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審決分類 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正しない F21V
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない F21V
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正しない F21V
管理番号 1382844
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-04-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2020-12-28 
確定日 2022-02-24 
事件の表示 特許第5317848号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5317848号の請求項1〜10に係る特許についての出願は、平成21年6月25日の出願であって、平成25年7月19日にその特許権の設定登録がされ、その後、令和2年12月28日付けで本件訂正審判の請求がされ、令和3年3月17日付けで上申書が提出されたものである。
そして、当審において令和3年6月3日付けで訂正拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、請求人からは何らの応答もない。

第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第5317848号の願書に添付した特許請求の範囲(以下「本件特許請求の範囲」という。)を、本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。

第3 本件訂正の内容
本件訂正審判により請求された訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下の訂正事項1〜4のとおりである(下線は訂正箇所である。)。
1 訂正事項1
本件特許請求の範囲の請求項1に「前記反射光によって前記面状LED光源の像を前記カバー部材の内側に結像し」とあるのを、「前記反射光によって前記面状LED光源の輪郭を有する像を前記カバー部材の内側に結像し」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、3、5、6及び10も同様に訂正する。)。

2 訂正事項2
本件特許請求の範囲の請求項4に「前記反射光によって前記LED光源の像を前記カバー部材の内側に結像し」とあるのを、「前記反射光によって前記LED光源の輪郭を有する像を前記カバー部材の内側に結像し」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5、6及び請求項10も同様に訂正する)。

3 訂正事項3
本件特許請求の範囲の請求項7に「前記反射光によって前記LED光源の像を前記カバー部材の内側に結像し」とあるのを、「前記反射光によって前記LED光源の輪郭を有する像を前記カバー部材の内側に結像し」に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項9及び10も同様に訂正する)。

4 訂正事項4
本件特許請求の範囲の請求項8に「前記反射光によって前記LED光源の像を前記カバー部材の内側に結像し」とあるのを、「前記反射光によって前記LED光源の輪郭を有する像を前記カバー部材の内側に結像し」と訂正する(請求項8の記載を引用する請求項9及び10も同様に訂正する)。

第4 当審の判断
1 訂正事項1について
(1)訂正の目的について
ア 訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明の「前記面状LED光源の像」を、「前記面状LED光源の輪郭を有する像」に限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである(下線は当審で付した。以下同様である。)。

イ 他方、審判請求人は、審判請求書第3〜4ページの「a 訂正の目的について」において、「訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書き第3号に規定する<特許請求の範囲の明瞭でない記載の釈明>を目的とするものである。」と主張しているので、以下検討する。

ウ 訂正前の請求項1に係る発明では「前記LED光源からの光の一部は前記カバー部材の反射面において反射し、前記反射光によって前記面状LED光源の像を前記カバー部材の内側に結像し」と特定されているが、上記「前記面状LED光源の像」とはどのような像を意味するのか明瞭でない。
補足すると、例えば、単に光として明るさだけが感得できる程度のものも像といえないこともない。
また、本件特許の願書に添付した明細書段落【0031】〜【0037】及び図2(以下、願書に添付した明細書を「本件明細書」といい、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面をまとめて「本件明細書等」という。)に球面鏡の原理等が説明されているとおり、一般に、光源から発せられた光が凹曲面状の反射面で反射する場合、反射面の光源側に反射光による倒立実像(上下左右が反対の実像)を形成することは技術常識である。
そうすると、上記「前記面状LED光源の像」は、カバー部材の凹曲面状の反射面の一部による反射光が形成する倒立実像、要するに、単にカバー部材の凹面形状の反射面に映り込んだ像であるようにも解される。このような反射光を視認しても、像を貫く反射光の角度範囲が狭いため、本件明細書の段落【0014】に記載されるような「カバー部材の外側から見ると光源があたかもカバー部材の内側空間にあるように見える。」という効果は得られないものと解される。
また、単に反射面に映り込んだ像ではなく、本件明細書等の図4及び図5に記載されているように、LED光源上の1点から発せられた光が、上記のカバー部材の凹曲面状の反射面の広範囲にわたる角度で反射して多数の反射光となり、それら多数の反射光が再び1点に集まって通過することで形成される実像であるようにも解される。このような反射光を視認した場合は、広範囲にわたる角度から見ても、上記LED光源上の1点が、あたかも上記反射光が再び集まる1点に存在するかのように感じられる可能性がある。
以上のとおり、上記「前記面状LED光源の像」なる記載は、どのような像を意味するのか明瞭でない。

