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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1380685
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-13 
確定日 2022-01-18 
事件の表示 特願2017−228642「映像生成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月14日出願公開、特開2018− 92627、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成29年11月29日(優先権主張 平成28年12月5日)の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年 2月14日付け:拒絶理由通知書
令和2年 4月13日 :意見書,手続補正書の提出
令和2年 5月18日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和2年 9月15日 :意見書の提出
令和2年10月 5日 :拒絶査定
令和3年 1月13日 :審判請求書の提出
令和3年 9月30日付け:拒絶理由通知書
令和3年11月16日 :意見書,手続補正書の提出


第2 本願発明

本願請求項1〜6に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」〜「本願発明6」という。)は,令和3年11月16日に提出された手続補正書でする補正(以下,「本件補正」という。)で補正された特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
発表者が表示される映像である主映像が入力される主映像情報入力部と,
前記発表者の発表内容に関連する情報である関連情報が入力される関連情報入力部と,
前記主映像情報入力部に入力された前記主映像の表示領域内の所定範囲に前記関連情報入力部に入力された前記関連情報が表示される合成映像を生成する生成部と,としてコンピュータを機能させる映像生成プログラムと,
前記生成部が生成した前記合成映像が格納される格納部と,
を備え,
前記合成映像は,前記主映像と連動して前記関連情報の表示内容が変化する,
ことを特徴とする映像生成装置。」

なお,本願発明2〜6は,本願発明1を減縮した発明である。


第3 引用文献,引用発明等

1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載されている事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2004−274456号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は,動画データおよび音声データの少なくとも一方を含むデジタルデータを編集する情報編集装置,情報編集方法,および情報編集プログラムに関する。」

「【0030】
情報編集システム1は,プレゼンテーション資料31を格納するプレゼンテーション装置2と,このプレゼンテーション装置2と接続し,プレゼンテーション資料31を表示するプロジェクター等の投影機3と,投影機3により投影された画像を表示する表示画面30と,プレゼンテーションの状況を音声と共に動画撮影する音声取り込み機能付きのDVカメラ4と,DVカメラ4が取り込んだ音声を含む動画情報(以下単に「動画情報」と称す)を編集する情報編集装置5とを備えている。ここで,プレゼンテーション資料31は,プレゼンテーションの際に表示させる複数の画面画像データで構成されている。画面画像データは,例えばPPTデータなどの静止画データである。また,動画情報は,本発明のデジタルデータに相当する。
【0031】(省略)
【0032】
プレゼンテーション装置2は,単にプレゼンテーション資料31を格納しており,投影機3と通信可能であればよく,例えば,プレゼンターの所有するPCであってもよい。
【0033】
編集者は,プレゼンターがプレゼンテーション資料31を表示画面30に表示させながらプレゼンテーションを行っている様子を,DVカメラ4を用いて撮影する。ここで,編集者とは,情報編集システム1を利用して動画を編集する者のことである。
【0034】
撮影が終了すると,情報編集装置5は,プレゼンテーション装置2からプレゼンテーション資料31を取得し,さらに,DVカメラ4からプレゼンテーションの様子を示す動画情報を取得する。そして,情報編集装置5は,動画情報を編集する。すなわち,動画情報にプレゼンテーション資料31を対応付けた動画ファイルを生成する。
【0035】
図2は,本実施の形態にかかる情報編集システム1に特徴的な処理を行う情報編集装置5の情報編集部35と,プレゼンテーション装置2のイベント処理部32の機能構成を示すブロック図である。
【0036】(省略)
【0037】
また,情報編集部35は,受信部36と,イベント制御部37と,イベント記録部38と,イベント情報解釈部42と,動画情報キャプチャ部40と,動画情報管理部41と,撮影機器制御部39と,付帯情報生成部61と,動画ファイル生成部43と,付帯情報付帯情報ID付与部60と,画面画像テーブル保持部62と,印刷用データ生成部65と,雛型保持部66と,指示受付部54と,出力部50と,通信部67とを有している。
【0038】
受信部36は,送信部44からイベント情報およびプレゼンテーション資料31を受け取る。イベント制御部37は,受信部36が受け取ったイベント情報を制御する。イベント記録部38は,イベント制御部37からイベント情報を受け取り,イベント情報を記録する。
【0039】
撮影機器制御部39は,DVカメラ4を制御する。動画情報キャプチャ部40は,動画ファイル生成部43が生成した動画ファイルを外部に出力すると,DVカメラ4が取り込んだ動画情報をキャプチャする。動画情報管理部41は,動画情報を管理する。
【0040】(省略)
【0041】
動画ファイル生成部43は,イベント情報解釈部42によって解釈されたイベント情報に基づいて動画情報を編集し,動画ファイルを生成する。具体的には,付帯情報生成部61が生成した付帯情報および画面画像データを動画情報に対応付ける。
【0042】(省略)
【0043】
保持部64は,動画ファイル生成部43が生成した動画ファイルを保持する。雛型保持部66は,印刷用データ生成部65が利用する雛型を保持する。」

