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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E06B
管理番号 1380346
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-11 
確定日 2021-11-18 
事件の表示 特願2016− 73245「複合枠及び建具」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月 5日出願公開、特開2017−180057〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年3月31日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年12月25日提出 :刊行物等提出書
令和 1年 8月 9日付け :拒絶理由通知書
令和 1年10月21日提出 :意見書、手続補正書
令和 1年12月12日提出 :刊行物等提出書
令和 2年 3月 9日付け :拒絶査定
令和 2年 6月11日提出 :審判請求書、手続補正書
令和 2年 7月27日提出 :刊行物等提出書
令和 3年 2月26日付け :拒絶理由通知書
令和 3年 4月27日提出 :意見書、手続補正書
令和 3年 5月28日提出 :刊行物等提出書


第2 本願発明
以下、令和3年4月27日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書に基いて審理する。
本願の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本願発明1」等という。)は、上記手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項1についてみれば、その記載は以下のとおりである。

「【請求項1】
開口部に設けられ、金属部材と樹脂部材とを連結して構成された複合枠であって、
前記金属部材は、ガラスパネルの端部を支持するパネル支持溝を有し、
前記樹脂部材は、前記金属部材上であって前記パネル支持溝よりも屋内側を覆って配置され、
前記パネル支持溝の前記屋内側の面から前記金属部材の見込み面に連続して、外気の前記屋内側への通気を阻止する気密ラインが構成され、
該気密ライン上に、結露水排水孔が形成され、
前記樹脂部材に沿って断熱ラインが構成され、
前記気密ラインと前記断熱ラインとの間には、断熱空間が形成され、
前記金属部材及び前記樹脂部材と前記ガラスパネルとの間には、シーリング材が挟み込まれ、
前記金属部材及び前記樹脂部材は、前記シーリング材に当接し、
前記パネル支持溝には、上下方向に貫通し、屋外と連通された雨水排水孔が形成されていることを特徴とする複合枠。」


第3 当審拒絶理由の概要
当審が通知した令和3年2月26日付け拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

進歩性
令和2年6月11日提出の手続補正書による補正後の本願請求項1ないし5に係る発明は、引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、本願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1: 特開2011−214312号公報
引用文献2: 特許第4570468号公報
引用文献3: 特開平10−30382号公報


第4 引用文献の記載
1 引用文献1
(1)記載事項、及び看取される事項
ア 発明の詳細な説明
本願の出願前に頒布された刊行物である、引用文献1には、発明の詳細な説明に次の記載がある。

(ア)
「【0002】
従来、窓枠として、窓開口に固定した金属枠の屋内側を合成樹脂製の樹脂枠で覆って構成された枠内にパネルを保持する複合窓枠が存在する。こうした複合窓枠を使用すれば、金属枠よりも熱伝導率の低い樹脂枠が屋内側に設けられているため、断熱性が向上できるとともに、屋内側への結露を防止することができる。また、こうした複合窓枠を使用すれば、屋内側に樹脂が露出するため、金属枠特有の視覚的冷たさを排除し、温かみのある意匠の窓枠を提供することができる。
【0003】
なお、こうした複合窓枠においては、高い断熱性と結露防止効果を得るために、複層ガラスが用いられることが一般的であった(例えば、特許文献1)。」

(イ)
「【0032】
(複合窓枠の概要)
本実施例に係る複合窓枠は、図1〜6に示すように、建物外壁に形成された窓開口に納められる複合窓枠であり、方形に枠組みされた窓枠内にパネルを保持した嵌め殺しの窓である。窓枠を構成する各枠材は、複合型の枠材であり、ベースとなる金属枠10とその屋内側露出部分を覆う樹脂枠20とから構成されている。この金属枠10は、金属上枠16、金属下枠11及び左右の金属縦枠17で構成され、隣接する枠を相互にねじで締結して構成されている。また樹脂枠20は、樹脂上枠29、樹脂下枠21及び左右の樹脂縦枠30とで構成されており、樹脂上枠29は金属上枠16に、樹脂下枠21は金属下枠11に、樹脂縦枠30は金属縦枠17にそれぞれ取付けられている。
【0033】
金属枠10はアルミの押し出し型材にて成型され、また樹脂枠20及び後述する固定部材40a,40bは、合成樹脂から押し出し成型される。
【0034】
本実施形態に係る複合窓枠は、このように樹脂枠20にて金属枠10の屋内側露出部分を覆うことにより、金属による冷たい印象を隠すとともに、熱伝導率の低い樹脂によって断熱効果を向上させている。」

(ウ)
「【0036】
そして、本実施例に係る複合窓枠は、図1に示すように、樹脂下枠21よりも屋外側において、金属下枠11に嵌合溝18が形成され、この嵌合溝18は、複層ガラス31bを嵌合可能な見込方向の幅を有するように形成されている。そして、この嵌合溝18の屋内側には、嵌合溝18に嵌合した単層ガラス31aを固定する単層ガラス用固定部材40a又は複層ガラス31bを固定する複層ガラス用固定部材40bが金属下枠11に着脱可能となっている。すなわち、後述するように、単層ガラス用固定部材40aと複層ガラス用固定部材40bとのうちから選択した任意の固定部材を使用可能に形成されていることにより、固定部材を変更するだけで、金属枠10及び樹脂枠20を変更することなく、厚さの異なるガラスを支持可能に形成されている。
【0037】
(複層ガラス31b使用時)
以下、まずは複層ガラス31bを使用した場合について、図1〜3を参照しつつ説明する。
【0038】
複層ガラス31b使用時においては、図1に示すように、嵌合溝18に複層ガラス31bが嵌合されて保持されている。この複層ガラス用固定部材40bは、屋内側からは、樹脂下枠21と複層ガラス31bとの間に設けられた複層ガラス用固定部材40bによって緩衝部材50を介して支持されており、屋外側からは、金属下枠11に設けられた屋外当接部19によって緩衝部材50を介して支持されている。
【0039】
図2は、図1の複合窓枠の下部構造の部分拡大図である。この図2が示すように、金属下枠11の屋内側には、窓側に立設する窓側突出縁12と、屋内側に立設する屋内側突出縁13と、この窓側突出縁12と屋内側突出縁13との間に立設する中央立設部14と、が上方に向けて立設しており、これらが立設することにより、嵌合溝18よりも屋内側に2つの溝が形成されている。そして、窓側突出縁12と中央立設部14とで形成された溝には、複層ガラス用固定部材40bが嵌め込まれ、中央立設部14と屋内側突出縁13とで形成された溝には、樹脂下枠21が嵌め込まれている。」

(エ)
「【0042】
また、樹脂下枠21の上面には、図3に示すように、結露等によりガラスに生じた水滴などを排水するための凹部26が長手方向両側に2箇所設けられている。図2及び図3に示すように、この凹部26の中央には排水孔27が設けられ、この排水孔27の周囲を覆うように排水孔カバー28が設けられている。これにより、排水用の凹部26に集められた水滴が排水孔27を通って樹脂下枠21の下に排水され、更に外部へと排水されるようになっている。詳しくは、図示しない排水用の穴が、樹脂下枠21においては排水孔27の下の位置に設けられるとともに、金属下枠11においては空隙部25の下の位置に設けられており、この穴を通って外部に排水されるようになっている。」

