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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  H03H
審判 査定不服 2項進歩性 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  H03H
審判 査定不服 5項独立特許用件 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  H03H
管理番号 1379293
審判番号 不服2021-383  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-12 
確定日 2021-11-09 
事件の表示 特願2019- 97866「圧電デバイス」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月 3日出願公開、特開2019-169970、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年12月25日に出願した特願2015-253752号(優先権主張 平成27年3月11日、平成27年3月24日)の一部を令和元年5月24日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和元年 6月17日 :手続補正書の提出
令和2年 3月31日付け:拒絶理由通知(以下、「最初の拒絶理由通知」
という。)
令和2年 6月 8日 :意見書[書類番号52001160573]、
手続補正書[書類番号52001160575
]、意見書[書類番号52001164326
]、及び手続補正書[書類番号5200116
4328]の提出
令和2年 7月10日付け:拒絶理由通知<最後>(以下、「最後の拒絶理
由通知」という。)
令和2年 9月18日 :意見書及び手続補正書の提出
令和2年10月 8日付け:補正の却下の決定、拒絶査定(以下、「原査定
」という。)
令和3年 1月12日 :拒絶査定不服審判の請求


第2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は令和2年7月10日付け拒絶理由通知<最後>に記載した理由であり、その概要は、令和2年6月18日の手続補正書([書類番号52001164328])に記載された特許請求の範囲の請求項1ないし2、4ないし5に係る発明は、引用文献1に記載された発明であり、また、引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号、及び第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項3ないし5に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

<引用文献等一覧>
1.特開2014-239414号公報


第3 令和2年10月8日付けの補正の却下の決定の適否

1 本件審判請求の趣旨(補正の却下の決定に対して不服の申し立て)
本件審判請求の趣旨は、「原査定を取り消す、本願は特許をすべきものであるとの審決を求めます。」というものであり、請求の理由において、
「(1-7)以上のように、本願発明の「4つの各外部接続端子のみが形成される構成」が本願発明における「必須の構成」であることを示す記載や示唆は明細書には見当たらず、また、「4つの各外部接続端子のみが形成される構成」は、引用文献1記載の発明に対して顕著な効果を奏するとは認められないので、引用文献1記載の発明に対して進歩性を有しないという、審査官殿のご判断は失当であると思料致します。したがって、本願についての令和2年9月18日付け手続補正書による補正後の請求項1に係る発明が、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとしてなされた補正の却下の決定には、承服できません。
令和2年9月18日付け手続補正書による補正は、却下されるようなものではなく、適法な補正であり、以下、この適法な補正に基づいて、本願発明が特許されるべき理由について、更に詳述致します。」、
「4.むすび
以上詳述致しましたように、令和2年9月18日付け手続補正書による補正は適法な補正であって、却下されるような補正ではありません。また、この補正後の本願発明は、引用文献1に記載された発明でないのは勿論、引用文献1に記載の発明から容易に発明できたものではなく、十分に特許されるべき要件を具備したものであります。」、
と主張するものであることから、令和2年10月8日付けの補正の却下の決定に対して不服の申し立てがあるものと認める。

上記「1 本件審判請求の趣旨(補正の却下の決定に対して不服の申し立て)」のとおり、請求人は令和2年10月8日付けの補正の却下の決定に対して不服の申し立てを主張していると認められるので、上記補正の却下の決定の適否について検討する。


[補正の却下の決定の適否の結論]
令和2年10月8日付けの補正の却下の決定を取り消す。

[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
最後の拒絶理由通知後の令和2年9月18日の手続補正書により補正(以下「本件補正」という。)された特許請求の範囲は、次のとおりである(下線部は補正箇所であり、当審で付した。)。

「 【請求項1】
基板部を有すると共に、当該基板部の外部基板に対向する側の主面の外周部に枠部を有する平面視矩形状の絶縁性容器と、
前記枠部と前記基板部の外部基板に対向する側の主面とで囲まれた凹部に収容される電子部品と、
前記基板部の電子部品が収容される主面とは反対側の主面に搭載される圧電素子と、
前記圧電素子を気密に封止する蓋と、
を備える圧電デバイスにおいて、
前記枠部の底面の外周縁と内周縁とが平面視矩形状であり、当該内周縁の4隅は平面視で円弧状となっており、
前記外部基板に半田によって接合される4つの各外部接続端子のみが、前記枠部の底面の4隅において当該底面の内周縁との間に無電極領域を隔てて形成され、
前記4つの各外部接続端子の内の2つの各外部接続端子が、前記電子部品に電気的に接続され、他の2つの各外部接続端子が、前記圧電素子に電気的に接続され、
前記各外部接続端子は、前記枠部の内周縁の各隅の円弧と略対応した円弧状の内周縁を有し、前記各外部接続端子の前記円弧状の内周縁における円弧の中心と、前記枠部の内周縁の各隅の円弧の中心とが、前記絶縁性容器の長辺方向に沿って延びる仮想直線上にあって、前記各外部接続端子の前記円弧状の内周縁における円弧の中心が、前記枠部の内周縁の各隅の円弧の中心に比べて、各外部接続端子における前記絶縁性容器の短辺側にずれている、
圧電デバイス。
【請求項2】
前記各外部接続端子の前記円弧状の内周縁の前記円弧の曲率半径と、前記枠部の内周縁の各隅の前記円弧の曲率半径とが略同一である、
請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項3】
前記各外部接続端子の前記円弧状の内周縁の前記円弧の曲率半径が、前記枠部の内周縁の各隅の前記円弧の曲率半径に比べて大きい、
請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項4】
前記各外部接続端子が、前記枠部の底面の4隅の各々から当該底面の隣接する長辺および短辺の各々に沿って延出した辺を有する平面視L字状に形成され、
前記各外部接続端子の前記短辺に沿って延出した辺の長さが、当該外部接続端子の前記長辺に沿って延出した辺の長さよりも長い、
請求項1ないし3のいずれかに記載の圧電デバイス。
【請求項5】
前記電子部品が直方体状であり、前記電子部品は、その長手方向が、前記絶縁性容器の長辺方向に直交するように、前記凹部に収容される、
請求項1ないし4のいずれかに記載の圧電デバイス。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
最初の拒絶理由通知後の本件補正前である令和2年6月18日の手続補正書([書類番号52001164328])により補正された特許請求の範囲は、次のとおりである。

