• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1379513
審判番号 不服2020-17640  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-23 
確定日 2021-11-24 
事件の表示 特願2019-189943「情報処理装置、情報処理方法およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 1月30日出願公開、特開2020- 17311、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成25年6月11日を出願日とする特願2013-122746号の一部を平成29年6月1日に新たに特許出願(特願2017-108905号)し、その一部を平成30年6月19日に新たに特許出願(特願2018-115906号)し、その一部をさらに令和元年10月17日に新たに特許出願したものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和元年11月12日 :手続補正書の提出
令和2年 6月22日付け:拒絶理由の通知
令和2年 8月31日 :意見書、手続補正書の提出
令和2年 9月17日付け:拒絶査定(原査定)
令和2年12月23日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要

原査定(令和2年9月17日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-13に係る発明は、以下の引用文献1-5に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2012-8827号公報
2.特開2001-83950号公報
3.特開2011-28603号公報
4.特表2012-529675号公報
5.特開2005-242689号公報

第3 審判請求時の補正について

審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。

(ア)審判請求時の補正によって、補正前の請求項1、12、13に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記タッチスクリーンディスプレイにおける第2のタッチ操作が行われたことに応じて、前記タッチ操作が行われる前に戻すように、前記スペーサを非表示にさせる」を「前記タッチスクリーンディスプレイにおける第2のタッチ操作が行われたことに応じて、前記スペーサを非表示にさせ、前記スペーサが表示されていた位置に、前記第2のタッチ操作が行われた位置に対応する第2のコンテンツを表示させる」(下線は補正部分を示す。)とする補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるか、また、新規事項を追加するものではないかについて検討する。
(イ)「前記タッチ操作が行われる前に戻すように、前記スペーサを非表示にさせる」を「前記スペーサを非表示にさせ、前記スペーサが表示されていた位置に、前記第2のタッチ操作が行われた位置に対応する第2のコンテンツを表示させる」とする補正事項は、「前記スペーサが表示されていた位置に、前記第2のタッチ操作が行われた位置に対応する第2のコンテンツを表示させる」ことにより「前記スペーサを非表示にさせる」ことを限定するものであって、補正前の請求項1、12、13に記載された発明と補正後の請求項1、12、13に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(ウ)また、本願の出願当初明細書の段落【0092】?【0093】には、次の記載がある。
「【0092】
図13は、図11に示したスクロール移動を元に戻すときの別の表示例を示す図である。図13Aは、図11Dと同じ表示であるが、ここでステータスバー601を選択する操作が取得される。上述の通り、ステータスバー601にはメッセージの着信やソフトウェアの更新などを示す通知が表示されるため、ステータスバー601を選択すると、図13Bに示すようにステータス画面609を参照することができる。・・・(略)・・・
【0093】
図14は、図11に示したスクロール移動を元に戻すときのさらに別の表示例を示す図である。図14Aは、図11Dと同じ表示であるが、ここでメニューバー603に含まれる操作子を介した操作によって、アプリケーション内での画面遷移、つまりドキュメントの表示の変化が発生する。図示された例では、図14Bに示すような地図表示画面650への遷移が実行されているが、このときにステータスバー601のスクロール移動が元に戻されている。ステータスバー601の位置はすぐに元に戻ってもよいし、アニメーションなどが表示されて所定の時間をかけて戻ってもよい。・・・(略)・・・」
(エ)ここで請求項1、12、13に記載された「前記第2のタッチ操作が行われた位置に対応する第2のコンテンツ」は、出願当初明細書の上記記載にある「ステータス画面609」及び「地図表示画面650」を特定しているものと認められる。一方、「ステータス画面609」や「地図表示画面650」への遷移によりスクロール移動が元に戻され、「スペーサ607」が非表示にされていることは、図13B、図14Bから明らかである。

【図13】


【図14】


したがって、上記請求項1、12、13の補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。
(オ)そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-13に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明

