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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1383920
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-07-26 
確定日 2022-05-06 
事件の表示 特願2020− 5100「搬送波ホッピング方法と端末」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 5月14日出願公開、特開2020− 74575、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)12月15日(以下、「原出願日」という。)を国際出願日とする特願2017−568107号の一部を令和2年1月16日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和2年11月20日付け 拒絶理由通知書
令和3年 2月26日 意見書及び手続補正書の提出
令和3年 3月22日付け 拒絶査定
令和3年 7月26日 審判請求書及び手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和3年3月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・請求項1ないし3、6、8及び9に対して、引用文献等1、2及び4
・請求項4、5及び7に対して、引用文献等1ないし4

<引用文献等一覧>
1.米国特許出願公開第2012/0099537号明細書(以下、「引用文献1」という。)
2.米国特許出願公開第2011/0199951号明細書(以下、「引用文献2」という。)
3.米国特許出願公開第2015/0334770号明細書(以下、「引用文献3」という。)
4.国際公開第2015/126028号(以下、「引用文献4」という。)

第3 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は、令和3年7月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
搬送波ホッピング方法であって、
端末が第一の搬送波サブセットで基地局から送信されたシグナリングを受信し、ここで、前記端末が現在前記第一の搬送波サブセットでデータを伝送または常駐し、前記シグナリングが前記第一の搬送波サブセットから第二の搬送波サブセットにホッピングしてデータを伝送または常駐するように前記端末に指示することに用いられ、前記第一の搬送波サブセットと前記第二の搬送波サブセットがいずれも予め設定された搬送波セットに属し、前記予め設定された搬送波セットのうちのいずれか二つの搬送波の帯域幅が異なり、前記予め設定された搬送波セットが1セットのシステム情報を有し、前記第一の搬送波サブセットと前記第二の搬送波サブセットがそれぞれ少なくとも一つの搬送波を含み、前記第一の搬送波サブセットが前記第二の搬送波サブセットと完全に同じではないことと、
前記端末が前記シグナリングに基づき、第一の時点から、前記第二の搬送波サブセットでデータを伝送または常駐することとを含み、
前記シグナリングは、前記第二の搬送波サブセットを示すための第一の構成情報を含み、前記予め設定された搬送波セットは、上位層シグナリングを介して予め設定された搬送波セットS{S0、S1、……、SM-1}を前記基地局によって予め配置し、前記予め設定された搬送波セットS{S0、S1、……、SM-1}の各搬送波は、少なくとも中心周波数ポイントを配置し、前記第一の構成情報は、

のビットで前記予め設定された搬送波セットS{S0、S1、……、SM-1}の一つの搬送波インデックスを示し、Mは2より大きいか等しく、

が切り上げを表す、前記搬送波ホッピング方法。
【請求項2】
前記方法は、
前記第一の時点の後、前記端末が前記第二の搬送波サブセットを介して前記システム情報を取得することをさらに含むことを特徴とする
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記端末が第一の搬送波サブセットで基地局から送信されたシグナリングを受信することは、
前記端末が前記第一の搬送波サブセット上の時間ユニットnにおいて前記基地局から送信された前記シグナリングを受信することを含み、ここで、nが時間ユニットインデックス番号であり、
前記端末が前記シグナリングに基づき、第一の時点から、前記第二の搬送波サブセットでデータを伝送することは、
前記端末が前記シグナリングに基づき、時間ユニットn+Nから、前記第二の搬送波サブセットでデータを伝送することを含み、Nが正整数であることを特徴とする
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
Nは定数であり、又は、
Nは約束されたルールに従って確定され、又は、
Nは前記基地局に配置されることを特徴とする
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記シグナリングは、ブロードキャストチャネル、物理下りリンク制御チャネルPDCCHの共通検索スペースCSSにおける下りリンク制御情報DCI、強化型物理下りリンク制御チャネルEPDCCHのCSSにおけるDCI、PDCCHのユーザ装置UE専用検索スペースUSSにおけるDCI、EPDCCHのUSSにおけるDCI、専用物理チャネル、メディアアクセス制御MAC層のヘッダ、前記MAC層の制御エレメントCE、無線リソース制御RRC層のシステム情報と前記RRC層の専用シグナリングのうちの少なくとも一つに搬送されることを特徴とする
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、
前記端末が前記シグナリングに基づき、時間ユニットn+Nから、前記第二の搬送波サブセットでデータを伝送することは、
前記端末が前記時間ユニットn+Nから、前記第二の搬送波サブセットで前記基地局から送信された信号又は物理チャネルを検出し、前記基地局が前記第二の搬送波サブセットの搬送波を占有してデータ伝送を行うかどうかを確定すること、又は、
前記基地局が連続しているP個の時間ユニット内でデータを伝送する場合、前記時間ユニットnと前記時間ユニットn+Nは前記連続しているP個の時間ユニット内の時間ユニットであり、前記端末が前記時間ユニットn+Nから、前記第二の搬送波サブセットで下りリンク制御情報DCIを検出及び/又はデータを伝送し、前記P個の時間ユニットまで終了し、Pは正整数であること、又は、
前記基地局が連続しているP個の時間ユニット内でデータを伝送する場合、前記時間ユニットnと前記時間ユニットn+Nは前記連続しているP個の時間ユニット内の時間ユニットであり、前記端末が前記時間ユニットn+Nから、前記第二の搬送波サブセットでDCIを検出及び/又はデータを伝送し、P+E個の時間ユニットまで終了し、Eが非負整数であり、Eの値が周波数変調のために必要な時間領域空きリソースの長さに関連し、Pは正整数であること、又は、
前記端末が前記時間ユニットn+Nにおいて、前記第二の搬送波サブセットで前記基地局から送信された第二の構成情報を受信し、前記第二の構成情報が、前記基地局が前記時間ユニットn+Nから連続して伝送する時間がTであることを示すことに用いられ、Tが正数であり、前記端末が前記時間ユニットn+Nから、前記第二の搬送波サブセットでDCI検出及び/又はデータを伝送し、前記時間ユニットTまで終了することを含むことを特徴とする
請求項3又は4に記載の方法。
【請求項7】
前記端末が現在前記第一の搬送波サブセットでデータを伝送または常駐する場合、前記端末は前記第一の搬送波サブセットで基地局から送信されたシグナリングを受信することは、
前記端末が前記第一の搬送波サブセットでの第二の時点で基地局から送信されたシグナリングを受信することを含み、
前記第二の時点は前記システム情報の送信サブフレームに対応し、及び/又は
前記第二の時点はページングチャネルの送信サブフレームに対応することを特徴とする
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
端末であって、
第一の搬送波サブセットで基地局から送信されたシグナリングを受信するように構成され、ここで、前記端末が現在前記第一の搬送波サブセットでデータを伝送または常駐し、前記シグナリングが前記第一の搬送波サブセットから第二の搬送波サブセットにホッピングしてデータを伝送または常駐するように前記端末に指示することに用いられ、前記第一の搬送波サブセットと前記第二の搬送波サブセットがいずれも予め設定された搬送波セットに属し、前記予め設定された搬送波セットのうちのいずれか二つの搬送波の帯域幅が異なり、前記予め設定された搬送波セットが1セットのシステム情報を有し、前記第一の搬送波サブセットと前記第二の搬送波サブセットがそれぞれ少なくとも一つの搬送波を含み、前記第一の搬送波サブセットが前記第二の搬送波サブセットと完全に同じではない受信モジュールと、
前記受信モジュールにより受信された前記シグナリングに基づき、第一の時点から、前記第二の搬送波サブセットでデータを伝送または常駐するように構成される処理モジュールとを含み、
前記シグナリングは、前記第二の搬送波サブセットを示すための第一の構成情報を含み、前記予め設定された搬送波セットは、上位層シグナリングを介して予め設定された搬送波セットS{S0、S1、……、SM-1}を前記基地局によって予め配置し、前記予め設定された搬送波セットS{S0、S1、……、SM-1}の各搬送波は、少なくとも中心周波数ポイントを配置し、前記第一の構成情報は、

