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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1379673
審判番号 不服2021-696  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-18 
確定日 2021-11-30 
事件の表示 特願2016-246931「電子カルテ装置および電子カルテ制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月28日出願公開、特開2018-101286、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成28年12月20日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

令和2年 7月 8日付け 拒絶理由通知
令和2年 8月27日 意見書・手続補正書 提出
令和2年11月25日付け 拒絶査定
令和3年 1月18日 審判請求書 提出

第2 原査定の概要

原査定(令和2年11月25日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(進歩性)この出願の請求項1-5に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2010-033577号公報
2.米国特許出願公開第2014/0033112号明細書
3.特開2012-078905号公報

第3 本願発明

本願の請求項1ないし5に係る発明(以下,「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は,令和2年8月27日の手続補正書により補正された以下のとおりの特許請求の範囲の請求項1ないし請求項5に記載された事項により特定されるとおりの発明である。

「【請求項1】
表示画面において,或る患者に割り当てられた1つのウィンドウ内の複数のパネルにおける,前記或る患者の診療情報の表示と,他の患者に割り当てられた他のウィンドウ内の複数のパネルにおける,前記他の患者の診療情報の表示とを同時に行う表示部と,
前記1つのウィンドウ内の前記複数のパネルのうち,少なくとも2つのパネル間のドッキングと,前記他のウィンドウ内の前記複数のパネルのうち,少なくとも2つのパネル間のドッキングとを制御し,前記表示部を制御して,前記表示画面上において,前記1つのウィンドウ内でドッキングされた前記パネルを表示させ,且つ,前記他のウィンドウ内でドッキングされた前記パネルを表示させる制御部と,
を具備し,
前記制御部は,前記表示部に対して,前記1つのウィンドウ内でドッキングされた前記パネルを,前記1つのウィンドウの外の領域で表示せずに,前記1つのウィンドウ内の領域のみで表示させ,且つ,前記他のウィンドウ内でドッキングされた前記パネルを,前記他のウィンドウの外の領域で表示せずに,前記他のウィンドウ内の領域のみで,前記1つのウィンドウ内においてドッキングされた前記パネルのレイアウトと同一のレイアウトで表示させ,前記1つのウィンドウ内の表示状態と,前記他のウィンドウ内の表示状態とを同期させる,
電子カルテ装置。
【請求項2】
前記制御部は,前記1つのウィンドウを閉じた後に再び表示する際,当該1つのウィンドウ内における前記複数のパネルの過去のレイアウトに基づいて,前記表示部に対して,前記複数のパネルを表示させる,
請求項1に記載の電子カルテ装置。
【請求項3】
前記制御部は,前記1つのウィンドウを閉じた後に再び表示する際,予め設定されたレイアウトに基づいて,前記表示部に対して,当該1つのウィンドウ内において前記複数のパネルを表示させる,
請求項1に記載の電子カルテ装置。
【請求項4】
前記制御部は,前記1つのウィンドウ内の前記複数のパネルの少なくとも1つのパネルをウィンドウに変換し,
前記表示部は,前記少なくとも1つのパネルから変換されたウィンドウを,前記1つのウィンドウの外の領域に表示する,
請求項1に記載の電子カルテ装置。
【請求項5】
表示画面において,或る患者に割り当てられた1つのウィンドウ内の複数のパネルに,前記或る患者の診療情報を表示し,
前記或る患者の診療情報が表示されている前記表示画面において,他の患者に割り当てられた他のウィンドウ内の複数のパネルに,前記他の患者の診療情報を表示し,
前記1つのウィンドウ内の前記複数のパネルのうち,少なくとも2つのパネル間のドッキングを制御し,前記表示画面上のドッキングされた前記パネルの表示を制御し,
前記他 のウィンドウ内の前記複数のパネルのうち,少なくとも2つのパネル間のドッキングを制御し,前記表示画面上のドッキングされた前記パネルの表示を制御し,
前記1つのウィンドウ内でドッキングされた前記パネルを,前記1つのウィンドウの外の領域で表示せずに,前記1つのウィンドウ内の領域のみで表示し,
前記他のウィンドウ内でドッキングされた前記パネルを,前記他のウィンドウの外の領域で表示せずに,前記他のウィンドウ内の領域のみで,前記1つのウィンドウ内においてドッキングされた前記パネルのレイアウトと同一のレイアウトで表示し,
前記1つのウィンドウ内の表示状態と前記他のウィンドウ内の表示状態とを同期させる,
電子カルテ制御方法。」

