• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A62C
管理番号 1383932
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-08-11 
確定日 2022-05-10 
事件の表示 特願2017−71941「消火設備」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月8日出願公開、特開2018−171313、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年3月31日の出願であって、令和3年2月10日付け(発送日:令和3年2月16日)で拒絶理由通知がされ、令和3年4月19日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和3年4月28日付け(発送日:令和3年5月11日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされた。これに対して、令和3年8月11日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判の請求と同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項2−3
・引用文献等1−6

<引用文献等一覧>
1.特開2003−190313号公報
2.特表平06−510318号公報
3.特開平10−118207号公報
4.特開2008−142622号公報
5.特開2002−85938号公報
6.特開2011−167635号公報

第3 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、令和3年8月11日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める。

「 【請求項1】
ゴミピットに消火装置が設けられた消火設備において、前記ゴミピット内に悪臭が発生した際、前記ゴミピット内に泡を放出し、悪臭源となるゴミを泡で覆うものであって、前記悪臭が発生した際に放出される前記泡は、泡薬剤に粘度の高い物質を添加することにより生成され、消火に使用される泡に比べ泡水溶液へ戻る還元時間の長いものである消火設備。
【請求項2】
ゴミピットに消火装置が設けられた消火設備において、
前記ゴミピット内へ泡を放出する泡発生装置と、
前記ゴミピット内に悪臭が発生した際、悪臭を検知するものであって、前記ゴミピット内に設けられた悪臭検知装置と、
前記悪臭検知装置により前記ゴミピット内の悪臭の発生が検知されたとき、前記泡発生装置から前記泡を放出し、悪臭源となるゴミを前記泡で覆うよう制御する制御部と、を備え、
前記悪臭検知装置は、前記ゴミピット内にゴミがあるだけでは感知せず、悪臭と感じられる臭いがあるときに作動するものである、
消火設備。
【請求項3】
情報を表示する操作パネルを備え、
前記操作パネルには、前記悪臭検知装置により悪臭の発生が検知されたときに悪臭発生を表示する検知情報表示部が設けられ、
前記検知情報表示部には、前記ゴミピット内で火災が検知された際、火災発生と火災番地とが表示され、
前記泡発生装置は、前記ゴミピット内で火災および悪臭の少なくとも一方が発生した際に泡を放出するものである、
請求項2に記載の消火設備。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1
本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであって、原査定の拒絶の理由に引用された特開2003−190313号公報(以下「引用文献1」という。)には、「ピット用消火装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付与したものである。以下同様。)。

(1)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、たとえば粗大ごみの資源回収工場などにおけるピットで生じる火災を消火するためのピット用消火装置に関する。」

(2)「【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、ピット内に消火用泡を供給する消火用泡供給源と、ピット内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給源とを含むことを特徴とするピット用消火装置である。
【0011】本発明に従えば、ピット内に消火用泡供給源からの消火用泡と、不活性ガス供給源からの不活性ガスを供給する。これによってピット内の粗大ごみなどの可燃物の表面を消火用泡で覆い、ピット内に不活性ガスを放出することによって、可燃物の表面火災および深部火災を容易に、しかも確実に消火することができる。
【0012】ピット内に山積みされて投入された可燃物相互間には、空気が存在する。表面火災は、消火用泡で可燃物の表面を覆うことによって、空気と遮断し、消火することができる。表面火災の火が内部に浸透すると、内部の空気、酸素を消費し、燻り火災となる。燻り火災は、消火用泡のみでは、消火することができない。」

