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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G05B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G05B
審判 全部申し立て 2項進歩性  G05B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G05B
管理番号 1379863
異議申立番号 異議2021-700629  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-07-05 
確定日 2021-11-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第6806946号発明「外部設定機器およびプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6806946号の請求項1-18に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6806946号の請求項1-18に係る特許についての出願は、平成30年10月23日に出願された特許出願(特願2018-199199号、以下「原出願」という。)の一部が、令和2年8月7日に特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(特願2020-134823号)とされ、令和2年12月8日にその特許権の設定登録がされ、令和3年1月6日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和3年7月5日に特許異議申立人 松本 征二(以下「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。

第2 本件発明
特許第6806946号の請求項1-18に係る特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1-18に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」-「本件発明18」という。また、本件特許の願書に添付した明細書及び図面を「本件明細書等」という。)。
「【請求項1】
プログラマブルロジックコントローラに接続される外部設定機器であって、
前記プログラマブルロジックコントローラを制御するラダープログラムを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されたラダープログラムを解析することにより、当該ラダープログラムに使用されるデバイスが含まれる、予め定められた個数の連続するデバイスを抽出するデバイス抽出部と、
前記デバイス抽出部により抽出された、前記予め定められた個数の連続するデバイスを用いて、前記プログラマブルロジックコントローラでロギングされるデバイスを設定するログ設定データを作成するログ設定部と、
前記ログ設定部により作成されたログ設定データを、前記プログラマブルロジックコントローラに送信する通信部と、
を備える外部設定機器。
【請求項2】
ユーザ入力に基づいて、デバイスを使用した命令語を含むラダープログラムを作成するプログラム作成部をさらに備え、
前記プログラム作成部により作成されたラダープログラムは、前記記憶部に記憶されることを特徴とする請求項1に記載の外部設定機器。
【請求項3】
前記通信部は、前記ラダープログラムを前記プログラマブルロジックコントローラから受信し、
前記記憶部は、前記通信部により受信されたラダープログラムを記憶し、
前記プログラム作成部は、前記通信部により受信され、前記記憶部に記憶されたラダープログラムを、ユーザ入力に基づいて、編集し、
前記デバイス抽出部は、前記プログラム作成部により編集された編集後のラダープログラムを解析することにより、当該編集後のラダープログラムに関連したデバイスを抽出することを特徴とする請求項2に記載の外部設定機器。
【請求項4】
前記ラダープログラムは、一スキャンごとに実行される毎スキャンモジュールと、一定の周期ごとに実行される定周期モジュールとを含み、
前記デバイス抽出部は、前記記憶部に記憶された前記ラダープログラムに含まれる前記毎スキャンモジュールと前記定周期モジュールを解析することにより、当該毎スキャンモジュールに関連したデバイスと当該定周期モジュールに関連したデバイスを抽出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の外部設定機器。
【請求項5】
前記ラダープログラムは、さらに、前記毎スキャンモジュールまたは前記定周期モジュールから呼び出されるファンクションブロックを含み、
前記デバイス抽出部は、さらに、前記記憶部に記憶された前記ラダープログラムに含まれる前記ファンクションブロックを解析することにより、前記ファンクションブロックに関連したデバイスを抽出することを特徴とする請求項4に記載の外部設定機器。
【請求項6】
前記ラダープログラムは、電気的に接続された複数のユニットの各々を制御するためのプログラムであり、
前記記憶部は、さらに、前記複数のユニットの機能に関する構成情報を記憶しており、
前記デバイス抽出部は、前記構成情報を解析することにより、前記機能と関連付けられているデバイスを抽出することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の外部設定機器。
【請求項7】
前記ラダープログラムで使用されるデバイスを一括して指定するためのユーザ入力を受け付ける手段をさらに備え、
前記デバイス抽出部は、前記ユーザ入力が受け付けられた場合に、前記記憶部に記憶されたラダープログラムを解析することにより、当該ラダープログラムで使用されるデバイスをまとめて抽出することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の外部設定機器。
【請求項8】
前記デバイス抽出部は、それぞれが予め定められた個数の一連のデバイスにより構成される複数のデバイス範囲のうち、前記ラダープログラムで使用されるデバイスが属するデバイス範囲に含まれている一連のデバイスを一括して抽出することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の外部設定機器。
【請求項9】
前記複数のデバイス範囲の各々は、先頭デバイスを基準として予め定められた個数の一連のデバイスにより構成されることを特徴とする請求項8に記載の外部設定機器。
【請求項10】
前記デバイス抽出部は、前記プログラマブルロジックコントローラで同一のデバイスが重複してロギングされないよう前記複数のデバイス範囲についてマージ処理を実行するマージ部を備えることを特徴とする請求項8または9に記載の外部設定機器。
【請求項11】
前記デバイス抽出部により一括で抽出されるデバイスのデバイス範囲を表示する表示部をさら備えることを特徴とする請求項8ないし10のいずれか一項に記載の外部設定機器。
【請求項12】
ユーザ入力に基づいて、デバイスを個別に指定する手動設定部をさらに備え、
前記ログ設定部は、前記デバイス抽出部により抽出されたデバイスに加えて、前記手動設定部により指定されたデバイスを、前記プログラマブルロジックコントローラでロギングされるデバイスとして、前記ログ設定データに追加することを特徴とする請求項1ないし11のいずれか一項に記載の外部設定機器。
【請求項13】
外部メモリにアクセス可能なプログラマブルロジックコントローラに接続される外部設定機器であって、
前記プログラマブルロジックコントローラを制御するラダープログラムを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されたラダープログラムを解析することにより、当該ラダープログラムに使用されるデバイスが含まれる、予め定められた個数の連続するデバイスを抽出するデバイス抽出部と、
前記デバイス抽出部により抽出された、前記予め定められた個数の連続するデバイスを用いて、前記プログラマブルロジックコントローラでロギングされるデバイスを設定するとともに、当該設定されたデバイスからロギングされたデバイス値を前記外部メモリに読み出す条件を設定するログ設定データを作成するログ設定部と、
前記ログ設定部により作成されたログ設定データを、前記プログラマブルロジックコントローラに送信する通信部と、
を備える外部設定機器。
【請求項14】
前記外部メモリは、前記プログラマブルロジックコントローラに着脱可能なメモリカードであることを特徴とする請求項13に記載の外部設定機器。
【請求項15】
前記外部メモリに読み出す条件は、前記ロギングされたデバイス値を前記外部メモリに読み出すタイミングと、当該デバイス値がロギングされた時間に基づき特定される読み出し対象とを定めることを特徴とする請求項13または14に記載の外部設定機器。
【請求項16】
前記デバイス抽出部は、前記ラダープログラムに含まれる命令語を解析することにより、当該命令語によりアクセスされるデバイスが含まれる、予め定められた個数の連続するデバイスを抽出することを特徴とする請求項1ないし15のいずれか一項に記載の外部設定機器。
【請求項17】
前記デバイス抽出部は、前記ラダープログラムにおいて間接参照により特定されるデバイスが含まれる、予め定められた個数の連続するデバイスを抽出することを特徴とする請求項1ないし16のいずれか一項に記載の外部設定機器。
【請求項18】
請求項1ないし17のいずれか一項に記載された外部設定機器としてコンピュータを機能させるプログラム。」

