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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1379309
審判番号 不服2021-6732  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-25 
確定日 2021-11-09 
事件の表示 特願2018-508198「空間的原子層堆積用の加熱源」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月23日国際公開,WO2017/031102,平成30年11月 8日国内公表,特表2018-533201,請求項の数(15)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2016年(平成28年) 8月16日(パリ条約による優先権主張 2015年 8月17日 米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 4月 9日 :翻訳文の提出
令和 2年 9月30日付け:拒絶理由通知
令和 3年 1月 6日 :意見書,手続補正書の提出
令和 3年 1月22日付け:拒絶査定
令和 3年 5月25日 :審判請求書,手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和 3年 1月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

理由1 本願請求項1,2,5,8,9に係る発明は,以下の引用文献1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
理由2 本願請求項1,2,5,8,9,11-13,15に係る発明は,以下の引用文献1に基いて,本願請求項3,4に係る発明は,以下の引用文献1,2に基いて,本願請求項6,7,10,14に係る発明は,以下の引用文献1,3に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1 特開2015-018924号公報
引用文献2 国際公開第2014/017650号
引用文献3 特開2013-183075号公報

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正は,補正前の請求項1,9の「加熱要素」について,「複数の回転方向ゾーンのうち対応する回転方向ゾーンに配置される」と限定を加える補正するものを含むから,特許請求の範囲の削除及び限縮を目的とするものである。
また,審判請求時の補正は,本願の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲及び図面に記載された事項であり,新規事項を追加するものではないといえ,当該補正によっても,補正前の請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であることは明らかである。
そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1-15に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1-15に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明3」という。)は,令和 3年 5月25日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-15記載された事項により特定される発明であり,本願発明1,9は,以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
頂面,底面,及び外縁を有し,黒鉛を含む本体と,
前記本体内に配置された材料の連続した部分を備え,複数の回転方向ゾーンのうち対応する回転方向ゾーンに配置される少なくとも1つの加熱要素と
を備える装置であって,
各回転方向ゾーンは前記装置の中心の周囲に種々の角度で配置される,装置。」

「 【請求項9】
前面を有するガス分配アセンブリと,
前記ガス分配アセンブリの前記前面に面する頂面,及び底面を有するサセプタアセンブリであって,前記頂面は内部に複数の凹部を有し,各凹部は処理中に基板を支持するようにサイズ決めされているサセプタアセンブリと,
黒鉛を含み且つ頂面が前記サセプタアセンブリの前記底面に面している本体を有し,前記本体内に少なくとも1つの加熱要素を含む加熱装置であって,前記少なくとも1つの加熱要素は,複数の回転方向ゾーンのうち対応する回転方向ゾーンに配置され,各回転方向ゾーンは前記加熱装置の中心の周囲に種々の角度で配置される,加熱装置と
を含む,処理チャンバ。」

なお,本願発明2-8は本願発明1の,本願発明10-15は本願発明9の,すべての構成要素を備えた発明である。

第5 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同様である。)