「 【請求項1】
基板部を有すると共に、当該基板部の外部基板に対向する側の主面の外周部に枠部を有する平面視矩形状の絶縁性容器と、
前記枠部と前記基板部の外部基板に対向する側の主面とで囲まれた凹部に収容される電子部品と、
前記基板部の電子部品が収容される主面とは反対側の主面に搭載される圧電素子と、
前記圧電素子を気密に封止する蓋と、
を備える圧電デバイスにおいて、
前記枠部の底面の外周縁と内周縁とが平面視矩形状であり、当該内周縁の4隅は平面視で円弧状となっており、
前記外部基板に半田によって接合される4つの各外部接続端子が、前記枠部の底面の4隅において当該底面の内周縁との間に無電極領域を隔てて形成され、
前記4つの各外部接続端子の内の2つの各外部接続端子が、前記電子部品に電気的に接続され、他の2つの各外部接続端子が、前記圧電素子に電気的に接続され、
前記各外部接続端子は、前記枠部の内周縁の各隅の円弧と略対応した円弧状の内周縁を有し、前記各外部接続端子の前記円弧状の内周縁における円弧の中心と、前記枠部の内周縁の各隅の円弧の中心とが、前記絶縁性容器の長辺方向に沿って延びる仮想直線上にあって、前記各外部接続端子の前記円弧状の内周縁における円弧の中心が、前記枠部の内周縁の各隅の円弧の中心に比べて、各外部接続端子における前記絶縁性容器の短辺側にずれている、
圧電デバイス。
【請求項2】
前記各外部接続端子の前記円弧状の内周縁の前記円弧の曲率半径と、前記枠部の内周縁の各隅の前記円弧の曲率半径とが略同一である、
請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項3】
前記各外部接続端子の前記円弧状の内周縁の前記円弧の曲率半径が、前記枠部の内周縁の各隅の前記円弧の曲率半径に比べて大きい、
請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項4】
前記各外部接続端子が、前記枠部の底面の4隅の各々から当該底面の隣接する長辺および短辺の各々に沿って延出した辺を有する平面視L字状に形成され、
前記各外部接続端子の前記短辺に沿って延出した辺の長さが、当該外部接続端子の前記長辺に沿って延出した辺の長さよりも長い、
請求項1ないし3のいずれかに記載の圧電デバイス。
【請求項5】
前記電子部品が直方体状であり、前記電子部品は、その長手方向が、前記絶縁性容器の長辺方向に直交するように、前記凹部に収容される、
請求項1ないし4のいずれかに記載の圧電デバイス。」

(3)補正事項
本件補正は、上記(1)及び(2)から、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「前記枠部の底面の4隅において当該底面の内周縁との間に無電極領域を隔てて形成され」ている「前記外部基板に半田によって接合される4つの各外部接続端子」が、「前記外部基板に半田によって接合される4つの各外部接続端子のみ」であることを特定するものである。

2 令和2年10月8日付け補正の却下の決定の理由の概要
令和2年10月8日付け補正の却下の決定の概要は、次のとおりである。

請求項1についての補正は限定的減縮を目的としている。
しかしながら、補正後の請求項1に係る発明は依然として当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、当該補正後の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、この補正は同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定により、令和2年9月18日付け手続補正書でした明細書、特許請求の範囲又は図面についての補正は、却下する。

<引用文献等一覧>
1.特開2014-239414号公報

3 本件補正の適否
(1)補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記枠部の底面の4隅において当該底面の内周縁との間に無電極領域を隔てて形成され」ているものが、「前記外部基板に半田によって接合される4つの各外部接続端子のみ」であることを限定するものである。
本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
また、本件補正後の請求項2ないし5は、本件補正後の請求項1を直接的、または間接的に引用するものであるから、本件補正後の請求項1と同様に、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。

そこで、本件補正後の請求項1ないし5に係る発明が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討する。

(2)独立特許要件について
ア 本願補正発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1ないし5に係る発明(それぞれ、「本願補正発明1」ないし「本願補正発明5」という。)は、上記「第2 [理由]1(1)」に記載のとおりのものである。

