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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1383543
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-19 
確定日 2022-04-07 
事件の表示 特願2019−219353「放送波の生成方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月 9日出願公開、特開2020− 58048〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年12月27日に出願した特願2016−254333号の一部を分割して、令和1年12月4日に新たな出願としたものであって、令和2年2月3日付けで拒絶理由通知がなされ、同年4月8日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年7月2日付けで拒絶査定がなされた。これに対して同年8月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、令和2年4月8日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。(符号A〜Fは合議体が付した。以下、構成A〜F等という。)

A 放送信号の生成手段、前記放送信号に対するセキュリティー保護を行うセキュリィティー手段及び映像に対する制御情報の生成手段を備える放送局において、前記放送信号に所定の符号化映像フォーマットを採用する放送波の生成方法であって、
B 前記所定の符号化映像フォーマットが、
現行のコピープロテクション方式より高度なコピープロテクション方式を使うか否かを指定する第1の指定情報、および
前記映像の高度化に伴う現行放送との差異に応じた変換を受信側でするか否かを指定する第2の指定情報、
のうちの少なくとも1つの指定情報を前記放送波に配置するように構成し、
C 前記映像の高度化は、解像度、画素ビット(階調)、フレーム周波数(フレームレート)、カラリメトリ(色域)、ダイナミックレンジのうちの1つ以上のパラメータが現行放送の映像よりも高度であることを示し、
D 前記第2の指定情報が、1つ以上の前記パラメータのいずれかについて、前記放送波の受信側における変換の可否を示す制御情報を含むようにし、
E 前記放送波がMPEG−TS方式の放送波である場合、前記第1および/または第2の指定情報が放送番組毎のPMT(プログラムマップテーブル)に配置可能な記述子により構成され、
F 前記高度なコピープロテクション方式を高度コピープロテクト制御とし、前記映像の解像度変換を解像度制御としたときに、前記記述子により、以下の要件のうち少なくとも1つを指定し、受信側で指定された要件を実行できるように構成した、
放送波の生成方法:
要件1:前記高度コピープロテクト制御は必要、前記解像度制御は不可;
要件2:前記高度コピープロテクト制御は不要、前記解像度制御は不可; 要件3:前記高度コピープロテクト制御は必要、前記解像度制御は可; 要件4:前記高度コピープロテクト制御は不要、前記解像度制御は可。

第3 原査定の概要
原査定の拒絶の理由のうち、請求項1に係る発明に関する部分の概要は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1−3、5、6に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献:
1.特開2010−130600号公報
2.DTCP2 Presentation to CPTWG, DTLA, 2016年1月27日,p.1-22
3.特開2016−103801号公報
5.特開2006−295344号公報
6.特開2016−28480号公報

第4 引用文献
1 引用文献1の記載及び引用発明
引用文献1には、コンテンツのコピー制御に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した(以下、同様)。

(1)「【0001】
技術分野は、コンテンツのコピー制御に関する。」

(2)「【0008】
そこで、デジタル放送の番組を記録する場合において、コピー制御を施しつつ、使い勝手の向上を図った装置又は方法を提供する。」

(3)「【0012】
<システム>
図1は、本実施例のシステムの構成例を示すブロック図である。放送で情報を送受信して記録再生する場合を例示している。
【0013】
1は放送局などの情報提供局に設置される送信装置、2は中継局や放送用衛星などに設置される中継装置、ユーザの宅内などに設置される3は受信装置、10は受信装置3に内蔵される受信記録再生部である。受信記録再生部10では、放送された情報を記録し、再生することができる。
【0014】
送信装置1は、中継装置2を介して、変調された信号電波を伝送する。図のように衛星による伝送以外にも例えばケーブルによる伝送、電話線による伝送、地上波放送による伝送、インターネットなどのネットワーク経由のIP(Internet Protocol)を利用した伝送などを用いることもできる。受信装置3で受信されたこの信号電波は、後に述べるように、復調されて情報信号となった後、必要に応じ記録するに適した信号となって記録される。また、ユーザは、受信装置3にディスプレイが内蔵されている場合はこのディスプレイで、内蔵されていない場合には受信装置3と図示しないディスプレイとを接続して情報信号が示す映像音声を視聴することができる。
【0015】
<送信装置>
図2は、図1のシステムのうち、送信装置1の構成例を示すブロック図である。
【0016】
11はソース発生部、12はMPEG、或いはH.264方式等で圧縮を行うエンコード部、13はスクランブル部、14は変調部、15は送信アンテナ、16は管理情報付与部である。カメラ、記録再生装置などから成るソース発生部11で発生した映像音声などの情報は、より少ない占有帯域で伝送できるよう、エンコード部12でデータ量の圧縮が施される。必要に応じてスクランブル部13で、特定の視聴者には視聴可能となるように伝送暗号化される。変調部14でOFDM,TC8PSK,QPSKなど伝送するに適した信号となるよう変調された後、送信アンテナ15から、中継装置2に向けて電波として送信される。このとき、管理情報付与部16では、コピーを制御するための情報であるコピー制御情報や現在時刻等の情報を付加する。
(中略)
【0018】
<コピー制御情報>
コピー制御情報は、コピーの可否や回数などの制限を制御する情報であり、例えば管理情報付与部16で付加される。コンテント利用記述子とデジタルコピー制御記述子などを含む。
(中略)
【0023】
図3は、コピー制御情報の一つであるコンテント利用記述子の構造の一例を示す。コンテント利用記述子は、例えば管理情報付与部16で生成、付加され、MPEG-TSのPSI(Program Specific Information)(一例としてPMT(Program Map Table)など)或いはSI(Service Information)(一例としてEIT(Event Information Table)、或いはSDT(Service Description Table)など)に格納されて送出される情報である。
【0024】
コンテント利用記述子の用途は、当該番組に対して、蓄積(記録)や出力に関する制御情報を記述する場合に配置(送出)されるものである。その意味は、digital_recording_control_mode(デジタルコピーモードビット)の1ビットのフィールドが「1」の場合、図5で説明するデジタルコピー制御記述子のdigital_recording_control_dataが「一世代のコピー可」であっても「個数制限コピー可」として記録可能であることを示す。「0」の場合、「個数制限コピー可」として記録することはできない。
(中略)
【0027】
図4は、コンテント利用記述子の各フィールドにおける記述内容の一例を示す。
(中略)
【0030】
「retention_mode」は一時蓄積制御ビットを意味し、デジタルコピー制御記述子の「digital_recording_control_data」(デジタルコピー制御情報)が「コピー禁止」であっても一時蓄積が可能であることを表す“0”を記述する。「retention_state」は一時蓄積許容時間を意味し、1時間30分の蓄積が可能なことを表す”111”を記述する。なお、「image_constraint_token」、「retention_state」、「encryption_mode」はデフォルトの状態では「1」である。
(中略)
【0033】
図5は、コピー制御情報の一つであるデジタルコピー制御記述子の構造の一例を示す。デジタルコピー制御記述子は、例えば管理情報付与部16で生成、付加され、MPEG-TSのPSI(一例としてPMTなど)或いはSI(一例としてEIT、或いはSDTなど)に格納されて送出される情報である。
【0034】
デジタルコピー制御記述子は、「digital_recording_control_data」(デジタルコピー制御情報)の2ビットのフィールドにより、コピー世代を制御する情報を表す。」