エ これに対し、訂正後の請求項1に係る発明では「LED光源からの光の一部は前記カバー部材の反射面において反射し、前記反射光によって前記面状LED光源の輪郭を有する像を前記カバー部材の内側に結像し」と特定され、面状LED光源の像が「輪郭を有する」ことが特定された。
しかしながら、上記訂正後の「前記面状LED光源の輪郭を有する像」なる記載も、「輪郭」がいかなる形状を意味するのか明瞭でなく、さらに、上記ウで指摘した「前記面状LED光源の像」がどのような像であるのかを特定するものでもないため、依然としてどのような像を意味するのか明瞭とはいえない。
補足すると、一般に「輪郭」とは「物の外形を形づくっている線。」(岩波書店「広辞苑」第六版)を意味するところ、本件明細書の段落【0029】には「本実施の形態では、光源3の虚像3aは反射面17から正確に焦点に結像するものでなく、反射面17の焦点に多少のずれがあるので、鮮明な輪郭でなく不鮮明にボヤーとした輪郭の虚像3Aとなる。」と記載されており、物の外形を形づくる線であるにもかかわらず、「不鮮明にボヤーとした輪郭」とは、具体的にいかなる形状を意味するのか特定することができない。
また、請求人は、審判請求書の第3ページ「a 訂正の目的について」において「訂正後の請求項1に係る発明(以下、『訂正発明1』という)におけるカバー部材の結像する<像>は、面状LED光源の<輪郭がある(を有する)像>であることが明瞭になった。」旨主張し、「輪郭がある(を有する)像」を「<」、「>」で括って一連の用語のように説明しているが、訂正後の請求項1においては「前記面状LED光源の輪郭を有する像」と記載されているだけであるから、「輪郭」が「面状LED光源の輪郭」であるのか、「輪郭を有する像」であるのかも明瞭でない。仮に前者と解釈した場合には、面状LED光源の外形は、正面から見た場合や斜め横から見た場合等、見る角度によって変化するものであるし、複数のLEDを面状に配置したLED光源において、全てのLEDの外形を意味するのか、あるいは、一部のLEDのみの外形をも包含するのか、さらには、上記ウで述べた倒立実像のような上下左右が逆となり縮小された外形や、面状LED光源の像が歪んでいる場合の外形を包含するか否か等、いかなる外形を意味するのかについても明瞭でない。
さらに、訂正事項1は、上記ウで述べたように、LED光源の像がカバー部材の凹曲面状の反射面の一部による反射光が形成する倒立実像であるのか、反射面の広範囲にわたる角度で反射して多数の反射光となり、それら多数の反射光が再び1点に集まって通過することで形成される実像であるのか、あるいは、それら以外の像であるのかを特定するものでもない。

オ よって、訂正事項1は、明瞭でない記載を正すものとはいえないから、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものとはいえない。

(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
ア 本件明細書には、以下の事項が記載されている。
「【0029】
本実施の形態では、光源3の虚像3aは反射面17から正確に焦点に結像するものでなく、反射面17の焦点に多少のずれがあるので、鮮明な輪郭でなく不鮮明にボヤーとした輪郭の虚像3Aとなる。」

イ 以上のとおり、鮮明な輪郭でなく不鮮明にボヤーとしたものではあるが、LED光源の像が輪郭を有すること自体は、本件明細書に記載されているから、訂正事項1は、本件明細書等の範囲内においてしたものであり、特許法第126条第5項の規定に適合する。

