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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65F
管理番号 1379117
審判番号 不服2020-12301  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-02 
確定日 2021-10-11 
事件の表示 特願2016-214306「廃棄物の処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月10日出願公開、特開2018- 70357〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、平成28年11月1日の出願であって、令和2年2月12日付けで拒絶理由が通知され、令和2年4月21日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年5月21日付けで拒絶査定がされ、これに対し、令和2年9月2日に拒絶査定不服審判請求がされ、その審判の請求と同時に手続補正書が提出され、当審により令和3年4月28日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、令和3年6月29日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
この出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和3年6月29日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「廃棄物を収容して真空吸引し密封して減容化する減容化機構をファーストフード・ショップの作業場に内装するようにし、前記廃棄物の炭化機構を内装するようにし、前記廃棄物として、ハンバーガーやポテトの紙の容器、サラダやドリンクなどのプラスチックの容器を炭化機構にて炭化するようにしたことを特徴とする廃棄物の処理装置。」

第3 拒絶の理由
令和3年4月28日付けで当審が通知した拒絶理由は、次のとおりである。
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された発明及び引用文献3に記載されたような周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:米国特許第4748905号明細書
引用文献2:特開2005-320507号公報
引用文献3:特開平10-122528号公報

第4 引用文献の記載事項及び引用発明
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載事項
令和3年4月28日付け拒絶理由通知で引用された、この出願前に頒布された刊行物である、引用文献1には、図面とともに、次の記載がある。なお、括弧内は当審における仮訳であり、下線は当審で付した。以下同様である。
ア 「This invention relates to apparatus for and a method of compacting refuse generally and, in particular, to a compactor that employs the differential pressure between a vacuum and atmospheric pressure to provide the force to compact the refuse.」(本発明は、一般的にはごみを圧縮する装置及び方法、特に、真空と大気圧との差圧をごみを圧縮する力として利用するコンパクターに関する。)(第1欄第5-9行)
イ 「This invention has utility for compacting most any type of refuse, but it is particularly useful for compacting and also dewatering refuse consisting of paper cups with ice and soft drinks left in them, paper plates, and plastic containers that makes up substantially all the refuse generated by a fast food restaurant. 」(本発明は、ほとんどあらゆる種類のごみを圧縮するための有用性を有しているが、ファーストフードレストランによって生成されたすべてのごみを実質的に構成する、氷と飲料が残った紙カップ、紙皿、及びプラスチック容器からなるごみを圧縮し、また脱水するのに特に有用である。)(第1欄第10-15行)
ウ 「In accordance with the method of this invention, after the steps have been taken to support a flexible wall non-permeable bag in a vertical position with the opening of the bag facing upwardly and placing refuse in the bag, the open end of the bag is closed and the pressure in the bag is reduced to cause the pressure differential between that in the bag and ambient atmospheric pressure to collapse the walls of the bag onto the refuse and compact it.」(本発明の方法によれば、可撓性壁の非透水性袋をその開口が上方を向いた垂直位置であってごみを袋の中に入れた状態で支持するための工程が取られた後、袋の開口端が閉じられて袋の内部の圧力が減圧されることで、袋の中と周囲の大気圧と間の圧力差が、袋の壁がごみの方に潰れてごみを圧縮することを引き起こす。)(第3欄第42-50行)
エ 「After the bag is full or contains the weight of the refuse that the bag is designed to handle, the bag is removed and replaced by an empty one. ・・・(中略)・・・Mounting plate 26 is then removed and the bag can be pulled upwardly out of cabinet 12 by annular members 22 and 24. After which the annular members are removed and the top of the bag is closed and tied.」(袋が一杯になるか、袋が取り扱うよう設計されたごみの重量を含んだ後、袋は取り外され空の袋に取り替えられる。・・・(中略)・・・マウンティングプレート26が取り外され、そして袋は環状部材22及び24によって、筐体12から上方への引き出しが可能となる。その後、環状部材は取り外され、袋の頂部が閉じられ及び結束される。)(第4欄第19-29行)