(4)「【0039】
受信装置3は、受信記録再生部10、制御部114(例えば、CPU(Central Processing Unit))、ユーザインタフェース部115(例えば、入力装置として、キーボード、マウスまたはリモコン等)を含む。
(中略)
【0042】
受信記録再生部10は、チューナ復号部101、セレクタ102、分離・抽出部103(例えば、デマルチプレクサ)、入力バッファ104、復号部105(例えば、MPEGデコーダ)、ネットワークインタフェース部106、バッファ管理部107、クロック再生部108、タイムスタンプ比較/出力部109、タイムスタンプ付加部110、読み出し部111、書き込み部112、内蔵記録媒体113、出力部116、固定クロック発生部117(例えば、水晶発振器)、コンテンツ管理情報作成部119、コンテンツ管理情報解析部120を含む。
【0043】
内蔵記録媒体113(第一記録媒体とも呼ぶ)、及びリムーバブル記録媒体118(第二記録媒体とも呼ぶ)は、例えばハードディスクドライブ(HDD)、半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクなどのランダムアクセスが可能な媒体である。
【0044】
出力部116は、CRT(Cathode Ray Tube)、LCD(Liquid Crystal Display)、PDP(Plasma DISPLAY Panel)等を利用した表示部、スピーカ等による音声出力部、または他の表示装置等にアナログ或いはデジタルの映像データ/音声データを出力するコンポジット映像出力端子、S映像出力端子(S端子)、D映像出力端子(D端子)(以上アナログ映像出力端子)、HDMI(High Definition Multimedia Interface)出力端子(デジタル映像出力端子)、光音声出力端子(デジタル音声出力端子)等である。出力部116は、復号された映像/音声を、出力装置である表示部/音声出力部にて再生する。または、出力端子(例えば、HDMI)等を介して他の表示装置、音声再生装置等に映像/音声コンテンツデータ等を出力する。この出力端子からの映像/音声コンテンツデータにはそれぞれの出力規格のコンテンツ保護方式に基づいた形式で出力されるためコンテンツの保護がなされる。」

(5)「【0068】
<コピー制御情報に関係する受信及び記録処理>
送信装置1から送出された、図3〜6で説明したコピー制御情報に関係する受信装置3の処理の詳細例を説明する。
(中略)
【0072】
図9は、受信装置3が、コピー制御情報を利用して番組コンテンツを蓄積(記録)する制御の例を示す。
(中略)
【0075】
個数制限コピー可について、「個数制限コピー可」として蓄積されている番組コンテンツからは、N個のコピーを生成することができる。Nの値は、例えば規格に準拠することでよい。高速デジタルインタフェース出力を経由してコピーを生成する場合は、ムーブ機能を用いる等によって、生成するコピーの数が確定できる場合にはコピーを行ってよい。例えば、インタフェースがIEEE1394で、出力先がDTCP規格に対応した装置であることを認識できた場合である。なお、生成したコピーは、「再コピー禁止」またはそれと同等の状態とする。
(中略)
【0082】
図18は、上記で説明したコピー数の制限を理解するための図で、受信装置3、ネットワークインタフェース部106、内蔵記録媒体113、リムーバブル記録媒体118、記録装置121、および記録装置122である。記録装置121は、例えばネットワークインタフェース部106とIEEE1394を介して接続されており、著作権保護方式としてDTCPが利用される。記録装置122は、例えばネットワークインタフェース部106と有線LANまたは無線LANを介して接続されており、著作権保護方式としてDTCP-IP(Digital Transmission Content Protection over Internet Protocol)が利用される。例えばこのように接続されている場合において、放送波から受信した「個数制限コピー可」のコンテンツは内蔵記録媒体113、リムーバブル記録媒体118、記録装置121、および記録装置122に総数が10個以内である必要がある。
(中略)
【0087】
前述したように「個数制限コピー可」として管理されているコンテンツをデジタル接続された記録媒体に管理しているコピー数を保持したままムーブする場合には、ムーブ前とムーブ後で合計のコピー数が変わらないようにする必要があり、その方法の一例を説明する。DTCP-IPによりTSパケットが伝送される場合には,コンテンツのコピー制御情報を含むDTCP_descriptorがPMTに設定されるが、図20は、そのDTCP_descriptorの一例を示す図である。DTCP_descriptorは、デジタルストリームの一時蓄積や移動モードが規定されているかを示すretention_move_mode、一時蓄積の期間を示すretention_state、MPEG2−TS形式のデジタルストリームのコピーが許可されているか否かを示すDTCP_CCI(DTCP_Copy Control Information)、DTCP_CCIがコピーフリーを示している場合において、そのコピーフリーがEPN Assertedコピーフリーであるか否かを示すEPN、コピーを許可する個数を示すCount、Countの情報が有効か否かを示すCopy_count_Mode、MPEG2−TS形式のデジタルストリームの再生出力にあたって、解像度制限がなされていることを示すImage_Constraint_Token、MPEG2−TS形式のデジタルストリームをアナログ変換して出力するにあたって、アナログ出力での保護を施すか否かを示すAPS(Analogue Protection System)を含む。前述のようにDTCP_descriptorの伝送は、DTCP_descriptorをPMTに設定しTSパケットに格納した上でなされるが、MPEG2−TS以外のコンテンツ、例えばMPEG2−PSなどを伝送する場合には、DTCP-IP規格に定義されている伝送コンテンツとは別のパケットとして付加するパケットに前述したコンテンツデータのコピー制御情報を格納しても良い。もちろんMPEG2−TSを伝送する場合にも伝送コンテンツとは別のパケットにコンテンツデータのコピー制御情報を格納しても良い。」

