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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B05D |
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管理番号 | 1379802 |
異議申立番号 | 異議2020-700582 |
総通号数 | 264 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-12-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-08-11 |
確定日 | 2021-09-30 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6654380号発明「建材の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6654380号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-5]について訂正することを認める。 特許第6654380号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 特許第6654380号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6654380号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成27年8月31日の特許出願であって、令和2年2月3日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年同月26日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、その特許に対して、令和2年8月11日に特許異議申立人 中嶋 美奈子(以下、「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年10月26日付けで取消理由が通知され、同年12月24日に特許権者 ニチハ株式会社(以下、「特許権者」という。)より訂正の請求がなされるとともに意見書の提出がされ、令和3年1月8日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を行ったところ、同年2月4日に特許異議申立人より意見書の提出がされ、同年2月26日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年6月1日に特許権者より訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされるとともに意見書の提出がされ、同年同月11日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を行ったところ、特許異議申立人より何ら応答がなかったものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。) (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「木補強材を含む無機質材の上に、第一紫外線硬化型塗料を塗布し、不完全硬化させる第一のステップと、 第二紫外線硬化型塗料を塗布し、完全硬化させる第二のステップと、 完全硬化した前記第二紫外線硬化型塗料を研磨し、表面を平滑にする第三のステップと、 エナメル塗料を塗布し、硬化させる第四のステップとを備え、 前記第一のステップにおいて、前記第一紫外線硬化型塗料として、充填剤を固形分対比で40?70質量%含む塗料を用い、 前記第二のステップにおいて、前記第二紫外線硬化型塗料として、充填剤を固形分対比で40?70質量%含む塗料を、前記第一紫外線硬化型塗料が不完全硬化の状態で塗布し、 前記第一のステップにおいて、前記第一紫外線硬化型塗料の塗布量は、前記第一紫外線硬化型塗料により形成される塗膜の膜厚が10?150μmとなるように塗布し、 前記第二のステップにおいて、前記第二紫外線硬化型塗料の塗布量は、前記第二紫外線硬化型塗料により形成される塗膜の膜厚が30?150μmとなるように塗布し、 前記第三のステップにおいて、硬化後の前記第二紫外線硬化型塗料による膜厚が10?130μmとなるように研磨する ことを特徴とする建材の製造方法。」 と記載されているのを、 「木補強材としての木片を固形分対比で5?30質量%含む無機質材の表面を研磨する事前研磨ステップと、 前記無機質材表面に、第一紫外線硬化型塗料を塗布し、不完全硬化させる第一のステップと、 第二紫外線硬化型塗料を塗布し、完全硬化させる第二のステップと、 完全硬化した前記第二紫外線硬化型塗料を研磨し、表面を平滑にする第三のステップと、 エナメル塗料を塗布し、硬化させる第四のステップと、 保護塗料を塗布して保護塗膜を形成する第五のステップと、を備え、 前記第一のステップにおいて、前記第一紫外線硬化型塗料として、充填剤を固形分対比で40?70質量%含む塗料を用い、 前記第二のステップにおいて、前記第二紫外線硬化型塗料として、充填剤を固形分対比で40?70質量%含む塗料を、前記第一紫外線硬化型塗料が不完全硬化の状態で塗布し、 前記第一のステップにおいて、前記第一紫外線硬化型塗料の塗布量は、前記第一紫外線硬化型塗料により形成される塗膜の膜厚が10?150μmとなるように塗布し、 前記第二のステップにおいて、前記第二紫外線硬化型塗料の塗布量は、前記第二紫外線硬化型塗料により形成される塗膜の膜厚が30?150μmとなるように塗布し、 前記第三のステップにおいて、硬化後の前記第二紫外線硬化型塗料による膜厚が10?130μmとなるように研磨し、 前記第一のステップでは、前記無機質材表面に塗布された前記第一紫外線硬化型塗料を不完全硬化させて、当該第一紫外線硬化型塗料から形成される第1塗膜に前記無機質材由来の木補強材を固定し、前記第二のステップでは、当該第1塗膜上に塗布された前記第二紫外線硬化型塗料を完全硬化させて、前記無機質材由来の木補強材を含有しない第2塗膜を形成し、前記第三のステップでは、当該第2塗膜の表面を平滑化し、前記第四のステップでは、当該第2塗膜上に塗布された前記エナメル塗料を硬化させてエナメル塗膜を形成することによって鏡面仕上げし、前記第五のステップでは、当該エナメル塗膜上に前記保護塗料を塗布して前記保護塗膜を形成する、 ことを特徴とする建材の製造方法(但し、前記無機質材として抄造石膏板を用い、且つ当該抄造石膏板上に形成される前記各塗膜からなる有機塗膜層の膜厚を140μm以下とする、建材の製造方法を除く)。」 に訂正する。 請求項1の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に、 「木補強材を含む無機質材の上に、第一紫外線硬化型塗料を塗布し、不完全硬化させる第一のステップと、 第二紫外線硬化型塗料を塗布し、完全硬化させる第二のステップと、 完全硬化した前記第二紫外線硬化型塗料を研磨し、表面を平滑にする第三のステップと、 エナメル塗料を塗布し、硬化させる第四のステップとを備え、 前記第一のステップにおいて、前記第一紫外線硬化型塗料として、充填剤を固形分対比で40?70質量%含む塗料を用い、 前記第二のステップにおいて、前記第二紫外線硬化型塗料として、充填剤を固形分対比で40?70質量%含む塗料を、前記第一紫外線硬化型塗料が不完全硬化の状態で塗布し、 前記第一のステップにおける前記第一紫外線硬化型塗料の塗布量は、前記第二のステップにおける前記第二紫外線硬化型塗料の塗布量よりも少ない ことを特徴とする建材の製造方法。」 