本願の請求項1-13に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明13」という。)は、令和2年12月23日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1-13に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-13は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
タッチスクリーンディスプレイ上に表示されるコンテンツの表示を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記コンテンツが表示されている場合に、前記タッチスクリーンディスプレイにおける下側領域に対応するタッチ操作が行われたことに応じて、前記タッチ操作が行われる前に表示されている前記コンテンツとは異なるコンテンツが表示されているL字形状を含むスペーサを表示させ、
前記タッチ操作が行われる前に前記スペーサが表示される位置に表示されていた前記コンテンツを、前記タッチ操作が行われる前に前記コンテンツが表示されていた位置よりも前記スペーサに対応した下方に表示させ、
前記タッチスクリーンディスプレイにおける第2のタッチ操作が行われたことに応じて、前記スペーサを非表示にさせ、前記スペーサが表示されていた位置に、前記第2のタッチ操作が行われた位置に対応する第2のコンテンツを表示させる、情報処理装置。
【請求項2】
前記L字形状は、少なくとも前記タッチスクリーンディスプレイにおける上側の辺である第1の辺を含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記L字形状は、前記タッチ操作における右又は左に対応する前記タッチスクリーンディスプレイにおける右辺又は左辺を第2の辺を含む、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記L字形状は、
前記タッチ操作が前記タッチスクリーンディスプレイにおける下側領域の右側領域を起点とする場合、前記第2の辺が前記左辺である、または、
前記タッチ操作が前記タッチスクリーンディスプレイにおける下側領域の左側領域を起点とする場合、前記第2の辺が前記右辺である、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記制御部はさらに、前記コンテンツが表示されている場合に、前記コンテンツをスクロールさせる第3のタッチ操作が行われたことに応じて、前記コンテンツをスクロールさせる、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記スペーサの表示、および前記コンテンツの前記スペーサに対応した下方への表示は、前記第3のタッチ操作によるスクロールの状態に関わらずに実行される、請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記異なるコンテンツは、広告情報を含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記異なるコンテンツは、前記タッチ操作が行われる前には前記タッチスクリーンディスプレイ上に表示されていない操作子を含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記コンテンツは操作子を含み、
前記制御部は、前記タッチ操作に応じて前記コンテンツの表示位置が変更された後にも前記操作子を操作可能に維持する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記タッチスクリーンディスプレイは、前記タッチスクリーンディスプレイが備えられた筐体がユーザの手により把持された状態で前記ユーザが前記タッチスクリーンディスプレイを操作可能となるように前記筐体に備えられる、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記タッチ操作は、表示されている前記コンテンツ上および/または前記タッチスクリーンディスプレイの縁に設けられたタッチセンサ上でのドラッグ操作および/またはフリック操作である、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項12】
タッチスクリーンディスプレイ上に表示されるコンテンツの表示をプロセッサが制御すること、
を含み、
前記コンテンツが表示されている場合に、前記タッチスクリーンディスプレイにおける下側領域に対応するタッチ操作が行われたことに応じて、前記タッチ操作が行われる前に表示されている前記コンテンツとは異なるコンテンツが表示されているL字形状を含むスペーサを表示させることと、
前記タッチ操作が行われる前に前記スペーサが表示される位置に表示されていた前記コンテンツを、前記タッチ操作が行われる前に前記コンテンツが表示されていた位置よりも前記スペーサに対応した下方に表示させることと、
前記タッチスクリーンディスプレイにおける第2のタッチ操作が行われたことに応じて、前記スペーサを非表示にさせ、前記スペーサが表示されていた位置に、前記第2のタッチ操作が行われた位置に対応する第2のコンテンツを表示させることと、を含む情報処理方法。
【請求項13】
コンピュータを、
タッチスクリーンディスプレイ上に表示されるコンテンツの表示を制御する制御部、として機能させるためのプログラムであって、
前記制御部は、前記コンテンツが表示されている場合に、前記タッチスクリーンディスプレイにおける下側領域に対応するタッチ操作が行われたことに応じて、前記タッチ操作が行われる前に表示されている前記コンテンツとは異なるコンテンツが表示されているL字形状を含むスペーサを表示させ、
前記タッチ操作が行われる前に前記スペーサが表示される位置に表示されていた前記コンテンツを、前記タッチ操作が行われる前に前記コンテンツが表示されていた位置よりも前記スペーサに対応した下方に表示させ、
前記タッチスクリーンディスプレイにおける第2のタッチ操作が行われたことに応じて、前記スペーサを非表示にさせ、前記スペーサが表示されていた位置に、前記第2のタッチ操作が行われた位置に対応する第2のコンテンツを表示させる、プログラム。」