「【0049】
次に,図3を参照しつつ,プレゼンテーション資料31について説明する。プレゼンテーション資料31は,プレゼンテーションの際に表示画面30に表示すべき画面画像データ311,312,314,316,318,320を含んでいる。各画面画像データ311,312,314,316,318,320には,ページ番号が対応付けられており,ページ番号順に表示される。すなわち,プレゼンテーション資料31を構成する画面画像は,当該プレゼンテーション資料31の作成者が定めた順番に配列されている。図3に示すプレゼンテーション資料31は,6ページ分の画面画像データを含んでいる。これらは,プレゼンターからの指示により,1ページ,2ページ,・・・とページ順に表示される。なお,本実施の形態におけるプレゼンテーション資料31は,Microsoft(R)社製のPower Point(R)のファイルである。」

「【0065】
このように,動画情報600は,プレゼンテーション資料31の各画面画像311,312・・・と対応付けられているので,動画情報600とプレゼンテーション資料31の各画面画像データ311,312・・・とを同期して表示させることができる。
【0066】
図7は,出力部50から出力された動画ファイルを示している。図7に示す表示部500には,動画情報600と,プレゼンテーション資料31のうち,表示部500に表示されている区間に同期されたページ330と,動画情報600の目次800とが表示されている。なお,目次800と動画情報600とはリンクしており,例えば,目次800中の「テーマ1:製造業の空洞化」という項目が選択されると,そのとき表示されている動画の区間にかかわらず,動画情報600の区間1が再生される。なお,区間1とは,映像中に含まれる表示画面30にテーマ1が表示されている区間である。このように,目次を選択することにより,利用者の所望の区間を表示させることができる。
【0067】
なお,本実施の形態においては,動画ファイル生成部43は,SMIL(Synchronized Multimedia Integration Language)を利用して動画ファイルを生成する。ここで,SMILとは,動画,静止画,音声,音楽,文字など様々な形式のデータの再生を制御して同期させる言語のことであり,XMLで記述されている。SMILを用いることにより,表示画面における表示位置,表示させるタイミング,表示させる時間などを指定することができる。」


【図2】


【図7】

【図2】には,情報編集装置5の情報編集部35が,保持部64を有していることが示されている。

(2)引用文献1記載された発明
上記(1)から,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

DVカメラが取り込んだ音声を含む動画情報(以下単に「動画情報」と称す)を編集する情報編集装置であって(【0030】),
情報編集部を有し(【0035】),
情報編集部は,受信部と,イベント情報解釈部と,動画情報キャプチャ部と,動画情報管理部と,動画ファイル生成部と,保持部と,出力部とを有しており(【0037】【図2】),
動画情報キャプチャ部はDVカメラが取り込んだ動画情報をキャプチャし,動画情報管理部は動画情報を管理し(【0039】),
受信部はプレゼンテーション資料を取得し(【0034】【0038】),プレゼンテーション資料は,プレゼンテーションの際に表示画面に表示すべき画面画像データを複数含んでおり,各画面画像データには,ページ番号が対応付けられており(【0049】),
編集者は,プレゼンターがプレゼンテーション資料を表示画面に表示させながらプレゼンテーションを行っている様子を,DVカメラを用いて撮影し(【0033】),DVカメラからプレゼンテーションの様子を示す動画情報を取得し,動画情報にプレゼンテーション資料を対応付けた動画ファイルを生成し(【0034】),
動画ファイル生成部は,イベント情報解釈部によって解釈されたイベント情報に基づいて動画情報を編集し,動画ファイルを生成し(【0041】),
保持部は,動画ファイル生成部が生成した動画ファイルを保持し(【0043】),
動画情報とプレゼンテーション資料の各画面画像データとを同期して表示させることができ(【0065】),出力部から出力された動画ファイルを表示する表示部には,動画情報と,プレゼンテーション資料のうち,表示部に表示されている区間に同期されたページと,動画情報の目次とが表示され(【0066】【図7】),SMILを用いることにより,表示画面における表示位置,表示させるタイミング,表示させる時間などを指定することができる(【0067】),
情報編集装置。