のビットで前記予め設定された搬送波セットS{S0、S1、……、SM-1}の一つの搬送波インデックスを示し、Mは2より大きいか等しく、

が切り上げを表す、前記端末。」

第4 引用文献、引用発明及び技術的事項
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の原出願日前に公開された引用文献1(米国特許出願公開第2012/0099537号明細書)には、図面とともに以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)

(1)「[0013] The illustrative embodiments provide a method, a system and an evolved nodeB (eNodeB) for enabling user equipment (UE) to switch between carrier groups in a multi-carrier network. A carrier selection and switching (CSS) utility identifies a first and a second set of pre-configured groups of carrier frequencies that are subsequently assigned to a particular UE. The CSS utility notifies the UE of the assigned, pre-configured groups of carrier frequencies and provides the UE with system parameters associated with the first and second pre-configured groups of carrier frequencies. The CSS utility signals the UE to initiate communication via the first preconfigured group of carriers. Based on the occurrence of pre-established conditions, the CSS utility utilizes a switch signal to indicate via physical downlink control channel (PDCCH) to the UE (a) when to begin utilizing the second group of preconfigured carrier frequencies and (b) when to make subsequent switches between carrier groups.」(段落[0013])
(当審仮訳:[0013] 例示的な実施形態は、ユーザ機器(UE)がマルチキャリアネットワーク内のキャリアグループ間で切り替えることを可能にするための方法、システム、および進化したノードB(eNodeB)を提供する。キャリア選択およびスイッチング(CSS)ユーティリティは、特定のUEに後で割り当てられるキャリア周波数の事前設定されたグループの第1および第2のセットを識別する。CSSユーティリティは、割り当てられた事前設定されたキャリア周波数のグループをUEに通知し、UEに第1および第2の事前設定されたキャリア周波数のグループに関連付けられたシステムパラメータを提供する。CSSユーティリティは、最初に事前設定されたキャリアのグループを介して通信を開始するようにUEに信号を送る。事前に確立された条件の発生に基づいて、CSSユーティリティはスイッチ信号を利用して、物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)を介してUEに(a)事前設定されたキャリア周波数の2番目のグループの利用を開始するタイミングと(b)キャリアグループ間で後続の切り替えを行うタイミングを指示する。)