第5 引用文献・引用発明等

1.引用文献1について
原査定の拒絶理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により注目する点に付与した。以下、同様。)
「【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルを備えた移動通信装置等の携帯型機器は、装置の使用者が片手の手のひら上に保持し、その手の指、主に、親指でタッチパネルの、例えば、ソフトキーが表示された位置に接触して操作されることがある。ここで、ソフトキーとは、表示される画像であって、その画像が表示された位置へのタッチによって所定の動作が行われるようにされた画像である。
【0003】
このように操作が行われる場合、タッチパネルに表示されるソフトキーは、接触し易い位置に配置されて表示されることが好ましく、例えば、右手の親指でタッチパネルに接触する場合、タッチパネルの右下部に、また、左手の親指でタッチパネルに接触する場合、タッチパネルの左下部に配置されることがある。なお、タッチパネルの表示がスクロール可能であれば、スクロールによってソフトキーが表示される位置を変更させることができる。
・・・中略・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、たとえ、タッチパネルの表示を如何にスクロールさせても、ソフトキーが、例えば、タッチパネル上部に配置されて表示される場合、そのソフトキーが表示された位置への接触が容易でない問題点があった。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、タッチパネルの如何なる位置に画像が表示されるかを変更可能な情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の実施形態に係る情報処理装置は、タッチパネルと、所定の情報処理を行い、その処理に係わる画像であり、前記タッチパネルの表示画面より大きい仮想画面を作成する情報処理手段と、前記タッチパネルへの所定の相対位置移動操作に追従して前記仮想画面と前記タッチパネルの表示画面との相対位置を移動させ、その仮想画面の部分であって前記表示画面と重なる部分を、前記表示画面の前記仮想画面と重なった位置に表示させる表示位置制御手段とを備え、前記表示位置制御手段は、前記仮想画面が前記表示画面の全面に表示されているか一部分に表示されているかに拘らず、前記相対位置を移動させることを特徴とする。」

「【0025】
図示した仮想画面は、ブラウザ部による表示がされた例である。「リンク1」、「リンク2」、及び「リンク3」は、ソフトキーであり、それらの部分へのタッチによって、異なる表示がされる。なお、ソフトキーであることを、ハッチングを付して示す。」

「【0032】
なお、実画面のうち、仮想画面が表示されない部分には、何も表示されない、単色の表示がされる、所定の部分表示状態報知画像が表示される等のいずれでも良い。また、制御部11は、ウィンドウシステムを介して表示部15への表示を制御する場合、仮想画面はウィンドウであり、仮想画面が表示されない部分には、異なるウィンドウの表示がされる、又は、いずれのウィンドウも表示されない部分に表示される、壁紙と称される画像が表示される。
・・・中略・・・
【0034】
ここで、使用者は、装置を右手の手のひらに保持し、右手の親指でタッチパッド16への接触を行うとすると、図3に示す実画面では、ソフトキー「リンク2」へのタッチは容易であるが、ソフトキー「リンク1」へのタッチは容易でなく、ソフトキー「リンク3」へのタッチは不可能である。一方、ソフトキー「リンク1」へのタッチは、図5に示す実画面では容易であり、ソフトキー「リンク3」へのタッチは、図4に示す実画面では容易である。
【0035】
このように、仮想画面の任意の位置に表示されるソフトキーへの接触を容易に行うためには、オフセットを変更することが必須である。部分表示状態とすることは、使用者が視認可能な画像である仮想画面が小さくなるのであるから一見好ましくないと判断される。しかし、上述したように、オフセットの変更によって部分表示状態とすることが必要な場合もある。」