第3 申立理由の概要及び証拠
1 申立理由の概要
異議申立人は、甲第1号証-甲第21号証(以下、それぞれ「甲1」?「甲21」という。)を提出し、請求書第2、12ページなどに示す下記の申立理由1-6により、特許を取り消すべき旨を主張する。

(申立理由1)甲1を主たる証拠とし、甲2-21を従たる証拠として、請求項1-18に係る特許は特許法第29条第1項3号又は第2項の規定に違反してされたものである。
(申立理由2)甲6を主たる証拠とし、甲16、甲19-21を従たる証拠として、請求項13-18に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(申立理由3)甲4を主たる証拠とし、甲1-3、甲13を従たる証拠として、請求項1-18に係る特許は特許法第29条第1項3号又は第2項の規定に違反してされたものである。
(申立理由4)請求項1-18に係る発明は特許法第36条第6項1号に違反してされたものである。
(申立理由5)請求項1-18に係る発明は特許法第36条第4項1号に違反してされたものである。
(申立理由6)請求項1-18に係る発明は特許法第36条第6項2号に違反してされたものである。

2 証拠
異議申立人が提出した証拠は、以下のとおりである。
甲1:再公表特許第2012/56539号
甲2:特開2016-110458号公報
甲3:特開2017-79009号公報
甲4:特許第4617302号公報
甲5:特開2007-11936号公報
甲6:特開2009-146040号公報
甲7:特開2012-256178号公報
甲8:特開平8-50502号公報
甲9:特開平6-282314号公報
甲10:特開平9-212394号公報
甲11:特開2006-134098号公報
甲12:特開2011-138451号公報
甲13:国際公開第2018-154884号
甲14:特開2007-128456号公報
甲15:特開平11-161305号公報
甲16:特開2000-235412号公報
甲17:特開2014-52669号公報
甲18:特許第4918492号公報
甲19:特開昭63-311401号公報
甲20:特開2003-22182号公報
甲21:特開2009-9607号

第4 当審の判断
以下に述べるように、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由1-6によっては、本件特許の請求項1-18に係る特許を取り消すことはできない。

1 申立理由1(新規性又は進歩性)
(1)甲1に記載された事項および発明
ア 甲1には、図1-13ともに次の記載がある。なお、下線は当審で付したものである。

(ア)「【0012】
実施の形態.
図1は、ロギング設定の対象となるプログラマブルコントローラ(PLC)の構成例を説明する図である。図示するように、PLC1は、CPUユニット2と、サブユニットのうちの1つとしてのインテリジェントユニット3とがバスユニット4に接続されて構成されている。」

(イ)「【0015】
記憶装置22は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などにより構成されており、ユニット情報リスト24、ユーザプログラム25、およびロギング設定データ26を記憶している。また、記憶装置22には、デバイスアドレスが割り当てられ、デバイス値が格納されるデバイスメモリ領域27と、ログデータが格納されるログデータ格納領域28とが確保されている。ユニット情報リスト24は、バスユニット4に装着されているサブユニットの形名と当該サブユニットが使用するデバイスの割り当て先のオフセットアドレスである先頭XYとが記述されたユニット情報のリストである。先頭XYは、当該サブユニットの装着位置に依存して変化する。ロギング設定データ26は、ロギングの対象となるデバイスを記述した設定情報である。ユニット情報リスト24およびロギング設定データ26は、ユーザプログラム25とともにユーザによりプログラミング装置を用いて設定される。なお、CPUユニット2が装着されているユニットから自動的に装着位置や形名を取得して、取得した情報に基づいてユニット情報リスト24を自動で作成するように構成されている場合もある。また、ユーザがプログラミング装置を用いてユニット情報リスト24を編集することによってサブユニット毎の先頭XYがユーザの任意に設定される場合もある。」

(ウ)「【0016】
CPU21は、ユーザプログラム25を実行することによって同一のPLC1が備えるサブユニットの制御を実行する。具体的には、CPU21は、サブユニットから当該サブユニットに対してデバイスメモリ領域27に割り当てられている入力デバイスに書き込まれた入力値を取得して、取得した入力値を用いて当該サブユニットに対する出力値を算出する。また、CPU21は、当該算出した出力値を当該サブユニットに対してデバイスメモリ領域27に割り当てられている所定の出力デバイスに格納する。また、CPU21は、サブユニットとの間でデバイスを介して入出力するだけでなく、デバイスメモリ領域27における入力デバイスまたは出力デバイスと異なるデバイスに中間データを格納することもある。なお、デバイスアドレスは、後述のインテリジェントユニット3が備えるバッファメモリ領域34にも割り当てられており、CPU21は、バッファメモリ領域34に割り当てられているデバイスアドレスを指定することにより当該バッファメモリ34に対して直接アクセスを行うこともできる。」

(エ)「【0018】
通信I/F23は、外部機器を接続するための通信インタフェースであって、ユーザは当該通信I/F23に本実施の形態のプログラミング装置を接続してユーザプログラム25やロギング設定データ26の設定を行うことができるようになっている。」

(オ)「【0021】
図2は、マニュアルに記載されているインテリジェントユニット(位置決めユニット)3の制御にかかるユーザプログラムの一例を説明する図である。当該マニュアルは、インテリジェントユニット3の割り当てアドレスの先頭XYがゼロ値であり、軸1の駆動制御を行うものとして作成されている。このマニュアルにおいては、位置決め始動信号Y10、始動完了信号X10および位置決め始動指令パルスM104がユーザプログラム中で使用されている。」