(2)「[0025] With reference now to FIG. 3, a message flow sequence between an eNodeB and a UE in a multicarrier network is illustrated, according to one embodiment. Multicarrier network 300 includes eNB 130 and UE 120 that collectively provide a sequence of message signals to enable UE 120 to communicate via multiple carrier groups. In multicarrier network 300, CSS utility 132 signals the assignment of resources to UE 120 by transmitting (initial) information/message signal 302 to UE 120. In particular, CSS utility 132 transmits information signal 302 to indicate the assignment of predetermined groups of carriers to UE 120.
[0026] In one embodiment, CSS utility 132 dynamically identifies (e.g., based on transmission conditions) groups of carriers that are utilized for downlink transmission from eNB 130 to UE 120. CSS utility 132 pre-establishes these groups of carriers and notifies the UE of these assigned carriers by sending information via message signal 302 about the preconfigured groups of carriers, which information indicates the particular carrier groups that UE 120 may utilize. CSS utility 132 also indicates the carrier group that UE 120 is allowed to utilize for an initial communication period. Carrier group F1 and carrier group F2 are predetermined groups of carrier frequencies to which UE 120 is assigned via message signal 302. One or more frequencies may exist within carrier group F1 and carrier group F2. For example carrier group F1 may include {f1, f2}, where f is a frequency within the group of carrier frequencies. Carrier group F2 may provide different and/or overlapping frequencies than carrier F1, for example, F2={f2, f3, f4}. Carrier frequency f2 is common among these two carrier groups, F1 and F2. In one embodiment, CSS utility 132 may connect to one preconfigured carrier group to monitor/listen to a single carrier or carrier group to enable efficient processing and to save battery life.
[0027] With message signal 304, CSS utility 132 provides system parameters for the first carrier group “F1”. In another embodiment, the signal providing information about the preconfigured group of carriers may also provide the system parameters of one or more of the predetermined groups of carriers (carrier group F1 and carrier group F2). The system parameters of the predetermined group of carriers may include, but are not limited to specifications to enable synchronization in the time and frequency domains at a wireless device receiver.
[0028] CSS utility 132 detects that communication via the first carrier group “F1” is initiated via procedure 306. As part of procedure 306, CSS utility 132 may (a) utilize a first message signal to provide confirmation that UE 120 is connected on F1 and (b) await detection of the transfer of data by UE 120 via F1. CSS utility 132 provides via message signal 308, system parameters for the second carrier group “F2”. CSS utility 132/eNodeB 130 triggers a switch to the second carrier group by sending switch message 310 to UE 120 in the form of a PDCCH order or higher layer messaging. A switch message is transmitted to UE 120 to initiate switching of a first carrier group to a second carrier group, from among the predetermined group of carriers (i.e. carrier group F1 and carrier group F2). The PDCCH order that is transmitted depends on the identification of the carrier group that is currently active. For example, if carrier group F1 is the current/active carrier group, then a switch signal is transmitted to UE 120 to initiate the switch and to indicate the destination carrier group. Responsive to transmitting the switch message from eNB 130 via the respective PDCCH to UE 120, an acknowledgment is received by eNB 130 from UE 120. The acknowledgment verifies that a switch by UE 120 from the first carrier (e.g., carrier group F1) to the second carrier group (e.g., carrier group F2) is complete.
[0029] In another embodiment, eNB 130 dynamically determines when to initiate a switch from the first carrier to the second carrier. In one embodiment, the switch message utilizes a particular downlink control information (DCI) format. The switch message provides a preconfigured pattern that conveys to UE 120 that the transmitted signal is a message to initiate switching to a new carrier. When there is more than one carrier group available, the message to switch specifies the target carrier group, for example, via the number of bits in a segment of the message.
・・・(中略)・・・
[0030] Following completion of the switch of carriers/carrier groups, CSS utility 132 detects via procedure 312 that communication via the second carrier group “F2” is initiated. At a subsequent interval, UE 120 sends message 314 to eNodeB 130 to request a switch back to communication via the first carrier group “F1”. In response to receipt of the request for a switch from UE 120, CSS utility 132 transmits switch message 316 to enable the switch to communication via “F1”. Following the switch back to carrier group F1 triggered by the request from UE 120, CSS utility 132 detects via procedure 318 that communication via the first carrier group “F1” is initiated.」(段落[0025]ないし[0030])
(当審仮訳:[0025] 図3を参照すると、一実施形態による、マルチキャリアネットワークにおけるeNodeBとUEとの間のメッセージフローシーケンスが示されている。マルチキャリアネットワーク300は、UE120が複数のキャリアグループを介して通信することを可能にするためにメッセージ信号のシーケンスを集合的に提供するeNB130及びUE120を含む。マルチキャリアネットワーク300において、CSSユーティリティ132は、(初期)情報/メッセージ信号302をUE120に送信することによって、UE120へのリソースの割り当てを信号で伝える。
[0026] 一実施形態では、CSSユーティリティ132は、eNB130からUE120へのダウンリンク送信に利用されるキャリアのグループを動的に(例えば、送信条件に基づいて)識別する。CSSユーティリティ132は、これらのキャリアのグループを事前に確立し、これらの割り当てられたキャリアをUEに通知する。それは事前設定されたキャリアのグループについての情報を、メッセージ信号302を介して送信することによるものであり、この情報は、UE120が利用することができるその特定のキャリアグループを示す。CSSユーティリティ132はまた、UE120が初期通信期間に利用することを許可されるキャリアグループを示す。キャリアグループF1及びキャリアグループF2は、UE120がメッセージ信号302を介して割り当てられるキャリア周波数の所定のグループである。1つまたは複数の周波数が、キャリアグループF1及びキャリアグループF2内に存在し得る。例えば、キャリアグループF1には{f1、f2}が含まれてよく、ここで、‘f’はキャリア周波数のグループ内の周波数である。キャリアグループF2は、キャリアF1とは異なる、及び/又は重複する周波数を提供する場合があり、例えば、F2={f2、f3、f4}である。キャリア周波数f2は、これら2つのキャリアグループF1とF2に共通である。一実施形態では、CSSユーティリティ132は、1つの事前設定されたキャリアグループに接続して、単一のキャリアまたはキャリアグループを監視/リッスンして、効率的な処理を可能にし、バッテリ寿命を節約することができる。
[0027] メッセージ信号304を用いて、CSSユーティリティ132は、第1のキャリアグループ“F1”のシステムパラメータを提供する。別の実施形態では、事前設定されたキャリアのグループに関する情報を提供する信号はまた、所定のキャリアのグループ(キャリアグループF1及びキャリアグループF2)のうちの1つまたは複数のシステムパラメータを提供し得る。キャリアの所定のグループのシステムパラメータは、無線デバイス受信機で時間及び周波数ドメインでの同期を可能にするための仕様を含み得るが、これらに限定されない。
[0028] CSSユーティリティ132は、第1のキャリアグループ“F1”を介した通信が手順306を介して開始されることを検出する。手順306の一部として、CSSユーティリティ132は、(a)第1のメッセージ信号を利用して、UE120がF1に接続されていることの確認を提供し、(b)F1を介したUE120によるデータ転送の検出を待つ。CSSユーティリティ132は、メッセージ信号308を介して、第2のキャリアグループ“F2”のシステムパラメータを提供する。CSSユーティリティ132/eNodeB130は、スイッチメッセージ310をPDCCHオーダーまたは上位層メッセージングの形式でUE120に送信することによって、第2のキャリアグループへのスイッチをトリガーする。スイッチメッセージがUE120に送信されて、所定のキャリアのグループ(すなわち、キャリアグループF1及びキャリアグループF2)の中から、第1のキャリアグループの第2のキャリアグループへの切り替えを開始する。送信されるPDCCHオーダーは、現在アクティブなキャリアグループのIDに依存する。例えば、キャリアグループF1が現在の/アクティブなキャリアグループである場合、スイッチ信号がUE120に送信されて、スイッチを開始し、宛先キャリアグループを示す。eNB130からそれぞれのPDCCHを介してUE120にスイッチメッセージを送信することに応答して、確認応答がeNB130によってUE120から受信される。確認応答は、UE120による第1のキャリア(例えば、キャリアグループF1)から第2のキャリアグループ(例えば、キャリアグループF2)への切り替えが完了したことを検証する。
[0029] 別の実施形態では、eNB130は、第1のキャリアから第2のキャリアへの切り替えをいつ開始するかを動的に決定する。一実施形態では、スイッチメッセージは、特定のダウンリンク制御情報(DCI)フォーマットを利用する。スイッチメッセージは、送信された信号が新しいキャリアへの切り替えを開始するためのメッセージであることをUE120に伝える事前設定されたパターンを提供する。使用可能なキャリアグループが複数ある場合、スイッチメッセージは、例えばメッセージのセグメントのビット数を介して、ターゲットキャリアグループを指定する。
・・・(中略)・・・
[0030] キャリア/キャリアグループの切り替えの完了に続いて、CSSユーティリティ132は、手順312を介して、第2のキャリアグループ“F2”を介した通信が開始されたことを検出する。その後の間隔で、UE120は、メッセージ314をeNodeB130に送信して、第1のキャリアグループ“F1”を介した通信へのスイッチバックを要求する。UE120からのスイッチの要求の受信に応答して、CSSユーティリティ132は、スイッチメッセージ316を送信して、“F1”を介した通信へのスイッチを可能にする。UE120からの要求によってトリガーされたキャリアグループF1へのスイッチバックに続いて、CSSユーティリティ132は、手順318を介して、第1のキャリアグループ“F1”を介した通信が開始されたことを検出する。)