第4 引用文献および引用発明

1 引用文献1について

(1)引用文献1の記載事項

原査定の拒絶理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は,当審が付加した。以下同様。)。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,患者データを見るためのインテリジェントダッシュボードを提供する臨床情報システムを対象とする。
【背景技術】
(中略)
【0006】
近年,病院は,各患者についてデジタル形式で生成する情報の量を,その情報の全てに対処しようとする人間の手に負えないであろう程度にまで増大させてきた。例えば,ある患者の心拍数または血圧が,1分間に数回生成される新しい値でもって継続的にモニタされる可能性がある。
【0007】
したがって,そのようなデータを表示するためのシステムが開発されている。これらのシステムの一部は,患者についての具体的情報を表示するためのコンピュータまたは他の電子ディスプレイ用のダッシュボードの形をとる。都合の悪いことに,多くの場合,この圧倒的な量の生データは,任意の所与の時間においてどのダッシュボードがある患者について最も有用な情報を提供するのかに関して,圧倒的な数の様々なオプションによって置換されている。したがって,選択された患者についての情報を表示するために使用する適切なダッシュボードをユーザが選択することを支援するシステムの需要が生じている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって,本発明の目的は,医者および看護師の両方のための関連情報を表示するためのシステムおよび方法を提供することである。本発明のさらなる目的は,医療データの単一選択に応答して,複数のダッシュボードを立ち上げるための方法および装置を提供することである。本発明のもう一つの目的は,あるエレメントがダッシュボードを切り替えることを可能にすることであり,それによりユーザは手動でダッシュボードを切り替えることができ,またはそのエレメントがダッシュボード間の自動スクロールを提供する。本発明のもう一つの目的は,このシステムを医者や看護師などのユーザの特定の需要に基づいてカスタマイズできるように,保存可能な新しいダッシュボードを作成する方法を提供することである。」

イ 「【0030】
I. 概要
ダッシュボードは,単一のディスプレイ提示の一部であるウィンドウ枠の集まりである。ダッシュボードの全てのウィンドウ枠を,典型的にはディスプレイ内で集合的に見ることができるが,一部の実施形態では,ダッシュボードを(およびしたがって,ダッシュボードのウィンドウ枠の一部を)ディスプレイの境界を越えて拡大することができる。
【0031】
ウィンドウ枠内に表示される情報(ウィンドウ枠のビューとも言う)は,報告書,表,メモ,グラフ,画像,等を含む様々な形をとることができる。各ウィンドウ枠は,次のものについての1つまたは複数のビューを提示することができ,それは(1)1つまたは複数の臨床データ項目(例えば,生命徴候または検査測定値に関連する表やグラフを提示する),または(2)確立された治療ガイドラインまたは治療プロトコル(例えば,特定の症状または測定値に関する公共の参考情報源からの,またはカスタマイズされた院内の施設方針からのガイドライン)についてである。」

ウ 図1


エ 「【0032】
図1は,臨床情報システムの概念的なシステムアーキテクチャを示す。図示のように,患者データがいくつかの異なる患者データ情報源105から臨床データマネージャ110において受け取られる。臨床データマネージャ110は,患者をモニタリングするモニタからの生命徴候,検査報告書,医療画像(例えば,X線写真,MRI(磁気共鳴映像),CT(コンピュータ断層撮影)スキャン,等)などの客観的データと,医師の評価,医師の診断,医師の治療計画などの主観的データと,を様々なデータ源105から集める。このデータの集まりは,様々な検査室や病院など,1つまたは複数の場所によってもたらされてよい。
【0033】
臨床データマネージャ110は,個々の患者についてのデータを(患者のデータのスナップショットとして,またはある期間にわたる患者のデータの記録として)集めるために,および/または例えば医療資源を効率的に配置するためなどの様々な理由で患者間で統計値(場合によっては各患者の統計値の変化を含む)を比較するために,患者データを受け取り,正規化し,分析し,かつ/または集約する。
【0034】
臨床データマネージャ110は,様々な臨床情報インタフェース115を介してデータを報告し,データを流し,かつ/またはユーザにデータを通知する。これらのインタフェースは,医療制度内でのユーザの仕事,もしくはインタフェースが表示される特定の端末,および/または個々のユーザおよび/または患者の一時的な需要によって互いに異なり得る。一部の実施形態では,このインタフェースは場所によって異なる。例えば,心臓の集中治療室内にいるユーザが1つのデータセットを受け取り,脳神経外科にいるユーザが別のデータセットを受け取る。以下にさらに説明するように,このインタフェースは,特定の患者の診断や症状によっても異なり得る。臨床データマネージャは,様々なインタフェース115に対してデータをリアルタイムで提供することもできる。」