(オ)
「【0044】
この複層ガラス用固定部材40bは、図2に示すように、前記樹脂下枠21の上面及び前記金属下枠11の屋外当接部19の上面と略面一となるように設けられた上面を露出させて、金属下枠11に嵌合固定されるものである。詳しくは、上部においては、押圧部42の基部下方に設けられた係合溝43に窓側突出縁12の上端が係合し、下方においては、脚部44が金属下枠11の窓側突出縁12と中央立設部14との間に嵌め込まれるようになっており、これにより、複層ガラス用固定部材40bが固定されている。
【0045】
また、押圧部42は、図2に示すように、複層ガラス31b側に略水平に突出した部分であり、この突出の先端側には図2に示すように緩衝部材50が設けられており、この緩衝部材50を介して複層ガラス31bを支持している。この緩衝部材50を取り付ける押圧部42の先端は、図2に示すように、先端側が下段となるように段差が設けられており、この段差部分に緩衝部材50を取り付けるようになっている。このように、緩衝部材50を取り付ける部分が低くなっているため、緩衝部材50を取り付けた場合でも、この緩衝部材50の上面を含め、複層ガラス用固定部材40bの上面、前記樹脂下枠21の上面、及び、前記金属下枠11の屋外当接部19の上面が、すべて略面一となるように形成されている。
【0046】
なお、この複層ガラス用固定部材40bは、図1及び図3に示すように、複合窓枠の上枠及び両側の縦枠においても同じ断面形状のものが使用されている。すなわち、金属上枠16及び両側の金属縦枠17にも、それぞれ複層ガラス用固定部材40bが嵌合固定されており、これらの複層ガラス用固定部材40bも、押圧部42の先端側に設けられた緩衝部材50を介して複層ガラス31bを支持するようになっている。」

イ 図面
引用文献1の図面には、次の図示がある。

(ア)【図1】




(イ)【図2】




(ウ)【図3】




(エ)【図7】(a)




ウ 看取される事項
(ア)段落【0036】の記載を踏まえて、【図1】に図示される金属下枠11と複層ガラス31bとの関係に着目すると、金属下枠11の嵌合溝18には複層ガラス31bの端部が嵌合されることが看取される。
また、【図1】に図示される金属上枠16と複層ガラス31bとの関係、及び【図3】に図示される左右の金属縦枠17と複層ガラス31bとの関係が、【図1】に図示される金属下枠11と複層ガラス31bとの関係と同様であることから、金属上枠16及び左右の金属縦枠17にも、複層ガラス31bの端部を嵌合可能な嵌合溝が形成されていることが、看取される。

(イ)段落【0039】の記載を踏まえて、【図1】及び【図2】に図示される、金属下枠11の嵌合溝18から嵌合溝18よりも屋内側に至るまでの構造に着目すると、金属下枠11は、嵌合溝18の屋内側を構成する窓側突出縁12から、嵌合溝18よりも屋内側に至る部分まで、断面視で金属部材が連続していることが、看取される。
また、【図1】及び【図3】に図示される金属上枠16及び左右の金属縦枠17の嵌合溝から屋内側の構造に着目すると、【図1】及び【図2】に示される金属下枠11の嵌合溝18において屋内側を構成する窓側突出縁12と同様の突出縁を有するとともに、当該突出縁から嵌合溝よりも屋内側に至る部分まで、断面視で金属部材が連続していることから、金属上枠16及び左右の金属縦枠17も、嵌合溝の屋内側を構成する突出縁から、嵌合溝よりも屋内側に至る部分まで、断面視で金属部材が連続していることが、看取される。

(ウ)段落【0033】及び【0034】、並びに段落【0038】の記載を踏まえて、【図1】ないし【図3】に図示される複層ガラス用固定部材40b及び樹脂枠20の配置に着目すると、合成樹脂から押し出し成型された複層ガラス用固定部材40b、及び樹脂枠20は、金属枠10の複層ガラス31bを嵌合可能な嵌合溝よりも屋内側の部分を覆って、樹脂部材の屋内側面を形成していることが、看取される。
また、上記(イ)で看取される金属枠10の構造を踏まえて、【図1】ないし【図3】に図示される複層ガラス用固定部材40b及び樹脂枠20の配置に着目すると、金属枠10の嵌合溝の屋内側を構成する突出縁から嵌合溝よりも屋内側に至る部分と、合成樹脂から押し出し成型された複層ガラス用固定部材40b及び樹脂枠20で形成される樹脂部材の屋内側面との間には、断面視で囲まれる部分が形成されることが、看取される。

(エ)段落【0042】の記載を踏まえると、【図2】に図示される窓側突出縁12の位置、及び【図7】(a)に図示される空隙部25の位置から、樹脂下枠21の下に排水された、結露等によりガラスに生じた水滴などを、更に外部へと排水するための排水用の穴が、金属下枠11に形成される空隙部25の下の位置は、窓側突出縁12よりも屋内側であることが、看取される。

(オ)段落【0038】の記載を踏まえると、【図2】の図示より、複層ガラス31bは、金属下枠11の嵌合溝18においては、屋内側からは、樹脂下枠21と複層ガラス31bとの間に設けられた複層ガラス用固定部材40bによって緩衝部材50を介して支持され、屋外側からは、金属下枠11に設けられた屋外当接部19によって緩衝部材50を介して支持されることが、看取される。
また、段落【0046】に記載される、金属上枠16及び両側の金属縦枠17に嵌合固定された複層ガラス用固定部材40bによる、緩衝部材50を介した複層ガラス31bの支持が、段落【0038】に記載される、金属下枠11の嵌合溝18における、複層ガラス用固定部材40bによる緩衝部材50を介した複層ガラス31bの支持と同様であることを踏まえると、【図1】に図示される金属上枠16における複層ガラス31bの支持、及び【図3】に図示される左右の金属縦枠17における複層ガラス31bの支持が、【図1】に図示される金属下枠11における複層ガラス31bの支持と同様であることから、複層ガラス31bは、金属上枠16及び左右の金属縦枠17の嵌合溝においても、金属下枠11の嵌合溝18における支持と同様に支持がされることが、看取される。

(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)より、引用文献1には、複層ガラス31bを用いる実施例に着目すると、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

引用発明1
「建物外壁に形成された窓開口に納められる、金属枠10、金属枠10の屋内側露出部分を覆う合成樹脂から押し出し成型された樹脂枠20、及び合成樹脂から押し出し成型された複層ガラス用固定部材40bからなり、複層ガラス31bを用い、熱伝導率の低い樹脂によって断熱効果を向上させた複合窓枠であり、
金属枠10は、金属上枠16、金属下枠11及び左右の金属縦枠17で構成され、
樹脂枠20は、樹脂上枠29、樹脂下枠21及び左右の樹脂縦枠30とで構成され、樹脂上枠29は金属上枠16に、樹脂下枠21は金属下枠11に、樹脂縦枠30は金属縦枠17にそれぞれ取付けられ、
複層ガラス用固定部材40bは、金属下枠11に嵌合固定され、金属上枠16及び両側の金属縦枠17にも、それぞれ複層ガラス用固定部材40bが嵌合固定されており、
金属下枠11には、複層ガラス31bを嵌合可能な嵌合溝18が形成され、金属下枠11の嵌合溝18には複層ガラス31bの端部が嵌合され、金属上枠16及び左右の金属縦枠17にも、複層ガラス31bの端部を嵌合可能な嵌合溝が形成され、
金属下枠11は、嵌合溝18の屋内側を構成する窓側突出縁12から、嵌合溝18よりも屋内側に至る部分まで、断面視で金属部材が連続しており、金属上枠16及び左右の金属縦枠17も、嵌合溝の屋内側を構成する突出縁から、嵌合溝よりも屋内側に至る部分まで、断面視で金属部材が連続しており、
合成樹脂から押し出し成型された複層ガラス用固定部材40b、及び樹脂枠20は、金属枠10の複層ガラス31bを嵌合可能な嵌合溝よりも屋内側の部分を覆って、樹脂部材の屋内側面を形成しており、
金属枠10の嵌合溝の屋内側を構成する突出縁から嵌合溝よりも屋内側に至る部分と、合成樹脂から押し出し成型された複層ガラス用固定部材40b及び樹脂枠20で形成される樹脂部材の屋内側面との間には、断面視で囲まれる部分が形成され、
金属下枠11には、樹脂下枠21の下に排水された、結露等によりガラスに生じた水滴などを、更に外部へと排水するための排水用の穴が、窓側突出縁12よりも屋内側の空隙部25の下の位置に形成され、
複層ガラス31bは、金属下枠11の嵌合溝18においては、屋内側からは、樹脂下枠21と複層ガラス31bとの間に設けられた複層ガラス用固定部材40bによって緩衝部材50を介して支持され、屋外側からは、金属下枠11に設けられた屋外当接部19によって緩衝部材50を介して支持され、金属上枠16及び左右の金属縦枠17の嵌合溝においても、金属下枠11の嵌合溝18における支持と同様に支持がされる、
複合窓枠。」