(3)「[0032] FIG. 4 describes the process by which eNB 130 signals the UE 120 to switch to a predetermined carrier. The process of FIG. 4 begins at initiator block 402 and proceeds to block 404, at which CSS utility 132 transmits an information signal to UE 120. The signal provides information about the assigned, pre-determined carrier groups. At block 406, CSS utility 132 transmits a first complete set of system parameters corresponding to one of the predetermined carrier groups to UE 120.
[0033] At block 408, CSS utility 132 transmits to UE 120 a request for UE 120 to begin initial communication (i.e., communication during an initial/first communication period) via the particular/first preconfigured carrier group for which system parameters are provided. CSS utility 132 detects that communication via the first carrier is initiated, as shown at block 410. At block 412, CSS utility 132 transmits a second set of system parameters corresponding to a second predetermined carrier group to UE 120. At block 414, CSS utility 132 transmits to UE 120 a request for UE 120 to switch to communication via the second carrier group for which the second set of system parameters have been provided. For example, CSS utility 132 may transmits a “switch=true” message to the UE. In one embodiment, CSS utility 132 includes within the request a preconfigured pattern to indicate that this particular request message is a switching message (e.g., as opposed to an actual downlink data grant). CSS utility 132 provides in the switch request message one or more of: (a) indication for UE to switch into a preconfigured group; and (b) a bitmap to identify selected destination group of carriers. In another embodiment, CSS utility 132 is able to provide UE 120 with the ability to switch between carrier frequency groups “F1” and “F2” which are associated respectively with a first communication service via a first standard (e.g., LTE) and a second communication service via a second standard (e.g., WIFI). A decision is made, at decision block 416, whether the UE has provided acknowledgment (ACK) that the switch has taken place. When acknowledgement is not received from UE, the process returns to block 414. When acknowledgment is received from the UE, the process continues to block 418. At block 418, CSS utility 132 receives verification that UE is transferring data, with respect to the carrier switch. The process ends at block 420.」(段落[0032]及び[0033])
(当審仮訳:[0032] 図4は、eNB130がUE120に信号を送り、所定のキャリアに切り替えるプロセスを説明している。図1のプロセスは、 図4は、開始ブロック402で始まり、ブロック404に進み、そこで、CSSユーティリティ132は、情報信号をUE120に送信する。信号は、割り当てられ、事前に決定されたキャリアグループに関する情報を提供する。ブロック406で、CSSユーティリティ132は、所定のキャリアグループの1つに対応するシステムパラメータの第1の完全なセットをUE120に送信する。
[0033] ブロック408で、CSSユーティリティ132は、システムパラメータが提供される特定の/第1の事前設定されたキャリアグループを介して、UE120が初期通信(すなわち、初期/第1の通信期間中の通信)を開始するための要求をUE120に送信する。CSSユーティリティ132は、ブロック410に示すように、第1のキャリアを介した通信が開始されたことを検出する。ブロック412で、CSSユーティリティ132は、第2の所定のキャリアグループに対応するシステムパラメータの第2のセットをUE120に送信する。ブロック414で、CSSユーティリティ132は、UE120がシステムパラメータの第2のセットが提供されている第2のキャリアグループを介する通信に切り替えるための要求をUE120に送信する。例えば、CSSユーティリティ132は、“switch=true”メッセージをUEに送信できる。一実施形態では、CSSユーティリティ132は、この特定の要求メッセージが(例えば、実際のダウンリンクデータグラントではなく)スイッチングメッセージであることを示すために、要求内に事前構成されたパターンを含む。CSSユーティリティ132は、スイッチ要求メッセージにおいて、以下のうちの1つまたは複数を提供する。(a)UEが事前設定されたグループに切り替えるための指示。(b)選択されたキャリアの宛先グループを識別するためのビットマップ。別の実施形態では、CSSユーティリティ132は、UE120に、第1の標準(例えば、LTE)を介した第1の通信サービスと、2番目の標準(例:WIFI)を介した第2の通信サービスとにそれぞれ関連付けられるキャリア周波数グループF1とF2との間を切り替える能力を提供することができる。決定ブロック416で、UEが切り替えが行われたことの確認応答(ACK)を提供したかどうかの決定がなされる。肯定応答がUEから受信されない場合、プロセスはブロック414に戻る。肯定応答がUEから受信されると、プロセスはブロック418に続く。ブロック418で、CSSユーティリティ132は、UEがキャリアスイッチに関してデータを転送しているという確認を受信する。プロセスはブロック420で終了する。)

(4)Figure.3(図3)として以下の図が記載されている。



(当審仮訳:
302 プリセット周波数グループF1={f1,f2}及びF2={f2,f3,f4}
304 F1システムパラメータ
306 UEはF1に接続される。UEはデータ伝送を開始する。
308 F2システムパラメータ
310 Switch=TRUE
312 UEはF2に切り替える。UEはデータ伝送を継続する。
314 スイッチ(バック)の要求
316 Switch=TRUE
318 UEはF1にスイッチバックする。UEはデータ伝送を開始する。)

(5)Figure.4(図4)として以下の図が記載されている。



(当審仮訳:
402 開始
404 事前設定されたキャリアのグループについての情報シグナルを送信する。
406 事前設定されたキャリアのグループの1つのシステムパラメータを送信する。
408 特定のキャリアグループを介した初期通信を開始する要求を送信する。
410 特定のキャリアグループを介した通信を検出する。
412 事前設定された第2のキャリアのグループのシステムパラメータを送信する。
414 第1のキャリアから第2のキャリアへのキャリアスイッチを開始するスイッチメッセージを送信する。
416 UEからACKを受信したか?
418 第2のキャリアグループを介して通信が継続する。
420 終了)

引用文献1の上記記載、及び移動体通信分野における技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

ア 上記「(1)」の「例示的な実施形態は、ユーザ機器(UE)がマルチキャリアネットワーク内のキャリアグループ間で切り替えることを可能にするための方法、システム、および進化したノードB(eNodeB)を提供する。」との記載によれば、マルチキャリアネットワークにおいてUEがキャリアのグループを切り替える方法が記載されているといえる。

