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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1379486
審判番号 不服2021-1512  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-02-03 
確定日 2021-11-26 
事件の表示 特願2019-149882「制御装置及び制御方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 3月19日出願公開,特開2020- 43337,請求項の数(4)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成28年2月25日に出願した特願2016-34317号の一部を令和元年8月19日に新たな特許出願としたものであって,同年8月19日付けで上申書が提出され,令和2年7月13日付けで拒絶理由通知がされ,同年9月14日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ,同年11月4日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,令和3年2月3日に拒絶査定不服審判の請求がされ,同年6月23日付けで当審より拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由通知」という。)がされ,同年8月18日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年11月4日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1?4,7,8に係る発明は,以下の引用文献Aに記載された発明に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2005-250401号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

1 本願請求項1?4に係る発明は,以下の引用文献1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないか,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2 この出願は,特許請求の範囲の記載が,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

引用文献等一覧
1.特開2006-308884号公報(当審において新たに引用した文献)

第4 本願発明
本願請求項1?4に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」?「本願発明4」という。)は,令和3年8月18日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
ワークの表面を撮像して複数の色成分を有する画像を取得する撮像部と,
前記撮像部が撮像した画像から画素毎の色相角データを採取し,前記色相角データに基づいて前記ワークの表面の色を認識する認識部と,
前記認識部が認識した結果に基づいて,前記ワークの表面の色の色相角に応じた係数を算出し,算出した係数に応じた画像データを合成する合成部と,
前記合成部で合成した画像に基づいて被制御装置の制御を行う制御部と,
を備える制御装置。」

なお,本願発明2?3は,本願発明1を減縮した発明である。また,本願発明4は,本願発明1に対応する方法の発明であり,本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。