(2)引用発明1
上記ア、ウ、エの記載事項から、引用文献1に記載されたごみを圧縮する装置は、ごみを袋に入れて袋の内部の圧力を減圧してごみを圧縮し、袋の頂部が閉じられ及び結束されるコンパクターであることが理解できる。
また、上記ア、イの記載事項から、コンパクターは、ファーストフードレストランで使用され、ごみとして、氷と飲料が残った紙カップ、紙皿、及びプラスチック容器からなるごみを圧縮するようにしたものであることが理解できる。
そうすると、上記ア?エの記載事項から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「ごみを袋に入れて袋の内部の圧力を減圧してごみを圧縮し、袋の頂部が閉じられ及び結束されるコンパクターであり、ファーストフードレストランで使用され、ごみとして、氷と飲料が残った紙カップ、紙皿、及びプラスチック容器からなるごみを圧縮するようにしたコンパクター。」

2 引用文献2
(1)引用文献2の記載事項
令和3年4月28日付け拒絶理由通知で引用された、この出願前に頒布された刊行物である、引用文献2には、図面とともに、次の記載がある。
ア 「【0021】通常、廃棄物炭化処理機は連続方式と一括処理方式に大別される。前記連続方式は焼却炉のように大型プラントで使用する方法であり、小型(100L以下)炭化処理機では連続方式の実現が不可能であって一括処理方式を使用する。このように一括処理方式の小型炭化処理機は、レストラン、食堂、ファストフード、コンビニエンスストアなどで使用し、ここから排出される生ゴミを炭化処理する。」
イ 「【0041】まず、炭化室ドア120を開き、廃棄物入りの炭化容器を炭化室100内に押し込んでドアを閉じた後、ホイールハンドル121をホイールが止まるまで回して炭化室100と炭化室ドア120の気密を完成させる。その後、操作パネル610を用いて運転命令を選択して炭化処理過程を開始する。
【0042】この時から、炭化処理機は、コントローラ690の指示に従って自動運転されるが、初期には、燃焼部200を予熱させる作業から行う。前記燃焼部200を予熱、加熱させる過程で、第1燃焼室210に設置された燃焼ヒーター220を約700℃?750℃に加熱し、第2燃焼室250に設置された燃焼ヒーター260を約800℃?850℃に加熱する。
【0043】次に、コントローラ690は、炭化室100内に設置された炭化ヒーター130を用いて炭化室100の内部温度を約450℃に制御しながら加熱すると、廃棄物の炭化が行われる。この際、炭化容器110の中心部に突出部113または凸凹115を形成することにより、炭化の際に炭化容器110内で炭化する廃棄物の中心部に対する熱伝達性を向上させ、たとえ攪拌構造ではなくても、廃棄物中心部の未炭化現象を減少させることができる。」

(2)引用発明2
上記ア、イの記載事項から、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「ファストフード店で使用し、ファストフード店から排出される生ゴミを約450℃に加熱して炭化する炭化処理機」

第5 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1における「ごみ」は、本願発明における「廃棄物」に相当し、以下同様に、
「ごみを袋に入れて」という事項は、「廃棄物を収容して」という事項に、
「袋の内部の圧力を減圧してごみを圧縮し、袋の頂部が閉じられ及び結束される」という事項は、「真空吸引し密封して減容化する」という事項に、
「コンパクター」は、「減容化機構」及び「廃棄物の処理装置」に、
「ファーストフードレストランで使用され」という事項は、「ファーストフード・ショップの作業場に内装するようにし」という事項に、
それぞれ相当する。
本願発明における「廃棄物の炭化機構を内装する」との事項は、具体的な内装先が必ずしも明確でないが、発明の詳細な説明の段落【0002】-【0003】に記載された背景技術及び発明が解決しようとする課題に照らして、「ファーストフード・ショップの作業場に廃棄物の炭化機構を内装する」との事項を意味するものと解される。
本願発明における「廃棄物として、ハンバーガーやポテトの紙の容器、サラダやドリンクなどのプラスチックの容器を炭化機構にて炭化するようにした」との事項は、「廃棄物」が「ハンバーガーやポテトの紙の容器、サラダやドリンクなどのプラスチックの容器」であるとの事項、及び「廃棄物」を「炭化機構にて炭化するようにした」との事項を意味するものと解される。
そして、引用発明1における「ごみとして、氷と飲料が残った紙カップ、紙皿、及びプラスチック容器からなるごみを圧縮する」との事項と、本願発明における「廃棄物として、ハンバーガーやポテトの紙の容器、サラダやドリンクなどのプラスチックの容器を炭化機構にて炭化する」との事項とは、「廃棄物として、紙の容器、プラスチックの容器を処理する」との事項という限りにおいて一致する。
以上のことから、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「廃棄物を収容して真空吸引し密封して減容化する減容化機構をファーストフード・ショップの作業場に内装するようにし、前記廃棄物として、紙の容器、プラスチックの容器を処理するようにした廃棄物の処理装置。」