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2002−182890号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,複数の情報処理端末や映像出力機器の出力画像をウィンドウ表示によって1画面に合成して表示する際の表示制御装置と接続機器との通信を制御する方式に関する。」

「【0006】このような表示制御方式を用いた従来のウィンドウ表示・制御装置においては,1つの情報処理端末の表示画面の中に別の情報処理端末や映像出力機器の表示画面をウィンドウ内に重ねて表示することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記のような従来のウィンドウ表示・制御装置では,メイン画面上に別の機器からの出力画像をウィンドウに表示するため,重なった領域のメイン画面の状況がわからくなり,ウィンドウ表示によって隠れた領域のメイン画面に対して操作を行う場合は,一旦ウィンドウを消去あるいは移動させるなどの操作をしてから本来の目的とする操作を行うことになり,作業効率が低下するという問題点があった。
【0008】この発明は,上記のような問題点を解決するためになされたもので,ウィンドウ表示を用いて1つの画面上で複数の出力画像(画像データ),例えば,複数のデバイスから出力される画像データを表示する場合の操作性の向上,省力化を図ることを目的とするものである。」

「【0017】
【発明の実施の形態】実施の形態1.図1は,この発明の実施の形態1であるウィンドウ表示・制御装置と接続するデバイスを含めた全体の構成の一例を示す構成図である。また,以下の説明では,メイン画面は,表示可能領域全体を使用して表示する画面を前提とする。しかしながら,必ずしも全体を使用する必要はなく,一部使用する場合も含まれる。ウィンドウ画面と重なる場合が発生する画面であれば含まれる。ウィンドウ画面は,メイン画面の領域の一部に重ねて表示する小画面を前提とする。複数のウィンドウ画面同士が重なる場合も発生するが,説明をわかりやすくするため,上記を前提として説明する。従って,メイン画面とウィンドウ画面とは,上記に限られるわけではない。」

「【0031】図3に,本発明の実施の形態における表示制御部27の内部構造の一例を示す。図3において,表示制御部27は,第1表示データ15と第2表示データ16と第3表示データ17の信号状況を監視してその状況を信号状況データ31として出力する表示データ監視部37と,第1表示データ15と第2表示データ16と第3表示データ17のうちの任意の2つの表示データをメイン表示データ38とサブ表示データ39として出力する表示切替スイッチ40と,メイン表示データ38を第1パラレルデータ41に変換する第1データ変換部42と,サブ表示データ39を第2パラレルデータ43に変換する第2データ変換部44と,第1同期信号45と第2パラレルデータ43とから,解像度及び周波数を変換してウィンドウ表示パラレルデータ46を出力する解像度・周波数変換部47と,表示位置指定信号34と透明度指定信号35に従って,第1パラレルデータ41とウィンドウ表示パラレルデータ46を合成して重ね合わせ表示データ48を出力する映像合成部49と,重ね合わせ表示データ48を液晶表示データ18に変換する液晶データ変換部50とを備える。
【0032】第1データ変換部42は,メイン画面表示データ38を,R(赤)G(緑)B(青)の表示データ,垂直同期信号,水平同期信号,表示有効期間信号及びドットクロックのパラレルデータに変換し,第1パラレルデータ41として映像合成部49へ出力し,また,垂直同期信号,水平同期信号及びドットクロックを第1同期信号45として,解像度・周波数変換部47へ出力する。第2データ変換部44は第1データ変換部42同様に,サブ表示データ39を,パラレルデータに変換し,第2パラレルデータ43として解像度・周波数変換部47へ出力する。解像度・周波数変換部47は,第2パラレルデータ43を,第2解像度信号33に従って解像度変換を行い,ウィンドウ表示パラレルデータ46として映像合成部49へ出力する。
【0033】また,映像合成部49は,表示位置指定信号34に従って,ウィンドウ表示パラレルデータ46を重ね合わせ表示の位置へ配置し,配置したウィンドウ表示パラレルデータ46を透明度指定信号35によって指定された割合で第1パラレルデータと合成を行い,重ね合わせ表示データ48として液晶データ変換部50へ出力する。ここでは,透明度指定信号35により透明度を0?1までの間でリニアに指定できるものとし,例えば,透明度が0の場合は,ウィンドウ表示パラレルデータ46をそのまま出力する場合と同じ結果になり,透明度が0.3の場合は,ウィンドウ表示パラレルデータの値を7割と,第1パラレルデータの値を3割の割合で合成させ,重ね合わせ表示データ48として出力する。」