と記載されているのを、 「木補強材としての木片を固形分対比で5?30質量%含む無機質材の表面を研磨する事前研磨ステップと、 前記無機質材表面に、第一紫外線硬化型塗料を塗布し、不完全硬化させる第一のステップと、 第二紫外線硬化型塗料を塗布し、完全硬化させる第二のステップと、 完全硬化した前記第二紫外線硬化型塗料を研磨し、表面を平滑にする第三のステップと、 エナメル塗料を塗布し、硬化させる第四のステップと、 保護塗料を塗布して保護塗膜を形成する第五のステップと、を備え、 前記第一のステップにおいて、前記第一紫外線硬化型塗料として、充填剤を固形分対比で40?70質量%含む塗料を用い、 前記第二のステップにおいて、前記第二紫外線硬化型塗料として、充填剤を固形分対比で40?70質量%含む塗料を、前記第一紫外線硬化型塗料が不完全硬化の状態で塗布し、 前記第一のステップにおける前記第一紫外線硬化型塗料の塗布量は、前記第二のステップにおける前記第二紫外線硬化型塗料の塗布量よりも少なく、 前記第一のステップでは、前記無機質材表面に塗布された前記第一紫外線硬化型塗料を不完全硬化させて、当該第一紫外線硬化型塗料から形成される第1塗膜に前記無機質材由来の木補強材を固定し、前記第二のステップでは、当該第1塗膜上に塗布された前記第二紫外線硬化型塗料を完全硬化させて、前記無機質材由来の木補強材を含有しない第2塗膜を形成し、前記第三のステップでは、当該第2塗膜の表面を平滑化し、前記第四のステップでは、当該第2塗膜上に塗布された前記エナメル塗料を硬化させてエナメル塗膜を形成することによって鏡面仕上げし、前記第五のステップでは、当該エナメル塗膜上に前記保護塗料を塗布して前記保護塗膜を形成する、 ことを特徴とする建材の製造方法(但し、前記無機質材として抄造石膏板を用い、且つ当該抄造石膏板上に形成される前記各塗膜からなる有機塗膜層の膜厚を140μm以下とする、建材の製造方法を除く)。」 に訂正する。 請求項2の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に、 「木補強材を含む無機質材の上に、第一紫外線硬化型塗料を塗布し、不完全硬化させる第一のステップと、 第二紫外線硬化型塗料を塗布し、完全硬化させる第二のステップと、 完全硬化した前記第二紫外線硬化型塗料を研磨し、表面を平滑にする第三のステップと、 エナメル塗料を塗布し、硬化させる第四のステップとを備え、 前記第一のステップにおいて、前記第一紫外線硬化型塗料として、充填剤を固形分対比で40?70質量%含む塗料を用い、 前記第二のステップにおいて、前記第二紫外線硬化型塗料として、充填剤を固形分対比で40?70質量%含む塗料を、前記第一紫外線硬化型塗料が不完全硬化の状態で塗布し、 前記第一紫外線硬化型塗料として、完全硬化に必要な紫外線照射量が前記第二紫外線硬化型塗料以下である塗料を用いる ことを特徴とする建材の製造方法。」 と記載されているのを、 「木補強材としての木片を固形分対比で5?30質量%含む無機質材の表面を研磨する事前研磨ステップと、 前記無機質材表面に、第一紫外線硬化型塗料を塗布し、不完全硬化させる第一のステップと、 第二紫外線硬化型塗料を塗布し、完全硬化させる第二のステップと、 完全硬化した前記第二紫外線硬化型塗料を研磨し、表面を平滑にする第三のステップと、 エナメル塗料を塗布し、硬化させる第四のステップと、 保護塗料を塗布して保護塗膜を形成する第五のステップと、を備え、 前記第一のステップにおいて、前記第一紫外線硬化型塗料として、充填剤を固形分対比で40?70質量%含む塗料を用い、 前記第二のステップにおいて、前記第二紫外線硬化型塗料として、充填剤を固形分対比で40?70質量%含む塗料を、前記第一紫外線硬化型塗料が不完全硬化の状態で塗布し、 前記第一紫外線硬化型塗料として、完全硬化に必要な紫外線照射量が前記第二紫外線硬化型塗料以下である塗料を用い、 前記第一のステップでは、前記無機質材表面に塗布された前記第一紫外線硬化型塗料を不完全硬化させて、当該第一紫外線硬化型塗料から形成される第1塗膜に前記無機質材由来の木補強材を固定し、前記第二のステップでは、当該第1塗膜上に塗布された前記第二紫外線硬化型塗料を完全硬化させて、前記無機質材由来の木補強材を含有しない第2塗膜を形成し、前記第三のステップでは、当該第2塗膜の表面を平滑化し、前記第四のステップでは、当該第2塗膜上に塗布された前記エナメル塗料を硬化させてエナメル塗膜を形成することによって鏡面仕上げし、前記第五のステップでは、当該エナメル塗膜上に前記保護塗料を塗布して前記保護塗膜を形成する、 ことを特徴とする建材の製造方法(但し、前記無機質材として抄造石膏板を用い、且つ当該抄造石膏板上に形成される前記各塗膜からなる有機塗膜層の膜厚を140μm以下とする、建材の製造方法を除く)。」 に訂正する。 請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に、「請求項1?3のいずか1項」と記載されていたのを、「請求項1?3のいずれか1項」と訂正する。 (5) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正事項1について 訂正事項1に係る請求項1の訂正は、建材の製造方法において、無機質材として「木補強材としての木片を固形分対比で5?30質量%含む」ことを特定するとともに、「無機質材の表面を研磨する事前研磨ステップ」、「保護塗料を塗布して保護塗膜を形成する第五のステップ」を有すること、「前記第一のステップでは、前記無機質材表面に塗布された前記第一紫外線硬化型塗料を不完全硬化させて、当該第一紫外線硬化型塗料から形成される第1塗膜に前記無機質材由来の木補強材を固定し、前記第二のステップでは、当該第1塗膜上に塗布された前記第二紫外線硬化型塗料を完全硬化させて、前記無機質材由来の木補強材を含有しない第2塗膜を形成し、前記第三のステップでは、当該第2塗膜の表面を平滑化し、前記第四のステップでは、当該第2塗膜上に塗布された前記エナメル塗料を硬化させてエナメル塗膜を形成することによって鏡面仕上げし、前記第五のステップでは、当該エナメル塗膜上に前記保護塗料を塗布して前記保護塗膜を形成する」ものであること、「前記無機質材として抄造石膏板を用い、且つ当該抄造石膏板上に形成される前記各塗膜からなる有機塗膜層の膜厚を140μm以下とする、建材の製造方法を除く」ことを特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、訂正前の請求項5、明細書の発明の詳細な説明の段落【0012】、【0022】、【0023】、【0028】、【0037】、【0038】、【0046】ないし【0049】及び【0056】の記載から見て、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから新規事項の追加に該当するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 請求項1の記載を引用する請求項4についても同様である。 (2) 訂正事項2、3について 訂正事項2に係る請求項2の訂正、及び、訂正事項3に係る請求項3の訂正はいずれも、訂正事項1と同じく、建材の製造方法において、無機質材として「木補強材としての木片を固形分対比で5?30質量%含む」ことを特定するとともに、「無機質材の表面を研磨する事前研磨ステップ」、「保護塗料を塗布して保護塗膜を形成する第五のステップ」を有すること、「前記第一のステップでは、前記無機質材表面に塗布された前記第一紫外線硬化型塗料を不完全硬化させて、当該第一紫外線硬化型塗料から形成される第1塗膜に前記無機質材由来の木補強材を固定し、前記第二のステップでは、当該第1塗膜上に塗布された前記第二紫外線硬化型塗料を完全硬化させて、前記無機質材由来の木補強材を含有しない第2塗膜を形成し、前記第三のステップでは、当該第2塗膜の表面を平滑化し、前記第四のステップでは、当該第2塗膜上に塗布された前記エナメル塗料を硬化させてエナメル塗膜を形成することによって鏡面仕上げし、前記第五のステップでは、当該エナメル塗膜上に前記保護塗料を塗布して前記保護塗膜を形成する」ものであること、「前記無機質材として抄造石膏板を用い、且つ当該抄造石膏板上に形成される前記各塗膜からなる有機塗膜層の膜厚を140μm以下とする、建材の製造方法を除く」ことを特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、上記(1)の場合と同様に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから新規事項の追加に該当するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 請求項2、3の記載を引用する請求項4についてもそれぞれ同様である。 (3) 訂正事項4について 訂正事項4に係る請求項4の訂正は、誤記の訂正を目的とするものである。そして、新規事項の追加に該当するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。 (4) 訂正事項5について 訂正事項5に係る請求項5の訂正は、請求項5の削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、新規事項の追加に該当するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。 3 訂正の適否についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-5]について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 木補強材としての木片を固形分対比で5?30質量%含む無機質材の表面を研磨する事前研磨ステップと、 前記無機質材表面に、第一紫外線硬化型塗料を塗布し、不完全硬化させる第一のステップと、 第二紫外線硬化型塗料を塗布し、完全硬化させる第二のステップと、 完全硬化した前記第二紫外線硬化型塗料を研磨し、表面を平滑にする第三のステップと、 エナメル塗料を塗布し、硬化させる第四のステップと、 保護塗料を塗布して保護塗膜を形成する第五のステップと、を備え、 前記第一のステップにおいて、前記第一紫外線硬化型塗料として、充填剤を固形分対比で40?70質量%含む塗料を用い、 前記第二のステップにおいて、前記第二紫外線硬化型塗料として、充填剤を固形分対比で40?70質量%含む塗料を、前記第一紫外線硬化型塗料が不完全硬化の状態で塗布し、 前記第一のステップにおいて、前記第一紫外線硬化型塗料の塗布量は、前記第一紫外線硬化型塗料により形成される塗膜の膜厚が10?150μmとなるように塗布し、 前記第二のステップにおいて、前記第二紫外線硬化型塗料の塗布量は、前記第二紫外線硬化型塗料により形成される塗膜の膜厚が30?150μmとなるように塗布し、 前記第三のステップにおいて、硬化後の前記第二紫外線硬化型塗料による膜厚が10?130μmとなるように研磨し、 前記第一のステップでは、前記無機質材表面に塗布された前記第一紫外線硬化型塗料を不完全硬化させて、当該第一紫外線硬化型塗料から形成される第1塗膜に前記無機質材由来の木補強材を固定し、前記第二のステップでは、当該第1塗膜上に塗布された前記第二紫外線硬化型塗料を完全硬化させて、前記無機質材由来の木補強材を含有しない第2塗膜を形成し、前記第三のステップでは、当該第2塗膜の表面を平滑化し、前記第四のステップでは、当該第2塗膜上に塗布された前記エナメル塗料を硬化させてエナメル塗膜を形成することによって鏡面仕上げし、前記第五のステップでは、当該エナメル塗膜上に前記保護塗料を塗布して前記保護塗膜を形成する、 ことを特徴とする建材の製造方法(但し、前記無機質材として抄造石膏板を用い、且つ当該抄造石膏板上に形成される前記各塗膜からなる有機塗膜層の膜厚を140μm以下とする、建材の製造方法を除く)。 【請求項2】 木補強材としての木片を固形分対比で5?30質量%含む無機質材の表面を研磨する事前研磨ステップと、 前記無機質材表面に、第一紫外線硬化型塗料を塗布し、不完全硬化させる第一のステップと、 第二紫外線硬化型塗料を塗布し、完全硬化させる第二のステップと、 完全硬化した前記第二紫外線硬化型塗料を研磨し、表面を平滑にする第三のステップと、 エナメル塗料を塗布し、硬化させる第四のステップと、 保護塗料を塗布して保護塗膜を形成する第五のステップと、を備え、 前記第一のステップにおいて、前記第一紫外線硬化型塗料として、充填剤を固形分対比で40?70質量%含む塗料を用い、 前記第二のステップにおいて、前記第二紫外線硬化型塗料として、充填剤を固形分対比で40?70質量%含む塗料を、前記第一紫外線硬化型塗料が不完全硬化の状態で塗布し、 前記第一のステップにおける前記第一紫外線硬化型塗料の塗布量は、前記第二のステップにおける前記第二紫外線硬化型塗料の塗布量よりも少なく、 前記第一のステップでは、前記無機質材表面に塗布された前記第一紫外線硬化型塗料を不完全硬化させて、当該第一紫外線硬化型塗料から形成される第1塗膜に前記無機質材由来の木補強材を固定し、前記第二のステップでは、当該第1塗膜上に塗布された前記第二紫外線硬化型塗料を完全硬化させて、前記無機質材由来の木補強材を含有しない第2塗膜を形成し、前記第三のステップでは、当該第2塗膜の表面を平滑化し、前記第四のステップでは、当該第2塗膜上に塗布された前記エナメル塗料を硬化させてエナメル塗膜を形成することによって鏡面仕上げし、前記第五のステップでは、当該エナメル塗膜上に前記保護塗料を塗布して前記保護塗膜を形成する、 ことを特徴とする建材の製造方法(但し、前記無機質材として抄造石膏板を用い、且つ当該抄造石膏板上に形成される前記各塗膜からなる有機塗膜層の膜厚を140μm以下とする、建材の製造方法を除く)。 【請求項3】 木補強材としての木片を固形分対比で5?30質量%含む無機質材の表面を研磨する事前研磨ステップと、 前記無機質材表面に、第一紫外線硬化型塗料を塗布し、不完全硬化させる第一のステップと、 第二紫外線硬化型塗料を塗布し、完全硬化させる第二のステップと、 完全硬化した前記第二紫外線硬化型塗料を研磨し、表面を平滑にする第三のステップと、 エナメル塗料を塗布し、硬化させる第四のステップと、 保護塗料を塗布して保護塗膜を形成する第五のステップと、を備え、 前記第一のステップにおいて、前記第一紫外線硬化型塗料として、充填剤を固形分対比で40?70質量%含む塗料を用い、 前記第二のステップにおいて、前記第二紫外線硬化型塗料として、充填剤を固形分対比で40?70質量%含む塗料を、前記第一紫外線硬化型塗料が不完全硬化の状態で塗布し、 前記第一紫外線硬化型塗料として、完全硬化に必要な紫外線照射量が前記第二紫外線硬化型塗料以下である塗料を用い、 前記第一のステップでは、前記無機質材表面に塗布された前記第一紫外線硬化型塗料を不完全硬化させて、当該第一紫外線硬化型塗料から形成される第1塗膜に前記無機質材由来の木補強材を固定し、前記第二のステップでは、当該第1塗膜上に塗布された前記第二紫外線硬化型塗料を完全硬化させて、前記無機質材由来の木補強材を含有しない第2塗膜を形成し、前記第三のステップでは、当該第2塗膜の表面を平滑化し、前記第四のステップでは、当該第2塗膜上に塗布された前記エナメル塗料を硬化させてエナメル塗膜を形成することによって鏡面仕上げし、前記第五のステップでは、当該エナメル塗膜上に前記保護塗料を塗布して前記保護塗膜を形成する、 ことを特徴とする建材の製造方法(但し、前記無機質材として抄造石膏板を用い、且つ当該抄造石膏板上に形成される前記各塗膜からなる有機塗膜層の膜厚を140μm以下とする、建材の製造方法を除く)。 【請求項4】 請求項1?3のいずれか1項に記載の建材の製造方法であって、 前記第一紫外線硬化型塗料と前記第二紫外線硬化型塗料は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂の少なくともいずれかを主成分として含む ことを特徴とする建材の製造方法。 【請求項5】(削除)」 第4 特許異議申立人が主張する特許異議申立理由について 特許異議申立人が特許異議申立書において、訂正前の請求項1ないし5に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。 