「【0012】
以下,本発明の実施形態について,図面を用いて説明する。なお,すべての図面において,同様の構成要素には同一の符号を付し,適宜に説明を省略する。
【0013】
図1は実施形態に係る気相成長装置100の正面断面図である。図2はサセプタ30の平面図である。図3はヒータ10及びヒータケース80を示す平面図である。図4(a)および(b)はヒータケース80を示す図であり,このうち図4(a)は平面図,図4(b)は正面図である。図5(a)および(b)は支持部120によりヒータケース80を支持している箇所を示す断面図であり,このうち図5(a)はヒータケース80の半径方向に対して直交する方向において切断した構造を示し,図5(b)はヒータケース80の半径方向において切断した構造を示す。図6は棒状電極41がヒータケース80を貫通している箇所を示す断面図であり,ヒータケース80の半径方向において切断した構造を示す。
【0014】
本実施形態に係る気相成長装置100は,基板50の少なくとも一方の面に気相成長により堆積物を形成可能なように基板50を支持する盤状のサセプタ30と,サセプタ30の一方の面に対して対向する位置に配置され,サセプタ30を加熱するヒータ10と,ヒータ10を覆うヒータケース80と,ヒータケース80を支持する複数の支持部120と,を備える。ヒータケース80は,ヒータ10と対向して配置された面状の対向部(例えば底板部81)を有し,対向部には,複数の支持部120の各々と対応する貫通穴84が形成されている。複数の支持部120は,それぞれ対応する貫通穴84を貫通しているとともに,対向部における貫通穴84の周囲縁部を支持している。貫通穴84の各々は,対向部の面直方向にヒータケース80を見たときのヒータケース80の外形線上の一点(例えば図4(a)に示す点P1,P2,P3)から,この外形線に囲まれる形状の重心G(図4(a))へ向かう方向へと,支持部120が相対的に移動することを許容する形状に形成されている。以下,詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように,本実施形態に係る気相成長装置100は,チャンバ110と,チャンバ110内において基板50(図2)を保持するサセプタ30と,サセプタ30を支持する回転軸部60と,を有する。
【0016】
図2に示すように,サセプタ30は,例えば円盤状に形成され,チャンバ110内において水平に配置されている。サセプタ30の上面には,基板50を位置決め状態で保持する基板載置用ポケット31が形成されている。基板載置用ポケット31には,サセプタ30に対して平行に,基板50を載置できるようになっている。」

「【0018】
気相成長装置100は,更に,チャンバ110内に原料ガスを供給する原料ガス供給配管111,112と,チャンバ110内に設けられたガス分散部材113と,チャンバ110からの排気を行う排気管114と,を有している。ガス分散部材113には,多数のガス導出口113aが形成されている。ガス分散部材113は,サセプタ30の上方に配置され,サセプタ30の上面と対向している。
【0019】
ヒータ10は,サセプタ30の下方に配置され,サセプタ30の下面と対向(例えばサセプタ30に対して平行に対向)している。ヒータ10は,例えば,二次元的に屈曲する線状のパターンからなるプレート形状に形成された,平板ヒータである(図3参照)。この線状のパターンは,所定の幅を有している。ヒータ10のパターンの形状は特に限定されない。図3には,ヒータ10が,第1部分11,第2部分12及び第3部分13の3つのパターンからなる例を示している。これら第1部分11,第2部分12及び第3部分13に対し,それぞれ個別に電流が印加されるようになっている。平面視におけるヒータ10の外形形状は,サセプタ30と同様に円形となっている(図3,図2参照)。
【0020】
第1部分11,第2部分12及び第3部分13の各々の両端部には,第1部分11,第2部分12及び第3部分13の両端部をそれぞれ後述する棒状電極41に固定するための止着部材15を挿通させる固定穴19がそれぞれ形成されている。
【0021】
ヒータ10の下方には,ヒータ10から放射される熱をサセプタ30側に反射する反射板20が配置されている。平面視における反射板20の外形形状は,ヒータ10と同様に円形となっている。
【0022】
図4(a)および(b)に示すように,ヒータケース80は,ヒータ10と対向して配置された板状の底板部81と,外周壁部82と,内周壁部83と,を有している。底板部81は,例えば,ドーナツ状の平面形状に形成されている。外周壁部82は,円筒状に形成され,底板部81の外周端より上方に起立している。内周壁部83は,外周壁部82と同心の円筒状に形成され,底板部81の内周端より上方に起立している。底板部81,外周壁部82および内周壁部83によって,ドーナツ状の平面形状で,且つ,上向きに開口した受け皿形状のヒータケース80が構成されている。ヒータケース80は,サセプタ30の下方に配置されている。ヒータケース80は,ヒータ10および反射板20を収容しており,加熱効率を向上する機能を担う。ヒータケース80は,例えば,金属により構成されている。」