第5 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
当審拒絶理由に引用された引用文献1(特開2006-308884号公報)には,次の事項が記載されている。
「【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下,図面を参照し,本発明を実施するための最良の形態について説明する。本実施形態におけるAF処理は,画像情報(画像データ)を用いたAF処理であり,例えば被検査対象等の観察対象物または観察系をZ方向に駆動させて画像情報を取得し,エッジ等のようなコントラストを表す評価値(コントラスト評価値)を画像情報から算出し,コントラスト評価値が極大となるZ位置に検査対象物または観察系を移動させることによって,合焦位置を得るようにしている。
【0027】
図1は,本発明の第1の実施形態による検査装置の構成を示す概略構成図である。本実施形態による検査装置には顕微鏡が搭載され,顕微鏡に付随して,本発明のオートフォーカス(AF)処理を行うオートフォーカス(AF)装置が搭載されている。図1において,AF装置12は,XYZステージ1のZ方向の移動を制御する移動制御部3と,コントラスト評価値や合焦位置の演算等を行う演算部13とから構成される。本実施形態においては,本発明のオートフォーカス装置を液晶等のフラットパネルディスプレイ(FPD)の基板や半導体ウェハ等の基板検査装置もしくはレーザリペア装置へ適用した例を用いて説明を行うが,オートフォーカス装置の適用はこれに限定されるわけではない。
【0028】
XYZステージ1上には,被検査対象として例えばFPDガラス基板2(観察対象物)が載置されている。XYZステージ1は,X方向,Y方向,Z方向にそれぞれステージを移動させる直流または交流のX方向モータ,Y方向モータ,Z方向モータを有する。X方向,Y方向,Z方向の各モータは等速度駆動とマイクロステップ駆動を可能とする。XYZステージ1は,AF装置12内の移動制御部3から出力される移動指示を受けて,駆動制御される。移動制御部3は,XYZステージ1に対して,Z方向への上昇または下降の移動指示を出力する。
【0029】
XYZステージ1は,Z方向の移動指示を受けたときに,Z方向モータの駆動によって,等速で連続的に,または所定のピッチでZ方向に上昇または下降する。これと共に移動制御部3は,連続して上昇または下降するXYZステージ1の高さ情報(Z位置)を検出する。XYZステージ1の上方には観察光学系4を介してカラーの画像情報を得るためのCCDカメラ5が設けられている。なお,本実施形態においては,XYZステージ1が駆動され,Z方向に移動するとしているが,観察光学系4がZ方向に移動してもよい。いずれにせよ,観察対象物と観察光学系4との間の距離(間隔)を変更可能なように検査装置が構成されていればよい。
【0030】
観察光学系4は,光軸p上に配置される対物レンズ6およびリレーレンズ7,8を有する。照明装置9から出力される照明光は照明用リレーレンズ10を介してハーフミラー11に入射する。ハーフミラー11は,観察光学系4の光軸p上に設けられている。これにより,照明装置9から出力された照明光は,ハーフミラー11で下方に反射され,リレーレンズ7および対物レンズ6を通ってFPDガラス基板2上に照射される。CCDカメラ5は,XYZステージ1上に載置されているFPDガラス基板2を撮像して画像情報を生成し,AF装置12へ出力する。
【0031】
CCDカメラ5から出力される画像情報は,複数の色に関する輝度情報(以降,色別画像情報と称す)から構成され,例えば,R(赤),G(緑),B(青)の3つの色別画像情報からなるものとする。出力された画像情報はAF装置12内の演算部13に入力される。演算部13において,後述するAF処理を始めとする各種の演算が行われる。ディスプレイ14にはCCDカメラ5からの画像情報が,演算部13を介して入力され,ディスプレイ14は,画像情報に基づいて画像を表示する。
【0032】
図2は,本実施形態によるAF装置12の内部構成を示すブロック図である。図2においては,移動制御部3および演算部13のそれぞれの構成が図示されている。移動制御部3において,駆動モータ用パルス出力部21は,XYZステージ1が有するZ方向モータを駆動するためのパルスをXYZステージ1へ出力する。本実施形態では,単位時間あたりのパルス数をZ方向モータ駆動のパルスとして定義する。パルスを変更することによって,Z方向モータの速度,すなわちXYZステージ1のZ方向への移動速度を変更することができる。
【0033】
駆動モータ用パルス出力部21にはパルスを制御する信号がCPU24から入力され,この信号に基づいて駆動モータ用パルス出力部21は,XYZステージ1が有するZ方向モータへ出力するパルスを制御する。駆動モータ用パルス読み取り部22は,XYZステージ1が有するZ方向モータの現在のパルス数を読み取る。Z位置算出部23は,駆動モータ用パルス出力部21に出力されるCPU24からのパルス数の指示情報,または駆動モータ用パルス読み取り部22が読み取ったパルス数を用いて,FPDガラス基板2と観察光学系4との間の距離に対応した現在のZ位置を算出する。