オ 図2


カ 「【0035】
図2は,そのような臨床情報インタフェース200の1つの説明のための例を提供する。図示のように,このインタフェースは図表により提供され,(1)タイトルバー230,(2)メニューバー235,(3)マスタツールバー240,および(4)いくつかのウィンドウ205を含む。マスタツールバー240はインタフェース200の下部に表示され,様々なアプリケーション機能へのイージーアクセスを含む。例えば,マスタツールバーは,臨床データをリフレッシュする,検査結果を見る,課金情報を見る,他のウィンドウを開く,等のためのボタンを含むことができる。
【0036】
インタフェース200内のウィンドウのいくつかが,1人または複数の患者についての臨床データを表示する。ウィンドウ枠内に表示される情報は,報告書,表,メモ,グラフ,画像,等を含むことができる。例えば,表示される情報は,患者の症状の重度を評価するために必要なデータ,その症状の動向(例えば改善/悪化),その症状の原因,その症状の二次的結果,等を含むことができる。図示のように,ウィンドウ205のそれぞれが,そのウィンドウについての情報を表示するタイトルバー220,および選択可能なタブ,プルダウンメニュー,検索バー,または他の様々なツールボタンを含むことができるメニューバー225をオプションで有することができる。
【0037】
これらのウィンドウ枠のいくつかが,1つまたは複数の臨床データ項目についての様々なビューを提示する。例えば,ウィンドウ枠210は,ある患者の「血液ガス」についての検査報告書を表示するためのビューを提供する。この検査報告書は,いくつかの血液ガスについての測定値の表として提示され,場合によってはこの表の特定の項目を展開して追加の詳細を提示することができる。しかし,表の中の項目を選択し,メニューバー225内のタブ245を選択することにより,この検査報告書をグラフとして提示することもできる。単に表の中の項目を(例えばその項目をダブルクリックすることにより)選択することにより,この検査報告書をグラフとして提示することができる。ウィンドウ枠215が提供するビューは,ある期間にわたる患者の血中酸素飽和度(SpO2)のパーセンテージを示すグラフの一例である。このビュー内に表示される情報は,確立された治療ガイドラインまたは治療プロトコルを含むことができる。そのガイドラインは,公共の参考情報源から,またはカスタマイズされた院内の施設方針からもたらされてよい。例えば,ある患者が高血糖症と診断された場合,ダッシュボードのビューの1つが,その症状の治療方法についての大学の方針を提示することができる。
【0038】
1つまたは複数のウィンドウ枠205?210の集まりがダッシュボードである。第1ダッシュボードを見ながら,その第1ダッシュボード内の項目を選択したときに第2ダッシュボードを開けるよう,2つ以上のダッシュボードを互いにリンクさせることができる。第2ダッシュボードが開かれると,第1ダッシュボードは自動的に最小化され,非表示にされ,または場合によっては閉じられる。さらに,第2ダッシュボードが開かれるとき,両方のダッシュボードを同時に見ることができるようにするような方法で第1ダッシュボードを配置することができる。」

キ 図5


キ 「【0046】
次いで410で,このプロセスは,そのリスト内の特定の項目に関係する臨床データのセットを表示するための枠のセットを有するダッシュボードを表示するための要求を受け取る。例えば,ある医師が,ある患者に関係するデータを表示するために,その患者の名前をクリックすることができる。次いで,(415で)このプロセスは,そのダッシュボードを表示する。図5は,ある患者が患者リストウィンドウ505から選択されたときに表示されるダッシュボード500の一例を提供する。具体的には,このダッシュボードは,患者リストウィンドウ505から選択された患者についての臨床データを含むいくつかのウィンドウ枠を表示する。オプションとして,患者リストウィンドウ505は,このダッシュボードの一部とみなさなくてもよい。
【0047】
図5に示すように,ユーザが患者リストウィンドウから患者を選択すると,(1)患者のスキャン結果を表示するスキャン結果ウィンドウ510,(2)いくつかの検査結果を表示する検査結果ウィンドウ515,(3)その患者の基本情報(demographic)を表示する基本情報ウィンドウ520,(4)看護情報を表示する看護情報ウィンドウ525,(5)その患者の生命徴候を表示する生命徴候ウィンドウ530,および(6)その患者の報告書を表示する報告書ウィンドウ535,を含むダッシュボードがそのユーザに提示される。」