「【0050】
次に,気相成長装置100の各構成要素の材料の例を説明する。ヒータ10は,電力の供給(例えば電流の印加)によってジュール熱を発生するものであれば,材質は問わない。ただし,より高温での気相成長を実現する上で,ヒータ10は,タングステン(W)などの高融点金属や,輻射率が高いグラファイト又は炭化ケイ素などにより構成することが好ましい。ヒータケース80は,例えば,モリブデン(Mo)により構成されている。棒状電極41は,例えば,タングステンにより構成されている。絶縁部材122,絶縁部材125および絶縁部材86は,例えば,窒化ホウ素(BN),窒化アルミニウム(AlN),窒化ケイ素(Si_(3)N_(4))またはアルミナ(Al_(2)O_(3))などにより構成されている。
【0051】
以上において、ヒータ10、反射板20、ヒータケース80、電力供給部70、棒状電極41、連結部材89及び金属棒90等により、本実施形態に係る気相成長用加熱装置150が構成されている。
すなわち、気相成長用加熱装置150は、ヒータ10と、ヒータ10を覆うヒータケース80と、ヒータケース80を支持する複数の支持部120と、を備えている。ヒータケース80は、ヒータ10と対向して配置された面状の対向部(例えば底板部81)を有し、対向部には、複数の支持部120の各々と対応する貫通穴84が形成されている。複数の支持部120は、それぞれ対応する貫通穴84を貫通しているとともに、対向部における貫通穴84の周囲縁部を支持している。貫通穴84の各々は、対向部の面直方向にヒータケース80を見たときのヒータケース80の外形線上の一点から、この外形線に囲まれる形状の重心Gへ向かう方向へと、支持部120が相対的に移動することを許容する形状に形成されている。」

「【0053】
気相成長装置100を用いて気相成長を行うには,サセプタ30の基板載置用ポケット31に基板50をセットし,サセプタ30を水平面内で回転させるとともに,ヒータ10によりサセプタ30及び基板50を加熱しながら,原料ガス供給配管111,112からそれぞれ原料ガスをチャンバ110内に導入する。チャンバ110内に導入された原料ガスは,ガス分散部材113により均一に分散されて,サセプタ30上の基板50の上面に供給される。その結果,基板50上にエピタキシャル層等の堆積物が成長する(成膜される)。具体的には,例えば,窒化ガリウム(GaN)等のIIIV族化合物薄膜を基板50上に形成することができる。」









(2) 以上から,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「 二次元的に屈曲する線状のパターンからなるプレート形状に形成された,平板ヒータであり,
第1部分11,第2部分12及び第3部分13の3つのパターンからなり,これら第1部分11,第2部分12及び第3部分13に対し,それぞれ個別に電流が印加されるようになっている,ヒータ10を備えた気相成長用加熱装置150。」

(3) また,以上から,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「 チャンバ110と,
チャンバ110内において基板50を保持するサセプタ30と,
サセプタ30の一方の面に対して対向する位置に配置され,サセプタ30を加熱するヒータ10を備えた気相成長用加熱装置150と,
を有し,
サセプタ30は,例えば円盤状に形成され,チャンバ110内において水平に配置され,
サセプタ30の上面には,基板50を位置決め状態で保持する基板載置用ポケット31が形成され,
更に,チャンバ110内に設けられたガス分散部材113と,を有し,
ガス分散部材113は,サセプタ30の上方に配置され,サセプタ30の上面と対向し,
ヒータ10は,サセプタ30の下方に配置され,サセプタ30の下面と対向しており,
ヒータ10は,二次元的に屈曲する線状のパターンからなるプレート形状に形成された,平板ヒータであり,
第1部分11,第2部分12及び第3部分13の3つのパターンからなり,これら第1部分11,第2部分12及び第3部分13に対し,それぞれ個別に電流が印加されるようになっている,
気相成長装置100。」

2 引用文献2について
(1) 原査定の拒絶の理由において引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。

「[0017] 下部プレート11の表面(基板50が載置される側の面)は,基板50の裏面との間における隙間が少なくなる形状であることが好ましく,例えば平坦であることが好ましい。また,この表面は,使用する基板50よりも充分に大きく,この表面に略円板状の基板(ウェハ)50を載置することができる構成とされる。下部プレート11は,基板50をこの上に載置させて所望の温度に保持するために用いられ,従来の結晶成長装置において用いられる従来のサセプタに対応する。このため,下部プレート11を構成する材料は,従来のサセプタと同様であり,例えば熱伝導率の高い黒鉛が用いられる。また,図1(a)では下部プレート11は矩形体形状としているが,上記の表面を具備する形状であれば,表面よりも下側の形状は任意である。また,下部プレート11は単一の材料で構成されている必要はなく,表面の耐衝撃性や化学安定性を高めるために,表面保護層として,例えば黒鉛にパイロリティックボロンナイトライド(pBN)またはシリコンカーバイド(SiC)をコーティングした構成を用いることもできる。」