「【0051】
第2に、タッチパッド16への接触によって、実画面の所定の大きさの一部分、例えば、1/2若しくは1/4、又は、1/3若しくは1/9に仮想画面が表示されるように、オフセット(dx、dy)を変化させる。この動作は、少ないタッチパッド16への接触によって、指等が容易に接触できる範囲に、仮想画面の使用者が所望する部分を表示させることができる効果がある。図8?図13を参照して、仮想画面の如何なる部分を実画面に表示させるかを説明する。ここで、使用者は、右手の親指によってタッチパッド16への接触を行うとし、その右下の、実画面全体の面積の1/4の面積の部分への接触が容易であるとする。
【0052】
第1の例として、部分表示状態へ遷移した際、オフセットは(0、0)とする、即ち、実画面には、図8に示すように仮想画面の左上部分が表示されていたとする。この際、実画面の接触が容易に可能な右下の1/4の部分の中の右上部である第1の領域16aのタッチ、左上部から右下部である第2の領域16bへのタッチ、及び左下部である第3の領域16cへのタッチのいずれかによって、実画面に表示させる仮想画面の部分が制御される。なお、この第1?第3の領域16a?16cは、実画面に表示されても良く、表示されなくとも良い。また、表示される場合、仮想画面の画像の視認の妨げにならないような表示が望ましい。薄い色での表示、表示される色を変化させる、等である。
【0053】
まず、第1の領域16aへのタッチによって、オフセットを(-x2/2、0)とし、図9に示すように、仮想画面が実画面の横の長さx2の1/2だけ右に移動された表示がされる。言い換えると、実画面の右の1/2のみに仮想画面が表示される。図9には、第2の領域16b及び第3の領域16cを図示した。これは、それらの領域へのタッチによって、次に述べるように、ステップS203の動作の一部として実画面の表示される仮想画面の部分が制御され、いずれの場合であっても、実画面の右下の1/4に仮想画面が表示されることを示すが、これに限るものではない。第1の領域16aへのタッチによってステップS203の動作が終了するとしても良い。
【0054】
また、第2の領域16bへのタッチによって、オフセットを(-x2/2、-y2/2)とし、図10に示すように、仮想画面が実画面の横の長さx2の1/2だけ右に移動し、かつ、実画面の縦の長さy2の1/2だけ下の移動された表示がされる。言い換えると、実画面の右下の1/4に仮想画面が表示される。更に、第3の領域16cへのタッチによって、オフセットを(0、-y2/2)とし、図11に示すように、仮想画面が実画面の縦の長さy2の1/2だけ下に移動された表示がされる。言い換えると、実画面の下の1/2に仮想画面が表示される。」

「【0059】
図7に示すフローチャートを参照した、表示位置制御機能11aの動作説明に戻る。ステップS203で、以上説明したように仮想画面の所定の部分を実画面に表示させた後、表示位置制御機能11aは、タッチパッド16からの操作を判断する(ステップS204)。その操作がフリック操作及び複数回のタッチのいずれでもないと判断された場合、表示位置制御機能11aは、ステップS204のタッチパッド16からの操作を判断する動作を繰り返す。
【0060】
その操作が複数回のタッチであると判断された場合、表示位置制御機能11aは、実画面の全面に仮想画面を表示させ(ステップS205)、部分表示状態での動作を終了し(ステップS206)、図6に示すフローチャートのステップS103の動作に移る。ここで、ステップS205で実画面には、ステップS201の部分表示状態への遷移の際に記憶したオフセット(dx、dy)に従った表示をさせる。なお、複数回のタッチによらず、長タッチによっても良い。また、仮想画面が表示されていない部分、少なくとも、ソフトキーが表示されていない部分へのタッチによっても良い。
【0061】
なお、部分表示状態では、限られた大きさである実画面の一部に仮想画面が表示されていない。即ち、表示部15の表示画面リソースを無駄にしており、使用者の表示の見易さを犠牲にしている状態である。そこで、止むを得ない場合にのみの状態とし、使用者が部分表示状態におくことが不要と判断した場合、上記の所定の接触操作によれば容易に全面表示状態に戻すことができる。
【0062】
ステップS204で、操作がフリック操作であると判断された場合、表示位置制御機能11aは、その操作に対応する表示位置変更の動作によって、全面表示状態に遷移するか否かを判断する(ステップS207)。ここで、フリック操作に対応する表示位置変更の動作は、次のステップS208の動作の中で説明する。
【0063】
全面表示状態に遷移しないと判断された場合、表示位置制御機能11aは、上記フリック操作の接触された位置の移動方向と逆方向に、かつ、同じ移動量だけ、オフセット(dx、dy)を変化させて実画面に表示させて(ステップS208)、ステップS204のタッチパッド16からの操作を判断する動作に移る。このステップS208のオフセットを変化させる動作は、ステップS105の動作説明で述べたことに準じるので説明を繰り返さない。」

