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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1379278
審判番号 不服2020-6737  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-18 
確定日 2021-10-18 
事件の表示 特願2015- 68673「サイン立て」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月 4日出願公開、特開2016-188928〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年3月30日の出願であって、平成30年3月28日に手続補正書が提出され、平成30年12月27日付けで拒絶理由が通知され、平成31年3月4日に意見書及び手続補正書が提出され、同月5日に意見書が提出され、令和1年7月30日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年11月22日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和2年1月31日付けで令和1年11月22日に提出された手続補正書が却下されるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対し、同年5月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。


第2 令和2年5月18日に提出された手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和2年5月18日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、平成31年3月4日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1へと補正することを含むものである。(下線は当審決で付した。以下同じ。)
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
透明な樹脂板を二つ折りして形成される二つ折り部が縦長の矩形形状の上端となるように立てて用いられ、折り曲げた内部に挟んで、予め定める前面側に表示すべきサインを保持する表示部材と、
表示部材の下側に配置され、矩形板状で表示部材の板厚の2倍を越える板厚を有し、直立させた状態の表示部材に対する支持部を備える支持部材と、
を含み、
支持部材は、支持部から前面側への長さが、支持部から後面側への長さよりも長い、
むことを特徴とするサイン立て。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
透明な樹脂板を二つ折りして形成される二つ折り部が縦長の矩形形状の上端となるように立てて用いられ、折り曲げた内部に挟んで、予め定める前面側に表示すべきサインとして掛け軸用の仏画を保持する表示部材と、
表示部材の下側に配置され、透明な矩形板状で表示部材の板厚の2倍を越える板厚を有し、直立させた状態の表示部材に対する支持部を備える支持部材と、
を含み、
支持部材は、支持部から前面側への長さが、支持部から後面側への長さよりも長い、
ことを特徴とするサイン立て。」

2 本件補正の適否について
本件補正により、本件補正前の発明特定事項である「予め定める前面側に表示すべきサイン」について、「予め定める前面側に表示すべきサインとして掛け軸用の仏画」との限定を付加するものである。
また、本件補正前の発明特定事項である「支持部材」について、「透明な」との限定を付加するものである。
さらに、本件補正前の発明特定事項である「長い、むことを特徴とするサイン立て」について、「長い、ことを特徴とするサイン立て」と誤記を訂正するものである。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同法同条同項第3号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、本願の願書の最初に添付した明細書の
「【0017】
図1は、本発明の実施例1としてのサイン立て1の概略的な構成を、(a)の正面図、および(b)の右側面図でそれぞれ示す。サイン立て1は、大略的に矩形板状の表示部材2と、正面から見ると角柱状の支持部材3とからなる。表示部材2は、たとえばアクリル樹脂の透明な矩形板を二つ折りした状態で、二つ折り部2aが上端となるように立てて用いられ、折り曲げた内部で、後述するように表示すべきサイン4を保持して表示する。支持部材3は、透明アクリル樹脂などを使用し、表示部材2を立てた状態で下端部2b側を支持する。透明な矩形板を二つ折りした状態で、二つ折り部2aが上端となるように立てて用いる表示部材2は、折り曲げた前面側2cと後面側2dとに挟まれる内部で印刷物や布などのサイン4を保持するので、汚れにくくすることができる。支持部材3は、前側3aおよび後側3bに別れる。前側3aおよび後側3bは、表示部材2の下端部2b側で、前面側2cおよび後面側2dにそれぞれ接合され、表示部材2を立てた状態で支持するので、簡単な構造で、サインを立てた状態で表示することができる。」
「【0022】
図4は、図2の表示部材2の内部でサイン4を表示する状態を、(a)の正面図および(b)の右側面図で示す。サイン4として、本尊などの絵柄4aを金襴などの布の下地4bに表示し、絵柄4aの周囲に金属箔の転写などによる枠4cを関連して表示すると、掛け軸と同様な表示を行うことができる。掛け軸と同様に、紙で裏打ちすることもできる。このような布地のサイン4を表示部材2の前面側2cと後面側2dとの内部に挟んで収容するので、支持部材3で下方から支持すれば、立てた状態で表示することができる。なお、下地4bとしては、布目や木目を用いることもでき、装飾的な模様を用いることもできる。」
「【0024】
このような仏画をサイン4として表示すると、掛け軸を吊す代りに、立てて表示することができ、仏壇、特に、洋風の部屋に合わせた仏壇などでも、違和感なく使用することができる。特に、サイン立て1は高精度に高さを揃えることができ、本尊や脇仏などを2つ以上並べても、不細工感や違和感を生じさせることがない。」
の記載に基づいており、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