(カ)「【0029】
CPU51は、ロギング設定を実行するためのコンピュータプログラムであるロギング設定プログラム62を実行する。出力装置58は、液晶モニタなどの表示装置であり、CPU51からの指示に基づいて、操作画面などのユーザに対する出力情報を表示する。入力装置57は、マウスやキーボードを備えて構成され、ユーザからのプログラミング装置5に対する操作が入力される。入力装置57へ入力された操作情報は、CPU51へ送られる。通信I/F54は、CPUユニット2との間で通信を行うための接続インタフェースである。当該通信I/F54を介してCPUユニット2にユーザプログラム25、ロギング設定データ26が設定される。ROM53は、プログラミング装置5が起動するためのブート情報を記憶しており、ブート時にはCPU51が当該ブート情報に基づいて例えばハードディスクドライブにより構成される外部記憶装置55に格納されているシステムプログラム(図示せず)を起動してプログラミング装置5が起動する。」

(キ)「【0036】
図7の上部に示すように、ロギング設定項目群DB72は、形名、ロギング設定項目名、および関連デバイスを記述するフィールドを有するテーブル形式のデータ構造を備えている。ロギング設定項目名は関連デバイス群を識別するための名称である。ここでは、関連デバイス群はマニュアルに記載されているプログラム例毎に規定されているとしているので、ロギング設定項目名には、マニュアルに記載されているプログラム例を互いに識別しやすい名称を用いるとよい。例えば図2のプログラム例にかかる関連デバイス群は、ロギング設定項目名「ブロック始動制御」が付されている。ユニット形名1つあたりに登録されるロギング設定項目名の数は特に限定されない。また、複数のロギング設定項目の関連デバイスに同一のデバイスアドレスが登録される場合もある。

(ク)「【0043】
図8に示すように、まず、ユーザがデバイスを指定する入力を行なう(ステップS1)。デバイスの指定は、例えば図9に示すようにユーザプログラム61の編集画面から選択できるようになっていると便利である。図9に示すユーザプログラム編集画面の例では、「SET Y32」にカーソルを合わせて所定のクリック動作を行うと、「ロギング設定項目に追加」、「ロギング設定項目に関連項目追加」を含むプルダウンメニューが現われる。そして、「ロギング設定項目に関連項目追加」を選択すると、プログラミング装置5はデバイス「Y32」の指定入力を認識する。なお、「ロギング設定項目に追加」を選択すると、後述のステップが実行されることなく「Y32」が単独でロギング対象として指定入力される。図10は、「Y32」が単独でロギング対象として指定された場合のロギング設定画面の例を示す図である。図示するように、ロギング対象として「Y32」のみがリストされている。

(ケ)「【0044】
ステップS1でデバイスの選択入力がなされると、ユニット情報取得部70は、選択されたデバイスを使用するサブユニットのユニット形名および先頭XYが記述されたユニット情報を取得する(ステップS2)。関連項目群抽出部71は、取得したユニット形名を検索キーとしてロギング設定項目群DB72を検索して、ロギング設定項目群の一覧を取得する(ステップS3)。また、関連項目群抽出部71は、ロギング設定項目群DB72に登録されている関連デバイスの属性情報と、入力されたデバイスおよび取得した先頭XYとに基づいて軸番号を算出する(ステップS4)。」

(コ)「【0046】
ユーザがロギング設定項目を選択すると(ステップS6)、オフセット反映部74は、選択されたロギング設定項目の関連デバイス群を構成する関連デバイスに先頭XYと算出した軸番号にかかるオフセットを反映してデバイスアドレスを変更する(ステップS7)。ロギング設定出力部75は、デバイスアドレス変更後の各関連デバイスをロギング対象としたロギング設定データを出力し(ステップS8)、ロギング設定が完了する。図12は、デバイスアドレス変更後の関連デバイスの一覧表示画面の例である。図示するように、「ブロック始動制御」にかかる関連デバイスのアドレスY10、Y0、X0、X10、XC、X14、X8、U0¥G804が夫々、Y32、Y20、X20、X32、X2E、X36、X2A、U2¥G804に変更されて一覧表示されている。ユーザがこれでロギング対象を確定すると、Y32、Y20、X20、X32、X2E、X36、X2A、U2¥G804をロギング対象とするロギング設定データが出力される。なお、当該一覧表示からユーザがさらにロギング対象を取捨選択できるように構成してもよい。」

(サ)上記(オ)及び図2より、甲1には、ユーザプログラムとしてラダープログラムを用いることが記載されている。

(シ)上記(イ)、(サ)より、記憶装置22はユーザプログラム25であるラダープログラムを記憶するものであることが理解できる。

(ス)上記(ク)及び図9より、ユーザがラダープログラムの編集画面から選択してデバイス(図9ではSET Y32)を指定するものであること、また、上記(ケ)より、選択されたデバイスを用いてロギング設定項目群DB72より関連デバイスの属性を算出すること、さらに(コ)より、各関連デバイスをロギング対象としたロギング設定データを設定し、出力することが理解できる。

(2)甲1発明
そうすると、上記(ア)-(コ)の摘記事項及び(サ)-(ス)の事項を参酌すれば、甲1には、
「PLC1に接続されるプログラミング装置5であって、
前記PLC1を制御するラダープログラムを記憶する記憶装置22と、
ユーザがラダープログラムの編集画面から選択してデバイスを指定し、
該指定されたデバイス用いてロギング設定項目群DB72より関連デバイスの属性を算出し、ロギング対象となる各関連デバイスを設定するロギング設定データを作成し、
該ロギング設定データを、前記PLCに送信する通信I/F54と、
を備えるプログラミング装置5。」(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。