イ 引用文献の記載及び引用発明
令和2年10月8日付けの補正の却下の決定及び原査定で引用された、特開2014-239414号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(下線は当審が付した。)

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は表面実装型の圧電振動デバイスに関する。」

(イ)「【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、基板部と、当該基板部の一主面の外周部から上方に伸びる第1枠部と、前記基板部の他主面の外周部から下方に伸びる第2枠部とを備えたベースと、前記第1枠部と前記基板部の一主面とで囲まれた第1凹部に収容される圧電振動素子と、前記第2枠部と前記基板部の他主面とで囲まれた第2凹部に収容される電子部品と、前記第1凹部を気密に封止する蓋と、からなる圧電振動デバイスにおいて、第2枠部の外周縁は平面視略矩形であり、外部接続端子が第2枠部の上面の前記矩形の4隅または4隅近傍に形成され、前記外部接続端子は、圧電振動素子と電気的に接続された一対の圧電振動素子用端子と、電子部品と電気的に接続された一対の電子部品用端子の、4つの端子からなり、第2枠部の上面であって前記4つの外部接続端子の各々に近接する位置には、圧電振動素子と電子部品の何れとも電気的に接続されない無接続端子が形成されている。
【0011】
上記発明によれば、圧電振動デバイスの小型化に対応するとともに、外部基板への実装後の半田のクラック発生を抑制することができる。これはベース外底面である第2枠部の上面の4隅または4隅近傍に外部接続端子が形成され、当該外部接続端子に近接する位置に無接続端子が形成されていることによる。つまり、電子部品を収容可能な大きさの第2凹部を備えた圧電振動デバイスを小型化した場合であっても、外部接続端子に近接する無接続端子が存在することによって半田の接触面積が増大し、接合強度を高めることができるからである。
【0012】
また、外部接続端子と無接続端子との間に第2枠部の上面が露出した隙間が形成されることによって、半田の這い上がり領域を増大させることができる。これにより接合強度を補完することができる。これは例えば絶縁性材料を基材とするベースを外部基板に半田接合する際に、金属で構成された外部接続端子および無接続端子の各々の端子の外側面には半田の這い上がり(フィレット)が生じる。さらに外部接続端子と無接続端子とが対面する各端子の側面(内側面)にも半田の這い上がりが生じるようになる。つまり、外部接続端子と無接続端子の各々の全側面を囲むように半田の這い上がりが生じるようになるため、接合強度を向上させることができる。」