ク 「【0052】
図7は,ダッシュボードのカスタマイズ化を示す,ダッシュボードの階層構造700を示す。この階層構造は,ユーザが既存のダッシュボード325に基づいて新しいダッシュボード385を作成した点を除き,図3にあるのと同じダッシュボードを有する。図示のように,ダッシュボード325は,3つの異なるビューA1,B1,およびC1を有する3つのウィンドウ枠を有する。これらのウィンドウ枠は,例えばCTスキャン,検査報告書,および酸素飽和度のグラフを表示することができる。
【0053】
図7の例では,ユーザが,特定の患者について,第2ウィンドウ枠内に完全な検査報告書を表示する代わりに,ブドウ糖の変化についてのグラフを表示する方がより適切であると判断している。ユーザは,第2ウィンドウ枠内のビューが,検査報告書からブドウ糖の変化についてのグラフに変更されたことを除いてダッシュボード325と同様の新しいダッシュボードを作成することができる。新しいダッシュボード385は,3つのウィンドウ枠390を有する。これらの枠のうちの2つは,ダッシュボード325にあるのと同じビューA1およびC1を有する。しかし,残りのウィンドウ枠は,ブドウ糖の変化についてのグラフを表示する新しいビューB2を有する。新しいダッシュボード385は保存することができる。この新しいダッシュボードは,図1に示すようなダッシュボードデータベースまたはライブラリ120に保存される。それ以降,この特定の患者については,ダッシュボード310から(ダッシュボード325の代わりに)ダッシュボード385が開かれる。このユーザが他の患者に対してもダッシュボード325の代わりにダッシュボード385を使用できるように,この構成を保存することもできる。例えば,同様の医学的症状を有する患者を治療する際,このユーザにはデフォルトの事前構成されたダッシュボードの代わりに,再構成されたダッシュボード385が提示される。この再構成されたダッシュボードは,自動的に,または選択可能なオプション(例えばメニュー項目,ツールボタン)として提供することができる。」

(2)引用発明

上記(1)の,特に下線を付加した記載に着目すると,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「患者データを見るためのインテリジェントダッシュボードを提供する臨床情報システムであって,
ダッシュボードは,単一のディスプレイ提示の一部であるウィンドウ枠の集まりであり,
ウィンドウ枠内に表示される情報は,報告書,表,メモ,グラフ,画像,等を含んでおり,
臨床情報システムにおいて,
患者データがいくつかの異なる患者データ情報源105から臨床データマネージャにおいて受け取られ,
臨床データマネージャは,患者をモニタリングするモニタからの生命徴候,検査報告書,医療画像(例えば,X線写真,MRI(磁気共鳴映像),CT(コンピュータ断層撮影)スキャン,等)などの客観的データと,医師の評価,医師の診断,医師の治療計画などの主観的データと,を様々なデータ源から集めており,
臨床データマネージャは,様々な臨床情報インタフェースを介してデータを報告し,データを流し,かつ/またはユーザにデータを通知しており,
臨床情報インタフェースは図表により提供され,(1)タイトルバー,(2)メニューバー,(3)マスタツールバー,および(4)いくつかのウィンドウを含んでおり,
臨床情報インタフェース内のウィンドウのいくつかが,1人または複数の患者についての臨床データを表示しており,例えば,ウィンドウ枠210は,ある患者の「血液ガス」についての検査報告書を表示するためのビューを提供し,ウィンドウ枠215が提供するビューは,ある期間にわたる患者の血中酸素飽和度(SpO2)のパーセンテージを示すグラフであり,
1つまたは複数のウィンドウ枠205?210の集まりがダッシュボードであり,
第1ダッシュボードを見ながら,その第1ダッシュボード内の項目を選択したときに第2ダッシュボードを開けるよう,2つ以上のダッシュボードを互いにリンクさせることができ,第2ダッシュボードが開かれるとき,両方のダッシュボードを同時に見ることができるようにするような方法で第1ダッシュボードを配置することができ,
ある医師が,ある患者に関係するデータを表示するために,その患者の名前をクリックすることができ,ある患者が患者リストウィンドウから選択されたときに表示されるダッシュボードは,患者リストウィンドウから選択された患者についての臨床データを含むいくつかのウィンドウ枠を表示しており,患者リストウィンドウは,このダッシュボードの一部とみなさなくてもよく,
ユーザが患者リストウィンドウから患者を選択すると,(1)患者のスキャン結果を表示するスキャン結果ウィンドウ510,(2)いくつかの検査結果を表示する検査結果ウィンドウ515,(3)その患者の基本情報(demographic)を表示する基本情報ウィンドウ520,(4)看護情報を表示する看護情報ウィンドウ525,(5)その患者の生命徴候を表示する生命徴候ウィンドウ530,および(6)その患者の報告書を表示する報告書ウィンドウ535,を含むダッシュボードがそのユーザに提示され,
ダッシュボードのカスタマイズ化の例では,ユーザが,特定の患者について,第2ウィンドウ枠内に完全な検査報告書を表示する代わりに,ブドウ糖の変化についてのグラフを表示する方がより適切であると判断し,ユーザは,第2ウィンドウ枠内のビューが,検査報告書からブドウ糖の変化についてのグラフに変更された新しいダッシュボードを作成することができ,新しいダッシュボード385は保存することができ,ダッシュボードデータベースまたはライブラリ120に保存され,以降,この特定の患者については,ダッシュボード325の代わりにダッシュボード385が開かれ,
このユーザが他の患者に対してもダッシュボード325の代わりにダッシュボード385を使用できるように,この構成を保存することもでき,例えば,同様の医学的症状を有する患者を治療する際,このユーザにはデフォルトの事前構成されたダッシュボードの代わりに,再構成されたダッシュボード385が提示される
臨床情報システム。」