「【0037】図5に,本発明の実施の形態におけるモニタ装置7の表示例を示す。図5において,メイン画面59の中にはウィンドウ画面60が重なって表示される。また,マウスカーソル61は,メイン画面59に表示している情報処理端末におけるマウスカーソルである。ウィンドウ画面の透明度は可変であり,透明度が高くなるとウィンドウ画面の表示が薄くなり,代わりに背景のメイン画面の画面が見えるようになる。
【0038】ウィンドウ画面60の表示においては,位置,大きさ,透明度の3つのプロパティを使用する。これらのプロパティは,通信信号で接続している第1PC4,第2PC5,映像出力機器6などの外部機器から制御が可能であり,従って,キーボード2やマウス3による操作も間接的に可能である。ただし,本実施の形態において,マウス3でウィンドウのフレーム部分をドラッグして位置や大きさなどを変更させる場合には,マウスカーソルの位置情報とマウスボタンの押下状況の情報をPC側から通信制御部29に送信し,通信制御部29内でウィンドウの表示位置と関連により表示制御部27に対し出力する表示位置信号を変更するようにする必要がある。
【0039】また,マウスカーソルの位置情報を通信制御部29に送信することにより,通信制御部29は,マウスカーソルとウィンドウとの距離を算出し,マウスカーソルがウィンドウに近づいた場合に,自動的にウィンドウの透明度を高くすることを行う。これは,マウスカーソルがウィンドウに近づいた場合に,一時的にウィンドウを半透明化することにより,メイン画面における操作をスムーズにするためのものである。」


【図5】


第4 対比・判断

1 本願発明1について
(1)対比
ア 引用発明の「プレゼンター」は,本願発明1の「発表者」に相当する。引用発明の「プレゼンターがプレゼンテーション資料を表示画面に表示させながらプレゼンテーションを行っている様子を,DVカメラを用いて撮影し」た,「プレゼンテーションの様子を示す動画情報」は,本願発明1の「発表者が表示される映像である主映像」に相当する。引用発明の,DVカメラが取り込んだ「動画情報」をキャプチャする「動画情報キャプチャ部」は,本願発明1の「発表者が表示される映像である主映像が入力される主映像情報入力部」に相当する。

イ 引用発明の「プレゼンテーション資料」は,本願発明1の「前記発表者の発表内容に関連する情報である関連情報」に相当する。そして,引用発明の,「プレゼンテーション資料を取得」する「受信部」は,本願発明1の「前記発表者の発表内容に関連する情報である関連情報が入力される関連情報入力部」に相当する。

ウ 引用発明の「動画情報にプレゼンテーション資料を対応付けた動画ファイル」と,本願発明1の「前記主映像情報入力部に入力された前記主映像の表示領域内の所定範囲に前記関連情報入力部に入力された前記関連情報が表示される合成映像」とは,「前記主映像情報入力部に入力された前記主映像と前記関連情報入力部に入力された前記関連情報が表示される合成映像」である点で共通する。そして,引用発明は,「動画情報にプレゼンテーション資料を対応付けた動画ファイル」を生成する機能を有し,この機能を実現するための手段を有していることは明らかであるから,引用発明の当該手段と,本願発明1の「前記主映像情報入力部に入力された前記主映像の表示領域内の所定範囲に前記関連情報入力部に入力された前記関連情報が表示される合成映像を生成する生成部」とは,「前記主映像情報入力部に入力された前記主映像と前記関連情報入力部に入力された前記関連情報が表示される合成映像を生成する生成部」である点で共通する。
さらに,引用発明の情報編集装置は,コンピュータであり,情報編集装置の,動画情報を取得する機能,プレゼンテーション資料を取得する機能,動画ファイルを生成する機能をプログラムで実現していることも明らかである点で,引用発明の当該プログラムは,後述する相違点は別にして,本願発明1の「コンピュータを機能させる映像生成プログラム」に相当する。