上記(1)ないし(5)から、引用文献1には以下の事項が記載されている。
・上記【0001】、【0008】によれば、引用文献1には、デジタル放送の番組を記録する場合におけるコンテンツのコピー制御方法に関する発明が記載されている。
・上記【0013】、【0014】によれば、放送局に設置される送信装置1は、中継装置2を介して、変調された信号電波を伝送するものであり、衛星による伝送以外にも例えばケーブルによる伝送、電話線による伝送、地上波放送による伝送、インターネットなどのネットワーク経由のIP(Internet Protocol)を利用した伝送などを用いることもできるものであって、受信装置3で受信されたこの信号電波は、復調されて情報信号となった後、必要に応じ記録するに適した信号となって記録されるものである。
・上記【0015】、【0016】によれば、送信装置1は、ソース発生部11、エンコード部12、スクランブル部13、変調部14、送信アンテナ15、管理情報付与部16から構成されており、カメラ、記録再生装置などから成るソース発生部11で発生した映像音声などの情報は、エンコード部12でデータ量の圧縮が施され、必要に応じてスクランブル部13で伝送暗号化され、変調部14で変調された後、送信アンテナ15から、中継装置2に向けて電波として送信され、このとき、管理情報付与部16では、コピーを制御するための情報であるコピー制御情報や現在時刻等の情報を付加している。
・上記【0018】によれば、コピー制御情報は、コンテント利用記述子とデジタルコピー制御記述子などを含んでいる。
・上記【0034】によれば、デジタルコピー制御記述子は、「digital_recording_control_data」(デジタルコピー制御情報)の2ビットのフィールドにより、コピー世代を制御する情報を表している。
・上記【0008】、【0024】によれば、コンテント利用記述子は、デジタル放送の番組に対して、蓄積(記録)や出力に関する制御情報を記述する場合に配置(送出)されるものである。
・上記【0027】、【0030】及び【0087】によれば、コンテント利用記述子の各フィールドにおける記述内容のうち、「image_constraint_token」は、解像度の制限について指示する情報といえる。
・上記【0023】、【0033】によれば、コンテント利用記述子とデジタルコピー制御記述子は、管理情報付与部16で生成、付加され、MPEG-TSのPMT(Program Map Table)などに格納されて送出される情報である。
・上記【0068】、【0072】によれば、受信装置3は、送信装置1から送出されたコピー制御情報を利用して番組コンテンツを蓄積(記録)する制御を行っている。
・上記【0039】、【0042】によれば、受信装置3は、ネットワークインタフェース部106、書き込み部112、内蔵記録媒体113、出力部116などを含んでいる。
・上記【0044】によれば、出力部116は、表示部または他の表示装置等に映像データ/音声データを出力している。
・上記【0075】及び【0082】によれば、ネットワークインタフェース106は、出力先であるDTCP規格に対応した装置と接続されている。

したがって、上記摘記事項および図面を総合勘案すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。(符号a〜fは合議体が付した。以下、構成a〜e4等という。)

「a デジタル放送の番組コンテンツのコピー制御方法であって、
a1 放送局に設置される送信装置1は、中継装置2を介して、変調された信号電波を伝送するものであり、衛星による伝送以外にも例えばケーブルによる伝送、電話線による伝送、地上波放送による伝送、インターネットなどのネットワーク経由のIP(Internet Protocol)を利用した伝送などを用いることもできるものであって、受信装置3で受信されたこの信号電波は、復調されて情報信号となった後、必要に応じ記録するに適した信号となって記録され、
a2 送信装置1は、ソース発生部11、エンコード部12、スクランブル部13、変調部14、送信アンテナ15、管理情報付与部16から構成されており、カメラ、記録再生装置などから成るソース発生部11で発生した映像音声などの情報は、エンコード部12でデータ量の圧縮が施され、必要に応じてスクランブル部13で伝送暗号化され、変調部14で変調された後、送信アンテナ15から、中継装置2に向けて電波として送信され、
b このとき、管理情報付与部16では、コピーを制御するための情報であるコピー制御情報や現在時刻等の情報を付加しており、
b1 コピー制御情報は、コンテント利用記述子とデジタルコピー制御記述子などを含んでおり、
b2 デジタルコピー制御記述子は、「digital_recording_control_data」(デジタルコピー制御情報)の2ビットのフィールドにより、コピー世代を制御する情報を表しており、
c コンテント利用記述子は、デジタル放送の番組に対して、蓄積(記録)や出力に関する制御情報を記述する場合に配置(送出)されるものであり、各フィールドにおける記述内容のうち、「image_constraint_token」は、解像度の制限について指示する情報であり、
d コンテント利用記述子とデジタルコピー制御記述子は、管理情報付与部16で生成、付加され、MPEG-TSのPMT(Program Map Table)などに格納されて送出される情報であり、
e1 受信装置3は、送信装置1から送出されたコピー制御情報を利用して番組コンテンツを記録装置に蓄積(記録)する制御を行っており、
e2 受信装置3は、ネットワークインタフェース部106、書き込み部112、内蔵記録媒体113、出力部116などを含み、
e3 出力部116は、表示部または他の表示装置等に映像データ/音声データを出力し、
e4 ネットワークインタフェース106は、出力先であるDTCP規格に対応した装置と接続されている、
a デジタル放送の番組コンテンツのコピー制御方法。」