イ 上記「(2)」の「CSSユーティリティ132/eNodeB130は、スイッチメッセージ310をPDCCHオーダーまたは上位層メッセージングの形式でUE120に送信する」との記載及びeNodeBはeNBであることは明らかであることによれば、UEは、eNBから送信されたスイッチメッセージを受信するといえる。

ウ 上記「(2)」の「CSSユーティリティ132は、第1のキャリアグループ“F1”を介した通信が手順306を介して開始されることを検出する。
・・・(中略)・・・
CSSユーティリティ132/eNodeB130は、スイッチメッセージ310をPDCCHオーダーまたは上位層メッセージングの形式でUE120に送信することによって、第2のキャリアグループへのスイッチをトリガーする。」との記載、及び「(4)」の「306 UEはF1に接続される。UEはデータ伝送を開始する。」及び「310 Switch=TRUE」との記載によれば、UEは、スイッチメッセージを受信する前に、第1のキャリアグループF1を介してデータ伝送を行っていることが明らかである。したがって、引用文献1には、UEは、スイッチメッセージを受信する前に、第1のキャリアグループF1を介してデータ伝送を行っていることが記載されているといえる。

エ 上記「(2)」の「CSSユーティリティ132/eNodeB130は、スイッチメッセージ310をPDCCHオーダーまたは上位層メッセージングの形式でUE120に送信することによって、第2のキャリアグループへのスイッチをトリガーする。・・・(中略)・・・キャリア/キャリアグループの切り替えの完了に続いて、CSSユーティリティ132は、手順312を介して、第2のキャリアグループ“F2”を介した通信が開始されたことを検出する。」との記載、及び上記「(4)」の「310 Switch=TRUE」及び「312 UEはF2に切り替える。UEはデータ伝送を継続する。」との記載によれば、スイッチメッセージは、第2のキャリアグループF2へのスイッチをトリガーするものであり、キャリア/キャリアグループの切り替えの完了に続いて、UEは、第2のキャリアグループF2を介してデータ伝送を継続するといえる。

オ 上記「(2)」の「キャリアグループF1及びキャリアグループF2は、UE120がメッセージ信号302を介して割り当てられるキャリア周波数の所定のグループである。1つまたは複数の周波数が、キャリアグループF1及びキャリアグループF2内に存在し得る。例えば、キャリアグループF1には{f1、f2}が含まれてよく、ここで、‘f’はキャリア周波数のグループ内の周波数である。キャリアグループF2は、キャリアF1とは異なる、及び/又は重複する周波数を提供する場合があり、例えば、F2={f2、f3、f4}である。キャリア周波数f2は、これら2つのキャリアグループF1とF2に共通である。」との記載において、周波数がキャリア周波数を意味することと、キャリアF1がキャリアグループF1を意味することとは明らかである。そうすると、この記載によれば、キャリアグループF1及びキャリアグループF2は、UEがメッセージ信号302を介して割り当てられるキャリア周波数の所定のグループであり、1つまたは複数のキャリア周波数が、キャリアグループF1及びキャリアグループF2内に存在しており、キャリアグループF2は、キャリアグループF1とは異なる周波数を提供するものであるといえる。

カ 上記「(2)」の「CSSユーティリティ132/eNodeB130は、スイッチメッセージ310をPDCCHオーダーまたは上位層メッセージングの形式でUE120に送信することによって、第2のキャリアグループへのスイッチをトリガーする。
・・・(中略)・・・
eNB130は、第1のキャリアから第2のキャリアへの切り替えをいつ開始するかを動的に決定する。
・・・(中略)・・・
キャリア/キャリアグループの切り替えの完了に続いて、CSSユーティリティ132は、手順312を介して、第2のキャリアグループ“F2”を介した通信が開始されたことを検出する。」との記載、及び上記「(4)」の「310 Switch=TRUE」及び「312 UEはF2に切り替える。UEはデータ伝送を継続する。」との記載において、第1のキャリア及び第2のキャリアが、第1のキャリアグループF1及び第2のキャリアグループF2を意味することが明らかであることを踏まえると、この記載によれば、eNBは第1のキャリアグループF1から第2のキャリアグループF2への切り替えをいつ開始するかを動的に決定し、キャリア/キャリアグループの切り替えの完了に続いて、UEは、第2のキャリアグループF2を介してデータ伝送を継続するといえる。

キ 上記「(2)」の「CSSユーティリティ132/eNodeB130は、スイッチメッセージ310をPDCCHオーダーまたは上位層メッセージングの形式でUE120に送信することによって、第2のキャリアグループへのスイッチをトリガーする。」との記載、上記「(4)」の「310 Switch=TRUE」及び「312 UEはF2に切り替える。UEはデータ伝送を継続する。」との記載、及び上記「(3)」の「ブロック414で、CSSユーティリティ132は、UE120がシステムパラメータの第2のセットが提供されている第2のキャリアグループを介する通信に切り替えるための要求をUE120に送信する。例えば、CSSユーティリティ132は、“switch=true”メッセージをUEに送信できる。一実施形態では、CSSユーティリティ132は、この特定の要求メッセージが(例えば、実際のダウンリンクデータグラントではなく)スイッチングメッセージであることを示すために、要求内に事前構成されたパターンを含む。CSSユーティリティ132は、スイッチ要求メッセージにおいて、以下のうちの1つまたは複数を提供する。・・・(中略)・・・(b)選択されたキャリアの宛先グループを識別するためのビットマップ。」との記載によれば、スイッチ要求メッセージがスイッチメッセージのことであることは明らかである。そして、これらの記載から、スイッチメッセージにおいて、選択されたキャリアの宛先グループを識別するためのビットマップが提供されるといえる。

したがって、上記「ア」ないし「キ」を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると認められる。

「マルチキャリアネットワークにおいてUEがキャリアのグループを切り替える方法であって、
UEは、eNBから送信されたスイッチメッセージを受信し、UEは、スイッチメッセージを受信する前に、第1のキャリアグループF1を介してデータ伝送を行っており、スイッチメッセージは、第2のキャリアグループF2へのスイッチをトリガーするものであり、キャリア/キャリアグループの切り替えの完了に続いて、UEは、第2のキャリアグループF2を介してデータ伝送を継続し、キャリアグループF1及びキャリアグループF2は、UEがメッセージ信号302を介して割り当てられるキャリア周波数の所定のグループであり、1つまたは複数のキャリア周波数が、キャリアグループF1及びキャリアグループF2内に存在しており、キャリアグループF2は、キャリアグループF1とは異なる周波数を提供するものであり、
eNBは第1のキャリアグループF1から第2のキャリアグループF2への切り替えをいつ開始するかを動的に決定し、キャリア/キャリアグループの切り替えの完了に続いて、UEは、第2のキャリアグループF2を介してデータ伝送を継続し、
スイッチメッセージにおいて、選択されたキャリアの宛先グループを識別するためのビットマップが提供される、
方法。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の原出願日前に公開された引用文献2(米国特許出願公開第2011/0199951号明細書)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付した。)