(3)「【0018】また本発明は、作業者によって操作される入力手段と、ピットの火災を検出する火災検出器とを含み、制御手段は、火災検出器の出力に応答し、火災が検出されたとき、消火用泡供給源を動作させ、入力手段の出力に応答し、不活性ガス供給源を動作させることを特徴とする。
【0019】本発明に従えば、たとえば夜間などの人が存在しないとき、ピット内の火災が発生すると、その火災が火災検出器によって検出され、消火用泡供給源から消火用泡が放射供給される。その後、作業者が火災報知を受けて、ピット内に不活性ガス供給源から不活性ガスを放射供給させるために、入力手段を操作する。これによって操作者はピット内またはその付近に人が存在しないことを確認して入力手段を操作することができ、安全性を確保することができる。したがって夜間においても、消火用泡を用いて消火することができ、またその後、作業者の操作によって不活性ガスを供給して、消火を容易に、確実に行うことができる。
【0020】こうして施設稼動中に可燃物に点火したが、稼働終了直後に、作業者によって検出できなかった小さな火種から、稼働終了後から時間を経て燻り火災に発展した場合であっても、自動的な消火を行うことができる。たとえば夜間、自動的に泡が消火用泡供給源による警戒し、火災検出器によって火災が検出されると、自動的に消火泡を供給して泡消火起動を自動的に行い、発煙、火災を抑制する。作業者がピットの火災現場に到着した後、入力手段を操作し不活性ガス供給源によって不活性ガスをピット内に供給し、火災を消火することができる。」