【0034】
演算部13において,CPU24は演算部13全体の処理の制御を行う。カメラ画像取り込み部25は,CCDカメラ5から出力された画像情報を取り込む。コントラスト評価値算出部26は,カメラ画像取り込み部25によって取り込まれた画像から,後述する方法によりコントラスト評価値を算出する。経過時間計測用カウンタ部27は,経過時間に関するカウンタであり,任意のタイミングでの初期化が可能である。
【0035】
カウンタ読み取り部28は,経過時間計測用カウンタ部27のカウンタの値を読み取る。このカウンタの値は,Z位置算出部23によるZ位置の算出のタイミングや,コントラスト評価値算出部26によるコントラスト評価値の算出のタイミング(より具体的にはコントラスト評価値の算出に用いられる画像情報の取得のタイミング)を示す情報として利用されるものである。Z位置記憶部29は,Z位置算出部23によって算出されたZ位置を記憶するためのメモリである。カウンタ記憶部30は,カウンタ読み取り部28によって読み取られたカウンタの値を記憶するためのメモリである。コントラスト評価値記憶部31は,コントラスト評価値算出部26によって算出されたコントラスト評価値を記憶するためのメモリである。
【0036】
コントラスト評価値極大値判定部32は,複数のコントラスト評価値を用いて,現時点での最大値が極大値として妥当であるか否かを判定する。コントラスト評価値極大Z位置算出部33は,コントラスト評価値極大値判定部32によって,極大値が妥当であると判定された場合に,極大値に対応するZ位置(合焦位置)を算出する。走査方式選択部34は,CCDカメラ5から出力される画像情報の走査方式を選択する。本実施形態ではインターレース走査方式とプログレッシブ走査方式のいずれかを選択できるものとする。走査方式の検出は,例えば画像情報から走査方式を検出したり,トリガー信号の間隔を検出したりすることによって行われる。色情報選択部35は,カメラ画像取り込み部25によって取り込まれた画像情報に基づいて,コントラスト評価値算出部26で使用される画像情報の色を選択する。本実施形態ではR(赤),G(緑),B(青),C(シアン),M(マゼンダ),Y(黄),K(グレースケール),A(全ての色)のいずれかを選択できるものとする。
・・・
【0043】
続いて,コントラスト評価値極大値判定部32は,コントラスト評価値極大Z位置算出部33に対して,画像のコントラストが極大となったZ位置(合焦位置)の算出を指示する。コントラスト評価値極大Z位置算出部33は指示を受けて,極大値をとるコントラスト評価値,および時間的に極大値の前後に取得された複数のコントラスト評価値を,コントラスト評価値極大値判定部32を経由してコントラスト評価値記憶部31から読み出す。また,コントラスト評価値極大Z位置算出部33は,取得したコントラスト評価値を算出したタイミングに対応するカウンタの値をカウンタ記憶部30から読み出し,取得したカウンタの値に近いタイミングで取得された複数のZ位置もZ位置記憶部29から読み出す。
【0044】
コントラスト評価値極大Z位置算出部33は,読み出した値を利用して,後述する方法により,コントラストが実質的に極大を示すZ位置,すなわち合焦位置を算出する。コントラスト評価値極大Z位置算出部33によって算出された,合焦位置を示すZ位置はCPU24に出力される。CPU24は,指定されたZ位置にXYZステージ1を動かすように,駆動モータ用パルス出力部21に指示を出し,XYZステージ1のZ方向モータを駆動させる。
【0045】
次に,コントラスト評価値算出部26の構成を説明する。図3は,コントラスト評価値算出部26の内部構成を示すブロック図である。図3は,カメラ画像取り込み部25から出力された画像情報を用いてコントラスト評価値を算出し,算出結果をコントラスト評価値記憶部31に出力するまでの処理の流れを主に示しており,例えば図2を用いて説明した,CPU24によって指示されるカメラ画像取り込み部25の画像情報の取得に関する処理の流れは特に示していない。
【0046】
カメラ画像取り込み部25から出力された画像情報は,色情報指定部41に入力される。色情報指定部41は,色情報選択部35によって選択された色に従って,コントラスト評価値の算出に用いる特定の色別画像情報を決定する。例えば画像情報が「R」,「G」,「B」の色別画像情報からなる場合,色情報選択部35によって「G(緑)」が指定された場合には,「G」に関する色別画像情報が,「M(マゼンダ)」が指定された場合には,「R」と「G」に関する色別画像情報が,コントラスト評価値の演算に用いる画像情報として決定され,該当する色別画像情報が出力される。」