2 引用文献2
(1)記載事項、及び看取される事項
ア 発明の詳細な説明
本願の出願前に頒布された刊行物である、引用文献2には、発明の詳細な説明に次の記載がある。

(ア)
「【0019】
本発明の実施形態について図面に添って詳細に説明する。本実施形態のサッシの框体は、金属材に樹脂材を取付けた複合材の状態と、金属材のみの状態のいずれでも框として用いることができる。図1は複合材の状態のサッシの框体を用いた複合サッシの縦断面図、図2は図1の横断面図である。これら各図に示すように、本実施形態の複合サッシは、建物開口部に対して枠体1を取付け、この枠体1内に框体2を開閉自在に納めたものである。框体2は、正面から見た左右いずれかの上下部を軸として室内外方向に開閉するいわゆる縦辷り出し窓である。
【0020】
まず、複合サッシを構成する枠体1について説明する。枠体1は、上枠10と下枠20及び左右の縦枠30、30を方形状に枠組みしてなるものである。各枠は金属枠の室内側に樹脂枠を配設してなるものであり、金属上枠11の室内側には樹脂上枠12が、金属下枠21の室内側には樹脂下枠22が、金属縦枠31の室内側には樹脂縦枠32が、それぞれ設けられる。」

(イ)
「【0022】
金属上枠11には框体2と対向する面に室外側気密材13を長手方向略全長に渡って設けている。また、樹脂上枠12には框体2と対向する面に室内側気密材14を長手方向略全長に渡って設けている。これら気密材13、14は後述するように框体2の気密ラインに当接し、サッシの気密性を確保する。下枠20にも同様に、金属下枠21に室外側気密材23が、樹脂下枠22に室内側気密材24が設けられ、また縦枠30にも金属縦枠31に室外側気密材33が、樹脂縦枠32に室内側気密材34が、それぞれ設けられる。
【0023】
次に、枠体1内に納められる框体2について説明する。框体2は、上框40と下框50及び左右の縦框60、60を方形状に框組みしてなるものである。各框は室外側を金属材で構成し、その室内面を樹脂材にて覆っている。上框40は、金属材からなる金属上框41と樹脂材からなる樹脂上框42により構成され、下框50は、金属材からなる金属下框51と樹脂材からなる樹脂下框52により構成され、縦框60は、金属材からなる金属縦框61と樹脂材からなる樹脂縦框62により構成される。
【0024】
各框を構成する金属材は、いずれもアルミの押出型材からなり、断面中空状に形成される。また樹脂材は、合成樹脂を押出成形等により形成したもので、略平板状とされてなるものである。樹脂材である樹脂上框42と樹脂下框52及び樹脂縦框62には、それぞれ係止部が形成されており、これを金属材に係合させることで樹脂材を金属材の室内面に取付けることができる。この構造については後で詳述する。
【0025】
框体2の内部には、グレチャン4を介してガラス体3が納められている。グレチャン4は、ゴムからなり断面略コ字状に形成されるもので、ガラス体3の周縁部に四周に渡って取付けられる。グレチャンの両側面はそれぞれ框体2の見付方向内端部の室内外面にそれぞれ形成される突条により挟持固定される。
【0026】
図3には、金属上框41と樹脂上框42の断面拡大図を示す。この図に示すように、金属上框41の見付方向内端部には、室外面に室外側突条43が、室内面に室内側突条44が、それぞれ形成されている。これら室外側突条43と室内側突条44及び金属上框41本体により、見付方向内側に向かって開口した溝部45が形成される。この溝部45にグレチャン4が納められ、さらにそれを介してガラス体3が納められる。
【0027】
また、室内側突条44の先端部近傍には、室外側に向かって突出する突片44aが形成されており、突片44aの先端部がグレチャン4の側面に圧接し、グレチャン4を固定している。また、突片44aの根元部分は、樹脂上框42の下端部が係合する内側取付部47を形成している。
【0028】
金属上框41の室内面には、長手方向略全長に渡って起立部48が形成されている。起立部48は、金属上框41から略垂直に立ち上がる立ち上がり片48aと、その先端が略L字状に形成されてなる気密ライン48bとからなっている。また、立ち上がり片48aの内側部には、樹脂上框42の上端部が係合する外側取付部46が形成されている。
【0029】
起立部48の気密ライン48bは、金属上框41の室内面と平行な面からなり、上枠10の室内側気密材14と対向配置される。また、框体2を枠体1に対して閉じた状態において図1に示すように室内側気密材14に対して当接する。
【0030】
樹脂上框42は、上部に金属上框41の外側取付部46に係合する外側係止部42aを有し、下部に金属上框41の内側取付部47に係合する内側係止部42bを有している。外側係止部42aは、金属上框41の外側取付部46に係合して固定されると共に、金属上框41の起立部48を構成する立ち上がり片48aの室内側露出面を覆う立ち上がり被覆部42cを有している。立ち上がり被覆部42cは、その先端が上枠10の室内側気密材14に当接し、起立部48において金属上框41が室内側に露出しないように連続的な被覆をなしている。
【0031】
また、内側係止部42bは、金属上框41の内側取付部47に係合して固定されると共に、その端部がグレチャン4に当接することで、グレチャン4と樹脂上框42とを連続状とする。これにより、上述した起立部48における被覆と合わせて、金属上框41の室内側露出部分を全て樹脂上框42により連続的に被覆するので、断熱性及び美観に優れたサッシの框体とすることができる。
【0032】
金属上框41は、室内外に突条43、44を備えてグレチャン4を挟持し、室内面に気密ライン48bを有していることから、框としての機能を全て有している。したがって、金属材のみでも框を構成することができる。一方で室内面に外側取付部46及び内側取付部47を備えていることにより、樹脂上框42を室内露出部が覆われるように取付けることができるので、複合材による框としても構成することができる。
【0033】
下框50は、図1に示すように上框40を上下反転した構造を有している。すなわち、金属下框51の見付方向内端部には室外側突条53と室内側突条54が形成され、溝部55にグレチャン4を介してガラス体3を納める。また、室内側突条54には突片54aと内側取付部57が形成され、金属下框51の室内面には起立部58と外側取付部56が形成されて気密ライン58bが下枠20の室内側気密材24に当接する。
【0034】
樹脂下框52は、下部に形成される外側係止部52aが金属下框51の外側取付部56に係止固定され、上部に形成される内側係止部52bが金属下框51の内側取付部57に係止固定される。このように、金属下框51も金属上框41と同様に框としての機能を全て備え、また樹脂下框52を取付けることもできるように構成されている。
【0035】
縦框60も上框40や下框50と同様の構造を有している。金属縦框61の見付方向内端部には室外側突条63と室内側突条64が形成され、溝部65にグレチャン4を介してガラス体3を納める。また、室内側突条64には突片64aと内側取付部67が形成され、金属縦框61の室内面には起立部68と外側取付部66が形成されて気密ライン68bが縦枠30の室内側気密材34に当接する。樹脂縦框62は、外側係止部62aと内側係止部62bを有し、それぞれ金属縦框61の外側取付部66と内側取付部67に係止固定される。」

