• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G01R
審判 全部申し立て 2項進歩性  G01R
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01R
管理番号 1384037
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-12-16 
確定日 2022-02-28 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6709918号発明「ロゴスキ型電流センサ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6709918号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3〜19〕、2について訂正することを認める。 特許第6709918号の請求項1、4〜6、10〜13、16〜18に係る特許を維持する。 特許第6709918号の請求項2、3、7〜9、14、15、19に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6709918号(以下「本件特許」という。)の請求項1〜19に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)7月22日を国際出願日とする日本語特許出願であって(優先権主張 平成27年7月23日)、令和2年5月28日にその特許権の設定登録がされ、令和2年6月17日に特許掲載公報が発行された。本件特許の特許請求の範囲に記載された請求項の数は19である。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和 2年12月16日 : 特許異議申立人高田真利(以下、単に「特許異議申立人」という。)による請求項1〜19に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 3年 3月25日付け: 取消理由通知書
令和 3年 5月12日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 3年 7月15日 : 特許異議申立人による意見書の提出
令和 3年 8月26日付け: 取消理由通知書(決定の予告)
令和 3年10月20日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出

以下、令和3年10月20日に提出された訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。
なお、本件訂正の請求があったため、特許法120条の5第5項の規定により、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を特許異議申立人に与えたが、特許異議申立人から意見書は提出されなかった。


第2 本件訂正の適否
1 本件訂正前の特許請求の範囲の記載
本件訂正により、令和3年5月12日に提出された訂正請求書による訂正の請求は取り下げられたものとみなされる(特許法120条の5第7項)。よって、本件訂正前の特許請求の範囲の記載は、願書に添付した特許請求の範囲に記載された、次のとおりのものである。

「 【請求項1】
複数のコイルを、1つの閉じた線に沿って連続的に接続するとともに前記複数のコイルの最後のコイルの巻き終わりから最初のコイルの巻き始め側までの前記閉じた線に並行した復線路を有し、前記最初のコイルの巻き始め側端子と前記復線路の端子との間に誘起される電圧を前記閉じた線の内部に挿通される被測定回路の電流の関数として検出するロゴスキ型電流センサにおいて、
前記複数のコイルを構成する各コイルが、前記閉じた線に直交する平面上に形成され、隣り合うコイルのうち、あるコイルの巻き終わりと次のコイルの巻き始め間が、前記閉じた線に並行する往線路により接続され、前記往線路全体と前記復線路とが、近接して配置されていることを特徴とするロゴスキ型電流センサ。
【請求項2】
複数のコイルを、1つの閉じた線に沿って連続的に接続するとともに前記複数のコイルの最後のコイルの巻き終わりから最初のコイルの巻き始め側までの前記閉じた線に並行した復線路を有し、前記最初のコイルの巻き始め側端子と前記復線路の端子との間に誘起される電圧を前記閉じた線の内部に挿通される被測定回路の電流の関数として検出するロゴスキ型電流センサにおいて、
前記複数のコイルを構成する各コイルは、前記閉じた線に直交する平面に投影したときに矩形となる形状で形成され、当該各コイルのうち前記復線路から離隔した3辺は前記閉じた線に直交する平面上に形成され、残りの1辺は次のコイルと接続するように斜めに形成された往線路であり、前記コイル全体において前記斜めの辺が形成する面は前記閉じた線が作る面と平行でかつ前記復線路と近接して配置されていることを特徴とするロゴスキ型電流センサ。
【請求項3】
前記各コイルは、中央に被測定回路を挿通する穴を有し、少なくとも3層の導電パターン層を有する環状基板の異なる2層に形成された第1コイルパターン及び第2コイルパターンと、これらの第1コイルパターンと第2コイルパターン間を接続するスルーホールとによって形成され、
前記往線路は、前記3層のうちいずれかの層に形成され、
前記復線路は、前記往線路に近接した、当該往線路とは異なる層に形成された請求項1記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項4】
前記往線路は、前記第1コイルパターンと同じ層に形成され、
前記復線路は、前記往線路と近接した、前記第1コイルパターンおよび第2コイルパターンとは異なる層に形成された請求項3記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項5】
前記復線路は、前記第1コイルパターンおよび前記第2コイルパターンの間にある層に形成された請求項4記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項6】
前記最後のコイルの前記第1コイルパターンのうち、前記復線路と接続された第1コイルパターンは、前記第2コイルパターンと接続された前記スルーホールから、前記復線路と同じ層に配線された請求項3から5のいずれかの項に記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項7】
前記ロゴスキ型電流センサにおいて、前記閉じた線の長さ(L)、前記往線路と前記復線路の距離(d)、各コイルの面積の総和(A)が、d<0.1・A/Lの関係となっている請求項3記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項8】
前記コイルと前記復線路とのいずれか一方が接続された第1の電極パッドが中心にありその両側に他方が接続された第2の電極パッドがある請求項3に記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項9】
前記第1の電極パッドと前記第2の電極パッドとに、コネクタが接続された請求項8記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項10】
前記環状基板の、前記コイル、往線路、または復線路が形成されていない部分に、前記被測定回路を前記環状基板の穴に挿通するための切り込みを設けた請求項3記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項11】
前記第1コイルパターン、第2コイルパターン、スルーホールおよび往線路が並ぶコイル群が第1の電極パッドから前記切り込みに向かってまで配線され、前記コイル群に接続された前記復線路が第2の電極パッドまで配線された請求項10記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項12】
前記第1コイルパターン、第2コイルパターン、スルーホールおよび往線路が並ぶコイル群は、第1のコイル群と第2のコイル群とに分割され、
前記第1のコイル群が第1の電極パッドから前記切り込みに向かってまで配線され、前記第1のコイル群に接続された前記復線路が前記切り込みに向かって配線され、前記復線路に接続された前記第2のコイル群が第2の電極パッドまで配線された請求項10記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項13】
前記第1コイルパターン、第2コイルパターン、スルーホールおよび往線路が並ぶコイル群は、第1のコイル群と第2のコイル群に分割され、
前記復線路は、第1の線路と第2の線路に分割され、
前記第1のコイル群が第1の電極パッドから前記切り込みに向かって配線され、前記第1のコイル群に接続された前記第1の線路が前記第1の電極パッドの位置まで配線され、前記第1の線路に接続された前記第2のコイル群が前記切り込みに向かって配線され、前記第2のコイル群に接続された前記第2の線路が第2の電極パッドまで配線された請求項10記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項14】
前記複数のコイルのコイル間隔が等間隔である請求項3記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項15】
アンプ回路が前記環状基板に搭載されている請求項3記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項16】
前記環状基板はノイズシールドで覆われている請求項3記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項17】
前記ノイズシールドは、前記各コイルが形成された内層より外側のそれぞれの外層に形成された第1の導電パターンおよび第2の導電パターンを備えた請求項16に記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項18】
前記ノイズシールドは、更に、前記第1の導電パターンおよび前記第2の導電パターンが形成された層間を貫通し、前記コイルの内周側と外周側との両方に、円周方向に沿って形成された第1のスルーホールおよび第2のスルーホールを備え、
前記第1の導電パターンと、前記第1のスルーホールと、前記第2の導電パターンと、前記第2のスルーホールとによるループの形成を回避するために、前記ループに非接続部が形成された請求項17に記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項19】
前記環状基板をパワー半導体チップまたはパワー半導体モジュールに搭載する場合に、前記環状基板が、前記パワー半導体チップまたはパワー半導体モジュールと接続する電極、導電部およびボンディングワイヤを取り囲むように構成されている請求項3記載のロゴスキ型電流センサ。」

2 本件訂正の内容
本件訂正の内容は、以下のとおりである。

(1) 訂正事項1について
特許請求の範囲の請求項1に「隣り合うコイルのうち、あるコイルの巻き終わりと次のコイルの巻き始め間が、前記閉じた線に並行する往線路により接続され、前記往線路全体と前記復線路とが、近接して配置されていることを特徴とするロゴスキ型電流センサ」と記載されているのを、
「隣り合うコイルのうち、あるコイルの巻き終わりと次のコイルの巻き始めとの間に、コイル同士を接続する往線路が前記閉じた線に並行するように設けられ、前記復線路が、前記往線路と反対側に位置するコイル部分側より、前記往線路に近接して配置され、前記各コイルは、中央に被測定回路を挿通する穴を有し、少なくとも3層の導電パターン層を有する環状基板の異なる2層に形成された第1コイルパターン及び第2コイルパターンと、これらの第1コイルパターンと第2コイルパターン間を接続するスルーホールとによって形成され、前記往線路は、前記3層のうちいずれかの層に形成され、前記復線路は、前記往線路に近接した、当該往線路とは異なる層に形成され、前記ロゴスキ型電流センサにおいて、前記閉じた線の長さ(L)、前記往線路と前記復線路の距離(d)、各コイルの面積の総和(A)が、d<0.1・A/Lの関係となっていることを特徴とするロゴスキ型電流センサ。」に訂正する。下線は当審において付したもので、訂正箇所を示す。以下同様である。