(1)「[0005] Wireless communication systems are developing to satisfy user service needs using multiple-component carrier (hereinafter referred to as a CC).」(段落[0005])
(当審仮訳:[0005] 無線通信システムは、複数のコンポーネントキャリア(以下、CCと呼ぶ)を使用して、ユーザサービスのニーズを満たすために開発されている。)

(2)「[0152] In operation 605, the eNB may permit the UE to use a plurality of CCs according to the hardware performance of the UE and available frequency resources of the eNB and may define a plurality of the CCs as a CC set.
・・・(中略)・・・
[0159] Meanwhile, the CC set information may include the ID of the corresponding CC, index information on each CC, and offset information to indicate other CCs on the basis of at least one CC, which are included in the CC set. The CC set information may also include set ID information to distinguish CC sets, each including at least one CC. According to an exemplary embodiment, in a method for transmitting and receiving the CC set information, the eNB may transmit an RRC reconfiguration message, including the CC set information, to the UE. However, aspects are not limited thereto such that the eNB may transmit the RRC reconfiguration message, including the CC set information, to the UE using other messages.
[0160] In operation 610, the eNB transmits system information (SI) on the CCs of the CC set to the UE on the basis of the CC set information. The system information may include information on the center frequency of each CC, information on the entire frequency band of each CC, information on the size of an available frequency, information on the frame configuration of each CC, and a random access procedure, and the like. The system information may be sent through a broadcast channel.」(段落[0152]ないし[0160])
(当審仮訳)[0152] 動作605において、eNBは、UEのハードウェア性能およびeNBの利用可能な周波数リソースに従って、UEが複数のCCを使用することを可能にし得、複数のCCをCCセットとして定義し得る。
・・・(中略)・・・
[0159] 一方、CCセット情報は、対応するCCのID、各CCのインデックス情報、およびCCセットに含まれる少なくとも1つのCCに基づいて他のCCを示すためのオフセット情報を含み得る。CCセット情報はまた、それぞれが少なくとも1つのCCを含むCCセットを区別するためのセットID情報を含み得る。例示的な実施形態によれば、CCセット情報を送受信するための方法において、eNBは、CCセット情報を含むRRC再構成メッセージをUEに送信することができる。しかしながら、eNBが他のメッセージを使用して、CCセット情報を含むRRC再構成メッセージをUEに送信することができるように、態様はそれに限定されない。
[0160] 動作610において、eNBは、CCセット情報に基づいて、CCセットのCC上のシステム情報(SI)をUEに送信する。システム情報は、各CCの中心周波数に関する情報、各CCの全周波数帯域に関する情報、利用可能な周波数のサイズに関する情報、各CCのフレーム構成に関する情報、およびランダムアクセス手順に関する情報などを含み得る。システム情報は、ブロードキャストチャネルを介して送信される場合がある。)

上記記載によれば、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「eNBは、コンポーネントキャリア(CC)セット情報に基づいて、CCセットのCC上のシステム情報(SI)をUEに送信する。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の原出願日前に公開された引用文献3(米国特許出願公開第2015/0334770号明細書)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付した。)

「[0035] As shown in FIG. 2, target carrier transition time (Tt) 230 may mean a time difference between transition indication timing 240 and transition completion timing 250. Here, the target carrier transition time (Tt) 230 may be called as valid time, transition gap, etc. The target carrier transition time (Tt) 230 may be measured from receiving timing of transition indication 240 and transition completion timing 250 at the UE. If the UE receive target carrier information indicating target carrier and target carrier transition time information including time required for transiting to target carrier from the eNB, the UE may move from current carrier 210 to the indicated target carrier 220 based on received the target carrier transition time information and target carrier information.]
[0036] The target carrier transition time (Tt) 230 is defined such as OFDM symbol positions/intervals/numbers, subframe positions/intervals/numbers, or radio frame positions/intervals/numbers. In case of single carrier transition, the position or interval information may be entity. If multiple carrier transitions are defined, the positions or interval information may be multiple entity which representing the target carrier transition time from one carrier to the other carrier.」(段落[0035]及び[0036])
(当審仮訳:[0035] 図2に示されるように、ターゲットキャリア遷移時間(Tt)230は、遷移指示タイミング240と遷移完了タイミング250との間の時間差を意味し得る。ここで、ターゲットキャリア遷移時間(Tt)230は、有効時間、遷移ギャップなどと呼ばれることがある。ターゲットキャリア遷移時間(Tt)230は、UEでの遷移指示の受信タイミング240及び遷移完了タイミング250から測定することができる。UEが、eNBからターゲットキャリアを示すターゲットキャリア情報とターゲットキャリアに遷移するために必要な時間を含むターゲットキャリア遷移時間情報を受信する場合、UEは、受信したターゲットキャリア遷移時間情報とターゲットキャリア情報に基づいて、現在のキャリア210から指示されたターゲットキャリア220に移動することができる。
[0036] ターゲットキャリア遷移時間(Tt)230は、OFDMシンボル位置/間隔/番号、サブフレーム位置/間隔/番号、または無線フレーム位置/間隔/番号などとして定義される。単一キャリア遷移の場合、位置又は間隔情報はエンティティである可能性がある。複数のキャリア遷移が定義されている場合、位置または間隔情報は、あるキャリアから別のキャリアへのターゲットキャリア遷移時間を表す複数のエンティティである可能性がある。)

上記記載によれば、引用文献3には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「ターゲットキャリア遷移時間(Tt)は、遷移指示タイミングと遷移完了タイミングとの間の時間差を意味し得る。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の原出願日前に公開された引用文献4(国際公開第2015/126028号)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付した。)



」(段落[155])
(当審仮訳:方法ii)は、干渉誘発対象端末別に使用する信号の直交リソースの複数(N個)の候補リソースインデックスをRRCパラメータと指定してユーザ特定シグナリング手段であらかじめ伝達し、これに対してユーザ特定動的制御チャネルでNビットのビットマップ、又はlog2(N)の切り上げた整数又はlog2(N+1)の切り上げた整数のビットサイズで実際に適用する信号直交リソースを動的に設定する。このような方法ii)は、前記方法i)が、干渉誘発端末の数が多い場合、機器間の干渉測定信号の直交送信リソースが不足し得る点を補完するための方案である。)