イ 図面
引用文献2の図面には、次の図示がある。

(ア)【図1】




(イ)【図2】




(ウ)【図3】




ウ 看取される事項
上記段落【0022】の記載を踏まえると、【図1】より、金属上枠11の室外側気密材13は、框体2の気密ラインと、金属上框41において当接してサッシの気密性を確保し、金属上枠11は室外側気密材13から室内側に延在する面を有し、樹脂上枠12の室内側気密材14は、框体2の気密ラインと、樹脂上框42において当接してサッシの気密性を確保することが、看取される。
また、【図1】より、金属上框41が金属上枠11の室外側気密材13と当接して室内側に延在する金属上枠11に至る金属部材の面と、樹脂上框42が樹脂上枠12の室内側気密材14と当接して室内側に延在する樹脂上枠12に至る樹脂部材の面との間には、空間が形成されていることが、看取される。

(2)引用文献2に記載された発明
上記(1)より、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

引用発明2
「建物開口部に対して枠体1を取付け、この枠体1内に框体2を納めた複合サッシの枠体1及び框体2であり、
枠体1は、金属枠の室内側に樹脂枠を配設してなるものであり、
框体2は、室外側を金属材で構成し、その室内面を樹脂材にて覆っており、
框体2の内部には、ゴムからなり断面略コ字状に形成されたグレチャン4を周縁部に四周に渡って取付けたガラス体3が納められ、
金属上框41は、溝部45の室内外に突条43、44を備えてグレチャン4を挟持し、室内面に気密ライン48bを有しており、一方で室内面に外側取付部46及び内側取付部47を備えていることにより、樹脂上框42を室内側露出部が覆われるように取付けることができ、
樹脂上框42は、上部に金属上框41の外側取付部46に係合する外側係止部42aを有し、下部に金属上框41の内側取付部47に係合する内側係止部42bを有し、内側係止部42bは、その端部がグレチャン4に当接することで、グレチャン4と樹脂上框42とを連続状態とし、金属上框41の室内側露出部分を全て樹脂上框42により連続的に被覆することで、断熱性に優れたサッシの框体とすることができ、
金属上枠11の室外側気密材13は、框体2の気密ラインと、金属上框41において当接してサッシの気密性を確保し、金属上枠11は室外側気密材13から室内側に延在する面を有し、樹脂上枠12の室内側気密材14は、框体2の気密ラインと、樹脂上框42において当接してサッシの気密性を確保し、金属上框41が金属上枠11の室外側気密材13と当接して室内側に延在する金属上枠11に至る金属部材の面と、樹脂上框42が樹脂上枠12の室内側気密材14と当接して室内側に延在する樹脂上枠12に至る樹脂部材の面との間には、空間が形成されており、
下框50は、上框40を上下反転した構造を有しており、
縦框60も上框40や下框50と同様の構造を有している、
複合サッシの枠体1及び框体2。」

3 引用文献3
(1)記載事項、及び看取される事項
ア 発明の詳細な説明
本願の出願前に頒布された刊行物である、引用文献3には、発明の詳細な説明に次の記載がある。

(ア)
「【0002】
【従来の技術】従来の排水弁として図6、図7に示すものがある。サッシ1の下枠2には、図6,図7に示すように下枠2の室内側凹部10に溜った水を排出すると共に暴風雨による水の室内への逆流を防止可能な排水弁30,40が設けられており、室内への漏水を防止するようになっている。排水弁30,40は筒状の弁本体31,41と弁体37,47から構成されている。図6に示す排水弁30は弁本体31を貫通して排出孔32が形成され、弁本体31の頭部33には排出孔32と連通する導水部34が形成されている。排出孔32は大径孔35と小径孔36からなり、下端側開口端部には弁体37の落下を防止し水を排出可能な有孔蓋部材38が取付けられている。排出孔32内には球形状の弁体37が遊動自在に挿入されている。この排水弁30はポリエチレンから成形加工されている。」

(イ)
「【0008】
【実施例】次に本願の排水弁の実施例について図1〜図5により説明する。図1に示すように1は左右の竪枠と上枠と下枠2とのガラス嵌入溝3にガラス4をガスケット5を介して嵌殺し状態に装着した周知構造の嵌殺しサッシである。下枠2上面のガラス嵌入溝3を構成する上壁6より一段低い上壁7の室内側には水返し片8が立設してあり、ガラス嵌入溝3の室内側側壁9と上壁7と水返し片8とにより下枠2長手方向全長に亘って凹部10が形成されている。この凹部10を形成する下枠2の上壁7の長手方向両端側には下枠2上面に結露等により溜った水を室外へ排水する排水弁11が設けられている。また、下枠2の室外側側壁12には排水弁11から排出された下枠2上の水を更に室外へ排出する排水孔13が穿設され、また、下枠2のガラス嵌入溝下壁14にはガラス嵌入溝3内に侵入した水を室外へ排出する排水孔15が穿設されている。」

(ウ)
「【0010】弁体17は弁本体16の開口端部25から嵌め込まれ、弁体17嵌め込み時には弁体17は開口端部25を拡開方向(図3の矢印方)に切り込み27を境にして弾性的に押し広げ、排出孔23内に遊動自在に嵌め込まれる。図1に示すように排水弁11は下枠2の凹部10上面から頭部19が突出して水抜き孔20の一部分が上面より僅かに下に位置するように頭部19の下面21と固定爪22とにより上壁7を挾んで嵌着されており、弁体17は通常排出孔開口端部25で保持爪26により保持されている。下枠2の凹部10上面に結露等により水が溜ると、水は水抜き孔20へ流れ込み排出孔23を通って開口端部25の弁体17と排出孔23との隙間から自然落下により排出され、この水は下枠2の排水孔13から室外に排水される。台風等により暴風雨がサッシ1に吹き付けると、下枠2の排水孔13から侵入した雨水や排水弁11から排水される水が強風により排水弁11から凹部10上面へ逆流しようとするが、弁体17が風により上昇して図4に示すように位置Aから位置Bに移動し、排出孔23の内周面24に圧接して排出孔23と水抜き孔20との連通を閉鎖し水の逆流を防止し、室内への漏水を防止する。尚、弁本体は耐候性が良い材料であれば良く、また、弁体は風により排出孔を遊動可能な軽い材質のものであれば良い。」

イ 図面
引用文献3の図面には、次の図示がある。

(ア)【図1】




(イ)【図6】




(ウ)【図7】




ウ 看取される事項、及び技術常識から明らかである事項
(ア)上記段落【0008】に記載される「下枠2のガラス嵌入溝下壁14」に「穿設」される「ガラス嵌入溝3内に侵入した水を室外へ排出する排水孔15」は、上記【図1】より、上下方向に貫通し屋外と連通していることが看取される。