「【0092】
次に,本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態によるオートフォーカス装置の構成は,第1の実施形態と基本的には同じであるので,第1の実施形態と異なる箇所のみ説明する。第1の実施形態と異なる箇所は,XYZステージ1のZ方向モータの駆動速度の変更方法と,色情報指定部41での処理である。
【0093】
まず,Z方向モータの駆動速度の変更方法を,図10を用いて説明する。図10は,本実施形態におけるAF処理の手順を示すフローチャートである。AF処理の手順は,基本的には図5に示される手順と同じであるが,異なる点はステップS121およびS122の処理である。第1の実施形態では最新のコントラスト評価値の変化に基づいて,Z方向モータの速度が変更されるが,本実施形態では画像情報の取得タイミングを示すカウンタの値に基づいて,1つのコントラスト評価値の算出に関する時間がチェックされ,その時間に応じてZ方向モータの駆動速度が変更される。
【0094】
ここで,Z方向モータの駆動を開始する際の「初速度」について説明する。Z方向モータが駆動中の状態でコントラスト評価値を算出する場合,時間的に隣接するコントラスト評価値の取得間隔,すなわち画像情報の取得間隔でXYZステージ1がZ方向にどれだけ移動するのか(Z方向モータがどの程度の速度でXYZステージ1を移動させるのか)ということがAF処理の精度に影響する。そこで,駆動開始時の速度を設定する要素として,観察系の焦点深度をとりあげる。
【0095】
この観察系の焦点深度とは,対物レンズ6やCCDカメラ5のレンズ等,観察に関わるレンズ全体から決まる焦点深度を指す。すなわち,焦点深度の距離だけXYZステージ1が動く間に,1つの画像情報に関するコントラスト評価値が算出されるようにする。観察系の焦点深度をDOFとし,1つの画像情報に関するコントラスト評価値の算出時間(カウンタ値)をΔTC_(C)として,Z方向モータ駆動開始時の初速度Vz0を(7)式で与えるようにする。
Vz0=DOF/ΔTC_(C) ・・・(7)
【0096】
(7)式で与えられるコントラスト評価値の算出時間(カウンタ値)ΔTC_(C)は,例えばコントラスト評価値の算出自体が10ミリ秒以下というオーダーで行われる場合には,1つの画像情報を取得する時間を目安に与え,CCDカメラ5の走査方式がインターレース走査方式である場合には,1フレームの画像の走査時間(33ミリ秒)を目安に与えればよい。
【0097】
初速度Vz0が設定され,実際に駆動が開始されて,AF処理が行われていくと,装置内部の処理負荷の増加によって,画像情報を取得する時間の間隔が広がることが考えられる。その場合に,(7)式で設定された速度を維持したままで処理が行われると,コントラスト評価値を算出する時間的間隔が広がり,近似関数で合焦位置を推定するところで精度が低下してしまう懸念がある。そこで,本実施形態ではステップS121において,CPU24は,最新の画像情報を取得したときのカウンタ値と,最新から時間的に1つ前の画像情報を取得したときのカウンタ値との差を求め,これがしきい値Th2以上であった場合には,コントラスト評価値の算出の間隔が広がっており,このままではAF処理の精度が悪くなると判断する。
【0098】
カウンタ値の差がしきい値Th2以上であった場合に,CPU24は,ステップS122において,カウンタ値の差に応じて,Z方向モータの駆動速度を遅くするように制御する。例えば,(7)式で与えられているコントラスト評価値の算出時間(カウンタ値)ΔTC_(C)に対して,カウンタ値の差がどの程度の割合で増加しているか等を目安にして,カウンタ値の差が2フレームの画像の走査時間(66ミリ秒)前後であれば,CPU24は駆動速度を現在の1/2にする等の制御を行う。
【0099】
次に,本実施形態の色情報指定部41での処理を,図11を用いて説明する。図11は,本実施形態において,画像情報に基づいて,コントラスト評価値の算出に用いる色情報を推定する方法を示している。第1の実施形態では色情報選択部35がコントラスト評価値の算出に使用する色を選択し,色情報指定部41が,実際に必要とする色別画像情報を取り出すようにしていたが,本実施形態の色情報指定部41は,コントラスト評価値の算出に用いる色別画像情報を,画像情報に基づいて自動的に指定する。なお,画像情報はRGBカラーで構成されているものとする。
