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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1379475
審判番号 不服2021-6852  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-27 
確定日 2021-11-16 
事件の表示 特願2019-191150「部品実装機のカセット式フィーダ入替システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 1月16日出願公開、特開2020- 10069、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年2月4日を国際出願日とする特願2014-559480号の一部を平成28年10月21日に新たな特許出願とした特願2016-206592号の、その一部を平成30年2月7日に新たな特許出願とした特願2018-19838号の、さらにその一部を令和1年10月18日に新たな特許出願としたものであって、令和2年9月9日付けで拒絶理由通知がされ、同年10月30日に意見書が提出されるとともに手続補正され、令和3年3月1日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年5月27日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願の請求項1及び2に係る発明は、以下の引用文献1及び2に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:実願平04-091795号(実開平06-052192号)
のCD-ROM
引用文献2:国際公開第2011/046107号

第3 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、令和2年10月30日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりの発明である。

「【請求項1】
回路基板に部品を実装する部品実装機に対して、自身のフィーダIDを記録又は記憶した識別情報記録部を備えた複数のカセット式フィーダを入れ替えるフィーダ入替システムであって、
前記部品実装機の部品吸着位置に前記複数のカセット式フィーダを並べてセットする吸着作業エリアと、
前記カセット式フィーダを1個ずつセットするスロットが収容可能なフィーダ数分だけ形成され、前記各スロットにセットした前記カセット式フィーダの識別情報記録部からフィーダIDを読み取る識別情報読取り部が設けられ、前記吸着作業エリアの使用済みのカセット式フィーダと入れ替える次のカセット式フィーダを収納すると共に前記使用済みのカセット式フィーダを回収するフィーダストックエリアと、
前記部品実装機の前記吸着作業エリアから使用済みのカセット式フィーダを取り出して前記フィーダストックエリアに回収すると共に前記フィーダストックエリアから次のカセット式フィーダを取り出して前記吸着作業エリアに補給する入替ロボットと、
前記フィーダ入替システムを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記識別情報読取り部が前記カセット式フィーダの前記識別情報記録部から読み取った前記フィーダIDに基づいて、前記カセット式フィーダを識別するように構成されていることを特徴とする部品実装機のフィーダ入替システム。

【請求項2】
回路基板に部品を実装する部品実装機に対して、自身のフィーダIDを記録又は記憶した識別情報記録部を備えた複数のカセット式フィーダを入れ替えるフィーダ入替システムであって、
前記部品実装機の部品吸着位置に前記複数のカセット式フィーダを並べてセットする吸着作業エリアと、
前記カセット式フィーダを1個ずつセットするスロットが収容可能なフィーダ数分だけ形成され、前記各スロットにセットした前記カセット式フィーダの識別情報記録部からフィーダIDを読み取る識別情報読取り部が設けられ、該識別情報読取り部で読み取ったフィーダIDをフィーダ入替システムの制御装置に送信して、前記各スロットにセットした前記カセット式フィーダの部品種を自動認識し、前記吸着作業エリアの使用済みのカセット式フィーダと入れ替える次のカセット式フィーダを収納すると共に前記使用済みのカセット式フィーダを回収するフィーダストックエリアと、
前記部品実装機の前記吸着作業エリアから使用済みのカセット式フィーダを取り出して前記フィーダストックエリアに回収すると共に前記フィーダストックエリアから次のカセット式フィーダを取り出して前記吸着作業エリアに補給する入替ロボットと、
前記フィーダ入替システムを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記識別情報読取り部が前記カセット式フィーダの前記識別情報記録部から読み取った前記フィーダIDに基づいて、前記カセット式フィーダを識別するように構成されていることを特徴とする部品実装機のフィーダ入替システム。」

第4 引用文献に記載された事項及び引用発明
1 引用文献1に記載された事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。
ア「【0002】
【従来の技術】
本出願人により、フィーダ部にディスクパックを利用したチップ部品装着機が提案されている。ディスクパックは、連続的に周回する収納路にチップ部品を整列させて多数収納したものであり、交換性が良いため、フィーダ部にディスクパックを利用した場合、チップ部品が無くなった空きのディスクパックを新しいディスクパック(チップ部品がはいったもの)と交換することで、チップ部品装着機の装着ヘッドに対しプリント基板に装着すべきチップ部品をフィーダ部から継続的に供給できる。従って、部品切れをなくしてチップ部品装着機の長時間の稼働を可能にできる。」