(イ)上記段落【0010】において、「台風等により暴風雨がサッシ1に吹き付けると、下枠2の排水孔13」から「雨水」が「侵入」することが記載されていること、及び、上記段落【0008】に記載される「下枠2のガラス嵌入溝下壁14」に「穿設」された「排水孔15」について、上記【図1】において屋外と連通していることが看取されることから、上記段落【0008】に記載される「下枠2」の「ガラス嵌入溝3内に侵入」する「水」とは、「排水孔15」より侵入し得る雨水を含む水であることが、技術常識から明らかである。

(ウ)上記【図6】及び上記【図7】において、上記【図1】に図示されるガラス嵌入溝3の下壁14を上下方向に貫通し屋外と連通する排水孔15と同様に、ガラス嵌入溝の下壁を上下方向に貫通し屋外と連通する孔を看取することができる。
上記段落【0002】において、図6及び図7に示す従来のサッシ1の下枠2に関しても、暴風雨を受けることが記載されていることを踏まえると、上記【図6】及び【図7】から看取できる、上記ガラス嵌入溝の下壁を上下方向に貫通し屋外と連通する孔は、暴風雨によりガラス嵌入溝内に侵入した雨水を含む水を排水可能であることが、技術常識から明らかである。

(エ)上記段落【0002】及び【0008】の記載を踏まえると、上記【図1】、【図6】及び【図7】より、サッシ2の下枠の室内側凹部10の上面に結露等により溜まった水を排出する排出弁を設ける箇所から、屋外に至るまで、サッシ2の下枠に孔を形成していることが、看取される。

(2)引用文献3に記載された技術的事項
上記(1)より、上記段落【0002】並びに【図6】及び【図7】に示される従来技術、及び、上記段落【0008】及び【0010】並びに【図1】に示される実施例に共通して、引用文献3には、次の技術的事項が記載されている。

引用文献3に記載された技術的事項
「サッシのガラス嵌入溝の下壁に、暴風雨によりガラス嵌入溝内に侵入した雨水を含む水を排水可能な、上下方向に貫通し屋外と連通する孔を設けるとともに、
サッシの下枠の室内側凹部上面に結露等により溜まった水を排出する排水弁を設ける箇所から、屋外に至るまで、サッシの下枠に孔を形成した、
サッシ。」


第5 判断
1 引用発明1を主たる引用発明とした本願発明1の進歩性
(1)対比
本願発明1と、引用発明1とを対比する。
引用発明1における「建物外壁に形成された窓開口」は、本願発明1における「開口部」に相当し、引用発明1における「金属枠10」は、本願発明1における「金属部材」に相当し、引用発明1における「金属枠10の屋内側露出部分を覆う合成樹脂から押し出し成型された樹脂枠20」及び「合成樹脂から押し出し成型された複層ガラス用固定部材40b」は、本願発明1における「樹脂部材」に相当する。
引用発明1において、「金属枠10は、金属上枠16、金属下枠11及び左右の金属縦枠17で構成され」たうえで、「樹脂枠20は、樹脂上枠29、樹脂下枠21及び左右の樹脂縦枠30とで構成され、樹脂上枠29は金属上枠16に、樹脂下枠21は金属下枠11に、樹脂縦枠30は金属縦枠17にそれぞれ取付けられ」ており、また「複層ガラス用固定部材40bは、金属下枠11に嵌合固定され、金属上枠16及び両側の金属縦枠17にも、それぞれ複層ガラス用固定部材40bが嵌合固定されて」いる構成は、本願発明1において、「金属部材と樹脂部材とを連結」した構成に相当する。
引用発明1における「複合窓枠」は、本願発明1における「複合枠」に相当する。
引用発明1における「複層ガラス31b」は、本願発明1における「ガラスパネル」に相当する。
引用発明1において、「金属下枠11には、複層ガラス31bを嵌合可能な嵌合溝18が形成され、金属下枠11の嵌合溝18には複層ガラス31bの端部が嵌合され、金属上枠16及び左右の金属縦枠17にも、複層ガラス31bの端部を嵌合可能な嵌合溝が形成され」る構成は、本願発明1において、「前記金属部材は、ガラスパネルの端部を支持するパネル支持溝を有」する構成に相当する。
引用発明1において、「金属下枠11」が有する「嵌合溝18の屋内側を構成する窓側突出縁12」、及び、「金属上枠16及び左右の金属縦枠17」が有する「嵌合溝の屋内側を構成する突出縁」は、本願発明1における「前記パネル支持溝の前記屋内側の面」に相当し、引用発明1において、「金属下枠11」並びに「金属上枠16及び左右の金属縦枠17」のうち、「窓側突出縁12から、嵌合溝18よりも屋内側に至る部分」及び「突出縁から、嵌合溝よりも屋内側に至る部分」は、金属枠の金属部材が屋内側である見込み方向に向かう部分ということができるから、本願発明1における「前記金属部材の見込み面」に相当する。そして、引用発明1において、「金属下枠11は、嵌合溝18の屋内側を構成する窓側突出縁12から、嵌合溝18よりも屋内側に至る部分まで、断面視で金属部材が連続して」いる構成、及び「金属上枠16及び左右の金属縦枠17も、嵌合溝の屋内側を構成する突出縁から、嵌合溝よりも屋内側に至る部分まで、断面視で金属部材が連続して」いる構成は、金属部材が連続している箇所では外気の屋内側への通気が当該連続している金属部材によって妨げられることが明らかであることを踏まえると、本願発明1において、「前記パネル支持溝の前記屋内側の面から前記金属部材の見込み面に連続して、外気の前記屋内側への通気を阻止する気密ラインが構成され」ることに相当する。
引用発明1において、「金属下枠11には、樹脂下枠21の下に排水された、結露等によりガラスに生じた水滴などを、更に外部へと排水するための排水用の穴が、窓側突出縁12よりも屋内側の空隙部25の下の位置に形成され」ている構成は、「排水用の穴」が設けられる位置が「窓側突出縁12よりも屋内側」であり、「嵌合溝18の屋内側を構成する窓側突出縁12から、嵌合溝18よりも屋内側に至る部分まで、断面視で金属部材が連続して」いることにより、外気の屋内側への通気が連続する金属部材によって妨げられている箇所の一部であることを踏まえると、本願発明1において、「該気密ライン上に、結露水排水孔が形成され」る構成に相当する。
引用発明1において、「合成樹脂から押し出し成型された複層ガラス用固定部材40b、及び樹脂枠20は、金属枠10の複層ガラス31bを嵌合可能な嵌合溝よりも屋内側の部分を覆って」いる構成は、本願発明1において、「前記樹脂部材は、前記金属部材上であって前記パネル支持溝よりも屋内側を覆って配置され」た構成に相当する。
引用発明1において、「合成樹脂から押し出し成型された複層ガラス用固定部材40b、及び樹脂枠20」が「樹脂部材の屋内側面」を形成することは、引用発明1では「熱伝導率の低い樹脂によって断熱効果を向上」させていることを踏まえると、本願発明1において、「前記樹脂部材に沿って断熱ラインが構成」されることに相当する。そして、引用発明1において、「金属枠10の嵌合溝の屋内側を構成する突出縁から嵌合溝よりも屋内側に至る部分と、合成樹脂から押し出し成型された複層ガラス用固定部材40b及び樹脂枠20で形成される樹脂部材の屋内側面との間には、断面視で囲まれる部分が形成され」いる構成は、「金属枠10の嵌合溝の屋内側を構成する突出縁から嵌合溝よりも屋内側に至る部分」が金属部材によって外気の屋内への流入を妨げることから本願発明1における「気密ライン」に相当すること、及び引用発明1において上記「断面視で囲まれる部分」が空間となっており、「熱伝導率の低い樹脂」と同様に「断熱効果を向上」させる機能を奏することが明らかであることを踏まえると、本願発明1において、「前記気密ラインと前記断熱ラインとの間には、断熱空間が形成され」る構成に相当する。
引用発明1における「緩衝部材50」は、「金属下枠11の嵌合溝18」において、「複層ガラス31b」を、「屋内側からは、樹脂下枠21と複層ガラス31bとの間に設けられた複層ガラス用固定部材40bによって緩衝部材50を介して支持」し、また「屋外側からは、金属下枠11に設けられた屋外当接部19によって緩衝部材50を介して支持」するものであり、「金属上枠16及び左右の金属縦枠17の嵌合溝においても、金属下枠11の嵌合溝18における支持と同様に支持がされる」から、「緩衝部材50」は「金属枠10」及び「複層ガラス用固定部材40b」と「複層ガラス31b」との間に挟み込まれており、また「金属枠10」及び「複層ガラス用固定部材40b」は「緩衝部材50」に当接しているということができる。引用発明1において、前述のとおり、「金属枠10」及び「複層ガラス用固定部材40b」と「複層ガラス31b」との間に挟み込まれているということができる「緩衝部材50」と、本願発明1において「前記金属部材及び前記樹脂部材と前記ガラスパネルとの間」に「挟み込まれ」る「シーリング材」とは、「前記金属部材及び前記樹脂部材と前記ガラスパネルとの間」に「挟み込まれ」る「部材」という点で、共通している。また、引用発明1において、上記のとおり「緩衝部材50」に当接しているということができる「金属枠10」及び「複層ガラス用固定部材40b」と、本願発明1において、「前記シーリング材に当接」している「前記金属部材及び前記樹脂部材」とは、「前記挟み込まれる部材に当接」している「前記金属部材及び前記樹脂部材」という点で、共通している。