「【0077】
第2の実施形態に係る仮想画面と、実画面との相対位置の詳細を説明する。図14は、実画面に表示された仮想画面の一例を示し、これらの画面は、いずれも横にx1(x2は、x1に等しい。)、縦にy1(y2は、y1に等しい。)の長方形であり、実画面のオフセットは(0、0)である。この図は、第1の実施形態の図3に対応し、仮想画面には、表示部15に表示させる画像の中で左上部が含まれている。このように、全面表示状態では、スクロールによって異なる表示がされ、オフセットは、常に(0、0)である。
【0078】
仮想画面には、縦方向の、及び、横方向のスクロールバーが付されている。スクロールバーの一部が他と異なる表示形態で表示されることによって、表示されている画像は、仮想画面の中で、どの部分かの概要が直ちに視認される。なお、図では、異なる表示形態をハッチングで示した。」

上記記載によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

〈引用発明〉
「タッチパネルと、所定の情報処理を行い、その処理に係わる画像であり、タッチパネルの表示画面より大きい仮想画面を作成する情報処理手段と、タッチパネルへの所定の相対位置移動操作に追従して前記仮想画面と前記タッチパネルの表示画面との相対位置を移動させ、その仮想画面の部分であって前記表示画面と重なる部分を、前記表示画面の前記仮想画面と重なった位置に表示させる表示位置制御手段とを備え、前記表示位置制御手段は、前記仮想画面が前記表示画面の全面に表示されているか一部分に表示されているかに拘らず、前記相対位置を移動させる情報処理装置であって、
仮想画面は、ブラウザ部による表示がされた例では、「リンク1」、「リンク2」、及び「リンク3」は、ソフトキーであり、それらの部分へのタッチによって、異なる表示がされ、
実画面のうち、仮想画面が表示されない部分には、異なるウィンドウの表示がされる、又は、いずれのウィンドウも表示されない部分に表示される、壁紙と称される画像が表示され、
使用者は、右手の親指によってタッチパッド16への接触を行うとし、その右下の、実画面全体の面積の1/4の面積の部分への接触が容易であり、
実画面に、仮想画面の左上部分が表示されていたとする際、
第2の領域16bへのタッチによって、仮想画面が実画面の横の長さx2の1/2だけ右に移動し、かつ、実画面の縦の長さy2の1/2だけ下の移動された表示がされ、言い換えると、実画面の右下の1/4に仮想画面が表示され、
使用者が部分表示状態におくことが不要と判断した場合、上記の所定の接触操作によれば容易に全面表示状態に戻すことができる、
情報処理装置。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0014】
これらの発明によれば、タッチパネル式ディスプレイ式のディスプレイを分割して表示された複数の動画の中から、情報の提供を受ける側のユーザーが所望の動画を選択してタッチすることにより、その画像を瞬時に全画面サイズの表示に切替えて所望の情報を得ることが可能となり、また、全画面サイズの表示をタッチパネル式ディスプレイにタッチすることにより簡単に元の分割画面に戻し、複数の動画の中から新たに所望の動画を選択して別の情報を得ることが簡単にできる。」