申立理由(進歩性) 本件特許の訂正前の請求項1ないし5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有するもの(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 <証拠方法> 甲第1号証:特開2015-120339号公報 甲第2号証:特表2006-521994号公報 甲第3号証:特開2015-71288号公報 甲第4号証:特開昭63-4943号公報 第5 令和3年2月26日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要 当審が令和3年2月26日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 取消理由(進歩性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 なお、取消理由には、申立理由が包含される。 第6 当審の判断 1 主な証拠の記載事項等 (1) 甲第1号証の記載事項 甲第1号証には、次の事項が記載されている。(下線は当審において付したも のである。) 「【請求項5】 抄造石膏板を基板とし、該基板の表面を研磨処理した後含浸シーラー処理し、 次いで下塗り層及び上塗り層をこの順で形成する化粧板の製造方法であって、 (a)下塗り塗装として下塗り層形成用有機塗料を塗布し、硬化させ、表面研磨し、膜厚が5?120μmの下塗り層を形成し、 (b)上塗り塗装として上塗り層形成用有機塗料を塗布し、硬化させ、膜厚が5?40μmの上塗り層を形成し、 (c)ただし、前記下塗り層と前記上塗り層とからなる有機塗膜層の膜厚を140μm以下とすることを特徴とする化粧板の製造方法。」 「【請求項8】 下塗り層が紫外線硬化型塗料による層であり、上塗り層がアクリルウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、塩化ビニル樹脂塗料、塩化ビニリデン樹脂塗料、アクリルシリコーン樹脂塗料及びフッ素樹脂塗料から選ばれる1種以上による層である請求項5?7のいずれかに記載の化粧板の製造方法。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、不燃性を有し、低湿度クリーンルーム等の湿度が極端に低い環境においても、内装材として使用できる窯業系化粧板及びその製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 クリーンルーム等の湿度が低い環境における内装材として、従来からけい酸カルシウム板や繊維強化セメント板等の窯業系材料を基板とし、その表面に塗膜層を形成し、あるいは化粧フィルムを接着した不燃の窯業系化粧板が使用されている(特許文献1)。けい酸カルシウム板は、多孔質であるため断熱性が高く、一方、多孔質であっても吸放湿に伴う寸法変化が比較的小さい、すなわち寸法安定性が比較的優れた材料であることから、クリーンルーム用内装材に適した材料である。しかし、最近は、例えばリチウム電池製造設備等を設置するために用いる、湿度が極端に低い条件となるクリーンルームの需要が増加しつつある。けい酸カルシウム板は、多孔質であっても寸法安定性が比較的優れた材料ではあるが、湿度が極端に低くなると、吸放湿に伴う寸法変化により反り等が発生することがあるため、寸法安定性が更に高く、湿度が極端に低い環境における内装材に適した不燃の窯業系化粧板が必要とされている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】特開2008-155391号公報 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 すなわち、本発明の課題は、十分な不燃性を確保しつつ、塗膜性能及び外観が良好で、極端な低湿度の環境に対して十分な適性を有する窯業系化粧板を提供することにある。」 【0010】 本発明において、基板として用いる抄造石膏板は、マトリックス形成原料である水和性石膏、無機系混和材(炭酸カルシウム粉末等)及び繊維原料(木質パルプ等)を主原料とし、これらの原料に水を加えて混合して原料スラリーを形成し、原料スラリーを丸網抄造機等により所定の厚さに抄造して未硬化状態の生板(グリーンシート)を形成し、生板に対して必要に応じてプレス成形を行い、養生硬化することにより得られる材料である。 【0011】 抄造石膏板は、見掛け密度が概ね1.5?1.7g/cm^(3)であり、従来から一般のクリーンルーム用化粧板の基板として使用されているけい酸カルシウム板(以下:けい酸カルシウム板)の見掛け密度よりも高い。一方、抄造石膏板の平衡含水率は0.3%程度であり、けい酸カルシウム板の平衡含水率よりも低い。また、寸法安定性を評価するための試験である吸水による長さ変化率が、抄造石膏板は0.05?0.07%程度であり、けい酸カルシウム板に比べ小さいことから、吸放湿に伴う寸法安定性が更に高く、湿度が極端に低い環境用の窯業系化粧板の基板に適している。 【0012】 一方、抄造石膏板及びけい酸カルシウム板は、ともに抄造法によって製造される材料である。抄造法においては、抄造繊維として原料にパルプが用いられ、抄造石膏板もけい酸カルシウム板もパルプの配合比率はほぼ同程度である。抄造石膏板は、けい酸カルシウム板よりも見掛け密度が高いから、単位体積当たり含有されるパルプの質量は、けい酸カルシウム板よりも多い。パルプは可燃物であるから、抄造石膏板の単位体積当たりの発熱量は、けい酸カルシウム板よりも多くなる。また、クリーンルームの内装材として使用する場合、抄造石膏板及びけい酸カルシウム板とも厚さに差はない。従って、不燃の窯業系化粧板の基板として抄造石膏板を用いる場合、不燃性能を確保するため、けい酸カルシウム板を用いる場合よりも塗膜層の発熱量を低くしなければならない。」 「【0018】 基板の表面に、含浸シーラー処理を行う。含浸シーラー処理を行うことにより、基板の表層が強化されるとともに、その上層となる下塗り層との密着性も向上する。 含浸シーラー層は、公知のシーラーを用いて形成させることができ、例えば湿気硬化型ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等の硬化性樹脂を用い、基板の表面に塗布し硬化させること等により行われる。含浸シーラーは基板への含浸性が良く、高不揮発分であり、かつ、基板中の水分や雰囲気の湿気と反応して三次元架橋し、耐水性能等が良いポリイソシアネート又はポリイソシアネートとポリオールとの反応生成物である遊離イソシアネート基を有するプレポリマー及び酢酸ブチルのような溶剤を主成分とする湿気硬化型ウレタン系のものが好適である。また、化粧板としての黄変が問題となる場合には、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)等の脂肪族イソシアネート、IPDI(イソホロンジイソシアネート)等の脂環族イソシアネート、MDI(メチレンビス(4,1-フェニレン)=ジイソシアネート)等の芳香族イソシアネートを使用することが好ましい。なお昨今の揮発性有機化合物(VOC)対策の観点から溶剤を含んでいない無溶剤シーラーを使用することや、ケイ酸リチウムあるいはケイ酸ナトリウムなどのケイ酸塩系シーラー等の無機シーラーや、テトラエトキシシランやテトラメトキシシランなどを主成分とするシラン化合物系シーラーも使用できる。 含浸シーラー処理は、抄造石膏板の表面温度を5?50℃の範囲に調整し、公知のロールコーター、スプレー等の方法で含浸シーラーを塗布し、次いで硬化することにより行うことができる。含浸シーラーの粘度は、使用する含浸シーラーの種類、塗装方法を勘案して適宜決めることができ、硬化は、例えば加熱乾燥することにより行うことができる。 【0019】 また、本発明においては、基板の裏面も含浸シーラー処理し補強を行うのが好適である。化粧板の施工方法としては、接着工法が多く用いられており、基板の裏面を補強しておくと、施工性が向上するからである。基板の裏面についても含浸シーラー処理する場合、後述する下塗り層を形成する前に裏面の含浸シーラー処理を行うのが一般的であるが、下塗り層を形成した後に行ってもよい。」 「【0022】 本発明の化粧板は、含浸シーラー処理した基板の上に下塗り層を有し、その下塗り層の表面は研磨されており、膜厚は5?120μmであることが重要である。下塗り層を形成することにより、基板の表面に存在する大小の凹凸部や、空隙部が塗料により充填され、凹凸感、塗料の吸い込み斑による光沢・色のばらつき感が抑制される。