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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B65D
審判 全部申し立て 2項進歩性  B65D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B65D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65D
管理番号 1379805
異議申立番号 異議2020-700731  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-09-25 
確定日 2021-09-21 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6671639号発明「ガラス合紙、ガラス板積層体、及びガラス板梱包体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6671639号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?9〕について訂正することを認める。 特許第6671639号の請求項1?9に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6671639号(以下「本件特許」という。)の請求項1?9に係る特許についての出願は、平成28年9月2日(優先権主張 平成27年9月29日)を出願日とする出願であって、令和2年3月6日にその特許権の設定登録(特許掲載公報令和2年3月25日発行)がされ、その後、その特許について、令和2年9月25日に特許異議申立人佐藤武史(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされ、令和3年1月12日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である令和3年3月5日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされ、この本件訂正請求について、令和3年4月23日に申立人より意見書が提出され、令和3年7月15日付けで訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である令和3年8月5日に手続補正書及び意見書が提出されたものである。

第2 訂正の請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求は、特許第6671639号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?9について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲を、次のように訂正するものである。
なお、本件訂正請求には、白物異物の個数の単位を「個/269m2以下」とする訂正が含まれていたが、令和3年8月5日の手続補正書により、それらの訂正は削除された。

《訂正事項1》
特許請求の範囲の請求項1に「評価用ガラス板」と記載されているのを、「FPD用ガラス板からなる評価用ガラス板」と訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2?9も同様に訂正する。)

2 訂正の適否
(1)一群の請求項について
訂正前の請求項2?9は、訂正前の請求項1を、直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、本件訂正請求は、一群の請求項ごとにされたものである。

(2)訂正事項1について
訂正事項1は、「評価用ガラス板」について、用途によりガラス板を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書」という。)の段落【0036】に「評価用ガラス板28としては、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等のFPD用ガラス板を例示するが、これに限定されるものではなく、建築用ガラス板、車両用ガラス板等を含む、平板状のガラス板を挙げることもできる。」と記載されており、訂正事項1は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものである。
さらに、訂正事項1は、上記のように、訂正前の請求項1の発明特定事項をさらに限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

3 訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、訂正後の請求項〔1?9〕について訂正を認める。

第3 本件特許発明
上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項1?9に係る発明(以下「本件発明1」等といい、本件発明1?9を「本件発明」という。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
ガラス合紙であって、下記の測定方法により計数した50μm以下の大きさの白色異物の数が10個/269m^(2)以下であるガラス合紙。
[測定方法]
(A)FPD用ガラス板からなる評価用ガラス板(厚さ0.7mmで、370mm×470mmのサイズ)に、ガラス合紙を(回数:100回、時間:4秒/回、圧力:0.45MPa、評価用ガラス板温度:55℃)押圧し、
(B)押圧を終えた前記評価用ガラス板を搬送(ラインスピード200cm/min)しながら、純水を供給(流量:57L/min)し、前記評価用ガラス板の上側に2本、及び下側に2本配置された合計4本のロールブラシ(ロール径(内径):φ60、ロール径(外径):φ80、毛径:0.06mm/密巻、材質:ナイロン612、回転数:300rpm、距離:上下0mm)で前記評価用ガラス板を洗浄し、
(C)オルボテック社製 オフライン欠陥検査システム(FPI-6000シリーズ(型番:FPI6090D))を用いて、洗浄された前記評価用ガラス板の全異物を検査して、全異物の画像を取得し、
(D)前記画像に基づいて前記全異物を目視で外観観察し、前記全異物の中から50μm以下の大きさの白色異物の数を計数する。
【請求項2】
ガラス合紙であって、前記測定方法により計数した50μm以下の大きさの白色異物の数が6個/269m^(2)以下である請求項1に記載のガラス合紙。
【請求項3】
ガラス合紙であって、前記測定方法により計数した50μm以下の大きさの白色異物の数が3個/269m^(2)以下である請求項2に記載のガラス合紙。
【請求項4】
2200mm×1800mm以上であるガラス板に用いられるガラス合紙であって、前記ガラス合紙のサイズは、前記ガラス板のサイズと同じ、もしくはそれよりも大きい請求項1から3のいずれか一に記載のガラス合紙。
【請求項5】
2200mm×1800mm以上であるガラス板に用いられるガラス合紙であって、前記ガラス合紙のサイズは、前記ガラス板のサイズよりも縦横ともに20mm以上大きい請求項1から3のいずれか一に記載のガラス合紙。
【請求項6】
JIS P8224: 2002に準拠して測定される有機物の含有量が0.08質量%以下である請求項1から5のいずれか一に記載のガラス合紙。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一に記載のガラス合紙とガラス板とを交互に積層させたガラス板積層体。
【請求項8】
請求項7に記載のガラス板積層体と、前記ガラス板積層体を載置するパレットとを備えるガラス板梱包体。
【請求項9】
前記パレットが、前記ガラス板積層体が平積み状態で載置されるパレットである請求項8に記載のガラス板梱包体。」