以上を整理すると、本願発明1と引用発明1とは、次の点で一致する。
「開口部に設けられ、金属部材と樹脂部材とを連結して構成された複合枠であって、
前記金属部材は、ガラスパネルの端部を支持するパネル支持溝を有し、
前記樹脂部材は、前記金属部材上であって前記パネル支持溝よりも屋内側を覆って配置され、
前記パネル支持溝の前記屋内側の面から前記金属部材の見込み面に連続して、外気の前記屋内側への通気を阻止する気密ラインが構成され、
該気密ライン上に、結露水排水孔が形成され、
前記樹脂部材に沿って断熱ラインが構成され、
前記気密ラインと前記断熱ラインとの間には、断熱空間が形成され、
前記金属部材及び前記樹脂部材と前記ガラスパネルとの間には、挟み込まれる部材を有し、
前記金属部材及び前記樹脂部材は、前記挟み込まれる部材に当接している、
複合枠。」

本願発明1と引用発明1との相違点は、次の点である。
<相違点1>
「前記金属部材及び前記樹脂部材と前記ガラスパネルとの間」で「挟み込まれ」る部材に関し、
本願発明1においては、「シーリング材」と特定されているのに対し、
引用発明1においては、「緩衝材」とされ、「シーリング材」とは特定されていない点。

<相違点2>
本願発明1においては、「前記パネル支持溝には、上下方向に貫通し、屋外と連通された雨水排水孔が形成されている」のに対し、
引用発明1においては、「雨水排水孔」が形成されているとは特定されていない点。

(2)相違点についての判断
ア 相違点1について
(ア)本願発明1における「シーリング材」について
相違点1に係る本願発明1の構成における「シーリング材」は、当審が通知した令和3年2月26日付け拒絶理由に対する令和3年4月27日提出の手続補正書による補正において、同補正前の「封止材」を「シーリング材」へと補正したものである。そして、請求人は同手続補正書と同時に提出した意見書において、本願発明1における「シーリング材」は、引用発明2における「グレチャン4」等と異なり、気密性が高い旨を主張している。
そこで、上記相違点1の判断に先立ち、相違点1に係る本願発明1の構成における「シーリング材」に関して、本願明細書の記載を確認する。
本願明細書において、「第一実施形態」に関する段落【0023】には、「面クリアランス40Sには、スポンジ等の弾性材41及びシーリング材(封止材)42が設けられている。シーリング材42は不定形または定形形状であり、例えばシリコーン、変成シリコーン、ウレタン、ブチル等を採用できる。」と記載されている。そして、段落【0087】には、「・・・(前略)・・複層ガラス2とシーリング材42を挟む金属上枠10A、金属下枠20A、金属縦枠30A、金属押縁50Aのガラス受け部40との間で屋内外の外気や音の流通を阻止して気密性を確保することができる。」と記載されている。
また、本願明細書において、「第二実施形態」に関する段落【0101】には、「複層ガラス2の四辺の側端部は断面略U字状のグレージングチャンネル(封止材)43で全周に亘って連続して囲われている。」と記載され、段落【0104】には「これらヒレ部44と先端ヒレ部46とで、屋内外における複層ガラス2の両端部とグレージングチャンネル43とを気密に封止している。」と記載されている。
これらの記載から、本願明細書においても、「シーリング」という語は、日本語でいう「封止」と異なる特別な意味で用いられてはおらず、本願発明1における「シーリング材」とは、本願明細書を参照しても、空気を封止(シーリング)して気密性を確保することができる部材を意味すると理解することができる。
そして、本願発明1における「シーリング材」、第一実施形態における「シーリング材(封止材)42」、及び第二実施形態における「グレージングチャンネル(封止材)43」について、気密性を確保する性能の点で異なるものとして区別する記載は、本願明細書を参照しても見いだすことができない。また、本願発明1に係る「シーリング材」について、空気を封止(シーリング)して気密性を確保できる機能を有するものとして通常用いられている部材とは、異なるものとして区別されるものであることは、特許請求の範囲の請求項1においても特定されていない。
したがって、本願発明1における「シーリング材」とは、気密性を確保できる機能を有するものとして通常用いられている部材と異なるものではなく、空気を封止(シーリング)して気密性を確保できる部材として特定されるものである。

(イ)相違点1についての判断
上記相違点1について判断する。
引用発明1は、複層ガラス31bを用い、熱伝導率の低い樹脂によって断熱効果を向上させたものであるところ、複合窓枠の嵌合溝に嵌合した複層ガラス31bの屋内側及び屋外側に介在する緩衝部材50の箇所で、空気が封止されることなく通過してしまえば、高い断熱性が得られず不都合であることは明らかであることからすれば、緩衝部材50として、空気を通過させず密封する機能を有し、断熱性を損なわない材質のものを選択し、もって本願発明1における「シーリング材」に相当する構成とすることは、当業者であれば適宜になし得た設計事項程度である。

