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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A62C |
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管理番号 | 1383128 |
総通号数 | 4 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-06-29 |
確定日 | 2022-04-12 |
事件の表示 | 特願2019−184136号「中継装置」拒絶査定不服審判事件〔令和3年4月15日出願公開、特開2021−58367号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、令和元年10月4日の出願であって、令和2年10月1日付け(発送日:令和2年10月6日)で拒絶理由が通知され、これに対して令和2年11月25日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年12月22日付け(発送日:令和3年1月5日)で拒絶理由が通知され、これに対して令和3年2月24日に意見書が提出され、令和3年3月26日付け(発送日:令和3年3月30日)で拒絶査定がされた。これに対し、令和3年6月29日に拒絶査定不服審判が請求され、令和3年7月8日に審判請求書を補正対象とする手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明について 1 本願発明 特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和2年11月25日提出の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める。 「【請求項1】 防護区画に設置された端末装置と、火災受信機との間で信号を中継するための中継装置であって、 前記端末装置は、 前記防護区画に設置された噴射ヘッドから消火ガスを放出することを指示するための手動放出スイッチであって、利用者により操作されると第1起動信号を出力する手動放出スイッチと、 前記噴射ヘッドから消火ガスを放出することを緊急停止するための緊急停止スイッチであって、利用者により操作されると停止信号を出力する緊急停止スイッチと、 第2起動信号が入力されると、前記噴射ヘッドから消火ガスが放出されることを警告する警告装置であって、前記防護区画を構成する部屋の内部に設置される警告装置と を含み、 前記中継装置は、筐体内に、 前記手動放出スイッチから出力される第1起動信号を前記火災受信機に対して中継し、前記緊急停止スイッチから出力される停止信号を前記火災受信機に対して中継し、前記火災受信機から出力される第2起動信号を受けて前記警告装置を起動する入出力制御部と、 前記噴射ヘッドから消火ガスが放出されるまでの時間を表示する表示部と を備え、 前記手動放出スイッチ、前記緊急停止スイッチ及び前記警告装置は、前記筐体に収容された又は取り付けられた装置ではなく、 前記中継装置は前記部屋の外部に設置される ことを特徴とする中継装置。」 2 拒絶査定の理由について 拒絶査定の理由は、概略以下のとおりである。 本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2記載事項及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特開2016−120035号公報 2.特開2019−148845号公報 3.特開平8−294546号公報(周知技術を示す文献) 4.特開平8−280838号公報(周知技術を示す文献) 5.特開平3−78567号公報(周知技術を示す文献) 3 当審の判断 (1)引用文献1 引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、防護区画に設けた制御盤と操作箱との間で各種信号を伝送する二酸化炭素等の消火ガスを放出して火災を消火するガス系消火設備に関する。」 イ 「【0040】 [ガス系消火設備の概要] (設備構成) 図1はガス系消火設備の全体構成図を示した説明図である。なお、図1の設備構成は一例であり、必要に応じて適宜の構成をとることができる。 【0041】 図1に示すように、ガス系消火設備にはガス系の消火設備を一括制御する制御盤10を設け、また防護区画A,Bとなる各部屋の外に操作箱12を設置している。