(ウ)「【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお以下に述べる本発明の全ての実施形態において、圧電振動デバイスとしてサーミスタを内蔵した表面実装型の水晶振動子を例に挙げて説明する。
【0028】
-第1の実施形態-
本発明の第1の実施形態を図1乃至3を用いて説明する。図1において水晶振動子1は略直方体状のパッケージであり、平面視では略矩形となっている。水晶振動子1は、ベース2と、水晶振動素子3と、サーミスタ4と、蓋5とが主な構成部材となっている。本実施形態では水晶振動子1の平面視の外形サイズは縦横が2.5mm×2.0mmであり、発振周波数は19.2MHzとなっている。水晶振動子1は電子部品としてサーミスタを内蔵しており、当該サーミスタから得られた温度情報に基づいて外部で温度補償が行われる。なお、前述の水晶振動子の平面視外形サイズおよび発振周波数は一例であり、前記外形サイズ以外のパッケージサイズおよび前記発振周波数以外の周波数であっても本発明は適用可能である。以下、水晶振動子1を構成する各部材の概略について述べた後、外部接続端子および無接続端子等について詳述する。
【0029】
図1乃至2においてベース2は絶縁性材料からなる平面視略矩形の容器である。ベース2は、平板状の基板部20と、基板部20の一主面201の外周部から上方に伸びる第1枠部21と、基板部20の他主面202の外周部から下方に伸びる第2枠部22とが主な構成部材となっている。本実施形態では基板部20と第1枠部21と第2枠部22の各々は、セラミックグリーンシート(アルミナ)となっており、これら3つのシートが積層された状態で焼成によって一体成形されている。なお、これらのシートの積層間には所定形状の内部配線が形成されている。
【0030】
ベース2の第1枠部21と基板部の一主面201とで囲まれた空間は第1凹部E1となっている。第1凹部E1の内底面の一端側には、水晶振動素子3と導電接合される一対の水晶搭載用パッド7,7が並列して形成されている。当該水晶搭載用パッド7の上には、導電性接着剤8を介して水晶振動素子3の一端側が導電接合される。
【0031】
ベース2の第2枠部22と基板部の他主面202とで囲まれた空間は第2凹部E2となっている。第2凹部E2は第1凹部E1よりも平面視の大きさが小さくなっており、平面視透過では第2凹部E2は第1凹部E1に内包される位置関係となっている。
【0032】
第2凹部E2の内底面には、サーミスタ4と導電接合される一対のサーミスタ搭載用パッド11,11が互いに対向するように形成されている。この一対のサーミスタ搭載用パッド11,11は一対の引き出し電極22,22とそれぞれ接続されている。そして一対の引き出し電極22,22は、内部配線を経由してサーミスタ用の外部接続端子9b,9dとそれぞれ電気的に接続されている。一対のサーミスタ搭載用パッド11,11の上には、半田Sを介してサーミスタ4の両端の電極が導電接合される。
【0033】
本発明の実施形態で使用されるベースは、前述したH型パッケージ構造となっている。このようなパッケージ構造によれば、水晶振動素子とサーミスタとが別空間に収容されるため、製造過程で発生するガスの影響や、他の素子から発生するノイズの影響を受けにくくすることができるというメリットがある。また水晶振動素子とサーミスタとは、互いに接近した状態で1つのベース内に収容されているため、水晶振動素子の実際の温度とサーミスタの測定値との差異を小さくすることができる。さらに本発明の実施形態におけるサーミスタ内蔵型水晶振動子は、温度補償回路を内蔵していない非温度補償デバイスであるため、良好な位相雑音特性を得ることができる。
【0034】
ベース2の第1枠部21の上面にはコバールからなる金属製リング6が取り付けられている。この金属製リング6は金属製の蓋5とシーム溶接法によって接合される。
【0035】
本発明の第1の実施形態では、第2枠部22の外周縁および第2凹部E2は平面視略矩形となっている。そして第2凹部E2の長辺EL2(図2で符号Wで示す方向)は、第2枠部22の外周縁の短辺(図2で符号Wで示す方向)と略平行となっている(図2参照)。
【0036】
このような第2凹部の配置により、水晶振動子の外部基板への実装後の半田のクラック発生を抑制することができる。これは第2凹部の上記配置によって、水晶振動子を外部基板に半田実装した後のベースの反りが抑制されることによるものである。これは次の理由による。
【0037】
水晶振動子が実装された外部基板は、曲げ応力等が働くことによって外部基板に撓みが生じることがある。外部基板が撓むことにより、外部基板と半田を介して接合された水晶振動子にも応力が伝わる。ベース2は平面視矩形状であり、ベース長辺の方がベース短辺より相対的に撓み量が大きくなる。このとき、平面視矩形状の第2凹部の長辺が第2枠部の外周縁の短辺と略平行となるように配置されている方が、第2凹部の長辺が第2枠部の外周縁の長辺と略平行に配置されている場合よりも、ベース長辺方向における剛性を高めることができる。その結果、ベース長辺方向の撓み量が抑制され、半田に伝播する応力を抑制することができる。これにより、半田のクラックの発生を抑制することができる。
【0038】
図1において、水晶振動素子3はATカット水晶振動板の表裏主面に各種電極が形成された、平面視矩形状の圧電振動素子である。なお、図1では各種電極の記載は省略している。また図1では記載を省略しているが、水晶振動板の略中央部分には励振電極が表裏で対向するように一対で形成されている。そして前記一対の励振電極の各々から水晶振動板の表裏主面の一短辺縁部に向かって引出電極が引き出されている。この引出電極の終端部は接着用の電極となっており、前述した水晶搭載用パッド7と導電性接着剤8を介して接合されるようになっている。本実施形態では導電性接着剤8にシリコーン系の接着剤が使用されているが、シリコーン系以外の導電性接着剤を使用してもよい。
【0039】
本実施形態で用いられるサーミスタ4は、温度上昇に対して抵抗値が減少する、いわゆるNTCサーミスタ(Negative Temperature Coefficient Thermistor)である。本実施形態では圧電振動デバイスの小型化に対応したチップタイプのサーミスタが用いられている。図2においてサーミスタ4は略直方体形状であり、その平面視の大きさは0.6mm×0.3mmとなっている。なお本実施形態におけるサーミスタの大きさは一例であり、前記サイズ以外のサーミスタであってもよい。
【0040】
図1において、蓋5は平面視略矩形の平板である。蓋5はコバールが基材となっており、基材の表面にニッケルメッキが施されている。以上が各構成部材の概略である。次に、外部接続端子および無接続端子等について図2乃至3を参照しながら説明する。
【0041】
図2に示すように、第2枠部の上面220(ベース2の底面)の外周縁は平面視略矩形となっている。そして第2枠部の上面220のうち、前記矩形の4隅の各々に外部接続端子が形成されている(9a,9b,9c,9d)。これら4つの外部接続端子は外部基板と半田を介して接合される。4つの外部接続端子9a,9b,9c,9dは、ベースの短辺方向(図2の左下に符号Wで示す方向)が長手方向となるように形成されており、後述するベース短辺の切り欠き部を除けば平面視で略長方形となっている。
【0042】
4つの外部接続端子9a,9b,9c,9dのうち、9aと9cは水晶振動素子3の表裏主面の各励振電極と電気的に接続されている。残りの9bと9dは、サーミスタ4の両端の電極とそれぞれ電気的に接続されている。つまり、外部接続端子9aと9cは水晶振動素子用の外部接続端子であり、外部接続端子9bと9dはサーミスタ用の外部接続端子となっている。ここで水晶振動素子用の外部接続端子である9aと9cは、サーミスタ用の外部接続端子である9bと9dとは互いに電気的に接続されることはなく、別個独立した状態となっている。換言すれば、外部接続端子9aと9cは水晶振動素子3の励振電極とのみ電気的に接続されている。また外部接続端子9bと9dはサーミスタの端子電極とのみ電気的に接続されている。
【0043】
図1乃至2に示すように、第2枠部の上面220であって、4つの外部接続端子9a,9b,9c,9dの各々に近接する位置には、水晶振動素子3とサーミスタ4の何れとも電気的に接続されない無接続端子10a,10b,10c,10dが形成されている。4つの無接続端子10a,10b,10c,10dは、ベースの短辺方向が長手方向となるように形成されており、後述するベース長辺方向(図2の左下に符号Lで示す方向)の切り欠き部を除けば平面視で略長方形となっている。なお外部接続端子9a?9dと無接続端子10a?10dとは、一定の隙間を隔てて平行に形成されている。つまり、4つの外部接続端子と4つの無接続端子との間の各隙間は略同一となっている。また、外部接続端子と無接続端子の各々のベース短辺方向の寸法は略同一となっている。
【0044】
図2に示すように4つの無接続端子10a,10b,10c,10dは、4つの外部接続端子9a,9b,9c,9dに対して内側(第2凹部E2に近い側)に配置されている。なお1つの外部接続端子と、当該外部接続端子と近接する1つの無接続端子とは対になっており、前記1つの外部接続端子と当該外部接続端子と近接する1つの無接続端子とで一組の端子群となっている。すなわち1つの水晶振動子で、計4組の端子群が存在することになる。」