(3) 対比・判断
ア 本件発明1と甲1発明の対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「PLC1」は、PLCが制御装置を表す「Programmable Logic Controller」(プログラマブル・ロジック・コントローラ)の略語を示すことは技術常識であるから、本件発明1の「プログラマブルロジックコントローラ」に相当する。
甲1発明の「プログラミング装置5」は、上記(1)(エ)の記載よりPLCに接続される機器であり、PLC1に対して外部に設けられる機器であることは明らかであるとともに、ロギング対象となるデバイスを設定するものであるから、本件発明1の「外部設定機器」に相当する。
甲1発明の「記憶装置22」は、本件発明1の「記憶部」に相当する。
甲1発明の「各関連デバイス」は、本件発明1の「デバイス」に相当する。
甲1発明の「ロギング設定データ」は、ロギングされるデバイスを設定するデータであるので、本件発明1の「ログ設定データ」に相当する。また、甲1発明が「ログ設定部」を有することは明らかである。
甲1発明の「通信I/F54」は、本件発明1の「通信部」に相当する。

イ 一致点及び相違点
本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点、相違点を有する。

一致点:
プログラマブルロジックコントローラに接続される外部設定機器であって、
前記プログラマブルロジックコントローラを制御するラダープログラムを記憶する記憶部と、
前記プログラマブルロジックコントローラでロギングされるデバイスを設定するログ設定データを作成するログ設定部と、
前記ログ設定部により作成されたログ設定データを、前記プログラマブルロジックコントローラに送信する通信部と、
を備える外部設定機器。

相違点1:
本件発明1が、「記憶部に記憶されたラダープログラムを解析することにより、当該ラダープログラムに使用されるデバイスが含まれる、予め定められた個数の連続するデバイスを抽出するデバイス抽出部」を有しているのに対して、甲1発明は、「ユーザがラダープログラムの編集画面から選択してデバイスを指定」するものであって、ラダープログラムを解析することによりデバイスを抽出するデバイス抽出部を有さない点。

相違点2:
ログ設定部が、本件発明1では、「デバイス抽出部により抽出された、予め定められた個数の連続するデバイスを用いて」、プログラマブルロジックコントローラでロギングされるデバイスを設定するログ設定データを作成するのに対して、甲1発明では、指定されたデバイス用いてロギング設定項目群DB72より関連デバイス属性を算出し、ロギング対象となる各関連デバイスを設定するロギング設定データを作成する点。

相違点の判断
以下、相違点1-2について検討する。
(ア)相違点1について
甲1は、上記1(1)ア(ク)及び関連する図9を参酌すると、編集画面に表示されたラダープログラムから選択することにより、ユーザがデバイスを指定するものが記載されるのみであって、甲1には、プログラミング装置5が本件発明1の「記憶部に記憶されたラダープログラムを解析することにより、当該ラダープログラムに使用されるデバイスが含まれる、予め定められた個数の連続するデバイスを抽出するデバイス抽出部」を有することは記載も示唆もされていない。
すなわち、ラダープログラムを解析してデバイスを抽出することが甲1には記載も示唆もされていない。また、甲2-21にもこの点について記載も示唆もされておらず、また周知の技術的事項であるともいえない。
したがって、甲1発明及び甲2?21に記載された事項並びに周知の技術的事項に基いて、上記相違点1の構成を採用することは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

(イ)相違点2について
ログ設定部でロギング設定データを作成するにあたって、甲1発明では、関連デバイスは、「ロギング設定項目群DB72」というデータベースより算出されるものであって、予め定められた個数の連続するデバイスを抽出することが記載も示唆もされていない。また、甲2-21にもこの点について記載も示唆もされておらず、また周知の技術的事項であるともいえない。
したがって、甲1発明及び甲2?21に記載された事項並びに周知の技術的事項に基いて、上記相違点2の構成を採用することは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

(ウ)異議申立人の主張について
異議申立人は、上記相違点1-2に係る構成が、甲1に記載されているか、甲1発明および周知の技術的事項に基づいて当業者が容易になし得たものである旨の主張をしている。しかしながら、上記相違点1-2についての検討において述べたとおり、本件発明1の相違点1-2に係る構成は、甲1に記載も示唆もされておらず、そのような周知技術が存在するともいえないから、当業者であっても甲1発明及び甲2?21に記載された事項及び周知の技術的事項に基いて容易に発明できたものとはいえないため、かかる主張には理由がない。

エ 小括
したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明でなく、また、当業者であっても甲1発明及び甲2?21に記載された事項並びに周知の技術的事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

(4)本件発明2-18について
本件発明2-12は、本件発明1を引用するものであり、本件発明13-18は、実質的に本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるため、上記(3)において検討した理由と同様の理由により、本件発明2-18は、甲1発明及び甲2-21に記載された事項に基いて当業者が容易になし得るものではない。

2 申立理由2(進歩性)
(1)甲6に記載された事項および発明
ア 甲6には、図1?17ともに次の記載がある。なお、下線は当審で付したものである。

(ア)「【0046】
本発明システムの構成図が図1(a)に示されている。同図に示されるように、本発明に係るデータトレースシステムは、PLC1とプログラム開発支援装置(ツール装置)2とを通信ケーブル3で結んで構成されている。図示例にあっては、PLC1としては、電源ユニット11、CPUユニット12、入力ユニット13、出力ユニット14、及び通信ユニット15を含むビルディングブロック型のPLCが採用されている。」

(イ)「【0053】
バックアップメモリ(BROM)123は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリで構成され、電源オフ時にはバッテリが存在しない状態でも内容を保持するように構成されている。このバックアップメモリ(BROM)123には、PLCの制御仕様に対応したユーザプログラムが、所定のプログラム言語(例えば、ラダー図言語など)にて作成され、外部サポート回路(ASIC)126やマイクロプロセッサ(MPU)121で実行可能なコードに変換して格納される。」

(ウ)「【0058】
一方、ツール装置(プログラム開発支援装置)2は、同図(c)に示されるように、パソコン本体21、画像モニタ22、マウス23、及びキーボード24を有するパソコンシステムを前提とし、その上に、例えば、Windows(登録商標)等のOS上で動作するアプリケーションプログラム(プログラム開発支援装置としての機能を実現するするアプリケーションプログラム)を組み込むことにより構成されている。
【0059】
当業者にはよく知られているように、プログラム開発支援装置としてのアプリケーションプログラムとしては、プログラムの作成機能、編集機能、PLCからの通信を介するアップロード機能、PLCへの通信を介するダウンロード機能を実現するためのプログラムが含まれるほか、特に、この例にあっては、本発明に関連して後述する、図2のフローチャートに示される一連の処理(ステップ101?107)を実現するためのプログラム、さらには、ロギングメモリに格納されたデータを解析並びにモニタへ表示する等の機能を実現するためのプログラムも含まれている。また、後述するロギングメモリ(LM)については、パソコン本体21内のワークメモリ内に設けられる。」