イ「【0008】
図1及び図2において、1はチップ部品装着機の基台であって、該基台1上には連続的に周回する収納路にチップ部品を収納したディスクパック2を交換自在に保持するフィーダ部8が配設され、さらに基台1の階段状に一段下がった面1Aに予備のディスクパック2を交換自在に保持するストッカ部9が配設されている。フィーダ部8及びストッカ部9は各ディスクパック2を垂直に立てた状態で出し入れ自在に支えるガイド等を有している。
【0009】
図3のように、前記ディスクパック2は、連続的に周回する収納路6に所定の品種のチップ部品を収納したもので、収納路の先端部となる上辺左端にチップ部品を吸着可能に露出する吸着ステージSTがあり、チップ部品装着機の装着ヘッドが具備する吸着ノズルで当該吸着ステージSTに位置するチップ部品を吸着できるようになっている。また、ディスクパック2の吸着ステージとは反対側(右側)の上下位置に交換用係合部3が形成されている。さらに、図3の如く、ディスクパック2の交換用係合部3が形成されている背面側端面4に当該ディスクパック内に収納されているチップ部品の品種を表すバーコード5が付されている(例えばバーコード5を印刷したシールが貼り付けられている。)」

ウ「【0016】
次に上記実施例の動作説明を行う。前記フィーダ部8には各ディスクパック2内のチップ部品残量を検出する部品センサが設けられており、特定のディスクパック2のチップ部品無しを検出すると、この検出結果に基づきハンド部20を持つ交換手段が動作を開始する。すなわち、ハンド部20の開閉及びX-Y-Z方向の動作を利用してフィーダ部8の空きのディスクパック2を取り出し、ストッカ部9の空きディスクパック格納領域に戻した後、ハンド部20で前記部品切れのディスクパックと同品種の(同品種のチップ部品を収納した)ディスクパック2を前記バーコードリーダー45をX方向に移動させながら捜し、前記部品切れのディスクパックと同一のバーコード5が付されたものを見いだす。そして、同一バーコードの新規なディスクパック2をハンド部20の開閉及びX-Y-Z方向の動きを利用してストッカ部9からチャックしてフィーダ部8に移動し、そのディスクパックをフィーダ部8に挿入する。その際、ディスクパック2のフィーダ部8への挿入必要量とハンド部20の挿入時移動量とのずれは平行バー70A,70Bの先端面に固定されたボールプランジャ72で吸収するようになっている。すなわち、挿入動作の最後にボールプランジャ72のボールがディスクパック2の後端面に当接して、当該ディスクパック2をフィーダ部8で位置決めされるまで押し込む。」

エ 【図1】からは、フィーダ部8及びストッカ部9において、複数のディスクパック2を並べて保持する構成が見て取れる。

上記ア?ウの記載事項及び上記エの図示内容を総合し、本願の請求項1の記載ぶりに則って整理すると、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「プリント基板にチップ部品を装着するチップ部品装着機に対して、チップ部品の品種を表すバーコード5が付された複数のディスクパック2を交換する交換手段であって、
前記チップ部品装着機の吸着ステージSTに前記複数のディスクパック2を並べて保持するフィーダ部8と、
前記フィーダ部8の部品切れのディスクパック2と交換する新規なディスクパック2を保持すると共に前記部品切れのディスクパック2を空きディスクパック格納領域に戻すストッカ部9と、
部品切れのディスクパック2と同一のバーコード5が付された新規なディスクパック2を見いだすためのバーコードリーダー45と、
前記チップ部品装着機の前記フィーダ部8から部品切れのディスクパック2を取り出して前記ストッカ部9の空きディスクパック格納領域に戻すと共に、前記ストッカ部9から前記新規なディスクパック2を取り出して前記フィーダ部8に挿入する、開閉及びX-Y-Z方向に動作するハンド部20と、
を備えるチップ部品装着機の交換手段。」

2 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面(特に[図23]参照)とともに、次の事項が記載されている。
「[0075] 部品供給ユニット330のユニット収納台672への取付け後、基準マーク撮像装置28が移動させられ、ユニット収納台672に収納されている部品供給ユニット330の二次元コード650を撮像する。部品供給ユニット330の前端部の上面の高さは、回路基板保持装置22により保持された回路基板40の上面である装着面と同じ高さに位置し、基準マーク撮像装置28は、回路基板40の基準マーク(図示省略)と同様に二次元コード650を撮像することができる。撮像データは画像処理ユニット662により処理され、部品供給ユニット330に収容されている部品366の種類が取得される。この種類は、コントローラ32のコンピュータへ送られ、部品供給ユニット330の収納位置と対応付けて、予備ユニット収納データとして、コンピュータのRAMに設けられた部品供給ユニット収納データ記憶部としての予備ユニット収納データメモリに記憶させられる。本実施形態においては、基準マーク撮像装置28および画像処理ユニット662が情報取得装置を構成している。(省略)」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「プリント基板」は、本願発明1の「回路基板」に相当し、以下同様に、
「チップ部品」は「部品」に、
「装着する」ことは「実装する」ことに、
「チップ部品装着機」は「部品実装機」に、
「ディスクパック2」は「カセット式フィーダ」に
「交換する」ことは「入れ替える」ことに、
「交換手段」は「フィーダ入替システム」に、
「吸着ステージST」は「部品吸着位置」に、
「保持する」ことは「セットする」ことに、
「フィーダ部8」は「吸着作業エリア」に、
「部品切れのディスクパック2」は「使用済みのカセット式フィーダ」に、
「新規なディスクパック2」は「次のカセット式フィーダ」に、
「新規なディスクパック2を保持する」ことは「次のカセット式フィーダを収納する」ことに
「空きディスクパック格納領域に戻す」ことは「回収する」ことに、
「ストッカ部9」は「フィーダストックエリア」に、
「挿入する」ことは「補給する」ことに、
「開閉及びX-Y-Z方向に動作するハンド部20」は「入替ロボット」に、それぞれ相当する。