第4 特許異議の申立てについて
1 取消理由の概要
(1)特許法第36条第6項第2号に係る理由
本件発明1の「50μm以下の大きさの白色異物の数が10個/269m^(2)以下であるガラス合紙」とは、
・特定の成分や構造(特に表面について)のガラス、例えば特定の品番のガラスから成る「評価用ガラス板」との間で、「50μm以下の大きさの白色異物の数が10個/269m^(2)以下」を満たすガラス合紙を特定しようとするものであるのか、
あるいは、
・上記以外の、成分や構造を問わない「評価用ガラス板」との間でも、「50μm以下の大きさの白色異物の数が10個/269m^(2)以下」を満たすガラス合紙を特定しようとするものであるのか、不明である。
よって、本件発明1は明確ではない。
また、本件発明1の記載を引用する本件発明2?9も明確ではない。

(2)特許法第36条第6項第1号に係る理由
本件発明1が、どのようなガラス板との間でも、特定の異物の個数が少ない汎用のガラス合紙を特定しようとするものであるとすると、発明の詳細な説明では、特定の「評価用ガラス板」以外の他のガラス板との間で、「50μm以下の大きさの白色異物の数が10個/269m^(2)以下」を満たすガラス合紙であるか評価しておらず、どのようなガラス板との間でも、「50μm以下の大きさの白色異物の数が10個/269m^(2)以下」を満たすガラス合紙であるか否かは不明である。
よって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。本件発明2?9も同様である。

(3)特許法第36条第4項第1号に係る理由
本件発明が、どのようなガラス板との間でも、特定の異物の個数が少ない汎用のガラス合紙を特定しようとするものであるとすると、発明の詳細な説明には、特定の「評価用ガラス板」以外の、どのようなガラス板との間でも、「50μm以下の大きさの白色異物の数が10個/269m^(2)以下」を満たすガラス合紙を製造する方法は記載されていない。
よって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。

2 取消理由についての判断
(1)特許法第36条第6項第2号に係る理由
本件発明1には、「FPD用ガラス板からなる評価用ガラス板(厚さ0.7mmで、370mm×470mmのサイズ)」と記載されており、この記載から、FPD(フラットパネルディスプレイ)に用いられるガラス板を評価用ガラスとすることが理解でき、本件発明1は明確である。

(2)特許法第36条第6項第1号に係る理由
ア 特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定される要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ そこで、本件特許明細書の発明の詳細な説明を参照すると、本件発明の解決しようとする課題は、「ガラス合紙から転写される異物に起因する汚染、及び配線等の不良の発生を充分に抑制できるガラス合紙、および、このガラス合紙を用いるガラス板積層体、及びガラス板梱包体を提供すること」(段落【0012】)であり、この課題に対し、「異物の総数に占める50μm以下の大きさの白色異物の個数はガラス合紙ごとに異なる。発明者らは異物の総数ではなく、50μm以下の大きさの白色異物の個数に注目し、50μm以下の大きさの白色異物の少ないガラス合紙が、結果としてガラス板の断線等の不良の発生を抑制できることを見出し」(段落【0082】)、ガラス合紙を、厚さが0.5mmで、2500×2200mmサイズのFPD用のガラス板の間に介在させて、実施例1?3の「50μm以下の大きさの白色異物の数が10個/269m^(2)以下」を満たすガラス合紙は、幅が10μmの直線状の配線を形成したときの断線状況が「○」と評価されることが確認されているから、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。

(3)特許法第36条第4項第1号に係る理由
本件特許明細書の発明の詳細な説明を参照すると、本件発明の「FPD用ガラス板」に用いる「ガラス合紙」について、その製造方法が段落【0085】?【0118】に記載されており、FPD用のガラス板に対して使用した際に、実施例1?3として所定の性能を発揮できることが、段落【0120】?【0135】に記載されているから、発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1?9に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。