請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4〜6、10〜13、16〜18も同様に訂正する。

(2) 訂正事項2について
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(3) 訂正事項3について
特許請求の範囲の請求項4の「請求項3記載のロゴスキ型電流センサ」を
「請求項1記載のロゴスキ型電流センサ」に訂正する。
請求項4の記載を引用する請求項5、6も同様に訂正する。

(4) 訂正事項4について
特許請求の範囲の請求項6の「請求項3から5のいずれかの項に記載のロゴスキ型電流センサ」を、「請求項4または5記載のロゴスキ型電流センサ」に訂正する。

(5) 訂正事項5について
特許請求の範囲の請求項7を削除する。

(6) 訂正事項6について
特許請求の範囲の請求項8を削除する。

(7) 訂正事項7について
特許請求の範囲の請求項9を削除する。

(8) 訂正事項8について
特許請求の範囲の請求項10の「請求項3記載のロゴスキ型電流センサ」を、「請求項1記載のロゴスキ型電流センサ」に訂正する。
請求項10の記載を引用する請求項11〜13も同様に訂正する。

(9) 訂正事項9について
特許請求の範囲の請求項14を削除する。

(10) 訂正事項10について
特許請求の範囲の請求項15を削除する。

(11) 訂正事項11について
特許請求の範囲の請求項16の「請求項3記載のロゴスキ型電流センサ」を、「請求項1記載のロゴスキ型電流センサ」に訂正する。
請求項16の記載を直接的又は間接的に引用する請求項17、18も同様に訂正する。

(12) 訂正事項12について
特許請求の範囲の請求項19を削除する。

(13) 訂正事項13について
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(14) 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1、3〜19は、請求項3〜19が、訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるため、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して、請求項3〜19も同様に訂正されることになるから、本件訂正前の請求項1、3〜19は、特許法120条の5第4項に規定する「一群の請求項」を構成する。

3 本件訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
訂正事項1の訂正のうち、「隣り合うコイルのうち、あるコイルの巻き終わりと次のコイルの巻き始めとの間に、コイル同士を接続する往線路が前記閉じた線に並行するように設けられ、前記復線路が、前記往線路と反対側に位置するコイル部分側より、前記往線路に近接して配置され」との訂正は、復線路が、往線路と反対側に位置するコイル部分側より、往線路側に近接していることを明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、上記訂正に係る構成は、願書に添付した図面の図1A、図1B、図5A〜図5Cに示されており、新規事項を追加するものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものにも該当しない。
また、訂正事項1の訂正のうち、「前記各コイルは、中央に被測定回路を挿通する穴を有し、少なくとも3層の導電パターン層を有する環状基板の異なる2層に形成された第1コイルパターン及び第2コイルパターンと、これらの第1コイルパターンと第2コイルパターン間を接続するスルーホールとによって形成され、前記往線路は、前記3層のうちいずれかの層に形成され、前記復線路は、前記往線路に近接した、当該往線路とは異なる層に形成され、前記ロゴスキ型電流センサにおいて、前記閉じた線の長さ(L)、前記往線路と前記復線路の距離(d)、各コイルの面積の総和(A)が、d<0.1・A/Lの関係となっている」との訂正は、本件訂正前の「各コイル」の構成を限定するとともに、本件訂正前の「ロゴスキ型電流センサ」を、「閉じた線の長さ(L)」、「前記往線路と前記復線路の距離(d)」及び「各コイルの面積の総和(A)」が、「d<0.1・A/Lの関係」となるものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、上記訂正に係る構成は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項3及び7に記載されており、新規事項を追加するものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものにも該当しない。
よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
そして、本件特許異議申立てにおいては、請求項1から19の全ての請求項に特許異議の申立てがされているから、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。

(2) 訂正事項2〜13について
訂正事項2、5〜7、9、10、12及び13は、それぞれ請求項3、7〜9、14、15、19、2を削除するというものであり、訂正事項3、4、8及び11は、請求項3の削除に伴い、本件訂正前の請求項4〜6、10〜13、16〜18が引用する請求項を削減する訂正を行うものであるから、訂正事項2〜13の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項2〜13に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
そして、本件特許異議申立てにおいては、請求項1から19の全ての請求項に特許異議の申立てがされているから、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。

4 小括
以上のとおりであるから、前記結論のとおり、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3〜19〕、2について訂正することを認める。


第3 本件発明
本件特許の請求項1〜19に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件発明1」などという。)は、それぞれ、訂正特許請求の範囲の請求項1〜19に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1〜19には次のとおり記載されている(下線は、当審において付したものであり、本件訂正により訂正した箇所を示す。)。

「 【請求項1】
複数のコイルを、1つの閉じた線に沿って連続的に接続するとともに前記複数のコイルの最後のコイルの巻き終わりから最初のコイルの巻き始め側までの前記閉じた線に並行した復線路を有し、前記最初のコイルの巻き始め側端子と前記復線路の端子との間に誘起される電圧を前記閉じた線の内部に挿通される被測定回路の電流の関数として検出するロゴスキ型電流センサにおいて、
前記複数のコイルを構成する各コイルが、前記閉じた線に直交する平面上に形成され、
隣り合うコイルのうち、あるコイルの巻き終わりと次のコイルの巻き始めとの間に、コイル同士を接続する往線路が前記閉じた線に並行するように設けられ、
前記復線路が、前記往線路と反対側に位置するコイル部分側より、前記往線路に近接して配置され、
前記各コイルは、中央に被測定回路を挿通する穴を有し、少なくとも3層の導電パターン層を有する環状基板の異なる2層に形成された第1コイルパターン及び第2コイルパターンと、これらの第1コイルパターンと第2コイルパターン間を接続するスルーホールとによって形成され、
前記往線路は、前記3層のうちいずれかの層に形成され、
前記復線路は、前記往線路に近接した、当該往線路とは異なる層に形成され、
前記ロゴスキ型電流センサにおいて、前記閉じた線の長さ(L)、前記往線路と前記復線路の距離(d)、各コイルの面積の総和(A)が、d<0.1・A/Lの関係となっていることを特徴とするロゴスキ型電流センサ。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】
前記往線路は、前記第1コイルパターンと同じ層に形成され、
前記復線路は、前記往線路と近接した、前記第1コイルパターンおよび第2コイルパターンとは異なる層に形成された請求項1記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項5】
前記復線路は、前記第1コイルパターンおよび前記第2コイルパターンの間にある層に形成された請求項4記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項6】
前記最後のコイルの前記第1コイルパターンのうち、前記復線路と接続された第1コイルパターンは、前記第2コイルパターンと接続された前記スルーホールから、前記復線路と同じ層に配線された請求項4または5記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
【請求項9】(削除)
【請求項10】
前記環状基板の、前記コイル、往線路、または復線路が形成されていない部分に、前記被測定回路を前記環状基板の穴に挿通するための切り込みを設けた請求項1記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項11】
前記第1コイルパターン、第2コイルパターン、スルーホールおよび往線路が並ぶコイル群が第1の電極パッドから前記切り込みに向かってまで配線され、前記コイル群に接続された前記復線路が第2の電極パッドまで配線された請求項10記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項12】
前記第1コイルパターン、第2コイルパターン、スルーホールおよび往線路が並ぶコイル群は、第1のコイル群と第2のコイル群とに分割され、
前記第1のコイル群が第1の電極パッドから前記切り込みに向かってまで配線され、前記第1のコイル群に接続された前記復線路が前記切り込みに向かって配線され、前記復線路に接続された前記第2のコイル群が第2の電極パッドまで配線された請求項10記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項13】
前記第1コイルパターン、第2コイルパターン、スルーホールおよび往線路が並ぶコイル群は、第1のコイル群と第2のコイル群に分割され、
前記復線路は、第1の線路と第2の線路に分割され、
前記第1のコイル群が第1の電極パッドから前記切り込みに向かって配線され、前記第1のコイル群に接続された前記第1の線路が前記第1の電極パッドの位置まで配線され、前記第1の線路に接続された前記第2のコイル群が前記切り込みに向かって配線され、前記第2のコイル群に接続された前記第2の線路が第2の電極パッドまで配線された請求項10記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項14】(削除)
【請求項15】(削除)
【請求項16】
前記環状基板はノイズシールドで覆われている請求項1記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項17】
前記ノイズシールドは、前記各コイルが形成された内層より外側のそれぞれの外層に形成された第1の導電パターンおよび第2の導電パターンを備えた請求項16に記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項18】
前記ノイズシールドは、更に、前記第1の導電パターンおよび前記第2の導電パターンが形成された層間を貫通し、前記コイルの内周側と外周側との両方に、円周方向に沿って形成された第1のスルーホールおよび第2のスルーホールを備え、
前記第1の導電パターンと、前記第1のスルーホールと、前記第2の導電パターンと、前記第2のスルーホールとによるループの形成を回避するために、前記ループに非接続部が形成された請求項17に記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項19】(削除)」