イ 相違点2について
上記相違点2について判断する。
上記引用文献3には、上記第4の3(2)に認定した技術的事項が記載されており、当該技術的事項は引用文献3の従来技術としても示されていることから、周知技術でもあると認められる。
上記引用文献3に記載される技術的事項において、「サッシのガラス嵌入溝の下壁に、暴風雨によりガラス嵌入溝内に侵入した雨水を含む水を排水可能な、上下方向に貫通し屋外と連通する孔を設け」る構成は、上記相違点2に係る本願発明1の構成である、「前記パネル支持溝には、上下方向に貫通し、屋外と連通された雨水排水孔」を形成する構成に相当する。
引用発明1においても、結露水の排水を考慮しているとともに、「建物外壁に形成された窓開口」に納められる「複合窓枠」であるから、暴風雨にさらされることがあり得ることは明らかであるところ、暴風雨等への対策として、「金属下枠11」の「複層ガラス31bを嵌合可能な嵌合溝18」に、上記引用文献3に記載される技術的事項を採用し、もって上記相違点2に係る本願発明1の構成に相当する構成に至ることは、当業者であれば容易に想到し得た事項である。

ウ 小括
以上より、本願発明1は、引用発明1、及び引用文献3に記載される技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 引用発明2を主たる引用発明とした本願発明1の進歩性
(1)対比
本願発明1と、引用発明2とを対比する。
引用発明2における「建物開口部」は、本願発明1における「開口部」に相当する。
引用発明2における「枠体1内に框体2を納めた複合サッシ」は、枠体1に框体2を納めた状態においても、ガラス体3を納めることができる枠形状を有しているから、本願発明1における「複合枠」に相当する。
引用発明2において、「金属上框41」を含む、「框体2」を構成する「金属材」、及び、「金属上枠11」を含む、「枠体1」を構成する「金属枠」は、本願発明1における「金属部材」に相当する。
引用発明2において、「樹脂上框42」を含む、「框体2」を構成する「樹脂材」、及び、「樹脂上枠12」を含む、「枠体1」を構成する「樹脂枠」は、本願発明1における「樹脂部材」に相当する。
引用発明2において、「複合サッシ」を構成する「枠体1」が「金属枠の室内側に樹脂枠を配設してなるもの」であり、「複合サッシ」を構成する「框体2」が「室外側を金属材で構成し、その室内面を樹脂材にて覆って」いるものであることは、本願発明1において、「複合枠」が「金属部材と樹脂部材とを連結して構成された」ことに相当する。
引用発明2において、「框体2の内部」に納められる「ゴムからなり断面略コ字状に形成されたグレチャン4を周縁部に四周に渡って取付けたガラス体3」は、本願発明1における「ガラスパネル」に相当する。
引用発明2において、「上框40」が有する「金属上框41」が、「溝部45の室内外に突条43、44を備えてグレチャン4を挟持」し、「下框50」及び「縦框60」が「上框40」と同様の構造を有する構成は、本願発明1において、「前記金属部材は、ガラスパネルの端部を支持するパネル支持溝を有」する構成に相当する。
引用発明2において、「枠体1は、金属枠の室内側に樹脂枠を配設してなる」ものであり、「框体2は、室外側を金属材で構成し、その室内面を樹脂材にて覆って」いる構成は、本願発明1において、「前記樹脂部材は、前記金属部材上であって前記パネル支持溝よりも屋内側を覆って配置され」る構成に相当する。
引用発明2において、「金属上框41」が「室内面に気密ライン48bを有して」おり、「金属上枠11の室外側気密材13は、框体2の気密ラインと、金属上框41において当接してサッシの気密性を確保し、金属上枠11は室外側気密材13から室内側に延在する面を有し」ており、「金属上框41が金属上枠11の室外側気密材13と当接して室内側に延在する金属上枠11に至る金属部材の面」を備えており、「下框50」及び「縦框60」も「上框40」と「同様の構造を有して」いることは、本願発明1において、「前記パネル支持溝の前記屋内側の面から前記金属部材の見込み面に連続して、外気の前記屋内側への通気を阻止する気密ラインが構成され」ていることに相当する。
引用発明2において、「樹脂上枠12の室内側気密材14は、框体2の気密ラインと、樹脂上框42において当接してサッシの気密性を確保」し、「樹脂上框42が樹脂上枠12の室内側気密材14と当接して室内側に延在する樹脂上枠12に至る樹脂部材の面」を備えており、樹脂部材によって「被覆すること」で「断熱性に優れた」サッシとしている構成は、本願発明1において、「前記樹脂部材に沿って断熱ラインが構成」される構成に相当する。
引用発明2において、「金属上框41が金属上枠11の室外側気密材13と当接して室内側に延在する金属上枠11に至る金属部材の面と、樹脂上框42が樹脂上枠12の室内側気密材14と当接して室内側に延在する樹脂上枠12に至る樹脂部材の面との間には、空間が形成されて」いる構成は、本願発明1において、「前記気密ラインと前記断熱ラインとの間には、断熱空間が形成され」ている構成に相当する。
引用発明2において、「ゴムからなり断面略コ字状に形成されたグレチャン4」は、「グレチャン4」の部分で空気を封止することなく通過させてしまうと、「金属上框41」が「突条43、44を備えてグレチャン4を挟持し、室内面に気密ライン48bを有し」たところで、【図3】に図示される「気密ライン48b」の直近の「グレチャン4」の箇所で気密性が損なわれ、不都合であることから、「グレチャン4」に用いる「ゴム」として、空気を封止する機能を有する素材を用いていることが技術常識として明らかであり、本願発明1における「シーリング材」に相当する。
引用発明2において、「金属上框41は、溝部45の室内外に突条43、44を備えてグレチャン4を挟持」し、「樹脂上框42」も、「内側係止部42bは、その端部がグレチャン4に当接することで、グレチャン4と樹脂上框42とを連続状態」となる構成は、本願発明1において、「前記金属部材及び前記樹脂部材と前記ガラスパネルとの間には、シーリング材が挟み込まれ、前記金属部材及び前記樹脂部材は、前記シーリング材に当接している」構成に相当する。

以上を整理すると、本願発明1と引用発明2とは、次の点で一致する。
「開口部に設けられ、金属部材と樹脂部材とを連結して構成された複合枠であって、
前記金属部材は、ガラスパネルの端部を支持するパネル支持溝を有し、
前記樹脂部材は、前記金属部材上であって前記パネル支持溝よりも屋内側を覆って配置され、
前記パネル支持溝の前記屋内側の面から前記金属部材の見込み面に連続して、外気の前記屋内側への通気を阻止する気密ラインが構成され、
前記樹脂部材に沿って断熱ラインが構成され、
前記気密ラインと前記断熱ラインとの間には、断熱空間が形成され、
前記金属部材及び前記樹脂部材と前記ガラスパネルとの間には、シーリング材が挟み込まれ、
前記金属部材及び前記樹脂部材は、前記シーリング材に当接している、
複合枠。」

本願発明1と引用発明2との相違点は、次の点である。
<相違点3>
本願発明1においては、「気密ライン上に、結露水排水孔が形成」されているのに対し、
引用発明2においては、「結露水排水孔」が形成されているとは特定されていない点。

<相違点4>
本願発明1においては、「前記パネル支持溝には、上下方向に貫通し、屋外と連通された雨水排水孔が形成されている」のに対し、
引用発明2においては、「雨水排水孔」が形成されているとは特定されていない点。

(2)相違点についての判断
ア 相違点3について
上記相違点3について判断する。
引用発明1が、「金属下枠11には、樹脂下枠21の下に排水された、結露等によりガラスに生じた水滴などを、更に外部へと排水するための排水用の穴が、窓側突出縁12よりも屋内側の空隙部25の下の位置に形成され」る構成を有するように、また、引用文献3に記載される技術的事項が、「サッシの下枠の室内側凹部上面に結露等により溜まった水を排出する排水弁を設ける箇所から、屋外に至るまで、サッシの下枠に孔を形成」する構成を有するように、室内側にたまる結露水を外部に排水する孔を設けることは周知技術であり、引用発明2において、気密ラインより内側に溜まり得る結露水を室外に排水するために、気密ライン上に結露水排水孔を設け、もって上記相違点3に係る本願発明1の構成に至ることは、上記引用発明1及び引用文献3に記載される技術的事項に示される上記周知技術に基いて、当業者が容易に想到できた事項である。