2 引用文献2について

引用文献2には,以下の記載がある。

「[0010] The present invention provides a method and system for conveniently managing proliferation of rectangular window panels within software applications. In accordance with a preferred embodiment of the present invention, window panels can be fastened, or snapped, together into a cohesive union that can be moved about as a single area; namely, an area that is a union of rectangles. When one panel is brought into close proximity of another panel, the two panels snap together to form a single combined area, referred to herein as a “union”. Unions of two or more panels can be generated by combining individual panels, and by combining unions of panels into larger unions.
[0011] The present invention also provides a way of breaking a union of panels apart into smaller unions. When a panel that is part of a union of panels is moved while the shift key is depressed, that panel is separated from the others and it alone moves while the other panels remain fixed. Similarly, when a panel that is part of a union of panels is moved while the control key is depressed, that panel and all other panels of the union that are positioned below and to the left of it are separated from the others, and they alone move while the other panels remain fixed. Thus by using the shift and control keys a user can easily decompose a union of panels into two or more smaller unions, as desired.」
(当審訳:
[0010] 本発明は、ソフトウェア・アプリケーション内の長方形のウィンドウ・パネルの増加を便利に管理するための方法およびシステムを提供するものである。本発明の好ましい実施形態によれば、ウィンドウ・パネルは、1つのエリア、すなわち長方形の組み合わせであるエリアとして移動することができるまとまった組み合わせに一緒に固定、またはスナップすることができる。1つのパネルを別のパネルに近づけると、2つのパネルは一緒にスナップして、本明細書では「ユニオン」と呼ばれる単一の結合領域を形成する。2つ以上のパネルの組み合わせは、個々のパネルを組み合わせることによって、また、パネルの組み合わせをより大きな組み合わせに統合することによって生成することができる。
[0011] また、本発明は、パネルの組み合わせをより小さな組み合わせに分割する方法も提供する。シフトキーを押しながらパネルの連合体の一部であるパネルを動かすと、そのパネルは他のパネルから切り離され、他のパネルは固定されたままそのパネルだけが動く。同様に、コントロールキーを押しながらパネルの組み合わせの一部であるパネルを移動させると、そのパネルとそのパネルの下と左に位置する組み合わせのすべてのパネルが他のパネルから分離され、他のパネルが固定されたままそのパネルだけが移動する。このように、シフトキーとコントロールキーを使うことで、パネルの集合体を2つ以上の小さな集合体に簡単に分解することができる。)

3 引用文献3について

引用文献3には,以下の記載がある。

ア「【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ウィンドウ及びそのウィンドウ上のフレームの表示を制御する表示制御装置、表示制御プログラム、及び表示制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GUI(Graphical User Interface)の技術において、一つのウィンドウ上に複数のフレームを配置する技術が知られている。また、ユーザによる操作に応じてウィンドウ上のフレームの大きさを変更し、その変更に応じてそのウィンドウ上の他のフレームの大きさ及び配置を変更する技術が知られている。
【0003】
関連する技術として、以下の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開2010-9418号公報
【特許文献2】 特許第4106058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、着目するフレームの表示領域を拡大して当該フレームの視認性を高めるために、前述の技術により複数のフレームの大きさ及び配置を変更した後、それらの大きさ及び配置を変更前の状態に復元することは容易でない。例えばユーザは、変更された全てのフレームの大きさ及び配置を元に戻す操作が必要になる。
【0006】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、複数のアプリケーションがそれぞれ割り当てられた複数のフレームの状態の変更及び復元を容易にする技術を提供することを目的とする。」