上記記載によれば、引用文献4には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「干渉誘発対象端末別に使用する信号の直交リソースの複数(N個)の候補リソースインデックスをRRCパラメータと指定してユーザ特定シグナリング手段であらかじめ伝達し、これに対してユーザ特定動的制御チャネルでNビットのビットマップ、又はlog2(N)の切り上げた整数又はlog2(N+1)の切り上げた整数のビットサイズで実際に適用する信号直交リソースを動的に設定する。」

第5 対比及び判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア マルチキャリアネットワークにおけるキャリアを搬送波と言い換え得ることは技術常識である。そして、引用発明は「マルチキャリアネットワークにおいてUEがキャリアのグループを切り替える方法」であり「1つまたは複数のキャリア周波数が、キャリアグループF1及びキャリアグループF2内に存在しており、キャリアグループF2は、キャリアグループF1とは異なる周波数を提供するもの」であるから、キャリアグループが切り替わることによって、キャリア周波数が切り替わることは明らかである。そして、移動体通信分野において周波数を切り替えることをホッピングと言い得ることが技術常識であることを踏まえると、引用発明の「マルチキャリアネットワークにおいてUEがキャリアのグループを切り替える方法」は、本願発明1の「搬送波ホッピング方法」に含まれるといえる。

イ UEをユーザ端末と言い換え得ることは技術常識であるから、引用発明の「UE」は本願発明1の「端末」に含まれる。また、eNBが基地局を意味することは技術常識であり、引用発明の「eNB」は本願発明1の「基地局」に含まれる。更に、引用発明の「スイッチメッセージ」は「マルチキャリアネットワークにおいてUEがキャリアのグループを切り替える方法」において用いられるものであるから、制御情報であることは明らかである。そして、移動体通信分野において制御情報をシグナリングと言い得ることは技術常識である。したがって、引用発明の「スイッチメッセージ」はシグナリングといえる。
してみれば、本願発明1の「端末が第一の搬送波サブセットで基地局から送信されたシグナリングを受信」することと、引用発明の「UEは、eNBから送信されたスイッチメッセージを受信」することとは、端末が基地局から送信されたシグナリングを受信する点で共通する。

ウ 引用発明の「データ伝送を行って」いることは、本願発明1の「データを伝送または常駐」することに含まれる。また、ある時点でデータ伝送に使用されるキャリアをその時点の現在のキャリアと言い得ることは明らかである。そして、引用発明の「第1のキャリアグループF1」及び「第1のキャリアグループF2」は、「1つまたは複数のキャリア周波数が、キャリアグループF1及びキャリアグループF2内に存在して」いるものであるから、キャリアグループを搬送波のセットと言い換えられ、本願発明1の「搬送波サブセット」と、引用発明の「キャリアグループ」とは、搬送波セットである点で共通する。そして、本願発明1の「第一の搬送波サブセット」と引用発明の「キャリアグループF1」は、第一の搬送波セットの点で共通し、本願発明1の「第二の搬送波サブセット」と引用発明の「キャリアグループF2」は、第二の搬送波セットの点で共通する。
したがって、本願発明1において「前記端末が現在前記第一の搬送波サブセットでデータを伝送または常駐」することと、引用発明において「UEは、スイッチメッセージを受信する前に、第1のキャリアグループF1を介してデータ伝送を行って」いることとは、端末が現在第一の搬送波セットでデータを伝送または常駐する点で共通する。

エ 引用発明において「第2のキャリアグループF2へのスイッチをトリガーする」ことは、スイッチが切り替えを意味することが明らかであることと、上記「ア」における検討事項とを踏まえると、第2のキャリアグループF2へのホッピングをトリガーすることと言い換えることができる。そして、トリガーするとは、所定の動作を開始する契機を与えること、換言すれば所定の動作を開始せよとの指示を与えることを意味することは明らかである。そうすると、本願発明1の「前記シグナリングが前記第一の搬送波サブセットから第二の搬送波サブセットにホッピングしてデータを伝送または常駐するように前記端末に指示することに用いられ」ることと、引用発明の「スイッチメッセージは、第2のキャリアグループF2へのスイッチをトリガーするものであり、キャリア/キャリアグループの切り替えの完了に続いて、UEは、第2のキャリアグループF2を介してデータ伝送を継続」することとは、シグナリングが第一の搬送波セットから第二の搬送波セットにホッピングしてデータを伝送または常駐するように端末に指示することに用いられる点で共通する。

オ 引用発明において「キャリアグループF2は、キャリアグループF1とは異なる周波数を提供するもの」であるから、キャリアグループF1とキャリアグループF2が完全に同じではないことは明らかである。してみると、本願発明1の「前記第一の搬送波サブセットと前記第二の搬送波サブセットがそれぞれ少なくとも一つの搬送波を含み、前記第一の搬送波サブセットが前記第二の搬送波サブセットと完全に同じではないこと」と、引用発明の「1つまたは複数のキャリア周波数が、キャリアグループF1及びキャリアグループF2内に存在しており、キャリアグループF2は、キャリアグループF1とは異なる周波数を提供するもの」であることとは、第一の搬送波セットと第二の搬送波セットがそれぞれ少なくとも一つの搬送波を含み、第一の搬送波セットが第二の搬送波セットと完全に同じではない点で共通する。

カ 引用発明において、「eNBは第1のキャリアグループF1から第2のキャリアグループF2への切り替えをいつ開始するかを動的に決定し、キャリア/キャリアグループの切り替えの完了に続いて、UEは、第2のキャリアグループF2を介してデータ伝送を継続」するものであるから、「キャリア/キャリアグループの切り替えの完了」の時点から、「UEは、第2のキャリアグループF2を介してデータ伝送を継続」することは明らかである。そして、当該時点は本願発明1の「第一の時点」に相当する。
してみれば、本願発明1の「前記端末が前記シグナリングに基づき、第一の時点から、前記第二の搬送波サブセットでデータを伝送または常駐すること」と、引用発明の「eNBは第1のキャリアグループF1から第2のキャリアグループF2への切り替えをいつ開始するかを動的に決定し、キャリア/キャリアグループの切り替えの完了に続いて、UEは、第2のキャリアグループF2を介してデータ伝送を継続」することとは、端末がシグナリングに基づき、第一の時点から、第二の搬送波セットでデータを伝送または常駐することである点で共通する。