(4)「【0036】
【発明の実施の形態】図1は本発明の実施の一形態の全体の構成を示す系統図であり、図2は図1に示される実施の形態の一部を切欠いて示す斜視図である。粗大ごみの資源回収工場1では、作業者が作業を行う作業面2に、ピット3が形成される。作業面2は、工場1の床であり、または地表面である。ピット3の上方に臨む開口4を覆って、建屋5が形成される。建屋5には、トラックなどの運搬作業車両6によって開口4によって粗大ごみである可燃物7が投入され、ピット3内に可燃物7が貯留される。建屋5内で開口4の上方に設けられた天井走行クレーン8に備えられた把持具9によってピット3内の可燃物7が把持され、破砕機11に投入される。
【0037】図3は、図1および図2に示されるピット3の簡略化した平面図である。建屋5内でピット3の開口4の上方には、消火用泡ノズル12が配置される。泡原液タンク13からポンプ14を経て原液が混合器15に供給され、また水タンク16からポンプ17を経て混合器15に水が供給される。こうして原液と水とが混合された液体は、管路27を経て、ノズル12に供給され、このノズル12で発生した消火用泡は、開口4からピット3内に落下して可燃物7全体の上表面に付着してその全体を覆い、また各可燃物の表面にそれぞれ付着して覆う。
【0038】ピット3は、ほぼ直方体状であり、その水平断面は、図3に明らかなように矩形である。ノズル12は、開口4の一側辺18に沿って間隔をあけて複数(たとえば3)、配置される。ノズル12、原液タンク13、ポンプ14,17、水タンク16、混合器15および管路27などは、消火用泡供給源19を構成する。
【0039】ピット3の底21付近である下部には、不活性ガスのノズル22が設けられる。不活性ガスが充填された圧力容器23からの不活性ガスは管路24から選択弁25を経て管路26からノズル22に供給される。ノズル22は、ピット3の開口4の前述の一側辺18に対向する他側辺28に沿って間隔をあけて配置される。ノズル22、圧力容器23、選択弁25、管路24,26は、不活性ガス供給源29を構成する。ピット3の一側辺18にはまた、不活性ガス検出器32の下方にさらに、1または複数(たとえば2)の不活性ガス検出器52,53が設けられてもよい。
【0040】開口4付近には、ピット3内の消火用泡を検出する消火用泡検出器33と、ピット3内の不活性ガスを検出する不活性ガス検出器32とが設けられる。建屋5でピット3の開口4の上方には、火災検出器33が設けられる。火災検出器33は、ピット3内の可燃物7の火災を検出する。火災検出器33は、可燃物7からの赤外線を検出する構成であってもよく、または煙を検出する構成であってもよく、そのほかの構成によって火災を検出するようにしてもよい。
【0041】図4は、図1〜図3に示される実施の形態における電気的構成を示すブロック図である。マイクロコンピュータなどによって実現される処理回路34には、各ピット3に個別的に対応して、図4の仮想線で示される電気回路35がそれぞれ設けられ、処理回路34はこれらの各電気回路35に共通に設けられる。各検出器31〜33の出力は処理回路34に与えられ、またピット3に個別的に対応する入力手段37が設けられる。処理回路34の働きによって、ポンプ14,17および選択弁25が動作制御される。処理回路34には、1日24時間の各時間帯を設定する時計手段38が設けられる。
【0042】図5は、図4の処理回路34の動作を説明するためのフローチャートである。図6は、図5と同様に処理回路34の動作を説明するためのフローチャートである。これらの図面を参照して、ステップa1からステップa2に移り、時計手段38によって昼間の予め定める時間帯であって、第1動作モードが実行されるべきであるかが判断される。昼間でないとき、すなわち1日の残余の時間帯であるとき、図6のステップb1に移り、夜間の時間帯であって、第2動作モードが実行されるべきであるかが判断される。このようなステップa2,b1は、時計手段38とともに、動作モード切換え手段を構成する。図5のステップa3以降は、第1動作モードの動作の実行を示す。図6のステップb2以降は、第2動作モードの実行を示す。
【0043】図7は、図1〜図6に示される実施の形態における動作を説明するためのタイミングチャートである。前述の図5のステップa3で、図7(1)に示されるように時刻t11で押釦37が操作されたとき、消火用泡供給源19のポンプ14,17がステップa4で起動され、これによってノズル12からは、図7(2)に示されるように消火用泡が放射供給される。またこれとともに、入力手段37に対応するピット3の選択弁25がステップa5で開かれて、時刻t11からは、ノズル22から図7(4)に示されるようにCO2が放射供給される。
【0044】ステップa6で、CO2検出器32によってピット3内に開口4付近までCO2が充満されて供給されたかどうかが判断される。CO2がピット3内に充満され、その結果、開口4付近でCO2が検出器32によって検出されると、図7(5)に示されるように時刻t21では、ステップa6で、CO2検出器32の出力によって、次のステップa7では、その時刻t21でピット3に対応する選択弁25が閉じられる。
【0045】ステップa8では、消火用泡検出器31がピット3の開口4付近で消火用泡を検出したかどうかを判断する。図7(3)に示されるように消火用泡検出器31がピット3の開口4付近で消火用泡を時刻t12で検出すると、次のステップa9では、ポンプ14,17を停止し、こうしてステップa10では、一連の第1動作モードの実行を終了する。
【0046】図8は、図6のステップb2以降の第2動作モードを説明するためのタイミングチャートである。ステップb2では、火災検出器33によって火災が検出されたかどうかが判断される。図8(1)に示されるように火災検出器33によって時刻t31で火災の発生が検出されると、次のステップb3では、ポンプ14,17が起動され、ノズル12からは図8(2)に示されるように消火用泡が放出供給される。作業者が、ステップb4において入力手段37を操作したかどうかが判断される。作業者が、図8(4)に示されるように時刻t41で入力手段37を操作すると、次のステップb5では、その火災が発生しているピット3に対応する選択弁25が開かれ、不活性ガスであるCO2がノズル22から、図8(5)に示されるように放射供給される。
【0047】ステップb6でCO2検出器32によって開口4付近でCO2が、図8(6)の時刻t42で検出されると、次のステップb7では、選択弁25を閉じる。
【0048】ステップb8では、消火用泡検出器31によって図8(3)に示されるように時刻t32で消火用泡が検出されると、ステップb9では、ポンプ14,17を停止する。こうしてステップb10では、一連の第2動作モードの実行を終了する。
【0049】図9は消火用泡のノズル12の水平断面図であり、図10は図9に示される消火用泡ノズル12の図9における右方から見た背面図である。水平軸線を有する直円筒状のノズル本体41には、先細状の中空の直円錐状の先端部42が同軸に取付けられる。本体41の後部(図9の右方の端部)には、支柱43によって、液体噴射ノズル44が前方(図9の左方)に向けて固定される。各ノズル44には、管路27から、前述の原液と水との混合液体が圧送され、本体41内に噴射される。この液体噴射ノズル44から滴状で噴射される液体によって矢符46で示されるように空気が本体41内に巻込まれる。こうして先端部42に形成された多数の細孔47から、消火用泡48が噴射されてピット3の開口4に落下する。
【0050】本体41には、取付片49が固定される。この取付片49を介して、建屋5に消火用泡ノズル12が固定される。こうして泡膜内に空気が内包された構造を有する消火用泡が生成される。
【0051】
【発明の効果】本発明によれば、ピット内の可燃物、たとえば粗大ごみなどの表面火災および深部火災などの火災を、容易に、しかも確実に消火することができるようになり、燻り火災を消火することも容易である。」