イ「【0010】
(第1の実施形態)
この実施形態においては、本発明の表示制御装置を適用した情報処理装置と、本発明の表示制御プログラム及び表示制御方法を適用したウィンドウ・マネージャとについて説明する。
【0011】
まず、情報処理装置の構成について説明する。
【0012】
図1は、第1の実施形態における情報処理装置71の構成を示すブロック図である。情報処理装置71は、入力装置72及び表示装置73に接続される。入力装置72は、ユーザにより操作され、その操作を示す操作情報を情報処理装置71へ送る。表示装置73は、情報処理装置71から受けた表示情報に従って画面を表示する。」

ウ 図1


エ 図4


オ「【0025】
図4は、第1の実施形態における表示装置73の画面59の第1状態を示す模式図である。この第1状態は、S11が実行された状態である。
【0026】
この起動処理において、まず第1割り当て部31は、画面59上のウィンドウ51aを示すウィンドウ・オブジェクトを生成する。これにより、画面59上にウィンドウ51aが表示される。次に、アプリケーション42a,42b,42c,42d,42eが起動されると、第1割り当て部31はウィンドウ51a上に、フレーム52a,52b,52c,52d,52eを示すウィンドウ・オブジェクトをそれぞれ生成する。これにより、ウィンドウ51a上にフレーム52a,52b,52c,52d,52eが表示される。次に、第1割り当て部31は、アプリケーション42a,42b,42c,42d,42eの入出力をフレーム52a,52b,52c,52d,52eにそれぞれ割り当てる。これにより、フレーム52a,52b,52c,52d,52eは、アプリケーション42a,42b,42c,42d,42eの出力をそれぞれ表示する。
【0027】
以下の例においては、フレーム52a,52b,52c,52d,52eのうちフレーム52eが対象フレームとして選択される場合について説明する。また、対象フレームを含むウィンドウ51aを対象ウィンドウとし、対象フレームに割り当てられたアプリケーション42eを対象アプリケーションとする。
【0028】
次に、ユーザが入力装置72の操作を行うと、イベント・ハンドラ23は、周辺機器インタフェース13からCPU11が受けた操作情報に応じたイベント(割り込み)をウィンドウ・マネージャ22に通知する(S41)。次に、この割り込みを受けた第1割り当て部31は、受けたイベントと記憶装置12に格納されたイベント定義情報とを比較し、このイベントが第1特定操作を示すか否かの判定を行う(S43)。
【0029】
このイベントが第1特定操作を示さない場合(S43,N)、第1割り当て部31はこのフローをS71へ移行させる。
【0030】
このイベントが第1特定操作を示す場合(S43,Y)、第1割り当て部31は第1特定操作が行われたことを検出する。次に、第2割り当て部32は画面59上の新ウィンドウを示すウィンドウ・オブジェクトを生成して、画面59上に新ウィンドウを表示させ、対象アプリケーションの入出力を新ウィンドウに割り当て、対象フレームを書き込み禁止に設定する(S45)。即ち、対象アプリケーションの入出力の割り当て先が対象フレームから新ウィンドウへ変更される。」

第5 対比・判断

1 本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことが認められる。

ア 引用発明において,「ダッシュボードは,単一のディスプレイ提示の一部であるウィンドウ枠の集まりであり,」「臨床情報インタフェース内のウィンドウのいくつかが,1人または複数の患者についての臨床データを表示しており,」「1つまたは複数のウィンドウ枠205?210の集まりがダッシュボードであり,」「ある医師が,ある患者に関係するデータを表示するために,その患者の名前をクリックすることができ,ある患者が患者リストウィンドウから選択されたときに表示されるダッシュボードは,患者リストウィンドウから選択された患者についての臨床データを含むいくつかのウィンドウ枠を表示しており,患者リストウィンドウは,このダッシュボードの一部とみなさなくてもよく,」「第1ダッシュボードを見ながら,その第1ダッシュボード内の項目を選択したときに第2ダッシュボードを開けるよう,2つ以上のダッシュボードを互いにリンクさせることができ,第2ダッシュボードが開かれるとき,両方のダッシュボードを同時に見ることができるようにするような方法で第1ダッシュボードを配置することができ」るとされている。