<相違点1>
本願発明では、紙の容器が「ハンバーガーやポテトの紙の容器」であり、プラスチックの容器が「サラダやドリンクなどのプラスチックの容器」であるのに対して、引用発明1では、紙の容器が「氷と飲料が残った紙カップ」であり、紙皿及びプラスチック容器については内容物が不明である点。

<相違点2>
本願発明では、「ファーストフード・ショップの作業場に廃棄物の炭化機構を内装するようにし」、廃棄物を「炭化機構にて炭化するようにした」のに対して、引用発明1は、そのような構成とはされていない点。

第6 判断
1 相違点について
以下、相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用文献1では、ファーストフードレストランによって生成されたごみとして、氷と飲料が残った紙カップ、紙皿、及びプラスチック容器からなるごみが具体的に挙げられているが、ハンバーガーを提供するファーストフード・ショップにおいて、ハンバーガーやポテトを紙の容器で提供することや、サラダやドリンクなどをプラスチックの容器で提供することは、この出願時の技術常識であることに鑑みれば、引用発明1において、ハンバーガーやポテトの紙の容器、サラダやドリンクなどのプラスチック容器からなるごみを圧縮する対象とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
引用文献2には、上記引用発明2が記載されている。
引用発明2では、ファストフード店から排出される生ゴミが炭化処理の対象とされているが、ファストフード店から排出されるゴミには、紙やプラスチックが含まれることは、例えば引用文献1の上記第4の1(1)イにも示されるとおり、この出願時の技術常識であり、このような生ごみ、紙、プラスチックからなるごみを炭化処理することや、加熱温度を620℃程度にするとプラスチックを含むごみの炭化に好ましいことは、例えば特開平10-122528号公報の段落【0002】、【0013】-【0015】、【0048】?【0050】に開示されているように、従来周知の技術的事項(以下「周知技術」という。)である。
また、炭化処理機がゴミの減容化のために使用されることや、炭化処理機では資源の再利用(活性炭材料等への資源転換)ができることは、例えば特開2004-238461号公報の段落【0002】、特開平11-153313号公報の段落【0006】、特開2007-063524号公報の段落【0002】に開示されているように、この出願時の炭化処理機の技術分野における技術常識であることに照らせば、引用発明2の炭化処理機が、ごみの減容化、資源の再利用のための手段であることは明らかである。
そして、環境への負荷に配慮し、循環型社会の形成に取り組むことは、広く求められている社会的要請であり、その要請に応えるために資源を再利用することは、大量の事業ごみが発生するファーストフード業界を対象とした引用発明1においても内在している課題といえるから、引用発明1における廃棄物を減容化する手段の選択肢として、資源の再利用も可能な引用発明2を追加して、ファーストフードレストラン(ファーストフード・ショップ)の作業場に炭化処理機(炭化機構)を内装することは、当業者が容易になし得たことであり、その際に、技術常識、周知技術に照らして、引用発明1の廃棄物である紙やプラスチックを含む生ごみを炭化処理するようにすることは、発明の具体化に際し適宜なし得た事項にすぎない。