上記記載事項及び図面の図示内容を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明>
「ピット内に消火用泡を供給する消火用泡供給源と、
火災検出器の出力に応答し、火災が検出されたとき、消火用泡供給源を動作させる制御手段とを含む、
ピット用消火装置。」

2 引用文献2
本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであって、原査定の拒絶の理由に引用された特表平6−510318号公報(以下「引用文献2」という。)には、「基質と大気との間に泡バリアを形成するための組成物及びその使用方法」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「同一発明者による米国特許第4,874,641号には、ゴミ処理場に堆積した廃棄物の層のような基質と大気との間に、低価格で一時的なバリア層を形成する泡を発生させる組成物が開示されている。前記特許で指摘されているように、このようなバリア層は、基質から放出される有害物質、ゴミ処理場からの臭気や飛散する塵、汚染物質からのゴミや有毒物質等から大気を保護するように機能する。また、前記特許で指摘されているように、このようなバリア層は、季節外れの霜から果実、野菜及び植物の成長を保護するように、外気の悪影響から基質を保護するように機能する。後者の用途に加えて、本発明によって調製されるこのような泡は、坑内火災、特に、放置された坑内火災をコントロールするために使用される。この場合、泡は、地下に圧力下で吹き付けられる。この用途において、泡は、4つの基本的な作用がある。(1)燃焼生成物であるガスと燃焼空気とを分離すること、(2)勢いよく燃える領域の消火、(3)周囲の地層からの熱の除去、及び(4)再発火に関連する問題を抑えるための公知の化学消火成分(例えば、ウレア、すなわち、尿素)の沈殿である。」(3ページ右下欄12行ないし4ページ左上欄6行)

上記記載事項を総合すると、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

<引用文献2記載事項>
「ゴミ処理場に堆積した廃棄物の層のような基質と大気との間にバリア層を形成する泡を発生させ、このようなバリア層は、ゴミ処理場からの臭気から大気を保護するように機能することに加えて、泡は、勢いよく燃える領域の消火の作用があること。」

3 引用文献3
本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであって、原査定の拒絶の理由に引用された特開平10−118207号公報(以下「引用文献3」という。)には、「消火装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0010】請求項2の発明は、大空間の消火領域を消火するための放水銃を備えた消火装置において、火災発生及び火災発生位置を検知する火災監視部と、前記消火領域を複数の領域に分割し、分割された領域のいずれかを作業者が指定するための領域指定部と、少なくとも自動モ−ドと半自動モ−ドとの一方を選択するための操作モ−ド選択部と、自動モ−ドを選択したときには前記火災監視部からの検知情報に基づいて火災発生位置を消火するように放水銃を制御し、また半自動モ−ドを選択したときには、領域指定部により指定された領域を消火するように少なくとも放水銃の照準を合わせる放水銃制御部と、を備えたことを特徴とする。操作モ−ド選択部は、作業者が手動で放水銃を操作する手動モ−ドを選択できるように構成してもよい。」

(2)「【0013】ゴミピット2の互いに対向する側壁には夫々放水銃3(3A、3B)が設置されており、貯水槽30内の水を吸い上げて放水銃3(3A、3B)からゴミピット2内に放水できるようになっている。図示の放水銃3の設置のレイアウトは一例であり、ゴミピット2の大きさや放水銃3の性能等によって設置台数や設置位置が適宜決められる。」

上記記載事項及び図面の図示内容を総合すると、引用文献3には、次の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されていると認められる。