ここで,引用発明の「ディスプレイ」および「臨床情報インタフェース内のウィンドウ」の内「1人」「の患者についての臨床データを表示して」いるものは,それぞれ,本願発明1の「表示画面」および「ウィンドウ内の複数のパネル」に相当する。

また,引用発明の「第1ダッシュボード」および「第2ダッシュボード」は,それぞれ,本願発明1の「或る患者に割り当てられた1つのウィンドウ」および「他のウィンドウ」に対応する。

さらに,引用発明において,「第1ダッシュボード」と「第2ダッシュボード」と「両方のダッシュボードを同時に見ることができるようにするような方法で第1ダッシュボードを配置することができ」るとされているから,本願発明1と引用発明とは,「或る患者に割り当てられた1つのウィンドウ内の複数のパネルにおける,前記或る患者の診療情報の表示と,」「他のウィンドウ内の複数のパネルにおける」「表示とを同時に行」っている点で共通しているといえる。

したがって,本願発明1と引用発明とは,「表示画面において,或る患者に割り当てられた1つのウィンドウ内の複数のパネルにおける,前記或る患者の診療情報の表示と,」「他のウィンドウ内の複数のパネルにおける」「表示とを同時に行う表示部」備えている点で共通しているといえる。

しかし,本願発明1では,「他のウィンドウ」が「他の患者に割り当てられ」ており,「他のウィンドウ内の複数のパネルにお」いて「他の患者の診療情報の」「表示」を行っているのに対して,引用発明では,「他のウィンドウ」が「他の患者に割り当てられ」たものか,否か,明らかでない点で相違している。

イ 引用発明では,「ダッシュボードのカスタマイズ化の例では,ユーザが,特定の患者について,第2ウィンドウ枠内に完全な検査報告書を表示する代わりに,ブドウ糖の変化についてのグラフを表示する方がより適切であると判断し,ユーザは,第2ウィンドウ枠内のビューが,検査報告書からブドウ糖の変化についてのグラフに変更された新しいダッシュボードを作成することができ,新しいダッシュボード385は保存することができ,ダッシュボードデータベースまたはライブラリ120に保存され,」「このユーザが他の患者に対してもダッシュボード325の代わりにダッシュボード385を使用できるように,この構成を保存することもでき,例えば,同様の医学的症状を有する患者を治療する際,このユーザにはデフォルトの事前構成されたダッシュボードの代わりに,再構成されたダッシュボード385が提示される」とされている。

ここで,引用発明の「ウィンドウ枠内のビュー」「の構成」は,本願発明1の「パネルのレイアウト」に対応する。

したがって,本願発明1と引用発明とは,「他の患者に割り当てられた他のウィンドウ内」での「パネルを,」「或る患者に割り当てられた1つのウィンドウ内の複数のパネル」「のレイアウトと同一のレイアウトで表示させ」ている点で共通しているといえる。

ウ 引用発明において,「臨床情報インタフェース内のウィンドウのいくつかが,1人または複数の患者についての臨床データを表示しており,」「(1)患者のスキャン結果を表示するスキャン結果ウィンドウ510,(2)いくつかの検査結果を表示する検査結果ウィンドウ515,(3)その患者の基本情報(demographic)を表示する基本情報ウィンドウ520,(4)看護情報を表示する看護情報ウィンドウ525,(5)その患者の生命徴候を表示する生命徴候ウィンドウ530,および(6)その患者の報告書を表示する報告書ウィンドウ535,を含むダッシュボードがそのユーザに提示され」る。

ここで,引用発明の「臨床情報システムにおいて,」「(1)患者のスキャン結果を表示するスキャン結果ウィンドウ510,(2)いくつかの検査結果を表示する検査結果ウィンドウ515,(3)その患者の基本情報(demographic)を表示する基本情報ウィンドウ520,(4)看護情報を表示する看護情報ウィンドウ525,(5)その患者の生命徴候を表示する生命徴候ウィンドウ530,および(6)その患者の報告書を表示する報告書ウィンドウ535」は,広義の「電子カルテ」情報に他ならない。