3 独立特許要件について
本件補正の目的が、特許請求の範囲の減縮との目的を含んでいるので、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲」の【請求項1】に記載したとおりのものと認める。

(2)引用例
ア 引用例1
原査定の拒絶の理由において引用され本願の出願日前の平成25年1月7日に頒布された特開2013-562号公報(以下「引用例1」という。)には、には、次の事項が記載されている。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚のアクリルの透明板を中央付近の屈曲部22で折り曲げて構成した表板21と裏板23でなるフレーム2と底板4からなり、表板21を手前に引き広げて、表板21と裏板23の間に写真6を横から挿入する場合は、表板の長さを裏板23の長さと同じか、多少短めにして写真6を挿入し易くし、裏板23は、底板4に対し垂直又は斜めに、接着剤または溶着で固定し、裏板23を後方に押し広げで、写真6を横から挿入する場合は、裏板23の長さを表板21の長さと同じか、多少短めにして写真6を挿入し易くし、表板21を底板4に垂直または斜めに、接着剤または溶着で固定することで、表板21と裏板23の間に写真6を挟めるようにしたことを特徴とするフォトスタンド。

【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のフォトスタンドであって、接着剤又は溶着を用いないで、底板に長尺状の溝41を設け、表板又は裏板の何れかを一方を、前記溝に挿入し、フレーム2またはフレーム3を底板に差し込むことを特徴とするフォトスタンド。」
(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、写真、絵葉書、印刷物などを挟み込んで、机など卓上の設置面に片面また両面にて展示するフォトスタンドに関するものである。」
(ウ)「【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明のフォトスタンドは、写真等の差し換えを容易とし、写真の傾きや抜け落ちを防ぎ、かつ取り付けするための付属部品を必要としないフォトスタンドを提供することを目的とする。」
(エ)「【0022】
実施例1は一枚のアクリル板を折り曲げて構成した場合で、図1の(a)で示すように、本発明のフォトスタンド1は、一枚のアクリルの透明板を中央付近で折り曲げることにより、屈曲部22を介した表板21と裏板23からなるフレーム2と底板4から構成する。表板21を手前に引き広げて、写真6を横から挿入する場合は、表板21の長さを裏板23の長さと同じか、多少短めにして写真6を挿入し易くする。裏板23は、底板4に対し垂直又は斜めに、接着剤または溶着で固定している物。(図1は垂直の場合を示す)
裏板23を後方に押し広げて、写真6を横から挿入する場合は、裏板23の長さを表板21の長さと同じか、多少短めにして写真6を挿入し易くする。表板21を底板4に垂直又は斜めに、接着剤または溶着で固定する。
図1に示すように、表板21を手前に引き広げて、写真6を横から挿入して、この表板21と裏板23の間に写真6を挟み込む。写真6は、表板21と裏板23が強く挟まれるときは下に落ちないが、緩めの場合でも写真6の下部は、底板4に当接し保持される。
図1の(b)はその側面図である。図1(b)に示すように、挟持部のクリップ力を強くするためには、屈曲部22に丸みをつけて、表板21と裏板23が底板4の方向に閉じて相互に密着するように形成する。」
(オ)「【0024】
実施例3は、一枚のアクリル板を折り曲げて構成した場合で、図3の(a)で示すように、本発明のフォトスタンド1は、一枚のアクリルの透明板を中央付近で折り曲げることにより、屈曲部22を介した表板21と裏板23と、底板4から構成する。底板4には、長尺状の溝41を設け、実施例1と実施例2のフォトスタンドでは、接着剤又は溶着でフレームと底板を固定しているが、実施例3では、底板に長尺状の溝41を設け、表板又は裏板の何れか一方を、前記溝に挿入し、フレーム2を底板に差し込む。(図3の(b)はその断面図である)」
(カ)「