<引用文献3記載事項>
「貯水槽30内の水を吸い上げて放水銃3(3A、3B)からゴミピット2内に放水することこと。」

4 引用文献4
本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであって、原査定の拒絶の理由に引用された特開2008−142622号公報(以下「引用文献4」という。)には、「脱臭装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0030】
上記方法以外に、集塵した処理ガスSGを噴霧されたクエン酸や次亜塩素酸ソーダと接触させ(第1脱臭処理工程)、続いて最初の酸霧を含む処理ガスSGに酸接触安定性崩壊活性化酸の霧を接触させる(第2脱臭処理工程)とするのもよい。このような工程とすることにより、酸液の交換などの装置の簡素化とメンテナンスの簡素化、装置の小型化と低コスト化を実現する。集塵した塵は生ゴミ処理機などの臭気発生側に自動的に回収・戻すようにするのがよい。このように第1脱臭部、第2脱臭部ともに酸液を噴霧形態とすることにより、濾過能力の低下しない脱臭装置を実現することができる。また、特に生ゴミ処理装置から排出される臭気ガスは、生ゴミ投入時、分解時、分解完了時でその処理ガスの臭気成分濃度に大きな差異がある。生ゴミ処理装置からの処理ガスの臭気成分濃度を検出し、第1脱臭部および第2脱臭部あるいは第2脱臭部の酸の噴霧量を自動調節するようにするのが、酸の使用量の低減となり使用コストの軽減を実現する。また、第1脱臭部から排出される処理ガスの臭気成分の濃度を検知して、この検知に基づいて第2脱臭部での安定化酸化剤の噴霧量を適切な噴霧量に自動的に調節するのがよい。」

上記記載事項及び図面の図示内容を総合すると、引用文献4には、次の事項(以下「引用文献4記載事項」という。)が記載されていると認められる。

<引用文献4記載事項>
「生ゴミ処理装置からの処理ガスの臭気成分濃度を検出し、第1脱臭部および第2脱臭部あるいは第2脱臭部の酸の噴霧量を自動調節するようにすること。」

5 引用文献5
本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであって、原査定の拒絶の理由に引用された特開2002−085938号公報(以下「引用文献5」という。)には、「脱臭方法及び装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0007】また、オゾンの効果的な利用及び臭気の完全な除去のために、臭気ガス中の臭気の供給量を検知するセンサーを設けるのが好ましく、センサーで検知し、その供給量に応じた量のオゾンを発生させ供給するのが好ましい。」

(2)「【0018】また、臭気の供給量を検知するセンサ−と、その供給量に応じてオゾンを発生させるオゾン発生器をさらに設けてもよい。」

(3)「【0028】オゾンは、必要に応じコントロール機能付のオゾン発生器6を用いて発生させる。この際、オゾンの発生、供給量を臭気の量に対応させるのが好ましく、臭気センサー5により臭気ガスの供給口4の手前で臭気の供給量を検知し、それに応じてオゾンを発生させ、供給するのが好ましい。このように臭気センサー5を設けることによりオゾン発生量をコントロールできる。オゾンは臭気ガスの温度に応じて供給個所が適宜、選択され、臭気ガスの温度が低くオゾンの分解が問題とならない場合にはオゾン供給口7から臭気ガスに添加混合され、臭気ガスの温度が高い場合には供給口7は冷却室13と連結され(図示されていない)、オゾンは冷却室13中の冷却された臭気ガスに添加混合される。なおオゾンの一部を水槽へ直接、バブリング投入8することができる。」

(4)「【0033】以上のとおり、本発明によれば、所望により臭いセンサーにより検知し、オゾン発生器によって適量のオゾンを発生させ混合することができ、それにより効果的にオゾンによる一次脱臭が行なうことができる。この際、オゾン脱臭効果を高めるために冷却手段、例えば冷却ラジエーターを用いる。また、このとき発生するドレン水を水槽内の循環水として使用することができ、それによって運転に際して毎回、加水する必要がなく節水、経費節減になり且つ脱臭装置をクローズド化することができる。これは、水道の利用が困難な場所での使用や、メンテナンス作業の簡素化に貢献する。二次脱臭は混合ガスを光触媒の存在下で気泡状で水(オゾン水)と接触させる。これによって、臭い成分のオゾン及び光触媒による分解、可溶性成分の水への溶解除去、水溶解成分の光触媒による分解等がなされる。結局ここで、臭いと残存オゾンの分解が行われ、従来得られなかった臭気の除去が達成される。三次脱臭は光触媒及び/又は活性炭と接触させて行う。ここで、臭気とオゾンを完全に分解、吸着し自然でクリーンな排気となる。」