キ 引用発明の「選択されたキャリアの宛先グループを識別するためのビットマップ」は、選択されたキャリアの宛先グループ、すなわち第2のキャリアグループF2を識別するためのビットマップであって、第2のキャリアグループF2を示すためのビットマップと言い換えることができる。更に、ビットマップは第2のキャリアグループF2の構成を示す情報といえる。そうすると、本願発明1の「前記第二の搬送波サブセットを示すための第一の構成情報」と、引用発明の「選択されたキャリアの宛先グループを識別するためのビットマップ」とは、第二の搬送波セットを示すための構成情報である点で共通する。
よって、本願発明1の「前記シグナリングは、前記第二の搬送波サブセットを示すための第一の構成情報を含」むことと、引用発明の「スイッチメッセージにおいて、選択されたキャリアの宛先グループを識別するためのビットマップが提供される」こととは、シグナリングは、第二の搬送波セットを示すための構成情報を含む点で共通する。

したがって、上記「ア」ないし「キ」を総合すれば、本願発明1と引用発明は、以下の点で一致し、また相違する。

<一致点>
「搬送波ホッピング方法であって、
端末が基地局から送信されたシグナリングを受信し、ここで、前記端末が現在第一の搬送波セットでデータを伝送または常駐し、前記シグナリングが前記第一の搬送波セットから第二の搬送波セットにホッピングしてデータを伝送または常駐するように端末に指示することに用いられ、前記第一の搬送波セットと前記第二の搬送波セットがそれぞれ少なくとも一つの搬送波を含み、前記第一の搬送波セットが前記第二の搬送波セットと完全に同じではないことと、
前記端末が前記シグナリングに基づき、第一の時点から、前記第二の搬送波セットでデータを伝送または常駐することとを含み、
前記シグナリングは、前記第二の搬送波セットを示すための構成情報を含む、前記搬送波ホッピング方法。」

<相違点>
本願発明1においては、第一の搬送波セットが「第一の搬送波サブセット」であり、第二の搬送波セットが「第二の搬送波サブセット」であって、端末が「第一の搬送波サブセットで」基地局から送信されたシグナリングを受信し、「前記第一の搬送波サブセットと前記第二の搬送波サブセットがいずれも予め設定された搬送波セットに属し、前記予め設定された搬送波セットのうちのいずれか二つの搬送波の帯域幅が異なり、前記予め設定された搬送波セットが1セットのシステム情報を有し」、「前記予め設定された搬送波セットは、上位層シグナリングを介して予め設定された搬送波セットS{S0、S1、……、SM-1}を前記基地局によって予め配置し、前記予め設定された搬送波セットS{S0、S1、……、SM-1}の各搬送波は、少なくとも中心周波数ポイントを配置」し、シグナリングが含む構成情報が、「

のビットで前記予め設定された搬送波セットS{S0、S1、……、SM-1}の一つの搬送波インデックスを示し、Mは2より大きいか等しく、

が切り上げを表す」「第一の構成情報」であるのに対して、引用発明においては当該発明特定事項について特定されていない点。


(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。第一の搬送波セットが「第一の搬送波サブセット」であり、第二の搬送波セットが「第二の搬送波サブセット」であって、端末が「第一の搬送波サブセットで」基地局から送信されたシグナリングを受信し、「前記第一の搬送波サブセットと前記第二の搬送波サブセットがいずれも予め設定された搬送波セットに属し、前記予め設定された搬送波セットのうちのいずれか二つの搬送波の帯域幅が異なり、前記予め設定された搬送波セットが1セットのシステム情報を有し」、「前記予め設定された搬送波セットは、上位層シグナリングを介して予め設定された搬送波セットS{S0、S1、……、SM-1}を前記基地局によって予め配置し、前記予め設定された搬送波セットS{S0、S1、……、SM-1}の各搬送波は、少なくとも中心周波数ポイントを配置」し、シグナリングが含む構成情報が、


のビットで前記予め設定された搬送波セットS{S0、S1、……、SM-1}の一つの搬送波インデックスを示し、Mは2より大きいか等しく、

が切り上げを表す」「第一の構成情報」であることは、引用文献1ないし引用文献4に記載も示唆もされておらず、また、移動体通信分野における周知技術であるともいえない。
したがって、引用発明において、上記相違点に係る本願発明1の上記発明特定事項を採用することは、当業者といえども、容易に想到し得たとはいえない。
よって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明並びに引用文献2ないし引用文献4に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2ないし8について
本願発明2ないし7は、本願発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明並びに引用文献2ないし引用文献4に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本願発明8は、「搬送波ホッピング方法」の発明である本願発明1に対応する「端末」の発明であって、本願発明1に対応する発明特定事項を全て備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用発明並びに引用文献2ないし引用文献4に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 原査定についての判断
令和3年7月26日にされた手続補正により、本願発明1ないし8は、いずれも、第一の搬送波セットが「第一の搬送波サブセット」であり、第二の搬送波セットが「第二の搬送波サブセット」であって、端末が「第一の搬送波サブセットで」基地局から送信されたシグナリングを受信し、「前記第一の搬送波サブセットと前記第二の搬送波サブセットがいずれも予め設定された搬送波セットに属し、前記予め設定された搬送波セットのうちのいずれか二つの搬送波の帯域幅が異なり、前記予め設定された搬送波セットが1セットのシステム情報を有し」、「前記予め設定された搬送波セットは、上位層シグナリングを介して予め設定された搬送波セットS{S0、S1、……、SM-1}を前記基地局によって予め配置し、前記予め設定された搬送波セットS{S0、S1、……、SM-1}の各搬送波は、少なくとも中心周波数ポイントを配置」し、シグナリングが含む構成情報が、


のビットで前記予め設定された搬送波セットS{S0、S1、……、SM-1}の一つの搬送波インデックスを示し、Mは2より大きいか等しく、

が切り上げを表す」「第一の構成情報」であるという発明特定事項、又は対応する発明特定事項を、少なくとも備えるものとなっている。してみれば、上記「第5」の「1」及び「2」で説示したとおり、当業者であっても、本願発明1ないし8は、引用発明並びに引用文献2ないし引用文献4に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2022-04-14 
出願番号 P2020-005100
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 圓道 浩史
森田 充功
発明の名称 搬送波ホッピング方法と端末  
代理人 中村 行孝  
代理人 出口 智也  
代理人 宮嶋 学  
代理人 吉田 昌司  
代理人 関根 毅  

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