2 引用文献2
引用文献2には、DTCP2に関して、以下の事項が記載されている。なお、日本語訳は当審で作成した。

(1)「

」(6頁)
(日本語訳:
DTCP2 − 2段階のコンプライアンスと堅牢性のルール
>L2には、より高いレベルの堅牢性と出力/記録保護が求められる
・堅牢性ルールでは"DTCP2コア機能"をハードウェアで実装する必要がある
・コンプライアンスルールでは、より高度な出力保護が求められる(例 HDCP2.2);アナログ出力は許可されない

>L1では、現在のDTCP−IPと同等の方法でコンテンツを扱うことができる)

(2)「

」(7頁)
(日本語訳:
4つの新しいCMIフラグ
>"L2−Only"フラグ
>"EI"フラグ
>"HDR"フラグ
>"SDO"(Standard Digital Output)フラグ

>他の出力と一貫した、上流の要求に応じて設定されたフラグ
・例
・AACS2ルールに基づいて設定されたSDO
・L2−OnlyやHDRは、コンテンツプロバイダのルールで上流側に設定されるか、コンテンツ保護システムのルールにマッピングされる

>ダウンストリームでの保護の永続化)

(3)「

」(8頁)
(日本語訳:
L2−Onlyフラグ
>設定内容
・0=コンテンツをL1またはL2で保護することができる
・保護されたコンテンツを拡張画像または非拡張画像として出力可能
・1=コンテンツをL2で保護する
・非EIにダウンコンバートしてもよいが、L2で保護しなければならない

>"L2"は、より高いレベルのコンプライアンスと堅牢性のルールが必要。
>"L1"は、DTCP1レベルのコンプライアンスと堅牢性のルールが必要。

注:L1、L2ともに、変更管理により承認された現在および将来のコンテンツ保護技術を使用して出力することができる。)

(4)上記(3)によれば、「L2−Onlyフラグ」の値が1の場合には、コンテンツをL2で保護する必要があるといえる。
一方、「L2−Onlyフラグ」の値が0の場合には、L1またはL2で保護することができるとし、必ずしもL2で保護する必要がないものである。
そして、L2は「より高いレベルのコンプライアンスと堅牢性のルール」、すなわち上記(1)でいうところの「より高いレベルの堅牢性と出力/記録保護が求められる」ものである。
したがって、引用文献2には、以下の技術が記載されているといえる。

「DTCP2においては、コンテンツに対して、より高いレベルの堅牢性と出力/記録保護が求められるL2での保護を必要とするか、必ずしもL2での保護を必要としない(L1またはL2で保護することができる)かを指定する『L2−Onlyフラグ』を含む、4つの新しいCMIフラグが規定されていること」

3 引用文献3
引用文献3には、図面とともに以下の記載がある。

「【0001】
本発明は、デジタル放送受信装置、デジタル放送受信方法、およびプログラムに関する。」

「【0050】
映像処理部1441は、分離部142から出力された映像データに対して、映像データが符号化された符号化方式(例えば、HEVC)に対応する予め定めた復号化方式で復号した画像信号(例えば、ストリーム形式の画像信号)を生成する。映像処理部1441は、生成した(復号化した)画像信号を表示装置15に出力する。なお、映像処理部1441は、赤外線通信部12から出力された操作内容の情報により分離部142において分離・選択された番組の映像データを復号した画像信号を生成して表示装置15に出力する。また、映像コンテンツに対する変換を許可するか許可しないかを表す変換可否の情報(例えば、変換を許可するか否かを表すフラグ)が、変換を許可することを表している場合、映像処理部1441は、生成した(復号化した)画像信号を変換してから表示装置15に出力する。より具体的には、映像コンテンツに対する変換が、映像データの解像度を低解像度に変換するダウンコンバートである場合、例えば、映像処理部1441に備えた解像度ダウンコンバート部が、復号した画像信号に含まれる映像データの解像度をダウンコンバートし、このダウンコンバートした後の画像信号を、映像処理部1441が生成した(復号化した)画像信号として表示装置15に出力する。
(中略)
【0053】
ところで、放送受信部11が多重化して送信する放送電波に含まれる番組データi1には、様々な解像度の映像データが含まれている。そして、受信装置10に接続された表示装置15が、高解像度の映像データの表示に対応していない場合もある。例えば、受信装置10に接続された表示装置15に備えた表示パネルが、高解像度の映像データに応じた画像を表示することができないことが考えられる。このような場合、表示装置15では、ユーザーが選択した高解像度の番組の視聴ができないことになる。このため、受信装置10(例えば、映像処理部1441に備えた解像度ダウンコンバート部)は、ユーザーによって選択された高解像度の番組の映像データを、表示装置15が表示することができる解像度に変換(例えば、ダウンコンバートして低解像度に変換)して表示装置15に出力する。これにより、ユーザーは、画質は低下してしまうことになるが、高解像度の番組を表示装置15で視聴することができるようになる。なお、受信装置10は、表示装置15が表示することができる画像の解像度の情報を、例えば、HDMI(登録商標)(High Definition Multimedia Interface)などによる、接続された表示装置15との間での通信によって取得することができる。従って、受信装置10は、表示装置15が表示可能な解像度に合わせて映像データを変換(ダウンコンバートやアップコンバートなど)することができる。
【0054】
しかしながら、放送受信部11が多重化して送信する放送電波に含まれる番組データi1には、解像度の変換などの映像コンテンツに対する変換が許可されていない場合もある。この場合、受信装置10であっても、番組データi1に含まれる映像データの解像度を変換した画像データを表示装置15に出力することはできない。そこで、受信装置10では、番組表生成部1442によって、表示装置15で視聴することができる解像度への変換が許可されていない高解像度の映像の番組に割り当てられた領域(枠組み)を、他の番組に割り当てられた領域(枠組み)と異なる表示にした電子番組表i3を生成する。つまり、受信装置10に備えた番組表生成部1442は、表示装置15によって視聴することができる番組と視聴することができない番組とを区別して識別することができるようにした電子番組表i3を生成する。これにより、受信装置10は、視聴することができない番組をユーザーに報知する。」