上記記載事項及び図面の図示内容を総合すると、引用文献5には、次の事項(以下「引用文献5記載事項」という。)が記載されていると認められる。

<引用文献5記載事項>
「臭気ガス中の臭気の供給量を検知するセンサーを設け、センサーで検知し、その供給量に応じた量のオゾンを発生させ供給すること。」

6 引用文献6
本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであって、原査定の拒絶の理由に引用された特開2011−167635号公報(以下「引用文献6」という。)には、「バグフィルタ集じん装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0013】
前記ダスト排出装置は、バグフィルタ集じん装置の排気口の下流に設けられた臭気濃度計で検出した臭気濃度のフィードバックにて切り出し量を制御してもよい。」

(2)「【0016】
本発明は、集じん装置出口の臭気濃度計で検出した臭気濃度をダスト排出装置にフィードバックすることにより活性炭の切り出し量の制御を行うことができるので、高度な脱臭制御が可能となる。」

(3)「【0030】
(3)脱臭フロー
図4において、
a)前記活性炭プレコートの状態から脱臭ライン11−1に切り替えを行い悪臭のある空気の脱臭を開始する。
b)脱臭ライン切り替え弁19−1を開、大気導入弁19−3を閉にすることでごみピットなどからの悪臭のある空気の脱臭が開始される。このとき、局所集じん切り替え弁19−2は閉のままとする。
c)脱臭はろ布2に付着した活性炭を通過する際に行われ、脱臭された空気はファン16により大気放散される。尚、脱臭は脱臭ライン11−1の気流搬送中においても悪臭のある空気は活性炭により脱臭が期待できる。
d)ダスト払い落し装置5,6は、作動させず極力ろ布2への活性炭付着層(厚み)を最大にする。活性炭が全量ろ布2に付着したとしても圧損は1.21kPa程度以下であり、吸引ファン16の風圧能力に影響はない。
e)ろ布2から自然落下した活性炭、もしくはろ布2に付着しなかった活性炭は、ダストホッパ4に堆積し、再度ダスト排出装置7にて切り出され、気流搬送後再びろ布2に付着する。
f)活性炭ロータリバルブ9−1で活性炭を切り出す方法として下記がある。
・2週聞分の活性炭を2週間かけて切り出す。この場合連続切り出しおよび間欠切り出しどちらでもよい。この方法の場合常にフレッシュな活性炭の供給ができる。
・図6に示すように、集じん器1の排気ラインに臭気検出器を設置し活性炭ロータリバルブ9−2にフィードバックし活性炭の切り出し制御(XIC)を行うことで、より確実な脱臭効果が期待できる。具体的には、臭気検知器が上限値を超えると活性炭の切り出し量を増量し、下限値を下回ると減量するといった制御を行うものである。」

上記記載事項及び図面の図示内容を総合すると、引用文献6には、次の事項(以下「引用文献6記載事項」という。)が記載されていると認められる。

<引用文献6記載事項>
「集じん器1の排気ラインに臭気検出器を設置し活性炭ロータリバルブ9−2にフィードバックし活性炭の切り出し制御(XIC)を行い、臭気検知器が上限値を超えると活性炭の切り出し量を増量し、下限値を下回ると減量するといった制御を行うこと。」

第5 対比及び判断
1 本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明における「ピット」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明1における「ゴミピット」に相当し、以下同様に、「消火用泡」は「消火に使用される泡」に、「ピット内に消火用泡を供給する消火用泡供給源と」「を含む、」「ピット用消火装置」は「ゴミピットに消火装置が設けられた消火設備」に、それぞれ相当する。

したがって、両者の一致点、相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「ゴミピットに消火装置が設けられた消火設備。」

<相違点1>
本願発明1は、「前記ゴミピット内に悪臭が発生した際、前記ゴミピット内に泡を放出し、悪臭源となるゴミを泡で覆うものであって、前記悪臭が発生した際に放出される前記泡は、泡薬剤に粘度の高い物質を添加することにより生成され、消火に使用される泡に比べ泡水溶液へ戻る還元時間の長いものである」のに対して、引用発明は、火災検出器の出力に応答し、火災が検出されたとき、消火用泡供給源を動作させる制御手段とを含む点。