(キ)「


(ク)上記(エ)には「表板21を手前に引き広げて、写真6を横から挿入して、この表板21と裏板23の間に写真6を挟み込む。」と記載されているところ、「裏板23を後方に押し広げて、写真6を横から挿入する場合」でも、同様に、「裏板23を後方に押し広げて、写真6を横から挿入して、この表板21と裏板23の間に写真6を挟み込む」ものと認める。
(ケ)上記(エ)から(キ)より、屈曲部22は、一枚のアクリルの透明板を中央付近で折り曲げることにより形成されるものであると共に、矩形形状のフレーム2の上端となるように立てて用いられるものであること、底板4は、矩形板状のものであると認める。


そうすると、上記(ア)から(キ)の記載事項及び(ク)から(ケ)の認定事項より、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「一枚のアクリルの透明板を中央付近で折り曲げることにより形成される屈曲部22を介した表板21と裏板23からなるフレーム2と矩形板状の底板4から構成され、屈曲部22が矩形形状のフレーム2の上端となるように立てて用いられるフォトスタンド1であって、
底板4には、長尺状の溝41を設け、表板又は裏板の何れか一方を、前記溝に挿入し、フレーム2を底板に差し込むもので、
表板21を手前に引き広げて、写真6を横から挿入する場合は、表板21の長さを裏板23の長さと同じか、多少短めにして写真6を挿入し易くし、裏板23は、底板4に対し垂直にし、表板21を手前に引き広げて、写真6を横から挿入して、この表板21と裏板23の間に写真6を挟み込み、
裏板23を後方に押し広げて、写真6を横から挿入する場合は、裏板23の長さを表板21の長さと同じか、多少短めにして写真6を挿入し易くし、表板21を底板4に垂直にし、裏板23を後方に押し広げて、写真6を横から挿入して、この表板21と裏板23の間に写真6を挟み込む、
フォトスタンド1。」

イ 引用例2
原査定の拒絶の理由において引用され本願の出願日前の平成25年8月19日に頒布された特開2013-161051号公報(以下「引用例2」という。)には、には、次の事項が記載されている。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、カードや写真等、あるいはこれらを挟んだパネルを見やすい角度で展示するスタンド及びパネル付きスタンドに関する。」
(イ)「【0029】
なお、以上の実施形態では、本体2をアルミニウムの押出成形により構成したが、本体2の材料は金属に限らず、合成樹脂、ガラス、木材等の各種材料を使用しても良い。また、本体2の形状を三角柱以外の多角柱とし、挟持部の個数は3個に限らず可能な限り増やすことができる。」

そうすると、上記(ア)及び(イ)の記載事項より、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「本体を金属に限らず、合成樹脂、ガラス、木材等の各種材料を使用して構成したカードや写真等、あるいはこれらを挟んだパネル付きスタンド。」