3.引用文献3について
原査定の拒絶理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0011】
請求項1に従属する発明として、前記制御手段は、前記タッチスクリーンへのタッチ操作が再開された際に、前記タッチ無効化領域を解除して当該タッチスクリーンを元の状態に戻す、ようにしたことを特徴とする請求項6記載の発明であってもよい。」

4.引用文献4について
原査定の拒絶理由に引用された上記引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0017】
電子ペーパー表示装置112、114、116、および118はレイアウトのマーク付け、タグ付け、または他の書式化制御構造を含めた電子コンテンツのレンダリングおよび表示のうちの1つ以上を遂行してもよい。電子ペーパー表示装置112、114、116、および118は電子コンテンツを受信し、レイアウトのマーク付け、タグ付け、または他の書式化制御構造を使用して電子コンテンツを表示してもよい。電子ペーパー表示装置112、114、116、および118は主要な電子コンテンツのみを表示してもよく、または主要な電子コンテンツと1つ以上の追加の要素を表示してもよい。いくつかの実施形態によると、1つ以上の追加の要素を表示するかどうかの判定はこの1つ以上の要素に関係するマーク付けに供給されるメタデータに少なくとも部分的に基づいてもよい。例えば、電子ペーパー表示装置112、114、116、および118は電子コンテンツのページ閲覧部の利用可能な余白をコンテンツのレンダリング時に識別してもよい。利用可能な余白は表示のズームレベルによって決まる可能性がある。電子ペーパー表示装置112、114、116、および118はこの利用可能な余白を最小サイズ要求、またはマーク付けにおいて指定される1つ以上の追加的要素に関係する他のメタデータと比較してもよい。電子ペーパー表示装置112、114、116、および118は利用可能な余白が、広告のような追加的要素を収容するために十分な余地を有しているか判定してもよく、電子コンテンツのページ閲覧部をレンダリングするときに追加的要素を含んでもよい。1つ以上の実施形態によると、余白の利用に関係する判定のうちの1つ以上が、例えばネットワーク要素106のようなネットワーク要素上で為されてもよい。利用可能な余白を満たすための追加的要素の包含は下記で図3A、3B、および3Cを参照しながらさらに詳しく検討される。」

5.引用文献5について
原査定の拒絶理由に引用された上記引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0042】
アニメーションバナーの表示画面104a,104bには、Webサイトでの更新情報や劇場前売券などの情報が動画または静止画のバナー画像として掲載される。このバナー画像をクリックすることで、Webサイトへアクセスできるようになっている。また、映画の予告編などもバナー画像として掲載される。このバナー画像をクリックすることで、音楽/動画再生プログラムが起動し、図7に示すように壁紙上に専用の映像プレーヤー115が表示されるので、その映像プレーヤー115によって映画情報の映像や音声等が再生される。ただし、バナー画像をクリックすることで音楽/動画再生プログラムが起動し、例えばメディアプレーヤー等の音楽/動画再生ソフトが表示されて、映画情報の映像や音声等が再生されるようにしてもよい。なお、壁紙上で専用の映像プレーヤーによって再生する場合は、上記メディアプレーヤー等の音楽/動画再生ソフトが不要であり、システムとしてはより汎用性の高いものとなる。」