操作箱12は起動スイッチと起動スイッチを保護する扉を備え、手動モードを設定している場合、人が火災を発見したときには、扉を開けて起動スイッチを操作することにより制御盤10に起動信号を送信し、消火剤としての消火ガスを放出させる。放出表示灯15は監視区域内に消火ガスが放出されていることを表示し、室内に入らないことを知らせる。 【0042】 噴射ヘッド11は消火ガスを室内に放出する。スピーカ13は消火ガスが放出されることを放送し、人が警戒区域内に存在する場合は直ちに避難することを促す。消火ガス貯蔵容器16は消火ガスを貯蔵する。」 ウ 「【0046】 また制御盤10に手動モードを設定していた場合には、監視員が目視又は火災感知器11の発報によって例えば防護区画Aの火災を発見し、防護区画Aの外側に設置している操作箱12の扉を開いて起動スイッチを押すことで起動信号を制御盤10に送信してカウントダウンを開始させ、カウントダウンが終了するとガス放出条件が成立したと判定し、自動モードの場合と同様にして防護区画の噴射ヘッド14から消火ガスを放出させる。」 エ 「【0053】 また、制御部100は駆動回路部122を介して防護区画に設けたスピーカ13を接続し、ガス放出に先立つカウントダウン中に避難退避を促す放送音を出力するようにしている。」 オ 「【0056】 また、制御部100に対しては駆動回路部128を介して起動装置18を接続しており、カウントダウン終了で放出起動信号を起動装置18に出力して開放ガスを放出し、図1に示した選択弁17の開放及び消火ガス貯蔵容器16の開栓により噴射ヘッド14から消火ガスを放出させる。 【0057】 表示部102には、電源状態を示す電源灯、火災発生を示す火災灯、手動モードの設定を示す手動モード表示灯、自動モードの設定を示す自動モード表示灯、ガス放出までのカウントダウン残り時間を表示するカウントダウン表示器、ガス放出動作の起動を示す放出起動灯、ガス放出されたことを示す放出灯等を設けている。 【0058】 操作部104には、全ての防護区画での動作モードを一括して自動モード又は手動モードに切替えるキースイッチ、カウントダウン中にガス放出を停止させる非常停止スイッチ、警報を停止させる警報停止スイッチ、移報を停止させる移報停止スイッチ等を設けている。」 カ 「【0071】 このうち起動スイッチ26はパラレル送信部75にも入力接続しており、起動スイッチ26を操作した場合に起動信号をシリアル送受信部74及びパラレル送信部75から制御盤10へ多重伝送可能としている。なお、自動モード設定スイッチ40と手動モード設定スイッチ42は図3に示したキースイッチ45により操作される。」 キ 「【0089】 ここで、操作箱12から制御盤10へシリアル伝送系により送信されるデジタル制御信号には、起動スイッチ26の操作に基づく起動信号、非常停止スイッチ28の操作に基づく非常停止信号、扉開検知スイッチ38の動作に基づく扉開検知信号、自動モード設定スイッチ40の操作による自動モード設定信号手動モード設定スイッチ42の操作による手動モード設定信号が含まれる。」 (2)引用発明 上記記載を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「ガス系消火設備にはガス系の消火設備を一括制御する制御盤10を設け、防護区画A,Bとなる各部屋の外に操作箱12を設置し、 前記操作箱12は、 手動モードを設定している場合、人が火災を発見したときには、扉を開けて起動スイッチ26を操作することにより制御盤10に起動信号を送信し、消火剤としての消火ガスを放出させ、放出表示灯15は監視区域内に消火ガスが放出されていることを表示し、室内に入らないことを知らせる起動スイッチ26と、 カウントダウン中にガス放出を停止させる非常停止スイッチとを備え、 制御部100の駆動回路部122を介して、ガス放出に先立つカウントダウン中に避難退避を促す放送音を出力する防護区画に設けたスピーカ13を有し、 前記制御盤10は、 操作箱12からシリアル伝送系により、起動スイッチ26の操作に基づく起動信号、非常停止スイッチ28の操作に基づく非常停止信号が送信され、 駆動回路部128を介して起動装置18を接続しており、カウントダウン終了で放出起動信号を起動装置18に出力して開放ガスを放出し、選択弁17の開放及び消火ガス貯蔵容器16の開栓により噴射ヘッド14から消火ガスを放出させ、 ガス放出までのカウントダウン残り時間を表示するカウントダウン表示器を有する表示部102と、 を備える制御盤10。」 (3)本願発明と引用発明の対比・判断 ア 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 ・引用発明の「防護区画A,B」は、その機能及び作用から本願発明の「防護区画」に相当する。 ・引用発明の「操作箱12」と「スピーカ13」を合わせたものは、本願発明の「端末装置」に相当する。 そして、引用発明の「防護区画A,Bとなる各部屋の外に」「設置し」た「操作箱12」と「防護区画に設けたスピーカ13」を合わせたものは、本願発明の「防護区画に設置された端末装置」に相当する。 ・引用発明の「起動スイッチ26を操作することにより制御盤10に起動信号を送信」する、「駆動回路部128を介して起動装置18を接続して」いる「制御盤10」は、起動スイッチ26の操作に基づく起動信号を起動装置18との間で信号を中継していると表現できるから、引用発明の当該記載と、本願発明の「火災受信機との間で信号を中継するための中継装置」とは、装置との間で信号を中継するための中継装置の限りで一致する。 ・引用発明の「手動モードを設定している場合、人が火災を発見したときには、扉を開けて起動スイッチを操作することにより制御盤10に起動信号を送信し、消火剤としての消火ガスを放出させ、放出表示灯15は監視区域内に消火ガスが放出されていることを表示し、室内に入らないことを知らせる起動スイッチ26」は、噴射ヘッド14から消火ガスを放出させる起動スイッチ26であって、人が起動スイッチ26を操作することで起動信号が送信されるから、本願発明の「前記防護区画に設置された噴射ヘッドから消火ガスを放出することを指示するための手動放出スイッチであって、利用者により操作されると第1起動信号を出力する手動放出スイッチ」に相当する。 ・引用発明の「カウントダウン中にガス放出を停止させる非常停止スイッチ」は、噴射ヘッド14から消火ガスを放出することを停止するものであって、「非常停止スイッチ28の操作に基づく非常停止信号が送信され」るから、本願発明の「前記噴射ヘッドから消火ガスを放出することを緊急停止するための緊急停止スイッチであって、利用者により操作されると停止信号を出力する緊急停止スイッチ」に相当する。 ・引用発明の「制御部100の駆動回路部122を介して、ガス放出に先立つカウントダウン中に避難退避を促す放送音を出力する防護区画に設けたスピーカ13」は、当然に、何らかの信号が入力されることでガス放出に先立つカウントダウン中に避難退避を促す放送音を出力するから、本願発明の「第2起動信号が入力されると、前記噴射ヘッドから消火ガスが放出されることを警告する警告装置であって、前記防護区画を構成する部屋の内部に設置される警告装置」に相当する。 ・引用発明の「制御盤10」が「操作箱12からシリアル伝送系により、起動スイッチ26の操作に基づく起動信号、非常停止スイッチ28の操作に基づく非常停止信号が送信され、駆動回路部128を介して起動装置18を接続しており、カウントダウン終了で放出起動信号を起動装置18に出力して開放ガスを放出し、選択弁17の開放及び消火ガス貯蔵容器16の開栓により噴射ヘッド14から消火ガスを放出させ、」「制御部100の駆動回路部122を介して、ガス放出に先立つカウントダウン中に避難退避を促す」ために「防護区画に設けたスピーカ13」から「放送音を出力する」態様は、起動スイッチ26の操作に基づく起動信号を起動装置18に中継し、非常停止スイッチ28の操作に基づく非常停止信号を受信し、放送音を出力する制御部100を有する制御部を有するといえるから、引用発明の当該態様と、本願発明の「前記手動放出スイッチから出力される第1起動信号を前記火災受信機に対して中継し、前記緊急停止スイッチから出力される停止信号を前記火災受信機に対して中継し、前記火災受信機から出力される第2起動信号を受けて前記警告装置を起動する入出力制御部」を有する態様とは、前記手動放出スイッチから出力される第1起動信号を前記装置に中継し、前記緊急停止スイッチから出力される停止信号を受信し、前記警告装置を起動する入出力制御部の限りで一致する。 ・引用発明の「ガス放出までのカウントダウン残り時間を表示するカウントダウン表示器を有する表示部102」は、本願発明の「前記噴射ヘッドから消火ガスが放出されるまでの時間を表示する表示部」に相当する。 ・引用発明の「起動スイッチ26」、「非常停止スイッチ28」及び「スピーカ13」は、図1を参照すると、制御盤10から離れた位置に設置されているから、引用発明の「起動スイッチ26」、「非常停止スイッチ28」及び「スピーカ13」の設置態様と、本願発明の「前記手動放出スイッチ、前記緊急停止スイッチ及び前記警告装置は、前記筐体に収容された又は取り付けられた装置ではな」い態様とは、前記手動放出スイッチ、前記緊急停止スイッチ及び前記警告装置は、前記中継装置と異なる位置に配置されている限りで一致する。 ・引用発明の「制御盤10」は、図1を参照すると、防護区画A,Bとなる部屋の外に設置されているから、本願発明1の「前記部屋の外部に設置される」「前記中継装置」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明とは、 <一致点> 「防護区画に設置された端末装置と、装置との間で信号を中継するための中継装置であって、 前記端末装置は、 前記防護区画に設置された噴射ヘッドから消火ガスを放出することを指示するための手動放出スイッチであって、利用者により操作されると第1起動信号を出力する手動放出スイッチと、 前記噴射ヘッドから消火ガスを放出することを緊急停止するための緊急停止スイッチであって、利用者により操作されると停止信号を出力する緊急停止スイッチと、 第2起動信号が入力されると、前記噴射ヘッドから消火ガスが放出されることを警告する警告装置であって、前記防護区画を構成する部屋の内部に設置される警告装置と を含み、 前記中継装置は、 前記手動放出スイッチから出力される第1起動信号を前記装置に対して中継し、前記緊急停止スイッチから出力される停止信号を受信し、前記警告装置を起動する入出力制御部と、 前記噴射ヘッドから消火ガスが放出されるまでの時間を表示する表示部と を備え、 前記手動放出スイッチ、前記緊急停止スイッチ及び前記警告装置は、前記中継装置と異なる位置に配置され、 前記中継装置は前記部屋の外部に設置される ことを特徴とする中継装置。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本願発明は、装置が「火災受信機」であって、「前記緊急停止スイッチから出力される停止信号を前記火災受信機に対して中継し、前記火災受信機から出力される第2起動信号を受けて前記警告装置を起動する入出力制御部」を有するのに対して、引用発明は、装置が「起動装置18」であって、非常停止スイッチ28の操作に基づく非常停止信号を受信し、放送音を出力する制御部100を有する制御部を有するが、起動装置18に非常停止信号を送信し、起動装置18からの第2起動信号を受信するものでない点。 <相違点2> 本願発明は、「前記中継装置は、筐体内に」、 入出力制御部と表示部とを備えており、前記手動放出スイッチ、前記緊急停止スイッチ及び前記警告装置は、「前記筐体に収容された又は取り付けられた装置ではな」いのに対して、引用発明は、「起動スイッチ26」、「非常停止スイッチ28」及び「スピーカ13」が、制御盤10から離れた位置に設置されているが、制御盤10が筐体を有しているかどうか不明である点。 (イ)当審の判断 上記相違点について検討する。 <相違点1について> 引用発明は、「前記制御盤10は、操作箱12からシリアル伝送系により、起動スイッチ26の操作に基づく起動信号、非常停止スイッチ28の操作に基づく非常停止信号が送信され、駆動回路部128を介して起動装置18を接続しており、カウントダウン終了で放出起動信号を起動装置18に出力して開放ガスを放出し、選択弁17の開放及び消火ガス貯蔵容器16の開栓により噴射ヘッド14から消火ガスを放出させ」るものであるから、制御盤10で消火ガスの放出を制御するものであって、非常停止信号を起動装置18に送信する必要性やスピーカ13からの放送音を出力させる信号を起動装置18から受信する動機はない。 また、引用文献2には、「消火制御盤16」の他に、「火災受信盤30」と「放送制御盤36」を設ける点が記載されているが、「非常停止スイッチ」の信号を「火災受信盤30」と「放送制御盤36」に送ることは記載されていない(【0050】)。また、引用文献4には、「非常停止スイッチ68」(【0040】)が記載されているが、信号に関する具体的な記載はない。さらに、引用文献3及び5には、緊急停止スイッチに係る記載はない。 したがって、引用発明において、引用文献2〜5に記載された事項を適用して、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることを、当業者が容易に相当し得たとはいえない。 第3 まとめ 以上のとおりであるから、他の点について検討するまでもなく、拒絶査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。 また他に拒絶の理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-03-22 |
出願番号 | P2019-184136 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(A62C)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
山本 信平 |
特許庁審判官 |
金澤 俊郎 佐々木 正章 |
発明の名称 | 中継装置 |
代理人 | 特許業務法人朝日特許事務所 |