ウ 引用例3
本願の出願日前の平成21年10月22日に頒布された登録実用新案第3154569号公報(以下「引用例3」という。)には、には、図面と共に次の事項が記載されている。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本考案はフレームスタンドに関する。さらに詳細にはフォトフレームスタンドおよびピクチャーフレームスタンドに関する。」
(イ)「【0023】
第3の実施の形態による仏壇用掛軸ホルダーは、フレームスタンドに含まれる概念であり、さらにいえば仏画を表装するピクチャースタンドの1形態である。仏壇用掛軸ホルダーは、平面上に載置され、少なくとも掛軸本紙と該掛軸本紙を支持する支持部材とからなる掛軸表示体を収納する仏壇用掛軸ホルダーであって、前記仏壇用掛軸ホルダーが、矩形板状のホルダー本体と、平面上に載置され、該ホルダー本体の裏面に接続され、前記ホルダー本体を立った状態で支持する重し部とを備え、前記ホルダー本体が、上面が開口し、前記掛軸表示体を前記開口から着脱自在に収納することができる中空状の収納部と、前記ホルダー本体の表面に形成され、前記掛軸本紙を表示する表示窓とを有し、前記掛軸表示体を前記収納部に着脱自在に収納した後、前記上面が面一になるように前記上面の開口を覆う蓋材が着脱自在に設けられてなることを特徴としている。
【0024】
図6に示されるように、仏壇用掛軸ホルダー30は長方形板状のホルダー本体40とホルダー本体40の裏面かつ下方に接続される重し部11とから構成されている。ホルダー本体40は重し部11に支持され、長手方向が垂直に立った状態で重し部11とともに仏壇内の平面上に載置されている。仏壇用掛軸ホルダー30の大きさは特に限定されるものではないが、仏壇内に載置することを前提としているため、高さ40cm以下の小型のものである。また、ホルダー本体40の材質は重し部11による安定性を確保するため軽量であることが好ましく、木製であることがより好ましいが、これに限定されるものではない。なお、重し部11、表示窓16および蓋材20の基本的な構成は先に説明した第1の実施の形態によるものと同様であるため、説明は繰り返さない。
【0025】
ホルダー本体40には、ホルダー本体40内で中空を形成する、断面が長方形状の穴が設けられており、この穴は上面が開口し、掛軸本紙35を含む掛軸表示体43を収納する収納部14となる。これによって、掛軸表示体43が摺動自在となり、かつ内部でぐらつかない。この開口を上面開口部15という。また、収納部14の上面からの深さは掛軸表示体43の高さより長いことが好ましい。これによって、掛軸表示体43の上部に後述する蓋材20を配置するためのスペースが得られる。
【0026】
掛軸表示体43は、図7に示されるように掛軸本紙35とそれを支持する支持部材とから少なくとも構成されている。掛軸本紙35とは、仏画などが描かれた和紙のことをいう。支持部材は、本実施の形態では掛軸本紙35を両側から挟んで支持する、ともに矩形状の表層36と裏層7である。表層36および裏層7の材料は特に限定されるものではないが、厚紙や板、合成樹脂板などを用いることができる。
【0027】
表層36の中央は掛軸本紙35を表示するため矩形状に大きく開口しており、この開口の外縁が掛軸本紙35と重複する。この重複した箇所に剥離可能な接着剤を付与し、掛軸本紙35を表層36に固定する。
【0028】
また、掛軸表示体43には表層36の前面に矩形状で透明な保護層8を設けることができる。保護層8にはガラス板やアクリル板などの透明板が用いられる。これによって、掛軸本紙35を表示しながら、掛軸本紙35を外力などから保護することができ、また、収納部14を密閉空間にすることができることから、収納部14内の湿気や乾燥を緩和することができる。
【0029】
第3の実施の形態による仏壇用掛軸ホルダーによれば、重し部がホルダー本体を立った状態で支持するため、仏壇用掛軸ホルダーは平面上に自立し、壁に掛ける必要がない。そのため、仏壇用掛軸ホルダーの設置が容易であり、押しピンなどによって仏壇内の美観を損なうことがない。また、掛軸本紙は仏壇用掛軸ホルダー内に着脱自在に収納されるため、外力による破損や塵埃などによって汚れるおそれが軽減され、保存性に優れる。さらに、掛軸は宗派ごとに異なり、仏壇内には通常3幅の掛軸が備えられるため、それぞれについて相当数の掛軸を用意しなければならず、在庫点数が増えてしまうという問題があるが、本実施の形態の仏壇用掛軸ホルダーによれば、ホルダーと掛軸とは着脱自在であるため、掛軸ごとにホルダーを用意する必要がなく、掛軸ホルダーの在庫点数を減らすことができる。」

そうすると、上記(ア)及び(イ)の記載事項より、引用例3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。
「長方形板状のホルダー本体40とホルダー本体40の裏面かつ下方に接続される重し部11とから構成されている仏壇用掛軸ホルダー30であって、
ホルダー本体40には、ホルダー本体40内で中空を形成する、断面が長方形状の穴が設けられており、この穴は上面が開口し、掛軸本紙35を含む掛軸表示体43を収納する収納部14となり、
掛軸表示体43は、掛軸本紙35とそれを支持する支持部材とから構成され、掛軸本紙35とは、仏画などが描かれた和紙のことをいう、
仏壇用掛軸ホルダー30。」

エ 引用例4
原査定の拒絶の理由において引用され本願の出願日前の昭和49年1月10日に頒布された実願昭47-40755号(実開昭49-2287号)のマイクロフィルム(以下「引用例4」という。)には、には、図面と共に次の事項が記載されている。