また,「ウィンドウ」を「ディスプレイ」表示できる引用発明の「臨床情報システム」がコンピュータ等の「装置」で構成されていることは,当業者にとって明らかである。

したがって,本願発明1と引用発明とは,「電子カルテ」情報を表示する「装置」である点で共通しているといえる。

(2)一致点・相違点

本願発明1と,引用発明とは,以下アの点で一致し,以下イの点で相違する。

ア 一致点

「表示画面において,或る患者に割り当てられた1つのウィンドウ内の複数のパネルにおける,前記或る患者の診療情報の表示と,他のウィンドウ内の複数のパネルにおける表示とを同時に行う表示部
を具備し,
他の患者に割り当てられた他のウィンドウ内で前記パネルを,前記1つのウィンドウ内における前記パネルのレイアウトと同一のレイアウトで表示させる
電子カルテ装置。」

イ 相違点

(ア) 相違点1

本願発明1では,「他のウィンドウ」が「他の患者に割り当てられ」ており,「他のウィンドウ内の複数のパネルにお」いて「他の患者の診療情報の」「表示」を行っているのに対して,引用発明では,「他のウィンドウ」が「他の患者に割り当てられ」たものか,否か,明らかでない点。

(イ) 相違点2

本願発明1では「1つのウィンドウ内の前記複数のパネルのうち,少なくとも2つのパネル間のドッキングと,前記他のウィンドウ内の前記複数のパネルのうち,少なくとも2つのパネル間のドッキングとを制御し,前記表示部を制御して,前記表示画面上において,前記1つのウィンドウ内でドッキングされた前記パネルを表示させ,且つ,前記他のウィンドウ内でドッキングされた前記パネルを表示させる制御部」「を具備し」ているのに対して,引用発明では,そのような構成を備えていない点。

(ウ) 相違点3

本願発明1では,「1つのウィンドウ内でドッキングされた前記パネルを,前記1つのウィンドウの外の領域で表示せずに,前記1つのウィンドウ内の領域のみで表示させ,且つ,前記他のウィンドウ内でドッキングされた前記パネルを,前記他のウィンドウの外の領域で表示せずに,前記他のウィンドウ内の領域のみで,表示させ,前記1つのウィンドウ内の表示状態と,前記他のウィンドウ内の表示状態とを同期させる」のに対して,引用発明では,そのような構成を備えていない点。

(3)相違点についての判断

事案に鑑みて,まず,相違点3について検討する。

本願発明1の相違点3に係る構成の,特に,「前記1つのウィンドウ内の表示状態と,前記他のウィンドウ内の表示状態とを同期させる」という構成について,引用文献1ないし引用文献3には,いずれも,「或る患者に割り当てられた」「1つのウィンドウ内の表示状態と,」「他の患者に割り当てられた」「他のウィンドウ内の表示状態とを同期させる」ことは記載も示唆も無く,当該構成が周知であったとも認められない。

また,本願発明1は,上記相違点3に係る構成の内,特に,「前記1つのウィンドウ内の表示状態と,前記他のウィンドウ内の表示状態とを同期させる」という構成を採用することにより,ユーザは、複数の患者の診療情報を同時に表示する各ウィンドウ内におけるパネルレイアウトは同期しているので、一方の患者のウィンドウ内でパネルレイアウトを調整すれば、同時に他方の患者のウィンドウ内でもパネルレイアウトが調整され、複数の患者の診療情報の対比が非常に行いやすくなり,「ユーザが、複数の患者の診療情報を同時に閲覧する場合等において、複数の患者の診療情報を対比しやすくなり、ユーザの利便性をさらに向上させることができる。」(段落0066)という格別の効果を奏するといえる。

したがって,引用発明および引用文献2ならびに引用文献3に基づいて,当業者は本願発明1の相違点3に係る構成を容易に想到することができない。

エ 小括

したがって,上記相違点1および2について判断するまでもなく,本願発明1は,引用発明および引用文献2ならびに引用文献3に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし本願発明4について

本願発明2ないし本願発明4は,いずれも,本願発明1と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,引用発明および引用文献2ならびに引用文献3に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明5について

本願発明5は,本願発明1の発明のカテゴリを,単に,「電子カルテ装置」から,「電子カルテ制御方法」に変更したものであり,本願発明1と同様の構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,引用発明および引用文献2ならびに引用文献3に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 むすび

以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-11-09 
出願番号 特願2016-246931(P2016-246931)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木内 康裕  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 野崎 大進
富澤 哲生
発明の名称 電子カルテ装置および電子カルテ制御方法  
代理人 特許業務法人鷲田国際特許事務所  

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