(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、上記(1)アで述べたとおり、訂正前の「前記面状LED光源の像」を、「前記面状LED光源の輪郭を有する像」に限定するものであり、また、発明を特定するための事項の入替えや発明の対象の変更、発明のカテゴリーの変更を行うものでもない。
よって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第126条第6項の規定に適合する。

(4)訂正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであること
上記(1)アで述べたとおり、訂正事項1は特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第126条第7項の規定に適合するか否か)について、以下検討する。
上記(1)エに説示したとおり、訂正後の請求項1に係る発明の「前記面状LED光源の輪郭を有する像」なる事項は、「輪郭」がいかなる形状を意味するのか明確でなく、さらに、面状LED光源の像がどのような像を意味するのか明確でない。
よって、訂正後の請求項1に係る発明は、特許法第36条第6項第2号の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでない。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第7項の規定に適合しない。

2 訂正事項2について
(1)訂正の目的について
ア 訂正事項2は、訂正前の請求項4に係る発明の「前記LED光源の像」を、「前記LED光源の輪郭を有する像」に限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 他方、審判請求人は、審判請求書第5ページの「a 訂正の目的について」において、「訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書き第3号に規定する<特許請求の範囲の明瞭でない記載の釈明>を目的とするものである。」と主張しているので、以下検討する。

ウ 訂正前の請求項4に係る発明では「前記LED光源からの光の一部は前記カバー部材の反射面において反射し、前記反射光によって前記LED光源の像を前記カバー部材の内側に結像し」と特定されているが、上記「前記LED光源の像」とはどのような像を意味するのか明瞭でない。
補足すると、例えば、単に光として明るさだけが感得できる程度のものも像といえないこともない。

エ これに対し、訂正後の請求項4に係る発明では「前記LED光源からの光の一部は前記カバー部材の反射面において反射し、前記反射光によって前記LED光源の輪郭を有する像を前記カバー部材の内側に結像し」と特定され、LED光源の像が「輪郭を有する」ことが特定された。
しかしながら、上記訂正後の「前記LED光源の輪郭を有する像」なる記載も、「輪郭」がいかなる形状を意味するのか明瞭でなく、依然としてどのような像を意味するのか明瞭でない。
補足すると、一般に「輪郭」とは「物の外形を形づくっている線。」(岩波書店「広辞苑」第六版)を意味するところ、本件明細書の段落【0029】には「本実施の形態では、光源3の虚像3aは反射面17から正確に焦点に結像するものでなく、反射面17の焦点に多少のずれがあるので、鮮明な輪郭でなく不鮮明にボヤーとした輪郭の虚像3Aとなる。」と記載されており、物の外形を形づくる線であるにもかかわらず、「不鮮明にボヤーとした輪郭」とは、具体的にいかなる形状を意味するのか特定することができない。
また、請求人は、審判請求書の第5ページ「a 訂正の目的について」において「訂正後の請求項4に係る発明(以下、『訂正発明2』という)におけるカバー部材の結像する<像>は、LED光源の<輪郭がある(を有する)像>であることが明瞭になった。」旨主張し、「輪郭がある(を有する)像」を「<」、「>」で括って一連の用語のように説明しているが、訂正後の請求項4においては「前記LED光源の輪郭を有する像」と記載されているだけであるから、「輪郭」が「LED光源の輪郭」であるのか、「輪郭を有する像」であるのかも明瞭でない。仮に前者と解釈した場合には、LED光源の外形は、正面から見た場合や斜め横から見た場合等、見る角度によって変化するものであるし、光源が多数のLEDを面状に配置したLEDモジュールである場合に(本件明細書段落【0018】)、全てのLEDの外形を意味するのか、あるいは、一部のLEDのみの外形をも包含するのか、さらには、光源から発せられた光が凹曲面状の反射面で反射する場合、反射面の光源側に反射光による倒立実像を形成することが技術常識であるところ、倒立実像のような上下左右が逆となり縮小された外形や、LED光源の像が歪んでいる場合の外形を包含するのか否か等、いかなる外形であるのかについても明瞭でない。