第6 対比・判断

1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「仮想画面」は、ブラウザ部によってタッチパネルの表示画面に表示されるものであるから、本願発明1の「タッチスクリーンディスプレイ上に表示されるコンテンツ」に相当し、引用発明の「タッチパネルへの所定の相対位置移動操作に追従して前記仮想画面と前記タッチパネルの表示画面との相対位置を移動させ、その仮想画面の部分であって前記表示画面と重なる部分を、前記表示画面の前記仮想画面と重なった位置に表示させる表示位置制御手段」は、本願発明1の「タッチスクリーンディスプレイ上に表示されるコンテンツの表示を制御する制御部」に相当するといえる。
(イ)引用発明の「実画面のうち、仮想画面が表示されない部分」は、「異なるウィンドウの表示がされる、又は、いずれのウィンドウも表示されない部分に表示される、壁紙と称される画像が表示」されるから、本願発明1の「前記タッチ操作が行われる前に表示されている前記コンテンツとは異なるコンテンツが表示されている」「スペーサ」に相当するといえる。
(ウ)引用発明の「前記表示位置制御手段」により「実画面に、仮想画面の左上部分が表示されている場合、第2の領域16bへのタッチによって、仮想画面が実画面の横の長さx2の1/2だけ右に移動し、かつ、実画面の縦の長さy2の1/2だけ下の移動された表示がされて実画面の右下の1/4に仮想画面が表示」させる構成は、本願発明1の「前記制御部は、前記コンテンツが表示されている場合に、前記タッチスクリーンディスプレイにおける下側領域に対応するタッチ操作が行われたことに応じて、前記タッチ操作が行われる前に表示されている前記コンテンツとは異なるコンテンツが表示されているL字形状を含むスペーサを表示させ、前記タッチ操作が行われる前に前記スペーサが表示される位置に表示されていた前記コンテンツを、前記タッチ操作が行われる前に前記コンテンツが表示されていた位置よりも前記スペーサに対応した下方に表示させる」構成に相当するといえる。
(エ)引用発明の「情報処理装置」は、後述する相違点を除き、本願発明1の「情報処理装置」に相当するといえる。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、以下の一致点及び相違点があるといえる。

(一致点)
「タッチスクリーンディスプレイ上に表示されるコンテンツの表示を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記コンテンツが表示されている場合に、前記タッチスクリーンディスプレイにおける下側領域に対応するタッチ操作が行われたことに応じて、前記タッチ操作が行われる前に表示されている前記コンテンツとは異なるコンテンツが表示されているL字形状を含むスペーサを表示させ、
前記タッチ操作が行われる前に前記スペーサが表示される位置に表示されていた前記コンテンツを、前記タッチ操作が行われる前に前記コンテンツが表示されていた位置よりも前記スペーサに対応した下方に表示させる、情報処理装置。」

(相違点)
本願発明1の制御部では、「前記タッチスクリーンディスプレイにおける第2のタッチ操作が行われたことに応じて、前記スペーサを非表示にさせ、前記スペーサが表示されていた位置に、前記第2のタッチ操作が行われた位置に対応する第2のコンテンツを表示させる」のに対し、引用発明の表示位置制御手段では、「前記仮想画面は、ブラウザ部による表示がされた場合、「リンク1」、「リンク2」、及び「リンク3」は、ソフトキーであり、それらの部分へのタッチによって、異なる表示」がされるものの、仮想画面が実画面に部分表示されている状態において、前記ソフトキーのタッチによる「異なる表示」が「表示画面の全面に表示」されることは特定されていない点。

(2)判断
上記相違点について検討すると、相違点に係る本願発明1の「前記タッチスクリーンディスプレイにおける第2のタッチ操作が行われたことに応じて、前記スペーサを非表示にさせ、前記スペーサが表示されていた位置に、前記第2のタッチ操作が行われた位置に対応する第2のコンテンツを表示させる」という構成は、引用文献2-5には記載されておらず、このことを示唆されてもいない。また、この構成が本願出願日前において周知技術であったとも認められない。

したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献2-5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2-11について
本願発明2-11は、上記相違点1に係る本願発明1の構成と同じ構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-5に記載された技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明12、13について
本願発明12、13は、上記相違点1に係る本願発明1の構成と同様の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-5に記載された技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について

審判請求時の補正により、本願発明1-13は「前記タッチスクリーンディスプレイにおける第2のタッチ操作が行われたことに応じて、前記スペーサを非表示にさせ、前記スペーサが表示されていた位置に、前記第2のタッチ操作が行われた位置に対応する第2のコンテンツを表示させる」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-5に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-11-04 
出願番号 特願2019-189943(P2019-189943)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 星野 裕  
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 小田 浩
▲吉▼田 耕一
発明の名称 情報処理装置、情報処理方法およびプログラム  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