(4)申立人の意見書について
申立人は、意見書で、「「評価用ガラス」について少なくとも、1)FPDの種類(LCD、PDP、EL等)、2)ガラス板の種類(例えば、LCD用ガラス板であればLCDの駆動方式)、3)ガラス板の製造方法、4)ガラス板の洗浄条件を、それぞれ具体的に特定する必要があ」り、「「白物異物」の組成及び構造も具体的に特定されていない本件訂正発明1は、所定の方法により計数した50μm以下の大きさの白色異物の数が10個/269m^(2)以下を満たさないガラス合板を包含する蓋然性が極めて高い」旨主張する。
しかし、本件発明は、FPD用ガラス板からなる評価用ガラス板に対して、「50μm以下の大きさの白色異物の数が10個/269m^(2)以下」であるガラス合紙であって、FPDの種類、ガラス板の種類、ガラス板の製造方法、ガラス板の洗浄条件を問わず、FPD用ガラス板に対して、「50μm以下の大きさの白色異物の数が10個/269m^(2)」を超えるものについては排除されているから、申立人が主張するような、超えるものを包含する蓋然性が極めて高いというようなことはなく、申立人の主張は採用できない。

3 取消理由に採用しなかった特許異議申立理由について
(1) 特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第2号に係る理由
ア 明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであることを要するものである(特許法第36条第4項第1号)。本件発明は、「ガラス合紙」に係る物の発明であるところ、物の発明における発明の「実施」とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、物の発明について実施をすることができるとは、その物を生産することができ、かつ、その物を使用することができることであると解される。
そして、当業者が、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、本件発明に係る「ガラス合紙」を生産し、使用することができるためには、本件発明に係る「ガラス合紙」であることを測定できる必要がある。
イ この点、申立人は、特許異議申立書において、洗浄対象の評価用ガラス板に対する「純水の供給形態」が具体的にどのようなものか不明であり、評価用ガラス板の洗浄に用いる「ロールブラシの軸方向の長さ」が不明であり、「白物異物」が具体的にどのようなものか不明であるため、本件特許の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たさない旨主張する。
ウ しかし、FPD用のガラス板は、ガラス合紙を介在させた保管、搬送の後(本件特許明細書の段落【0003】、【0004】)、ガラス板を洗浄し、配線を形成する(同じく段落【0130】)ことが技術常識であり、その「洗浄」工程における、FPD用のガラス板に対する「純水の供給形態」及び「ロールブラシの軸方向の長さ」は、FPD用のガラス板上の異物が除去されるように当業者が適宜設定できるものである。
そうすると、当業者であれば、発明の詳細な説明に、「純水の供給形態」及び「ロールブラシの軸方向の長さ」について具体的に記載がなくとも、製造工程における通常の「洗浄」工程の「純水の供給形態」及び「ロールブラシの軸方向の長さ」をもとに設定できるものといえる。
エ また、「白物異物」についても、発明の詳細な説明で「白色の異物(白色異物)とは、図4で示す如く、上記欠陥検査条件で撮影された画像において、異物の外周部(輪郭部)と異物の内部に、色味のコントラストが確認できる箇所を有する異物を指す。」(段落【0077】)と記載され、図4(C)が、50μm以下の大きさの白色異物に該当するものであると記載されている(段落【0076】)。さらに、材質について、「白色異物について分析したところ、PET(ポリエチレンテレフタレート)やナイロン、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂)等のいわゆる人工有機物が主であった。人工有機物は、例えば、ワイヤパートで使用されるプラスチック製のワイヤを紙原料液が通過した際、又はプレスパートで湿紙を数組のロールとフェルトを介して、機械的に圧搾脱水した際等、樹脂部材と紙原料液又は湿紙とが接触した際に混入すると考えられる。」(段落【0083】)、「発明者らが鋭意検討を重ねた結果、特に、白色異物の発生原因としてカンバスと呼ばれる接触部材からの影響が大きいことが分かった。」(段落【0084】)としている。
そうすると、当業者であれば、全異物を目視で外観観察する際、「白物異物」を識別して計数することができるものといえる。
オ また、本件発明の「純水の供給形態」及び「ロールブラシ」に係る記載は明確であり、「白物異物」との記載も明確である。
カ よって、申立人の記載不備に係る上記主張は採用できない。