「[0022] 例えば,下部プレート11が黒鉛で構成された場合,1000℃以上の温度域におけるその熱伝導率を40?100W/m/K程度とすることができる。また,基板としてサファイアが用いられた場合,1000℃以上の温度域における厚さ方向(c軸方向)の熱伝導率は8W/m/K程度である。この場合には,例えば上部プレート12を,パイロリテックグラファイト(PG:熱分解炭素)で構成することができる。PGの構成元素は通常の黒鉛と同様に炭素であるが,黒鉛からなる基材の上にCVDにて数mm程度の厚さの厚膜を成形した後に基材を剥がして作られているため,異方性が高く,その面内方向と厚さ方向では熱伝導率は大きく異なる。このため,PGで薄板状の上部プレート12を形成すれば,その厚さ方向の熱伝導率を,1000℃以上の温度域において,例えば1.5W/m/K程度とすることができる。こうした材料構成の場合には,上記の熱伝導率の関係は満たされる。なお,一般的には,黒鉛は高温下でアンモニアガスと反応して消耗するものの,緻密に形成されたPGはアンモニアガスとの間の反応性が低く,長期間の使用にも耐えうる。こうしたアンモニア耐性のあるPGを用いることが特に好ましい。」

3 引用文献3について
(1) 原査定の拒絶の理由において引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0015】
[装置構成]
図1は,ホリゾンタル方式の結晶成長装置(MOCVD装置)10の上面図(上段)及び断面図(下段)を示し,上面図は断面図における線V?Vに沿って基板側を見た場合の図である。図1に示すように,MOCVD装置10は,反応容器11,フローチャネル本体12,フローチャネル床板13,材料ガス供給ガイド15,フローチャネル排気管17,基板20を載置・保持する円柱形状のサセプタ(基板保持部)22,サセプタ22の裏面側に設けられ,サセプタ22を加熱する(すなわち基板20を加熱する)ヒーター24,回転シャフト29(基板回転機構)によってサセプタ22を回転させる(すなわち,基板20を回転させる)モーター25を有している。また,サセプタ22の裏面側には,成長温度の制御のため,サセプタ22の温度を測定する熱電対が設けられている。」

「【0034】
[成長時の基板表面温度]
成長基板20の上方に設置した放射温度計によって成長中の基板表面温度を測定した。実施例1のMOCVD装置及び比較例のMOCVD装置を用いた場合の温度測定結果の経時変化を併せて図4及び図5に示す。すなわち,横軸は成長回数を示し,縦軸は装置の使用開始時(成長回数が1回目)の温度を基準としたときの温度変化(℃)を示している。また,図4はn型GaN層42の成長時の表面温度の測定結果であり,図5は発光層43(InGaN)の成長時の表面温度の測定結果である。なお,ウエハ面内での表面温度の平均値を示している。」

「【0039】
ところで,サセプタの温度制御は,一般的にサセプタ内部に設置した熱電対によって行われる。成長温度の再現性という点ではできる限り成長基板に近い位置が望ましいが,実際には成長基板の回転や搬送を実現するために成長基板に接する位置に熱電対を設置するのは難しい。従って,熱電対は成長基板から距離を置いて設置され,その位置の温度を制御することになる。なお,成長基板上の温度を放射温度計によって測定して制御することも考えられるが,反応室内には材料ガスの反応生成物が堆積するため,汚れ方はヒーター周りの比ではなく,透明な石英部品を通して基板温度を観測しようとしても,石英部品が直ぐに汚れてしまい,正確な測定は難しい。こまめにメンテナンスを行うことにしても,メンテナンス頻度が高くなると結晶成長ウエハの製造スループットが低下し,コストの上昇要因となる。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると,次のことがいえる。