オ よって、訂正事項2は、明瞭でない記載を正すものとはいえないから、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものとはいえない。

(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
ア 本件明細書には、以下の事項が記載されている。
「【0029】
本実施の形態では、光源3の虚像3aは反射面17から正確に焦点に結像するものでなく、反射面17の焦点に多少のずれがあるので、鮮明な輪郭でなく不鮮明にボヤーとした輪郭の虚像3Aとなる。」

イ 以上のとおり、鮮明な輪郭でなく不鮮明にボヤーとしたものではあるが、LED光源の像が輪郭を有すること自体は、本件明細書に記載されているから、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第126条第5項の規定に適合する。

(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、上記(1)アで述べたとおり、訂正前の「前記LED光源の像」を、「前記LED光源の輪郭を有する像」に限定するものであり、また、発明を特定するための事項の入替えや発明の対象の変更、発明のカテゴリーの変更を行うものでもない。
よって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第126条第6項の規定に適合する。

(4)訂正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであること
上記(1)アで述べたとおり、訂正事項2は特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第126条第7項の規定に適合するか否か)について、以下検討する。
上記(1)エに説示したとおり、訂正後の請求項4に係る発明の「前記LED光源の輪郭を有する像」なる事項は、「輪郭」がいかなる形状を意味するのか明確でないため、どのような像を意味するのか明確でない。
よって、訂正後の請求項4に係る発明は、特許法第36条第6項第2号の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでない。
したがって、訂正事項2は、特許法第126条第7項の規定に適合しない。

3 訂正事項3について
(1)訂正の目的について
ア 訂正事項3は、訂正前の請求項7に係る発明の「前記LED光源の像」を、「前記LED光源の輪郭を有する像」に限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 他方、審判請求人は、審判請求書第6ページの「a 訂正の目的について」において、「訂正事項3は、特許法第126条第1項ただし書き第3号に規定する<特許請求の範囲の明瞭でない記載の釈明>を目的とするものである。」と主張しているので、以下検討する。

ウ 訂正前の請求項7に係る発明では「前記LED光源からの光の一部は前記カバー部材の反射面において反射し、前記反射光によって前記LED光源の像を前記カバー部材の内側に結像し」と特定されているが、上記「前記LED光源の像」とはどのような像を意味するのか明瞭でない。
補足すると、例えば、単に光として明るさだけが感得できる程度のものも像といえないこともない。
また、本件明細書等の段落【0031】〜【0037】及び図2に球面鏡の原理等が説明されているとおり、一般に、光源から発せられた光が凹曲面状の反射面で反射する場合、反射面の光源側に反射光による倒立実像(上下左右が反対の実像)を形成することは技術常識である。
そうすると、上記「前記LED光源の像」は、カバー部材の凹曲面状の反射面の一部による反射光が形成する倒立実像、要するに、単にカバー部材の凹面形状の反射面に映り込んだ像であるようにも解される。このような反射光を視認しても、像を貫く反射光の角度範囲が狭いため、本件明細書の段落【0014】に記載されるような「カバー部材の外側から見ると光源があたかもカバー部材の内側空間にあるように見える。」という効果は得られないものと解される。
また、単に反射面に映り込んだ像ではなく、本件明細書等の図4及び図5に記載されているように、LED光源の1点から発せられた光が、上記のカバー部材の凹曲面状の反射面の広範囲にわたる角度で反射して多数の反射光となり、それら多数の反射光が再び1点に集って通過することで形成される実像であるようにも解される。このような反射光を視認した場合は、広範囲にわたる角度から見ても、上記LED光源の1点が、あたかも上記反射光が再び集まる1点に存在するかのように感じられる可能性がある。
以上のとおり、上記「前記LED光源の像」なる記載は、どのような像を意味するのか明瞭でない。