エ 引用発明の,「動画ファイル生成部が生成した動画ファイルを保持」する「保持部」は,本願発明1の「前記生成部が生成した前記合成映像が格納される格納部」に相当する。

オ 引用発明の,「動画情報にプレゼンテーション資料を対応付けた動画ファイル」について,「動画情報とプレゼンテーション資料の各画面画像データとを同期して表示させる」ことは,本願発明1の「前記合成映像は,前記主映像と連動して前記関連情報の表示内容が変化する」ことに相当する。

カ 引用発明の「情報編集装置」は,後述する相違点は別にして,動画ファイルを生成する点で,本願発明1の「映像生成装置」に相当する。

キ 以上より,本願発明1と引用発明とは,次の点で,一致及び相違する。

<一致点>
発表者が表示される映像である主映像が入力される主映像情報入力部と,
前記発表者の発表内容に関連する情報である関連情報が入力される関連情報入力部と,
前記主映像情報入力部に入力された前記主映像と前記関連情報入力部に入力された前記関連情報が表示される合成映像を生成する生成部と,としてコンピュータを機能させる映像生成プログラムと,
前記生成部が生成した前記合成映像が格納される格納部と,
を備え,
前記合成映像は,前記主映像と連動して前記関連情報の表示内容が変化する,
映像生成装置。

<相違点>
本願発明1は,「前記主映像情報入力部に入力された前記主映像の表示領域内の所定範囲に前記関連情報入力部に入力された前記関連情報が表示される合成映像を生成する」のに対し,引用発明は,動画情報にプレゼンテーション資料を対応付けた動画ファイルを生成するものの,動画情報の表示領域内の所定の範囲にプレゼンテーション資料が表示されるものではない点。

(2)相違点の判断
引用文献2には,1つの情報処理端末の表示画面の中に別の情報処理端末や映像出力機器の表示画面をウィンドウ内に重ねて表示する表示制御について,メイン画面の中にウィンドウ画面が重なって表示され,マウスカーソルとウィンドウとの距離を算出し,マウスカーソルがウィンドウに近づいた場合に,自動的にウィンドウの透明度を高くする,という技術的事項が記載されている。しかしながら,この技術的事項は「画面」の制御に関するものであって,画面に表示される映像に関するものではない。
このため,引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用しても,相違点の構成には至らない。
そして,上記相違点の構成とすることで,主映像内に関連情報が埋め込まれたように表示されるので,用途によって主映像を関連情報よりも大きく表示することもできるため,主映像に表示される発表者等の表情等が分かり易くなり臨場感を持たせることができる。(本願明細書【0014】)という特有の効果を奏するものである。

(3)小括
上記(2)のとおりであるから,本願発明1は,当業者であっても,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2〜6について
本願発明2〜6は,本願発明1を減縮した発明であって,「前記主映像情報入力部に入力された前記主映像の表示領域内の所定範囲に前記関連情報入力部に入力された前記関連情報が表示される合成映像を生成する」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。


第5 原査定の概要及び原査定についての判断

原査定は,請求項1〜6について上記引用文献1,2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら,令和2年4月13日に提出された手続補正書により補正された請求項1は,「前記主映像情報入力部に入力された前記主映像の表示領域内の所定範囲に前記関連情報入力部に入力された前記関連情報が表示される合成映像を生成する」という機能を有するものであり,上記のとおり,本願発明1〜6は,上記引用発明及び上記引用文献2に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。


第6 当審拒絶理由について

当審では,請求項3の「前記合成映像は,前記ページ内の表示態様が変化する」との記載について,表現が日本語として不明確であること,請求項5の「前記関連映像は,前記合成映像内に表示される際に,前記所定範囲になるまで,より小さな範囲から漸次拡大するようにして表示される」との記載について,「関連映像は」に対応する述語が明確でないこと,請求項6の「前記映像生成プログラムは,前記合成映像とともに表示される目次情報を生成する目次生成部を更に備え」との記載は,「映像生成プログラム」が,「目次生成部」を「備える」としている点で,技術的に不明確であることを,拒絶の理由(特許法36条6項2号)として通知しているが,令和3年11月16日の補正により,この拒絶の理由は解消した。


第7 むすび

以上のとおり,本願発明1〜6は,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではないから,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-12-28 
出願番号 P2017-228642
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06Q)
P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 松田 直也
吉田 誠
発明の名称 映像生成装置  
代理人 特許業務法人ライトハウス国際特許事務所  

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