(エ)「【0052】
本実施形態では4つの無接続端子が4つの外部接続端子に対して内側に配置されているが、外部接続端子と無接続端子の位置が逆になっていてもよい。すなわち、第2枠部の上面220の外周縁の4隅に無接続端子を配置し、当該無接続端子に近接する位置に外部接続端子を配置するようにしてもよい。この場合、第2凹部に近い側の端子となる外部接続端子の端縁のうち、第2凹部に近い側にある端縁が、2本の仮想線VL1とVL2を超えない位置となる。このように第2凹部に近い側にある端子の端縁が2本の仮想線VL1とVL2を超えないように無接続端子と外部接続端子とを配置することによって、水晶振動子の外部基板への実装後の半田のクラック発生を抑制しつつ、半田の第2凹部への流入を抑制することができる。」

(オ)「【0058】
次に水晶振動子の外部基板への実装形態について図3を参照しながら説明する。図3(a)は水晶振動子の底面模式図であり、外部基板の水晶振動子が実装されるランドパターンの概略位置を点線で表している。図3(b)は水晶振動子が外部基板に半田を介して導電接合された状態を表す側面模式図となっている。
【0059】
図3(a)において点線で示すように、水晶振動子用の4つのランドパターンLP1,LP2,LP3,LP4は、前述した4組の端子群と一対一で対応している。具体的にランドパターンLP1の面積は、外部接続端子9aおよび無接続端子10aのそれぞれの形成領域と、外部接続端子9aと無接続端子10aとに挟まれた第2枠部の上面の領域の、計3つの領域の総面積よりも大きく形成されている。以下、同様にLP2?LP4の各々についても、各組の端子群の形成領域と当該各組の端子間に挟まれた第2枠部の上面の領域とを含めた領域の総面積よりも大きな面積で形成されている。
【0060】
水晶振動子1は、側面視では図3(b)に示すような状態で外部基板PB上に実装される。すなわち、水晶振動子1の外部接続端子(9a?9d)と無接続端子(10a?10d)とが、半田Sを介して、外部基板PB表面に設けられた水晶振動子用のランドパターン(LP1?LP4)に導電接合される。ここで水晶振動子の実装時に溶融した半田は、表面張力によってベースの外側面に設けられた第1切り欠き部CL1?CL4、CW1?CW4の内壁面を伝って這い上がる。これにより水晶振動子の外部基板との接合強度を向上させることができる。」

(カ)「【0077】
-第5の実施形態-
次に本発明の第5の実施形態を図10を用いて説明する。本発明の第5の実施形態では図2に示す構成に準じる構成となっているが、無接続端子105?108のベース短辺方向の長さが、外部接続端子904?907のベース短辺方向の長さよりも短くなっている点で異なっている。
【0078】
このような構成の場合、本発明の第1の実施形態と同様の作用効果を奏するとともに、水晶振動子の外部基板への実装の際に、溶融した半田が第2凹部へ流入するのを防止することができる。これは無接続端子105?108の第2凹部E2に近接する側の端縁と、第2凹部までの間の隙間をより大きく確保することができるためである。
【0079】
さらに、応力が集中しやすいベース長辺の中央に近い側にある端子の形成領域が減少することにより、ベースに働く熱応力の影響を抑制することができる。
【0080】
なお、本発明の第5の実施形態の変形例として、図11に示すように無接続端子の第2凹部に近い部位のみを切り欠いた平面視形状であってもよい。この場合、無接続端子の第2凹部に近い部位を、平面視略矩形の第2凹部の4角の曲率を有する部分と同心円状に切り欠いてもよい。」

(キ)「【0092】
また、本発明の第7の実施形態の変形例として、無接続端子と外部接続端子とは図14に示すような構成であってもよい。つまり、無接続端子121?124と外部接続端子920?923の各々において、ベース24の平面視略矩形の第2枠部の上面の外周縁の長辺および短辺の各々に面するように、第1切り欠き部CL35?CL38、CW29?CW32が形成されていてもよい。
【0093】
図14において4つの外部接続端子920?923のベース長辺方向における幅は、図13における外部接続端子916?919のベース長辺方向における幅よりも僅かに小さくなっている。そして無接続端子121?124は平面視で屈曲した形状となっている。このような外部接続端子と無接続端子との組み合わせ構成であっても、前述した本発明の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。」