(ア)「2.実用新案登録請求の範囲 台盤の上面に垂直掛止溝と傾斜掛止溝とを設けると共に、台盤の底部に磁石を埋設したことを特徴とする書架カード受具。」(1頁4?7行)
(イ)「3.考案の詳細な説明 本考案は陳列された図書を分別表示する書架カードの受具に関するものである。」(1頁8?10行)
(ウ)「1は台盤であつて、木、合成樹脂材により形成されている。台盤1の上面は平滑面として構成してもよいが、図示のように全体を軽量にするため中央部を切欠2することもある。3は垂直掛止溝であつて、書架カード4を垂直に支持するためのものである。5は傾斜掛止溝であつて、垂直掛止溝3に平行して設けられている。この傾斜掛止溝5は書架カード4を上向き、或は下向きに支持するためのものであり、第1図に示すように前方傾斜したものと、後方傾斜したものとの2種類設けることもあるが、第2図に示すように一個だけ設け前後に向きを変えて双方の役をするようにしてもよい。」(2頁12行?3頁4行)
(エ)「


(オ)上記(ウ)及び(エ)第2図より、書架カード4を傾斜掛止溝5に係止させた場合、上向き、或は下向きに支持させ得ることから、書架カード4の前面は、上向き、或いは下向きのいずれでも設定できることとなる。そうすると、第2図の台盤1の垂直掛止溝3に書架カード4を係止した場合でも書架カード4の前面は、第2図における左向き、或いは右向きの何れ方向にも設定し得るものと認める。よって、台盤1は、垂直掛止溝3から書架カード4の前面側への長さが、垂直掛止溝3から書架カード4の後面側への長さよりも長く設定できるものと認める。

そうすると、上記(ア)から(エ)の記載事項及び(オ)の認定事項より、引用例4には、次の技術事項(以下「引用例4記載の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
「垂直掛止溝3から書架カード4の前面側への長さが、垂直掛止溝3から書架カード4の後面側への長さよりも長く設定できる台盤1。」

オ 引用例5
本願の出願日前の平成18年3月23日に頒布された特開2006-78728号公報(以下「引用例5」という。)には、には、図面と共に次の事項が記載されている。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品展示用の展示台部と、該展示台部の上面に設けた展示台面と、該展示台面の一端部に所定の形状線に沿って垂直に立設した前面板と、該前面板の背面側に平行に所定の間隔を以て垂直に対向立設する背面板とから構成される展示台本体と、該展示台本体の前面板と背面板との対向間に挟持される表示板本体とから構成されることを特徴とする商品展示台兼用ディスプレイ表示体。」
(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、店頭等に商品を載置して商品広告や商品情報の表示をしながら展示、陳列するために使用するディスプレイ表示体に関し、特に商品展示台を兼ねた商品展示台兼用ディスプレイ表示体に関する。」
(ウ)「【0026】
本発明の商品展示台兼用ディスプレイ表示体は、図1、図2の全体斜視図、及び図3(a)の平面図、及び図3(b)のM-M断面図に示すように、商品を展示、陳列する展示用の展示台部1と、該展示台部1の上面に設けた平坦な展示台面2と、該展示台面2の一端部1d側に、所定の形状線、例えば直線形状線に沿うような形状にて、該展示台面2に対して垂直方向に立設した前面板3と、該前面板3の背面側に平行に、所定の間隔dを以て垂直に対向立設する背面板4とから構成される展示台本体Aと、該展示台本体Aの前面板3と背面板4との対向間に挟持される表示板本体Bとから構成されている。」
(エ)「