ア 引用発明1において「ヒータ10」は,本願発明1の「加熱要素」に対応する。
そして,引用発明1の「ヒータ10」は,「二次元的に屈曲する線状のパターンからなるプレート形状に形成され」,「第1部分11,第2部分12及び第3部分13の3つのパターンからなり,これら第1部分11,第2部分12及び第3部分13に対し,それぞれ個別に電流が印加されるようになっている」ているから,「材料の連続した部分を備え,複数の」「ゾーンのうち対応する」「ゾーンに配置され」ていることは明らかである。
すると,引用発明1の「ヒータ10」は,本願発明1の「加熱要素」と,「材料の連続した部分を備え,複数の」「ゾーンのうち対応する」「ゾーンに配置される少なくとも1つの加熱要素」である点で一致する。

イ 引用発明1の「気相成長用加熱装置150」は,「ヒータ10」を備えるから,本願発明1の「装置」と,「加熱要素」「を備える装置」である点で一致する。

ウ したがって,本願発明1と引用発明1との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「材料の連続した部分を備え,複数のゾーンのうち対応するゾーンに配置される少なくとも1つの加熱要素
を備える装置。」

(相違点)
(相違点1)「装置」に関して,本願発明1は,「頂面,底面,及び外縁を有し,黒鉛を含む本体」を備え,「加熱要素」が「前記本体内に配置された」と特定されているのに対し,引用発明1は,そのように特定されていない点。

(相違点2)「加熱要素」に関して,本願発明1は,「複数の回転方向ゾーンのうち対応する回転方向ゾーンに配置され」ると特定され,かつ,「回転方向ゾーン」が「各回転方向ゾーンは前記装置の中心の周囲に種々の角度で配置される」と特定さているのに対し,引用発明1は,そのように特定されていない点。

(2)相違点についての判断
ア 相違点2について
事案に鑑み,相違点2について検討する。
引用文献1の図3を参照すると,引用発明1における,「ヒータ10」の「第1部分11」,「第2部分12」及び「第3部分13」は,それぞれ,最内周,その間の周,最外周と,周方向に複数のゾーンを有するものであるが,「前記装置の中心の周囲に種々の角度で配置される」「複数の回転方向ゾーンのうち対応する回転方向ゾーンに配置される」ものではない。
そして,引用文献2-3においても,「加熱要素」が「複数の回転方向ゾーンのうち対応する回転方向ゾーンに配置」と特定され,かつ,「回転方向ゾーン」が「各回転方向ゾーンは前記装置の中心の周囲に種々の角度で配置される」点について何ら記載されておらず,また,この点が本願の優先日前に周知技術であったともいえない。

イ したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明1及び引用文献2-3に基いて,容易に発明できたものであるとはいえない。
また,上記のとおり本願発明1は,相違点2に係る本願発明1の構成を含む発明であるから,引用発明1であるとはいえない。

2 本願発明2-8について
本願発明2-8は,本願発明1のすべての構成要素を備えた発明であるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明1及び引用文献2-3に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。
また,上記のとおり本願発明2,5,8は,相違点2に係る本願発明1の構成を含む発明であるから,引用発明1であるとはいえない。

3 本願発明9について
(1)対比
本願発明9と引用発明2とを対比すると,次のことがいえる。

ア 引用発明2の「ガス分散部材113」は,本願発明9の「ガス分配アセンブリ」に相当することは明らかである。
ここで,「ガス分散部材113」は「サセプタ30の上方に配置され,サセプタ30の上面と対向」するものであるから,引用発明2の「ガス分散部材113」において「サセプタ30の上面と対向」する面が,「前面」に相当する。

イ 引用発明2の「サセプタ30」は,本願発明9の「サセプタアセンブリ」に対応する。
そして,引用発明2の「サセプタ30」の「上面」は,「基板50を位置決め状態で保持する基板載置用ポケット31が形成され」,また,「ガス分散部材113」と対向するから,本願発明9の「サセプタアセンブリ」の「頂面」と,「前記頂面は内部に複数の凹部を有し,各凹部は処理中に基板を支持するようにサイズ決めされている」とともに,「前記ガス分配アセンブリの前記前面に面する」点で一致することは明らかである。
また,引用発明2の「サセプタ30」の「下面」が,本願発明9の「サセプタアセンブリ」の「底面」に相当する。
以上から,引用発明2の「サセプタ30」は,本願発明9の「サセプタアセンブリ」と,「前記ガス分配アセンブリの前記前面に面する頂面,及び底面を有するサセプタアセンブリであって,前記頂面は内部に複数の凹部を有し,各凹部は処理中に基板を支持するようにサイズ決めされているサセプタアセンブリ」である点で一致する。

