濁させ、そして、0.5%標準融点アガロースの層で予めコーティングされたすりガラス顕微鏡用スライドに移した。スライドを、4jCで1時間溶解液[2.5mol/L NaCl、100mmol/L EDTA、10mmol/L Tris、1% ラウリルサルコシン酸ナトリウム、10% DMSO、1% Triton X-100(pH 10)]に浸漬し、0.3mol/L NaOH(pH 13)及び1mmol/L EDTAを含有する電気泳動槽に40分間入れ、25V(300mA)で25分間電気泳動し、中性バッファ[400mmol/L Tris-HCl(pH 7.5)]で洗浄し、そして、20Ag/mL エチジウムブロミドで染色した。「comets」の変数は、ソフトウェアComet Assay 2(Perceptive Instrument)を使用して定量した。各実験点においてトリプリケートのスライドを処理した。テールモーメントは、テール中のDNAの百分率と、コメットの頭部とテールとの間の変位との積として定義される。 【0146】 統計解析 全ての統計解析は、両側スチューデントt検定を用いて実施した |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2021-08-20 |
結審通知日 | 2021-08-25 |
審決日 | 2021-09-10 |
出願番号 | 特願2018-502794(P2018-502794) |
審決分類 |
P
1
41・
852-
Y
(A61K)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 渡部 正博 |
特許庁審判長 |
岡崎 美穂 |
特許庁審判官 |
大久保 元浩 井上 典之 |
登録日 | 2018-12-28 |
登録番号 | 特許第6457696号(P6457696) |
発明の名称 | 癌を処置するためのDbait分子とPARPインヒビターとの組合せの使用 |
代理人 | 堀江 健太郎 |
代理人 | 浜井 英礼 |
代理人 | 阿部 達彦 |
代理人 | 浜井 英礼 |
代理人 | 浜井 英礼 |
代理人 | 堀江 健太郎 |
代理人 | 浜井 英礼 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 堀江 健太郎 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 堀江 健太郎 |
代理人 | 阿部 達彦 |
代理人 | 阿部 達彦 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 浜井 英礼 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 浜井 英礼 |
代理人 | 堀江 健太郎 |
代理人 | 阿部 達彦 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 阿部 達彦 |
代理人 | 堀江 健太郎 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 阿部 達彦 |
代理人 | 実広 信哉 |