」(オ)「



そうすると、上記(ア)から(オ)の記載事項より、引用例5には、次の技術事項(以下「引用例5記載の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
「商品を展示、陳列する展示用の展示台部1と、該展示台部1の上面に設けた平坦な展示台面2と、該展示台面2の一端部1d側に、所定の形状線に沿うような形状にて、該展示台面2に対して垂直方向に立設した前面板3と、該前面板3の背面側に平行に、所定の間隔dを以て垂直に対向立設する背面板4とから構成される展示台本体Aと、該展示台本体Aの前面板3と背面板4との対向間に挟持される表示板本体Bとから構成されている、商品展示台兼用ディスプレイ表示体。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明1とを対比すると、
ア 後者の「一枚のアクリルの透明板を中央付近で折り曲げることにより形成される屈曲部22」、「フレーム2」、「写真6」、及び「『溝41を設け』た『矩形板状の底板4』」は、ぞれぞれ、前者の「透明な樹脂板を二つ折りして形成される二つ折り部」、「表示部材」、「サイン」、及び「『矩形板状』で『支持部を備える』『支持部材』」に相当する。
イ 後者の「屈曲部22」は、矩形形状のフレーム2の上端となるように立てて用いられるものであるから、前者の「二つ折り部」と、後者の「屈曲部22」とは、矩形形状の上端となるように立てて用いられるものである点で一致する。
ウ 後者の「表示部材」は、その表板21と裏板23の間に写真6を挟み込むものであって、表板21側に写真6を表示することになるのは明らかであるから、前者の「表示部材」と、後者の「フレーム2」とは、折り曲げた内部に挟んで、予め定める前面側に表示すべきサインを保持するものである点で一致する。
エ 後者の「フレーム2」は、表板21と裏板23の間に写真6を挟み込むものであるところ、表板21を手前に引き広げて、写真6を横から挿入する場合は、裏板23を、底板4に対し垂直にし、裏板23を後方に押し広げて、写真6を横から挿入する場合は、表板21を底板4に垂直にするのであるところ、前記何れの場合においてもフレーム2は底板4に対して直立させた状態で、表板21と裏板23の間に写真6を挟み込むこととなるのであるから、前者の「支持部材」と、後者の「底板4」とは、表示部材の下側に配置され、板厚を有し、直立させた状態の表示部材に対する支持部を備えるものとの点で一致する。

したがって、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
[一致点]
「透明な樹脂板を二つ折りして形成される二つ折り部が矩形形状の上端となるように立てて用いられ、折り曲げた内部に挟んで、予め定める前面側に表示すべきサインを保持する表示部材と、
表示部材の下側に配置され、矩形板状で板厚を有し、直立させた状態の表示部材に対する支持部を備える支持部材と、
を含む、サイン立て。」

[相違点1]
本願補正発明の「表示部材」は、二つ折り部が「縦長」の矩形形状の上端となるように立てて用いられるものであるのに対し、引用発明1の「フレーム2」は、そのような特定がなされていない点。

[相違点2]
本願補正発明の「サイン」は、「掛け軸用の仏画」であるのに対し、引用発明1の「写真6」は、そのような具体的な特定がされていないものである点。

[相違点3]
本願補正発明の「支持部材」は、「透明」で、表示部材の板厚の「2倍を越える板厚」を有し、「支持部から前面側への長さが、支持部から後面側への長さよりも長い」ものであるのに対し、引用発明1の「底板4」は、その点が定かでない点。

(4)判断
上記各相違点について、以下、検討する。
ア [相違点1]について
一般的に、サイン立てには、縦長の矩形形状のものと横長の矩形形状のものとがあることは、例を示すまでもなくよく知られているところからすれば、引用発明の「フレーム2」を縦長の矩形形状のものとして用いることは、当業者が適宜選択し得る事項と認める。
そうすると、上記相違点1に係る本願補正発明とすることは、当業者が容易になし得るものである。

イ [相違点2]について
引用発明3の「掛軸本紙35」は、仏画などが描かれた和紙であるから、本願補正発明の「サイン」と、引用発明3の「掛軸本紙35」とは、「掛け軸用の仏画」である点で一致する。
ここで、引用発明3の仏画などが描かれた和紙である掛軸本紙35は、ホルダー本体40に収納され、その裏面かつ下方に重し部11が接続され、仏壇用掛軸ホルダー30として展示されるものであることから、引用発明1の「写真6」と引用発明3の「仏画などが描かれた和紙である掛軸本紙35」とは、フレームやホルダーに収納され、展示されるとの機能で共通するものであることから、引用発明1の「写真6」に、引用発明3の「仏画などが描かれた和紙である掛軸本紙35」を適用することは、当業者が容易になし得るものである。
そうすると、上記相違点2に係る本願補正発明は、引用発明1に引用発明3を適用することにより、当業者が容易になし得るものである。