また、化粧板にピンホールのような不良が生じる可能性も減じられる。また、下塗り層を形成した後は、表面を研磨処理する。研磨処理を行うことにより、下地が平滑となり、その上に形成される上塗り層の塗膜の意匠性が損なわれず、良好な塗膜性能を確保することができる。」 「【0024】 下塗り層を形成するための塗料は、基板隠蔽性、表面平滑性、耐薬品性、塗膜密着性、研磨加工性、塗膜硬度、塗装容易性、クラック防止性の点から、ラジカルオリゴマー系塗料やモノマーラジカル系塗料、例えばエポキシ系アクリレート、ウレタン系アクリレート、エステル系アクリレート、アクリル系アクリレート、シリコン系アクリレート、不飽和ポリエステル系塗料が好ましく、具体的にはエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、フタル酸ジアリルエステルなどのアリル系不飽和ポリエステル、無水マレイン酸やフマル酸などの不飽和二塩基酸とグリコール類との重縮合によるマレイン酸系不飽和ポリエステル、官能基としてカルボキシル基や水酸基を持つポリエステルモノアクリレート、アクリル酸と2塩基酸と2価アルコールから得られるポリエステルジアクリレート、3価以上の多価アルコールと2塩基酸とアクリル酸から得られるポリエステルポリアクリレート等のポリエステルアクリレート、エポキシアクリレートオリゴマー、エポキシオリゴマー等のオリゴマー類、アクリルポリエーテル、ポリエーテルアクリレート等が挙げられる。また、下塗り層を形成するための塗料は紫外線硬化型塗料とすることが、塗布容易性や、塗膜の硬化速度が早い点、塗膜の被研削性や耐久性、基板や上塗り塗料との密着性に優れることから好ましい。塗料を塗布した後は、紫外線を照射して塗料を硬化させ、下塗り層を形成し、次いで研磨を行う。また、下塗り層を形成するための塗料は基板隠蔽性の確保および可燃物の含有率を減らして発熱量を低減させる目的から、炭酸カルシウムなどの無機顔料を添加したものが好ましい。下塗り塗料の塗布方法は、ロールコーターやフローコーター等を用いる方法が挙げられ、中でも、基板表面に存在する大小の凹凸部や、空隙部を塗料により充填する効果を考慮すると、ロールコーターが適している。」 「【0026】 下塗り層を形成するための下塗り塗装は、1回で所定の膜厚の下塗り層を形成することもできるし、2回以上行って所定の膜厚の下塗り層を形成することもできる。例えば、下塗り塗装を2回行って所定の膜厚の下塗り層を形成する場合は、1回目の下塗り塗装を行った後、紫外線を照射して下塗り塗料を硬化させる際に、紫外線の照射量を加減して完全には硬化しないようにし、その上に2回目の下塗り塗装を行った後に再度紫外線を照射して、下塗り塗料全体を完全に硬化させ下塗り層を形成する。また、3回以上の下塗り塗装を行う場合も、2回の場合と同様に、最後の下塗り塗装を行った後の紫外線照射により、下塗り塗料全体を完全に硬化させ下塗り層を形成する。本発明の化粧板においては、けい酸カルシウム板よりも発熱量の多い抄造石膏板を基板として用いるため、必要な塗膜性能と不燃性とを確保するには、塗膜厚さの制御が重要である。この観点から、基板表面に存在する大小の凹凸部や空隙部を塗料により充填する効果と、表面平滑性をさらに向上させる効果とを効率よく得るため下塗り塗装を2回行うことにより下塗り層の塗膜を形成するのがよい。」 「【実施例】 【0038】 以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されない。 【0039】 (1)抄造石膏板(基板) 基板として、厚さ5mmのエフジーボード((株)エーアンドエーマテリアル製)を使用した。実施例及び比較例において使用したエフジーボードは、有機繊維原料としてパルプが5.5質量%配合されたものであり、見掛け密度は1.6g/cm^(3)、吸水による長さ変化率は0.06%、平衡含水率は0.3%であった。 【0040】 (2)塗料 各塗装は、次の塗料を使用して行った。 含浸シーラー1:DIC株式会社 UCシーラーW004K(イソシアネート系) 含浸シーラー2:大日本塗料株式会社 Vセラン#100NSシーラー(イソシアネート系) 下塗り塗料1:DIC株式会社 SKS-WP(不飽和ポリエステル系) 下塗り塗料2:大日本塗料株式会社 ルーセン#600NR-1(エポキシアクリレート系) 下塗り塗料3:大日本塗料株式会社 ルーセン#600NR-2(エポキシアクリレート系) 上塗り塗料:大日本塗料株式会社 ASA#100PRTR(アクリルウレタン系) 【0041】 実施例1 含水率を0.5%に調整した基板の表面にロールコーターを用いて、有機固形分濃度が40%の含浸シーラー1を70g/m^(2)塗布し、一方、基板の裏面には、前記浸シーラー1を20g/m^(2)塗布し、基板の表裏面全体で有機固形分が36g/m^(2)となる含浸シーラー層を形成した。 次にロールコーターを用いて基板表面側に下塗り塗料1を50g/m^(2)塗布した後、紫外線照射により下塗り塗料を一部硬化させて塗膜を形成し、次いで再度ロールコーターを用いて、前記塗膜の上に前記下塗り塗料1を50g/m^(2)塗布た後、紫外線照射により下塗り塗料を完全に硬化させて塗膜を形成した。次に、プラテン研磨機により前記塗膜の表面を平滑に研磨して、膜厚が40μmで有機固形分量が20g/m^(2)となる下塗り層を形成した。 さらに下塗り層の上から、ロールコーターを用いて上塗り塗料を10g/m^(2)塗布した後、フローコーターを用いて同一の上塗り塗料を95g/m^(2)塗布し、熱風式乾燥機を用い100℃の雰囲気中で30分加熱乾燥して上塗り塗膜を硬化させ、膜厚が30μmで有機固形分量が26g/m^(2)となる上塗り層を形成し、化粧板を得た。この化粧板の下塗り層と上塗り層とを併せた有機塗膜層の膜厚は70μmであった。」 「【0055】 実施例6 含水率を0.5%に調整した基板の表面にロールコーターを用いて、有機固形分濃度が100%の含浸シーラー2を25g/m^(2)塗布し、一方、基板の裏面には、前記浸シーラー2を10g/m^(2)塗布し、基板の表裏面全体で有機固形分が35g/m^(2)となる含浸シーラー層を形成した。 次にロールコーターを用いて基板表面側に下塗り塗料2を50g/m^(2)塗布した後、紫外線照射により下塗り塗料を一部硬化させて塗膜を形成し、次いで再度ロールコーターを用いて、前記塗膜の上に下塗り塗料3を50g/m^(2)塗布した後、紫外線照射により下塗り塗料を完全に硬化させて塗膜を形成した。次に、プラテン研磨機により前記塗膜の表面を平滑に研磨して、膜厚が40μmで有機固形分量が20g/m^(2)となる下塗り層を形成した。 さらに下塗り層の上から、ロールコーターを用いて上塗り塗料を10g/m^(2)塗布した後、フローコーターを用いて同一の上塗り塗料を95g/m^(2)塗布し、熱風式乾燥機を用い100℃の雰囲気中で30分加熱乾燥して上塗り塗膜を硬化させ、膜厚が30μmで有機固形分量が26g/m^(2)となる上塗り層を形成し、化粧板を得た。この化粧板の下塗り層と上塗り層とを併せた有機塗膜層の膜厚は70μmであった。」 (2) 甲第1号証に記載された発明 (1)の記載、特に実施例6の記載を中心に整理すると、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1実施例6発明」という。)が記載されていると認める。 「有機繊維原料としてパルプが5.5質量%配合された抄造石膏板基板(エフジーボード)の表面側に下塗り塗料2(大日本塗料株式会社 ルーセン#600NR-1(エポキシアクリレート系))を50g/m^(2)塗布した後、紫外線照射により下塗り塗料を一部硬化させて塗膜を形成し、次いで再度ロールコーターを用いて、前記塗膜の上に下塗り塗料3(大日本塗料株式会社 ルーセン#600NR-2(エポキシアクリレート系))を50g/m^(2)塗布した後、紫外線照射により下塗り塗料を完全に硬化させて塗膜を形成し、次に、プラテン研磨機により前記塗膜の表面を平滑に研磨して、膜厚が40μmで有機固形分量が20g/m^(2)となる下塗り層を形成し、 さらに下塗り層の上から、ロールコーターを用いて上塗り塗料(大日本塗料株式会社 ASA#100PRTR(アクリルウレタン系))を10g/m^(2)塗布した後、フローコーターを用いて同一の上塗り塗料を95g/m^(2)塗布し、熱風式乾燥機を用い100℃の雰囲気中で30分加熱乾燥して上塗り塗膜を硬化させ、膜厚が30μmで有機固形分量が26g/m^(2)となる上塗り層を形成する、化粧板の製造方法。」 