エ これに対し、訂正後の請求項7に係る発明では「前記LED光源からの光の一部は前記カバー部材の反射面において反射し、前記反射光によって前記LED光源の輪郭を有する像を前記カバー部材の内側に結像し」と特定され、LED光源の像が「輪郭を有する」ことが特定された。
しかしながら、上記訂正後の「前記LED光源の輪郭を有する像」なる記載も、「輪郭」がいかなる形状を意味するのか明瞭でなく、さらに、上記ウで指摘した「前記LED光源の像」がどのような像であるのかを特定するものでもないため、依然としてどのような像を意味するのか明瞭とはいえない。
補足すると、一般に「輪郭」とは「物の外形を形づくっている線。」(岩波書店「広辞苑」第六版)を意味するところ、本件明細書の段落【0029】には「本実施の形態では、光源3の虚像3aは反射面17から正確に焦点に結像するものでなく、反射面17の焦点に多少のずれがあるので、鮮明な輪郭でなく不鮮明にボヤーとした輪郭の虚像3Aとなる。」と記載されており、物の外形を形づくる線であるにもかかわらず、「不鮮明にボヤーとした輪郭」とは、具体的にいかなる形状を意味するのか特定することができない。
また、請求人は、審判請求書の第6〜7ページ「a 訂正の目的について」において「訂正後の請求項4に係る発明(以下、『訂正発明3』という)におけるカバー部材の結像する<像>は、LED光源の<輪郭がある(を有する)像>であることが明瞭になった。」旨主張し(上記「請求項4」なる記載は「請求項7」の誤記と認める。)、「輪郭がある(を有する)像」を「<」、「>」で括って一連の用語のように説明しているが、訂正後の請求項7においては「前記LED光源の輪郭を有する像」と記載されているだけであるから、「輪郭」が「LED光源の輪郭」であるのか、「輪郭を有する像」であるのかも明瞭でない。仮に前者と解釈した場合には、LED光源の外形は、正面から見た場合や斜め横から見た場合等、見る角度によって変化するものであるし、光源が多数のLEDを面状に配置したLEDモジュールである場合に(本件明細書段落【0018】)、全てのLEDの外形を意味するのか、あるいは、一部のLEDのみの外形をも包含するのか、さらには、上記ウで述べた倒立実像のような上下左右が逆となり縮小された外形や、LED光源の像が歪んでいる場合の外形を包含するのか否か等、いかなる外形を意味するのかについても明瞭でない。
さらに、訂正事項3は、上記ウで述べたように、LED光源の像がカバー部材の凹曲面状の反射面の一部による反射光が形成する倒立実像であるのか、反射面の広範囲にわたる角度で反射して多数の反射光となり、それら多数の反射光が再び1点に集まって通過することで形成される実像であるのか、あるいは、それら以外の像であるのかを特定するものでもない。

オ よって、訂正事項3は、明瞭でない記載を正すものとはいえないから、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものとはいえない。

(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
ア 本件明細書には、以下の事項が記載されている。
「【0029】
本実施の形態では、光源3の虚像3aは反射面17から正確に焦点に結像するものでなく、反射面17の焦点に多少のずれがあるので、鮮明な輪郭でなく不鮮明にボヤーとした輪郭の虚像3Aとなる。」

イ 以上のとおり、鮮明な輪郭でなく不鮮明にボヤーとしたものではあるが、LED光源の像が輪郭を有すること自体は、本件明細書に記載されているから、訂正事項3は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第126条第5項の規定に適合する。

(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、上記(1)アで述べたとおり、訂正前の「前記LED光源の像」を、「前記LED光源の輪郭を有する像」に限定するものであり、また、発明を特定するための事項の入替えや発明の対象の変更、発明のカテゴリーの変更を行うものでもない。
よって、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第126条第6項の規定に適合する。