(エ)「【0062】
トレース開始指令(コマンド)を受けたPLCの側では、入出力データ等の当該PLC1が取り扱う変動性データの中で、ユーザにより予め指定された1若しくは2以上のデータを、所定のデータ取得タイミングをもって継続的に取得すると共に、こうして取得されたトレースデータを所定のメモリ容量を有するトレースメモリ(TM)の一連のアドレスに順次に書き込む動作を繰り返し実行する(ステップ151)。同時に、PLCの側では、所定のタイミングで取得されるデータのそれぞれに、連続性のある識別データを付与する。このような連続性のある識別データとしては、連続番号やミリ秒オーダーの時刻情報等を挙げることができる。」

(オ)「【0090】
また、データトレースを実行させるためには、ツール装置の画面を見ながら、様々なトレースパラメータの設定が必要とされる。このようなトレースパラメータ設定画面の説明図(その1)が図11に、同説明図(その2)が図12にそれぞれ示されている。
【0091】
図11(a)に示されるように、データトレースに先立っては、ツール装置の画面に従って、トレース対象データに関する変数/アドレスの別、トレースデータ取得タイミングの基準となるエッジ種別、エッジからのディレー時間をそれぞれ設定する。また、図11(b)に示されるように、トレースデータ取得モードが「固定間隔」、「サイクル毎」、又は「TRSM命令による」のいずれであるかを設定する。また、図12(a)に示される見ように、トレー対象ワードデータの種別が「1ワード」又は「2ワード」の別を設定する。さらに、図12(b)に示されるように、トレース対象ビットのアドレス選択などの設定を行う。」

(カ)上記(ウ)の記載より、プログラム開発支援装置は、プログラム作成機能を有していることから、作成したプログラムを記憶する記憶部を有していることは明らかである。また、上記(イ)には、作成するユーザプログラムとしてラダープログラムが記載されている。

(キ)上記(エ)の記載より、トレース開始指令を受けたPLC1は、ユーザにより予め指定された1若しくは2以上のデータをトレースするものであるところ、上記(オ)の記載より、当該指定はトレースパラメータによってなされると理解できるから、「設定されたトレースパラメータを、PLC1に送信する通信部」を有することは明らかである。

(2)甲6発明
そうすると、上記(ア)-(オ)の摘記事項及び(カ)-(キ)の事項から、甲6には、
「PLC1に接続されるプログラム開発支援装置2であって、
前記PLC1を制御するラダープログラムを記憶する記憶部と、
トレース対象データに関する変数/アドレスの別を設定し、トレースパラメータの設定を行う手段と
設定されたトレースパラメータを、PLC1に送信する通信部と、
を備えるプログラム開発支援装置2。」(以下、「甲6発明」という。)が記載されている。

(3) 対比・判断
ア 本件発明13と甲6発明の対比
本件発明13と甲6発明とを対比する。
甲6発明の「PLC1」は、PLCが制御装置を表す「Programmable Logic Controller」(プログラマブル・ロジック・コントローラ)の略語を示すことは技術常識であるから、本件発明13の「プログラマブルロジックコントローラ」に相当する。
甲6発明の「プログラム開発支援装置2」は、上記(1)(ア)の記載よりPLCに接続される機器であり、PLCの外部に設けられている機器であることは明らかであるとともに、トレース対象となる変数/アドレスの別を設定するものであるから、本件発明13の「外部設定機器」に相当する。
甲6発明の「トレース対象データに関する変数/アドレスの別」は、本件発明13の「プログラマブルロジックコントローラでロギングされるデバイス」に相当する。
甲6発明の「トレースパラメータ」は、トレース(ロギング)されるデバイスを設定するデータであるので、本件発明13の「ログ設定データ」に相当する。また、甲6発明の「トレースパラメータの設定を行う手段」は、本件発明13の「ログ設定部」に相当する。
甲6発明の「設定されたトレースパラメータを、PLC1に送信する通信部」は、本件発明13の「前記ログ設定部により作成されたログ設定データを、前記プログラマブルロジックコントローラに送信する通信部」に相当する。

イ 一致点及び相違点
本件発明13と甲6発明とは、以下の一致点及び相違点1-3を有する。

一致点:
プログラマブルロジックコントローラに接続される外部設定機器であって、
前記プログラマブルロジックコントローラを制御するラダープログラムを記憶する記憶部と、
前記プログラマブルロジックコントローラでロギングされるデバイスを設定するログ設定データを作成するログ設定部と、
前記ログ設定部により作成されたログ設定データを、前記プログラマブルロジックコントローラに送信する通信部と、
を備える外部設定機器。

相違点1:
本件発明13が、「記憶部に記憶されたラダープログラムを解析することにより、当該ラダープログラムに使用されるデバイスが含まれる、予め定められた個数の連続するデバイスを抽出するデバイス抽出部」を有しているのに対して、甲6発明は、「トレース対象データに関する変数/アドレスの別を設定し、トレースパラメータの設定」を行うものであって、ラダープログラムを解析することによりデバイスを抽出するデバイス抽出部を有さない点。

相違点2:
本件発明13のプログラマブルロジックコントローラが、「外部メモリにアクセス可能」であるのに対し、甲6発明のPLC1がそのようなものであるのか不明である点。

相違点3:
ログ設定部でログ設定データを作成するにあたって、本件発明13は、「前記デバイス抽出部により抽出された、前記予め定められた個数の連続するデバイスを用いて、前記プログラマブルロジックコントローラでロギングされるデバイスを設定するとともに、当該設定されたデバイスからロギングされたデバイス値を前記外部メモリに読み出す条件を設定する」のに対し、甲6発明では、プログラム開発支援装置2でロギングされるデバイスを設定する点。