第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
令和3年5月12日に提出された訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1〜19に係る特許に対して、当審において令和3年8月26日付けで特許権者に通知した取消理由(以下、単に「取消理由」という。)の要旨は、次のとおりである。

(1) サポート要件違反
本件特許は、次のア及びイに示すとおり、特許請求の範囲の記載に不備があるため、請求項1〜6、8〜19に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

ア 請求項1に記載の「前記復線路が、前記往線路と反対側に位置するコイル部分側より、前記往線路に近接して配置されている」という点に関し、本件特許の明細書の段落【0046】、【0047】及び図面の【図1B】には、以下のとおり記載されている(下線は、当審において付したものである。)。

「【0046】
本実施例での閉じた線Lの長さはおおむね50mmであり、ターン数は96、1ターンの面積が約0.6mm2である。往線路と復線路で囲まれる面積は、往線路と復線路の距離をdとすると、d・Lで表される。一方各コイルの面積の総和Aは57.6mm2である。往線路と復線路で囲まれる部分では磁束による起電力の発生を抑える必要があり、十分な測定精度を得るには、各コイルの面積の総和Aに対してd・Lの値を10%以下、すなわち、d<0.1・A/Lの関係とすることが望ましい。
【0047】
プリント配線基板10の全体の厚みtは例えば0.6mmとし、第1層11と第2層12との距離dは例えば50〜60μmとする。これによりd・Lの値は各コイルの面積の総和Aに対して10%以下を実現する。」

「【図1B】



【0046】から、十分な測定精度を得るには、往線路と復線路の距離dが、d<0.1・A/Lを満たす必要があることが読み取れる。ここで、【0046】には、コイルの面積の総和Aが57.6mm2で、閉じた線Lの長さはおおむね50mmと記載されているから、上記式から、dは0.1152mmよりも小さいことを満たす必要がある。また、【0047】には、プリント配線基板10の全体の厚みtは例えば0.6mmと記載され、【図1B】から、厚みtは、コイルパターン1Aとコイルパターン1Bとの距離であることが示され、コイルパターン1Aと往線路2は同じ層に形成されているから、往線路2とコイルパターン1Bの距離が、0.6mmであることが読み取れる。
一方、請求項1には、「前記復線路が、前記往線路と反対側に位置するコイル部分側より、前記往線路に近接して配置されている」と記載されているから、往線路2とコイルパターン1B(往線路と反対側に位置するコイル部分)の距離が0.6mmの場合、往線路2と復線路3の距離dが、0.3mmより小さいことが満たされればよいことを規定したことになる。
そうすると、【0046】、【0047】には、十分な測定精度が得られる例として、d<0.1152mmという条件を満たす場合しか記載されておらず、0.1152mm<d<0.3mmの場合には、十分な測定精度が得られるか不明であるところ、このような範囲まで含むような請求項1に係る発明が、発明の詳細な説明に記載されているとは認められない。

したがって、請求項1に係る発明及び当該請求項1の記載を引用する請求項3〜6、8〜19に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

イ 請求項2に記載の「前記復線路が、前記往線路と反対側に位置するコイル部分側より、前記往線路に近接して配置されている」という点に関し、本件特許の明細書の段落【0056】、【0057】及び図面の【図8C】には、以下のとおり記載されている(下線は、当審において付したものである。)。

「【0056】
図8A〜図8Cは、プリント配線基板で矩形のロゴスキーコイルを形成した別の例を示すものであり、図8Aは斜視図、図8Bは上方から見た図、図8Cは側方から見た図である。この例では、閉じた線L(図1A参照)に直交する平面に投影したときに矩形となる形状で形成されたコイル41のうち、3辺は傾斜しない同一平面上に形成されているが、残りの1辺の往線路41’は、次のコイルと接続するために斜めに形成されている。前記3辺と離隔した復線路42は、複数のコイル41の最後のコイルの巻き終わりから最初のコイルの巻き始め側までの閉じた線Lに並行している。
このロゴスキーコイルでは、コイル41全体において斜めの辺となる往線路41’が形成する面は、閉じた線Lが作る面と平行でかつ復線路42と近接して配置されている。
【0057】
図8B、図8Cに示されているように、電流経路に近い側の磁束が通過するエリアの面積S1と、電流経路から遠い側の磁束が通過するエリアの面積S2とにより、次の関係が導かれる。
すなわち、図8A〜図8Cは上から見た場合はS1=S2であるので、電流経路が遠方の場合はB1=B2と仮定してV=V1+V2=0、つまり誘起される電圧がない理想的な状態になる。電流経路が近い場合はB1≠B2であるので電圧が誘起されノイズとして影響する。
しかし横から見た場合は、往復線路間の面積が無視できるほど小さいので誘起される電圧がほとんどないため、本構造においても低ノイズ化に対し一定の効果が得られる。」

「【図8C】



【0057】には、「横から見た場合は、往復線路間の面積が無視できるほど小さいので誘起される電圧がほとんどないため、本構造においても低ノイズ化に対し一定の効果が得られる」ことが記載されている。
一方、請求項2には、「前記復線路が、前記往線路と反対側に位置するコイル部分側より、前記往線路に近接して配置されている」とのみ記載されており、「往線路」と「復線路」の距離が、「復線路」と「往線路と反対側に位置するコイル部分側」の距離よりわずかでも小さいものも含まれることになるが、そのようなものが、「往復線路間の面積が無視できるほど小さい」ものであるとは認められないから、請求項2に係る発明が、発明の詳細な説明に記載されているとは認められない。

したがって、請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

(2) 進歩性欠如
請求項2に係る発明は、本件特許出願の優先日前に発行された、下記甲1号証に記載された発明及び下記甲5号証に記載された事項に基づいて、本件特許出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。



甲1号証 :特許第3877428号公報
甲5号証 :特開2009−4801号公報

2 当審の判断
(1) サポート要件違反
前記第2の2(1)で示したとおり、本件訂正により、請求項1、4〜6、10〜13、16〜18に、「前記ロゴスキ型電流センサにおいて、前記閉じた線の長さ(L)、前記往線路と前記復線路の距離(d)、各コイルの面積の総和(A)が、d<0.1・A/Lの関係となっている」との記載を付加する訂正がされた。そして、当該訂正により、本件訂正後の請求項1、4〜6、10〜13、16〜18に係る発明は、【0046】に記載されたものとなった。
したがって、本件訂正後の請求項1、4〜6、10〜13、16〜18に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

また、請求項2、3、7〜9、14、15、19は、前記第2の2のとおり、本件訂正により削除された。

(2) 進歩性欠如
請求項2は、前記第2の2のとおり、本件訂正により削除された。

(3) 小括
上記(1)及び(2)において検討したとおりであるから、取消理由はすべて解消した。

第5 特許異議申立人が申立てた理由について
1 特許異議申立理由の概要及び証拠方法
(1) 明確性要件違反
ア 「近接して配置」について
請求項1の構成の「往線路全体と前記復線路とが、近接して配置されている」は、どの程度近接しているのかが不明確である。同様に、請求項2の構成における「コイル全体において前記斜めの辺が形成する面は・・・前記復線路と近接して配置されている」は、どの程度近接しているのかが不明確である。

よって、請求項1及び2に係る特許、及び請求項1の記載を引用する請求項3〜19に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。

イ 「閉じた線に並行する往線路」について
請求項1に記載されている「閉じた線に並行する往線路」は、どのような状態を指しているのかが不明確である。例えば図1Aにおける往線路2は上下方向に段差を有しているのに対して、線Lは上下方向に段差を有さない直線状である。従って、「並行」とは、2つの線が完全に平行でないものも含まれるように解されるが、完全に平行な状態からどの程度乖離したものまでが「並行」に含まれるのかが理解できない。例えば、図8Bの形態における往線路41’と、復線路42は「並行」なのか否か判断できない。仮に図8Bの形態における往線路41’と、復線路42は「並行」でないとすると、図1Aの形態と、図8Bの形態との間のどこに「並行」か否かの境界があるのか不明確であり、「並行」の技術的な範囲が不明確である。

よって、請求項1に係る特許、及び請求項1の記載を引用する請求項3〜19に係る特許は、特許法36条6項2号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。