(4)訂正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであること
上記(1)アで述べたとおり、訂正事項3は特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第126条第7項の規定に適合するか否か)について、以下検討する。
上記(1)エに説示したとおり、訂正後の請求項7に係る発明の「前記LED光源の輪郭を有する像」なる事項は、「輪郭」がいかなる形状を意味するのか明確でなく、さらに、LED光源の像がどのような像を意味するのか明確でない。
よって、訂正後の請求項7に係る発明は、特許法第36条第6項第2号の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでない。
したがって、訂正事項3は、特許法第126条第7項の規定に適合しない。

4 訂正事項4について
(1)訂正の目的について
ア 訂正事項4は、訂正前の請求項8に係る発明の「前記LED光源の像」を、「前記LED光源の輪郭を有する像」に限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 他方、審判請求人は、審判請求書第8〜9ページの「a 訂正の目的について」において、「訂正事項4は、特許法第126条第1項ただし書き第3号に規定する<特許請求の範囲の明瞭でない記載の釈明>を目的とするものである。」と主張しているので、以下検討する。

ウ 訂正前の請求項8に係る発明では「前記LED光源からの光の一部は前記カバー部材の反射面において反射し、前記反射光によって前記LED光源の像を前記カバー部材の内側に結像し」と特定されているが、上記「前記LED光源の像」とはどのような像を意味するのか明瞭でない。
補足すると、例えば、単に光として明るさだけが感得できる程度のものも像といえないこともない。
また、本件明細書等の段落【0031】〜【0037】及び図2に球面鏡の原理等が説明されているとおり、一般に、光源から発せられた光が凹曲面状の反射面で反射する場合、反射面の光源側に反射光による倒立実像(上下左右が反対の実像)を形成することは技術常識である。
そうすると、上記「前記LED光源の像」は、カバー部材の凹曲面状の反射面の一部による反射光が形成する倒立実像、要するに、単にカバー部材の凹面形状の反射面に映り込んだ像であるようにも解される。このような反射光を視認しても、像を貫く反射光の角度範囲が狭いため、本件明細書の段落【0014】に記載されるような「カバー部材の外側から見ると光源があたかもカバー部材の内側空間にあるように見える。」という効果は得られないものと解される。
また、単に反射面に映り込んだ像ではなく、本件明細書等の図4及び図5に記載されているように、LED光源の1点から発せられた光が、上記のカバー部材の凹曲面状の反射面の広範囲にわたる角度で反射して多数の反射光となり、それら多数の反射光が再び1点に集まって通過することで形成される実像であるようにも解される。このような反射光を視認した場合は、広範囲にわたる角度から見ても、上記LED光源の1点が、あたかも上記反射光が再び集まる1点に存在するかのように感じられる可能性がある。
以上のとおり、上記「前記LED光源の像」なる記載は、どのような像を意味するのか明瞭でない。