2 対比・判断 (1) 本件発明1について 本件発明1と甲1実施例6発明とを対比する。 甲1実施例6発明の「有機繊維原料としてパルプが5.5質量%配合された抄造石膏板基板」は、本件発明1の「無機質材」に相当する。 また、甲1実施例6発明の「下塗り塗料2(大日本塗料株式会社 ルーセン#600NR-1(エポキシアクリレート系))」、下塗り塗料3(大日本塗料株式会社 ルーセン#600NR-2(エポキシアクリレート系))」はそれぞれ、本件発明1の「第一紫外線硬化型塗料」、「第二紫外線硬化型塗料」に相当するから、甲1実施例6発明の「下塗り塗料2(大日本塗料株式会社 ルーセン#600NR-1(エポキシアクリレート系))を50g/m^(2)塗布した後、紫外線照射により下塗り塗料を一部硬化させて塗膜を形成」する工程、「前記塗膜の上に下塗り塗料3(大日本塗料株式会社 ルーセン#600NR-2(エポキシアクリレート系))を50g/m^(2)塗布した後、紫外線照射により下塗り塗料を完全に硬化させて塗膜を形成」する工程はそれぞれ、本件発明1の「第一紫外線硬化型塗料を塗布し、不完全硬化させる第一のステップ」、「第二紫外線硬化型塗料を塗布し、完全硬化させる第二のステップ」に相当する。 さらに、甲1実施例6発明の「プラテン研磨機により前記塗膜の表面を平滑に研磨」する工程、「上塗り塗料(大日本塗料株式会社 ASA#100PRTRアクリルウレタン系))を10g/m^(2)塗布した後、フローコーターを用いて同一の上塗り塗料を95g/m^(2)塗布し、熱風式乾燥機を用い100℃の雰囲気中で30分加熱乾燥して上塗り塗膜を硬化させ、膜厚が30μmで有機固形分量が26g/m^(2)となる上塗り層を形成する」工程はそれぞれ、本件発明1の「完全硬化した前記第二紫外線硬化型塗料を研磨し、表面を平滑にする第三のステップ」、「塗料を塗布し、硬化させる第四のステップ」に相当する。 してみると、両者は、 「無機質材表面に、第一紫外線硬化型塗料を塗布し、不完全硬化させる第一のステップと、 第二紫外線硬化型塗料を塗布し、完全硬化させる第二のステップと、 完全硬化した前記第二紫外線硬化型塗料を研磨し、表面を平滑にする第三のステップと、 塗料を塗布し、硬化させる第四のステップとを備える、 建材の製造方法。」 で一致し、次の点で相違する。 (相違点1) 第一紫外線硬化型塗料及び第二紫外線硬化型塗料における充填剤の固形分対比について、本件発明1はいずれも「40?70質量%含む」と特定されるのに対し、甲1実施例6発明ではそのような特定がない点。 (相違点2) 塗膜の膜厚について、本件発明1は「前記第一のステップにおいて、前記第一紫外線硬化型塗料の塗布量は、前記第一紫外線硬化型塗料により形成される塗膜の膜厚が10?150μmとなるように塗布し、前記第二のステップにおいて、前記第二紫外線硬化型塗料の塗布量は、前記第二紫外線硬化型塗料により形成される塗膜の膜厚が30?150μmとなるように塗布し、前記第三のステップにおいて、硬化後の前記第二紫外線硬化型塗料による膜厚が10?130μmとなるように研磨する」と特定されるのに対して、甲1実施例6発明ではそのような特定がない点。 (相違点3) 第四のステップにおいて塗布する塗料が、本件発明1は「エナメル塗料」であるのに対して、甲1実施例6発明にはそのような特定がない点。 (相違点4) 建材の製造方法において、本件発明1は「木補強材としての木片を固形分対比で5?30質量%含む無機質材の表面を研磨する事前研磨ステップ」を有するのに対し、甲1実施例6発明ではそのような特定がない点。 (相違点5) 建材の製造方法において、本件発明1は「保護塗料を塗布して保護塗膜を形成する第五のステップ」を有するのに対し、甲1実施例6発明ではそのような特定がない点。 (相違点6) 建材の製造方法において、本件発明1は「前記第一のステップでは、前記無機質材表面に塗布された前記第一紫外線硬化型塗料を不完全硬化させて、当該第一紫外線硬化型塗料から形成される第1塗膜に前記無機質材由来の木補強材を固定し、前記第二のステップでは、当該第1塗膜上に塗布された前記第二紫外線硬化型塗料を完全硬化させて、前記無機質材由来の木補強材を含有しない第2塗膜を形成し、前記第三のステップでは、当該第2塗膜の表面を平滑化し、前記第四のステップでは、当該第2塗膜上に塗布された前記エナメル塗料を硬化させてエナメル塗膜を形成することによって鏡面仕上げし、前記第五のステップでは、当該エナメル塗膜上に前記保護塗料を塗布して前記保護塗膜を形成する」ものであることを特定するのに対し、甲1実施例6発明ではそのような特定がない点。 (相違点7) 建材の製造方法において、本件発明1は「(但し、前記無機質材として抄造石膏板を用い、且つ当該抄造石膏板上に形成される前記各塗膜からなる有機塗膜層の膜厚を140μm以下とする、建材の製造方法を除く)」と特定するのに対し、甲1実施例6発明ではそのような特定がない点。 事案に鑑み、まず相違点4について検討する。 甲第1号証には、基板として用いる抄造石膏板について、「マトリックス形成原料である水和性石膏、無機系混和材(炭酸カルシウム粉末等)及び繊維原料(木質パルプ等)を主原料とし、これらの原料に水を加えて混合して原料スラリーを形成し、原料スラリーを丸網抄造機等により所定の厚さに抄造して未硬化状態の生板(グリーンシート)を形成し、生板に対して必要に応じてプレス成形を行い、養生硬化することにより得られる材料である」(【0010】)と記載されている。つまり、甲1実施例6発明の基板として用いられる抄造石膏板は、有機繊維原料としてパルプのような「繊維原料」を用いるものであって、本件発明1のように「木片」を用いることは想定されていない。ましてや、木片を所定量含む無機質材の表面を研磨する事前研磨するステップを設ける、すなわち、相違点4に係る本件発明1の特定事項を満たすものとする動機付けもない。 また、相違点4に係る本件発明1の特定事項を満たすものとすることが、当該技術分野においてよく知られていたものであるともいえない。 してみれば、他の相違点については検討するまでもなく、本件発明1は、甲1実施例6発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2) 本件発明2について 本件発明2と甲1実施例6発明とを対比する。 甲1実施例6発明の「有機繊維原料としてパルプが5.5質量%配合された抄造石膏板基板」は、本件発明2の「無機質材」に相当する。 また、甲1実施例6発明の「下塗り塗料2(大日本塗料株式会社 ルーセン#600NR-1(エポキシアクリレート系))」、下塗り塗料3(大日本塗料株式会社 ルーセン#600NR-2(エポキシアクリレート系))」はそれぞれ、本件発明2の「第一紫外線硬化型塗料」、「第二紫外線硬化型塗料」に相当するから、甲1実施例6発明の「下塗り塗料2(大日本塗料株式会社 ルーセン#600NR-1(エポキシアクリレート系))を50g/m^(2)塗布した後、紫外線照射により下塗り塗料を一部硬化させて塗膜を形成」する工程、「前記塗膜の上に下塗り塗料3(大日本塗料株式会社 ルーセン#600NR-2(エポキシアクリレート系))を50g/m^(2)塗布した後、紫外線照射により下塗り塗料を完全に硬化させて塗膜を形成」する工程はそれぞれ、本件発明2の「第一紫外線硬化型塗料を塗布し、不完全硬化させる第一のステップ」、「第二紫外線硬化型塗料を塗布し、完全硬化させる第二のステップ」に相当する。 さらに、甲1実施例6発明の「プラテン研磨機により前記塗膜の表面を平滑に研磨」する工程、「上塗り塗料(大日本塗料株式会社 ASA#100PRTR(アクリルウレタン系))を10g/m^(2)塗布した後、フローコーターを用いて同一の上塗り塗料を95g/m^(2)塗布し、熱風式乾燥機を用い100℃の雰囲気中で30分加熱乾燥して上塗り塗膜を硬化させ、膜厚が30μmで有機固形分量が26g/m^(2)となる上塗り層を形成する」工程はそれぞれ、本件発明2の「完全硬化した前記第二紫外線硬化型塗料を研磨し、表面を平滑にする第三のステップ」、「塗料を塗布し、硬化させる第四のステップ」に相当する。 