(2) 甲1に基づく新規性又は進歩性欠如
本件発明1〜5、7、10、11、14、19は、甲1号証に記載された発明である、又は、甲1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1〜5、7、10、11、14、19に係る特許は、特許法29条1項又は2項の規定に違反してされたものである。

本件発明6は、甲1号証に記載された発明及び甲7号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明6に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

本件発明8、9は、甲1号証に記載された発明及び甲3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明8、9に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

本件発明12、16、17は、甲1号証に記載された発明及び甲2号証に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明12、16、17に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

本件発明15は、甲1号証に記載された発明及び甲4号証に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明15に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

(3) 甲2に基づく新規性又は進歩性欠如
本件発明1〜5、7、10〜14、16〜18は、甲2号証に記載された発明である、又は、甲2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1〜5、7、10〜14、16〜18に係る特許は、特許法29条1項又は2項の規定に違反してされたものである。

本件発明6は、甲2号証に記載された発明及び甲7号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明6に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

本件発明8、9は、甲2号証に記載された発明及び甲3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明8、9に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

本件発明15は、甲2号証に記載された発明及び甲4号証に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明15に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

(4) 証拠方法
特許異議申立人は、上記(2)及び(3)の主張を裏付ける証拠として、次の甲1〜7号証を提出した。
ア 甲1号証 :特許第3877428号公報
イ 甲2号証 :特開2013−130571号公報
ウ 甲3号証 :特開2005−303798号公報
エ 甲4号証 :特開2011−141208号公報
オ 甲5号証 :特開2009−4801号公報
カ 甲6号証 :「プリント基板製造基準書」、きばん本舗、2009年5月29日、http://www.kibanhonpo.com/pdf/m_standard1.pdf
キ 甲7号証 :国際公開第2013/114137号

2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
上記1において示した特許異議申立理由のうち、請求項2に対する甲1に基づく進歩性欠如以外の理由については、令和3年8月26日付け取消理由通知(決定の予告)において採用していない。
取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由についての当審の判断は、以下の(1)及び(2)のとおりである。

(1) 甲号証に記載された発明の認定等
ア 甲1発明の認定
(ア) 甲1号証に記載された事項
本件特許の優先日前に発行された特許第3877428号公報(以下「甲1号証」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は当審において付したもので、以下同様である。

「【0026】
実施の形態3.
実施の形態3は、実施の形態1、2の構成のIGBTモジュールのエミッタ端子に流れる電流が検出できるように構成したものである。図7にその構成を示す。図7は実施の形態1、2の構成のエミッタ端子12の周囲の部分構成図である。図において、75は複数のエミッタ端子12を周回するように配置した電流検出コイルである。76は回路接続端子、77は部材装着スペース、78は絶縁部材である。80は複数のIGBTを集合して付属品を設けたIGBTモジュールである。
【0027】
電流検出コイル75は、図8に示すように電線をコイル状に巻回し、リターン回路をコイル状に巻回した内径部をリターンする構成のロゴスキーコイルであり、これをエミッタ端子11を周回するように配置し、コイル端部を回路接続端子76に接続し、電流検出コイル75を埋設した状態に絶縁部材78で全体を封止して形成した構成である。80は電流検出コイル75を埋設したIGBTモジュールである。図8(a)はコイルの断面を示す。
【0028】
電流検出コイル75は、端子76aから電線をコイル状に巻回し、リターン回路をコイルの内径部に挿通して端子76bにリターンする回路を形成し、巻回したコイルの全長でエミッタ端子を周回するように配置することにより、エミッタ端子に流れる電流が作る磁界のコイルに鎖交する磁束によりエミッタ電流に比例した電圧が検出できるものである。
【0029】
電流検出コイル75は次のようにして電流を検出することができる。導体に流れる電流Iによって生じた磁界の電流検出コイル75に鎖交する総磁束φの変化量に比例した電圧が電流検出コイル75の端子76a、76bの間に発生する。今、磁束密度をB、コイル断面積をS、巻数をN、磁界の強さをH、透磁率をμ、リングの直径をD、リングの全長をLとすると、μ=μ0=4π×10−7、L=πDであり、検出される電圧VPは、(式1)のようになる。
VP=−(dφ/dt)
φ=BSN
B=μH
H=I/(πD)=I/L であり、
φ=(4SNI/D)×10−7
VP=−(4SN/D)・(dI/dt)×10−7・・・(式1)
電流検出コイル75の端子76a、76bの間の電圧VPは、dI/dtに比例した電圧であり、これを積分して増幅回路で増幅してゲイン調整すれば電流Iが得られる。
【0030】
実施の形態1、2の図1、図4のエミッタ端子12を周回するように電流検出コイル75を埋設した構成にすると、エミッタ端子12に流れる電流検出機能を備えたIGBTモジュールが得られる。電流検出コイル75はエミッタ端子12の1つに巻回してVPを検出し、全体電流を推定しても同様に電流検出機能が得られる。図7の構成は電流検出コイル75をエミッタ端子12を周回するように配置したが、電流検出コイルをコレクタ端子11を周回するように配置しても同様に電流検出機能が得られる。
【0031】
このように電流検出機能を備えたIGBTモジュールとすると、電流の検出以外に、di/dtが検出できることから、di/dtを制御する駆動回路を構成する場合に駆動回路モジュールを容易に構成することもできる。」

「【0032】
実施の形態4.
実施の形態3では、エミッタ電流の検出を電流検出コイルを埋設した構成としたが、この実施の形態4では、電流検出コイルを平板状に形成し、必要とするときに装着するように構成したものである。その構成のIGBTモジュールに電流検出コイルを装着した状態を図9、電流検出コイルの構成を図10に示す。図において、85は平板状に形成された電流検出コイル、86は回路接続端子、87はエミッタ端子12の両側および両端部のエミッタ端子12を周回する部分に段差を設けた部材装着スペース、88はIGBTの周囲を封止し、所定の形状に成型された絶縁部材、89は取付用穴である。
【0033】
電流検出コイルは、図10に示すように基板83を4枚積層し、図中(a)に示すように4層に積層した構成とし、最下層に第1層基板83a、最上層に第4層基板83dを配置して絶縁層を形成し、第2層基板83b、第3層基板83cは図示のように複数の挿通穴83hを設け、第2層基板83bの下面に周回方向の横の挿通穴83hの相互間に導電層84aを形成し、第3層基板83cの上面には図示のように斜め方向の挿通穴83hの相互間に導電層84bを形成し、第3層基板83cの下面にはリターン回路の導電層84cを形成し、初端部の回路接続端子86aから各挿通穴83hに接続導体84dをそれぞれ挿通して導電層84aと導電層84bとの間をそれそれ接続し、終端部の導電層84bからはリターン回路の導電層84cに接続して初端部にリターンさせて回路接続端子86bに接続して電流検出コイルを形成したものである。
【0034】
IGBTモジュール90のエミッタ端子12を周回する部分の部材装着スペース87に平板状に形成された電流検出コイル85を配置することにより、エミッタ端子12の電流が検出できるIGBTモジュールとなる。図9の電流検出コイルはエミッタ端子12を周回するように配置したが、コレクタ端子11を周回するように配置しても同様に電流検出機能が得られる。
【0035】
このように構成すると、駆動回路付IGBTを構成するときに、電流検出機能を必要とするときのみに平板状に形成された電流検出コイル85をIGBTの部材装着スペース87に装着し、その上面に駆動回路モジュールを装着すれば、電流検出機能を備えた駆動回路付IGBTモジュールが得られる。したがってこの構成では電流検出機能の必要性に応じて選択できる利点がある。」

「【図7】



「【図8】



「【図9】



「【図10】



【図10】の2つの図からみて、リターン回路の導電層84cが紙面に垂直な方向に伸びていることが読み取れるから、【図10】の左下図は、導電層84cが伸びる方向に直交する断面図であることが読み取れる。
そして、当該断面図から、導電層84aと、複数の挿通穴83hに挿通した接続導体84dと、導電層84bによりコイルが形成されること、当該コイルを前記導電層84cが伸びる方向に直交する平面に投影したときに矩形となることが読み取れる。また、導電層84cが、導電層84aと導電層84bの間の中間にあることが読み取れる。

【図10】の右上図からみて、前記コイルが、前記導電層84cの伸びる方向に沿って前記所定の間隔毎に複数形成されていること、前記複数形成された各コイルが、前記導電層84bを介して連続して接続されていることが読み取れる。また、当該図から、導電層84aと、複数の挿通穴83hに挿通した接続導体84dが、前記導電層84cが伸びる方向に直交する平面上に形成されていることが読み取れる。

また、【0027】の「図8に示すように電線をコイル状に巻回し、リターン回路をコイル状に巻回した内径部をリターンする構成のロゴスキーコイル」という記載と【図8】に示された構成からみて、【図10】に示された電流検出コイルもロゴスキ−コイルであることが読み取れる。