(ク)「【図1】


(ケ)「



(コ)「【図3】



(サ)「【図11】



(シ)「【図14】



図3(b)より、水晶振動子1の第2凹部E2が外部基板PBに対向して実装されることから、ベース2の基板部の他主面(202)は、外部基板PBに対向する面であるといえる。
また、図2より、第2凹部(E2)は縁部を有し、1つの外部接続端子(9a?9d)と当該外部接続端子と近接する1つの無接続端子(10a?10d)からなる一組の端子群と第2凹部の縁部との間には、隙間があることが看て取れる。


そうすると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(なお、参照符号等は当審にて付加したものである。)。

「基板部(20)と、当該基板部の一主面(201)の外周部から上方に伸びる第1枠部(21)と、前記基板部の他主面(202)の外周部から下方に伸びる第2枠部(22)とを備えたベース(2)と、前記第1枠部と前記基板部の一主面とで囲まれた第1凹部(E1)に収容される圧電振動素子(3)と、前記第2枠部と前記基板部の他主面とで囲まれた第2凹部(E2)に収容される電子部品(4)と、前記第1凹部を気密に封止する蓋(5)と、からなる圧電振動デバイスにおいて、第2枠部の外周縁は平面視略矩形であり、外部接続端子(9a?9d、908?911、920?923)が第2枠部の上面の前記矩形の4隅または4隅近傍に形成され、前記外部接続端子は、圧電振動素子と電気的に接続された一対の圧電振動素子用端子と、電子部品と電気的に接続された一対の電子部品用端子の、4つの端子からなり、第2枠部の上面であって前記4つの外部接続端子の各々に近接する位置には、圧電振動素子と電子部品の何れとも電気的に接続されない無接続端子(10a?10d、109?112、121?124)が形成されており、(【0010】)
圧電振動デバイスはサーミスタ(4)を内蔵した表面実装型の水晶振動子(3)であり、(【0027】)
ベースは絶縁性材料からなる平面視略矩形の容器であり、(【0029】)
第1凹部の内底面の一端側には、水晶振動素子と導電接合される一対の水晶搭載用パッド(7)が並列して形成され、当該水晶搭載用パッドの上には、導電性接着剤(8)を介して水晶振動素子の一端側が導電接合され、(【0030】)
ベースの基板部の他主面は、外部基板(PB)に対向する面であり、(図3(b))
第2枠部の外周縁および第2凹部は平面視略矩形となっており、(【0035】)
外部接続端子(9a?9d)と無接続端子(10a?10d)とは、一定の隙間を隔てて平行に形成され、1つの外部接続端子と、当該外部接続端子と近接する1つの無接続端子とは対になっており、前記1つの外部接続端子と当該外部接続端子と近接する1つの無接続端子とで一組の端子群となっており、(【0043】、【0044】)
一組の端子群と第2凹部の縁部との間には、隙間があり、(図2)
水晶振動子1の外部接続端子(9a?9d)と無接続端子(10a?10d)とが、半田(S)を介して、外部基板表面に設けられた水晶振動子用のランドパターン(LP1?LP4)に導電接合され、(【0060】)
無接続端子の第2凹部に近い部位を、平面視略矩形の第2凹部の4角の曲率を有する部分と同心円状に切り欠いてもよく、(【0080】)
外部接続端子と無接続端子の位置が逆になっていてもよい、(【0052】)
圧電振動デバイス。」


ウ 対比・判断
(ア)本願補正発明1について
本願補正発明1と引用発明を対比する。

a.『基板部を有すると共に、当該基板部の外部基板に対向する側の主面の外周部に枠部を有する平面視矩形状の絶縁性容器と、』について

引用発明の「ベース(2)」は、「基板部(20)と、当該基板部の一主面(201)の外周部から上方に伸びる第1枠部(21)と、前記基板部の他主面(202)の外周部から下方に伸びる第2枠部(22)とを備え」、「絶縁性材料からなる平面視略矩形の容器」である。
ここで、引用発明の「基板部(20)」が本願補正発明1の「基板部」に相当することは明らかであり、さらに、「基板部の他主面(202)」は、「外部基板に対向する面」であるから、引用発明の「第2枠部」は、「当該基板部の外部基板に対向する側の主面の外周部」にあり、本願補正発明1でいう「枠部」に相当する。
よって、引用発明の「ベース(2)」は、本願補正発明1の「基板部を有すると共に、当該基板部の外部基板に対向する側の主面の外周部に枠部を有する平面視矩形状の絶縁性容器」に相当する。

b.『前記枠部と前記基板部の外部基板に対向する側の主面とで囲まれた凹部に収容される電子部品と、」について

引用発明において、「電子部品(4)」は、「前記第2枠部と前記基板部の他主面とで囲まれた第2凹部(E2)に収容され」ている。
ここで、「第2枠部(22)」は、上記aより本願補正発明1の「枠部」に相当するから、引用発明の「第2凹部(E2)」は、本願補正発明1の「前記枠部と前記基板部の外部基板に対向する側の主面とで囲まれた凹部」に相当する。
したがって、引用発明の「電子部品(4)」は、本願補正発明1の「前記枠部と前記基板部の外部基板に対向する側の主面とで囲まれた凹部に収容される電子部品」といえる。