相違点の判断
以下、相違点1について検討する。
(ア)相違点1について
甲6は、上記2(1)ア(エ)の記載及び関連する図11-12を参酌すると、ユーザが画面に従って変数/アドレスの別(デバイス)を指定することによって、トレース対象を設定するものが記載されるのみであって、甲6には、プログラム開発支援装置2が本件発明13の「記憶部に記憶されたラダープログラムを解析することにより、当該ラダープログラムに使用されるデバイスが含まれる、予め定められた個数の連続するデバイスを抽出するデバイス抽出部」を有することは記載も示唆もされていない。
すなわち、甲6には、ラダープログラムを解析してデバイスを抽出することが記載も示唆もされていない。また、甲16、19-21にもこの点について記載も示唆もされておらず、また周知の技術的事項であるともいえない。
したがって、甲6発明及び甲第16、19?21に記載された事項並びに周知の技術的事項に基いて、上記相違点1の構成を採用することは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
そうすると、相違点2、3について検討するまでもなく、本件発明13は、甲6発明及び甲第16、19?21に記載された事項並びに周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものでない。

(イ)異議申立人の主張について
異議申立人は、本件発明13と甲6発明とは、特許異議申立書に記載された相違点2-1、2-2、2-3を有するが、いずれの相違点も甲6発明に基いて当業者が容易に想到し得たものである旨の主張をしている。しかしながら、上記相違点1についての検討において述べたとおり、本件発明6は、当業者であっても甲6発明及び甲16、19-21に記載された事項及び周知の技術的事項に基いて容易に発明できたものとはいえないため、かかる主張には理由がない。

エ 小括
したがって、本件発明13は、当業者であっても甲6発明及び甲16、19-21に記載された事項及び周知の技術的事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

(4)本件発明14-18について
本件発明14-15は、本件発明13を引用するものであって、本件発明13の発明特定事項を全て含むものであり、本件発明16-18は、実質的に本件発明13の相違点1に係る発明特定事項を含むものであるため、上記(3)において検討した理由と同様の理由により、本件発明14-18は、甲6発明及び甲16,19-21に記載された事項並びに周知の技術的事項に基いて当業者が容易になし得るものではない。

3 申立理由3(新規性又は進歩性)
(1)甲4に記載された事項および発明
ア 甲4には、図1?17ともに次の記載がある。なお、下線は当審で付したものである。

(ア)「【0031】
表示器100は、外部からの入力に基づいて所定の指示信号を出力するための入力部110と、データおよびプログラムを記憶するための記憶部160と、入力部110から出力されるデータと記憶部160に格納されているデータおよびプログラムとに基づいて予め定められた処理を実行するための制御部130と、PLC190との通信をインターフェイスするためのPLC-IF(Programmable Logic Controller-Interface)部146と、画像を表示するための表示部150と、表示器100に接続されるデバイス180とのデータの通信をインターフェイスするための入出力インターフェイス部154とを含む。通信されるデータは、デバイス180に対する指令、デバイス180の正常あるいは異常を表わすためのデータ、デバイス180による温度その他の加工条件、数量その他の実績データ等を含む。」

(イ)「【0058】
さらに、デバイス制御部144は、変数メモリ168に格納された各変数の内容を参照しながら、制御用プログラムメモリ170に格納されている制御プログラムに含まれる各命令を順次実行する。ここで、各命令においては、ラダープログラムのように各命令語の制御対象を変数で指定することができる。各命令の実行に応じて、各変数の内容は更新される。さらに、エンド命令が実行された場合に、制御プログラムの実行が終了すると、デバイス制御部144は、変数メモリ168に格納されている各変数のうち、入出力インターフェース部154に接続されたデバイス180に対応する変数の内容を、各デバイス180に書き込む。これにより、デバイス制御部144は、いわゆるPLCと同様に、オペレータが作成した制御プログラムに従って、各デバイス180を制御することができる。」

(ウ)「【0131】
図15に示される例では、ラジオボタン1520,1522が選択されている。したがって、カメラ1の動画がディスプレイ152において再生される。また、ラジオボタン1530が選択されている。したがって、動画の再生に対してログデータについて設定されたバッファリング条件が対応付けられる。その結果、動画の再生時に、当該ログが関連付けられる変数の変化が、たとえばラダー図上において再現される。オペレータがタブ1430を選択すると、図16に示されるように、ロギング設定の画面が表示される。
【0132】
図16において、画面1610は、領域1620?1650を含む。領域1620には、ロギングの設定の対象であることを示す印が表示される。領域1630には、ロギングの対象となるグループの名称が表示される。領域1640には、当該グループに含まれる変数の名称が表示される。この表示は、ロググループを表わすデータと当該ロググループに含まれる変数を表わすデータとを関連付けて記憶部160に格納することにより実現される。このようにすると、たとえば作動状態が関連するようなデバイスを一まとめにすることができるため、分析も一括して行なうことが可能になる。
【0133】
領域1650には、ロググループに含めることが可能な変数の名称が表示される。オペレータが、ロググループを選択した状態で、領域1650に表示される変数の名称を選択することにより、当該変数をそのロググループに含めることができる。この場合、ロググループを表わすデータに対して、新たに選択された変数を表わすデータがさらに関連付けられて、記憶部160に格納される。
・・・・・・
【0135】
以上のようにして、本変形例に係る表示器100は、オペレータにより予め設定された条件に基づいて、設定されたイベントが発生した場合に、所定の報知動作を実行する。また、表示器100は、予め選択された変数のみ、ロギングすることができる。また、当該変数はグループ化することにより、同一グループに含まれる変数のロギング条件の設定を容易にすることができる。このようにすると、オペレータの目的に応じた監視が可能になるため、表示器100を用いた操業管理の効率を向上させることができる。」

(エ)上記(イ)の記載より、オペレータが作成した制御プログラムとしては、ラダープログラムを用いること、上記(ア)に記載された記憶部に当該ラダープログラムを記録できることが理解できる。

(オ)上記(ウ)の記載より、オペレータがロギングの対象となるグループを選択することにより、グループに含まれるロギング対象となる変数を選択すること、オペレータがロギングを行う条件を予め設定することが記載されているから、ロギングの対象となるグループを選択することにより、ロギング対象となる変数を選択し、ロギングを行う条件を設定する手段を有することが理解できる。

(カ)上記(ア)の記載より、PLC-IF(Programmable Logic Controller-Interface)部146を介して通信されるデータは、デバイス180に対する指令を含むところ、上記(オ)の記載より、「ロギングを行う条件を設定する手段により作成されたロギングを行う条件を、PLC190に送信するためのPLC-IF(Programmable Logic Controller-Interface)部146」を備えることは明らかである。