してみると、両者は、 「無機質材表面に、第一紫外線硬化型塗料を塗布し、不完全硬化させる第一のステップと、 第二紫外線硬化型塗料を塗布し、完全硬化させる第二のステップと、 完全硬化した前記第二紫外線硬化型塗料を研磨し、表面を平滑にする第三のステップと、 塗料を塗布し、硬化させる第四のステップとを備える、 建材の製造方法。」 で一致し、次の点で相違する。 (相違点8) 第一紫外線硬化型塗料及び第二紫外線硬化型塗料における充填剤の固形分対比について、本件発明2はいずれも「40?70質量%含む」と特定されるのに対し、甲1実施例6発明ではそのような特定がない点。 (相違点9) 塗料の塗布量について、本件発明2は「前記第一のステップにおける前記第一紫外線硬化型塗料の塗布量は、前記第二のステップにおける前記第二紫外線硬化型塗料の塗布量よりも少ない」と特定されるのに対して、甲1実施例6発明ではそのような特定がない点。 (相違点10) 第四のステップにおいて塗布する塗料が、本件発明2は「エナメル塗料」であるのに対して、甲1実施例6発明にはそのような特定がない点。 (相違点11) 建材の製造方法において、本件発明2は「木補強材としての木片を固形分対比で5?30質量%含む無機質材の表面を研磨する事前研磨ステップ」を有するのに対し、甲1実施例6発明ではそのような特定がない点。 (相違点12) 建材の製造方法において、本件発明2は「保護塗料を塗布して保護塗膜を形成する第五のステップ」を有するのに対し、甲1実施例6発明ではそのような特定がない点。 (相違点13) 建材の製造方法において、本件発明2は「前記第一のステップでは、前記無機質材表面に塗布された前記第一紫外線硬化型塗料を不完全硬化させて、当該第一紫外線硬化型塗料から形成される第1塗膜に前記無機質材由来の木補強材を固定し、前記第二のステップでは、当該第1塗膜上に塗布された前記第二紫外線硬化型塗料を完全硬化させて、前記無機質材由来の木補強材を含有しない第2塗膜を形成し、前記第三のステップでは、当該第2塗膜の表面を平滑化し、前記第四のステップでは、当該第2塗膜上に塗布された前記エナメル塗料を硬化させてエナメル塗膜を形成することによって鏡面仕上げし、前記第五のステップでは、当該エナメル塗膜上に前記保護塗料を塗布して前記保護塗膜を形成する」ものであることを特定するのに対し、甲1実施例6発明ではそのような特定がない点。 (相違点14) 建材の製造方法において、本件発明2は「(但し、前記無機質材として抄造石膏板を用い、且つ当該抄造石膏板上に形成される前記各塗膜からなる有機塗膜層の膜厚を140μm以下とする、建材の製造方法を除く)」と特定するのに対し、甲1実施例6発明ではそのような特定がない点。 事案に鑑み、まず相違点11について検討する。 相違点11は、上記(1)の相違点4と同旨であり、上記(1)の検討と同様に考えられる。 してみれば、他の相違点については検討するまでもなく、本件発明2は、甲1実施例6発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 本件発明3について 本件発明3と甲1実施例6発明とを対比する。 甲1実施例6発明の「有機繊維原料としてパルプが5.5質量%配合された抄造石膏板基板」は、本件発明3の「無機質材」に相当する。 また、甲1実施例6発明の「下塗り塗料2(大日本塗料株式会社 ルーセン#600NR-1(エポキシアクリレート系))」、下塗り塗料3(大日本塗料株式会社 ルーセン#600NR-2(エポキシアクリレート系))」はそれぞれ、本件発明3の「第一紫外線硬化型塗料」、「第二紫外線硬化型塗料」に相当するから、甲1実施例6発明の「下塗り塗料2(大日本塗料株式会社 ルーセン#600NR-1(エポキシアクリレート系))を50g/m^(2)塗布した後、紫外線照射により下塗り塗料を一部硬化させて塗膜を形成」する工程、「前記塗膜の上に下塗り塗料3(大日本塗料株式会社 ルーセン#600NR-2(エポキシアクリレート系))を50g/m^(2)塗布した後、紫外線照射により下塗り塗料を完全に硬化させて塗膜を形成」する工程はそれぞれ、本件発明3の「第一紫外線硬化型塗料を塗布し、不完全硬化させる第一のステップ」、「第二紫外線硬化型塗料を塗布し、完全硬化させる第二のステップ」に相当する。 さらに、甲1実施例6発明の「プラテン研磨機により前記塗膜の表面を平滑に研磨」する工程、「上塗り塗料(大日本塗料株式会社 ASA#100PRTR(アクリルウレタン系))を10g/m^(2)塗布した後、フローコーターを用いて同一の上塗り塗料を95g/m^(2)塗布し、熱風式乾燥機を用い100℃の雰囲気中で30分加熱乾燥して上塗り塗膜を硬化させ、膜厚が30μmで有機固形分量が26g/m^(2)となる上塗り層を形成する」工程はそれぞれ、本件発明3の「完全硬化した前記第二紫外線硬化型塗料を研磨し、表面を平滑にする第三のステップ」、「塗料を塗布し、硬化させる第四のステップ」に相当する。 してみると、両者は、 「無機質材表面に、第一紫外線硬化型塗料を塗布し、不完全硬化させる第一のステップと、 第二紫外線硬化型塗料 を塗布し、完全硬化させる第二のステップと、 完全硬化した前記第二紫外線硬化型塗料を研磨し、表面を平滑にする第三のステップと、 塗料を塗布し、硬化させる第四のステップとを備える、 建材の製造方法。」 で一致し、次の点で相違する。 (相違点15) 第一紫外線硬化型塗料及び第二紫外線硬化型塗料における充填剤の固形分対比について、本件発明3はいずれも「40?70質量%含む」と特定されるのに対し、甲1実施例6発明ではそのような特定がない点。 (相違点16) 塗料について、本件発明3は「前記第一紫外線硬化型塗料として、完全硬化に必要な紫外線照射量が前記第二紫外線硬化型塗料以下である塗料を用いる」と特定されるのに対して、甲1実施例6発明ではそのような特定がない点。 (相違点17) 第四のステップにおいて塗布する塗料が、本件発明3は「エナメル塗料」であるのに対して、甲1実施例6発明にはそのような特定がない点。 (相違点18) 建材の製造方法において、本件発明3は「木補強材としての木片を固形分対比で5?30質量%含む無機質材の表面を研磨する事前研磨ステップ」を有するのに対し、甲1実施例6発明ではそのような特定がない点。 (相違点19) 建材の製造方法において、本件発明3は「保護塗料を塗布して保護塗膜を形成する第五のステップ」を有するのに対し、甲1実施例6発明ではそのような特定がない点。 (相違点20) 建材の製造方法において、本件発明3は「前記第一のステップでは、前記無機質材表面に塗布された前記第一紫外線硬化型塗料を不完全硬化させて、当該第一紫外線硬化型塗料から形成される第1塗膜に前記無機質材由来の木補強材を固定し、前記第二のステップでは、当該第1塗膜上に塗布された前記第二紫外線硬化型塗料を完全硬化させて、前記無機質材由来の木補強材を含有しない第2塗膜を形成し、前記第三のステップでは、当該第2塗膜の表面を平滑化し、前記第四のステップでは、当該第2塗膜上に塗布された前記エナメル塗料を硬化させてエナメル塗膜を形成することによって鏡面仕上げし、前記第五のステップでは、当該エナメル塗膜上に前記保護塗料を塗布して前記保護塗膜を形成する」ものであることを特定するのに対し、甲1実施例6発明ではそのような特定がない点。 (相違点21) 建材の製造方法において、本件発明3は「(但し、前記無機質材として抄造石膏板を用い、且つ当該抄造石膏板上に形成される前記各塗膜からなる有機塗膜層の膜厚を140μm以下とする、建材の製造方法を除く)」と特定するのに対し、甲1実施例6発明ではそのような特定がない点。 事案に鑑み、まず相違点18について検討する。 相違点18は、上記(1)の相違点4と同旨であり、上記(1)の検討と同様に考えられる。 してみれば、他の相違点については検討するまでもなく、本件発明3は、甲1実施例6発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4) 本件発明4について 本件発明4は、請求項1ないし3のいずれか1項を引用する発明であり、本件発明1ないし本件発明3のいずれかの特定事項を全て有するものである。 