また、引用発明の「バーコード5が付された」ことは、そのバーコード5が「チップ部品の品種を表す」ものであって、「部品切れのディスクパック2と同一のバーコード5が付された新規なディスクパック2を見いだす」ために用いられる点からみて、「識別情報」を「記録」していることに限り、本願発明1の「識別情報記録部を備えた」ことと一致するといえる。

そして、引用発明の「交換手段」においては、バーコードリーダー45で見いだした「同一のバーコード5が付された」「部品切れのディスクパック2」と「新規なディスクパック2」とを、ハンド部20によって交換する構成を有することからみて、引用発明の「交換手段」は、バーコードリーダー45及びハンド部20を制御する制御手段を実質的に有すると認められる。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点及び相違点1?3がある。

[一致点]
「回路基板に部品を実装する部品実装機に対して、識別情報を記録している複数のカセット式フィーダを入れ替えるフィーダ入替システムであって、 前記部品実装機の部品吸着位置に前記複数のカセット式フィーダを並べてセットする吸着作業エリアと、
前記吸着作業エリアの使用済みのカセット式フィーダと入れ替える次のカセット式フィーダを収納すると共に前記使用済みのカセット式フィーダを回収するフィーダストックエリアと、
前記部品実装機の前記吸着作業エリアから使用済みのカセット式フィーダを取り出して前記フィーダストックエリアに回収すると共に前記フィーダストックエリアから次のカセット式フィーダを取り出して前記吸着作業エリアに補給する入替ロボットと、
前記フィーダ入替システムを制御する制御装置と、
を備える部品実装機のフィーダ入替システム。」

[相違点1]
本願発明1の識別情報記録部は、「自身のフィーダIDを記録又は記憶した」ものであるのに対し、引用発明のバーコードは、チップ部品の品種を表すものである点。
[相違点2]
本願発明1のフィーダストックエリアには、「カセット式フィーダを1個ずつセットするスロットが収容可能なフィーダ数分だけ形成され」ているのに対し、引用発明は、このような構成を有しない点。
[相違点3]
本願発明1のフィーダストックエリアには、「前記各スロットにセットした前記カセット式フィーダの識別情報記録部からフィーダIDを読み取る識別情報読取り部が設けられ」ており、本願発明1の制御装置は「前記識別情報読取り部が前記カセット式フィーダの前記識別情報記録部から読み取った前記フィーダIDに基づいて、前記カセット式フィーダを識別するように構成されている」のに対し、引用発明は、このような構成を有しない点。

(2)判断
相違点1について検討する。
引用発明のバーコード5は、チップ部品の品種を表すものであるから、同一のバーコード5が複数のディスクパック2に付されることも可能となっており、ディスクパック2自体のIDとして機能するものではない。したがって、引用発明のバーコード5は、本願発明1の「自身のフィーダID」と実質的に同じものとはいえない。
そして、引用発明においては、「同一のバーコード5が付された」ものを見いだすことで、部品切れのディスクパック2を交換する構成を有するため、引用発明のバーコード5を、本願発明1の「自身のフィーダID」と同様のものに置き換える動機付けはない。

また、引用文献2には、部品供給ユニット330の二次元コード650の撮像データを処理し、部品供給ユニット330に収容されている部品366の種類を取得してコンピュータへ送り記憶する技術手段が記載されているものの、この二次元コード650は、部品供給ユニット330に収容されている部品366の種類に対応したものであり、部品供給ユニット330自体のIDにあたらない。
そうすると、引用発明に引用文献2に記載された技術手段を適用しても、上記相違点1に係る本願発明1の構成に至らない。

そうであれば、相違点2及び3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術手段に基いて容易に発明することができたものでない。

2 本願発明2について
本願発明2は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに
「該識別情報読取り部で読み取ったフィーダIDをフィーダ入替システムの制御装置に送信して、前記各スロットにセットした前記カセット式フィーダの部品種を自動認識し、」
という事項を限定したものであるから、本願発明2と引用発明との間には、少なくとも、相違点1が存在する。
したがって、本願発明2は、上記1(2)で述べた理由と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術手段に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について
上記「第5」において説示のとおり、補正後の請求項1及び2に係る発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術手段に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-11-01 
出願番号 特願2019-191150(P2019-191150)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 板澤 敏明  
特許庁審判長 間中 耕治
特許庁審判官 内田 博之
田村 嘉章
発明の名称 部品実装機のカセット式フィーダ入替システム  
代理人 加古 宗男  

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