エ これに対し、訂正後の請求項8に係る発明では「前記LED光源からの光の一部は前記カバー部材の反射面において反射し、前記反射光によって前記LED光源の輪郭を有する像を前記カバー部材の内側に結像し」と特定され、LED光源の像が「前記LED光源の輪郭を有する」ことが特定された。
しかしながら、上記訂正後の「前記LED光源の輪郭を有する像」なる記載も、「輪郭」がいかなる形状を意味するのか明瞭でなく、さらに、上記ウで指摘した「前記LED光源の像」がどのような像であるのかを特定するものでもないため、依然としてどのような像を意味するのか明瞭とはいえない。
補足すると、一般に「輪郭」とは「物の外形を形づくっている線。」(岩波書店「広辞苑」第六版)を意味するところ、本件明細書の段落【0029】には「本実施の形態では、光源3の虚像3aは反射面17から正確に焦点に結像するものでなく、反射面17の焦点に多少のずれがあるので、鮮明な輪郭でなく不鮮明にボヤーとした輪郭の虚像3Aとなる。」と記載されており、物の外形を形づくる線であるにもかかわらず、「不鮮明にボヤーとした輪郭」とは、具体的にいかなる形状を意味するのか特定することができない。
また、請求人は、審判請求書の第8〜9ページ「a 訂正の目的について」において「訂正後の請求項8に係る発明(以下、『訂正発明4』という)におけるカバー部材の結像する<像>は、LED光源の<輪郭がある(を有する)像>であることが明瞭になった。」旨主張し、「輪郭がある(を有する)像」を「<」、「>」で括って一連の用語のように説明しているが、訂正後の請求項8においては「前記LED光源の輪郭を有する像」と記載されているだけであるから、「輪郭」が「LED光源の輪郭」であるのか、「輪郭を有する像」であるのかも明瞭でない。仮に前者と解釈した場合には、LED光源の外形は、正面から見た場合や斜め横から見た場合等、見る角度によって変化するものであるし、光源が多数のLEDを面状に配置したLEDモジュールである場合に(本件明細書段落【0018】)、全てのLEDの外形を意味するのか、あるいは、一部のLEDのみの外形をも包含するのか、さらには、上記ウで述べた倒立実像のような上下左右が逆となり縮小された外形や、LED光源の像が歪んでいる場合の外形を包含するのか否か等、いかなる外形であるのかも明瞭でない。
さらに、訂正事項4は、上記ウで述べたように、LED光源の像がカバー部材の凹曲面状の反射面の一部による反射光が形成する倒立実像であるのか、反射面の広範囲にわたる角度で反射して多数の反射光となり、それら多数の反射光が、再び1点に集まって通過することで形成される実像であるのか、あるいは、それら以外の像であるのかを特定するものでもない。

オ よって、訂正事項4は、明瞭でない記載を正すものとはいえないから、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものとはいえない。

(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
ア 本件明細書には、以下の事項が記載されている。
「【0029】
本実施の形態では、光源3の虚像3aは反射面17から正確に焦点に結像するものでなく、反射面17の焦点に多少のずれがあるので、鮮明な輪郭でなく不鮮明にボヤーとした輪郭の虚像3Aとなる。」

イ 以上のとおり、鮮明な輪郭でなく不鮮明にボヤーとしたものではあるが、LED光源の像が輪郭を有すること自体は、本件明細書に記載されているから、訂正事項4は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第126条第5項の規定に適合する。

(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、上記(1)アで述べたとおり、訂正前の「前記LED光源の像」を、「前記LED光源の輪郭を有する像」に限定するものであり、また、発明を特定するための事項の入替えや発明の対象の変更、発明のカテゴリーの変更を行うものでもない。
よって、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第126条第6項の規定に適合する。

(4)訂正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであること
上記(1)アで述べたとおり、訂正事項4は特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第126条第7項の規定に適合するか否か)について、以下検討する。
上記(1)エに説示したとおり、訂正後の請求項8に係る発明の「前記LED光源の輪郭を有する像」なる事項は、「輪郭」がいかなる形状を意味するのか明確でなく、さらに、LED光源の像がどのような像を意味するのか明確でない。
よって、訂正後の請求項8に係る発明は、特許法第36条第6項第2号の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでない。
したがって、訂正事項4は、特許法第126条第7項の規定に適合しない。

第5 むすび
以上のとおり、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものではあるが、特許法第126条第7項の規定に適合していない。
したがって、本件訂正は認められない。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2021-12-22 
結審通知日 2021-12-27 
審決日 2022-01-13 
出願番号 P2009-150481
審決分類 P 1 41・ 853- Z (F21V)
P 1 41・ 856- Z (F21V)
P 1 41・ 851- Z (F21V)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 佐々木 一浩
八木 誠
登録日 2013-07-19 
登録番号 5317848
発明の名称 LED電灯装置  
代理人 保坂 俊  

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