そして、上記(1)ないし(3)のとおり、本件発明1ないし本件発明3はいずれも、甲1実施例6発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1ないし本件発明3のいずれかの特定事項を全て含む発明である本件発明4もまた、甲1実施例6発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第7 結語 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件特許の請求項5に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項5に係る特許異議の申立ては、いずれも、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 木補強材としての木片を固形分対比で5?30質量%含む無機質材の表面を研磨する事前研磨ステップと、 前記無機質材表面に、第一紫外線硬化型塗料を塗布し、不完全硬化させる第一のステップと、 第二紫外線硬化型塗料を塗布し、完全硬化させる第二のステップと、 完全硬化した前記第二紫外線硬化型塗料を研磨し、表面を平滑にする第三のステップと、 エナメル塗料を塗布し、硬化させる第四のステップと、 保護塗料を塗布して保護塗膜を形成する第五のステップと、を備え、 前記第一のステップにおいて、前記第一紫外線硬化型塗料として、充填剤を固形分対比で40?70質量%含む塗料を用い、 前記第二のステップにおいて、前記第二紫外線硬化型塗料として、充填剤を固形分対比で40?70質量%含む塗料を、前記第一紫外線硬化型塗料が不完全硬化の状態で塗布し、 前記第一のステップにおいて、前記第一紫外線硬化型塗料の塗布量は、前記第一紫外線硬化型塗料により形成される塗膜の膜厚が10?150μmとなるように塗布し、 前記第二のステップにおいて、前記第二紫外線硬化型塗料の塗布量は、前記第二紫外線硬化型塗料により形成される塗膜の膜厚が30?150μmとなるように塗布し、 前記第三のステップにおいて、硬化後の前記第二紫外線硬化型塗料による膜厚が10?130μmとなるように研磨し、 前記第一のステップでは、前記無機質材表面に塗布された前記第一紫外線硬化型塗料を不完全硬化させて、当該第一紫外線硬化型塗料から形成される第1塗膜に前記無機質材由来の木補強材を固定し、前記第二のステップでは、当該第1塗膜上に塗布された前記第二紫外線硬化型塗料を完全硬化させて、前記無機質材由来の木補強材を含有しない第2塗膜を形成し、前記第三のステップでは、当該第2塗膜の表面を平滑化し、前記第四のステップでは、当該第2塗膜上に塗布された前記エナメル塗料を硬化させてエナメル塗膜を形成することによって鏡面仕上げし、前記第五のステップでは、当該エナメル塗膜上に前記保護塗料を塗布して前記保護塗膜を形成する、 ことを特徴とする建材の製造方法(但し、前記無機質材として抄造石膏板を用い、且つ当該抄造石膏板上に形成される前記各塗膜からなる有機塗膜層の膜厚を140μm以下とする、建材の製造方法を除く)。 【請求項2】 木補強材としての木片を固形分対比で5?30質量%含む無機質材の表面を研磨する事前研磨ステップと、 前記無機質材表面に、第一紫外線硬化型塗料を塗布し、不完全硬化させる第一のステップと、 第二紫外線硬化型塗料を塗布し、完全硬化させる第二のステップと、 完全硬化した前記第二紫外線硬化型塗料を研磨し、表面を平滑にする第三のステップと、 エナメル塗料を塗布し、硬化させる第四のステップと、 保護塗料を塗布して保護塗膜を形成する第五のステップと、を備え、 前記第一のステップにおいて、前記第一紫外線硬化型塗料として、充填剤を固形分対比で40?70質量%含む塗料を用い、 前記第二のステップにおいて、前記第二紫外線硬化型塗料として、充填剤を固形分対比で40?70質量%含む塗料を、前記第一紫外線硬化型塗料が不完全硬化の状態で塗布し、 前記第一のステップにおける前記第一紫外線硬化型塗料の塗布量は、前記第二のステップにおける前記第二紫外線硬化型塗料の塗布量よりも少なく、 前記第一のステップでは、前記無機質材表面に塗布された前記第一紫外線硬化型塗料を不完全硬化させて、当該第一紫外線硬化型塗料から形成される第1塗膜に前記無機質材由来の木補強材を固定し、前記第二のステップでは、当該第1塗膜上に塗布された前記第二紫外線硬化型塗料を完全硬化させて、前記無機質材由来の木補強材を含有しない第2塗膜を形成し、前記第三のステップでは、当該第2塗膜の表面を平滑化し、前記第四のステップでは、当該第2塗膜上に塗布された前記エナメル塗料を硬化させてエナメル塗膜を形成することによって鏡面仕上げし、前記第五のステップでは、当該エナメル塗膜上に前記保護塗料を塗布して前記保護塗膜を形成する、 ことを特徴とする建材の製造方法(但し、前記無機質材として抄造石膏板を用い、且つ当該抄造石膏板上に形成される前記各塗膜からなる有機塗膜層の膜厚を140μm以下とする、建材の製造方法を除く)。 【請求項3】 木補強材としての木片を固形分対比で5?30質量%含む無機質材の表面を研磨する事前研磨ステップと、 前記無機質材表面に、第一紫外線硬化型塗料を塗布し、不完全硬化させる第一のステップと、 第二紫外線硬化型塗料を塗布し、完全硬化させる第二のステップと、 完全硬化した前記第二紫外線硬化型塗料を研磨し、表面を平滑にする第三のステップと、 エナメル塗料を塗布し、硬化させる第四のステップと、 保護塗料を塗布して保護塗膜を形成する第五のステップと、を備え、 前記第一のステップにおいて、前記第一紫外線硬化型塗料として、充填剤を固形分対比で40?70質量%含む塗料を用い、 前記第二のステップにおいて、前記第二紫外線硬化型塗料として、充填剤を固形分対比で40?70質量%含む塗料を、前記第一紫外線硬化型塗料が不完全硬化の状態で塗布し、 前記第一紫外線硬化型塗料として、完全硬化に必要な紫外線照射量が前記第二紫外線硬化型塗料以下である塗料を用い、 前記第一のステップでは、前記無機質材表面に塗布された前記第一紫外線硬化型塗料を不完全硬化させて、当該第一紫外線硬化型塗料から形成される第1塗膜に前記無機質材由来の木補強材を固定し、前記第二のステップでは、当該第1塗膜上に塗布された前記第二紫外線硬化型塗料を完全硬化させて、前記無機質材由来の木補強材を含有しない第2塗膜を形成し、前記第三のステップでは、当該第2塗膜の表面を平滑化し、前記第四のステップでは、当該第2塗膜上に塗布された前記エナメル塗料を硬化させてエナメル塗膜を形成することによって鏡面仕上げし、前記第五のステップでは、当該エナメル塗膜上に前記保護塗料を塗布して前記保護塗膜を形成する、 ことを特徴とする建材の製造方法(但し、前記無機質材として抄造石膏板を用い、且つ当該抄造石膏板上に形成される前記各塗膜からなる有機塗膜層の膜厚を140μm以下とする、建材の製造方法を除く)。 【請求項4】 請求項1?3のいずれか1項に記載の建材の製造方法であって、 前記第一紫外線硬化型塗料と前記第二紫外線硬化型塗料は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂の少なくともいずれかを主成分として含む ことを特徴とする建材の製造方法。 【請求項5】(削除) |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2021-09-10 |
出願番号 | 特願2015-171134(P2015-171134) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(B05D)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 横島 隆裕 |
特許庁審判長 |
細井 龍史 |
特許庁審判官 |
須藤 康洋 植前 充司 |
登録日 | 2020-02-03 |
登録番号 | 特許第6654380号(P6654380) |
権利者 | ニチハ株式会社 |
発明の名称 | 建材の製造方法 |
代理人 | 岡本 寛之 |
代理人 | 古澤 寛 |
代理人 | 岡本 寛之 |
代理人 | 古澤 寛 |