【0100】
色情報指定部41は,カメラ画像取り込み部25から入力された画像情報に関してHSL変換を行い,色相情報(H)を取り出す。色相は,標準カラーホイールの位置で決まる角度として表され,範囲は0°?360°である。本実施形態ではB(青)を基準(0°および360°)として色相情報が算出される。続いて,色情報指定部41は,算出した色相情報に関して,図11のようなヒストグラムを作成する。このヒストグラムは,横軸を色相,縦軸を頻度としたものである。このうち横軸は,色相が6色(R,G,B,C,M,Y)に分割され,さらに1つの色について,角度に応じて6個の区間に分割されている。
【0101】
図11は,グリーン系のカラーフィルタが挿入された観察系の画像情報から得られた色相情報のヒストグラムの一例を示している。色情報指定部41は,1画素の情報につき1つの頻度を計上するが,画面全体の色相の傾向を調べる意味では,例えば隣接する4画素や9画素の平均から1つの色相情報を求めて1つの頻度を計上してもよい。また,グレースケールの画像情報が入力されることを考慮して,HSL変換時に求められる彩度情報(S)を調べた上で,色相情報をヒストグラムに追加するか否かを決めるようにしてもよい。彩度情報を使用する場合,例えば彩度が256階調で表される(最小0が彩度なしのグレー,最大255が純色)として,彩度が25階調以下であれば,同じところで算出された色相情報はヒストグラムには追加しない等といった処理が行われる。
【0102】
続いて,色情報指定部41は,色相情報のヒストグラムに基づいて,頻度が最も多い色相を選ぶ。頻度が最も多い色相は,画像情報において支配的な「色」となる。図11では「Yellow」(黄)の区間が,最も頻度の多い区間である。これにはグリーン系のカラーフィルタの他に照明光やレンズ等の要因が含まれる。また,グレースケールの画像情報が入力されることを考慮して,頻度がある一定値より少ない区間のヒストグラムが色相の選択には使用されないようにしてもよい。例えば,図11で横軸(色相)に平行な「有効最小頻度」を設定し,頻度が有効最小頻度未満のものは色相選択の対象から外すようにする。すると,実際には「Yellow」と「Green」(緑)のいずれかから,頻度が最も多い色相が選ばれるようになる。
【0103】
続いて,色情報指定部41は,画像情報において支配的な「色相」に対する「補色」を決定し,これをコントラスト評価値の算出に使用する色別画像情報として決定する。画像情報で支配的な「色」に該当する輝度情報は比較的大きい(明るい)傾向となるため,最大輝度付近に飽和する可能性がある。飽和に近い輝度情報は,階調が十分に再現できていないため,コントラスト評価値の算出にその輝度情報を使用すると,コントラスト評価値を適切に算出することができない。このことを踏まえ,画像情報で支配的な「色」に対して,反対の「色」=「補色」は,飽和に近い輝度情報が少ないため,「補色」を用いれば適切なコントラスト評価値を算出することができる。例えば,図11で頻度が最も多い色相が「Yellow」であれば,その補色は「Blue」(青)であるから,RGBからなる画像情報のうちB(青)の色別画像情報を用いてコントラスト評価値が算出される。以降のコントラスト評価値の算出については第1の実施形態と同様の方法がとられる。
【0104】
このように画像情報の色相を調べ,画像情報で支配的な「色」の「補色」からなる色別画像情報をコントラスト評価値の算出に利用することによって,画面の色の影響を最小限にした精度の高いAF処理が可能となる。なお,「補色」を決定する処理を,画像情報が入力される度に行う必要はない。例えば,検査装置や顕微鏡のセッティングの段階で基準の被検査対象を用いて1度だけ処理を行う,または最初の検査において被検査対象を撮像した画像情報を用いて1度だけ処理を行う等によって決定した色情報を以降の検査に反映させるようにしてもよい。また,被検査対象の種類や観察方法によって画像情報の「色相」が異なる場合は,検査条件に関する情報を活用すればよい。例えば,別途に色情報に関する記憶部を設け,検査条件に対応した「補色」の情報をその記憶部に記憶させ,実際の検査では検査条件から「補色」の情報を引き当てるようにする等としてもよい。」