【0032】、【図9】、【図10】から、IGBTモジュールのエミッタ端子に流れる電流を検出する電流検出コイル(の基板)は、エミッタ端子を周回するように、内部に孔が設けられていることが読み取れる。

(イ) 甲1号証に記載された発明の認定
前記(ア)を総合すると、甲1号証には、以下の甲1発明が記載されているものと認められる。

<甲1発明>
「基板83を4枚積層した構成とし、第2層基板83b、第3層基板83cは複数の挿通穴83hを設け、第2層基板83bの下面に周回方向の横の挿通穴83hの相互間に導電層84aを形成し、第3層基板83cの上面には斜め方向の挿通穴83hの相互間に導電層84bを形成し、第3層基板83cの下面にはリターン回路の導電層84cを形成し、初端部の回路接続端子86aから各挿通穴83hに接続導体84dをそれぞれ挿通して導電層84aと導電層84bとの間をそれぞれ接続し、終端部の導電層84bからはリターン回路の導電層84cに接続して初端部にリターンさせて回路接続端子86bに接続して形成した電流検出コイルであって(【0033】)、
前記電流検出コイルは、IGBTモジュールのエミッタ端子に流れる電流を検出するために、エミッタ端子を周回するように、内部に孔が設けられており(【0032】、【図9】、【図10】)、
前記電流検出コイルは、ロゴスキ−コイルであり、(【0027】、【図8】、【図10】)
前記導電層84aと、前記接続導体84dと、前記導電層84bによりコイルが形成され、前記コイルは、前記導電層84cが伸びる方向に直交する平面に投影したときに矩形であり、前記導電層84a、前記接続導体84dは前記導電層84cが伸びる方向に直交する平面上に形成され、
さらに、前記コイルは、前記導電層84cの伸びる方向に沿って所定の間隔毎に複数形成され、各コイルは前記導電層84bを介して連続して接続され、
前記導電層84cは、前記導電層84aと前記導電層84bの間の中間にある(【図10】)、
電流検出コイル。」

イ 甲2発明の認定
(ア) 甲2号証に記載された事項
本件特許の優先日前に発行された特開2013−130571号公報(以下「甲2号証」という。)には、以下の事項が記載されている

「【0047】
図1は、本発明の一例である電流センサ100を模式的に示した図で、図1(a)は、電流センサ100の上面図であり、図1(b)は、図1(a)における一点鎖線A−Aでの断面図である。尚、図1(a)の上面図は、図1(b)における一点鎖線B−Bでの断面位置から下方を透視した図となっている。
【0048】
また、図2は、測定対象回路の導体10に図1の電流センサ100を据え付ける様子を示した図で、図2(a)は、導体10を開口30に貫通させる途中の様子を示した図であり、図2(b)は、導体10を開口30に貫通させた後の状態を示した図である。尚、図2(a),(b)は、図1(a)における一点鎖線C−Cでの断面位置から内側を透視した図となっている。
【0049】
図1に示す電流センサ100は、多層基板20の内部に電流検出用のロゴスキーコイル40を備える、小型の電流センサである。ロゴスキーコイル40は、図1(a)の二点鎖線で概略形状を示したように、切欠き90を有するリング形状に形成されており、C字状である。尚、電流センサ100におけるロゴスキーコイル40の二点鎖線で示した上記リング形状は、中心P1の円形状である。しかしながらこれに限らず、楕円形状、長方形状あるいは六角形状のリング形状であってもよい。
【0050】
また、ロゴスキーコイル40は、図1(b)に示すように、多層基板20の複数の配線層40a〜40cと該配線層間40a〜40cを電気的に接続する接続導体70で形成されており、図1(a)に示すように、多層基板20の先端付近に設けられた開口30の周りに形成される。尚、開口30は、ロゴスキーコイル40のリング形状と同じ、中心P1の同心円である。
【0051】
図1の電流センサ100におけるロゴスキーコイル40は、トロイダル状に形成されたトロイダルコイル部40Tと、接続導体70でトロイダルコイル部40Tに直列接続し、トロイダルコイル部40Tの中心軸に沿って配置されるリング部40Rとで構成されている。トロイダルコイル部40Tは、多層基板20の2つの内部配線層40a、40bによる開口30に対して放射状に形成された配線パターンと接続導体70とで形成されている。リング部40Rは、2つの内部配線層40a、40bの間に位置する別の内部配線層40cによって円弧状に形成された配線パターンである。
【0052】
図1の電流センサ100における多層基板20は、図1(b)において細い点線で貼り合わせ面を示したように、熱可塑性樹脂からなる複数枚の樹脂フィルム20aの積層体を加熱加圧して、該樹脂フィルム20aを一括して相互に貼り合わせて製造する。この製造方法によれば、多層基板20の内部配線層40a〜40cや外部配線層40d、40eは、樹脂フィルム20aの表面に形成された金属箔からなる導体パターンで形成される。また、多層基板20の接続導体70は、樹脂フィルム20aの貫通穴に充填され、前記加熱加圧により焼結される導電ペーストから形成される。」

「【0057】
ロゴスキーコイル40を備える図1の電流センサ100は、図2(b)に示すように、測定対象回路の導体10を多層基板20の開口30に貫通させ、導体10に流れる交流電流を非接触で計測する。より詳細には、一次導体10周辺に配置された図1(a)に示すロゴスキーコイル40においては、一次電流によってコイルの両端に電圧波形(一次電流の微分波形に比例)誘起され、それを積分することで電流を計測する。ロゴスキーコイル40は、磁性体コアを有していないため、磁性体コアによる損失が無く、特に高周波電流を高精度で測定可能である。」

「【図1】



「【図2】



【0050】、【0052】、【図1(a)】、【図1(b)】から、複数の樹脂フィルム20aを貼り合わせてなる多層基板20の内部配線層40a〜40cは、それぞれ異なる層の樹脂フィルム20aの表面に形成された金属箔からなる導体パターンで形成されていること、内部配線層40cが、内部配線層40aと40bの中間にあることが読み取れる。

(イ) 甲2号証に記載された発明の認定
前記(ア)を総合すると、甲2号証には、以下の甲2発明が記載されているものと認められる。

<甲2発明>
「測定対象回路の導体10を多層基板20の開口30に貫通させ、導体10に流れる交流電流を非接触で計測するロゴスキーコイル40を備える電流センサ100であって(【0057】)、
ロゴスキーコイル40は、多層基板20の複数の配線層40a〜40cと該配線層間40a〜40cを電気的に接続する接続導体70で形成されており(【0050】)、
電流センサ100における多層基板20は、熱可塑性樹脂からなる複数枚の樹脂フィルム20aの積層体を加熱加圧して、該樹脂フィルム20aを一括して相互に貼り合わせて製造し、多層基板20の内部配線層40a〜40cや外部配線層40d、40eは、樹脂フィルム20aの表面に形成された金属箔からなる導体パターンで形成され、多層基板20の接続導体70は、樹脂フィルム20aの貫通穴に充填され、前記加熱加圧により焼結される導電ペーストから形成される(【0052】)、
多層基板20の内部配線層40a〜40cは、それぞれ異なる層の樹脂フィルム20aの表面に形成された導体パターンで形成されており、内部配線層40cは内部配線層40aと40bの中間にある(【0050】、【0052】、【図1(a)】、【図1(b)】)、
ロゴスキーコイル40を備える電流センサ100。」

(2) 当審の判断
明確性要件違反
(ア) 「近接して配置」について
本件訂正により、請求項1に係る発明が、「前記復線路が、前記往線路と反対側に位置するコイル部分側より、前記往線路に近接して配置され」る構成を含むように訂正され、往線路全体と復線路とが、どのように近接しているのかが明確になった。
よって、請求項1に記載された発明、及び当該請求項1を引用する請求項4〜6、10〜13、16〜18に係る発明は明確である。