上記相違点1について検討する。
引用文献2記載事項は、本願発明1における「前記ゴミピット内に悪臭が発生した際、前記ゴミピット内に泡を放出し、悪臭源となるゴミを泡で覆うものであって、前記悪臭が発生した際に放出される前記泡は、泡薬剤に粘度の高い物質を添加することにより生成され、消火に使用される泡に比べ泡水溶液へ戻る還元時間の長いものである」ことを示すものではない。
また、引用文献3ないし6記載事項は、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項について開示ないし示唆するものではない。
さらに、消火設備又はゴミピットにおいて、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項が本願出願前に周知の技術であるとする証拠や根拠もない。
したがって、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2記載事項ないし引用文献6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2と引用発明とを対比する。
引用発明における「ピット」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明2における「ゴミピット」に相当し、以下同様に、「ピット内に消火用泡を供給する消火用泡供給源」は「ゴミピット内へ泡を放出する泡発生装置」に、「ピット内に消火用泡を供給する消火用泡供給源と」「を含む、」「ピット用消火装置」は「ゴミピットに消火装置が設けられた消火設備」に、それぞれ相当する。
引用発明における「消火用泡供給源を動作させる制御手段」と本願発明2における「前記泡発生装置から前記泡を放出し、悪臭源となるゴミを前記泡で覆うよう制御する制御部」とは、「泡発生装置から」「泡を放出」する「よう制御する制御部」である点の限りで一致する。

したがって、両者の一致点、相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「ゴミピットに消火装置が設けられた消火設備において、
前記ゴミピット内へ泡を放出する泡発生装置と、
泡発生装置から泡を放出するよう制御する制御部と、を備える、
消火設備。」

<相違点2>
「泡発生装置から」「泡を放出」する「よう制御する制御部」に関して、本願発明2は、「前記ゴミピット内に悪臭が発生した際、悪臭を検知するものであって、前記ゴミピット内に設けられた悪臭検知装置と、前記悪臭検知装置により前記ゴミピット内の悪臭の発生が検知されたとき、前記泡発生装置から前記泡を放出し、悪臭源となるゴミを前記泡で覆うよう制御する制御部と、を備え、前記悪臭検知装置は、前記ゴミピット内にゴミがあるだけでは感知せず、悪臭と感じられる臭いがあるときに作動するものである」のに対して、引用発明は、火災検出器の出力に応答し、火災が検出されたとき、消火用泡供給源を動作させる制御手段とを含む点。

上記相違点2について検討する。
引用文献2記載事項は、「ゴミ処理場に堆積した廃棄物の層のような基質と大気との間にバリア層を形成する泡を発生させ、このようなバリア層は、ゴミ処理場からの臭気から大気を保護するように機能することに加えて、泡は、勢いよく燃える領域の消火の作用があること。」であって、本願発明2における「前記ゴミピット内に悪臭が発生した際、悪臭を検知するものであって、前記ゴミピット内に設けられた悪臭検知装置と、前記悪臭検知装置により前記ゴミピット内の悪臭の発生が検知されたとき、前記泡発生装置から前記泡を放出し、悪臭源となるゴミを前記泡で覆うよう制御する制御部と、を備え、前記悪臭検知装置は、前記ゴミピット内にゴミがあるだけでは感知せず、悪臭と感じられる臭いがあるときに作動するものである」ことを示すものではない。
また、引用文献3ないし6記載事項を参照したとしても、上記相違点2に係る本願発明2の発明特定事項を当業者が容易に想到することができたとはいえない。
さらに、消火設備又はゴミピットにおいて、上記相違点2に係る本願発明2の発明特定事項が本願出願前に周知の技術であるとする証拠や根拠もない。
したがって、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明2の発明特定事項とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
そして、本願発明2は、ゴミピット内に悪臭が発生した際、ゴミピット内に泡を放出し、悪臭源となるゴミを泡で覆って悪臭の発生を断つことができるという作用効果を奏する。
よって、本願発明2は、引用発明及び引用文献2記載事項ないし引用文献6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本願発明3について
本願の特許請求の範囲における請求項3は、請求項2の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本願発明3は、本願発明2の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明3は、本願発明2について述べたものと同様の理由により、引用発明及び引用文献2記載事項ないし引用文献6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

4 小括
そうすると、本願発明1ないし3は、引用発明及び引用文献2記載事項ないし引用文献6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-04-19 
出願番号 P2017-071941
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A62C)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 山本 信平
特許庁審判官 星名 真幸
鈴木 充
発明の名称 消火設備  
代理人 特許業務法人きさ特許商標事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