ウ [相違点3]について
引用発明2の「スタンド」「本体」及び「ガラス」は、本願補正発明の「支持部材」及び「透明」の「部材」に相当する。
そして、引用発明1の「底板4」は、その材料が定かでないところ、引用発明2には、「スタンド」「本体」の材料として金属に限らず、合成樹脂、ガラス、木材等の各種材料を使用しても良いことが示されているのであるから、引用発明1において、引用発明2を参酌し、「底版4」の材料を「ガラス」すなわち「透明」の材料とすることは、当業者が容易になし得るものである。
また、引用発明1において、底版4の板厚とフレーム2の板厚の大小関係は定かでないところ、フレーム2の表板21または裏板23のいずれか一方を、底板4の溝に挿入して立ててフォトスタンド1として用いるのであるから、底板4の板厚をフレーム2の板厚の2倍以上とすることは、底版4に対してフレーム2が安定して立つことを考慮して、当業者が適宜設定し得る事項と認める。
さらに、サイン立ての支持部材における表示部材から前面側への長さを長くすることは、当該技術分野において周知の技術手段(例えば、前記引用例4記載の技術事項及び引用例5記載の技術事項参照。以下「周知技術」という。)であって、一般に慣用されている事項ともいえる事項であるから、引用発明1において、溝41から前面側への長さが、溝41から後面側への長さよりも長くすることは、引用発明1に、前記周知技術を適用することにより、当業者が容易に相当し得るものである。

また、本願補正発明の効果も、引用発明1から3及び上記周知の技術手段から、当業者が予測し得る程度のものといえる。

請求人は、「請求項1に係る本願発明と引用文献1-4に記載の発明とは、少なくとも<C>の特徴について異なる。<C>の特徴は、「支持部材は、支持部から前面側への長さが、支持部から後面側への長さよりも長い」ことであり、引用文献5、6には明確に示されておらず、これによって前方には倒れにくくなる効果を奏する。」と主張する。
しかし、上記「エ 引用例4」及び「オ 引用例5」のとおりであって、サイン立ての支持部材における表示部材から前面側への長さを長くすることは、当該技術分野において周知の技術手段といえるのであるから、請求人の主張は採用できない。

したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、引用発明1から3及び上記周知技術から、当業者が容易に発明できた発明であって、特許出願の際、独立して特許を受けることが出来ないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項の規定において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成31年3月4日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
透明な樹脂板を二つ折りして形成される二つ折り部が縦長の矩形形状の上端となるように立てて用いられ、折り曲げた内部に挟んで、予め定める前面側に表示すべきサインを保持する表示部材と、
表示部材の下側に配置され、矩形板状で表示部材の板厚の2倍を越える板厚を有し、直立させた状態の表示部材に対する支持部を備える支持部材と、
を含み、
支持部材は、支持部から前面側への長さが、支持部から後面側への長さよりも長い、
むことを特徴とするサイン立て。」(以下「本願発明」という。)

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記引用文献に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献:特開2013-562号公報

3 引用例
令和1年7月30日付けの拒絶理由通知において、請求項1に対して通知された進歩性欠如の拒絶理由で、上記引用文献を主引用例とする理由で引用された引用例、及び、その記載内容は上記「第2 3 (2)引用例」に記載したものに加え、以下のとおりである。

引用例6(実願昭52-170132号(実開昭54-95496号)のマイクロフィルム)




4 対比・判断
本願発明は、実質的に、本願補正発明の「(予め定める前面側に表示すべきサイン)として掛け軸用の仏画」、「透明な(支持部材)」との限定を省くものである。

そうすると、本願発明と引用発明1とを対比すると、上記「第2 3 (3)対比」での検討を勘案すると、両者は、下記の点で相違する。
[相違点1]
本願発明の「表示部材」は、二つ折り部が「縦長」の矩形形状の上端となるように立てて用いられるものであるのに対し、引用発明1の「フレーム2」は、そのような特定がなされていない点。

[相違点3’]
本願発明の「支持部材」は、表示部材の板厚の「2倍を越える板厚」を有し、「支持部から前面側への長さが、支持部から後面側への長さよりも長い」ものであるのに対し、引用発明1の「底板4」は、その点が定かでない点。

そして、上記[相違点3’]は、上記[相違点3]から、「透明」との事項を削除したものであることから、上記「第2 3 (4)判断」における検討内容を踏まえれば、本願発明は、引用発明1及び引用発明2並びに前記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-08-10 
結審通知日 2021-08-11 
審決日 2021-08-31 
出願番号 特願2015-68673(P2015-68673)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
P 1 8・ 575- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大澤 元成  
特許庁審判長 藤田 年彦
特許庁審判官 藤本 義仁
古川 直樹
発明の名称 サイン立て  
代理人 廣瀬 峰太郎  
代理人 廣瀬 峰太郎  

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