(2)特許法第29条第1項第3号及び同条第2項に係る理由
ア 申立人は、以下の甲第1号証?甲第9号証を提出し、本件発明1?3、7は甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当する旨、本件発明1?9は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?4号証に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反する旨、あるいは、本件発明1?9は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3、4号証に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反する旨主張する。
甲第1号証:国際公開第2015/137488号
甲第2号証:国際公開第2014/098162号
甲第3号証:国際公開第2011/118502号
甲第4号証:特開2007-153395号公報
甲第5号証:紙パルプ技術協会、「紙パルプ事典」、金原出版株式会社、改訂第5版、平成元年9月20日、224?225頁
甲第6号証:特表2010-511427号公報
甲第7号証:山谷正明監修、信越化学工業編著、「おもしろサイエンス シリコンとシリコーンの化学」、日刊工業新聞社、2013年3月25日、56?57頁
甲第8号証:サンノプコ株式会社製のシリコーン系消泡剤「SNデフォーマー777」の製品安全シート、2011年5月12日、1?5頁
イ 申立人は、甲第1号証に、
「《甲1発明》
異物として酸化マグネシウムを含有するガラス合紙である。
前記酸化マグネシウムの体積は0.000018mm^(3)である。
表面に存在する前記酸化マグネシウムの数が0.004個/m^(2)以下である。」が記載され、
また、甲第2号証に、
「《甲2発明》
異物として有機ケイ素化合物を含有するガラス合紙である。
前記有機ケイ素化合物の含有量が3ppm以下である。」が記載されている旨主張している。
ウ しかし、申立人がいうように、酸化マグネシウムと有機ケイ素化合物が白色であり、それらの個数や含有量を測定しているとしても、「白物異物」のうちの酸化マグネシウムと有機ケイ素化合物の個数や含有量を測定しているに過ぎず、甲1発明及び甲2発明とも、「50μm以下の大きさの白物異物」の全てを計数しているものではない。
したがって、本件発明1は甲1発明ではなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲2発明及び甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。さらに、本件発明2?9についても同様である。
エ よって、申立人の新規性進歩性に係る上記主張は採用できない。

4 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1?9に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス合紙であって、下記の測定方法により計数した50μm以下の大きさの白色異物の数が10個/269m^(2)以下であるガラス合紙。
[測定方法]
(A)FPD用ガラス板からなる評価用ガラス板(厚さ0.7mmで、370mm×470mmのサイズ)に、ガラス合紙を(回数:100回、時間:4秒/回、圧力:0.45MPa、評価用ガラス板温度:55℃)押圧し、
(B)押圧を終えた前記評価用ガラス板を搬送(ラインスピード200cm/min)しながら、純水を供給(流量:57L/min)し、前記評価用ガラス板の上側に2本、及び下側に2本配置された合計4本のロールブラシ(ロール径(内径):φ60、ロール径(外径):φ80、毛径:0.06mm/密巻、材質:ナイロン612、回転数:300rpm、距離:上下0mm)で前記評価用ガラス板を洗浄し、
(C)オルボテック社製 オフライン欠陥検査システム(FPI-6000シリーズ(型番:FPI6090D))を用いて、洗浄された前記評価用ガラス板の全異物を検査して、全異物の画像を取得し、
(D)前記画像に基づいて前記全異物を目視で外観観察し、前記全異物の中から50μm以下の大きさの白色異物の数を計数する。
【請求項2】
ガラス合紙であって、前記測定方法により計数した50μm以下の大きさの白色異物の数が6個/269m^(2)以下である請求項1に記載のガラス合紙。
【請求項3】
ガラス合紙であって、前記測定方法により計数した50μm以下の大きさの白色異物の数が3個/269m^(2)以下である請求項2に記載のガラス合紙。
【請求項4】
2200mm×1800mm以上であるガラス板に用いられるガラス合紙であって、前記ガラス合紙のサイズは、前記ガラス板のサイズと同じ、もしくはそれよりも大きい請求項1から3のいずれか一に記載のガラス合紙。
【請求項5】
2200mm×1800mm以上であるガラス板に用いられるガラス合紙であって、前記ガラス合紙のサイズは、前記ガラス板のサイズよりも縦横ともに20mm以上大きい請求項1から3のいずれか一に記載のガラス合紙。
【請求項6】
JIS P8224:2002に準拠して測定される有機物の含有量が0.08質量%以下である請求項1から5のいずれか一に記載のガラス合紙。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一に記載のガラス合紙とガラス板とを交互に積層させたガラス板積層体。
【請求項8】
請求項7に記載のガラス板積層体と、前記ガラス板積層体を載置するパレットとを備えるガラス板梱包体。
【請求項9】
前記パレットが、前記ガラス板積層体が平積み状態で載置されるパレットである請求項8に記載のガラス板梱包体。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-09-10 
出願番号 特願2016-171847(P2016-171847)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (B65D)
P 1 651・ 121- YAA (B65D)
P 1 651・ 113- YAA (B65D)
P 1 651・ 537- YAA (B65D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 矢澤 周一郎  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 井上 茂夫
石井 孝明
登録日 2020-03-06 
登録番号 特許第6671639号(P6671639)
権利者 AGC株式会社
発明の名称 ガラス合紙、ガラス板積層体、及びガラス板梱包体  
代理人 山口 昭則  
代理人 伊東 忠重  
代理人 新川 圭二  
代理人 伊東 忠重  
代理人 山口 昭則  
代理人 新川 圭二  

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