「【図1】

【図2】

【図3】



「【図10】

【図11】



(2)引用文献1に記載された発明
ア 引用文献1の【0027】?【0031】には,被検査対象としてのFPDガラス基板2を撮像して,R(赤),G(緑),B(青)の3つの色別画像情報からなる画像情報を出力するCCDカメラ5と,XYZステージ1のZ方向の移動を制御する移動制御部3と,コントラスト評価値や合焦位置の演算等を行う演算部13と,を備えるオートフォーカス装置が記載されている。
引用文献1の【0032】,【0034】,【0036】,【0045】?【0046】,【図2】及び【図3】には,移動制御部3に駆動モータ用パルス出力部21が含まれること,演算部13に,コントラスト評価値算出部26及びコントラスト評価値極大Z位置算出部33が含まれること,また,コントラスト評価値算出部26に,色情報指定部41が含まれることが記載されている。
また,引用文献1の第2の実施形態(【0092】?【0104】参照)には,色情報指定部41が,カメラ画像取り込み部25から入力された画像情報に関して,0°?360°の色相情報を算出し(【0100】参照),1画素の情報につき1つの頻度を計上した色相情報のヒストグラム(【0101】参照)に基づいて,頻度が最も多い色相を選び(【0102】参照),該色相に対する補色の色別画像情報を決定し,決定した前記色別画像情報を用いてコントラスト評価値を算出(【0103】参照)することが記載されている。
そして,引用文献1には,コントラスト評価値極大Z位置算出部33が,前記コントラスト評価値から合焦位置を算出し,CPU24が,前記合焦位置を示すZ位置にXYZステージ1を動かすように,駆動モータ用パルス出力部21に指示を出すこと(【0036】,【0043】?【0044】参照)が記載されている。
さらに,引用文献1の【0101】には,前記ヒストグラムへの色相情報について,例えば,256階調で表される彩度が25階調以下であれば,色相情報を前記ヒストグラムに追加しないことが記載されている。

以上によれば,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明1A」という。)が記載されていると認められる。

「被検査対象としてのFPDガラス基板2を撮像して,R(赤),G(緑),B(青)の3つの色別画像情報からなる画像情報を出力するCCDカメラ5と,XYZステージ1のZ方向の移動を制御する移動制御部3と,コントラスト評価値や合焦位置の演算等を行う演算部13と,を備えるオートフォーカス装置において,
前記演算部13に含まれる色情報指定部41は,カメラ画像取り込み部25から入力された画像情報に関して,0°?360°の色相情報を算出し,1画素の情報につき1つの頻度を計上した色相情報のヒストグラムに基づいて,頻度が最も多い色相を選び,該色相に対する補色の色別画像情報を決定し,決定した前記色別画像情報を用いてコントラスト評価値を算出し,
前記演算部13に含まれるコントラスト評価値極大Z位置算出部33は,前記コントラスト評価値から合焦位置を算出し,CPU24は,前記合焦位置を示すZ位置にXYZステージ1を動かすように,前記移動制御部3に含まれる駆動モータ用パルス出力部21に指示を出す,
オートフォーカス装置。」

イ 前記アにおける検討によれば,引用文献1には,演算部13に含まれる色情報指定部41,演算部13に含まれるコントラスト評価値極大値判定部32,CPU24によってオートフォーカス装置を制御する方法が記載されているといえるから,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明1B」という。)が記載されていると認められる。