(イ) 「閉じた線に並行する往線路」について
a まず、「並行」という語句の通常用いられている意味について検討すると、広辞苑第7版には、「並行」の項目において「ならび行くこと。また、ならび行われること。平行。」と記載されている。
また、「平行」という語句については、広辞苑第7版には、「(1)〔数〕同一平面上の2直線(あるいは空間の二平面または一直線と一平面)がどこまで延長しても交わらないこと。(2)並行(へいこう)に同じ。」と記載されている。
そうすると、「並行」とは、「ならび行くこと。また、ならび行われること。」という一般的な意味の他に、「平行」と同じ意味でも使われる語句であるところ、「平行」には、「同一平面上の2直線(あるいは空間の二平面または一直線と一平面)がどこまで延長しても交わらないこと。」という数学用語としての意味があるから、本件発明1において、「並行」が、いずれの意味で用いられているのか明らかでない。

b したがって、本件発明1の「並行」について、その語句の通常用いられている意味のみから、一意に解釈することができないため、本件特許の明細書及び図面の記載を参酌して、その意味を解釈すると、閉じた線Lと並行する往線路2について、以下のとおり記載されている。
「【0043】
以下、本発明を、図面に示す実施の形態に基づいて具体的に説明する。
図1A〜図1Cは、本発明の実施の形態に係るロゴスキ型電流センサを示すものであり、図1Aは斜視図、図1Bは断面図、図1Cは平面図である。
【0044】
これらの図に示されるように、全体が1つの閉じた線Lに沿って連続的に接続される複数のコイル1(一部のみ直線状に示す)は、矩形状であり、それぞれが閉じた線Lに垂直な一つの平面S0上に形成され、各コイル1間は、線Lに並行する往線路2によって接続される。複数のコイル1の個数をnターンとすると、1ターン目のコイル1から始まってnターン目のコイル1の巻き終わりから、線Lに沿って1ターン目のコイル1の巻き始めまで1ターン分の復線路3が設けられることがロゴスキーコイルの特徴である。」

「【0056】
図8A〜図8Cは、プリント配線基板で矩形のロゴスキーコイルを形成した別の例を示すものであり、図8Aは斜視図、図8Bは上方から見た図、図8Cは側方から見た図である。この例では、閉じた線L(図1A参照)に直交する平面に投影したときに矩形となる形状で形成されたコイル41のうち、3辺は傾斜しない同一平面上に形成されているが、残りの1辺の往線路41’は、次のコイルと接続するために斜めに形成されている。前記3辺と離隔した復線路42は、複数のコイル41の最後のコイルの巻き終わりから最初のコイルの巻き始め側までの閉じた線Lに並行している。
このロゴスキーコイルでは、コイル41全体において斜めの辺となる往線路41’が形成する面は、閉じた線Lが作る面と平行でかつ復線路42と近接して配置されている。」

「【図1A】



「【図1B】



「【図1C】



「【図8B】



c 上記明細書及び図面の記載から、「往線路2」は、各コイル1と接続する付近を除く大半の部分において、「閉じた線L」と、同一平面上の2直線かつどこまで延長しても交わらない、すなわち数学用語としての「平行」という関係になっているが、各コイル1と接続する付近においては、数学用語としての「平行」という関係になっていないことが読み取れる。
したがって、本件発明の「並行」は、数学用語としての「平行」という意味で解釈するのは適当でなく、「ならび行くこと。」という一般的な意味であり、具体的には、図1A〜Cのような形態(線の全ての箇所において数学用語としての「平行」であることが要求されるものではなく、大半の部分において、沿うように配置されていれば足りるような形態)を指すものと解釈するのが相当である。

d そして、このような「並行」の解釈の下では、本件発明1の「閉じた線に並行する往線路」について、技術的な範囲が不明確であるとはいえない。

e なお、特許異議申立人は、図1Aの形態と、以下に示される図8Bの形態の間のどこに「並行」か否かの境界があるのかについて不明確であると主張しているが、本願明細書の段落【0056】には、「図8A〜図8Cは、プリント配線基板で矩形のロゴスキーコイルを形成した別の例を示すものであり、」と記載されており、上記の「並行」する関係を示す図1A〜図1Cとは、別の例であるとされているから、図8Bの形態が本件発明の「閉じた線に並行する往線路」に含まれないことは明らかであって、すなわち、図8Bの形態である、1辺の往線路が次のコイルと接続する、斜めの直線に形成された構成が除かれるということが、請求項1に記載されている「閉じた線に並行する往線路」の表す明確な外縁であるといえる。

f よって、請求項1に係る発明、及び当該請求項1の記載を引用する請求項4〜6、10〜13、16〜18に係る発明は明確である。

(ウ) 小括
以上検討のとおりであるから、明確性要件違反に係る申立理由を採用することはできない。

イ 甲1に基づく新規性又は進歩性欠如
(ア) 本件発明1について
a 本件発明1と甲1発明の対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
(a) 甲1発明の「電流検出コイル」は「ロゴスキ−コイル」であり、本件発明1の「複数のコイルを、1つの閉じた線に沿って連続的に接続するとともに前記複数のコイルの最後のコイルの巻き終わりから最初のコイルの巻き始め側までの前記閉じた線に並行した復線路を有」する構成は、ロゴスキ−コイルの基本的な構成そのものと認められるから、甲1発明の「電流検出コイル」は、本件発明1の「複数のコイルを、1つの閉じた線に沿って連続的に接続するとともに前記複数のコイルの最後のコイルの巻き終わりから最初のコイルの巻き始め側までの前記閉じた線に並行した復線路を有し、前記最初のコイルの巻き始め側端子と前記復線路の端子との間に誘起される電圧を前記閉じた線の内部に挿通される被測定回路の電流の関数として検出するロゴスキ型電流センサ」に相当する。

(b) 甲1発明の「前記導電層84aと、前記接続導体84dと、前記導電層84bによりコイルが形成され、前記コイルは、前記導電層84cが伸びる方向に直交する平面に投影したときに矩形であり、前記導電層84a、前記接続導体84dは前記導電層84cが伸びる方向に直交する平面上に形成され、さらに、前記コイルは、前記導電層84cの伸びる方向に沿って所定の間隔毎に複数形成され、各コイルは前記導電層84bを介して連続して接続され」る構成は、「導電層84b」が、「斜め方向の挿通穴83hの相互間に」形成されるものである。
よって、本件発明1の「前記複数のコイルを構成する各コイルが、前記閉じた線に直交する平面上に形成され、隣り合うコイルのうち、あるコイルの巻き終わりと次のコイルの巻き始めとの間に、コイル同士を接続する往線路が前記閉じた線に並行するように設けられ」ることと、上記甲1発明の構成は、「前記複数のコイルを構成する各コイルが、前記閉じた線に直交する平面上に投影したときに矩形となるよう形成され、隣り合うコイルのうち、あるコイルの巻き終わりと次のコイルの巻き始めとの間に、コイル同士を接続する往線路が設けられ」る点で共通する。

(c) 甲1発明の「導電層84b」、「導電層84c」、「導電層84a」は、それぞれ本件発明1の「往線路」、「復線路」、「往線路と反対側に位置するコイル部分」に相当する。
よって、甲1発明の「前記導電層84cは、前記導電層84aと前記導電層84bの間の中間にある」ことと、本件発明1の「前記復線路が、前記往線路と反対側に位置するコイル部分側より、前記往線路に近接して配置され」、「前記ロゴスキ型電流センサにおいて、前記閉じた線の長さ(L)、前記往線路と前記復線路の距離(d)、各コイルの面積の総和(A)が、d<0.1・A/Lの関係となっている」ことは、「前記復線路が、前記往線路と、前記往線路と反対側に位置するコイル部分の間に配置され」ている点で共通する。

(d) 甲1発明の「電流検出コイル」は、「IGBTモジュールのエミッタ端子に流れる電流を検出するために、エミッタ端子を周回するように、内部に孔が設けられて」おり、「基板83を4枚積層した構成とし、第2層基板83b、第3層基板83cは複数の挿通穴83hを設け、第2層基板83bの下面に周回方向の横の挿通穴83hの相互間に導電層84aを形成し、第3層基板83cの上面には斜め方向の挿通穴83hの相互間に導電層84bを形成し、第3層基板83cの下面にはリターン回路の導電層84cを形成し、初端部の回路接続端子86aから各挿通穴83hに接続導体84dをそれぞれ挿通して導電層84aと導電層84bとの間をそれぞれ接続し、終端部の導電層84bからはリターン回路の導電層84cに接続して初端部にリターンさせて回路接続端子86bに接続して形成し」たものである。
そして、甲1発明の「導電層84a」、「導電層84b」及び「導電層84c」は、本件発明1の「少なくとも3層の導電パターン層」であり、それぞれが「異なる層」に形成されているものに相当する。
また、甲1発明の「導電層84b」、「導電層84a」、「各挿通穴83hに接続導体84dをそれぞれ挿通して導電層84aと導電層84bとの間をそれぞれ接続」する構成は、それぞれ本件発明1の「第1コイルパターン」、「第2コイルパターン」、「第1コイルパターンと第2コイルパターン間を接続するスルーホール」に相当する。
したがって、甲1発明の上記構成は、本件発明1の「前記各コイルは、中央に被測定回路を挿通する穴を有し、少なくとも3層の導電パターン層を有する環状基板の異なる2層に形成された第1コイルパターン及び第2コイルパターンと、これらの第1コイルパターンと第2コイルパターン間を接続するスルーホールとによって形成され、前記往線路は、前記3層のうちいずれかの層に形成され」ている構成に相当する。