「【0080】
上記に述べたとおり、本発明を実施するための形態によれば、受信した放送電波に多重化された番組データに付随する番組情報に含まれる映像データの解像度を表す情報と、映像コンテンツに対する変換可否の情報とに基づいて、番組の制作者や映像コンテンツの著作権者の意向によって視聴することができない番組を、ユーザーに報知する。
(中略)
【0082】
また、本発明を実施するための形態では、映像コンテンツに対する変換可否の情報が、番組に対応する番組配列情報i2のMH−EITに含まれているものとして説明した。この映像コンテンツに対する変換可否の情報は、例えば、DTCP(Digital Transmission Content Protection)規格で規定されたコンテント利用記述子(image_constraint_token:ict)に記述されるような情報である。しかし、映像コンテンツに対する変換可否の情報は、本発明を実施するための形態において示したような形式で設定される情報に限定されるものではない。例えば、映像コンテンツである番組データi1に含まれる映像データの最初のフレームまたは一定間隔のフレームなど、映像コンテンツ自体に変換可否の情報が含まれる形式であってもよい。また、例えば、放送電波や放送電波として送信されるパケットに、映像コンテンツに対する変換可否の情報が含まれる形式であってもよい。
【0083】
また、本発明を実施するための形態では、映像コンテンツに対する変換可否の情報が、解像度の変換を許可するか、許可しないかを表す情報(例えば、変換を許可するか否かを表すフラグ)である場合について説明した。しかし、映像コンテンツに対する変換可否の情報は、本発明を実施するための形態において示した情報に限定されるものではなく、例えば、解像度の変換を許可する場合に、どの解像度までの変換を許可するかを表す情報が含まれるものであってもよい。この場合、例えば、8Kサイズの解像度の番組の変換可否の情報において、4Kサイズまでのダウンコンバートが許可されているとすると、4Kサイズの解像度の番組を視聴することができる表示装置15ではダウンコンバートした番組を視聴することができるが、2Kサイズの解像度の番組を視聴することができる表示装置15ではダウンコンバートした番組を視聴することができない。このような場合であっても、番組表生成部1442は、すでに取得している表示装置15が表示することができる画像の解像度の情報に基づいて、それぞれの表示装置15に対応する電子番組表i3を生成することができる。より具体的には、4Kサイズの解像度の番組を視聴することができる表示装置15に対しては上記の番組を視聴することができる番組とした電子番組表i3を生成して出力し、2Kサイズの解像度の番組を視聴することができる表示装置15に対しては上記の番組を視聴することができない番組とした電子番組表i3を生成して出力する。」

上記【0001】、【0053】によれば、デジタル放送においては、受信装置に接続された表示装置が高解像度の映像データの表示に対応していない場合があるため、受信装置側で、映像データを低解像度に変換して、表示装置への出力を行うことが記載されている。
上記【0050】、【0054】及び【0083】によれば、受信装置側では、映像データを低解像度に変換(例えば8Kから4K)することを許可するか否かを表すフラグに基づいて、表示装置への出力を行っている。
上記【0080】、【0082】によれば、映像コンテンツに対する変換可否の情報を、DTCP規格で規定されたコンテント利用記述子(image_constraint_token:ict)などに含めて送信している。

以上のことから、引用文献3には、デジタル放送に関して、以下の技術が記載されている。

「デジタル放送において、受信装置に接続された表示装置が高解像度の映像データの表示に対応していない場合があるため、映像データを低解像度に変換(例えば8Kから4K)することを許可するか否かを表すフラグを、DTCP規格で規定されたコンテント利用記述子(image_constraint_token:ict)などに含めて送信し、当該フラグに基づいて受信装置側で表示装置への出力を行うこと」

4 引用文献5
引用文献5には、図面とともに以下の記載がある。

「【0001】
本発明は、圧縮に関する制約情報を含む拡張した著作権保護情報を用いることで、コンテンツの利用を促進するようにしたコンテンツ処理装置に関する。」

「【0034】
著作権情報付加部3は、送信(伝送)するデータのフォーマットに応じて、制約情報及び著作権保護情報をコンテンツに付加する。例えば、著作権情報付加部3は、現行放送で採用されているMPEG−TSパケットのデータ配列に従って、著作権保護情報及び制約情報をコンテンツに付加する。図2は現行デジタル放送を採用した場合の例を示しており、この場合には、著作権情報付加部3は、放送信号中の記述子(descriptor)によって制約情報を含む著作権保護情報を定義する。」

「【0041】
番組配列情報SI中には、種々の記述子(descriptor)を配置することができる。現行デジタル放送では、各番組毎に配置されるPMTの記述子の1つとしてDTCP方式に従ったデジタルコピー制御記述子が規定されており、このデジタルコピー制御記述子によって上述したコピー禁止(Copy-never)、1世代のみコピー可(Copy-one-generation)又は制約無しにコピー可(Copy-free)等を指定することができるようになっている。」