(2)甲4発明
そうすると、上記(ア)-(ウ)の摘記事項及び(エ)-(カ)の事項から、甲4には、
「PLC190に接続される表示器100であって、
ラダープログラムを記憶するための記憶部160と、
ロギングの対象となるグループを選択することにより、ロギング対象となる変数を選択し、ロギングを行う条件を設定する手段と
前記ロギングを行う条件を設定する手段により作成されたロギングを行う条件を、前記PLC190に送信するためのPLC-IF(Programmable Logic Controller-Interface)部146、
を備える表示器100。」(以下、「甲4発明」という。)が記載されている。

(3) 対比・判断
ア 本件発明1と甲4発明の対比
本件発明1と甲4発明とを対比する。
甲4発明の「PLC190」は、PLCが制御装置を表す「Programmable Logic Controller」(プログラマブル・ロジック・コントローラ)の略語を示すことは技術常識であるから、本件発明1の「プログラマブルロジックコントローラ」に相当する。
甲4発明の「表示器100」は、上記(1)(ア)の記載よりPLC190に接続される機器であり、PLC190の外部に設けられている機器であることは明らかであるとともに、ロギング対象となる変数を設定するものであるから、本件発明1の「外部設定機器」に相当する。
甲4発明の「ラダープログラムを記憶するための記憶部160」は、ラダープログラムがPLCを制御するものであることは明らかであるので、本件発明1の「プログラマブルロジックコントローラを制御するラダープログラムを記憶する記憶部」に相当する。
甲4発明の「ロギング対象となる変数」は、本件発明1の「プログラマブルロジックコントローラでロギングされるデバイス」に相当する。
甲4発明の「ロギングを行う条件」は、ロギングされるデバイスを設定するデータであるので、本件発明1の「ログ設定データ」に相当する。また、甲4発明の「ロギングを行う条件を設定する手段」は、本件発明1の「ログ設定部」に相当する。
甲4発明の「前記ロギングを行う条件を設定する手段により作成されたロギングを行う条件を、前記PLC190に送信するためのPLC-IF(Programmable Logic Controller-Interface)部146」は、PLC190と表示器100との通信をインターフェイスするものであるので、本件発明1の「前記ログ設定部により作成されたログ設定データを、前記プログラマブルロジックコントローラに送信する通信部」に相当する。

イ 一致点及び相違点
本件発明1と甲4発明とは、以下の一致点及び相違点1-2を有する。

一致点:
プログラマブルロジックコントローラに接続される外部設定機器であって、
前記プログラマブルロジックコントローラを制御するラダープログラムを記憶する記憶部と、
前記プログラマブルロジックコントローラでロギングされるデバイスを設定するログ設定データを作成するログ設定部と、
前記ログ設定部により作成されたログ設定データを、前記プログラマブルロジックコントローラに送信する通信部と、
を備える外部設定機器。

相違点1:
本件発明1が、「記憶部に記憶されたラダープログラムを解析することにより、当該ラダープログラムに使用されるデバイスが含まれる、予め定められた個数の連続するデバイスを抽出するデバイス抽出部」を有しているのに対して、甲4発明は、「ロギングの対象となるグループを選択することにより、ロギング対象となる変数を選択し、ロギングを行う条件を設定」するものであって、ラダープログラムを解析することによりデバイスを抽出するデバイス抽出部を有さない点。

相違点2:
ログ設定部で作成されるロギング設定データが、本件発明1では、「デバイス抽出部により抽出された、予め定められた個数の連続するデバイスを用いて」作成されるのに対して、甲4発明では、そのように作成されることは記載されていない点。

相違点の判断
以下、相違点1について検討する。
(ア)相違点1について
甲4は、上記2.(1)ア(ウ)の記載及び関連する図15-16を参酌すると、オペレータがロググループを選択することによって当該グループに含まれる変数がロギング対象に設定されるものが記載されるのみであって、甲4には、表示器100が本件発明1の「記憶部に記憶されたラダープログラムを解析することにより、当該ラダープログラムに使用されるデバイスが含まれる、予め定められた個数の連続するデバイスを抽出するデバイス抽出部」を有することは記載も示唆もされていない。
すなわち、甲4には、ラダープログラムを解析してデバイスを抽出することが記載も示唆もされていない。また、甲1-3、13にもこの点について記載も示唆もされておらず、また周知の技術的事項であるともいえない。
したがって、甲4発明及び甲1-3、13に記載された事項並びに周知の技術的事項に基いて、上記相違点1の構成を採用することは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
そうすると、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明及び甲第1-3、13に記載された事項並びに周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものでない。

(イ)異議申立人の主張について
異議申立人は、本件発明1は、甲4に記載されているか、仮に差異があったとしても甲4発明および周知の技術的事項に基づいて当業者が容易になし得たものである旨の主張をしている。しかしながら、上記相違点1についての検討において述べたとおり、本件発明1は、当業者であっても甲4発明及び甲1-3、13に記載された事項及び周知の技術的事項に基いて容易に発明できたものとはいえないため、かかる主張には理由がない。

エ 小括
したがって、本件発明1は、甲4に記載された発明でなく、また、当業者であっても甲4発明及び甲1-3、13に記載された事項及び周知の技術的事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

(4)本件発明2-18について
本件発明2-12は、本件発明1を引用するものであり、本件発明13-18は、実質的に本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるため、上記(3)において検討した理由と同様の理由により、本件発明2-18は、甲4発明及び甲1-3、13に記載された事項に基いて当業者が容易になし得るものではない。

4 申立理由4?6(サポート要件、実施可能要件明確性要件)
(1)異議申立人の主張について
申立人は、本件明細書等には「予め定められた個数の連続するデバイス」について、「予め定められた個数」をどのタイミングで、どのように設定し、どのように抽出するのかについて、具体的に記載されていないため、本件発明1及び本件発明13には、「前記記憶部に記憶されたラダープログラムを解析することにより、当該ラダープログラムに使用されるデバイスが含まれる、予め定められた個数の連続するデバイスを抽出するデバイス抽出部」という構成が、発明の詳細な説明に記載されておらず(申立理由4)、本件明細書等には「予め定められた個数の連続するデバイス」について、「予め定められた個数」をどのタイミングで、どのように設定し、どのように抽出するのかについて、具体的に記載されていないため、発明な詳細な説明が当業者にとって実施することが出来る程度に明確かつ十分に記載されておらず(申立理由5)、また、本件発明1及び本件発明13の「予め定められた個数の連続するデバイス」なる構成の技術的意義が不明確である(申立理由6)旨主張している。