「被検査対象としてのFPDガラス基板2を撮像して,R(赤),G(緑),B(青)の3つの色別画像情報からなる画像情報を出力するCCDカメラ5と,XYZステージ1のZ方向の移動を制御する移動制御部3と,コントラスト評価値や合焦位置の演算等を行う演算部13と,を備えるオートフォーカス装置の制御方法であって,
前記演算部13に含まれる色情報指定部41において,カメラ画像取り込み部25から入力された画像情報に関して,0°?360°の色相情報を算出し,1画素の情報につき1つの頻度を計上した色相情報のヒストグラムに基づいて,頻度が最も多い色相を選び,該色相に対する補色の色別画像情報を決定し,決定した前記色別画像情報を用いてコントラスト評価値を算出するステップと,
前記演算部13に含まれるコントラスト評価値極大Z位置算出部33において,前記コントラスト評価値から合焦位置を算出し,CPU24は,前記合焦位置を示すZ位置にXYZステージ1を動かすように,前記移動制御部3に含まれる駆動モータ用パルス出力部21に指示を出すステップと,
を含むオートフォーカス装置の制御方法。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1Aとを対比する。
ア 引用発明1Aの「被検査対象としてのFPDガラス基板2」は,本願発明1の「ワーク」に相当する。
また,引用発明1Aの「被検査対象としてのFPDガラス基板2を撮像して,R(赤),G(緑),B(青)の3つの色別画像情報からなる画像情報を出力するCCDカメラ5」は,本願発明1の「ワークの表面を撮像して複数の色成分を有する画像を取得する撮像部」に相当する。

イ 引用発明1Aの「前記演算部13に含まれる色情報指定部41は,カメラ画像取り込み部25から入力された画像情報に関して,0°?360°の色相情報を算出し」は,CCDカメラ5が撮像した画像から,色相角データを採取しているといえ,また,「1画素の情報につき1つの頻度を計上した色相情報のヒストグラムに基づいて,頻度が最も多い色相を選び」は,1画素の情報につき1つの頻度を計上した色相情報のヒストグラムに基づいて前記被検査対象としてのFPDガラス基板2の表面の色を認識しているといえるから,引用発明1Aの「前記演算部13に含まれる色情報指定部41」のうち,「カメラ画像取り込み部25から入力された画像情報に関して,0°?360°の色相情報を算出し,1画素の情報につき1つの頻度を計上した色相情報のヒストグラムに基づいて,頻度が最も多い色相を選」ぶ部分(以下,単に「認識する部分」という。)は,本願発明1の「前記撮像部が撮像した画像から画素毎の色相角データを採取し,前記色相角データに基づいて前記ワークの表面の色を認識する認識部」に相当する。

ウ 引用発明1Aの「前記演算部13に含まれるコントラスト評価値極大Z位置算出部33は,前記コントラスト評価値から合焦位置を算出し,CPU24は,前記合焦位置を示すZ位置にXYZステージ1を動かすように,前記移動制御部3に含まれる駆動モータ用パルス出力部21に指示を出し」において,CPU24は,XYZステージ1の制御を行っているといえるから,引用発明1Aの「XYZステージ1」,「CPU24」は,それぞれ,本願発明1の「被制御装置」,「制御部」に相当し,そして,引用発明1Aの「前記合焦位置を示すZ位置にXYZステージ1を動かすように指示を出」す「CPU24」は,本願発明1の「被制御装置の制御を行う制御部」である点で共通する。

以上から,本願発明1と引用発明1Aの一致点と相違点は以下のとおりとなる。

<一致点>
「ワークの表面を撮像して複数の色成分を有する画像を取得する撮像部と,
前記撮像部が撮像した画像から画素毎の色相角データを採取し,前記色相角データに基づいて前記ワークの表面の色を認識する認識部と,
被制御装置の制御を行う制御部と,
を備える制御装置。」