2 本願発明の作用効果について
この出願の明細書(以下「本願明細書」という。)には、本願発明が、「炭化物は活性炭原料などとして再利用することが出来るという利点がある。」(段落【0010】)、「膨大な廃棄物を資源に変換して地球環境に利することが出来た。」(段落【0009】)という作用効果を有することが記載されている。
しかしながら、上記のとおり、炭化処理機では資源の再利用(活性炭材料等への資源転換)ができることは、この出願時の炭化処理機の技術分野における技術常識であることに照らせば、引用発明2の炭化処理機が、ごみの減容化、資源の再利用のための手段であることは明らかであるから、当業者であれば、引用発明2から「炭化物は活性炭原料などとして再利用することが出来る」、「膨大な廃棄物を資源に変換して地球環境に利することが出来」るという作用効果を予測できるといえる。
また、本願明細書に記載されている「廃棄物の空気を抜いた状態で嵩低く作業場に収容することが出来るので、従来よりもゴミが嵩張らない」(段落【0007】等)、「密閉した廃棄物は冷暗所に保管しておくことにより、ゴキブリその他の害虫からの衛生面などを担保することが出来る。」(段落【0009】)という作用効果についても、袋の内部の圧力を減圧してごみを圧縮するコンパクターの発明である引用発明1から、当業者が予測できる範囲のものであって、格別顕著なものとはいえない。
そうすると、本願発明の作用効果は、当業者が引用発明1、引用発明2及び周知技術から予測できる範囲のものである。

3 請求人の主張について
(1)引用文献1に引用文献2を適用することについての阻害事由について
請求人は、令和3年6月29日提出の意見書において、「引用文献1に記載されたコンパクターによると、ファーストフードレストランでの氷と飲料が残った紙カップ、紙皿、及びプラスチック容器を圧縮し脱水までするものであり、このようにゴミ袋は圧縮されてコンパクトなのでショップでの取扱いは十分に事足りているものであり、更にこのゴミ袋を炭化するための廃棄物炭化処理機(引用文献2)に費用を投じて導入しようという発想は起こり得ない」、「ファーストフードレストランでは、一般向けの安価なハンバーガー、廉価なコーヒー、特価のサイドメニューなどを販売して利益を上げているのであり、そのような業態の当業者が、高額な廃棄物炭化処理機(引用文献2)を導入し、電気代その他のランニング・コスト(日々の利益を圧迫する)をかけて運用しようなどとは、引用文献2の発明をその知識としている当業者でも想到し得ない」と主張している。
本願発明では、真空吸引し密閉して減容化した廃棄物を、更に炭化機構にて炭化することまでは特定していないが、仮にそのような構成が特定されていると解したとしても、上記のとおり、環境への負荷に配慮し、循環型社会の形成に取り組むことは、広く求められている社会的要請であり、その要請に応えるために資源を再利用することは、大量の事業ごみが発生するファーストフード業界を対象とした引用発明1においても内在している課題といえるから、引用発明1における廃棄物を減容化する手段の選択肢として、資源の再利用も可能な引用発明2を追加して、真空吸引し密封して減容化した廃棄物を、更に炭化処理機(炭化機構)にて炭化する構成とすることの動機付けは十分に認められる。
したがって、引用文献1に引用文献2を適用することについて阻害事由が存在するとの請求人の主張には理由がない。

(2)本願発明の作用効果について
請求人は、令和3年6月29日提出の意見書において、本願発明が「廃棄物として、ハンバーガーやポテトの紙の容器、サラダやドリンクなどのプラスチックの容器を炭化機構にて炭化するようにしたので、例えば有用な活性炭原料を得ることが出来る」という構成要件相互間の有機的な結合(単なる組合せではない)により、「(1) 廃棄物の活性炭原料への資源変換によって炭化のためのランニング・コストの吸収が可能となると共に、(2) 膨大な廃棄物を資源に変換して地球環境に利することが出来るという新たな社会的価値を創出することが出来る」という格別顕著な作用効果を奏する旨、主張しているが、上記第6の2で検討したとおり、当業者であれば、引用発明2から「(1) 廃棄物の活性炭原料への資源変換によって炭化のためのランニング・コストの吸収が可能となると共に、(2) 膨大な廃棄物を資源に変換して地球環境に利することが出来るという新たな社会的価値を創出することが出来る」という作用効果を予測できるといえる。
よって、請求人の主張する作用効果は、当業者が引用発明1、引用発明2及び周知技術から予測できる範囲のものであって、格別顕著なものとはいえない。

第7 むすび
したがって、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
そうすると、この出願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-08-04 
結審通知日 2021-08-11 
審決日 2021-08-25 
出願番号 特願2016-214306(P2016-214306)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 粟倉 裕二  
特許庁審判長 窪田 治彦
特許庁審判官 田合 弘幸
小川 恭司
発明の名称 廃棄物の処理装置  

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