上記記載によれば、引用文献5には、現行のデジタル放送で採用されているMPEG−TS方式に関して、以下の技術が記載されている。
「コンテンツに付加する著作権保護情報及び制約情報を、放送信号中の記述子によって定義すること」

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
1 構成Aについて
(1)引用発明の構成a1の「放送局」に設置される「送信装置1」は、構成a2によれば、「ソース発生部11で発生した映像音声などの情報」を「エンコード部12」、「スクランブル部13」及び「変調部14」で処理し、「送信アンテナ15」から送信される「信号電波」を生成しているといえ、本願発明の「放送信号の生成手段」を有している。
(2)引用発明の構成a2によれば、送信装置1の「スクランブル部13」は「伝送暗号化」、すなわち伝送する信号に対してセキュリティー保護を行っており、本願発明の「前記放送信号に対するセキュリティー保護を行うセキュリィティー手段」に相当する。
(3)引用発明の構成b、b1、dによれば、送信装置1の「管理情報付与部16」は、「コピー制御情報」である「コンテント利用記述子」や「デジタルコピー制御記述子」を生成、付加しており、本願発明の「映像に対する制御情報の生成手段」に相当する。
(4)上記(1)ないし(3)より、引用発明の「送信装置1」が設置された「放送局」は、上述した「エンコード部12」、「スクランブル部13」、「変調部14」及び「管理情報付与部16」を「送信装置1」に備えており、本願発明の「放送信号の生成手段、前記放送信号に対するセキュリティー保護を行うセキュリィティー手段及び映像に対する制御情報の生成手段を備える放送局」に相当する。

(5)また、引用発明の「送信装置1」は、構成dによれば、信号電波を「MPEG−TS」方式によって送信していることが明白であり、放送信号に所定の符号化映像フォーマットを採用したものである。

(6)そうすると、引用発明の「デジタル放送の番組コンテンツのコピー制御方法」は、上記(4)で述べた「放送局」と上記(5)で述べた「送信装置1」の構成を備えており、また、下記2〜4で後述する構成を備えたものであるから、本願発明の「放送信号の生成手段、前記放送信号に対するセキュリティー保護を行うセキュリィティー手段及び映像に対する制御情報の生成手段を備える放送局において、前記放送信号に所定の符号化映像フォーマットを採用する放送波の生成方法」に相当する。

2 構成B、C及びDについて
(1)引用発明の構成bによれば、「コピー制御情報」は、「コピーを制御するための情報」であり、「コピープロテクション」に関して指定する情報といえる。
(2)引用発明の構成b1、c、e1によれば、「コピー制御情報」である「コンテント利用記述子」に記述された「image_constraint_token」は、映像データの「解像度の制限」について指示する情報であり、「映像に関する制御」を受信側でするか否かを指定する情報といえる。
(3)引用発明の構成b1、dによれば、「コピー制御情報」である「コンテント利用記述子」や「デジタルコピー制御記述子」は「MPEG−TS」の「PMT」に格納されて送出される情報である。
(4)そして、引用発明の構成e1によれば、「コピー制御情報」は、受信装置3が番組コンテンツを蓄積(記録)する際に、その制御に利用される情報である。

(5)そうすると、引用発明の「MPEG−TS」方式に放送信号において、「コピー制御情報」である「コンテント利用記述子」や「デジタルコピー制御記述子」が「MPEG−TS」の「PMT」に格納されている構成と本願発明の構成Bの「所定の符号化映像フォーマット」は、「前記所定の符号化映像フォーマットが、コピープロテクションに関して指定する第1の指定情報、および映像に関する制御を受信側でするか否かを指定する第2の指定情報、のうちの少なくとも1つの指定情報を前記放送波に配置するように構成し」ている点で共通する。

(6)ただし、第1の指定情報について、本願発明は「現行のコピープロテクション方式より高度なコピープロテクション方式を使うか否かを指定する第1の指定情報」であるのに対して、引用発明はコピーを制御するための情報である点で相違する。
また、第2の指定情報について、本願発明は「前記映像の高度化に伴う現行放送との差異に応じた変換を受信側でするか否かを指定する第2の指定情報」であって、「前記映像の高度化は、解像度、画素ビット(階調)、フレーム周波数(フレームレート)、カラリメトリ(色域)、ダイナミックレンジのうちの1つ以上のパラメータが現行放送の映像よりも高度であることを示し、前記第2の指定情報が、1つ以上の前記パラメータのいずれかについて、前記放送波の受信側における変換の可否を示す制御情報を含む」のに対して、引用発明は解像度の制限について指示する情報である点で相違する。

3 構成Eについて
引用発明において、「コピー制御情報」である「コンテント利用記述子」や「デジタルコピー制御記述子」が「MPEG−TS」の「PMT」に格納されて送出されること(構成b1、d)は、本願発明の「前記放送波がMPEG−TS方式の放送波である場合、前記第1および/または第2の指定情報が放送番組毎のPMT(プログラムマップテーブル)に配置可能な記述子により構成され」ることに相当する。
ただし、「第1の指定情報」及び「第2の指定情報」について、上記2(6)で述べた点で相違する。