イ 相違点4について
上記相違点4について判断する。
上記相違点4に係る本願発明1の構成は、本願発明1と引用発明1との上記相違点2に係る本願発明1の構成と同様であり、上記引用文献3に記載される技術的事項において、「サッシのガラス嵌入溝の下壁に、暴風雨によりガラス嵌入溝内に侵入した雨水を含む水を排水可能な、上下方向に貫通し屋外と連通する孔を設け」る構成は、上記相違点4に係る本願発明1の構成である、「前記パネル支持溝には、上下方向に貫通し、屋外と連通された雨水排水孔」を形成する構成に相当する。
そして、引用発明2においても、「建物開口部」に取付けられるサッシの枠体及び框体であるから、暴風雨にさらされることがあり得ることは明らかであるところ、暴風雨等への対策として、「ガラス体3」の「グレチャン4を挟持」する「溝部45」を備えた「金属上框41」を含む「上框50」を、「上下反転した構造」を有する「下框50」について、金属下框が有する「ガラス体3」の「グレチャン4を挟持」する溝部に、上記引用文献3に記載される技術的事項を採用し、もって上記相違点4に係る本願発明1の構成に相当する構成に至ることは、当業者であれば容易に想到し得た事項である。

ウ 小括
以上より、本願発明1は、引用発明2、及び引用発明1並びに引用文献3に記載される技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 請求人の主張について
(1)「シーリング材」に関して
請求人は、令和3年4月27日提出の補正書において、同補正前における請求項1に記載された「封止材」を「シーリング材」と補正するとともに、同補正書と同時に提出した意見書において、「引用文献1に記載された緩衝部材50及び引用文献2に記載されたグレチャン4は、いずれも本願請求項1に係る発明のように気密性が高いシーリング材とは構成が異なる。」と主張しており、本願発明1に係る「シーリング材」は、気密性の高さの点で引用発明1及び引用発明2とは相違し、引用発明1及び引用発明2から容易に想到できる構成ではない旨を主張するものと解される。
しかしながら、上記1(2)ア(ア)で説示したとおり、本願発明1における「シーリング材」とは、気密性を確保できる機能を有するものとして通常用いられている部材と異なるものではなく、空気を封止(シーリング)して気密性を確保できる部材として特定されるものである。
そして、上記1(2)ア(イ)で判断したとおり、高い断熱性を考慮する引用発明1において、「緩衝部材50」として、空気を通過させず密封する機能を有し、断熱性を損なわない材質のものを選択することは、当業者であれば適宜になし得た設計事項程度である。
また、上記2(1)において対比したとおり、引用発明2において、「ゴムからなり断面略コ字状に形成されたグレチャン4」は、「気密ライン48b」の直近の「グレチャン4」の箇所で気密性が損なわれると不都合であるから、「グレチャン4」に用いる「ゴム」として、空気を封止する機能を有する素材を用いていることが技術常識として明らかであり、本願発明1における「シーリング材」に相当する。
したがって、上記請求人の主張は、本願発明1における「シーリング材」に関して、構成として相違する旨の主張、及び構成として容易に想到できたものではない旨をいう主張として、採用することができない。

(2)「雨水排水孔」に関して
請求人は、令和3年4月27日提出の補正書において、同補正前における請求項1に記載された発明に、「前記パネル支持溝には、上下方向に貫通し、屋外と連通された雨水排水孔が形成されている」との構成を追加するとともに、同補正書と同時に提出した意見書において、引用文献1〜3には、本願発明1の起因ないし契機となりうるものはない旨を主張している。
しかしながら、「雨水排水孔」に関する本願発明1の構成は、上記1(2)イ及び上記2(2)イに判断したとおり、引用文献3において、実施例及び従来技術に共通して示される技術的事項であり、建物の開口に設置されて風雨にさらされることが明らかな引用発明1及び引用発明2において、当該引用文献3に記載される技術的事項を採用することは、当業者にとって容易に想到できた事項である。
したがって、上記請求人の主張は、本願発明1における「雨水排水孔」に関して、構成として相違する旨の主張、及び構成として容易に想到できたものではない旨をいう主張として、採用することができない。

(3)効果に関して
請求人は、令和3年4月27日提出の意見書において、本願発明1における「シーリング材」により高い気密性という効果を奏する旨、及び、本願発明1における「パネル支持溝には、上下方向に貫通し、屋外と連通された雨水排水孔が形成されている」構成により、パネル支持溝内に屋外の空気が取り込まれるが、「シーリング材」によって屋内の空気がパネル支持溝の内部に流れ込むことは抑制されるという効果を奏する旨を、主張している。
しかしながら、上記(1)で示したとおり、引用発明1において「緩衝部材50」として気密性を有する材質のものを選択することは設計事項程度であり、引用発明2における「グレチャン4」に用いる「ゴム」として、空気を封止する機能を有する素材を用いていることが技術常識として明らかであることからすれば、請求人が主張する本願発明1における「シーリング材」による高い気密性という効果は、引用発明1において設計事項程度であるとともにその効果についても予測し得たものであり、引用発明2においても同様の効果を奏したものである。
また、上記(2)で示したとおり、「前記パネル支持溝には、上下方向に貫通し、屋外と連通された雨水排水孔が形成されている」という本願発明1の構成に相当する構成は、引用文献3において、実施例及び従来技術に共通して示される技術的事項であるところ、引用発明1及び引用発明2において引用文献3に記載される技術事項を採用すれば、屋外と連通するパネルを支持する溝の内部に屋外の空気が流れ込むことは技術常識から明らかであるとともに、パネルを支持する溝の内部に屋外の空気が流れ込む構成を採用しても、引用発明1及び引用発明2において、パネルの屋内側の「緩衝部材50」又は「グレチャン4」によって、屋内側の気密を保つことが可能であることは、技術常識から明らかであるから、「雨水排水孔」及び「シーリング材」について請求人が主張する上記の効果も、引用発明1及び引用発明2並びに引用文献3に記載される技術事項から、当業者であれば予測し得た範囲を超えるものではない。
そして、本願発明1の構成についての容易想到性は上記(1)及び(2)に示したとおりであり、本願発明1の構成を採用したことによる主な効果も、上述したとおり当業者であれば予測し得た範囲を超えるものではないから、請求人が上記意見書において縷々主張するその他の効果についても、付随的に生じる効果であって、上記1(2)及び上記2(2)の判断を変更すべき格別顕著なものということはできない。

(4)小括
以上のとおりであるから、請求人の主張について検討しても、本願発明1を当業者が容易に発明することができたか否かについては、上記1及び2のとおり判断される。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用発明1及び引用文献3に記載される技術的事項に基いて、又は、引用発明2、引用発明1及び引用文献3に記載される技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の本願発明2ないし5について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。


 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2021-08-20 
結審通知日 2021-08-24 
審決日 2021-09-30 
出願番号 P2016-073245
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E06B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 長井 真一
特許庁審判官 有家 秀郎
田中 洋行
発明の名称 複合枠及び建具  
代理人 川渕 健一  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 清水 雄一郎  

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