<相違点>
相違点1:本願発明1は,「前記認識部が認識した結果に基づいて,前記ワークの表面の色の色相角に応じた係数を算出し,算出した係数に応じた画像データを合成する合成部」を備えているのに対し,引用発明1Aは,そのような構成を備えていない点。
相違点2:「制御部」が「行う」「被制御装置の制御」について,本願発明1は,「前記合成部で合成した画像に基づいて」行うものであるのに対し,引用発明1Aは,「コントラスト評価値」から「算出」した「合焦位置」に基づいて行うものである点。

(2)判断
相違点1について検討すると,引用文献1には,相違点1に係る本願発明1の構成である「前記認識部が認識した結果に基づいて,前記ワークの表面の色の色相角に応じた係数を算出し,算出した係数に応じた画像データを合成する合成部」について,何ら記載も示唆もされていない。また,オートフォーカス装置が,上記相違点1に係る本願発明1の構成を有することは,本願の原出願の出願時において周知の技術であるともいえない。
そうすると,相違点1は実質的な相違点であるから,相違点2について判断するまでもなく,本願発明1は,引用発明1Aであるとはいえないし,また,本願発明1は,引用発明1Aに基づいて,当業者が容易に発明できたものともいえない。

2 本願発明2?4について
本願発明2?3は,本願発明1を減縮した発明であり,いずれも本願発明1の全ての発明特定事項を有しているから,前記1で検討したのと同様の理由により,引用発明1Aであるとはいえないし,また,引用発明1Aに基づいて,当業者が容易に発明できたものともいえない。
そして,本願発明4は,本願発明1に対応する方法の発明であり,本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明であるから,前記1で検討したのと同様の理由により,引用発明1Bであるとはいえないし,また,引用発明1Bに基づいて,当業者が容易に発明できたものともいえない。

第7 原査定についての判断
令和3年2月3日に拒絶査定不服審判の請求と同時にされた手続補正により,拒絶査定された請求項1?4,請求項1?4のいずれかを引用する請求項7,請求項8は削除されており,補正後の請求項1?4は,それぞれ,拒絶査定されていない請求項5?6,請求項5又は6を引用する請求項7,請求項9に対応している。
したがって,原査定を維持することはできない。

第8 当審拒絶理由について
1 特許法第29条第1項第3号及び同法同条第2項について
前記第6で検討したとおり,本願発明1?4は,引用文献1に記載された発明ではないし,また,引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものでもないから,この拒絶の理由は解消した。

2 特許法第36条第6項第1号について
当審では,請求項4の「前記認識ステップで認識した結果に基づいて,前記複数の色成分を有する画像の中から特定の色成分の画像を選択する選択ステップ」,「前記選択ステップで選択した画像に基づいて被制御装置の制御を行う制御ステップ」,及び,請求項1の「前記認識部が認識した結果に基づいて,前記複数の色成分を有する画像の中から特定の色成分の画像を選択する選択部」,「前記選択部が選択した画像に基づいて被制御装置の制御を行う制御部」は,本願明細書の発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知したが,令和3年8月18日付けの手続補正において,請求項4は,「前記認識ステップで認識した結果に基づいて,前記ワークの表面の色の色相角に応じた係数を算出し,算出した係数に応じた画像データを合成する合成ステップ」(当審注:下線は補正箇所を示すため当審が付与した。以下,同様である。),「前記合成ステップで合成した画像に基づいて被制御装置の制御を行う制御ステップ」と補正され,また,請求項1は,「前記認識部が認識した結果に基づいて,前記ワークの表面の色の色相角に応じた係数を算出し,算出した係数に応じた画像データを合成する合成部」,「前記合成部で合成した画像に基づいて被制御装置の制御を行う制御部」と補正されたので,この拒絶の理由は解消した。

第9 むすび
以上のとおり,原査定の理由及び当審拒絶理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-11-11 
出願番号 特願2019-149882(P2019-149882)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 113- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 杢 哲次  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 河本 充雄
▲吉▼澤 雅博
発明の名称 制御装置及び制御方法  
代理人 松浦 憲三  

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