(e) 甲1発明の「導電層84c」及び「導電層84b」は、第3層基板83cの下面及び上面の異なる層に形成されているから、本件発明1の「前記復線路は、前記往線路に近接した、当該往線路とは異なる層に形成され」ていることと、「前記復線路は、前記往線路とは異なる層に形成され」ている点で共通する。

b 一致点及び相違点
上記aを総合すると、本件発明1と甲1発明は、以下の一致点において一致し、以下の相違点1〜3において相違する。

<一致点>
複数のコイルを、1つの閉じた線に沿って連続的に接続するとともに前記複数のコイルの最後のコイルの巻き終わりから最初のコイルの巻き始め側までの前記閉じた線に並行した復線路を有し、前記最初のコイルの巻き始め側端子と前記復線路の端子との間に誘起される電圧を前記閉じた線の内部に挿通される被測定回路の電流の関数として検出するロゴスキ型電流センサにおいて、
前記複数のコイルを構成する各コイルが、前記閉じた線に直交する平面上に投影したときに矩形となるよう形成され、
隣り合うコイルのうち、あるコイルの巻き終わりと次のコイルの巻き始めとの間に、コイル同士を接続する往線路が設けられ
前記復線路が、前記往線路と、前記往線路と反対側に位置するコイル部分の間に配置され、
前記各コイルは、中央に被測定回路を挿通する穴を有し、少なくとも3層の導電パターン層を有する環状基板の異なる2層に形成された第1コイルパターン及び第2コイルパターンと、これらの第1コイルパターンと第2コイルパターン間を接続するスルーホールとによって形成され、
前記往線路は、前記3層のうちいずれかの層に形成され、
前記復線路は、前記往線路とは異なる層に形成された、
ロゴスキ型電流センサ、である点。

<相違点1>
本件発明1では、「前記複数のコイルを構成する各コイルが、前記閉じた線に直交する平面上に形成され、隣り合うコイルのうち、あるコイルの巻き終わりと次のコイルの巻き始めとの間に、コイル同士を接続する往線路が前記閉じた線に並行するように設けられ」ているのに対して、甲1発明では、本件発明1の「コイル」の一部及び「往線路」に相当する「導電層84b」が、本件発明1の「復線路」に相当する「導電層84c」と並行でなく、閉じた線に直交する平面上に形成されていない点。

<相違点2>
本件発明1では、「前記復線路が、前記往線路と反対側に位置するコイル部分側より、前記往線路に近接して配置され」、「前記ロゴスキ型電流センサにおいて、前記閉じた線の長さ(L)、前記往線路と前記復線路の距離(d)、各コイルの面積の総和(A)が、d<0.1・A/Lの関係となっている」のに対して、甲1発明では、導電層84cは、導電層84aと導電層84bの間の中間にはあるものの、上記構成を有していない点。

<相違点3>
本件発明1では、「前記復線路は、前記往線路に近接した、当該往線路とは異なる層に形成され」ているのに対して、甲1発明では、「導電層84c」と「導電層84b」は異なる層に形成されているが、近接しているかどうか不明な点。

c 相違点2についての当審の判断
事案に鑑みて、まず上記相違点2について検討する。
上記相違点2のうち、「閉じた線の長さ(L)、前記往線路と前記復線路の距離(d)、各コイルの面積の総和(A)が、d<0.1・A/Lの関係となっている」「ロゴスキ型電流センサ」については、甲1〜7号証のいずれにも記載も示唆もされていない。
そして、本件発明1は、上記関係を満たすロゴスキ型電流センサとすることで、本願明細書の段落【0046】に記載の「往線路と復線路で囲まれる部分では磁束による起電力の発生を抑え」、「十分な測定精度を得る」という課題を解決するものであるところ、このような課題自体、本願優先日前に知られていないことを鑑みれば、甲1発明の電流検出コイルにおいて、上記関係を満たすようにする動機付けがあるものとは認められない。

よって、甲1発明において上記相違点2に係る構成とすることは、当業者であっても容易に想到し得たものではない。

d 本件発明1の甲1発明に対する新規性又は進歩性の判断のまとめ
したがって、上記相違点1及び3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではなく、当業者であっても甲1発明に基づいて容易に発明できたものではないので、本件発明1に係る特許は、特許法29条1項、2項の規定に違反してされたものではない。

(イ) 本件発明4〜6、10〜13、16〜18について
本件発明4〜6、10〜13、16〜18も、本件発明1と同様に、上記相違点1〜3に係る構成を備えるものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明4〜6、10〜13、16〜18に係る特許は、特許法29条1項、2項の規定に違反してされたものではない。

ウ 甲2に基づく新規性又は進歩性欠如
(ア) 本件発明1について
a 本件発明1と甲2発明の対比
本件発明1と甲2発明を対比する。
(a) 甲2発明の「電流センサ100」は「ロゴスキ−コイル40」を備えており、本件発明1の「複数のコイルを、1つの閉じた線に沿って連続的に接続するとともに前記複数のコイルの最後のコイルの巻き終わりから最初のコイルの巻き始め側までの前記閉じた線に並行した復線路を有」する構成は、ロゴスキ−コイルの基本的な構成そのものと認められるから、甲2発明の「ロゴスキーコイル40を備える電流センサ100」は、本件発明1の「複数のコイルを、1つの閉じた線に沿って連続的に接続するとともに前記複数のコイルの最後のコイルの巻き終わりから最初のコイルの巻き始め側までの前記閉じた線に並行した復線路を有し、前記最初のコイルの巻き始め側端子と前記復線路の端子との間に誘起される電圧を前記閉じた線の内部に挿通される被測定回路の電流の関数として検出するロゴスキ型電流センサ」に相当する。

(b) 甲2発明の「内部配線層40a」、「内部配線層40c」、「内部配線層40b」は、それぞれ本件発明2の「往線路」、「復線路」、「往線路と反対側に位置するコイル部分」に相当する。
よって、甲2発明の「内部配線層40cは内部配線層40aと40bの中間にある」ことと、本件発明1の「前記復線路が、前記往線路と反対側に位置するコイル部分側より、前記往線路に近接して配置され」、「前記ロゴスキ型電流センサにおいて、前記閉じた線の長さ(L)、前記往線路と前記復線路の距離(d)、各コイルの面積の総和(A)が、d<0.1・A/Lの関係となっている」ことは、「前記復線路が、前記往線路と、前記往線路と反対側に位置するコイル部分の間に配置され」ている点で共通する。

(c) 甲2発明では、「ロゴスキーコイル40は、多層基板20の複数の配線層40a〜40cと該配線層間40a〜40cを電気的に接続する接続導体70で形成されて」おり、「多層基板20の接続導体70は、樹脂フィルム20aの貫通穴に充填され、前記加熱加圧により焼結される導電ペーストから形成され」ているから、甲2発明の「配線層40a」、「配線層40b」、「接続導体70」は、それぞれ本件発明1の「第1コイルパターン」、「第2コイルパターン」、「第1コイルパターンと第2コイルパターン間を接続するスルーホール」に相当する。
したがって、甲2発明の「測定対象回路の導体10を多層基板20の開口30に貫通させ」、「多層基板20は、熱可塑性樹脂からなる複数枚の樹脂フィルム20aの積層体を加熱加圧して、該樹脂フィルム20aを一括して相互に貼り合わせて製造し」、「多層基板20の内部配線層40a〜40cは、それぞれ異なる層の樹脂フィルム20aの表面に形成された導体パターンで形成され」、「ロゴスキーコイル40は、多層基板20の複数の配線層40a〜40cと該配線層間40a〜40cを電気的に接続する接続導体70で形成されて」いる構成は、本件発明1の「前記各コイルは、中央に被測定回路を挿通する穴を有し、少なくとも3層の導電パターン層を有する環状基板の異なる2層に形成された第1コイルパターン及び第2コイルパターンと、これらの第1コイルパターンと第2コイルパターン間を接続するスルーホールとによって形成され、前記往線路は、前記3層のうちいずれかの層に形成され」ている構成に相当する。