ウ 引用発明2において「ヒータ10」は,本願発明9の「加熱要素」に対応する。
そして,引用発明2の「ヒータ10」は,「二次元的に屈曲する線状のパターンからなるプレート形状に形成され」,「第1部分11,第2部分12及び第3部分13の3つのパターンからなり,これら第1部分11,第2部分12及び第3部分13に対し,それぞれ個別に電流が印加されるようになっている」から,「材料の連続した部分を備え,複数の」「ゾーンのうち対応する」「ゾーンに配置され」ていることは明らかである。
すると,引用発明2の「ヒータ10」は,本願発明9の「加熱要素」と,「材料の連続した部分を備え,複数の」「ゾーンのうち対応する」「ゾーンに配置される少なくとも1つの加熱要素」である点で一致する。

エ 引用発明2の「気相成長用加熱装置150」は,「ヒータ10」を備えるから,本願発明9の「加熱装置」と,「加熱要素を含む加熱装置」である点で一致する。

オ 引用発明2の「チャンバ110」は,本願発明9の「処理チャンバ」に対応する。

カ したがって,本願発明9と引用発明2との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「前面を有するガス分配アセンブリと,
前記ガス分配アセンブリの前記前面に面する頂面,及び底面を有するサセプタアセンブリであって,前記頂面は内部に複数の凹部を有し,各凹部は処理中に基板を支持するようにサイズ決めされているサセプタアセンブリと,
少なくとも1つの加熱要素を含む加熱装置であって,前記少なくとも1つの加熱要素は,複数のゾーンのうち対応するゾーンに配置される,加熱装置と
を含む,処理チャンバ。」

(相違点)
(相違点3)「加熱装置」に関して,本願発明9は,「黒鉛を含み且つ頂面が前記サセプタアセンブリの前記底面に面している本体」を有しており,「加熱要素」が「前記本体内に」「含む」と特定されているのに対し,引用発明2は,そのように特定されていない点。

(相違点4)「加熱要素」に関して,本願発明9は,「複数の回転方向ゾーンのうち対応する回転方向ゾーンに配置され」ると特定され,かつ,「回転方向ゾーン」が「各回転方向ゾーンは前記加熱装置の中心の周囲に種々の角度で配置される」と特定されているのに対し,引用発明2は,そのように特定されていない点。

(2)相違点についての判断
ア 相違点4について
事案に鑑み,相違点4について検討する。
相違点4は,上記相違点2と同様の相違点である。
すると,上記相違点2についての検討と同様に,相違点4に対応する構成を備える本願発明9も,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明2及び引用文献2-3に基いて,容易に発明できたものであるとはいえない。
また,上記のとおり本願発明9は相違点4を含む発明であるから,引用発明2であるとはいえない。

4 本願発明10-15について
本願発明10-15は,本願発明9のすべての構成要素を備えた発明であるから,本願発明9と同じ理由により,当業者であっても,引用発明2及び引用文献2-3に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定について
本願発明1-8は,上記「第6 対比・判断」の「1 本願発明1について」の「(1)対比」における相違点2に係る構成を,本願発明9-15は,上記「第6 対比・判断」の「3 本願発明9について」の「(1)対比」における相違点4に係る構成を,それぞれ有するものとなっている。
すると,本願発明1,2,5,8,9は,拒絶査定において引用された引用文献1に記載された発明であるとはいえない。
そして,本願発明1-15は,拒絶査定において引用された引用文献1及び引用文献2-3に基いて,容易に発明できたものとはいえない。
したがって,原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-10-22 
出願番号 特願2018-508198(P2018-508198)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 113- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 智之田中 崇大  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 ▲吉▼澤 雅博
小田 浩
発明の名称 空間的原子層堆積用の加熱源  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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