c.「前記基板部の電子部品が収容される主面とは反対側の主面に搭載される圧電素子と、」について

引用発明の「圧電振動素子(3)」は、具体的には「水晶振動素子」であり、「圧電素子」に含まれることは明らかである。
引用発明の「圧電振動素子(3)」は、「基板部の一主面の外周部から上方に伸びる」「第1枠部と前記基板部の一主面とで囲まれた第1凹部(E1)に収容され」、「第1凹部の内底面の一端側には、水晶振動素子と導電接合される一対の水晶搭載用パッドが並列して形成され、当該水晶搭載用パッドの上には、導電性接着剤を介して水晶振動素子の一端側が導電接合され」るものであるから、前記基板部の電子部品が収容される他主面とは反対側である一主面に搭載されているといえる。
そうすると、引用発明の「圧電振動素子(3)」は、本願補正発明1の「前記基板部の電子部品が収容される主面とは反対側の主面に搭載される圧電素子」といえる。

d.「前記圧電素子を気密に封止する蓋と、」について
引用発明は、「圧電振動素子(3)」を「第1凹部(E1)に収容」するから、「第1凹部を気密に封止する蓋(5)」は、本願補正発明1の「前記圧電素子を気密に封止する蓋」に相当する。

e.『前記枠部の底面の外周縁と内周縁とが平面視矩形状であり、当該内周縁の4隅は平面視で円弧状となっており、』について

引用発明は、「第2枠部の外周縁および第2凹部は平面視略矩形となっており」、「無接続端子の第2凹部に近い部位を、平面視略矩形の第2凹部の4角の曲率を有する部分と同心円状に切り欠いてもよ」いものである。
ここで、引用発明の「第2枠部の外周縁」は、第2枠部の底面の外周縁であり、また、「第2凹部」は縁部を有するものであり、該縁部は、第2枠部の底面の内周縁といえる。
そして、引用発明の「平面視略矩形の第2凹部の4角」は、「曲率を有する部分」を持つことから、「第2凹部」の縁部、すなわち、「第2枠部の底面の内周縁」の4隅は、「円弧状」になっているといえる。

そうすると、本願補正発明1と引用発明とは、「前記枠部の底面の外周縁と内周縁とが平面視矩形状であり、当該内周縁の4隅は平面視で円弧状となって」いる点で一致する。

f.『前記外部基板に半田によって接合される4つの各外部接続端子のみが、前記枠部の底面の4隅において当該底面の内周縁との間に無電極領域を隔てて形成され、』について

引用発明は、「外部接続端子9a?9dと無接続端子10a?10dとは、一定の隙間を隔てて平行に形成され、1つの外部接続端子と、当該外部接続端子と近接する1つの無接続端子とは対になっており、前記1つの外部接続端子と当該外部接続端子と近接する1つの無接続端子とで一組の端子群となって」おり、「外部接続端子(9a?9d)と無接続端子(10a?10d)とが、半田Sを介して、外部基板PB表面に設けられた水晶振動子用のランドパターン(LP1?LP4)に導電接合され」るものであり、各「一組の端子群」が外部基板に半田によって接合されるものであるから、引用発明の「一組の端子群」と本願補正発明1の「外部接続端子」とは、「外部基板に半田によって接合される接続部」である点で共通する。
ここで、引用発明の「外部接続端子(9a?9d)」は、「第2枠部の上面の前記矩形の4隅または4隅近傍に形成され」、また、「一組の端子群と、第2凹部の縁部との間には、隙間がある」ものであり、当該「隙間」は、電極がない領域、すなわち、「無電極領域」といえるから、引用発明の「一組の端子群」は、「前記枠部の底面の4隅において当該底面の内周縁との間に無電極領域を隔てて形成され」ているといえる。

そうすると、本願補正発明1と引用発明とは、「前記外部基板に半田によって接合される4つの接続部が、前記枠部の底面の四隅において当該底面の内周縁との間に無電極領域を隔てて形成される」点で一致する。

g.『前記4つの各外部接続端子の内の2つの各外部接続端子が、前記電子部品に電気的に接続され、他の2つの各外部接続端子が、前記圧電素子に電気的に接続され、』について

引用発明においても、「前記外部接続端子は、圧電振動素子と電気的に接続された一対の圧電振動素子用端子と、電子部品と電気的に接続された一対の電子部品用端子の、4つの端子からな」るものである。