(2)判断
ア 本件明細書の記載事項
本件明細書等には、以下の事項及び図面の記載がある。なお、下線は当審で付したものである。

(ア)「【0052】
図10Aに示すように、ユニットモニタ440による監視対象として、現在座標、指令座標、現在速度、指令速度、帰還トルク、負荷率、ピーク電流といった各項目が設定されている。各項目には、バッファメモリ(UG)が割り当てられている。例えば、現在座標には、UG4とUG5が割り当てられている。本実施形態では、1個のUGに16ビットを確保しており、現在座標を32ビット表現するために、2個のUGを確保している。UGのデバイス値としては、例えば、0PLS(パルス)のような数値となる。また、指令座標には、UG8とUG9が割り当てられている。2個のUGを確保しているのは、上述と同様の理由である(32ビット表現の確保のため)。UGの割り当ては、ユニット設計者が自由に行うことができるので、未使用のUG(UG6やUG7)も幾つか存在している。同様にして、現在速度にはUG10,UG11が、指令速度にはUG12,UG13が、それぞれ割り当てられている。その他、図10Aでは、帰還トルク、負荷率、ピーク電流などの各項目に対してUGが割り当てられている。」

(イ)「【0059】
図10Cはプロジェクトデータ71に含まれる複数のプログラム部品のうち指定されたプログラム部品から抽出されたデバイスの一例を示している。図10Cによれば、デバイスを抽出されたプログラム部品の名称と、先頭デバイスの名称(デバイス番号)と、先頭デバイスを基準として抽出されるデバイスの個数と、実際にロギング対象として抽出されたデバイス名とが示されている。一般に、先頭デバイスを基準として指定個数に相当する数のデバイスが抽出される。しかし、指定個数を超えた数のデバイスが抽出されることもある。R34000はリレーデバイスであり、1ビットの情報を保持するデバイスであるが、R34000からR34015までの一連の16個のデバイスが抽出されている。これは、16ビット分のデバイスをまとめてロギングしたほうが、データ処理速度の観点で有利だからである。なお、図10Cにおいて、R34000の個数は「1」となっているが、これは1ワード(16ビット)を示している。また、CR4001の個数も「1」となっているが、これも1ワード(CR4001,CR4002,・・・,CR4015,CR4100の16ビット)を示している。グローバルとは、複数のプログラム部品から共通に使用されるデバイスである。Mainはメインプログラムを示している。first_operationはファンクションブロックの名称である。Subはサブプログラム(サブモジュール)を示している。」

(ウ)「【0061】
図11はPLC1に備えられた複数の機能(基本ユニット3および拡張ユニット4)のうち指定された機能(ユニット)から抽出されたデバイスの一例を示している。この例では、機能指定部60により指定されたモーションユニットからいくつかのバッファメモリ(UG)が抽出されている。図11によれば、デバイスを抽出された機能の名称と、先頭デバイスの名称(デバイス番号)と、先頭デバイスを基準として抽出されるデバイスの個数と、実際にロギング対象として抽出されたデバイス名とが示されている。ここでは、モーションユニットのユニットモニタにより監視可能なデバイスが抽出されている。すなわち、図10Aを用いて上述したように、UG4-UG5はモータの現在座標を示しており、UG8-UG9はモータの指令座標を示しており、UG10-UG11はモータの現在速度を示しており、UG12-UG13はモータの指令速度を示している。その他のUGについては、説明を省略する。」

(エ)図10A


(オ)図10C


(カ)図11


イ 判断
本件発明1及び本件発明13の「予め定められた個数の連続するデバイス」は、上記ア(イ)、(ウ)を参酌すると「先頭デバイスを基準として抽出されるデバイス」であり、「予め定められた個数」は、上記ア(オ)、(カ)に示される表に記載された「個数」を示していることが当業者であれば容易に理解できる。
また、異議申立人は、「予め定められた個数」をどのタイミングで、どのように設定し、どのように抽出するのかについて、本件明細書等に具体的に記載されていないとの主張をしているが、上記ア(ア)、(エ)を参酌すると、任意の連続するバッファメモリ(例えば、UG4とUG5)に対して、割り当てをユニット設計者が自由に行うことができることが記載されており、「予め定められた個数」の連続するデバイスについて設定はユニット設計者が自由に行うことができることについても記載されている。
上記のとおり、「予め定められた個数」についての設定については、本件明細書等に記載された事項であるところ、当業者であれば、その設定タイミングや設定方法について具体的な記載がなくても理解し得るものであり、実施に当たり格別な試行錯誤を要するものでもないから、本件発明1及び本件発明13の「前記記憶部に記憶されたラダープログラムを解析することにより、当該ラダープログラムに使用されるデバイスが含まれる、予め定められた個数の連続するデバイスを抽出するデバイス抽出部」に関する構成は、本件明細書等の発明の詳細な説明に記載されたものであるし、本件明細書等は、本件発明1及び本件発明13に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されている。また、本件発明1及び本件発明13の「予め定められた個数の連続するデバイス」なる構成の技術的意義が不明確であるということはできないから、申立理由4-6に係る主張は、いずれも理由がない。

エ 小括
したがって、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定を満たし、本件明細書等の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることが出来る程度に明確かつ十分に記載され特許法第36条第4項第1号の規定を満たすものである。

6 むすび
したがって、異議申立人の主張する特許異議の申立理由1-6及び証拠によっては、本件特許の請求項1-18に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1-18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2021-10-27 
出願番号 特願2020-134823(P2020-134823)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (G05B)
P 1 651・ 121- Y (G05B)
P 1 651・ 113- Y (G05B)
P 1 651・ 537- Y (G05B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山村 秀政  
特許庁審判長 見目 省二
特許庁審判官 大山 健
松原 陽介
登録日 2020-12-08 
登録番号 特許第6806946号(P6806946)
権利者 株式会社キーエンス
発明の名称 外部設定機器およびプログラム  
代理人 大塚 康弘  
代理人 高柳 司郎  
代理人 大塚 康徳  
代理人 坂本 隆志  
代理人 木村 秀二  

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