(d) 甲2発明の「内部配線層40a」及び「内部配線層40c」は、「異なる層の樹脂フィルム20aの表面に形成された導体パターン」であることと、本件発明1の「前記復線路は、前記往線路に近接した、当該往線路とは異なる層に形成され」ていることは、「前記復線路は、前記往線路とは異なる層に形成され」ている点で共通する。

b 一致点及び相違点
上記aを総合すると、本件発明1と甲2発明は、以下の一致点において一致し、以下の相違点4、5において相違する。

<一致点>
複数のコイルを、1つの閉じた線に沿って連続的に接続するとともに前記複数のコイルの最後のコイルの巻き終わりから最初のコイルの巻き始め側までの前記閉じた線に並行した復線路を有し、前記最初のコイルの巻き始め側端子と前記復線路の端子との間に誘起される電圧を前記閉じた線の内部に挿通される被測定回路の電流の関数として検出するロゴスキ型電流センサにおいて、
前記復線路が、前記往線路と、前記往線路と反対側に位置するコイル部分の間に配置され、
前記各コイルは、中央に被測定回路を挿通する穴を有し、少なくとも3層の導電パターン層を有する環状基板の異なる2層に形成された第1コイルパターン及び第2コイルパターンと、これらの第1コイルパターンと第2コイルパターン間を接続するスルーホールとによって形成され、
前記往線路は、前記3層のうちいずれかの層に形成され、
前記復線路は、前記往線路とは異なる層に形成された、
ロゴスキ型電流センサ、である点。

<相違点4>
本件発明1では、「前記複数のコイルを構成する各コイルが、前記閉じた線に直交する平面上に形成され、隣り合うコイルのうち、あるコイルの巻き終わりと次のコイルの巻き始めとの間に、コイル同士を接続する往線路が前記閉じた線に並行するように設けられ」ているのに対して、甲2発明では、そのような構成ではない点。

<相違点5>
本件発明1では、「前記復線路が、前記往線路と反対側に位置するコイル部分側より、前記往線路に近接して配置され」、「前記ロゴスキ型電流センサにおいて、前記閉じた線の長さ(L)、前記往線路と前記復線路の距離(d)、各コイルの面積の総和(A)が、d<0.1・A/Lの関係となっている」のに対して、甲2発明では、内部配線層40cは内部配線層40aと40bの略中間にあり、上記構成を有していない点。

<相違点6>
本件発明1では、「前記復線路は、前記往線路に近接した、当該往線路とは異なる層に形成され」ているのに対して、甲2発明では、「内部配線層40a」及び「内部配線層40c」は異なる層に形成されているが、近接しているかどうか不明な点。

c 相違点5についての当審の判断
事案に鑑みて、まず上記相違点5について検討する。
上記相違点5のうち、「閉じた線の長さ(L)、前記往線路と前記復線路の距離(d)、各コイルの面積の総和(A)が、d<0.1・A/Lの関係となっている」「ロゴスキ型電流センサ」については、甲1〜7号証のいずれにも記載も示唆もされていない。
そして、本件発明1は、上記関係を満たすロゴスキ型電流センサとすることで、本願明細書の段落【0046】に記載の「往線路と復線路で囲まれる部分では磁束による起電力の発生を抑え」、「十分な測定精度を得る」という課題を解決するものであるところ、このような課題自体、本願優先日前に知られていないことを鑑みれば、甲2発明の電流検出コイルにおいて、上記関係を満たすようにする動機付けがあるものとは認められない。

よって、甲2発明において上記相違点5に係る構成とすることは、当業者であっても容易に想到し得たものではない。

d 本件発明1の甲2発明に対する新規性又は進歩性の判断のまとめ
したがって、上記相違点4及び6について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明ではなく、当業者であっても甲2発明に基づいて容易に発明できたものではないので、本件発明1に係る特許は、特許法29条1項、2項の規定に違反してされたものではない。

(イ) 本件発明4〜6、10〜13、16〜18について
本件発明4〜6、10〜13、16〜18も、本件発明1と同様に、上記相違点4〜6に係る構成を備えるものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明4〜6、10〜13、16〜18に係る特許は、特許法29条1項、2項の規定に違反してされたものではない。


第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知で通知した取消理由及び特許異議申立書で申し立てられた特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1、4〜6、10〜13、16〜18に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項1、4〜6、10〜13、16〜18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2、3、7〜9、14、15、19は、前記第2の2のとおり、訂正により削除されたことにより、申立ての対象が存在しないものとなったため、請求項2、3、7〜9、14、15、19に係る特許異議の申立てについては、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。




 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコイルを、1つの閉じた線に沿って連続的に接続するとともに前記複数のコイルの最後のコイルの巻き終わりから最初のコイルの巻き始め側までの前記閉じた線に並行した復線路を有し、前記最初のコイルの巻き始め側端子と前記復線路の端子との間に誘起される電圧を前記閉じた線の内部に挿通される被測定回路の電流の関数として検出するロゴスキ型電流センサにおいて、
前記複数のコイルを構成する各コイルが、前記閉じた線に直交する平面上に形成され、
隣り合うコイルのうち、あるコイルの巻き終わりと次のコイルの巻き始めとの間に、コイル同士を接続する往線路が前記閉じた線に並行するように設けられ、
前記復線路が、前記往線路と反対側に位置するコイル部分側より、前記往線路に近接して配置され、
前記各コイルは、中央に被測定回路を挿通する穴を有し、少なくとも3層の導電パターン層を有する環状基板の異なる2層に形成された第1コイルパターン及び第2コイルパターンと、これらの第1コイルパターンと第2コイルパターン間を接続するスルーホールとによって形成され、
前記往線路は、前記3層のうちいずれかの層に形成され、
前記復線路は、前記往線路に近接した、当該往線路とは異なる層に形成され、
前記ロゴスキ型電流センサにおいて、前記閉じた線の長さ(L)、前記往線路と前記復線路の距離(d)、各コイルの面積の総和(A)が、d<0.1・A/Lの関係となっていることを特徴とするロゴスキ型電流センサ。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】
前記往線路は、前記第1コイルパターンと同じ層に形成され、
前記復線路は、前記往線路と近接した、前記第1コイルパターンおよび第2コイルパターンとは異なる層に形成された請求項1記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項5】
前記復線路は、前記第1コイルパターンおよび前記第2コイルパターンの間にある層に形成された請求項4記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項6】
前記最後のコイルの前記第1コイルパターンのうち、前記復線路と接続された第1コイルパターンは、前記第2コイルパターンと接続された前記スルーホールから、前記復線路と同じ層に配線された請求項4または5記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
【請求項9】(削除)
【請求項10】
前記環状基板の、前記コイル、往線路、または復線路が形成されていない部分に、前記被測定回路を前記環状基板の穴に挿通するための切り込みを設けた請求項1記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項11】
前記第1コイルパターン、第2コイルパターン、スルーホールおよび往線路が並ぶコイル群が第1の電極パッドから前記切り込みに向かってまで配線され、前記コイル群に接続された前記復線路が第2の電極パッドまで配線された請求項10記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項12】
前記第1コイルパターン、第2コイルパターン、スルーホールおよび往線路が並ぶコイル群は、第1のコイル群と第2のコイル群とに分割され、
前記第1のコイル群が第1の電極パッドから前記切り込みに向かってまで配線され、前記第1のコイル群に接続された前記復線路が前記切り込みに向かって配線され、前記復線路に接続された前記第2のコイル群が第2の電極パッドまで配線された請求項10記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項13】
前記第1コイルパターン、第2コイルパターン、スルーホールおよび往線路が並ぶコイル群は、第1のコイル群と第2のコイル群に分割され、
前記復線路は、第1の線路と第2の線路に分割され、
前記第1のコイル群が第1の電極パッドから前記切り込みに向かって配線され、前記第1のコイル群に接続された前記第1の線路が前記第1の電極パッドの位置まで配線され、前記第1の線路に接続された前記第2のコイル群が前記切り込みに向かって配線され、前記第2のコイル群に接続された前記第2の線路が第2の電極パッドまで配線された請求項10記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項14】(削除)
【請求項15】(削除)
【請求項16】
前記環状基板はノイズシールドで覆われている請求項1記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項17】
前記ノイズシールドは、前記各コイルが形成された内層より外側のそれぞれの外層に形成された第1の導電パターンおよび第2の導電パターンを備えた請求項16に記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項18】
前記ノイズシールドは、更に、前記第1の導電パターンおよび前記第2の導電パターンが形成された層間を貫通し、前記コイルの内周側と外周側との両方に、円周方向に沿って形成された第1のスルーホールおよび第2のスルーホールを備え、
前記第1の導電パターンと、前記第1のスルーホールと、前記第2の導電パターンと、前記第2のスルーホールとによるループの形成を回避するために、前記ループに非接続部が形成された請求項17に記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項19】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-02-14 
出願番号 P2017-529943
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G01R)
P 1 651・ 113- YAA (G01R)
P 1 651・ 537- YAA (G01R)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 濱本 禎広
濱野 隆
登録日 2020-05-28 
登録番号 6709918
権利者 国立大学法人九州工業大学
発明の名称 ロゴスキ型電流センサ  
代理人 加藤 久  
代理人 南瀬 透  
代理人 加藤 久  
代理人 宇野 智也  
代理人 宇野 智也  
代理人 遠坂 啓太  
代理人 遠坂 啓太  
代理人 南瀬 透  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