したがって、本願補正発明1と引用発明とは、「前記4つの各外部接続端子の内の2つの各外部接続端子が、前記電子部品に電気的に接続され、他の2つの各外部接続端子が、前記圧電素子に電気的に接続され」ている点で一致する。

h.『圧電デバイス』について
引用発明の「圧電振動デバイス」は、本願補正発明1の『圧電デバイス』に対応する。

上記「a.」から「h.」で言及したことを踏まえると、本願補正発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「基板部を有すると共に、当該基板部の外部基板に対向する側の主面の外周部に枠部を有する平面視矩形状の絶縁性容器と、
前記枠部と前記基板部の外部基板に対向する側の主面とで囲まれた凹部に収容される電子部品と、
前記基板部の電子部品が収容される主面とは反対側の主面に搭載される圧電素子と、
前記圧電素子を気密に封止する蓋と、
を備える圧電デバイスにおいて、
前記枠部の底面の外周縁と内周縁とが平面視矩形状であり、当該内周縁の4隅は平面視で円弧状となっており、
前記外部基板に半田によって接合される4つの各接続部が、前記枠部の底面の4隅において当該底面の内周縁との間に無電極領域を隔てて形成され、
前記4つの各外部接続端子の内の2つの各外部接続端子が、前記電子部品に電気的に接続され、他の2つの各外部接続端子が、前記圧電素子に電気的に接続されている、
圧電デバイス。」

【相違点1】
「接続部」について、本願補正発明1は、「外部接続端子のみ」であるのに対して、引用発明は、「1つの外部接続端子と当該外部接続端子と近接する1つの無接続端子」からなる「一組の端子群」である点。

【相違点2】
本願補正発明1は、「前記各外部接続端子は、前記枠部の内周縁の各隅の円弧と略対応した円弧状の内周縁を有し、前記各外部接続端子の前記円弧状の内周縁における円弧の中心と、前記枠部の内周縁の各隅の円弧の中心とが、前記絶縁性容器の長辺方向に沿って延びる仮想直線上にあって、前記各外部接続端子の前記円弧状の内周縁における円弧の中心が、前記枠部の内周縁の各隅の円弧の中心に比べて、各外部接続端子における前記絶縁性容器の短辺側にずれている」ているのに対して、引用発明は、「無接続端子の第2凹部に近い部位を、平面視略矩形の第2凹部の4角の曲率を有する部分と同心円状に切り欠いてもよく、外部接続端子と無接続端子の位置が逆になっていてもよい」ものである点。

相違点1について検討する。
引用発明は、段落【0012】に記載されるように、無接続端子を設けることにより、「外部接続端子と無接続端子との間に第2枠部の上面が露出した隙間が形成されることによって、半田の這い上がり領域を増大させることができ」、「これにより接合強度を補完することができる」ものである。
そうすると、引用発明において、「一組の端子群」として「1つの外部接続端子と当該外部接続端子と近接する1つの無接続端子」を形成することは必須の構成であり、「一組の端子群」を「外部接続端子のみ」で形成される様に変更することは、当業者といえども容易になし得るものとはいえない。

相違点2について検討する。
引用発明は、「外部接続端子と無接続端子の位置が逆になっていてもよい」ものであるが、「無接続端子の第2凹部に近い部位を、平面視略矩形の第2凹部の4角の曲率を有する部分と同心円状に切り欠」くものであるから、無接続端子の第2凹部に近い部位の切り欠きとなる円の中心と、第2凹部の4角の切り欠きとなる円の中心とは、同じ位置であるといえる。
そして、「前記各外部接続端子の前記円弧状の内周縁における円弧の中心が、前記枠部の内周縁の各隅の円弧の中心に比べて、各外部接続端子における前記絶縁性容器の短辺側にずれている」との技術事項は、当業者にとって周知とは言えず、更に、当該技術事項が本願出願時に公知の技術又は周知の技術であるとする証拠も見当たらない。

したがって、本願補正発明1は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(イ)本願補正発明2?5
本願補正発明2ないし5は、いずれも、本願補正発明1を直接的または間接的に引用するものであるから、上記相違点1及び2の点で、引用発明と相違する。
そして、上記のように、本願補正発明1は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないから、同様に、本願補正発明2ないし5は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

エ 独立特許要件についての判断
以上から、本願補正発明1ないし5は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるということはできない。
また、他に特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由もない。

(3)小括
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすものである。

4 むすび
以上のとおりであるので、本件補正は特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定された要件を満たすものであることから、令和2年10月8日付け「補正の却下の決定」は取り消すべきものである。


第4 本願発明についての判断
以上のとおり、令和2年10月8日付け「補正の却下の決定」は取り消されたから、本願の請求項1ないし5に係る発明(それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、令和2年9月18日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5(「第3 [理由]1(1)」参照。)に記載された事項により特定されるとおりのものであり、上記「第3 3」で検討した本願補正発明1ないし5と同じ発明である。
本願補正発明1ないし5と引用文献1に記載された発明とは、上記「第3 3(2)」で検討したとおり、相違点1、2を有するものであり、当業者が容易に発明をすることができたとはいえないのであるから、本願発明1ないし2、4ないし5は、引用文献1に記載された発明とはいえず、また、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないものであり、本願発明3ないし5は、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

したがって、本願発明1ないし5は、原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり、審決する。

 
審決日 2021-10-21 
出願番号 特願2019-97866(P2019-97866)
審決分類 P 1 8・ 575- WYA (H03H)
P 1 8・ 121- WYA (H03H)
P 1 8・ 113- WYA (H03H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石田 昌敏  
特許庁審判長 佐藤 智康
特許庁審判官 伊藤 隆夫
衣鳩 文彦
発明の名称 圧電デバイス  
代理人 岡田 和秀  

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