4 構成Fについて
引用発明の構成e1によれば、受信装置3は、送信装置1から送出された「コピー制御情報」を利用して番組コンテンツを蓄積(記録)する制御を行っており、「コピー制御情報」である「コンテント利用記述子」や「デジタルコピー制御記述子」で要件を指定し、当該指定された要件を受信装置3側で実行するものと認められる。
そうすると、引用発明が「コピー制御情報」である「コンテント利用記述子」や「デジタルコピー制御記述子」を用いて、受信装置3側で実行される要件を指定することと、本願発明の構成Fは、「前記記述子により、要件を指定し、受信側で指定された要件を実行できるように構成し」ている点で共通する。
ただし、上記2及び3で述べた相違点に関係して、本願発明は「前記高度なコピープロテクション方式を高度コピープロテクト制御とし、前記映像の解像度変換を解像度制御としたときに、前記記述子により、以下の要件のうち少なくとも1つを指定し、受信側で指定された要件を実行できるように構成し」ており、「以下の要件」が
「要件1:前記高度コピープロテクト制御は必要、前記解像度制御は不可;
要件2:前記高度コピープロテクト制御は不要、前記解像度制御は不可;
要件3:前記高度コピープロテクト制御は必要、前記解像度制御は可;
要件4:前記高度コピープロテクト制御は不要、前記解像度制御は可。」であるのに対して、引用発明は、コピー制御情報であるコンテント利用記述子やデジタルコピー制御記述子により、そのような要件を指定しない点で相違する。

上記1ないし4から、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
A 放送信号の生成手段、前記放送信号に対するセキュリティー保護を行うセキュリィティー手段及び映像に対する制御情報の生成手段を備える放送局において、前記放送信号に所定の符号化映像フォーマットを採用する放送波の生成方法であって、
B’ 前記所定の符号化映像フォーマットが、
コピープロテクションに関して指定する第1の指定情報、および
映像に関する制御を受信側でするか否かを指定する第2の指定情報、
のうちの少なくとも1つの指定情報を前記放送波に配置するように構成し、
E 前記放送波がMPEG−TS方式の放送波である場合、前記第1および/または第2の指定情報が放送番組毎のPMT(プログラムマップテーブル)に配置可能な記述子により構成され、
F’ 前記記述子により、要件を指定し、受信側で指定された要件を実行できるように構成した、
放送波の生成方法。

<相違点1>
第1の指定情報について、本願発明は「現行のコピープロテクション方式より高度なコピープロテクション方式を使うか否かを指定する第1の指定情報」であるのに対して、引用発明はコピーを制御するための情報である点。

<相違点2>
第2の指定情報について、本願発明は「前記映像の高度化に伴う現行放送との差異に応じた変換を受信側でするか否かを指定する第2の指定情報」であって、「前記映像の高度化は、解像度、画素ビット(階調)、フレーム周波数(フレームレート)、カラリメトリ(色域)、ダイナミックレンジのうちの1つ以上のパラメータが現行放送の映像よりも高度であることを示し、前記第2の指定情報が、1つ以上の前記パラメータのいずれかについて、前記放送波の受信側における変換の可否を示す制御情報を含む」のに対して、引用発明は解像度の制限について指示する情報である点。

<相違点3>
上記相違点1及び2に関係して、本願発明は「前記高度なコピープロテクション方式を高度コピープロテクト制御とし、前記映像の解像度変換を解像度制御としたときに、前記記述子により、以下の要件のうち少なくとも1つを指定し、受信側で指定された要件を実行できるように構成し」ており、「以下の要件」が
「要件1:前記高度コピープロテクト制御は必要、前記解像度制御は不可;
要件2:前記高度コピープロテクト制御は不要、前記解像度制御は不可;
要件3:前記高度コピープロテクト制御は必要、前記解像度制御は可;
要件4:前記高度コピープロテクト制御は不要、前記解像度制御は可。」であるのに対して、引用発明は、コピー制御情報であるコンテント利用記述子やデジタルコピー制御記述子により、そのような要件を指定しない点。

第6 判断
1 相違点1について
本願発明の上記相違点1に係る構成である「現行のコピープロテクション方式より高度なコピープロテクション方式を使うか否かを指定する第1の指定情報」について、本願明細書及び図面の記載を参照すると、以下の記載がある。なお、下線は当審で付与した。

「【0050】
図9A、図9B、図9Cは、上記に示したA)からD)のコピー制御のコンプライアンスルールを実現するために制御ビットとして3ビットを割り当てた場合のビットアサインの例である。図9Aは、3ビット(b2−b0)のフィールドのうちの最上位ビット(b2)のビットアサインを示しており、高度コピープロテクトの要不要を示す高度コピープロテクト制御フラグである。図9Bは、引き続く1ビット(b1)のビットアサインを示しており、解像度の変換の可否を示す解像度制御フラグである。図9Cは引き続く1ビット(b0)のビットアサインを示しており、HDR/SDRの変換の可否を示すHDR/SDR制御フラグを示している。」

「【0057】
図13Aは、図9Aに示した高度コピープロテクトによる制御(b2)を2ビットに拡張し、制御ビットを4ビットとした応用例である。最上位ビット(b3)は、図9Aに示すb2と同様に高度コピープロテクトの要不要を示す高度コピープロテクト制御フラグとし、引き続くビット(b2)はb3と組み合わせて使用する制御ビットで、「解像度、HDR/SDR、色域の少なくとも1つが現行の一般的なHD映像を超える場合の映像の場合は、高度なコピープロテクト技術を適用」の要不要を示す高度映像保護制御フラグとしている。解像度の変換の有無を示す解像度制御フラグ(b1)とHDR/SDRの変換の有無を示すHDR/SDR制御フラグ(b0)は、図9Aに示すb1とb0と同じ定義である。制御ビットを4ビットとした場合の記述子のビット列は、例えば図11に示すコンテント記述子の902が、1ビットの4つの制御フラグで構成され、これに伴い901を4ビットに変更すればよい。」

「【0062】
例えば図9Aあるいは図10の何れかにアサインされた高度コピープロテクト制御フラグは、第1の指定情報に対応し、1または複数ビットで表現される。現行のコピープロテクション方式としてDTCPやAACSを例にとると、より高度なコピープロテクション方式としてDTCP2やAACS2が考えられる。第1の指定情報は、現行のコピープロテクション方式(DCTP等)より高度なコピープロテクション方式(DCTP2等)を使うか否かを指定する情報となっている。」





上記【0050】、【0057】及び【0062】の記載によれば、「高度コピープロテクトの要不要を示す高度コピープロテクト制御フラグ」は、「第1の指定情報」に対応している。
また、図9Aが示すとおり、「高度コピープロテクト制御フラグ」の値が「1」の場合には、「高度コピープロテクト技術を適用」を指定し、「0」の場合には「現行のコピープロテクト技術の運用も可能(高度コピープロテクト技術との併用も可能)」を指定するもの、すなわち「高度コピープロテクト技術」の適用を必要とするか、必ずしも適用を必要としない(高度コピープロテクト技術との併用も可能)かを指定するものである。
したがって、本願発明の「現行のコピープロテクション方式より高度なコピープロテクション方式を使うか否かを指定する第1の指定情報」とは、「現行のコピープロテクション方式より高度なコピープロテクション方式の適用を必要とするか、必ずしも適用を必要としないかを指定する」情報を含むものといえる。

ここで、引用文献2に記載されているように、DTCP2においては、コンテンツに対して、より高いレベルの堅牢性と出力/記録保護が求められるL2での保護を必要とするか、必ずしもL2での保護を必要としない(L1またはL2で保護することができる)かを指定する「L2−Onlyフラグ」を含む、4つの新しいCMIフラグが規定されている(上記第4の2参照)。
そして、引用文献1に記載された発明が前提とする、現行放送で採用されているMPEG―TS方式においては、コンテンツに付加する著作権保護情報及び制約情報を、放送信号中の記述子によって指定することは周知の技術事項であるところ(上記第4の4参照)、DTCPに対するDTCP2のように新たな規格が現れた際には、規格に対応する著作権保護情報及び制約情報を、周知の技術事項のように、現行放送で採用されているMPEG−TS方式で送出できるようにすることは当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎない。
してみると、引用発明が信号電波に付加する「コピー制御情報」に引用文献2に記載された技術事項を適用して、DTCP2の「L2−Onlyフラグ」を設定できるようにして上記相違点1に係る構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

2 相違点2について
引用発明は、受信装置3側での映像データの出力先として、表示部または他の表示装置、内蔵記録媒体113、DTCP規格に対応した装置など様々な装置が接続されている環境において、放送局の送信装置1側から解像度の制限について指示する「image_constraint_token」をコンテント利用記述子に記述して送信している。
また、引用文献3には、デジタル放送において、受信装置に接続された表示装置が高解像度の映像データの表示に対応していない場合があるため、映像データを低解像度に変換(例えば8Kから4K)することを許可するか否かを表すフラグを、DTCP規格で規定されたコンテント利用記述子(image_constraint_token:ict)などに含めて送信し、当該フラグに基づいて受信装置側で表示装置への出力を行うことが記載されている(上記第4の3参照)。
引用発明においても、例えば8Kのような高解像度の映像データの放送に対しては、受信装置3に接続された表示装置等が表示に対応していない場合があることは自明な課題といえる。
そうすると、引用発明において「解像度の制限について指示する情報」である「image_constraint_token」を、引用文献3記載の技術事項のように、高解像度の映像データを低解像度に変換することを許可するか否かを表すフラグに用いて、上記相違点2に係る構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

3 相違点3について
引用発明に、上記1、2で検討した、「L2−Onlyフラグ」及び映像データを低解像度に変換(例えば8Kから4K)することを許可するか否かを表す「フラグ」を適用した構成において、それぞれのフラグを「1」または「0」で表し、2つのフラグの値の組合せとして11、01、10、00の4つを設定できるようにすることは当業者が適宜になし得たものである。
そして、当該11、01、10、00の4つの設定は、
(1)より高いレベルの堅牢性と出力/記録保護が求められるL2での保護を必要とする。解像度変換は不可。
(2)必ずしもL2での保護を必要としない(L1またはL2で保護することができる)。解像度変換は不可。
(3)より高いレベルの堅牢性と出力/記録保護が求められるL2での保護を必要とする。解像度変換は可。
(4)必ずしもL2での保護を必要としない(L1またはL2で保護することができる)。解像度変換は可。
を表すことができるものであり、上記1の冒頭で確認したコピープロテクトの要不要の意味を参酌すると、本願発明の構成Fの要件1−4に当たるから、上記相違点3に係る構成とすることに格別の困難性はない。

以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、引用文献2、3に記載された技術事項、及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は審判請求書において「現実に本願発明は、『送出する番組内容を良く把握している番組送信元である放送局が、受信機自身が番組毎にその振る舞い(記録装置や記録媒体に対する記録付加やそのまま記録、解像度を変換して記録、高度のコピープロテクトをして記録する或はプロテクトしないで記録するなどの各種態様)を柔軟に決定できるようにするための情報、つまり著作権保護の処理に関する制御情報(高度コピープロテクトとすべきか否か設定する判断材料情報)と解像度の制御情報(解像度変換をするか否かを決める判断材料情報)の2つの情報を放送信号に乗せて送出する技術』であり、単純に引用文献を組み合わせても実現できないことは明らかでありますし、また放送局から送らてくる2つの情報に基づいて、受信機が多様性を持って振る舞うができるように工夫しているという点も単純に引用文献を組み合わせても実現できないし、想定することも困難であると思料いたします。」旨主張している(下線は請求人による付与)。
しかしながら、請求人が主張する「2つの情報」は、上記相違点1、2で検討した「第1の指定情報」及び「第2の指定情報」であり、同じく請求人が主張する「受信機が多様性を持って振る舞うができるように工夫しているという点」は、上記相違点3で検討した2つのフラグの組合せによって設定できるものであり、上述のとおり、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、その効果も当業者の予測の範囲内のものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明、引用文献2、3に記載された技術事項、及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-01-31 
結審通知日 2022-02-01 
審決日 2022-02-15 
出願番号 P2019-219353
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 川崎 優
五十嵐 努
発明の名称 放送波の生成方法  
代理人 特許業務法人スズエ国際特許事務所  

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